(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】折り畳み式運搬用容器
(51)【国際特許分類】
B65D 6/18 20060101AFI20220615BHJP
【FI】
B65D6/18 D
(21)【出願番号】P 2017191780
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 義久
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-199320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、
前記底板の上方に位置し、上下に貫通する開口部が形成された口枠と、
前記口枠に回転自在に連結された一対の揺動板と、
前記底板と前記口枠に回転自在に連結された一対の折曲板を備え、
前記揺動板は、
前記揺動板の主体を構成する主板と、
前記主板の一部から外側方に距離をあけて位置し、両端部よりも中央部が外側方に位置するように外側方に向けて膨らんだ形状を有する操作片を含み、
前記操作片は、前記主板と一体に形成されており、
前記主板のうち
、前記主板の厚み方向において前記操作片と対向する部分には面が設けられているとともに、
前記主板の厚み方向における前記主板と前記操作片の間には、
前記揺動板が前記底板と前記口枠の間で起立した状態で、上方又は下方から指先を挿し込むことのできる空間が形成されている
ことを特徴とする折り畳み式運搬用容器。
【請求項2】
前記揺動板は、
前記主板の外側方に位置する横リブを、さらに含み、
前記横リブは、
前記揺動板が、前記底板と前記口枠の間で起立した状態において、前記空間の下方への開口の少なくとも一部を塞ぐように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の折り畳み式運搬用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み状態と組立状態を切り換えることができる折り畳み式運搬用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
折り畳み状態と組立状態を切り換えることができる折り畳み式の運搬用容器が、従来知られている(特許文献1等参照)。
【0003】
この種の運搬用容器は、底板、口枠、一対の揺動板、および一対の折曲板を備える。一対の揺動板は、口枠に対して回転自在に連結されている。一対の折曲板は、底板と口枠に対して回転自在に連結されている。
【0004】
運搬用容器が組立状態にあるとき、一対の揺動板と一対の折曲板は、いずれも底板と口枠の間において真っ直ぐに起立した姿勢(以下「起立姿勢」)をとる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した運搬用容器においては、運搬用容器が組立状態にあるときに、揺動板に対して外力が働いた場合に、揺動板が内側に回転し、適正な起立姿勢からずれることがある。このとき、揺動板を起立姿勢に戻すには、容器の内側から揺動板を押し込むことが一般的である。
【0007】
しかし、たとえば底板上に物品が収容されている場合や、口枠上に他の容器が積み重ねられている場合には、このように揺動板を内側から押し込むことが容易ではなかった。
【0008】
また、口枠の開口部を蓋板で閉じたまま、運搬用容器を組み立てる(折り畳み状態から組立状態に切り換える)ときに、揺動板の回転が不完全であった場合には、揺動板を内側からさらに押し込むために、蓋板を開閉する作業が必要であった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、簡単な作業で、揺動板を起立姿勢にまで回転させることのできる折り畳み式運搬用容器を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一様態に係る折り畳み式運搬用容器は、底板と、前記底板の上方に位置し、上下に貫通する開口部が形成された口枠と、前記口枠に回転自在に連結された一対の揺動板と、前記底板と前記口枠に回転自在に連結された一対の折曲板を備える。
【0011】
前記揺動板は、前記揺動板の主体を構成する主板と、前記主板の一部から外側方に距離をあけて位置し、外側方に向けて膨らんだ形状を有する操作片を含み、前記主板と前記操作片の間には、指先を挿し込むことのできる空間が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、簡単な作業で、揺動板を起立姿勢にまで回転させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態の折り畳み式運搬用容器の斜視図である。
【
図2】
図2は、同上の折り畳み式運搬用容器の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の折り畳み式運搬用容器が備える底板の斜視図である。
【
図5】
図5は、同上の折り畳み式運搬用容器が備える口枠の斜視図である。
【
図6】
図6は、同上の折り畳み式運搬用容器が備える揺動板の斜視図である。
【
図10】
図10は、同上の折り畳み式運搬用容器が備える折曲板の分解斜視図である。
【
図11】
図11は、変形例1の折り畳み式運搬用容器が備える揺動板の要部断面図である。
【
図12】
図12は、変形例2の折り畳み式運搬用容器が備える揺動板の要部断面図である。
【
図13】
図13は、変形例3の折り畳み式運搬用容器が備える揺動板の斜視図である。
【
図14】
図14は、変形例4の折り畳み式運搬用容器が備える揺動板の斜視図である。
【
図15】
図15は、変形例5の折り畳み式運搬用容器が備える揺動板の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[一実施形態]
一実施形態の折り畳み式運搬用容器について、添付図面に基づいて説明する。以下の説明において用いる上下等の各方向は、容器全体が組み立てられた状態(組立状態)を基準とする。
【0015】
(概要)
まず、一実施形態の折り畳み式運搬用容器の概要について説明する。
【0016】
図1、
図2に示すように、一実施形態の折り畳み式運搬用容器は、矩形板状の底板1と、底板1の上方に位置する矩形枠状の口枠2と、底板1と口枠2の間で起立するように取り付けられた一対の揺動板3と、同じく底板1と口枠2の間で起立するように取り付けられた一対の折曲板4と、口枠2に形成された開口部20を開閉する一対の蓋板5を備える。一実施形態の折り畳み式運搬用容器を構成する各部材1,2,3,4,5は、合成樹脂製の成形品である。
【0017】
一対の揺動板3は、それぞれ合成樹脂製の主板31で主体が構成されている。各揺動板3の上縁部分(主板31の上縁部分)である連結端部32が、口枠2に対して回転自在に連結する。各揺動板3の下縁部分(主板31の下縁部分)である係合端部33は、底板1の周縁部分に対して、内側から係脱自在に係合する。
【0018】
一対の折曲板4は、互いに回転自在に連結された合成樹脂製の上板41と下板42で、それぞれの主体が構成されている。各折曲板4の上縁部分(上板41の上縁部分)が、口枠2に対して回転自在に連結され、各折曲板4の下縁部分(下板42の下縁部分)が、底板1の周縁部分に対して回転自在に連結される。各折曲板4において、上板41と下板42は、内側に向けて「く」字状に折り曲がる。
【0019】
以下、一実施形態の折り畳み式運搬用容器の各構成について、更に詳しく述べる。
【0020】
(底板)
図3、
図4等に示すように、底板1は、その主体をなす矩形板状の底板本体11と、底板本体11の周縁部分に設けられた複数の係合部13と、同じく底板本体11の周縁部分に設けられた複数の連結部15を備える。
【0021】
底板本体11の周縁部分は、互いに平行である一対の短側部分111と、互いに平行である一対の長側部分112を有する。一対の短側部分111と一対の長側部分112は、周方向において交互にかつ連続して位置する。
【0022】
一対の短側部分111のそれぞれに、係合部13と外側片14が一体に設けられている。係合部13は、揺動板3の係合端部33が内側から係脱自在に係合する部分であり、短側部分111の長さ方向の中央部に位置する。外側片14は、係合部13よりも外側に位置する。係合部13に対して揺動板3の係合端部33が係合するとき、揺動板3は、底板1と口枠2の間で起立姿勢に保持される。
【0023】
一対の長側部分112のそれぞれに、複数の連結部15と外側片16が設けられている。連結部15には、折曲板4の下縁部分が回転自在に連結される。外側片16は、複数の連結部15よりも外側に位置する。
【0024】
(口枠)
図5等に示すように、口枠2は、揺動板3の連結端部32が連結される一対の短側フレーム21と、折曲板4の上縁部分が連結される一対の長側フレーム22を、一体に有する。一対の短側フレーム21と一対の長側フレーム22は、周方向において交互にかつ連続して位置する。
【0025】
口枠2の開口部20は、一対の短側フレーム21と一対の長側フレーム22で全周を囲まれた部分であり、上下に貫通している。
【0026】
短側フレーム21の上面には、蓋板5の一部が載せられる。短側フレーム21の上面には、上方に突出するように二つの突起218が形成されている。
【0027】
長側フレーム22の上面には、複数の連結部226が形成されている。複数の連結部226には、蓋板5が回転自在に連結される。
【0028】
(揺動板)
図6から
図9には、揺動板3を示している。
【0029】
上記したように、揺動板3は、その主体をなす矩形板状の主板31と、主板31の上縁部分で構成された連結端部32と、主板31の下縁部分で構成された係合端部33を備える。
【0030】
連結端部32には、口枠2の短側フレーム21に対して回転自在に連結する複数の連結部322が、一体に形成されている。複数の連結部322は、横方向に距離をあけて一直線状に位置する。
【0031】
係合端部33の長さ方向(横方向)の中央部には、係合部335が一体に形成されている。係合部335は、底板1の係合部13に対して内側から係脱自在に係合する部分である。係合部335には、底板1の係合部13に係合するための二つの係合爪337が形成されている。係合爪337の個数は二つに限定されず、少なくとも一つであればよい。
【0032】
主板31には、持ち手孔35が形成されている。持ち手孔35は、主板31の上部において、主板31の厚み方向に貫通している。ここでの主板31の上部は、即ち、主板31のうち連結端部32に近い側の部分である。主板31の厚み方向は、揺動板3の厚み方向である。主板31の厚み方向と横方向は、互いに直交する方向である。
【0033】
主板31には、持ち手孔35の開口を内側から塞ぐように、図示略の可撓性のカバー(グリップカバー)を取り付けることも可能である。この場合、持ち手孔35を通じて空気が移動することが抑えられ、揺動板3が勢いよく回転しにくくなるので、揺動板3が回転の勢いでは底板1に係合しづらくなる。しかし、後述の操作片34を利用することによって、この問題は解消される。
【0034】
主板31には、使用者が自身の指先を曲げて引っ掛けることのできる指掛け片36が、外側方D1に向けて僅かに膨らむように形成されている。指掛け片36は、主板31を正面から視たときに、持ち手孔35の上部を塞ぐように位置する。使用者は、持ち手孔35に対して自身の指先を外側から挿し込み、その指先を上方に曲げて指掛け片36に引っ掛けることができる。
【0035】
指掛け片36の下側の部分(下端部)からは、内側方D2に向けて横リブ363が突出している(
図2参照)。横リブ363によって指先の掛け代が確保され、指掛け片36を握った際に痛みを感じることも抑えられる。
【0036】
主板31の横方向の両端部には、外側方D1に向けて膨らむように湾曲した湾曲部37が、上下に一直線状に形成されている。湾曲部37の外側方D1を向く面が、外側方D1に向けて膨らんだ凸面371であり、湾曲部37の内側方D2を向く面が、外側方D1に向けて凹んだ凹面373(
図9参照)である。外側方D1と内側方D2は、互いに反対方向である。
【0037】
主板31の下部には、外側方D1に向けて突出する一対の縦リブ38が、それぞれ上下に一直線状に形成されている。ここでの主板31の下部は、主板31のうち係合端部33に近い側の部分である。
【0038】
縦リブ38の上部382は、上側の部分ほど外側方D1への突出量が小さくなるように、三角形状に形成されている。上部382が三角形状であることにより、使用者の指が縦リブ38に引っ掛かることが抑えられる。
縦リブ38のうち上部382よりも下方の部分であるリブ本体384では、外側方D1への突出量は同一である。本文で用いる同一の文言は厳密な意味での同一に限定されず、略同一な場合も含む。
【0039】
外側方D1における縦リブ38の突出高さ(リブ本体384の突出量)は、主板31の周縁部に形成された外周リブ313の突出高さと同一である。
【0040】
主板31の横方向において、一対の縦リブ38は、両端の湾曲部37の内側に位置する。各湾曲部37と各縦リブ38は、互いに平行である。本文で用いる平行の文言は厳密な意味での平行に限定されず、略平行な場合も含む。各湾曲部37とこれの内側に位置する縦リブ38との間には、スペースが形成されている。
【0041】
図9に示すように、互いに隣接する湾曲部37と縦リブ38の間の横方向の幅W2は、湾曲部37の横方向の幅W1よりも狭く設けている。言い換えれば、主板31の限られた領域において、湾曲部37の幅W1を比較的広く設定しており、これによって揺動板3の全体の強度を確保している。
【0042】
主板31の横方向の両側の部分において、互いに隣接する湾曲部37と縦リブ38の間には、操作片34が架け渡されている。操作片34は、揺動板3の下部領域に位置し、具体的には揺動板3のうち下から1/2の領域(好ましくは、下から1/3の領域)に位置している。
【0043】
揺動板3の下部領域のなかでも下側に操作片34が位置するほど、操作片34に指を掛けて外側方D1に引っ張る力で、揺動板3を底板1に係合させやすくなるという利点がある。また、揺動板3の下部領域のなかでも上側に操作片34が位置するほど(つまり揺動板3のうち下から1/2または1/3の位置に近づくほど)、揺動板3の全体の強度が高められるという利点がある。
【0044】
操作片34は、主板31の下部の一部から外側方D1に距離をあけた位置で、主板31と一体に形成されている。操作片34は、外側方D1に向けて膨らんだ円弧状の形状を有する。操作片34と主板31の間には、使用者が自身の指先を挿し込むことができる空間S1が形成されている。
【0045】
空間S1は、主板31、操作片34、湾曲部37および縦リブ38に囲まれた空間であり、上方および下方に開口している。操作片34は、外側方D1に向けて滑らかに膨らむように湾曲しているので、使用者は空間S1に指先を挿入しやすく、かつ、指先を操作片34に掛けて引っ張るときに痛みを感じにくい。
【0046】
主板31の平坦部分に対する操作片34の高さは、該平坦部分に対する湾曲部37(凸面371)の高さと同一、またはこれより低く設定されていることが、操作片34の破損防止のためには好ましい。
【0047】
操作片34の上下方向の長さL1(
図8参照)は、10~40mmの範囲内で設けられることが好ましく、操作片34を摘む作業のしやすさを考慮すれば、操作片34の長さL1は、15~30mmの範囲内(より好適には15~20mmの範囲内)で設けられることが好ましい。金型を用いて揺動板3を樹脂成形する際に、操作片34の部分の成形にスライドコアが用いられるが、このスライドコアのストロークの限度を考慮すれば、操作片34の長さL1は40mm以下(たとえば30mm)であることが好ましい。
【0048】
一実施形態の折り畳み式運搬用容器において、揺動板3には、横方向に距離をあけた二箇所に操作片34が設けられているので、使用者は、たとえば右手で容器全体を押さえながら、左側の操作片34に対して左手の指先を引っ掛け、揺動板3を外側方D1に引っ張ることができる。あるいは、左手で容器全体を押さえながら、右側の操作片34に対して右手の指先を引っ掛け、揺動板3を外側方D1に引っ張ることもできる。
【0049】
また、左側の操作片34に対して左手の指先を引っ掛け、右側の操作片34に対して右手の指先を引っ掛け、両手を使って揺動板3を外側方D1に引っ張ることも可能である。
【0050】
ここで、二箇所の操作片34の係合端部33からの距離(上下方向の距離)は同一に設けられおり、左側の操作片34と左側の係合爪337との間の距離と、右側の操作片34と右側の係合爪337との間の距離は、互いに同一である。したがって、両側の操作片34に指先を引っ掛けて引っ張ることで、両側の係合爪337を、底板1の係合部13に対して円滑に係合させることが可能である。
【0051】
(折曲板)
図10には、折曲板4を分解して示している。
【0052】
上記したように、折曲板4は、共に矩形板状である上板41と下板42で主体が構成され、上板41と下板42が連結状態で「く」字状に折り曲がることで、その全体が二つ折り可能である。
【0053】
上板41の上縁部分(口枠2に近い側の縁部分)には、口枠2の長側フレーム22に対して回転自在に連結する複数の連結部412が、一体に形成されている。
【0054】
上板41の下縁部分(口枠2から離れた側の縁部分)には、下板42に対して回転自在に連結するためのヒンジ軸414と軸受部416が、一体に形成されている。また、上板41の下縁部分には、ヒンジ軸414と軸受部416よりも内側方に位置する内側片418が、一体に形成されている。
【0055】
下板42の下縁部分(底板1に近い側の縁部分)には、複数の連結部422が一体に形成されている。複数の連結部422は、底板1の長側部分112に形成された複数の連結部15に対して、回転自在に連結する。
【0056】
下板42の上縁部分(底板1から離れた側の縁部分)には、上板41に対して回転自在に連結するためのヒンジ軸424と軸受部426が、一体に形成されている。下板42と上板41の相対的な回転範囲は、上板41の内側片418によって、内側に向けて「く」字状に折れ曲がる範囲に制限されている。
【0057】
(蓋板)
図1、
図2に示すように、一対の蓋板5は、口枠2に対して回転自在に取り付けられる。具体的には、口枠2が備える一対の長側フレーム22に対して、一対の蓋板5が一対一に取り付けられる。
【0058】
一対の蓋板5は、口枠2が形成する開口部20を開閉し、これにより容器の収納空間を外部に対して開閉する。一対の蓋板5は、互いに共通の構成を備えている。蓋板5の外形は矩形板状である。
【0059】
蓋板5が備える一対の長辺側の端縁部のうち、一方には複数の連結部51が形成され、他方には薄板状のオーバーラップ部53が形成されている。
【0060】
連結部51は、口枠2の長側フレーム22の連結部226(
図5参照)に対して回転自在に連結される。オーバーラップ部53は、もう一つの蓋板5のオーバーラップ部53に重なる部分である。
【0061】
蓋板5が備える一対の短辺側の端縁部には、貫通孔55が形成されている。蓋板5が開口部20を閉じる姿勢にあるときに、口枠2の各短側フレーム21に形成された突起218が、対応する貫通孔55に一対一で嵌り込む。
【0062】
(全体)
一実施形態の折り畳み式運搬用容器は、上記の各構成を備えるので、揺動板3が適正な起立姿勢からずれているときに、この揺動板3を起立姿勢にまで回転させる作業を、以下の簡単な作業で効率的に行うことが可能である。
【0063】
つまり、一実施形態の折り畳み式運搬用容器では、揺動板3を起立姿勢にまで回転させたいときには、主板31と操作片34の間に形成された空間S1に、上方または下方の開口を通じて指先を挿し入れ、その指先で操作片34を外側に引っ張ればよく、従来のように、揺動板3を内側から押し込む必要がない。
【0064】
そのため、たとえば底板1上に物品が収容されている場合や、口枠2上に他の容器が上方から積み重ねられている場合であっても、起立姿勢からずれた揺動板3を元に戻す作業が、簡単に行われる。
【0065】
また、一実施形態の折り畳み式運搬用容器を、口枠2の開口部20を蓋板5で閉じた状態で組み立てる際に、揺動板3の回転が不完全であったときにも、操作片34に指先を引っ掛けて揺動板3を外側方D1に引っ張ればよく、蓋板5をいったん開く作業が不要である。
【0066】
以上のように、一実施形態の折り畳み式運搬用容器によれば、簡単な作業で、揺動板3を起立姿勢にまで回転させることができる。
【0067】
[変形例]
以下、各種の変形例の折り畳み式運搬用容器について説明する。
【0068】
なお、各変形例の折り畳み式運搬用容器の基本的な構成は、上記した一実施形態の折り畳み式運搬用容器の構成と共通である。以下において、一実施形態の折り畳み式運搬用容器と同様の構成については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0069】
図11には、変形例1の折り畳み式運搬用容器が備える揺動板3の要部断面を示している。
図11に示す断面は、一実施形態の折り畳み式運搬用容器の
図8に相当する部分の断面である。
【0070】
変形例1の折り畳み式運搬用容器においては、揺動板3の主板31の外側方D1に位置するように、横リブ39が設けられている。横リブ39は、空間S1の下方に位置するように、操作片34と一体に形成されている。横リブ39と操作片34は断面L字状に連続しており、横リブ39によって操作片34の変形や破損が抑えられる。
【0071】
横リブ39は、操作片34の下部(下端部)から内側方D2に向けて延出されているが、これに限定されず、操作片34の中央部から延出されてもよいし、操作片34の上部(上端部)から延出されてもよい。
【0072】
さらに、変形例1の折り畳み式運搬用容器においては、空間S1に水や塵が溜ることを抑えるため、横リブ39には、上下に貫通する抜き孔392が設けられている。なお、抜き孔392を設けず、横リブ39によって空間S1の下方への開口の全てを塞ぐことも可能である。
【0073】
図12には、変形例2の折り畳み式運搬用容器が備える揺動板3の要部断面を示している。
図12に示す断面は、一実施形態の折り畳み式運搬用容器の
図8に相当する部分の断面である。
【0074】
変形例2の折り畳み式運搬用容器においては、揺動板3の主板31のうち操作片34と対向する一部に、貫通孔315が形成されている。
【0075】
この変形例においても、主板31と操作片34の間に形成された空間S1に対して、上方または下方から指先を挿し込み、その指先で操作片34を引っ張ることができる。
【0076】
図13には、変形例3の折り畳み式運搬用容器が備える揺動板3を示している。
【0077】
変形例3の折り畳み式運搬用容器においては、縦リブ38の一部に、横方向に貫通した開口部386が設けられている。開口部386は、リブ本体384のうち空間S1と面する部分に設けられている。
【0078】
変形例3の折り畳み式運搬用容器においては、揺動板3の横方向の内側から開口部386に指先を挿し入れ、その指先で操作片34を引っ張ることができる。
【0079】
図14には、変形例4の折り畳み式運搬用容器が備える揺動板3を示している。
【0080】
変形例4の折り畳み式運搬用容器においては、揺動板3の横方向の中央部に、一対の縦リブ38が互いに平行に設けられている。
【0081】
横方向に並んで位置する一対の縦リブ38の間に、操作片34が架け渡されている。指先を挿し入れることのできる空間S1は、主板31、操作片34および一対の縦リブ38に囲まれた空間である。操作片34は、揺動板3の下部領域に位置し、具体的には揺動板3のうち下から1/2の領域(好ましくは、下から1/3の領域)に位置している。
【0082】
変形例4の折り畳み式運搬用容器においても、揺動板3の下部領域のうち下側に操作片34が位置するほど、操作片34に指を掛けて外側方D1に引っ張る力で、揺動板3を底板1に係合させやすくなるという利点がある。また、揺動板3の下部領域のうち上側に操作片34が位置するほど、揺動板3の全体の強度が高められるという利点がある。
【0083】
この変形例では、操作片34が係合部335の上方に位置している。そのため、操作片34に指を掛けて外側方D1に引っ張る力が、係合部335(左右の係合爪337)に効率的に伝わるという利点がある。
【0084】
なお、この変形例においても、両側の縦リブ38のうち空間S1と面する部分に、変形例3の開口部386のように横方向に貫通した開口部を設けることが可能である。この場合には、揺動板3の横方向の外側から該開口部を通じて空間S1に指先を挿し入れ、その指先で操作片34を引っ張ることができる。
【0085】
図15には、変形例5の折り畳み式運搬用容器が備える揺動板3の断面を示している。
図15に示す断面は、一実施形態の折り畳み式運搬用容器の
図9に相当する部分の断面である。
【0086】
変形例5の折り畳み式運搬用容器においては、主板31の横方向の両端部に、互いに平行な湾曲部37が一対形成されている。操作片34は、横方向に隣接する一対の湾曲部37の間に架け渡されている。指先を挿し入れることのできる空間S1は、主板31、操作片34および一対の湾曲部37に囲まれた空間である。
【0087】
この変形例においても、主板31と操作片34の間に形成された空間S1に対して、上方または下方から指先を挿し込み、その指先で操作片34を引っ張ることができる。
【0088】
その他、一実施形態の折り畳み式運搬容器の各構成は、適宜に変更可能である。
【0089】
たとえば、一実施形態の折り畳み式運搬用容器では、一対の蓋板5が口枠2に回転自在に連結されているが、蓋板5の個数は1つでもよいし、蓋板5が口枠2から着脱自在でもよい。
【0090】
[作用効果]
上記した一実施形態およびその変形例の説明から理解されるように、第1の形態の折り畳み式運搬用容器は、底板1、口枠2、一対の揺動板3、および一対の折曲板4を備える。口枠2は底板1の上方に位置し、上下に貫通する開口部20が形成されている。一対の揺動板3は、口枠2に回転自在に連結されている。一対の折曲板4は、底板1と口枠2に回転自在に連結されている。
【0091】
揺動板3は、主板31と操作片34を含む。主板31は、揺動板3の主体を構成する。操作片34は、主板31の一部から外側方D1に距離をあけて位置し、外側方D1に向けて膨らんだ形状を有する。主板31と操作片34の間には、指先を挿し込むことのできる空間S1が形成されている。
【0092】
したがって、第1の形態の折り畳み式運搬用容器によれば、揺動板3を起立姿勢にまで回転させる作業を簡単に行うことができる。たとえば、底板1上に物品が収容されている場合や、口枠2上に他の容器が上方から積み重ねられている場合であっても、使用者は自身の指先を空間S1に挿し込んで操作片34に引っ掛け、操作片34を外側方D1に引っ張ることで、揺動板3を簡単に起立姿勢にまで回転させることができる。また、第1の形態の折り畳み式運搬用容器を、口枠2の開口部20を閉じた状態で組み立てる際に、揺動板3の回転が不完全であったときには、操作片34に指先を引っ掛けて揺動板3を外側方D1に引っ張ればよく、開口部20をいったん開く作業が不要である。
【0093】
第2の形態の折り畳み式運搬用容器は、第1の形態において、揺動板3は、主板31の外側方D1に位置する横リブ39を、さらに含む。横リブ39は、揺動板3が底板1と口枠2の間で起立した状態において、空間S1の下方への開口の少なくとも一部を塞ぐように構成されている。
【0094】
したがって、第2の形態の折り畳み式運搬用容器によれば、繰り返しの使用によって操作片34に変形や破損を生じることが、横リブ39によって抑制される。
【符号の説明】
【0095】
1 底板
2 口枠
20 開口部
3 揺動板
31 主板
34 操作片
4 折曲板
D1 外側方
D2 内側方
S1 空間