(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】化粧料繰出容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/04 20060101AFI20220615BHJP
【FI】
A45D40/04 A
(21)【出願番号】P 2017236425
(22)【出願日】2017-12-08
【審査請求日】2020-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000252090
【氏名又は名称】鈴野化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大庭 淳
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-150156(JP,A)
【文献】特開平06-199370(JP,A)
【文献】特開2007-195925(JP,A)
【文献】実開昭57-086105(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00~40/30
B65D 83/00~83/76
B43K 21/00~21/26
B43K 24/00~24/18
B43K 27/00~27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料が収容される先端収容孔を有する容器本体と、
前記容器本体内で前記化粧料を支持し、前記容器本体により回転が規制される支持部材と、
前記容器本体の後端部に、前記容器本体に対して相対回転可能に設けられる駆動体と、
前記容器本体と前記駆動体との相対回転により、前記化粧料を進退させる繰出機構と、を備え、
前記繰出機構は、
内周に雌ねじが形成され、前記容器本体と同期回転する雌ねじ部材と、
前記雌ねじ部材の前記雌ねじに螺合される雄ねじが外周に形成され、前記駆動体と同期回転可能に構成され、前記容器本体と前記駆動体との相対回転によって進退する押棒と、を有し、
前記支持部材は、
前記先端収容孔に配置され前記化粧料を支持する支持部と、
前記支持部から延設される棒軸部と、
前記棒軸部の端部に設けられ前記押棒に係合する第1係合部と、
前記棒軸部の外周面に設けられる係合突部と、を有し、
前記押棒は、
前記支持部材の前記第1係合部に係合する第2係合部と、
前記雌ねじ部材に当接することにより、前記押棒の前進限を規定する規定部と、を有し、
前記支持部材と前記押棒とは、前記第1係合部と前記第2係合部とにより相対回転可能に連結され、
前記容器本体には、前記先端収容孔に連通して
前記先端収容孔よりも径が小さい摺動孔が設けられ、
前記摺動孔の内周面には、溝部が軸方向に沿って設けられ、
前記溝部と前記係合突部とが係合することによって、前記支持部材の回転が前記容器本体により規制され、
前記容器本体と前記駆動体との相対回転によって、前記支持部材の前記第1係合部と前記押棒の前記第2係合部とが係合した状態で前記摺動孔内を進退する
ことを特徴とする化粧料繰出容器。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧料繰出容器において、
前記容器本体は、前記先端収容孔を有する先筒部と、前記駆動体に回動可能に連結される筒体部と、が一体的に形成された単一部材からなる、
ことを特徴とする化粧料繰出容器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の化粧料繰出容器において、
前記支持部は、筒状に形成される支持筒であり、
前記支持筒の外径は、前記摺動孔の内径よりも大きい
ことを特徴とする化粧料繰出容器。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の化粧料繰出容器において、
前記支持部材には、前記支持部、前記棒軸部及び前記第1係合部を軸方向に貫通する貫通孔が設けられる
ことを特徴とする化粧料繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
先筒に収容される化粧料を、先筒の先端より出没させる化粧料繰出容器が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の化粧料繰出容器は、先筒と、この先筒と回動可能に連結する基体と、基体に内挿され棒状化粧料が固定される芯チャック部材と、芯チャック部材の表面に設けられた突起に螺合する螺旋部材と、先筒を被うキャップと、を備える。
【0003】
先筒と基体とを回動させると、芯チャック部材が先筒と同期の回転をしながら進出する。芯チャック部材の後部にはベンドストッパーが設けられ、ベンドストッパーの上端面が螺旋部材の後端面に当接することにより芯チャック部材の前進が規定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、化粧料繰出容器を組み立てる際、ベンドストッパーを内側に撓ませて螺旋部材に芯チャック部材を通過させてから、芯チャック部材の突起を螺旋部材の螺旋溝に螺合させる必要がある。このため、芯チャック部材が螺旋部材を通過する際にベンドストッパーが撓まなかった場合に、突起を螺旋溝に螺合させることができず、化粧料繰出容器の組み立てを完了することができないという問題が生じる。
【0006】
また、ベンドストッパーが撓んで螺旋部を通過できた場合であっても、通過後にベンドストッパーが撓んだままの状態で化粧料繰出容器の組み立てが完了するおそれもある。この場合、化粧料繰出容器を使用する際、ベンドストッパーの上端面と螺旋部材の後端面とが当接することなく化粧料を保持する芯チャック部材が化粧料繰出容器から抜け出てしまう。その結果、化粧料が十分に残っている状態であるにもかかわらず、化粧料繰出容器の使用ができなくなってしまうという問題が生じる。
【0007】
したがって、上記特許文献1に記載の化粧料繰出容器では、化粧料繰出容器の組み立てを完了させ、繰り出し、繰り戻しの動作の確認を行った後に化粧料を充填する必要があるので、化粧料容器の製造に手間がかかってしまう。その結果、化粧料容器の製造コストが増加する。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、化粧料繰出容器の製造コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る化粧料繰出容器は、化粧料が収容される先端収容孔を有する容器本体と、容器本体内で化粧料を支持し、容器本体により回転が規制される支持部材と、容器本体の後端部に、容器本体に対して相対回転可能に設けられる駆動体と、容器本体と駆動体との相対回転により、化粧料を進退させる繰出機構と、を備え、繰出機構は、内周に雌ねじが形成され、容器本体と同期回転する雌ねじ部材と、雌ねじ部材の雌ねじに螺合される雄ねじが外周に形成され、駆動体と同期回転可能に構成され、容器本体と駆動体との相対回転によって進退する押棒と、を有し、支持部材は、先端収容孔に配置され化粧料を支持する支持部と、支持部から延設される棒軸部と、棒軸部の端部に設けられ押棒に係合する第1係合部と、棒軸部の外周面に設けられる係合突部と、を有し、押棒は、支持部材の第1係合部に係合する第2係合部と、雌ねじ部材に当接することにより、押棒の前進限を規定する規定部と、を有し、支持部材と押棒とは、第1係合部と第2係合部とにより相対回転可能に連結され、容器本体には、先端収容孔に連通して先端収容孔よりも径が小さい摺動孔が設けられ、摺動孔の内周面には、溝部が軸方向に沿って設けられ、溝部と係合突部とが係合することによって、支持部材の回転が容器本体により規制され、容器本体と駆動体との相対回転によって、支持部材の第1係合部と押棒の第2係合部とが係合した状態で摺動孔内を進退することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容器本体と駆動体との相対回転により進退する部材が、化粧料を支持する支持部材と、前進限を規定する押棒と、によって構成される。このため、化粧料繰出容器の製造過程において、前進限を規定する規定部を雌ねじ部材に通過させる必要がない。このため、化粧料繰出容器の組み立てを完成させ、繰り出し、繰り戻しの動作の確認を行ってから化粧料を充填するといった工程が不要になる。その結果、化粧料繰出容器の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る化粧料繰出容器の押棒が後退限に位置している状態を示す正面の縦断面図であり、
図1(b)は、
図1(a)におけるA-A線に沿う横断面図であり、
図1(c)は、
図1(a)におけるB-B線に沿う横断面図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の第1実施形態に係る化粧料繰出容器の押棒が前進限に位置している状態を示す正面の縦断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)におけるC-C線に沿う横断面の拡大図であり、
図2(c)は、
図2(a)におけるP部の拡大図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の第1実施形態に係る容器本体の正面図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示す容器本体を後方から見た底面図であり、
図3(c)は、
図3(a)に示す容器本体の正面の縦断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係るキャップの正面の縦断面図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の第1実施形態に係る支持部材の正面図であり、
図5(b)は、
図5(a)に示す支持部材の正面の縦断面図であり、
図5(c)は、
図5(a)に示す支持部材の側面図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の第1実施形態に係る駆動体の正面図であり、
図6(b)は、
図6(a)に示す駆動体を前方から見た平面図であり、
図6(c)は、
図6(a)に示す駆動体の正面の縦断面図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の第1実施形態に係る雌ねじ部材の正面図であり、
図7(b)は、
図7(a)に示す雌ねじ部材を前方から見た平面図であり、
図7(c)は、
図7(a)に示す雌ねじ部材の正面の縦断面図である。
【
図8】
図8(a)は、本発明の第1実施形態に係る押棒の正面図であり、
図8(b)は、
図8(a)に示す押棒の正面の縦断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第1実施形態に係る化粧料繰出容器の製造方法について説明する図であり、容器本体の後端開口側から化粧料を充填した後、本体側組立体と駆動体側組立体とを連結する製造手順について示す。
【
図10】
図10は、本発明の第1実施形態に係る化粧料繰出容器の別の製造方法について説明する図であり、本体側組立体と駆動体側組立体とを連結した後、容器本体の前端開口側から化粧料を充填する製造手順について示す。
【
図11】
図11(a)は、本発明の第2実施形態に係る化粧料繰出容器の押棒が後退限に位置している状態を示す正面の縦断面図であり、
図11(b)は、
図11(a)におけるD-D線に沿う横断面図であり、
図11(c)は、
図11(a)におけるE-E線に沿う横断面図であり、
図11(d)は、
図11(a)におけるF-F線に沿う横断面図である。
【
図12】
図12(a)は、本発明の第2実施形態に係る化粧料繰出容器の押棒が前進限に位置している状態を示す正面の縦断面図であり、
図12(b)は、
図12(a)におけるG-G線に沿う横断面図である。
【
図13】
図13(a)は、本発明の第2実施形態に係る容器本体の正面図であり、
図13(b)は、
図13(a)に示す容器本体を後方から見た底面図であり、
図13(c)は、
図13(a)に示す容器本体の正面の縦断面図である。
【
図14】
図14(a)は、本発明の第2実施形態に係る支持部材の正面図であり、
図14(b)は、
図14(a)に示す支持部材を前方から見た平面図であり、
図14(c)は、
図14(a)におけるH-H線に沿う横断面図であり、
図14(d)は、
図14(a)に示す支持部材の正面の縦断面図であり、
図14(e)は、
図14(a)に示す支持部材の側面図であり、
図14(f)は、
図14(e)に示す支持部材を前方から見た平面図であり、
図14(g)は、
図14(e)におけるI-I線に沿う横断面図であり、
図14(h)は、
図14(e)に示す支持部材の側面の縦断面図である。
【
図15】
図15(a)は、本発明の第2実施形態に係る押棒の正面図であり、
図15(b)は、
図15(a)に示す押棒を前方から見た平面図であり、
図15(c)は、
図15(a)に示す押棒の正面の縦断面図である。
【
図16】
図16は、本発明の第2実施形態に係る化粧料繰出容器の製造方法について説明する図であり、本体側組立体と駆動体側組立体とを連結した後、容器本体の前端開口側から化粧料を充填する製造手順について示す。
【
図17】
図17(a)は、本発明の第3実施形態に係る化粧料繰出容器の押棒が後退限に位置している状態を示す正面の縦断面図であり、
図17(b)は、
図17(a)におけるQ部の拡大図である。
【
図18】
図18は、本発明の第3実施形態に係る化粧料繰出容器の製造方法について説明する図であり、容器本体の後端開口側から化粧料を充填した後、本体側組立体と駆動体側組立体とを連結する製造手順について示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1~
図10を参照して、本発明の第1実施形態に係る化粧料繰出容器1について説明する。
図1及び
図2に示すように、化粧料繰出容器1は、容器本体10と駆動体30との相対回転によって、繰出機構8が働き、押棒40と支持部材20とが進退することで容器本体10内に充填された化粧料3が出没する構成とされる。化粧料繰出容器1は、化粧料3を使い切ると廃棄される使い捨ての製品である。
【0014】
説明の便宜上、化粧料3が出没する容器本体10の先端側を化粧料繰出容器1の前側とし、駆動体30の底部37側を化粧料繰出容器1の後側として、化粧料繰出容器1の前後方向を規定する。また、繰出機構8を構成する押棒40が移動する方向、すなわち容器本体10の中心軸に平行な方向を軸方向とし、軸方向に直交する方向を径方向として、以下、説明する。
【0015】
図1及び
図2を参照して、化粧料繰出容器1の全体構成の概要について説明する。化粧料繰出容器1は、化粧料3が収容される容器本体10と、容器本体10内で化粧料3を支持する支持部材20と、容器本体10の後端部に、容器本体10に対して同軸にかつ相対回転可能に設けられる駆動体30と、容器本体10と駆動体30との相対回転により、化粧料3を進退させる繰出機構8と、容器本体10の前端開口11aを閉塞して化粧料3を保護するキャップ2(
図1参照)と、を備える。
【0016】
繰出機構8は、内周に雌ねじ53(
図7参照)が形成される雌ねじ部材50と、雌ねじ部材50の雌ねじ53に螺合される雄ねじ41a(
図8参照)が外周に形成される押棒40と、を有する。
【0017】
図3~
図8を参照して、化粧料繰出容器1を構成する各部品について詳しく説明する。
【0018】
図3に示すように、容器本体10は、略円筒状に形成され、化粧料3を収容する先端収容孔17aを有する先筒部11と、駆動体30に回動可能に連結される筒体部15と、先筒部11と筒体部15の間に設けられる袴部13と、が一体的に形成された単一部材からなる。容器本体10は、樹脂モールド成形により一体に形成してもよいし、複数の樹脂部材や金属部材を接着材により一体に形成してもよい。
【0019】
筒体部15は、先筒部11及び袴部13よりも外径が大きく、筒体部15と袴部13との間には段部13cが形成される。袴部13の外周には、リブ13aと嵌合凸部13bとが設けられる。段部13c、リブ13a及び嵌合凸部13bは、容器本体10に対するキャップ2の取り付けに用いられる。
【0020】
図4に示すように、キャップ2は、一端が開口された有底円筒状に形成される。
図1に示すように、キャップ2は、容器本体10に取り付けられて容器本体10の前端開口11aを閉塞する。
図4に示すように、キャップ2には、その開口端の内周に、容器本体10のリブ13a(
図3参照)と係合するローレット2aと、容器本体10の嵌合凸部13b(
図3参照)に嵌合する環状の嵌合凹部2bと、が設けられる。
【0021】
図3及び
図4に示すように、袴部13のリブ13aは、キャップ2が容器本体10に取り付けられたときに、キャップ2のローレット2aと係合し、キャップ2を周方向に係止する。袴部13の嵌合凸部13bは、キャップ2が容器本体10に取り付けられたときに、キャップ2の嵌合凹部2bと嵌合し、キャップ2を軸方向に係止する。段部13cは、キャップ2が容器本体10に取り付けられたときに、キャップ2の後端の開口縁部に接して軸方向におけるキャップ2の位置を規定する。
【0022】
キャップ2は、容器本体10の筒体部15の外径と略同径に形成される。これにより、キャップ2が容器本体10に取り付けられると、容器本体10の外周面とキャップ2の外周面とが略面一となる(
図1参照)。
【0023】
図3に示すように、容器本体10は、先端側の前端開口11a及び基端側の後端開口15aを連通するように、容器本体10を軸方向に貫通する貫通孔17を有する。図示するように、貫通孔17は、容器本体10の先端側(前端側)から基端側(後端側)に向かって順番に、先端収容孔17a、摺動孔17b、基端孔17c、取付孔17iを有する。先端収容孔17a、摺動孔17b、基端孔17c、取付孔17iは、それぞれ同心の円形状断面を有する開口である。
【0024】
先端収容孔17a、摺動孔17b及び基端孔17cには、支持部材20(
図5参照)が収容される。
図1及び
図2に示すように、化粧料3を支持する支持部材20は、押棒40の進退に伴って容器本体10の貫通孔17内を軸方向に移動する。
【0025】
図5に示すように、支持部材20は、化粧料3を支持する支持筒22と、支持筒22から軸方向に延設される棒軸部25と、棒軸部25の後端部に設けられる係合部27と、を有する。
図1に示すように、化粧料繰出容器1が未使用の状態であるとき、支持筒22及び化粧料3は先端収容孔17aに配置され、棒軸部25は摺動孔17bに配置され、棒軸部25の後端部に設けられる係合部27は、基端孔17cに配置される。
【0026】
図5に示すように、支持筒22は、有底円筒状に形成され、底部24によって化粧料3を後側から支持する。棒軸部25は、支持筒22と同心の円筒状に形成され、支持筒22の底部24に結合される。係合部27は、棒軸部25から軸方向に延在する円筒状の部位であり、側面にベンド片27dが設けられる。支持筒22の外径DTは、棒軸部25の外径DR1よりも大きい(DT>DR1)。支持筒22の底部24には、棒軸部25の内部に連通する開口部が形成される。
【0027】
このように、本実施形態の支持部材20には、先端側の前端開口21a及び基端側の後端開口21bを連通するように、支持筒22、棒軸部25及び係合部27を軸方向に貫通する貫通孔21が設けられる。これにより、前端開口21a及び後端開口21bのいずれからでも化粧料3の充填が可能となる。化粧料3の充填方法の詳しい説明については後述する。
【0028】
化粧料3は、支持筒22及び棒軸部25の内側の面に固着され、化粧料3の外側の面が支持部材20によって支持された状態が保たれる。支持部材20の後端面(係合部27の後端面)は、押棒40の鍔部47d(
図2(c)、
図8参照)が当接する当接面26である。後述するように、当接面26が押棒40によって押され、支持部材20が押棒40とともに前進することで、支持部材20に支持される化粧料3が容器本体10の前端開口11aから繰り出される(
図2(a)参照)。
【0029】
支持筒22の外周面には、径方向外方に突出する突部23が周方向に等間隔で複数設けられる。各突部23の突出量は、各突部23が先端収容孔17aの内周面に当接するように設定される。つまり、支持筒22は、突部23が先端収容孔17aの内周面に当接した状態で、先端収容孔17a内を軸方向に摺動する。
【0030】
棒軸部25は、その外周面に、軸方向に延在するリブ25aが係合突部として設けられる。リブ25aは、後述する摺動孔17bの凹凸部18の谷部(
図3参照)に嵌入される(
図2(b)参照)。つまり、棒軸部25は、
図1及び
図2に示すように、容器本体10に対して相対回転不能に、摺動孔17b内に配置される。これにより、容器本体10に対する支持部材20の周方向の移動、すなわち相対回転が不能とされる。
【0031】
図5に示すように、円筒状の係合部27の側面には、略U字状にスリット27aが形成され、このスリット27aの内側の部分がベンド片27dとして形成される。ベンド片27dは、支持部材20の後端側(係合部27の後端側)が固定端とされ、先端が自由端とされる。ベンド片27dの先端の外周面には径方向外方に突出する突部27bが形成される。
【0032】
突部27bは、その外周面が棒軸部25の外周面よりも径方向外方に位置する。ここで、係合部27の径方向の最大外形寸法を開閉部外形寸法DB1(
図5(a)参照)と定義する。本実施形態では、開閉部外形寸法DB1は、ベンド片27dの突部27bと、係合部27における突部27bとは反対の位置、すなわち支持部材20の中心軸回りに突部27bから180°ずれた位置における係合部27の外周面との間の寸法である。開閉部外形寸法DB1は、棒軸部25の外径DR1よりも大きく、支持筒22の外径DTよりも小さい(DR1<DB1<DT)。
【0033】
ベンド片27dは、径方向内方に閉じた閉状態(
図2参照)と、径方向外方に開いた開状態(
図1、
図5参照)との間で弾性変形する弾性部材である。ベンド片27dは、弾性変形により開閉可能な開閉部として機能し、押棒40の先端に連結される部分である。ベンド片27dは、径方向外方から押圧力が作用すると、その先端が支持部材20の中心軸側に移動するように弾性変形する。
【0034】
次に、支持部材20が収容される貫通孔17の各部の構成について詳しく説明する。
図3に示すように、先端収容孔17aは支持筒22を収容する孔であり、その内径DL1は、支持筒22の外径DT(
図5参照)よりも僅かに大きい(DL1>DT)。このため、先端収容孔17aの内周面と支持筒22の外周面との間には僅かな隙間が形成される。なお、先端収容孔17aの内周面には、上述したように、支持筒22の外周面に設けられた突部23が当接する。
【0035】
図3に示すように、先端収容孔17aの内径DL1は、先端収容孔17aに連通して設けられる摺動孔17bの内径DS1よりも大きい(DL1>DS1)。このため、先端収容孔17aと摺動孔17bとの間に段部17dが形成される。支持筒22の外径DT(
図5参照)は、摺動孔17bの内径DS1よりも大きい(DS1<DT)。このため、摺動孔17bの開口縁部である段部17dは、支持筒22の底部24に当接することにより、支持筒22が容器本体10の基端側に移動することを規制する規制部として機能する。つまり、支持部材20の後退限は、支持筒22の底部24が段部17dに当接しているときの支持部材20の位置である。
【0036】
基端孔17cは、摺動孔17bに連通して設けられる。基端孔17cは、ベンド片27dを開状態とするための孔であり、摺動孔17bは、ベンド片27dを閉状態とするための孔である。
【0037】
基端孔17cの基端腔部17gの内径DL2aは、摺動孔17bの内径DS1よりも大きい(DL2a>DS1)。基端腔部17gと摺動孔17bとの間には、基端腔部17gから摺動孔17bに向かって徐々に径が小さくなるテーパ孔17fが設けられる。テーパ孔17fのテーパ面は、前端で摺動孔17bの内周面に連続し、後端で基端腔部17gの内周面に連続している。
【0038】
基端孔17cの基端腔部17gの内径DL2aは、開閉部外形寸法DB1(
図5参照)よりも大きい(DL2a>DB1)。ベンド片27dは、基端孔17cに位置しているとき(
図1参照)には、閉状態のときに比べて径方向外方に開いた開状態となる。このため、化粧料繰出容器1を組み立てる際に押棒40の頭部47aを支持部材20の後端開口21bから挿入するとき、ベンド片27dによって頭部47aの前方移動が妨げられることがなく、頭部47aをベンド片27dの先端よりも前方に配置させることができる(
図1参照)。
【0039】
摺動孔17bの内周面には、ローレット加工により軸方向に延在する凹凸部(平目ローレット)18が形成される。凹凸部18は、山部と谷部とが周方向に交互に配置される波形状の断面を有し、摺動孔17bの全体に亘って連続して形成される。
【0040】
摺動孔17bの内径DS1は、支持部材20の棒軸部25の外径DR1よりも僅かに大きい(DS1>DR1)。本実施形態において、摺動孔17bの内径DS1とは、摺動孔17bにおいて、凹凸部18の複数の山部の頂部を結ぶ仮想の円形状断面の径のことを指す。凹凸部18の谷部(溝部)には上述した棒軸部25のリブ25aが嵌入される(
図2(b)参照)。したがって、棒軸部25は、摺動孔17b内を軸方向に摺動する。
【0041】
摺動孔17bの内径DS1は、開閉部外形寸法DB1(
図5参照)よりも小さい(DS1<DB1)。このため、
図2に示すように、摺動孔17bにベンド片27dが位置しているときには、ベンド片27dは、突部27bが摺動孔17bにおける凹凸部18の山部の頂部によって内側に押圧され、弾性変形して(撓んで)径方向内方に閉じた閉状態となる。このため、化粧料繰出容器1を使用する際、押棒40の先端と支持部材20の基端との連結部99を強固に連結した状態(連結解除が不能な状態)で進退させることができる(
図2参照)。
【0042】
図5に示すように、支持筒22の底部24の後端面からベンド片27dの先端までの寸法LR1、すなわち、棒軸部25の軸方向の長さは、支持部材20の後退限(
図1参照)から前進限(
図2参照)までのストローク(移動量)SP1以上の長さに設定される。これにより、
図2に示すように、支持部材20が前進限に位置しているときに、摺動孔17b内に係合部27を配置させることができるので、押棒40の先端と支持部材20の基端との連結部99の連結状態を維持することができる。
【0043】
次に、基端孔17cの後方に設けられる取付孔17i、及び、取付孔17iに取り付けられる駆動体30及び雌ねじ部材50について説明する。
図3に示すように、取付孔17iの内周面には、ローレット加工により軸方向に延在する凹凸部(平目ローレット)17hが形成される。凹凸部17hは、山部と谷部とが周方向に交互に配置される波形状の断面を有し、取付孔17iの前部に形成される。取付孔17iの後端開口15aの近傍の内周には、環状の嵌合凹部17jが設けられる。凹凸部17hは、雌ねじ部材50の取り付けに用いられ、嵌合凹部17jは駆動体30の取り付けに用いられる。
【0044】
取付孔17iの内径DL3は、基端腔部17gの内径DL2aよりも大きい(DL3>DL2a)。このため、取付孔17iと基端腔部17gとの間に段部17eが形成される。
【0045】
図6に示すように、駆動体30は、前後方向に延在する円形状の開口部30aを有し、前端が開口され、後端が底部37により閉塞された、有底の略円筒状に形成される。駆動体30は、容器本体10の取付孔17iに嵌入される嵌入部31と、嵌入部31に連続して形成され使用者によって摘んで用いられる摘み部32と、を有する。
【0046】
嵌入部31は、略円筒状に形成される。嵌入部31の基端近傍(摘み部32の付近)の外周には、容器本体10の嵌合凹部17j(
図3参照)に嵌合する嵌合凸部34が環状に形成される。嵌合凸部34の前方における嵌入部31の外周には、環状のOリング溝33が形成される。このOリング溝33にOリング4(
図1、
図2参照)を取り付けることで、容器本体10と駆動体30との相対回転に適度な抵抗を付与することができ、使用者による操作感を向上できる。
【0047】
摘み部32の外径は、嵌入部31の外径よりも大きい。摘み部32は、容器本体10の外径と略同径に形成される。これにより、駆動体30が容器本体10に組み付けられると、容器本体10の外周面と摘み部32の外周面とが略面一となる(
図1、
図2参照)。
【0048】
駆動体30の開口部30aの内周面には、複数の溝35が設けられる。溝35は、駆動体30の底部37から前端開口39まで軸方向に延在する。この溝35に、後述する押棒40の大径部43のリブ43a(
図8参照)が嵌入されることにより、駆動体30と押棒40との相対回転が不能となる(
図1(c)参照)。本実施形態では、溝35は、4つ設けられる。
【0049】
図7に示すように、雌ねじ部材50は、円柱形状の大径部50aと、大径部50aと同心に設けられる円柱形状の小径部50bと、を有する。大径部50aの外径は、小径部50bの外径よりも大きいので、大径部50aと小径部50bとの間には段部54が形成される。大径部50aは、容器本体10の取付孔17i(
図3参照)に挿入され、小径部50bは、駆動体30の開口部30a(
図6参照)に挿入される。
【0050】
図1に示すように、雌ねじ部材50は、雌ねじ部材50の前端面51aが、容器本体10の段部17eに当接し、雌ねじ部材50の段部54が駆動体30の前端面に当接した状態で、容器本体10の取付孔17i内に収容される。つまり、雌ねじ部材50は、容器本体10の段部17eと駆動体30の前端面とによって挟持され、軸方向の移動が規制される。
【0051】
図7に示すように、雌ねじ部材50の大径部50aは、その外周面に、軸方向に延在するリブ52が係合突部として設けられる。リブ52は、取付孔17iの凹凸部17h(
図3参照)の谷部(溝部)に嵌入される。これにより、容器本体10に対する雌ねじ部材50の周方向の移動、すなわち相対回転が不能とされる(
図1(b)参照)。よって、使用者が、駆動体30に対して容器本体10を相対回転させると、雌ねじ部材50は容器本体10と同期回転する。
【0052】
雌ねじ部材50には、軸方向に貫通する貫通孔が設けられ、この貫通孔の内周面に雌ねじ53が形成される。雌ねじ53は、押棒40の雄ねじ41a(
図8参照)のリードと同一のリードに形成される。
【0053】
図8に示すように、押棒40は、略円柱状に形成される。押棒40は、容器本体10及び駆動体30の内側に収容される(
図1参照)。押棒40は、容器本体10及び駆動体30と同軸に設けられる棒軸41と、棒軸41の先端に設けられる係合部47と、棒軸41の基端に設けられる大径部43と、大径部43から軸方向に凹設される腔部44と、を有する。
【0054】
棒軸41の外周には、雌ねじ部材50の雌ねじ53(
図7参照)に螺合する雄ねじ41aが形成される。容器本体10の先端収容孔17aに収容された化粧料3(
図1及び
図2参照)は、微量ずつ押し出されて使用される。よって、雄ねじ41aのピッチは、押棒40が微動可能なピッチに設定される。
【0055】
大径部43は、円板状に形成され、その外径は棒軸41の外径よりも大きい。大径部43は、雌ねじ部材50の後端面51bに当接する前端面43bと、駆動体30の底部37に当接する後端面43cと、を有する。大径部43は、駆動体30内を軸方向に移動する(
図1、
図2参照)。
【0056】
大径部43の外周には、駆動体30の溝35(
図6(c)参照)と摺動可能に係合する複数のリブ43aが形成される。上述したように、リブ43aが駆動体30の溝35と係合することで、押棒40と駆動体30との相対回転が不能となる(
図1(c)参照)。よって、容器本体10に対して駆動体30を相対回転させると、押棒40は駆動体30と同期回転する。
【0057】
押棒40の基端に設けられる大径部43は、繰出機構8によって進退する押棒40の前進限及び後退限を規定する規定部である。大径部43は、その後端面43cが駆動体30の底部37に当接することにより、押棒40の後退限を規定する(
図1参照)。大径部43は、その前端面43bが雌ねじ部材50の後端面51bに当接することにより、押棒40の前進限を規定する(
図2参照)。
【0058】
押棒40の先端に設けられる係合部47は、支持部材20の後端に設けられる係合部27(
図5参照)に連結される。本実施形態では、支持部材20の係合部27と、押棒40の係合部47とによって、連結部99が構成される(
図1及び
図2参照)。
【0059】
係合部47は、円柱形状の円柱部47cと、円柱部47cの前端に設けられる円錐台形状の頭部47aと、円柱部47cの後端に設けられる円環状の鍔部47dと、を有する。円柱部47cの外径は、棒軸41の外径よりも小さく、かつ、頭部47aの外径よりも小さい。頭部47aの底面の外径は、円柱部47cの外径よりも大きいので、頭部47aの底面が段部47bとされる。
【0060】
鍔部47dは、円柱部47cの後端において、円柱部47cから径方向外方に突出するように設けられる。押棒40の先端には、ベンド片27dが嵌着される凹部47pが形成される。円柱部47cの外周面が、凹部47pの底面に相当する。段部47b及び段部47bに対向する鍔部47dの前面が、凹部47pの一対の側面に相当する。
【0061】
図1及び
図2に示すように、支持部材20のベンド片27dは、押棒40の係合部47の凹部47pの底面と、径方向に対向して配置される。後述するように、押棒40が前進する際、鍔部47dが当接面26を押すことで、支持部材20が押棒40とともに前進する。また、押棒40が後退する際、段部47bがベンド片27dを引っ張ることで、支持部材20が押棒40とともに後退する。
【0062】
図1、
図3~
図9を参照して、化粧料繰出容器1の組み立て手順について説明する。
図9に示すように、化粧料繰出容器1は、本体側組立体29を形成する本体側組立工程と、化粧料3を充填する化粧料充填工程と、駆動体側組立体59を形成する駆動体側組立工程と、本体側組立体29と駆動体側組立体59とを連結する連結工程と、を有する。
【0063】
図3、
図5及び
図9を参照して、本体側組立工程について説明する。本体側組立工程では、冶具などを用いて、容器本体10の前端開口11aから貫通孔17内に支持部材20を挿入する。ベンド片27dは、先端収容孔17aに位置しているときには開状態であるが、摺動孔17bに挿入されると閉状態になる。
【0064】
支持筒22の底部24が容器本体10の貫通孔17の段部17dに当接するまで支持部材20を挿入すると、ベンド片27dが基端孔17cに配置される。ベンド片27dは、基端孔17cに挿入されると、摺動孔17bに挿入されているときに比べて径方向外方に開いた開状態となる。
【0065】
支持筒22の底部24が、貫通孔17の段部17dに当接することにより、段部17dにより支持筒22の後方への移動が規制される。このため、支持部材20に対して後方に向かう外力を加えたとしても、支持部材20が容器本体10の後端開口15aから脱落することが防止される。
【0066】
図9に示すように、容器本体10の前端部に仮キャップ70を取り付け、容器本体10の前側が鉛直下方を向くように配置する。
【0067】
容器本体10の前側を鉛直下方に向けたとき、支持部材20のベンド片27dがテーパ孔17fに引っ掛かる。また、支持筒22の外周面に設けられた複数の突部23(
図5参照)は、先端収容孔17aの内周面に圧接されている。このため、容器本体10の前側を鉛直下方に向けた場合に、支持部材20が自重により前方(鉛直下方)に移動してしまうことが防止される。
【0068】
仮キャップ70は、有底円筒状に形成され、底部71と、底部71の外周縁から立ち上がる筒部72と、を有する。仮キャップ70が容器本体10の前端部に取り付けられると、前端開口11aが塞がれる。底部71の内側の面は、前端開口11aの開口面に平行な平面状に形成される。
【0069】
以上のように、容器本体10に支持部材20及び仮キャップ70を取り付けることで、本体側組立体29が完成し、本体側組立体29の前側を鉛直下方に向くように位置決めすることで本体側組立工程が完了する。本体側組立体29には、繰出機構8を構成する押棒40及び雌ねじ部材50が設けられていない。このため、支持部材20の後端開口21bが開放されており、次の化粧料充填工程において、充填ノズル60を支持部材20の後端開口21bから挿入することができる。
【0070】
化粧料充填工程では、以下の手順で化粧料3を先端収容孔17aに充填する。まず、本体側組立体29を構成する容器本体10の後端開口15aから充填ノズル60を貫通孔17内に挿入し、さらに支持部材20の後端開口21bから充填ノズル60を貫通孔21内に挿入する。
【0071】
充填ノズル60の先端の開口部から加熱されて溶融した液状の化粧料3を所定量流し込む。なお、液状の化粧料3を流し込む作業では、充填ノズル60の先端の位置を適宜調整してもよい。
【0072】
化粧料3を所定量充填させた後、化粧料3を冷却固化させる。化粧料3は、固化することにより棒状の化粧料芯となる。化粧料3は、支持筒22の内側の面及び棒軸部25の内側の面に固着される。支持筒22だけでなく、棒軸部25にも化粧料3を付着させることで、支持部材20に対する化粧料3の付着力を向上できる。
【0073】
このような方法で容器本体10内に充填される化粧料3は、ゲル状などの軟質性のものが多い。このため、使用者が化粧料繰出容器1の使用時に、前端開口11aから化粧料3を出し過ぎると、化粧料芯が折れてしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、押棒40の雄ねじ41aのピッチを、押棒40が微動可能なピッチに設定することで、使用者が化粧料繰出容器1の使用時に、前端開口11aから化粧料3を出し過ぎてしまうことを防止する。
【0074】
上述したように、支持筒22の外周面と先端収容孔17aの内周面との間には僅かな隙間が形成されている。このため、化粧料3を充填する際、支持筒22と先端収容孔17aの内周面との間の隙間を通じて、空気を後方(鉛直上方)へ逃がすことができる。その結果、溶融した液状の化粧料3をスムーズに先端収容孔17aに流し込むことができ、作業時間の短縮を図ることができる。また、空気が化粧料内部に残ることで発生する鬆(空洞)の形成を防止することができる。
【0075】
図6~
図9を参照して、駆動体側組立工程について説明する。駆動体側組立工程では、押棒40を後端側から駆動体30の開口部30aに挿入し、大径部43の後端面43cを駆動体30の底部37に当接させる。なお、押棒40を駆動体30に挿入する際、大径部43のリブ43aと駆動体30の溝35とを係合させる。
【0076】
雌ねじ部材50の後端側から雌ねじ部材50の貫通孔に押棒40の先端を通し、雌ねじ53と雄ねじ41aとを螺合する。雌ねじ部材50の段部54が駆動体30の前端面に当接するまで雌ねじ部材50を押棒40に対して相対回転させる。雌ねじ部材50の段部54が駆動体30の前端面に当接した状態では、
図9に示すように、雌ねじ部材50の貫通孔から押棒40の係合部47が前方に突出した状態となる。
【0077】
Oリング4を駆動体30のOリング溝33に取り付ける。なお、Oリング4は、押棒40を駆動体30の内側に挿入する前にOリング溝33に取り付けてもよいし、押棒40を駆動体30の内側に挿入した後にOリング溝33に取り付けてもよい。
【0078】
以上のように、駆動体30に押棒40、雌ねじ部材50及びOリング4を取り付けることで、駆動体側組立体59が完成する。
【0079】
図1及び
図9を参照して、連結工程について説明する。連結工程では、本体側組立体29を構成する容器本体10の後端開口15aから取付孔17i内に駆動体側組立体59の前端部を挿入し、雌ねじ部材50の前端面51aを容器本体10の段部17eに当接させる。なお、駆動体側組立体59の前部を取付孔17iに挿入する際、雌ねじ部材50のリブ52(
図7参照)と凹凸部17hの谷部(溝部)とを係合させる。
【0080】
連結工程では、本体側組立体29を構成する容器本体10の後端開口15aから押棒40の係合部47、雌ねじ部材50及び駆動体30の先端を通し、駆動体30の嵌入部31を容器本体10の取付孔17iに挿入する。このとき、押棒40の係合部47は、支持部材20の係合部27の後端開口21bから貫通孔21に挿入される。なお、ベンド片27dは基端孔17cにおいて開状態となっているため、押棒40の係合部47をスムーズに支持部材20の貫通孔21に挿入することができる。
【0081】
雌ねじ部材50の前端面51aを容器本体10の段部17eに当接させるとともに、駆動体30の嵌合凸部34と容器本体10の嵌合凹部17jとを嵌合させる。これにより、
図1に示すように、本体側組立体29と駆動体側組立体59とが連結される。
【0082】
最後に、仮キャップ70を容器本体10の前端部から取り外し、キャップ2を容器本体10に取り付けることで、化粧料繰出容器1が完成する(
図1参照)。
【0083】
仮キャップ70の底部71が、前端開口11aの開口面に平行な平面状に形成されているので、仮キャップ70を容器本体10から取り外した後の、化粧料3の先端面をきれいな仕上がりの平面にすることができ、外観性を向上できる。仮キャップ70の底部71に、凹部や凸部によって文字や模様を形成しておけば、化粧料3の先端面に底部71の形状に対応した凸状や凹状の文字や模様を形成することができる。
【0084】
以上のとおり、化粧料繰出容器1の製造方法の一例について説明したが、化粧料繰出容器1の製造手順は、上述の手順に限定されない。例えば、
図10に示すように、本体側組立体29と駆動体側組立体59とを連結する連結工程を完了させてから化粧料充填工程を行ってもよい。
【0085】
この場合、容器本体10の前端開口11aから充填ノズル60を貫通孔17内に挿入し、液状の化粧料3を所定量流し込む。このとき、押棒40の頭部47aが支持部材20の貫通孔21内に配置され、貫通孔21の後端側を塞いでいるので、液状の化粧料3が支持部材20の後端開口21bから流れ落ちてしまうことが防止される。このように、押棒40を貫通孔21の閉止部材として利用することができるので、専用の閉止部材を設ける必要がない。
【0086】
化粧料3を所定量充填させた後、化粧料3を冷却固化させ、キャップ2を容器本体10に取り付けることで、化粧料繰出容器1が完成する(
図1参照)。
【0087】
次に、
図1及び
図2を参照して、化粧料繰出容器1が使用される際の化粧料繰出容器1の動作について説明する。
図1は、化粧料繰出容器1の使用が開始される前の状態であり、押棒40が後退限に位置している化粧料繰出容器1を示している。
図2は、押棒40が前進限に位置している化粧料繰出容器1を示している。
【0088】
図1に示すように、押棒40が後退限に位置している状態では、押棒40の先端と支持部材20の基端との連結部99が、連結初期部位に配置される。上述したように、押棒40の後退限とは、押棒40の大径部43が駆動体30の底部37に当接し、押棒40の後退が規制されているときの押棒40の位置のことである。
【0089】
連結部99が連結初期部位に位置しているとき、ベンド片27dの先端が貫通孔17における基端孔17c内に配置され、ベンド片27dは開状態となっている。つまり、使用開始前状態(
図1参照)において、支持部材20のベンド片27dの先端が、押棒40の係合部47の凹部47pに入り込んでいない。
【0090】
使用者は、キャップ2を容器本体10から取り外し、化粧料3を繰り出し可能な状態にする。次いで、使用者が、容器本体10に対して駆動体30を一方に回転(正回転)させると、駆動体30とともに押棒40が雌ねじ部材50に対して一方に回転する。雌ねじ53と雄ねじ41aとが螺合しているため、押棒40が雌ねじ部材50に対して一方に回転すると、押棒40が容器本体10及び駆動体30に対して前進する。
【0091】
押棒40が前進することで、支持部材20の当接面26が押棒40の鍔部47dにより押される。これにより、支持部材20が押棒40とともに容器本体10の貫通孔17内で前進し、容器本体10に収容されている化粧料3が前端開口11aから押し出される。なお、支持部材20のリブ25aが貫通孔17の凹凸部18の谷部(溝部)に嵌入されているので、支持部材20は、容器本体10に対して回転することなく前進する。つまり、押棒40は、支持部材20に対して回転しながら支持部材20を前方に押す。
【0092】
押棒40が前進し、支持部材20が押棒40に押されると、ベンド片27dがテーパ孔17fのテーパ面に接触することよって徐々に内側に向かって撓む。さらに、貫通孔17の摺動孔17b内にベンド片27dが挿入されると、ベンド片27dが摺動孔17bの内周面に接触することによって撓み、閉状態となる。つまり、摺動孔17bの内周面から内側に向かう押圧力がベンド片27dの先端側に作用することで、ベンド片27dは、基端側を支点として先端側が内側に弾性変形し、閉状態になる。これにより、ベンド片27dは、内側に突出する凸部として、係合部47の凹部47pに嵌着される。
【0093】
その結果、支持部材20の基端に設けられるベンド片27dと、押棒40の先端に設けられる係合部47とが摺動孔17b内で強固に連結される。使用者は、所定量だけ化粧料3を繰り出し、化粧料3を使用する。化粧料3の使用を終えると、使用者は、繰り出された化粧料3を繰り戻す。化粧料3の繰り戻し方法は、次のとおりである。
【0094】
使用者が、容器本体10に対して駆動体30を他方に回転(逆回転)させると、駆動体30とともに押棒40が雌ねじ部材50に対して他方に回転する。押棒40が雌ねじ部材50に対して他方に回転すると、押棒40が容器本体10に対して後退する。押棒40が後退することで、ベンド片27dの先端が押棒40の係合部47の段部47bにより引っ張られる。これにより、支持部材20が押棒40とともに容器本体10の貫通孔17内で後退し、容器本体10から外側に突出していた化粧料3が貫通孔17内に戻される。使用者は、キャップ2を容器本体10に取り付け、化粧料繰出容器1を保管する。
【0095】
このように、容器本体10と駆動体30との相対回転によって、支持部材20の係合部27と押棒40の係合部47とは、係合した状態で摺動孔17bを進退する。
【0096】
化粧料繰出容器1を使い続け、化粧料3が減ることにより、化粧料繰出容器1は使用限界状態となる。以下、使用限界状態について説明する。使用者が、駆動体30を正回転させて押棒40を前進させ続けると、
図2に示すように、雌ねじ部材50の後端面51bに押棒40の大径部43が当接し、押棒40の前方への移動が規制される。押棒40が前進限に位置している状態では、化粧料3の繰り出し量(突出量)が最大となる。上述したように、押棒40の前進限とは、押棒40の大径部43が雌ねじ部材50に当接し、押棒40の前進が規制されているときの押棒40の位置のことである。押棒40が前進限に位置している状態で化粧料3を使用することができないほど、化粧料3が減ると、化粧料繰出容器1は使用限界状態となり、廃棄される。
【0097】
本実施形態では、前進限を規定する規定部としての大径部43が、雌ねじ部材50の後端面に全周(360°の範囲)で当接する構成である。これにより、前進限で回転力による強い負荷がかかっても、大径部43が雌ねじ部材50に当接することにより、変形したり、折れたりすることがなく、確実に前進限が規定され、化粧料繰出容器1の破損を防止することができる。
【0098】
上述したように、支持筒22からベンド片27dまでの長さLR1は、支持部材20の後退限から前進限までのストロークSP1以上の長さに設定されている。このため、
図2に示すように、押棒40が前進限に位置しているときには、押棒40の先端と支持部材20の基端との連結部99は摺動孔17b内に配置される。つまり、ベンド片27dの先端(自由端)が摺動孔17b内に配置され、摺動孔17bの内周面により拘束されているので、連結部99の連結解除が防止された強固な連結状態が維持される。
【0099】
押棒40が前進限に位置している状態では、支持部材20も前進限に位置している状態となる。押棒40及び支持部材20が前進限に位置すると、化粧料3を繰り出すことができなくなるので、化粧料繰出容器1が使用限界状態に達していることを使用者に認識させることができる。
【0100】
本第1実施形態では、押棒40の鍔部47dは、使用開始前状態(
図1参照)から、最大に押棒40が繰り出された使用限界状態(
図2参照)に亘って、支持部材20の当接面26(
図5参照)に当接する。このため、押棒40の後退限から前進限までのストローク(移動量)は、支持部材20の後退限から前進限までのストローク(移動量)と等しくなる。
【0101】
上述した第1実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0102】
(1)本実施形態では、容器本体10と駆動体30との相対回転によって進退する部材が、化粧料3を支持する支持部材20と、前進限及び後退限を規定する押棒40と、によって構成される。このため、化粧料繰出容器1の製造過程において、前進限を規定する大径部43を雌ねじ部材50に通過させる必要がない。このため、化粧料繰出容器1の組み立てを完成させ、繰り出し、繰り戻しの動作の確認を行ってから化粧料3を充填するといった工程が不要になる。その結果、化粧料繰出容器1の製造コストを低減することができる。
【0103】
(2)本実施形態に係る化粧料繰出容器1では、支持部材20には押棒40に連結するための係合部(第1係合部)27が設けられ、押棒40には支持部材20に連結するための係合部(第2係合部)47が設けられている。このため、支持部材20と押棒40とを係合させた状態で摺動孔17b内を進退させることにより、化粧料3を前端開口11aから進退させることができる。
【0104】
(3)化粧料3を支持する支持筒(支持部)22の外径DTは、摺動孔17bの内径DS1よりも大きい。これにより、組み立て作業の際、支持筒22の底部24が段部17dに当接し、容器本体10の後端開口15aから支持部材20が脱落することが防止される。
【0105】
(4)支持部材20の棒軸部25には摺動孔17bの凹凸部18の谷部(溝部)に嵌合するリブ25aが設けられ、棒軸部25が容器本体10に対して相対回転不能に摺動孔17b内に配置される。ここで、リブ25aが設けられていない場合、押棒40の摩擦による回転力が支持部材20に伝達され、容器本体10に対して支持部材20及び化粧料3が回転する。化粧料3が容器本体10内で捻れながら進退することになるので、化粧料3が折れてしまうおそれがある。これに対して、本実施形態では、リブ25aと凹凸部18により、化粧料3が容器本体10に対して相対回転することが防止されているので、化粧料3の芯折れを防止できる。
【0106】
(5)支持部材20には、支持筒22及び棒軸部25を軸方向に貫通する貫通孔21が設けられる。これにより、支持部材20の後端開口21b及び前端開口21aのいずれからでも充填ノズル60を挿入し、化粧料3の充填作業を行うことができる。本実施形態によれば、製造設備や製造スケジュール等に応じて化粧料3の充填方法を選択することができるので、化粧料繰出容器1の組み立て作業の自由度を向上することができる。
【0107】
(6)支持部材20の後端開口21b側から化粧料3を充填する場合(
図9参照)、本実施形態では、容器本体10の後端開口15aから充填ノズル60を挿入し、化粧料3を充填した後、本体側組立体29と駆動体側組立体59とを連結することで、駆動体側組立体59によって容器本体10の後端開口15a及び支持部材20の後端開口21bを閉塞する。このため、容器後端の開口から化粧料を充填した後にシールや尾栓等の閉塞部材により容器後端の開口を閉塞させる場合(例えば、特開2003-61744号公報に記載の技術)のように、専用の閉塞部材を設ける必要がない。また、その作業で発生する手間も省くことができる。さらに、専用の閉塞部材を設ける場合に比べて、外観性を向上することもできる。
【0108】
(7)化粧料繰出容器1の外形を形成するキャップ2、筒体部15及び摘み部32の外径がそれぞれ同程度に形成されている。このため、キャップ2、筒体部15及び摘み部32の外周面が略面一となり、細径の化粧料繰出容器1とすることができる。
【0109】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態に係る化粧料繰出容器101について説明する。なお、図中、第1実施形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。
図11及び
図12に示すように、第1実施形態に係る化粧料繰出容器1との主な相違点は、支持部材120、容器本体110及び押棒140の構成であり、特に、支持部材120と押棒140の連結部199の態様が異なる。なお、第2実施形態に係る支持部材120には、支持筒122及び棒軸部125を軸方向に貫通する貫通孔が設けられていないため、化粧料103は、容器本体110の前端開口11aからの充填に限られる(
図16参照)。以下、適宜、第1実施形態に係る化粧料繰出容器1の構成と比較しながら、第2実施形態に係る化粧料繰出容器101の構成について詳しく説明する。
【0110】
まず、第2実施形態に係る容器本体110の貫通孔117について説明する。
図13に示すように、摺動孔117bの前端部には、先端収容孔17aに向かって徐々に径が大きくなるテーパ孔117kが設けられる。テーパ孔117kの最大内径は、先端収容孔17aの内径DL1よりも小さいので、先端収容孔17aとテーパ孔117kとの間には段部117dが形成される。テーパ孔117kは、支持部材120を容器本体110に取り付ける際に、棒軸部125の後端部に設けられる複数のベンド片127d(
図14参照)を摺動孔117bに挿入するとき、複数のベンド片127dを徐々に内側に変形させる。つまり、テーパ孔117kを設けることで、摺動孔117bに対するベンド片127dの挿入性を向上できる。
【0111】
第1実施形態では、摺動孔17bにのみ凹凸部18が形成されていた(
図3参照)。これに対して、第2実施形態では、摺動孔117b並びに基端孔117cのテーパ孔117f及び基端腔部117gのそれぞれに、凹凸部(平目ローレット)118が連続して形成される。
【0112】
基端孔117cの基端腔部117gの内径DL2bは、摺動孔117bの内径DS2よりも大きい(DL2b>DS2)。本実施形態において、摺動孔117bの内径DS2とは、摺動孔117bにおいて、凹凸部118の複数の山部の頂部を結ぶ仮想の円形状断面の径のことを指す。また、基端孔117cの基端腔部117gの内径DL2bとは、基端腔部117gにおいて、凹凸部118の複数の山部の頂部を結ぶ仮想の円形状断面の径のことを指す。凹凸部118の谷部(溝部)には後述する係合部127のリブ127aが嵌入される(
図12(b)参照)。なお、摺動孔117bに設けられた凹凸部118の谷部(溝部)には後述する棒軸部125のリブ125aも嵌入する(
図11(b)参照)。
【0113】
取付孔17iの内径DL3は、基端腔部117gの内径DL2bよりも大きい(DL3>DL2b)。このため、取付孔17iと基端腔部117gとの間に段部117eが形成される。
【0114】
次に、第2実施形態に係る支持部材120について説明する。
図14に示すように、支持部材120は、支持筒(支持部)122と、支持筒122から軸方向に延設される棒軸部125と、棒軸部125の後端部に設けられる係合部(第1係合部)127と、を有する。
【0115】
棒軸部125は、支持筒122と係合部127とを連結する軸状部材である。ここで、棒軸部125を円柱状に形成した場合、支持部材120の成形時に樹脂が収縮して「ひけ」が発生するおそれがある。「ひけ」は、部材の厚みが厚いほど発生しやすい。そこで、本第2実施形態に係る棒軸部125は、断面十字形状に形成される。棒軸部125は、支持部材120の中心軸回りに90度間隔で設けられる4つの突条部125bを有する。
【0116】
各突条部125bは、支持筒122から係合部127まで軸方向に延在する。周方向に隣り合う突条部125b間は、肉盗み125cとして形成される凹部である。このように、棒軸部125に肉盗み125cを形成することにより、棒軸部125の中心部を小径(肉薄)にすることができるので、樹脂成形時の「ひけ」の発生を防止することができる。
【0117】
4つの突条部125bのうちの2つには、第1実施形態で説明したリブ25aと同様の機能を有するリブ125aが設けられる。
【0118】
支持筒122は、その底部24が棒軸部125に結合される。支持筒122の外径DTは、棒軸部125の外径DR2よりも大きい(DT>DR2)。
【0119】
第2実施形態に係る支持筒122は、その肉厚が第1実施形態に係る支持筒22の肉厚に比べて薄く形成された薄膜の筒状部材である。支持筒122の円筒部の肉厚は、支持筒122の底部24の肉厚に比べて薄く形成される。これにより、
図11に示すように、支持筒122に支持される化粧料103において、支持筒122の前端面に当接する段差をほぼなくすことができるので、化粧料103を折れにくくすることができる。
【0120】
支持筒122には、複数のスリット122aが設けられる。スリット122aは、支持筒122の前端面から軸方向に延設される。したがって、化粧料充填工程において、液状の化粧料103がスリット122aにも流れ込み、冷却固化した化粧料103がスリット122a内に充填されることになる。このため、支持筒122から化粧料103が抜け出ることを効果的に防止できる。
【0121】
係合部127は、棒軸部125の後端に結合され、棒軸部125の後端側から略軸方向に延在する複数のベンド片127dを有する。より詳細には、複数のベンド片127dは、それぞれ基端側から先端側に向けて徐々に外側に開くように、すなわち先端側ほど支持部材120の中心軸から離れるように延在している。
【0122】
各ベンド片127dは棒軸部125の後端から延在するベンド片本体部127cと、ベンド片本体部127cの先端部の外周面から外方に突出するリブ127aと、ベンド片本体部127cの先端部の内周面から内方に突出する突部127bと、を備える。
【0123】
本実施形態では、4つのベンド片127dが、支持部材120の中心軸を中心として周方向に90度間隔で設けられている。ベンド片127dは、基端が棒軸部125に結合された固定端であり、先端が自由端とされる。互いに対向する一対のベンド片127dは、先端に向かうにしたがって一対のベンド片本体部127c間の寸法が大きくなるように、支持部材120の中心軸に対して傾斜している。
【0124】
複数のベンド片127dは、その外周面が棒軸部125の外周面よりも径方向外方に位置する。第2実施形態では、開閉部外形寸法DB2は、互いに対向する一対のベンド片本体部127cの先端間の寸法、すなわち一対のベンド片本体部127c間の最大外形寸法である(
図14(a)参照)。開閉部外形寸法DB2は、棒軸部125の外径DR2よりも大きく、支持筒122の外径DTよりも小さい(DR2<DB2<DT)。
【0125】
複数のベンド片127dは、径方向外方に開いた開状態(
図11、
図14参照)と、径方向内方に閉じた閉状態(
図12参照)との間で弾性変形する弾性部材である。複数のベンド片127dは、弾性変形により開閉可能な開閉部として機能し、押棒140の先端に設けられた係合部(第2係合部)147(
図15参照)と連結される部分である。ベンド片127dは、径方向外方から押圧力が作用すると、その先端が支持部材120の中心軸側に移動するように弾性変形する。
【0126】
図13に示すように、容器本体110の摺動孔117bの内径DS2は、開閉部外形寸法DB2(
図14(a)参照)よりも小さい(DS2<DB2)。また、基端孔117cの基端腔部117gの内径DL2b(
図13(c)参照)は、開閉部外形寸法DB2よりも大きい(DL2b>DB2)。
【0127】
このため、摺動孔117bに係合部127が位置しているときには、複数のベンド片127dは、ベンド片本体部127cの外周面が摺動孔117bにおける凹凸部118の山部の頂部によって内側に押圧されることにより弾性変形して径方向内方に閉じた閉状態となる(
図12参照)。一方、基端孔117cに係合部127が位置しているときには、複数のベンド片127dは、閉状態のときに比べて径方向外方に開いた開状態となる(
図11参照)。
【0128】
図14に示すように、支持筒122の底部24の後端面からベンド片127dの基端までの寸法LR2、すなわち、棒軸部125の軸方向の長さは、支持部材120の後退限(
図11参照)から前進限(
図12参照)までのストローク(移動量)SP2以上の長さに設定される。これにより、
図12に示すように、支持部材120が前進限に位置しているときに、摺動孔117b内に係合部127を配置させることができるので、押棒140の先端と支持部材120の基端との連結部199の連結状態を維持することができる。
【0129】
図14に示すように、支持部材120の基端には、後述する押棒140の先端の係合部147の頭部147a(
図15参照)が嵌着される凹部127pが形成される。凹部127pの底面は、押棒40の天面142(
図15参照)が当接する当接面126であり、複数のベンド片127dの内周面が凹部127pの側面に相当する。
【0130】
棒軸部125に設けられたリブ125a及びベンド片127dに設けられたリブ127aが貫通孔117の凹凸部118の谷部(溝部)と係合することで、容器本体10に対する支持部材120の周方向の移動、すなわち相対回転が不能となる(
図11(b)、
図12(b)参照)。これにより、押棒140が支持部材120に対して回転しながら進退する際、摩擦による回転力が押棒140から支持部材120に伝わったときに、支持部材120が容器本体10内で相対回転することを、リブ125a,127aと凹凸部118の谷部(溝部)との係合により防止できる。
【0131】
図15に示すように、押棒140は、その先端に設けられる係合部147が、支持部材120の後端に設けられる係合部127(
図14参照)に連結される。係合部147は、円柱形状の円柱部147cと、円柱部147cの前端に設けられる円錐台形状の頭部147aと、を有する。円柱部147cの外径は、棒軸141の外径よりも小さく、かつ、頭部147aの外径よりも小さい。頭部147aの底面の外径は、円柱部147cの外径よりも大きいので、頭部147aの底面が段部147bとされる。
【0132】
第1実施形態では、係合部47の鍔部47d(
図8参照)の前端面が、押棒40の前進時に支持部材20に当接する当接面とされていた。これに対して、第2実施形態では、係合部147の頭部147aの天面142が、押棒140の前進時に支持部材120に当接する当接面とされる。
【0133】
棒軸141は、その外周に雄ねじ41aから連続して形成される雄ねじ小突起141bを有する。雄ねじ小突起141bは、雄ねじ41aと比較して外径が小さく形成される。そのため、押棒140が前進限に位置する状態で、さらに繰り出そうとする力がかかった場合には、雄ねじ小突起141bは、雌ねじ53との間で螺合解除と螺合復帰とを繰り返す。螺合解除と螺合復帰との繰り返しにより、カチカチと断続的な抵抗が発生するため、使用者に、押棒140が前進限に位置し、使い終わりであることを知らせることができる。その結果、化粧料繰出容器101に無理な力がかかることによる部材の破損が防止される。
【0134】
次に、第2実施形態に係る化粧料繰出容器101の組み立て方法について説明する。上記第1実施形態に係る化粧料繰出容器1では、支持部材20に軸方向に貫通する貫通孔21が設けられていたので、容器本体10の前側及び後側のいずれからでも化粧料3を充填することができた(
図9、
図10参照)。これに対して、第2実施形態に係る化粧料繰出容器101では、第1実施形態で説明した貫通孔21に相当する構成がない。このため、
図16に示すように、第2実施形態に係る化粧料繰出容器101の製造方法は、容器本体110の前側からのみ化粧料103の充填が可能となる。
【0135】
なお、化粧料充填工程は、本体側組立体129と駆動体側組立体159とを連結させてから行ってもよいし(
図16参照)、本体側組立体129と駆動体側組立体159とを連結させる前に行ってもよい。
【0136】
次に、
図11及び
図12を参照して、第2実施形態に係る化粧料繰出容器101が使用される際の化粧料繰出容器101の動作について説明する。
図11に示すように、押棒140が後退限に位置している状態では、押棒140の先端と支持部材120の基端との連結部199が、連結初期部位に配置される。
【0137】
連結部199が連結初期部位に位置しているとき、ベンド片127dの先端が貫通孔117における基端孔117c内に配置され、ベンド片127dが開状態となっている。つまり、使用開始前状態(
図11参照)において、押棒140の係合部147が支持部材120の凹部127pに嵌着されていない。
【0138】
使用者は、キャップ2を容器本体110から取り外し、化粧料103を繰り出し可能な状態にする。次いで、使用者が、容器本体110に対して駆動体30を一方に回転(正回転)させると、繰出機構108により押棒140が前進する。
【0139】
押棒140が前進することで、支持部材120の当接面126が押棒140の天面142により押される。これにより、支持部材120が押棒140とともに容器本体110の貫通孔117内で前進し、容器本体110に収容された化粧料103が前端開口11aから押し出される。なお、支持部材120のリブ125a,127aが貫通孔117の凹凸部118の谷部(溝部)に嵌入されているので、支持部材120は、容器本体110に対して回転することなく前進する。つまり、押棒140は、支持部材120に対して回転しながら支持部材120を前方に押す。
【0140】
押棒140が前進し、支持部材120が押棒140に押されると、ベンド片127dがテーパ孔117fのテーパ面に接触することによって徐々に内側に向かって撓む。さらに、貫通孔117の摺動孔117b内にベンド片127dが挿入されると、ベンド片127dが摺動孔117bの内周面に接触することによって撓み、閉状態となる。つまり、摺動孔117bの内周面から内側に向かう押圧力がベンド片127dの先端側に作用することで、ベンド片127dは、基端側を支点として先端側が内側に弾性変形し、閉状態になる。これにより、押棒140の頭部147aが前方に突出する凸部として、係合部127の凹部127pに嵌着され、複数のベンド片127dによって押棒140の係合部147が挟持される。
【0141】
その結果、支持部材120の基端に設けられる係合部127と、押棒140の先端に設けられる係合部147とが摺動孔117b内で強固に連結される。
【0142】
この状態では、使用者が、容器本体110に対して駆動体30を他方に回転(逆回転)させると、駆動体30とともに押棒140が雌ねじ部材50に対して他方に回転する。押棒140が雌ねじ部材50に対して他方に回転すると、押棒140が容器本体110に対して後退する。押棒140が後退することで、ベンド片127dの突部127bが押棒140の係合部147の段部147bにより引っ張られる。これにより、支持部材120が押棒140とともに容器本体110の貫通孔117内で後退し、容器本体110から外側に突出していた化粧料103が貫通孔117内に戻される。
【0143】
以上のとおり、支持部材120の基端と押棒140の先端との連結部199は、連結解除が防止された強固な連結状態を維持しながら、摺動孔117bを押棒140のストロークに伴って進退する。
【0144】
本第2実施形態では、押棒140の天面142は、使用開始前状態(
図11参照)から、最大に押棒140が繰り出された使用限界状態(
図12参照)に亘って、支持部材120の当接面126(
図14参照)に当接する。このため、押棒140の後退限から前進限までのストローク(移動量)は、支持部材120の後退限から前進限までのストローク(移動量)と等しくなる。
【0145】
このような第2実施形態によれば、第1実施形態で説明した(1)~(4),(7)と同様の作用効果を奏する。
【0146】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態に係る化粧料繰出容器201について説明する。なお、図中、第1実施形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。
図17及び
図18に示すように、第1実施形態に係る化粧料繰出容器1との主な相違点は、容器本体210及び押棒240の構成である。以下、適宜、第1実施形態に係る化粧料繰出容器1の構成と比較しながら、第3実施形態に係る化粧料繰出容器201の構成について詳しく説明する。
【0147】
化粧料繰出容器201は、第1実施形態と同様の手順で組み立てられる(
図18参照)。
図17に示すように、第3実施形態に係る押棒240の鍔部247dは、上記第1実施形態に係る押棒40の鍔部47d(
図2参照)よりも厚みが厚い(軸方向長さが長い)。このため、本体側組立体229と駆動体側組立体259とを連結する連結工程において、鍔部247dによって支持部材20が前方に押し出される量(長さ)が第1実施形態に比べて大きくなる。したがって、支持部材20が押棒240の鍔部247dに押されて、化粧料203が前端開口211aから押し出されるとともに、連結部99も摺動孔17b内へ移動する。
【0148】
このため、第3実施形態では、連結工程が完了し、連結部99が連結初期部位に位置しているときには、ベンド片27dの先端が摺動孔17b内に配置され、ベンド片27dは閉状態となっている。つまり、使用開始前状態において、支持部材20のベンド片27dの先端が、押棒240の係合部47の凹部47pに入り込んでいる。
【0149】
このとき、押棒240は後退限に位置しているが、支持部材20は後退限に位置していない。つまり、第3実施形態では、使用開始前状態において、支持部材20の支持筒22の底部24と容器本体210の段部17dとの間に隙間が形成される。
【0150】
このように、本第3実施形態では、化粧料繰出容器201の組み付け時に押棒240を後退限に位置させた状態で、化粧料203とともに支持部材20を前進させることができる。これに対して、上記特許文献1に記載の化粧料繰出容器(1)では、先筒(10)と基体(20)とを回動させると、化粧料が固定される芯チャック部材(30)が、螺旋部材(40)との螺合機能によって、先筒(10)と同期の回転をしながら進出する構成である。つまり、特許文献1に記載の化粧料繰出容器(1)では、単一部材である芯チャック部材(30)が、化粧料を支持する機能と螺合により進退する機能を有しているので、芯チャック部材(30)を後退限に位置させた状態で、容器の組み付け時に化粧料を支持する部位を前進させることができるものではない。
【0151】
図17(a)に示すように、容器本体210の先端収容孔217aの内周面は、段部17dから前端開口211aに向かって徐々に先端収容孔217aの内径が大きくなるようにテーパ面とされている。
図18に示すように、化粧料203は、第1実施形態と同様、支持部材20のベンド片27dがテーパ孔17fに位置している状態で形成される。このため、連結工程において支持部材20が押棒240の鍔部247dに押され、連結部99が連結初期部位に位置すると、
図17(b)に示すように、支持部材20の支持筒22及び化粧料203のそれぞれの外周面と先端収容孔217aの内周面(テーパ面)との間に、僅かな隙間Sが形成される。
【0152】
この隙間Sは、支持部材20及び化粧料203が前端開口211a側へ移動するにつれ、大きくなる。このため、化粧料203の進退時に、支持部材20の支持筒22及び化粧料203と先端収容孔217aとの間の摺動抵抗を小さくすることができ、化粧料203が折れてしまうことを防止できる。
【0153】
また、上記第1実施形態では、仮キャップ70の底部71が、前端開口11aの開口面に平行な平面状に形成されている例について説明した(
図9参照)。これに対して、第3実施形態では、
図18に示すように、仮キャップ270の底部に、先端収容孔217aに入り込むように突出する突出部271が設けられる。突出部271において化粧料203に接触する接触面は、化粧料203の中心軸側が外周側に比べて前方に膨らむように、曲面状に形成されている。これにより、仮キャップ270を容器本体210から取り外した後の、化粧料203の先端面をきれいな仕上がりの湾曲面にすることができ、連結工程において、化粧料203が前端開口211aから押し出された時の外観性を向上できる。
【0154】
このような第3実施形態によれば、第1実施形態で説明した(1)~(7)と同様の作用効果に加え、次のような作用効果を奏する。
【0155】
(8)第3実施形態では、連結工程において、押棒240を後退限に位置させたまま、支持部材20を前進させることにより、支持筒22の外周面と先端収容孔217aの内周面との間、及び、化粧料203の外周面と先端収容孔217aの内周面との間のそれぞれに隙間Sが形成される。これにより、化粧料203の進退時における摺動抵抗を小さくすることができ、化粧料203が折れてしまうことを防止できる。その結果、折れた化粧料203が繰り戻せなくなるという不具合の発生を防止することができる。
【0156】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0157】
<変形例1>
上記第1実施形態では、使用開始前状態(
図1参照)において、支持部材20のベンド片27dの先端が押棒40の係合部47の凹部47pに入り込んでいない例について説明したが、本発明はこれに限定されない。使用開始前状態(
図1参照)において、ベンド片27dの先端が凹部47pに入り込んでいてもよい。上記第2実施形態では、使用開始前状態(
図11)において、押棒140の係合部147が支持部材120の凹部127pに嵌着されていない例について説明したが、本発明はこれに限定されない。使用開始前状態(
図11参照)において、係合部147が凹部127pに嵌着されていてもよい。つまり、化粧料繰出容器1,101の組み付け後の初期状態(使用開始前状態)において、押棒40,140が後退限に位置されていて、その後の押棒40,140の前進によって摺動孔17b,117b内で押棒40,140と支持部材20,120とが進退可能な係合状態となればよい。
【0158】
<変形例2>
上記実施形態では、液状の化粧料3,103,203を容器本体10,110,210の先端収容孔17a,217aに流し込んで固化させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。予め化粧料金型(不図示)を用いて化粧料芯を成形し、成形した固体の化粧料を容器本体10,110,210の先端収容孔17a,217aに挿入し、支持部材20,120に支持させてもよい。
【0159】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0160】
1,101,201・・・化粧料繰出容器、3,103,203・・・化粧料、8,108・・・繰出機構、10,110,210・・・容器本体、11・・・先筒部、15・・・筒体部、17a,217a・・・先端収容孔、17b,117b・・・摺動孔、20,120・・・支持部材、21・・・貫通孔、22,122・・・支持筒(支持部)、25,125・・・棒軸部、27,127・・・係合部(第1係合部)、30・・・駆動体、40,140,240・・・押棒、41a・・・雄ねじ、43・・・大径部(規定部)、47,147・・・係合部(第2係合部)、50・・・雌ねじ部材、53・・・雌ねじ