(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】創傷の状態の決定
(51)【国際特許分類】
G01N 33/52 20060101AFI20220615BHJP
G01N 33/58 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
G01N33/52 B
G01N33/58 Z
(21)【出願番号】P 2019509554
(86)(22)【出願日】2017-08-17
(86)【国際出願番号】 GB2017052435
(87)【国際公開番号】W WO2018033739
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-07-30
(32)【優先日】2016-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514240781
【氏名又は名称】マイクロアレイ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROARRAY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・オースティン
(72)【発明者】
【氏名】ポール・レッドビーター
(72)【発明者】
【氏名】ロイ・ドブ
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-532052(JP,A)
【文献】特表2010-512516(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0045761(US,A1)
【文献】特表2007-514409(JP,A)
【文献】特開平10-309280(JP,A)
【文献】国際公開第2016/128762(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/50,33/52,33/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む創傷の状態をモニターするための製品:
a.創傷液を添加する試料適用ゾーン:
b.プロテアーゼ感受性ポリマーを含む、試料適用ゾーンの下流にある反応ゾーン;
c.有色粒子を含む、試料適用ゾーンの下流にあるゾーン;および
d.試料適用ゾーン、反応ゾーンおよび有色粒子を含むゾーンの下流にある第1の表示ゾーン;
ここで試料適用ゾーンは液体を前記表示ゾーンに伝達し、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性による前記プロテアーゼ感受性ポリマーの切断は、創傷液と共に有色粒子の前記表示ゾーンへの輸送をもたらし、これにより前記表示ゾーンにおいてプロテアーゼ活性の視覚的指標を与え、ここで
:
反応ゾーンが、創傷液が前記表示ゾーンに到達することを防ぐ障壁を形成し、創傷液中に存在する(例えば閾値レベルを超えた)プロテアーゼ活性による前記プロテアーゼ感受性ポリマーの切断が障壁を破壊し、有色粒子の前記表示ゾーンへの輸送をもたらし、これにより前記表示ゾーンを介して創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与え、前記有色粒子を含むゾーンが反応ゾーンの下流にある。
【請求項2】
前記プロテアーゼ感受性ポリマーが架橋されている、請求項1記載の製品。
【請求項3】
製品が創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において有色粒子にマスクされている視覚的シンボルを含み、前記創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標が創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において有色粒子を含むゾーンの上に配置される第2の表示ゾーンにおいて与えられる、請求項1~2のいずれかに記載の製品。
【請求項4】
第1の表示ゾーンが前記第1の表示ゾーンにおける有色粒子を捕獲する捕獲分子を含む、請求項1~3のいずれかに記載の製品。
【請求項5】
捕獲分子が有色粒子に特異的に結合する抗体を含む、請求項4記載の製品。
【請求項6】
有色粒子が第1の表示ゾーン内に蓄積するように、表示ゾーンの下流端に障壁を含む、請求項1~5のいずれかに記載の製品。
【請求項7】
試料適用ゾーンおよび反応ゾーンが少なくとも部分的に重複している、請求項1~6のいずれかに記載の製品。
【請求項8】
以下を含む創傷の状態をモニターする方法:
a.創傷液の試料を、請求項1~7のいずれかに記載の製品の試料適用ゾーンに適用する、および
b.表示ゾーン内の有色粒子によって与えられるプロテアーゼ活性の視覚的指標を検出する。
【請求項9】
表示ゾーン内の測定された有色粒子が創傷液中のプロテアーゼ活性の定量化を与える、請求項8記載の方法。
【請求項10】
製品が第2の表示ゾーンをさらに含み、第2の表示ゾーンにおける有色粒子の減少が第1のゾーンにおける有色粒子の増加と比較される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
創傷液を吸収するマトリックスを含む、創傷の状態をモニターするための製品、ここで該マトリックスは以下を含む:
a.マトリックス上または内における架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーが形成する反応ゾーン、および
b.有色粒子;
ここで、前記プロテアーゼ感受性ポリマーおよび有色粒子は、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性による前記プロテアーゼ感受性ポリマーの切断が有色粒子のマトリックスに沿ったまたはを介した輸送をもたらし、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与えるように配置される;
ここで、マトリックスは創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において有色粒子を含まない表示ゾーンを含み、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性による前記プロテアーゼ感受性ポリマーの切断は有色粒子のマトリックスに沿ったまたはを介した放出をもたらし、表示ゾーンにおいてプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える、ここで
:
前記架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーが、創傷液中の(例えば閾値レベルを超えた)プロテアーゼ活性の非存在下において創傷液が有色粒子に接触することを防ぐ障壁を形成し、創傷液中に存在する(例えば閾値レベルを超えた)プロテアーゼ活性による前記プロテアーゼ感受性ポリマーの切断が障壁を破壊し、有色粒子のマトリックスに沿ったまたはを介した流動をもたらし、表示ゾーンにおいて創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与え、前記
有色粒子が反応ゾーンの下流にある。
【請求項12】
視覚的指標が有色粒子の分散を含む、請求項11記載の製品。
【請求項13】
表示ゾーンにおいて視覚可能なマトリックスが有色粒子を捕獲する捕獲分子を含む、請求項11~
12のいずれかに記載の製品。
【請求項14】
マトリックスが、有色粒子が表示ゾーン内に蓄積するように表示ゾーンの下流末端に配列される障壁を含む、請求項11~
12のいずれかに記載の製品。
【請求項15】
有色粒子がポリスチレン微粒子を含む、請求項1~7または11~
14のいずれかに記載の製品。
【請求項16】
マトリックスが、創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において有色粒子によってマスクされている視覚的シンボルを含み、前記創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標が、ポリマーが切断され、障壁が破壊され、有色粒子がマトリックスに沿って/を介して流動した際の前記視覚的シンボルの出現を含む、請求項11~
14のいずれかに記載の製品。
【請求項17】
前記プロテアーゼ感受性ポリマーがコラーゲンポリマーを含む、請求項1~7または11~
16のいずれかに記載の製品。
【請求項18】
前記プロテアーゼ感受性ポリマーがゼラチンポリマーを含む、請求項1~7または11~
17のいずれかに記載の製品。
【請求項19】
前記プロテアーゼ感受性ポリマーが架橋されており、架橋ポリマーがメタクリル酸またはその誘導体の架橋を含む、請求項2~7または11~
18のいずれかに記載の製品。
【請求項20】
前記プロテアーゼ感受性ポリマーが架橋されており、架橋がグルタルアルデヒドまたはその誘導体に由来する、請求項2~7または11~
18のいずれかに記載の製品。
【請求項21】
プロテアーゼ活性が、セリンプロテアーゼ活性、システインプロテアーゼ活性、アスパラギン酸プロテアーゼ活性、スレオニンプロテアーゼ活性および/またはグルタミン酸プロテアーゼ活性である、請求項1~7または11~
20のいずれかに記載の製品。
【請求項22】
以下を含む創傷の状態をモニターする方法:
a.創傷液の試料を請求項11~
21のいずれかに記載の製品に適用する、および
b.有色粒子によって与えられるプロテアーゼ活性の視覚的指標を検出する。
【請求項23】
有色粒子が、創傷液中のプロテアーゼ活性の定量化を与えるマトリックスの領域において測定される、請求項
22記載の方法。
【請求項24】
該領域が表示ゾーンを含む、請求項
23記載の方法。
【請求項25】
2つの表示ゾーンが存在し、一方のゾーンにおける有色粒子の減少が第2のゾーンにおける有色粒子の増加と比較される、請求項
23または
24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は創傷(これは慢性創傷であり得る)の状態を決定するための製品および関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷は皮膚の保護機能の破綻として規定され得る;(例えば、手術、打撃、切断、化学物質、熱/低温、摩擦/剪断力、圧力によって、または疾患(下腿潰瘍またはがんなど)の結果として生じた)皮膚または根底にある組織/臓器への損傷に続く、根底にある結合組織(すなわち、筋肉、骨、神経)の損失を伴う、または伴わない、上皮の連続性の損失(Leaper and Harding, Wounds: Biology and Management, Oxford University Press (1998))。
【0003】
創傷治癒はあらゆる損傷組織の修復(新たな結合組織の形成および上皮の再生を含む)を含む(Copper, A review of different wound types and their principles of management in Wound Healing: A systematic approach to advanced wound healing and management, Cromwell Press, UK (2005))。
【0004】
創傷は急性または慢性に分類され得る。急性創傷は、治癒が様々な細胞活性の協調的な完了を必要とする重複したプロセスの連続的なカスケードとして生じるものを含む。逆に、慢性創傷は、創傷治癒の正常なプロセスが創傷治癒の段階における1以上の時点で中断される創傷である。大抵、これは治癒の特定の段階(炎症または増殖など)に固定される慢性創傷を導き得る。慢性創傷は、隆起した過剰増殖性だが非進行性の創縁の存在によって同定されることが多い。炎症産物および炎症性サイトカインに富んだ局所的な創傷環境は、細胞外マトリックスの破壊をもたらす過剰量のマトリックスメタロプロテアーゼおよびそれらの阻害剤の減少からなる不均衡な酵素環境を含み得る(Menke et al., Impaired wound healing, Clinical Dermatology (2007))。結果として起こる重度の炎症状態は、治癒に影響を与え、治癒を遅延させる重要な因子であると考えられている。さらに、慢性創傷は大抵、創傷床における壊死組織または壊疽組織の蓄積によって妨害され得る。米国のみにおいて、慢性創傷は約570万人の患者に発症し、年間で推定200億米ドルの費用がかかっていることが報告されている(Branski et al., A review of gene and stem cell therapy in cutaneous wound healing, Burns (2008))。通常の慢性創傷には、糖尿病性潰瘍、血管性潰瘍(vascular ulcer)および褥瘡が含まれる(Werdin et al., Evidence-based Management Strategies for Treatment of Chronic Wounds, Eplasty (2009))。
【0005】
創傷治癒の管理は、4つの主要な要素を含むことが示唆されている:創傷の内部および周囲の組織およびその状態、創傷の内部または周囲のあらゆる炎症および/または感染症の存在、創傷内部の水分バランス、および創縁の質(Ayello et al., TIME heals all wounds, Nursing (2004))。
【0006】
現在、これらの主要な要素のうち1つ以上に対処しようとする創傷被覆材が利用可能である。適切な創傷被覆材を選択することは、創傷治癒の現在の段階、その具体的な時間的要求、および潜在的な副作用の考慮を含む。理想的には、被覆材は疼痛を最小化し、容易に使用できるべきである。これらの被覆材は潰瘍周囲(peri-ulcer)の組織および皮膚を保護しながら、摩擦および剪断を防止しなければならない。治癒プロセスの様々な段階における種々の被覆材の組合せが提案されている。例えば、デブリードマンの段階のためのヒドロゲル被覆材の使用、顆粒化段階におけるフォームドレッシング材、および上皮化段階のためのハイドロコロイド被覆材または低接着性被覆材のいずれかの使用(Vaneau et al., Consensus panel recommendations for chronic and acute wound dressings, Archives of Dermatology (2007))。
【0007】
US5,181,905は、創傷の状態に関する情報を伝達する指標上または指標内における創傷用被覆材に関する。例示的な実施態様および好ましい指標は、特定の温度で変色し得る温度感受性の液晶を含む。
【0008】
US2004/0044299A1は、細菌の存在下で変色し、被覆材の外表面から肉眼で確認できる化学組成物を上部または内部に含む、創傷被覆材に関する。
【0009】
GB2340235Aは、創傷滲出液におけるATPの濃度に基づいて、創傷の細菌汚染をモニターする方法、ならびにコンパニオンデバイスおよびキットに関する。
【0010】
WO2012/074509は、1以上の生理的状態および/または創傷治癒の進行のレベルを決定する特定の分析物パラメータのパネルを提供するパッチに基づくセンサーに関する。
【発明の概要】
【0011】
現在、創傷の状態をモニターすることは、創傷被覆材の日常的な交換を担当する介護者による初期評価に限定されており、これは創傷の外観および/または臭いおよび/または産生した滲出液の体積のうち1つ以上の評価を含む。このような評価は、患者の臨床医への紹介または創傷および/または創傷滲出液のさらなる分析が必要であることを介護者に示唆し得る。
【0012】
しかしながら、このような評価は滲出液の1以上の成分を治療現場において分析し、創傷の状態を示すことはできない。
【0013】
この点を考慮して、国際特許出願PCT/GB2016/050342(これは参照によって本明細書に組み込まれる)は、以下を含む創傷の状態をモニターするための製品に関する:
(i)創傷滲出液を吸収する生物学的に不活性なマトリックス;および
(ii)創傷滲出液中に含まれる1以上のマーカーを測定するためのマトリックス上またはマトリックス内における1以上の試薬、
ここで、創傷滲出液中に含まれる1以上のマーカーによって生じる1以上の試薬の変化は創傷の状態における変化の視覚的指標を与える。
【0014】
本発明は、この技術の発展に関する。第1の発展は、創傷滲出液中にプロテアーゼ活性が(十分に、好ましくは所定の閾値レベル以上に)存在する場合にのみ分解される、架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーの使用に関する。第2の発展は、創傷の状態をエクスサイチュ(ex situ)でモニターするためのラテラルフローに基づくデバイスにおけるプロテアーゼ感受性ポリマーの使用に関する。結果として、本明細書に記述される製品は、創傷の状態をモニターするための簡素、簡便および安価で解釈しやすい手段を提供する。
【0015】
したがって、第1の態様において、本発明は創傷の状態をモニターするための製品を提供し、これは創傷液を吸収するマトリックスを含み、本質的に該マトリックスからなり、または該マトリックスからなり、該マトリックスは以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる:
a.該マトリックス上/内における架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーが形成する反応ゾーン;および
b.有色粒子;
ここで、ポリマーおよび有色粒子は、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断が有色粒子のマトリックスに沿った/を介した輸送をもたらし、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与えるように配置される。
【0016】
本発明の中心は、架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーおよび有色粒子を、マトリックスが(十分量の)創傷液に接触し、創傷液を吸収した場合に、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断が有色粒子のマトリックスに沿った/を介した輸送をもたらし(可能にし)、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与えるように(互いに対して)配置するという事実である。通常、この有色粒子の輸送は反応ゾーンから離れる。この輸送は、本明細書で定義および議論される表示ゾーンに向かうものであり得る。さらに、本明細書においてさらに記述されるように、ポリマーの架橋はプロテアーゼ活性による切断に対するポリマーの抵抗性を(架橋されていないバージョンと比較して)増強する。したがって、プロテアーゼ活性が創傷の状態が変化を示すのに十分な量(これはプロテアーゼ活性の(所定の)閾値レベル以上であり得る)で存在しない限り、有色粒子はマトリックス(の位置)に固定されたままである。活性の閾値レベルは非治癒性創傷を示す。慢性(非治癒性)創傷に対する急性創傷のプロテアーゼ活性のレベルの平均値および中央値は、そのようなレベルを得るための方法と共に当分野において公知である(Trengove et al., Wound Rep. Reg., 1999, vol. 7, 442-452頁参照)。したがって、適切な閾値レベルが一般的使用および/または個別的使用のために得られ得る。適切なプロテアーゼ感受性の反応ゾーンの形成は、(例えば、製品が(例えば創傷被覆材下において)創傷液に接触させて放置される時間に基づいて)経験的に決定および調整され得る。プロテアーゼ感受性は、例えば本明細書に記述されるポリマー分子間の架橋の程度を調整することによって制御され得る。
【0017】
(プロテアーゼ活性が創傷液中に存在する場合に、有色粒子を伴う)創傷液のマトリックスに沿った/を介した伝達はあらゆる適切な手段によるものであり得る。通常、創傷液は毛細管作用によってマトリックスに沿って/を介して移動する。
【0018】
「創傷」は、皮膚の保護機能の破綻として定義され得る;(例えば、手術、打撃、切断、化学物質、熱/低温、摩擦/剪断力、圧力によって、または疾患(下腿潰瘍またはがんなど)の結果として生じた)皮膚または根底にある組織/臓器への損傷に続く、根底にある結合組織(すなわち、筋肉、骨、神経)の損失を伴う、または伴わない、上皮の連続性の損失。
【0019】
「創傷液」(「創傷滲出液」とも呼ばれる)は、皮膚の保護機能の破綻および上皮の連続性の損失のために外部環境に曝露されている、創傷の液体環境を意味すると理解されるべきであり、これは膿汁、血清、水および/または血液を含み、本質的にこれらからなり、またはこれらからなり、さらに脂質、多糖、タンパク質(特にコラゲナーゼを含む細胞外マトリックスタンパク質などのプロテアーゼ、より具体的には例えばゼラチナーゼ)、および細胞片のうち1つ以上を含み、本質的にこれらからなり、またはこれらからなる。
【0020】
マトリックスは創傷液を吸収し、それにより反応ゾーンを創傷液に曝露させる。多くの実施態様において、反応ゾーンはマトリックスの上面に形成され、創傷液は下面を介して吸収される。したがって、そのような実施態様において、マトリックスは創傷液を反応ゾーンに通すことを可能にする。いくつかの実施態様において、マトリックスは創傷液がマトリックスを浸すような寸法である。いくつかの実施態様において、マトリックスは生物学的に不活性であり得る(すなわち接触する生体組織と相互作用せず、該生体組織から反応を開始しない)。本明細書で定義される製品のインサイチュ(in situ)での適用のために、生物学的に不活性なマトリックスを含む製品が好ましく、ここで本製品は所定の期間、創傷に接触して配置される。生物学的に不活性であることによって、創傷を負った対象による有害な免疫反応のリスクは最小化され、好ましくは完全に否定される。創傷の具体的な寸法はそれぞれの場合に特有であり、したがって創傷被覆材のサイズを(例えば被覆材の切断を用いて)適応させることが認識される。結果として、創傷におけるインサイチュでの使用のためのさらなる実施態様において、マトリックスは創傷被覆材と創傷との間の本製品の位置決めに適し、位置決めを促進することが意図される寸法を有する。ある実施態様において、マトリックスは少なくとも2mm x 10mm x 10mmだが最大で7mm x 40mm x 40mmの厚さx幅x長さの寸法を有する。特定の実施態様において、マトリックスは5mm x 25mm x 25mmの寸法を有する。上面および下面はあらゆる実施態様において、必ずしも正方形である必要はない。これらは例えば長方形または円形であり得る。いくつかの実施態様において、マトリックスは円柱形であり得る。一度切断された各マトリックスが本発明の製品を形成する(すなわち、マトリックス内に適切に配置された反応ゾーンおよび有色粒子を生成する)場合、マトリックスはまた、定寸法(cut to size)の形式で提供され得る。インサイチュでの適用のために、マトリックスは(特に創傷被覆材を適用した後に)創傷において著しい不快感を生じるのを最小化または回避するのに十分柔軟および快適である。創傷被覆材の適用は、マトリックスにあるレベルの圧迫を及ぼす。したがって、さらなる実施態様において、マトリックスは圧迫に対して十分な抵抗性があり、これはマトリックスが十分な体積の創傷液を吸収するのに適した構造を維持するのを可能にし、本製品が機能するのを可能にする。特定の実施態様において、マトリックスは、本明細書にさらに記述される滲出液のさらなる(下流および別々の)分析に十分な体積の創傷液(創傷滲出液)を吸収および保持できる。例えば、ある実施態様において、マトリックスは少なくとも0.2ml(創傷液)の体積を吸収する能力を有する。さらなる実施態様において、マトリックスは0.2ml~10mlの範囲の体積を吸収する能力を有する。例えば、少なくとも0.2ml、0.3ml、0.4ml、0.5ml、1ml、2ml、3ml、4ml、5mlまたは10mlの体積。特定の実施態様において、マトリックスは3ml(2.5~3.4mlの範囲を含む)の体積を吸収する能力を有する。
【0021】
ある実施態様において、マトリックスは以下から選択される1以上の物質から構成される:
(i)ポリウレタン;および/または
(ii)ポリエチレン;および/または
(iii)セルロース繊維;および/または
(iv)多孔性親水性プラスチック。
【0022】
適切な多孔性親水性プラスチックとして、Porex Limitedによって販売されている多孔性親水性プラスチックが挙げられる。
【0023】
他の実施態様において、マトリックスは不織布材料(Anowo Ltdから入手できるOrion不織布材料など)を含む。具体的な実施態様において、不織布材料は4osyの重量を有する。
【0024】
マトリックスが二重の機能を実行する(すなわち、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与え、さらなる分析に十分な体積の滲出液を保持する)場合、マトリックスは第1の部分および第2の部分を含み得、本質的にこれらの部分からなり得、またはこれらの部分からなり得る。したがって、本開示のあらゆる箇所において、「マトリックス」への言及は、マトリックスの第1の部分および/または第2の部分への言及を包含する。したがって、マトリックスは第1の層および第2の層を含み得、本質的にこれらの層からなり得、またはこれらの層からなり得る。これらの2つの部分または層は、例えば積層によって互いに接着されてい得る。各部分は本明細書に記述されるマトリックスの特徴のうち1つ以上または全てを有する。
【0025】
いくつかの実施態様において、第1の部分はその上/その内部に架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーが形成する反応ゾーンを含み、本質的に該ゾーンからなり、または該ゾーンからなる。第1の部分は、(第1の部分上または内の)架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーを創傷液(および、したがってその中に含まれ得るプロテアーゼ活性)に接触させるのに十分な創傷液を吸収できる。通常、第1の部分はまた、有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなる。一般に、第1の部分はまた、創傷液中のプロテアーゼ活性の可視化の部位である。
【0026】
いくつかの実施態様において、第2の部分は、本明細書でさらに記述される創傷液の下流(および別々)の分析に十分な量の創傷液を吸収できる。
【0027】
したがって、本発明は、以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる創傷の状態をモニターするための製品を提供する:
(i)以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる創傷液を吸収する第1の(生物学的に不活性な)マトリックス:
a.マトリックス上/内の架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーが形成する反応ゾーン;および
b.有色粒子;
ここで、ポリマーおよび有色粒子は、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断が有色粒子のマトリックスに沿った/を介した輸送をもたらし、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与えるように配置される;および
(ii)創傷液の下流(および別々)の分析に十分な量の創傷液を吸収する第2の(生物学的に不活性な)マトリックス。
【0028】
したがって、マトリックスは、第2の部分が創傷と直接接触し、第1の部分が第2の部分との流体連通を介して創傷液を間接的に吸収するように配置され得る。したがって、第1の部分は第2の部分の上部に積み重ねられ得る。創傷被覆材によってかけられる圧力は、インサイチュでの流体接続においてこれらの部分を維持し得る。他の実施態様において、これらは(積層などによって)より持続的に接続され得る。
【0029】
いくつかの実施態様において、反応ゾーンは、(例えば反応ゾーン内に捕捉された)有色粒子と共に、マトリックスの第1の部分と第2の部分との間に効果的に挟み込まれていてもよい。創傷液中に十分なプロテアーゼ活性が存在する場合、プロテアーゼ感受性ポリマーは分解され、これにより有色粒子を創傷液中に放出する。創傷液が第1の部分に移行すると、上面に色が見える。
【0030】
さらなる実施態様において、第2の部分と接触しない第1の部分の表面は、物理的損傷から保護するために透明フィルムでコーティングまたは囲まれている。第2の部分によって吸収された創傷液は、流体連通を可能とする接続面を介して第1の部分にさらにアクセスし得る。このような配置は、マトリックスの第1の部分上または内に含まれ、本質的にこれからなり、またはこれからなる架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーが創傷液に曝露されることを保証する。膜の透明性は、本明細書でさらに記述されるように、創傷液中のプロテアーゼ活性と接触した架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーの結果として生じるあらゆる信号が治療現場で視覚的に検出されることを可能とする。より一般的に、マトリックスの上面はこれらの特徴を含み得、本質的にこれらの特徴からなり得、またはこれらの特徴からなり得る。
【0031】
いくつかの実施態様において、マトリックスの第1の部分または層は、第2の部分よりも実質的に薄い。いくつかの実施態様において、第1の部分または層は、膜を含み、本質的に膜からなり、または膜からなる。いくつかの実施態様において、第2の部分は吸収性発泡物質(ポリウレタンフォームなど)を含み、本質的に該物質からなり、または該物質からなる。マトリックスが本明細書に記述される第1の部分および第2の部分に含まれ、本質的に該部分からなり、または該部分からなる特定の実施態様において、第1の部分および第2の部分は同一または異なる物質で構成され得る。いくつかの実施態様において、第2の部分はポリウレタンから構成され、これはフォームの形状であり得る。特定の実施態様において、ポリウレタンは非イソシアン酸塩(non-isocyanate)に基づくポリウレタンである。他の実施態様において、第1の部分および/または第2の部分は不織布材料(Anowo Ltdから入手できるOrion不織布材料など)を含み得る。具体的な実施態様において、不織布材料は4osyの重量を有する。
【0032】
特定の実施態様において、有色粒子はポリマー内に捕捉されている。したがって、いくつかの実施態様における反応ゾーンは有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなる。そのような実施態様において、有色粒子は試料に(十分な)プロテアーゼ活性が存在しない限り、放出されない。したがって、不十分なプロテアーゼ活性を含む(プロテアーゼ活性を含まない)創傷液への曝露は、有色粒子の反応ゾーンからの(あらゆる認識可能な程度での)放出をもたらさない。創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断は、ポリマーからの有色粒子のマトリックスに沿った/を介した放出をもたらし、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える。
【0033】
いくつかの実施態様において、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断後における有色粒子のマトリックスに沿った/を介した放出の後に提供される創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標は、有色粒子の、マトリックス上における最初の沈着のゾーン(すなわち、創傷液と接触する前に規定される、反応ゾーン)からの分散を含み、本質的に該分散からなり、または該分散からなる。したがって、反応ゾーンの着色は強度が減少し、または完全に消失する。強度の減少は視覚的に認識できる。いくつかの実施態様において、カラーガイド(colour guide)が本製品と共に提供され得、適切なプロテアーゼが創傷液中で活性である場合に想定される色の変化/レベルのための基準を提供し得る。これは尺度(例えば、活性のない、活性の低い、もしくは活性の高いという単純な尺度、またはいくつかの実施態様における数値の尺度)であり得る。この尺度は、読み取りの結果に依存するさらなる行為の推奨と共に提供され得る。あるいは、または肉眼を介した観察に加えて、色の強度の減少は、分光光度計またはこの目的に適した他のそのような装置(これは当業者に周知である)を用いて検出および/または定量化され得る。したがって、本発明の製品は、適切な読み取り装置と共に提供され得、またはある程度の自動化された信号の読み取りを実行できる装置に組み込まれ得る。いくつかの実施態様において、これは定量的または半定量的であり得る。
【0034】
特定の実施態様において、マトリックスは、創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において、有色粒子(これはポリマー内に捕捉されてい得る)によってマスクされている視覚的シンボルを含む。例えば、視覚的シンボルは、あらゆる適切な手段(例えば消えないインク)を用いて有色粒子(これはポリマー内に捕捉されてい得る)が最初に沈着しているマトリックス上に印刷され得る。マトリックスが(十分量の)創傷液に接触し、該創傷液を吸収すると、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断は、有色粒子のマトリックスに沿った/を介した輸送をもたらし、これにより視覚的シンボルが現れる。
【0035】
さらなる実施態様において、マトリックスは表示ゾーンを含む。創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において、表示ゾーンは有色粒子を含まない。したがって、表示ゾーンは反応ゾーンから分離されている。通常、この分離はマトリックス表面上の少なくとも2次元においてなされる。創傷液への曝露により、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断は、有色粒子のマトリックスに沿った/を介した表示ゾーンへの放出をもたらす。結果として、表示ゾーンは、有色粒子の表示ゾーンへの移動によって色が変化および/または増強されると考えられる。したがって、プロテアーゼ活性の視覚的指標は表示ゾーンにおいて与えられる。好ましい実施態様において、色の変化および/または増強は肉眼で確認できる。あるいは、または肉眼を介した観察に加えて、色の変化および/または増強は、分光光度計またはこの目的に適した他のそのような装置(これは当業者に周知である)を用いて検出および/または定量化され得る。マトリックスは、創傷液が好ましくは反応ゾーンから表示ゾーンの方向に流れるように配置され得る。したがって、いくつかの実施態様において、例えばマトリックスは、流体の流れを反応ゾーンから表示ゾーンに向けるチャンネルを含み得る。しかしながら、全ての実施態様において、これは必須ではない。いくつかの実施態様において、表示ゾーンは単純に、反応ゾーンおよび/または(十分な)プロテアーゼ活性の非存在下における有色粒子の位置ではないマトリックスの可視表面であり得る。
【0036】
特定の実施態様において、表示ゾーンは有色粒子を捕獲する捕獲分子を含み、本質的に該捕獲分子からなり、または該捕獲分子からなる。これは、容易に解釈される信号の生成を補助し得る。捕獲分子は、信号(したがってプロテアーゼ活性)のある程度の定量化を可能にし得る目で確認できる線または他のシンボルを生成するように配置され得る。捕獲分子は有色粒子に結合できるあらゆる分子である。これらは、例えば有色粒子に特異的に結合する抗体またはアプタマーを含み得、本質的にこれからなり得、またはこれからなり得る。具体的な実施態様において、捕獲分子は有色粒子に特異的に結合する抗体である。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルの起源であり得る。また、フラグメントおよび誘導体抗体(derivative antibody)が利用され得、これは特異的な結合機能を保持しているFabフラグメント、ScFv、単一ドメイン抗体、ナノ抗体、重鎖抗体およびアプタマーなどを含むが、これらに限定されず、これらは「抗体」の定義に含まれる。具体的な抗体およびアプタマーを作製する方法は当業者に周知である。抗体はヒト起源または非ヒト起源(例えばラットまたはマウスなどのげっ歯類)であり得、公知の技術(Jones et al., Nature (1986) May 29-Jun. 4;321(6069):522-5; Roguska et al., Protein Engineering, 1996, 9(10):895-904;およびStudnicka et al., Humanizing Mouse Antibody Frameworks While Preserving 3-D Structure. Protein Engineering, 1994, Vol.7, pg 805)に従ってヒト化などがされてい得る。
【0037】
さらなる実施態様において、マトリックスは表示ゾーンの(下流)末端に配列された障壁を含む。すなわち、表示ゾーンは有色粒子と障壁との間に配置され、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断後における有色粒子のマトリックスに沿った/を介した表示ゾーンへの放出の後に有色粒子が表示ゾーン内に蓄積するように、障壁は表示ゾーンに対して配置される。したがって、障壁は、放出された有色粒子が表示ゾーンを超えて移動することを防ぐ。例えば、障壁は多孔性物質を含み得、本質的に多孔性物質からなり得、または多孔性物質からなり得、ここで孔径は、液体およびカットオフ値未満の分子量を有する分子は障壁を通過できるが、有色粒子が障壁を通過できるほど大きくない孔径である。当業者は、用いる有色粒子に依存する適切な分子量カットオフを有する適切な物質を選択できる。あるいは、多孔性マトリックスを含む実施態様のために、障壁はマトリックス自体の領域を含み得、この領域は有色粒子の直径よりも小さい孔径を有する(一方で、液体の通過を未だ可能とする)細孔を含む。このような領域は、例えばマトリックスのこの領域を圧搾または圧縮することによって作成され得る。圧縮は、有色粒子の直径よりも小さくなるように孔径を減少させるのに十分な程度である。したがって、有色粒子は圧搾/圧縮された領域(障壁)を通過できず、したがって創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断後における有色粒子のマトリックスに沿った/を介した表示ゾーンへの放出の後に表示ゾーン内に蓄積する。
【0038】
本明細書に記述される本発明のあらゆる態様および実施態様において、有色粒子は、有色微粒子を含み得、本質的に有色微粒子からなり得、または有色微粒子からなる。通常、有色粒子は創傷液に不溶である(すなわち溶解しない)。特定の実施態様において、有色粒子は活性炭粒子および/または有色ポリスチレン微粒子(Polysciences, Inc.から供給されるPolybead(登録商標) Polystyrene Blur Dyed Microsphere(直径0.5ミクロン、2.5%固形分、製品番号15709)など)を含み得、本質的にこれらからなり得、またはこれらからなり得る。好ましい実施態様において、有色粒子は、有色ポリスチレン微粒子を含み、本質的に有色ポリスチレン微粒子からなり、または有色ポリスチレン微粒子からなる。本発明における使用のための有色粒子の他の限定されない実施態様には、銅フタロシアニンテトラスルホン酸四ナトリウム塩、着色ラテックス微粒子、金粒子および/または色素分子(フタロシアニンブルーBN(「Monastal Blue」とも呼ばれる;CAS147-14-8)など)が含まれる。一般に、有色粒子は、本明細書に記述されるように、または当業者に公知の方法を用いて検出され得、水性液によってマトリックスに沿って/を介して輸送されることができる、あらゆる有色粒子である。
【0039】
本明細書に記述される本発明のあらゆる態様および実施態様において、有色粒子の(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマー内への捕捉は、ポリマーを有色粒子と共に乾燥させることによって達成され得る。結果として、ポリマーおよびしたがって反応ゾーンは捕捉された粒子の着色を示す。ポリマーが本製品によって吸収された創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によって切断されない限り、有色粒子はポリマー内に捕捉されたままである。創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断の後、有色粒子はマトリックスに沿って/を介して輸送され、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える。通常、この輸送は反応ゾーンから表示ゾーンまでである。
【0040】
有色粒子の捕捉は、プロテアーゼ感受性ポリマーに会合する可溶性色素の使用と直接対比され得る。この会合は直接的(例えば、共有結合性会合)または間接的(例えば、吸着)であり得る。有色粒子は、反応ゾーンの着色の改善を与える点において有利である。
【0041】
上記を考慮して、上述される本発明の特定の実施態様がエクスサイチュでのラテラルフローに基づく形式における適用に適していることは当業者に明らかである。したがって、本発明はまた、以下を提供する:
【0042】
以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる創傷液の状態をモニターするための製品:
a.創傷液を添加する試料適用ゾーン
b.架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーを含み、本質的に該ポリマーからなり、または該ポリマーからなる、試料適用ゾーンの下流にある反応ゾーン、ここで有色粒子がポリマー内に捕捉されている;および、任意に
c.試料適用ゾーンおよび反応ゾーンの下流にある表示ゾーン;
ここで、試料適用ゾーンは液体を反応ゾーン(および存在する場合には表示ゾーン)に伝達し、創傷液中に存在する(例えば閾値レベルを超えた)プロテアーゼ活性によるポリマーの切断は、創傷液と共に有色粒子のマトリックスに沿った/を介した輸送をもたらし、これによりプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える(これは、存在する場合には表示ゾーンにおいて観察され得る)。上述の実施態様は、この特定のラテラルフローの態様に必要な変更を加えて提供され得、単純に簡潔さのためにここでは繰り返されない。
【0043】
さらなる実施態様において、上記のあらゆる態様および実施態様において、架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマー(すなわち反応ゾーン)は、創傷液中の(例えば閾値レベルを超えた)プロテアーゼ活性の非存在下において創傷液が有色粒子に接触することを防ぐ障壁を形成する。したがって、反応ゾーンは、創傷液中に障壁を破壊するのに十分なプロテアーゼ活性が存在しない限り、創傷液の流れに対する障壁を形成し得る。具体的な実施態様において、有色粒子は必ずしもポリマー内に捕捉されていないが、ポリマーによって形成される障壁の下流に存在し、すなわち障壁は、マトリックス上の創傷液の適用位置とマトリックス上の有色粒子が最初に沈着しているゾーンとの間に配置される。使用において、創傷液中に存在する(例えば閾値レベルを超えた)プロテアーゼ活性によるポリマーの切断は障壁を破壊し、有色粒子のマトリックスに沿った/を介した流動をもたらし、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える。特定の実施態様において、マトリックスは、創傷液への曝露の前、およびプロテアーゼ活性の非存在下において有色粒子を含まない表示ゾーンをさらに含む。創傷液への曝露により、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断は、有色粒子のマトリックスに沿った/を介した表示ゾーンへの放出をもたらす。結果として、表示ゾーンは、有色粒子の表示ゾーンへの移動によって色が変化および/または増強されると考えられる。したがって、プロテアーゼ活性の視覚的指標は表示ゾーンにおいて与えられる。
【0044】
好ましい実施態様において、色の変化および/または増強は肉眼で確認できる。あるいは、または肉眼を介した観察に加えて、色の変化および/または増強は、分光光度計またはこの目的に適した他のそのような装置(これは当業者に周知である)を用いて検出および/または定量化され得る。したがって、本発明の製品は、適切な読み取り装置と共に提供され得、またはある程度の自動化された信号の読み取りを実行できる装置に組み込まれ得る。いくつかの実施態様において、これは定量的または半定量的であり得る。
【0045】
特定の実施態様において、表示ゾーンは有色粒子を捕獲する捕獲分子を含み、本質的に該捕獲分子からなり、または該捕獲分子からなる。これは、容易に解釈される信号の生成を補助し得る。捕獲分子は、信号(したがってプロテアーゼ活性)のある程度の定量化を可能にし得る目で確認できる線または他のシンボルを生成するように配置され得る。捕獲分子は有色粒子に結合できるあらゆる分子である。これらは、例えば有色粒子に特異的に結合する抗体またはアプタマーを含み得、本質的にからなり得、またはからなり得る。具体的な実施態様において、捕獲分子は有色粒子に特異的に結合する抗体である。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルの起源であり得る。また、フラグメントおよび誘導体抗体が利用され得、これは特異的な結合機能を保持しているFabフラグメント、ScFv、単一ドメイン抗体、ナノ抗体、重鎖抗体およびアプタマーなどを含むが、これらに限定されず、これらは「抗体」の定義に含まれる。具体的な抗体およびアプタマーを作製する方法は当業者に周知である。抗体はヒト起源または非ヒト起源(例えばラットまたはマウスなどのげっ歯類)であり得、公知の技術(Jones et al., Nature (1986) May 29-Jun. 4;321(6069):522-5; Roguska et al., Protein Engineering, 1996, 9(10):895-904;およびStudnicka et al., Humanizing Mouse Antibody Frameworks While Preserving 3-D Structure. Protein Engineering, 1994, Vol.7, pg 805)に従ってヒト化などがされてい得る。
【0046】
さらなる実施態様において、マトリックスは表示ゾーンの(下流)末端に配列された第2の障壁を(すなわち、架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーによって形成される障壁に加えて)含む。すなわち、表示ゾーンは有色粒子と第2の障壁との間に配置され、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断後における有色粒子のマトリックスに沿った/を介した表示ゾーンへの放出の後に有色粒子が表示ゾーン内に蓄積するように、第2の障壁は表示ゾーンに対して配置される。したがって、第2の障壁は、放出された有色粒子が表示ゾーンを超えて移動することを防ぐ。例えば、障壁は多孔性物質を含み得、本質的に多孔性物質からなり得、または多孔性物質からなり得、ここで孔径は、液体およびカットオフ値未満の分子量を有する分子は障壁を通過できるが、有色粒子が障壁を通過できるほど大きくない孔径である。当業者は、用いる有色粒子に依存する適切な分子量カットオフを有する適切な物質を選択できる。あるいは、多孔性マトリックスを含む実施態様のために、第2の障壁はマトリックス自体の領域を含み得、この領域は有色粒子の直径よりも小さい孔径を有する(一方で、液体の通過を未だ可能とする)細孔を含む。このような領域は、例えばマトリックスのこの領域を圧搾または圧縮することによって作成され得る。圧縮は、有色粒子の直径よりも小さくなるように孔径を減少させるのに十分な程度である。したがって、有色粒子は圧搾/圧縮された領域(第2の障壁)を通過できず、したがって創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断後における有色粒子のマトリックスに沿った/を介した表示ゾーンへの放出の後に表示ゾーン内に蓄積する。
【0047】
特定の実施態様において、マトリックスは、創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において、有色粒子にマスクされている視覚的シンボルを含む。例えば、視覚的シンボルは、あらゆる適切な手段(例えば消えないインク)を用いて有色粒子が最初に沈着しているマトリックス上に印刷され得る。マトリックスが(十分量の)創傷液に接触し、該創傷液を吸収すると、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断はポリマーによって形成された障壁を破壊し、有色粒子のマトリックスに沿った/を介した輸送をもたらし、これにより視覚的シンボルが現れる。
【0048】
したがって、上記を考慮して、架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーによって形成される障壁に関する上述される本発明の実施態様がエクスサイチュでのラテラルフローに基づく形式における適用に適していることは当業者に明らかである。したがって、関連する態様において、本発明はまた、以下を提供する:
【0049】
以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる創傷液の状態をモニターするための製品:
a.創傷液を添加する試料適用ゾーン
b.架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーを含み、本質的に該ポリマーからなり、または該ポリマーからなる、試料適用ゾーンの下流にある反応ゾーン;
c.有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなる、反応ゾーンの下流にあるゾーン;および、任意に
d.試料適用ゾーンおよび反応ゾーンの下流にある表示ゾーン;
ここで、試料適用ゾーンは液体を反応ゾーンおよび有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーン(および存在する場合には表示ゾーン)に伝達し、ここで反応ゾーンにおけるポリマーは、創傷液が有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーン(および存在する場合には表示ゾーン)に到達するのを防ぐ障壁を形成する。創傷液中に存在する(例えば閾値レベルを超えた)プロテアーゼ活性によるポリマーの切断は障壁を破壊し、創傷液と共に有色粒子のマトリックスに沿った/を介した輸送をもたらし、これによりプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える(これは、存在する場合には表示ゾーンにおいて観察され得る)。架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーによって形成された障壁に関する上述の実施態様は、このラテラルフローの態様に必要な変更を加えて提供され得、単純に簡潔さのためにここでは繰り返されない。
【0050】
本明細書に記述される本発明のあらゆる態様および実施態様において、(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーは、1以上のプロテアーゼの切断部位を含み、本質的に該切断部位からなり、または該切断部位からなる。好ましくは、プロテアーゼ感受性ポリマーは、通常、過剰に存在する場合に不正確な創傷治癒の原因となる(本明細書においてさらに詳細に議論される)プロテアーゼを反映する複数のプロテアーゼの切断部位を含み、本質的に該切断部位からなり、または該切断部位からなる。結果として、(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーは、創傷(特に創傷の境界)の細胞外マトリックス環境を再現することが意図され得る。したがって、反応ゾーンは創傷由来の細胞外マトリックスを再現し得る。したがって、いくつかの実施態様において、ポリマーは例えば繊維間に形成されている架橋を有する分子「繊維」と見なされ得る。(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーはヒドロゲル構造(例えばゼラチンヒドロゲル)を形成し得る。特定の実施態様において、ポリマーはタンパク質/ポリペプチドを含み、本質的にタンパク質/ポリペプチドからなり、またはタンパク質/ポリペプチドからなる。しかしながら、合成ポリマーが少なくとも1つのプロテアーゼの1以上の切断部位を含み、本質的に該切断部位からなり、または該切断部位からなる場合、合成ポリマーも適してい得ることは当業者に明らかである。特定の実施態様において、ポリマーは、天然に存在するモノマー単位および天然に存在しないモノマー単位の両方を含み得、本質的にこれらからなり得、またはこれらからなり得る。具体的な実施態様において、ポリマーは架橋されていてもよいコラーゲンを含み、本質的に該コラーゲンからなり、または該コラーゲンからなる。コラーゲンはコラーゲンプラーク(collagen plaque)を形成し得る。好ましい実施態様において、コラーゲンは本発明における使用の前に、完全に、実質的にまたは部分的に変性している。これがコラーゲンの部分的な加水分解によって生じている場合、当業者に周知のように、これは「ゼラチン」と呼ばれる。したがって、これらの好ましい実施態様において、ポリマーは架橋されていてもよいゼラチンを含み、本質的に該ゼラチンからなり、または該ゼラチンからなる。他の実施態様において、ポリマーは架橋されていてもよいエラスチンを含み、本質的に該エラスチンからなり、または該エラスチンからなる。
【0051】
本明細書に記述される本発明のあらゆる態様および実施態様において、(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーのプロテアーゼ活性に対する感受性は、複数の(組み合わせ可能な)手段によって直接的および間接的に調整され得る。関連要因には、本製品が創傷液に接触して配置されている時間の長さが含まれる(すなわち、反応ゾーンが創傷液に曝露されている時間によって影響される)。例えば、いくつかの実施態様において、(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーを含む反応ゾーンは、1以上のプロテアーゼ阻害剤をさらに含む。具体的な実施態様において、1以上のプロテアーゼ阻害剤は(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーに直接的(例えば共有結合的)または間接的(例えば吸着によって)に会合し得る。反応ゾーン内に存在する1以上のプロテアーゼ阻害剤分子は、創傷液中に存在する特定のプロテアーゼを阻害し、したがって(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーを切断できる活性なプロテアーゼの存在のレベルを事実上減少させる。例えば、1以上のプロテアーゼ阻害剤は、様々なMMP(特に、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、MMP-12およびMMP-14など)のための広範なマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤であるイロマスタット(GM6001、Galardin)、および/またはCalbiochemからのエラスターゼ阻害剤であるElastase Inhibitor-V(2-(2-ブロモフェニル)-5-クロロ-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)(これは、マイケル付加-脱離反応を介して活性部位であるセリンを共有結合的に修飾することによって、ヒト白血球エラスターゼの強力な阻害剤(IC50=29.5nM)として働くベンゾオキサジノン化合物である)を含み得、本質的にイロマスタットおよび/またはElastase Inhibitor-Vからなり得、またはイロマスタットおよび/またはElastase Inhibitor-Vからなり得る。(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーのプロテアーゼ活性に対する感受性を調整する別の(間接的な)手段は、(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーを含む反応ゾーンにおける1以上の犠牲タンパク質/ポリペプチド(sacrificial protein/polypeptide)をさらに含むことである。例えば、1以上の犠牲タンパク質/ポリペプチドは、アルブミンおよび/または最適化された(合成)プロテアーゼ感受性ペプチドを含み得、本質的にアルブミンおよび/または該ペプチドからなり得、またはアルブミンおよび/または該ペプチドからなり得る。1以上の犠牲タンパク質/ポリペプチドは創傷液中のプロテアーゼの代替の(競合する)基質として働き、これによりプロテアーゼ活性を(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーから逸らす。プロテアーゼ感受性ポリマーが架橋されているこれらの実施態様のために、ポリマーのプロテアーゼ活性に対する感受性を調整するさらなる直接的な手段は(本明細書でさらに記述されるように)架橋の程度を増加または減少させることによる。架橋の数の増加は、有色粒子が創傷液によってマトリックスに沿って/を介して輸送できるようになる前にプロテアーゼ感受性ポリマーのより広範な切断を必要とするため、架橋の増加はプロテアーゼ感受性を減少させる。逆に、架橋の減少は同一の原理に基づいてプロテアーゼ感受性を増加させる。(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーのプロテアーゼ活性に対する感受性を操作するこれらの各手段は、必要に応じて(例えば、プロテアーゼ感受性ポリマーが架橋されているか否かに依存して)単独または組み合わせて使用され得る。
【0052】
本明細書に記述される本発明のあらゆる態様および実施態様において、ポリマー分子間に形成される架橋は直接的または間接的であり得る。本発明の発明者らは、ポリマー分子の架橋がポリマー分子を水性条件下で有利に安定化し、(診断に関連する)プロテアーゼ活性の非存在下においてポリマーの緩やかな分解を防ぐことを見出し、これは創傷内に長期間(例えば1日よりも長い間創傷被覆材下で)放置される本製品の文脈において特に適している。さらに、上述のように、プロテアーゼ活性が創傷の状態における変化を示すのに十分な量(これはプロテアーゼ活性の(所定の)閾値レベル以上であり得る)存在しない限り、架橋はプロテアーゼ活性による切断に対するポリマーの抵抗性を増強する。通常、未修飾ポリマー分子は最初に1以上の架橋性基で修飾され、その後修飾されたポリマー分子は(本明細書の他の箇所で記述されるように)適切な架橋条件下で処理され、架橋されたポリマーを生じる。適切な架橋条件は用いる架橋性基に依存する。例えば、適切な条件は、(例えば適切な光開始剤の存在下における)紫外線(UV)照射の使用を含み得、本質的に該使用からなり得、または該使用からなり得る。未修飾ポリマー分子を架橋性基で修飾する程度は、架橋性基に対するポリマーの相対的なモル濃度を制御することによって、および/または修飾のための反応条件を適宜変更する(例えば、ポリマーを構成し、本質的にポリマーの立体構造からなり、またはポリマーの立体構造からなるモノマー単位の荷電状態に影響を与え得る/を変化させ得る反応のpHおよび/または温度を変動させる)ことによって、制御され得る。修飾の程度は、当分野で公知の適切な手段(核磁気共鳴分光法など)によって定量化され得る。創傷の状態の変化のインサイチュでの検出における使用に適した本製品のこれらの実施態様のために、ポリマーの架橋性基での最大限の誘導体化が好ましい。
【0053】
好ましい実施態様において、ポリマー分子(通常、ゼラチン、コラーゲンおよび/またはエラスチン)は、メタクリル酸塩、無水メタクリル酸またはそれらの誘導体で修飾され、その後、メタクリル酸塩、無水メタクリル酸またはそれらの誘導体は当業者に公知の適切な条件下で結合される。したがって、これらの実施態様のために、ポリマー間の架橋は、メタクリル酸塩またはその誘導体を含み、本質的にこれからなり、またはこれからなる。架橋は当業者に公知のあらゆる適切な条件下で(例えば、場合により適切な光開始剤の存在下でのUV照射への曝露によって)達成され得る。
【0054】
他の実施態様において、ポリマー分子(通常、ゼラチン、コラーゲンおよび/またはエラスチン)は、グルタルアルデヒドまたはその誘導体で修飾され、その後/その間、グルタルアルデヒドまたはその誘導体は当業者に公知の適切な条件下で結合する。したがって、これらの実施態様のために、ポリマー間の架橋はグルタルアルデヒドまたはその誘導体に由来する。架橋は当業者に公知のあらゆる適切な条件下で達成され得る。
【0055】
本明細書に記述されるように、本発明のあらゆる態様および実施態様において、本発明で利用されるポリマーはプロテアーゼ感受性(すなわち、該ポリマーは少なくとも1つのプロテアーゼ切断部位を含み、本質的に該部位からなり、または該部位からなる)である。いくつかの実施態様において、ポリマーはある特定のプロテアーゼに対して感受性であり得る。他のより好ましい実施態様において、ポリマーは複数のプロテアーゼ(インビボでの創傷治癒プロセスを反映するプロテアーゼ)に対して感受性であり得る。当業者が認識するように、これはポリマー内に存在する切断部位に依存している。各切断部位は、ある特定のプロテアーゼまたは複数のプロテアーゼによって切断されやすくてもよい。あるいは、またはさらに、ポリマーは、種々のプロテアーゼによって切断可能な2以上の種々の切断部位を含み得、本質的に該部位からなり得、または該部位からなり得る。一般に、切断部位は、切断部位における少なくとも1つの(2つのアミノ酸部分間の)ペプチド結合を切断できる1以上の特定のプロテアーゼによって認識され得る2以上のアミノ酸部分のペプチド配列を含み、本質的に該配列からなり、または該配列からなる。プロテアーゼ切断部位および相互のプロテアーゼは当分野で周知である。ポリマー内の切断部位の数は、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断後に、ポリマーが十分に分解され、有色粒子のマトリックスに沿った/を介した輸送をもたらし、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与えるような数であるべきである。当業者はこの要求を考慮して、切断部位の十分な数を日常的な実験方法を用いて決定できる。具体的な実施態様において、切断部位は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼおよび/またはグルタミン酸プロテアーゼによって特異的に認識され、切断可能である。特定の実施態様において、切断部位は1以上のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP2、MMP8および/またはMMP9など)によって特異的に認識され、切断可能である。好ましい実施態様において、切断部位は、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼおよび/またはエラスターゼ(好中球エラスターゼ、特にヒト好中球エラスターゼなど)酵素によって特異的に認識され、切断可能である。さらなる実施態様において、切断部位は、カテプシンプロテアーゼ(カテプシンGなど)によって特異的に認識され、切断可能である。さらなる実施態様において、切断部位は、パパインファミリー酵素(黄色ブドウ球菌由来のスタホパインなど)によって特異的に認識され、切断可能である。有利なことに、プロテアーゼ感受性ポリマーは創傷治癒に関連する複数のプロテアーゼによって切断(これは「消化」とも呼ばれ得る)され得る。複数のプロテアーゼは、上記の(最大で全ての)プロテアーゼから選択され得る。
【0056】
ある実施態様において、本明細書に記述される本発明のあらゆる態様および他の実施態様において、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性が所定の閾値レベル以上である場合にのみ、プロテアーゼ感受性ポリマーは(任意の著しい程度で)切断される。これらの実施態様において、プロテアーゼ活性が存在しない、または閾値未満のレベルで存在する場合、ポリマーの(任意の著しい程度での)切断の欠如のために、有色粒子はマトリックスに沿って/を介して輸送されず、または無視できる量で輸送され、結果としてプロテアーゼ活性の視覚的指標は与えられない。例えば、プロテアーゼ活性の閾値レベルは回復期創傷において想定されるレベルであり得る。例えば、あるコラゲナーゼ活性が回復期創傷において想定されるが、過剰な活性は創傷状態が悪化していることを示し得る。具体的な実施態様において、所定の閾値レベルは0.0001~0.1mg/mLの範囲であり得る。例えば、これは0.0001mg/mL、0.00015mg/mL、0.00031mg/mL、0.00062mg/mL、0.001mg/mL、0.00125mg/mL、0.0025mg/mL、0.005mg/mL、0.01mg/mL、0.0125mg/mL、0.025mg/mL、0.05mg/mLまたは0.1mg/mLであり得る。閾値は試料において検出可能なプロテアーゼ活性の合計に適用され得る。1以上のプロテアーゼがコラゲナーゼ/ゼラチナーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP2、MMP8および/またはMMP9など)、好中球エラスターゼ(例えばヒト好中球エラスターゼ)および/またはパパインファミリー酵素(黄色ブドウ球菌由来のスタホパインなど)を含み、本質的にこれらからなり、またはこれらからなる特定の実施態様において、所定の閾値レベルは、0.0001mg/mL、0.00015mg/mL、0.00031mg/mL、0.00062mg/mL、0.001mg/mL、0.00125mg/mL、0.0025mg/mL、0.005mg/mL、0.01mg/mL、0.0125mg/mL、0.025mg/mL、0.05mg/mLまたは0.1mg/mLであり得る。特定の実施態様において、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP2、MMP8および/またはMMP9など)の活性の所定の閾値レベルは0.0007~0.025mg/mLの範囲である。特定の実施態様において、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP2、MMP8および/またはMMP9など)の活性の所定の閾値レベルは0.00076mg/mL以上である。他の実施態様において、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP2、MMP8および/またはMMP9など)の活性の所定の閾値レベルは0.0228mg/mL以上である。閾値は試料において検出可能なマトリックスメタロプロテアーゼ活性の合計に適用され得る。特定の実施態様において、好中球エラスターゼ(例えばヒト好中球エラスターゼ)の活性の所定の閾値レベルは0.0059~0.344mg/mLの範囲である。具体的な実施態様において、好中球エラスターゼ(例えばヒト好中球エラスターゼ)の活性の所定の閾値レベルは0.0995mg/mL以上である。閾値は試料において検出可能な好中球エラスターゼ活性の合計に適用され得る。特定の実施態様において、カテプシンプロテアーゼ(カテプシンGなど)の活性の所定の閾値レベルは0.005~0.05mg/mLの範囲である。閾値は試料において検出可能なカテプシンプロテアーゼ活性に適用され得る。
【0057】
ゼラチンは本発明の反応ゾーンにおける使用に特に適した物質であり、創傷液中の生理的に関連したプロテアーゼ活性の指標を与える。したがって、本発明はまた、創傷液を吸収するマトリックスを含み、本質的に該マトリックスからなり、または該マトリックスからなる創傷の状態をモニターするための製品を提供し、該マトリックスは以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる:
a.マトリックス内/上における架橋されたゼラチンが形成する反応ゾーン;および
b.有色(好ましくはポリスチレン)微粒子;
ここで、架橋は(i)メタクリル酸塩もしくはその誘導体、または(ii)グルタルアルデヒドもしくはその誘導体を含み、本質的にこれからなり、またはこれからなり;
ポリマーおよび有色粒子は、創傷液中に存在するゼラチナーゼ活性によるポリマーの切断がマトリックスに沿った/を介した有色粒子の輸送をもたらし、創傷液中のゼラチナーゼ活性の視覚的指標を与えるように配置される。上述のあらゆる特徴および実施態様はこの製品に関して必要な変更を加えて関連しており、単純に簡潔さのためにここでは繰り返されない。
【0058】
同様に、本発明はまた、以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる創傷の状態をモニターするための製品を提供する:
a.創傷液を添加する試料適用ゾーン
b.架橋されたゼラチン分子を含み、本質的に該分子からなり、または該分子からなる、試料適用ゾーンの下流にある反応ゾーン、ここで有色(好ましくはポリスチレン)微粒子がゼラチン分子内に捕捉されている;および、任意に
c.試料適用ゾーンおよび反応ゾーンの下流にある表示ゾーン;
ここで、架橋は(i)メタクリル酸塩もしくはその誘導体、または(ii)グルタルアルデヒドもしくはその誘導体を含み、本質的にこれからなり、またはこれからなり;
試料適用ゾーンは液体を反応ゾーン(および存在する場合には表示ゾーン)に伝達し、ここで創傷液中に存在する(例えば閾値レベルを超えた)ゼラチナーゼ活性によるゼラチン分子の切断は、創傷液と共に有色(ポリスチレン)微粒子のマトリックスに沿った/を介した輸送をもたらし、これによりゼラチナーゼ活性の視覚的指標を与える(これは、存在する場合には表示ゾーンにおいて観察され得る)。上述のあらゆる特徴および実施態様は、この製品に関して必要な変更を加えて関連しており、単純に簡潔さのためにここでは繰り返されない。
【0059】
同様に、本発明はまた、以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる創傷の状態をモニターするための製品を提供する:
a.創傷液を添加する試料適用ゾーン
b.架橋されたゼラチン分子を含み、本質的に該分子からなり、または該分子からなる、試料適用ゾーンの下流にある反応ゾーン;
c.有色(好ましくはポリスチレン)微粒子を含む、本質的に該微粒子からなる、または該微粒子からなる、反応ゾーンの下流にあるゾーン;および、任意に
d.試料適用ゾーンおよび反応ゾーンの下流にある表示ゾーン;
ここで、架橋は(i)メタクリル酸塩もしくはその誘導体、または(ii)グルタルアルデヒドもしくはその誘導体を含み、本質的にこれからなり、またはこれからなり;
試料適用ゾーンは液体を反応ゾーンおよび有色(ポリスチレン)微粒子を含み、本質的に該微粒子からなり、または該微粒子からなるゾーン(および存在する場合には表示ゾーン)に伝達し、ここで反応ゾーンにおけるゼラチン分子は、創傷液が有色(ポリスチレン)微粒子を含み、本質的に該微粒子からなり、または該微粒子からなるゾーン(および存在する場合には表示ゾーン)に到達するのを防ぐ障壁を形成する。創傷液中に存在する(例えば閾値レベルを超えた)ゼラチナーゼ活性によるゼラチン分子の切断は障壁を破壊し、創傷液と共に有色ポリスチレン微粒子のマトリックスに沿った/を介した輸送をもたらし、これによりゼラチナーゼ活性の視覚的指標を与える(これは、存在する場合には表示ゾーンにおいて観察され得る)。上述のあらゆる特徴および実施態様は、この製品に関して必要な変更を加えて関連しており、単純に簡潔さのためにここでは繰り返されない。
【0060】
上述のあらゆる製品および実施態様は、マトリックスを含むハウジングをさらに含み得る。ハウジングが提供される場合、ハウジングは、有色粒子を観察するためにマトリックス上の1以上の表示ゾーンを規定する1以上(例えば2つ)の表示窓を含み得、本質的に該表示窓からなり得、または該表示窓からなり得る。これらの表示窓は、創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において有色粒子が第1の表示窓において確認できるが、第2の表示窓において確認できないように、ハウジングに沿って配置され得る。1以上の表示ゾーンを含み、本質的に該表示ゾーンからなり、または該表示ゾーンからなるこれらの実施態様のために、1以上の表示窓は、表示ゾーンが表示窓を介して確認できる(表示窓によって規定される)ように配列され得る。あるいは、反応ゾーンおよび/または表示ゾーンを含まず、本質的に該ゾーンからならず、または該ゾーンからならないマトリックスの部分は、あらゆる有色粒子がエンドユーザーに確認できないようにマスクされてい得る。これは、解釈される信号を単純化するのに役立つ。
【0061】
より一般的には、関連する態様において、本発明はまた、コラーゲンおよび/またはゼラチンポリマーを含み、本質的に該ポリマーからなり、または該ポリマーからなるテストマトリックスを提供し、該ポリマーはメタクリル酸架橋またはグルタルアルデヒドに由来する架橋を含む。好ましい実施態様において、テストマトリックスは(好ましくは創傷液中の)プロテアーゼ活性を測定するのに適している。テストマトリックスは、本発明の他の態様に関連して本明細書において記述される1以上のあらゆる追加の特徴を含み得る。
【0062】
同様に、本発明はまた、創傷液中のプロテアーゼ活性を測定するのに使用されるメタクリル酸で架橋されたゼラチンポリマーを提供する。
【0063】
さらなる態様において、本発明は、創傷液中のプロテアーゼ活性を測定するための基質としての架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーの使用を開示する。好ましい実施態様において、使用されるポリマーは、コラーゲン、ゼラチンおよび/またはエラスチンポリマーを含み、本質的に該ポリマーからなり、または該ポリマーからなる。ゼラチンが最も好ましい。さらなる実施態様において、架橋はメタクリル酸を含み、本質的にメタクリル酸からなり、もしくはメタクリル酸からなり、かつ/またはグルタルアルデヒドに由来する。
【0064】
別の態様において、本発明は、以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる(対象の)創傷の状態をモニターする方法を提供する:
a.創傷液の試料を本明細書に記述される製品に適用する:および
b.有色粒子によって与えられるプロテアーゼ活性の視覚的指標を検出する。
【0065】
本方法の特定の実施態様において、有色粒子は、創傷液中のプロテアーゼ活性の定量化を与えるマトリックスの領域において測定される。関連する実施態様において、該領域は、本発明の他の箇所において規定されている表示ゾーンを含み、本質的に表示ゾーンからなり、または表示ゾーンからなる。いくつかの実施態様において、本方法に用いられる製品は2つの表示ゾーンを含み、本質的に該ゾーンからなり、または該ゾーンからなり、一方のゾーンにおける有色粒子の減少は第2のゾーンにおける有色粒子の増加と比較される。例えば、創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において、第1の表示ゾーンは有色粒子を含み得、本質的に有色粒子からなり得、または有色粒子からなり得るが、第2の表示ゾーンは有色粒子を含まず、本質的に有色粒子からならず、または有色粒子からならない。創傷液への曝露により、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断は、有色粒子のマトリックスに沿った/を介した放出をもたらす。結果として、有色粒子は第1の表示ゾーンからマトリックスに沿って/を介して第2の表示ゾーンへの創傷液の流れの方向に移動する。好ましい実施態様において、各表示ゾーンにおける色の変化は肉眼で確認できる。あるいは、または肉眼を介する観察に加えて、色の変化は分光光度計またはこの目的に適した他のそのような装置(これは当業者に周知である)を用いて検出および/または定量化され得る。
【0066】
いくつかの実施態様において、本方法は創傷液の流量を補助するために本製品に追加の液体を適用することを含み、本質的に適用することからなり、または適用することからなる。これは「チェイス液(chase fluid)」と呼ばれ得る。追加の液体は緩衝液を含み得、本質的に緩衝液からなり得、または緩衝液からなり得る。緩衝液は、本方法に用いられる創傷液および/または他の物質の性質に適合してい得る。例えば、「チェイス液」は試験紙の細孔を介して創傷液を輸送するために用いられ得る。追加の液体の使用は、放出される有色粒子のマトリックスに沿った/を介した伝達を改善し得る。追加の液体は、有色粒子のマトリックスへの望ましくない接着を防ぐために界面活性剤を含み得、本質的に界面活性剤からなり得、または界面活性剤からなり得る。
【0067】
本発明の別の態様において、本明細書に記述される方法は、創傷液の試料採取および分析を反復することによって創傷の状態を長期的にモニターすることを促進するために間隔を置いて反復される。前記間隔は、1/2、1、2、3、4、5もしくは6日毎、毎週もしくは毎月またはそれらの組合せであり得る。創傷の状態に関する経時的なデータの集約によって、臨床医は創傷の状態の進行および/または処置の有効性をより理解しやすくなる。例えば、記述されているように、創傷液を長期的にモニターすることは臨床医に、創傷の状態が経時的に悪化しており、したがって現在の処置は効果がないことを現在の手法よりも迅速および/または定量的な様式で示し得る。結果的に臨床医は、創傷治癒を促進するために代替の処置をより迅速に選択できる。あるいは、データは臨床医に、創傷液および/または創傷環境のさらなるテストが必要であることを示し得る。
【0068】
さらなる実施態様において、過剰なプロテアーゼ活性が存在しないことは、創傷の既存の任意の処置を継続すべきである(すなわち変更すべきでない)ことを示す。
【0069】
別の態様において、本発明は、以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる創傷液中のプロテアーゼ活性を測定するためのマトリックスを作成する方法を提供する:
a.メタクリル酸で修飾されたポリマーを含む溶液を、創傷液を吸収できるマトリックスに適用する:および
b.該ポリマーにUV光を照射し、これにより該ポリマーを架橋する。
【0070】
したがって、本方法は、反応ゾーンを含み、本質的に反応ゾーンからなり、または反応ゾーンからなるマトリックスを作成する。通常、反応ゾーンはマトリックスの確認可能な表面の分離された部分をカバーし、したがってマトリックスを満たさない。
【0071】
メタクリル酸で修飾されたポリマーは当分野で公知のあらゆる適切な技術/プロトコルを用いて調製され得る。例えば、ポリマーがアミン基(タンパク質/ポリペプチド内のリジンε-アミン基など)を含み、本質的にアミン基(タンパク質/ポリペプチド内のリジンε-アミン基など)からなり、またはアミン基(タンパク質/ポリペプチド内のリジンε-アミン基など)からなる場合、ポリマーは(大)過剰であり得る無水メタクリル酸と反応され得る。Be Hoon Lee et al. (RSC Adv., 2015, 5, 106094-106097)の方法に従って、この反応は、pHを約pH7.0~9.0(これは必要に応じて無水メタクリル酸および水酸化ナトリウムで調整される)で維持するために炭酸緩衝液中において約50℃で約3時間実行され得る。この方法は、タンパク質/ポリペプチド内のリジンε-アミン基の効率的な修飾を可能にする一方で、望ましくない副反応を制限する。作成されたメタクリル酸で修飾されたポリマーは当分野で公知の適切な方法(タンジェンシャルフロー濾過または透析など)を用いて精製され得る。
【0072】
特定の実施態様において、工程a)の溶液は有色粒子を含み、工程b)は有色粒子の架橋されたポリマー内への捕捉をもたらす。
【0073】
さらなる実施態様において、工程a)の溶液は(工程b)におけるUV照射への曝露によって架橋反応を開始/触媒する)適切な光開始剤をさらに含む。特定の実施態様において、工程a)の溶液中の光開始剤、メタクリル酸で修飾されたポリマーおよび有色粒子の終濃度は以下の範囲である:0.01~10%(w/v)光開始剤、0.01~50%(w/v)メタクリル酸で修飾されたポリマー、および0.01~40%(w/v)有色粒子。いくつかの実施態様において、工程a)の溶液中の光開始剤、メタクリル酸で修飾されたポリマーおよび有色粒子の終濃度は以下の範囲である:0.1~1%(w/v)光開始剤、1~10%(w/v)メタクリル酸で修飾されたポリマー、および0.05~5%(w/v)有色粒子。好ましい実施態様において、工程a)の溶液中の光開始剤、メタクリル酸で修飾されたポリマーおよび有色粒子の終濃度は、0.45%光開始剤、8.1%メタクリル酸で修飾されたポリマー、および0.25%有色粒子である。
【0074】
さらなる実施態様において、溶液は少なくとも30℃の温度で適用される。これは、所望するまでメタクリル酸で修飾されたポリマーの凝固を防ぐのに役立つ。いくつかの実施態様において、増粘剤(カルボキシメチルセルロースまたはゼラチンなど)が溶液に添加され得、UV照射前に溶液のマトリックス上への操作を容易にするように溶液の粘度を増加させ得る。
【0075】
特定の実施態様において、マトリックスに適用されるメタクリル酸で修飾されたポリマーを含む溶液の体積は、1~10μl、1~20μl、1~50μl、1~100μlまたは1~1000μlの範囲である。特定の実施態様において、この体積は5μlである。他の実施態様において、この体積は1μlである。
【0076】
特定の実施態様において、ポリマーは(例えば光開始剤の存在下において)UV光で約15~30秒間照射される。いくつかの実施態様において、架橋されたポリマーはマトリックス上/内で乾燥される。これは、例えば(場合により1~5時間、好ましくは3時間の)空気乾燥によるものであり得る。
【0077】
好ましい実施態様において、メタクリル酸で修飾されたポリマーは、ゼラチン、コラーゲンおよび/またはエラスチンポリマーを含み、本質的に該ポリマーからなり、または該ポリマーからなる。
【0078】
さらなる実施態様において、マトリックスは視覚的シンボルを含み、工程a)において溶液は視覚的シンボルを覆うように適用される。視覚的シンボルはあらゆる適切な手段(例えば消えないインク)を用いてマトリックス上に印刷され得る。
【0079】
当業者が認識するように、上述の方法は、本明細書で定義される製品において使用されるマトリックスを作成するために使用され得る。
【0080】
さらなる態様において、本発明は、本明細書で定義される製品を作成するためのキットを提供し、該キットは以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる:
a.架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマー(好ましくは、ゼラチン、コラーゲンおよび/またはエラスチンポリマー);および
b.有色粒子。
【0081】
特定の実施態様において、キットは本明細書に記述されるマトリックスをさらに含む。キットはまた、本明細書に記述されるマトリックスを含むハウジングを含み得る。ハウジングが提供される場合、ハウジングは、有色粒子を観察するための1以上(例えば2つ)の表示窓を含み得、本質的に該表示窓からなり得、または該表示窓からなり得る。これらの表示窓は、創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において有色粒子が第1の表示窓において確認できるが、第2の表示窓において確認できないように、ハウジングに沿って配置され得る。
【0082】
本発明の製品の最も有利なインサイチュでの適用は、創傷被覆材から完全に分離してパッケージ化された別々の製品としてであることが想定されるが、本発明の製品を創傷被覆材に組み込むことも可能である。したがって、本発明はまた、本明細書で定義される本発明の製品を組み込んでいる創傷被覆材を提供する。創傷被覆材および本製品は、部品のキットにおいて提供され得る。したがって、本明細書でさらに詳細に記述されるように、創傷被覆材が創傷上に配置される場合、創傷被覆材は本発明の製品を組み込んでいる。
【0083】
本明細書に記述される製品が、本明細書に記述されるさらなる下流の処理のために十分な創傷液を必ずしも吸収せず、または吸収できないが、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を提供できるのに十分な創傷液を吸収するように設計または利用され得ることが当業者には明らかである。したがって、ある実施態様において、本製品は創傷内プロテアーゼ活性検出器として単独で機能する。これらの実施態様は操作および解釈するのに極めて簡便であるため、有利である。
【0084】
しかしながら、インサイチュでの適用のための本発明の製品の多くの実施態様における重要な態様は、対象からの遠隔設定において創傷液の実験室ベースのさらなるテストを可能にするのに十分な創傷液を吸収する能力であることは、本開示から当業者には明らかである。一度創傷から取り出されると、本製品は創傷液が診断上有用なままであるような様式で実験室に安全に送達される必要がある。したがって、本発明はまた、本明細書に記述される製品、および製品の安全な格納および輸送のための(に適した)容器を含み、本質的にこれらからなり、またはこれらからなるキットを提供する。本製品の創傷との接触および創傷液の吸収後、本明細書においてさらに記述されるように、本製品は創傷から取り出され得、創傷液のさらなる分析のための実験室への安全な輸送を可能にする容器内に配置され得る。
【0085】
マトリックスが本明細書に記述される第1の部分および第2の部分を含み、本質的に該部分からなり、または該部分からなる本製品の実施態様において、第1の部分および第2の部分は、本明細書に記述されるキットにおいて2つの別々の構成要素として提供され得る。特定の実施態様において、これらの2つの構成要素は、使用者が治療現場において2つの構成要素を創傷(液)と接触して配置するために単一のユニットに組み立てることができるように、互いに接続可能であり得る。創傷被覆材は、所定の位置において単一のユニットを保持し得る。ある実施態様において、第2の部分が、本明細書でさらに記述される創傷液の下流の分析に十分な量の創傷液を吸収でき、吸収した場合、この第2の部分のみを本明細書に記述されるように、実験室に安全に送達することが必要とされる。したがって、第2の部分は第1の部分から取り外し可能であり得る。あるいは、ユニット全体がさらなるテストのために送達され得る。第1の部分におけるテスト結果は有用な診断情報を提供するため、第1の部分を伝達することも有利であり得る。
【0086】
ある実施態様において、格納容器の少なくとも内面、および一般に外面を含むあらゆる表面は生物学的に不活性である。
【0087】
さらなる実施態様において、マトリックスと格納容器の内面または表面との接触は、創傷液またはその成分(マーカー)の状態を測定可能なほど変化させない。
【0088】
容器は創傷液が漏出するリスクなしに安全な輸送を可能にするために密封可能であるべきである。封は可逆的であり得、または創傷液にアクセスするために実験室において破壊される必要があり得る。容器は通常、使い捨ての消耗品である。いくつかの実施態様において、容器はプラスチックで作られてい得る。しかしながら、いくつかの実施態様において、容器は適切な(例えばオートクレーブによる)滅菌後に再利用可能であり得る。
【0089】
別の態様において、本発明は、以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる対象の創傷の状態をモニターする方法を提供する:
(a)本明細書に記述される本発明の製品を創傷被覆材下において創傷に接触させて配置する;
(b)製品を創傷に接触させたまま所定の時間放置する;
(c)製品による創傷中のプロテアーゼ活性の視覚的指標の有無を決定する;
ここで視覚的指標の存在は創傷液のさらなる分析の必要性を示す。
【0090】
マトリックスが本明細書に記述される第1の部分および第2の部分を含み、本質的に該部分からなり、または該部分からなる製品の実施態様において、第1の部分および第2の部分は別々の構成要素であり得、互いに接続されなくてもよく、創傷に接触させて所定の時間独立に配置され得る。他の実施態様において、第1の部分および第2の部分は互いに接続可能な別々の構成要素として提供され得、治療現場において使用者によって単一のユニットに組み立てられ得る。この単一のユニットは創傷に接触させて所定の時間配置される。したがって、第2の部分は第1の部分から取り外し可能であり得る。あるいは、ユニット全体がさらなるテストのために送達され得る。第1の部分におけるテスト結果は有用な診断情報を提供するため、第1の部分を伝達することも有利であり得る。特定の実施態様において、第1の部分は、マトリックスの第1の部分上または内において本明細書に記述される架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーを含み、本質的に該ポリマーからなり、または該ポリマーからなる。第1の部分は、第1の部分上または内に含まれる架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーを創傷液(および、したがって創傷液中に含まれ得るプロテアーゼ活性)に曝露させるのに十分な創傷液を吸収できる。したがって、この第1の部分は、本明細書に記述される製品によって創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える。第2の部分は、本明細書においてさらに記述される創傷液の下流の分析に十分な量の創傷液を吸収できる。
【0091】
しかしながら、ある実施態様において、視覚的指標は創傷液のさらなる分析の必要性を決定するために、以下から選択される1以上の指標と組み合わされる:
(i)創傷の臭い
(ii)液体の全体積
(iii)創傷の外観
(iv)対象の全身状態。
【0092】
本製品による視覚的指標が存在しないことは、まとめて評価された場合に創傷液のさらなる分析が必要であることを決定する上記の他の指標のうち1つ以上の存在によって相殺され得る。このような評価は、臨床医または治療現場における介護者(訪問看護師など)によって行われ得る。
【0093】
さらなる実施態様において、本方法は以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる:
(d)本製品を創傷との接触から取り出す;
(e)本製品によって吸収された液体を回収する;
(f)創傷の状態を決定するために回収した液体を分析する。
【0094】
本製品の取り出しには、人とマトリックスとの直接の接触を防ぐために鉗子または別の器具が利用され得る。
【0095】
本製品が、本明細書に記述される第1の部分および第2の部分を含み、本質的に該部分からなり、または該部分からなるマトリックスを含み、本質的に該マトリックスからなり、または該マトリックスからなる具体的な実施態様において、創傷液は、本明細書にさらに記述される創傷液の下流の分析に十分な量の創傷液を吸収している第2のマトリックス部分から回収される。
【0096】
ある実施態様において、工程(d)はさらに、工程(e)を実行する前に本製品の保管および実験室への輸送を含み、本質的にこれらからなり、またはこれらからなる。マトリックスが本明細書に記述される第1の部分および第2の部分を含み、本質的に該部分からなり、または該部分からなる本製品の実施態様のために、ある実施態様において、第2のマトリックス部分は本明細書においてさらに記述される創傷液の下流の分析に十分な量の創傷液を吸収している部分であるため、第2のマトリックス部分のみが保管され、実験室に輸送される。他の実施態様において、例えば第1のマトリックス部分に存在する1以上のマーカーの分解の程度が実験室で評価され得るように、第1のマトリックス部分および第2のマトリックス部分の両方が保管され、実験室に輸送される。したがって、第2の部分は第1の部分から取り外し可能であり得る。あるいは、ユニット全体がさらなるテストのために送達され得る。第1の部分におけるテスト結果は有用な診断情報を提供するため、第1の部分を伝達することも有利であり得る。製品の保管は、工程(e)および(f)の前における安全な格納および輸送に適した本明細書に記述される容器内でなされ得る。ある実施態様において、格納容器の内面および外面は生物学的に不活性である。さらなる実施態様において、マトリックスと格納容器の内面との接触は、創傷液またはその成分の状態を測定可能なほど変化させない。
【0097】
さらなる実施態様において、創傷から取り出された本製品を含む容器は、吸収した創傷液のさらなる分析のために実験室に輸送される。
【0098】
創傷液の回収はあらゆる適切な手段によるものであり得る。マトリックスは創傷液を放出するために圧搾され得、または例えば遠心分離され得る。
【0099】
回収された創傷液の分析は創傷の状態を特徴付ける1以上のテストを含み、本質的に該テストからなり、または該テストからなる。このようなテストは、治療介入および他の臨床的介入の処置および選択を容易にし得る。当業者に容易に理解されるように、あらゆる適切なテストが利用され得る。ある実施態様において、回収された創傷液の分析は、以下のうち1つ以上のレベルおよび/または活性を測定することを含み、本質的に測定することからなり、または測定することからなる:
(i)N末端血清1型プロコラーゲン(P1NP)
(ii)N-アセチル-プロリン-グリシン-プロリン(acPGP)
(iii)好中球浸潤のバイオマーカー。
【0100】
N末端血清1型プロコラーゲン(P1NP)はコラーゲン合成の指標分子である。N-アセチル-プロリン-グリシン-プロリン(acPGP)は、マトリックスメタロプロテアーゼ(特にコラゲナーゼ)によるコラーゲンのタンパク質分解性切断の結果として産生したコラーゲンの分解産物である。結果として、さらなる実施態様において、P1NPおよびacPGPのレベルは治癒指数比(Healing Index Ratio)を決定するために使用され、ここで:
(i)等しいレベルのP1NPおよびacPGPは、コラーゲンの合成および分解の速度がおおよそ釣り合っているため、創傷の治癒および/または処置の成功を示す;
(ii)P1NPと比較して高いレベルのacPGPは、合成されているコラーゲンよりも多くのコラーゲンが分解されているため、創傷内の炎症および/または感染のリスクの増加を示す;
(iii)acPGPと比較して中程度に高いレベルのP1NPは、分解されているコラーゲンよりも多くのコラーゲンが合成されているため、強い治癒の軌跡を示す;
(iv)acPGPと比較して著しく高いレベルのP1NPは、コラーゲンの分解速度に対して過剰量のコラーゲンが合成されているため、創傷内の過剰顆粒形成(hypergranulation)のリスクの増加を示す。
【0101】
「過剰顆粒形成」は創縁の上方に広がり得る肉芽組織の過剰な沈着として理解されるべきであり、新たに形成されたコラーゲン、エラスチンおよび毛細管ネットワークを含み、本質的にこれらからなり、またはこれらからなる。
【0102】
創傷治癒の間、浸潤性好中球は創傷部位に補充され、組織の分解および組織の形成に関与する。そのようなものとして、浸潤性好中球の損傷組織への過剰なまたは減少した流入または活性化は、下流の細胞の移動、増殖、分化、および最終的に治癒反応の質に深刻な影響を及ぼし得る。特に、カルプロテクチンは血漿中に存在することが知られている好中球によって産生されるタンパク質であり、炎症状態において著しく増加する。したがって、ある実施態様において、好中球浸潤のバイオマーカーはカルプロテクチンである。
【0103】
さらなる実施態様において、回収された液体の分析はさらに、または別法として、以下のうち1つ以上のレベルを測定することを含み、本質的に測定することからなり、または測定することからなる;
(i)創傷液中に遊離したリジンおよびプロリン残基のヒドロキシル化;
(ii)血管新生のバイオマーカー;および/または
(iii)血管分化のバイオマーカー。
【0104】
ある実施態様において、創傷液中に遊離したリジンおよびプロリン残基の低いレベルのヒドロキシル化は、血流の増加および酸素の創傷へのアクセスを促進するための処置の必要性を示す。
【0105】
ある実施態様において、血管新生のバイオマーカーは血管内皮増殖因子を含み、本質的に血管内皮増殖因子からなり、または血管内皮増殖因子からなる。
【0106】
ある実施態様において、血管分化のバイオマーカーは細胞間接着分子を含み、本質的に細胞間接着分子からなり、または細胞間接着分子からなる。
【0107】
ある実施態様において、低いレベルの血管内皮増殖因子および/または細胞間接着分子は、創傷を外部から適用される血管内皮増殖因子サプリメントで処置する必要性を示す。
【0108】
さらなる実施態様において、回収された液体の分析はさらに、または別法として、以下のうち1つ以上のレベルおよび/または活性を測定することによって創傷の一酸化窒素(NO)状態を決定することを含み、本質的に決定することからなり、または決定することからなる;
(i)誘導型一酸化窒素合成酵素;
(ii)カルボキシメチルリジン;
(iii)アルギナーゼ。
【0109】
当分野で理解されるように、誘導型一酸化窒素合成酵素の欠如は生理的恒常性に通常必要とされるNO応答をできなくする。同様に、カルボキシメチルリジンの蓄積は創傷部位がNO不足状態にあることを示す。また、アルギナーゼはNOを産生しない代謝経路においてアルギニンを消費し、NO合成酵素の競合物質であることが認識されている。
【0110】
低い一酸化窒素状態は、創傷を患う対象を一酸化窒素療法またはアルギニン栄養補助食品で処置する必要性を示す。
【0111】
さらなる実施態様において、回収された液体の分析はさらに、以下のマーカーのうち1つ以上のレベルを測定することを含み、本質的に測定することからなり、または測定することからなる;
(i)デスモシン
(ii)マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP8)
(iii)カルプロテクチン
(iv)TIMP1
(v)TIMP2
(vi)A1AT
(vii)インターロイキン6。
【0112】
マーカーレベルは、創傷液中のマーカーの発現および/または活性および/または量および/または濃度のレベルを意味する。発現レベルは活性と相関し得、したがって活性の代替として使用され得る(逆もまた同様)。
【0113】
当業者は、P1NP、acPGP、リジンおよびプロリン残基のヒドロキシル化、血管新生、血管内皮増殖因子、血管分化、細胞間接着分子、誘導型一酸化窒素合成酵素、カルボキシメチルリジン、アルギナーゼ、デスモシン、MMP8、カルプロテクチン、TIMP1、TIMP2、A1ATまたはインターロイキン6のレベルを決定する技術および方法に精通している。
【0114】
例えば、発現レベルはあらゆる適切な方法に従ってタンパク質またはmRNAのレベルにおいて測定され得る。タンパク質修飾(グリコシル化など)もまた関連し得、あらゆる適切な方法によって測定され得る。このような多くの方法が当分野で周知であり、これは質量分析法(例えばMALDI-TOF質量分析法)の使用を含む。
【0115】
マーカー(例えばタンパク質)の発現レベルおよび/または量および/または濃度は、結合試薬(対象のマーカー(例えばタンパク質)に特異的に結合する抗体またはアプタマーなど)に依存し得る。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルの起源であり得る。また、フラグメントおよび誘導体抗体が利用され得、これは特異的な結合機能を保持しているFabフラグメント、ScFv、単一ドメイン抗体、ナノ抗体、重鎖抗体およびアプタマーなどを含むが、これらに限定されず、これらは「抗体」の定義に含まれる。このような抗体は本発明の方法に有用である。これらは特定のマーカー(例えばタンパク質、または場合によりタンパク質の1以上の特定のアイソフォーム)のレベルを測定するために使用され得る。当業者は特定のアイソフォームを互いに区別することを可能にするエピトープを同定できる。
【0116】
具体的な抗体を作製する方法は当業者に公知である。抗体はヒトまたは非ヒト起源(例えばラットまたはマウスなどのげっ歯類)であり得、公知の技術(Jones et al., Nature (1986) May 29-Jun. 4;321(6069):522-5; Roguska et al., Protein Engineering, 1996, 9(10):895-904;およびStudnicka et al., Humanizing Mouse Antibody Frameworks While Preserving 3-D Structure. Protein Engineering, 1994, Vol.7, pg 805)に従ってヒト化などがされてい得る。
【0117】
ある実施態様において、マーカーの発現レベルおよび/または量および/または濃度は、標識と結合した抗体またはアプタマーを用いて決定される。標識は検出を直接的または間接的に可能にする成分を意味する。例えば、標識は酵素(例えばペルオキシダーゼ)またはフルオロフォアであり得る。
【0118】
標識は検出物質の一例である。検出物質は抗体-マーカー(例えばタンパク質)複合体の検出を補助するのに使用され得る物質を意味する。抗体が酵素と結合している場合、検出物質は、酵素が検出可能な生成物を生成する化学反応を触媒するように、化学成分を含み得、本質的に該化学成分からなり得、または該化学成分からなり得る。適切な酵素によって触媒される反応の生成物は限定されないが、蛍光性、発光性もしくは放射性であり得、またはこの生成物は可視光もしくは紫外光を吸収もしくは反射し得る。このような検出可能な標識を検出するのに適した検出器の例には、限定されないが、X線フィルム、放射能計数器、シンチレーションカウンター、分光光度計、比色計、蛍光光度計、ルミノメーター、光検出器および濃度計が含まれる。ある実施態様において、検出物質は二次抗体を含み得、本質的に二次抗体からなり得、または二次抗体からなり得る。発現レベルは標的タンパク質に結合する非標識一次抗体および標識と結合した二次抗体を用いて決定され、ここで二次抗体は一次抗体に結合する。
【0119】
マーカーのタンパク質のレベルでの発現レベルおよび/または量および/または濃度を決定するさらなる技術には、例えばウエスタンブロット、免疫沈降、免疫細胞化学、質量分析、ELISAおよび他の技術が含まれる(ImmunoAssay: A Practical Guide, edited by Brian Law, published by Taylor & Francis, Ltd., 2005 edition参照)。免疫反応性に基づくアッセイ方法の特異度および感度を改善するため、モノクローナル抗体がその特異的なエピトープ認識のためによく使用される。ポリクローナル抗体もまた、モノクローナル抗体と比較して増加した標的に対する親和性のために様々な免疫アッセイにおいてうまく使用されている。いくつかの実施態様において、タンパク質のレベルはラテラルフローアッセイを用いて検出され得る。
【0120】
生体試料中のmRNAの測定は、創傷液中の対応するタンパク質のレベルの検出の代替として使用され得る。したがって、本明細書に記述されるあらゆる関連するマーカーの発現レベルは、適切なRNAを検出することによっても検出され得る。
【0121】
したがって、具体的な実施態様において、発現レベルは、マイクロアレイ、ノザンブロッティング、配列決定法(RNAseqなどの次世代シークエンシングを含む)または核酸増幅によって決定される。核酸増幅は、PCRおよびそのあらゆる変形(リアルタイムおよびエンドポイント法ならびにqPCRなど)を含む。他の核酸増幅技術は当分野で周知であり、NASBA、3SRおよび転写介在性増幅(TMA)などの方法が含まれる。他の適切な増幅方法には、リガーゼ連鎖反応(LCR)、標的ポリヌクレオチド配列の選択的増幅(米国特許第6,410,276号)、コンセンサス配列プライムポリメラーゼ連鎖反応(consensus sequence primed polymerase chain reaction)(米国特許第4,437,975号)、任意プライムポリメラーゼ連鎖反応(WO90/06995)、インベーダー技術、鎖置換技術、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ニッキング酵素増幅反応(NEAR)、ニック置換増幅(WO2004/067726)が含まれる。このリストは網羅的であることを意図していない;適切な核酸産物が特異的に増幅されるのであれば、あらゆる核酸増幅技術が使用され得る。適切なプライマーおよび/またはプローブの設計は当業者の能力の範囲内である。様々なプライマー設計ツール(NCBI Primer-BLASTツールなど)が自由に利用でき、このプロセスに役立つ。プライマーおよび/またはプローブは少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25(またはそれ以上の)ヌクレオチド長であり得る。mRNA発現レベルは逆転写定量ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR後のqPCR)によって測定され得る。RT-PCRはmRNAからcDNAを作製するために使用される。cDNAはqPCRアッセイにおいて使用され得、DNA増幅プロセスが進行した場合に蛍光を発し得る。検量線との比較によって、qPCRは絶対的な測定値(細胞当たりのmRNAのコピー数など)を生成し得る。キャピラリー電気泳動と組み合わせたノザンブロッティング、マイクロアレイ、インベーダーアッセイおよびRT-PCRは全て、試料中のmRNAの発現レベルを測定するために使用されている。Gene Expression Profiling: Methods and Protocols, Richard A. Shimkets, editor, Humana Press, 2004参照。
【0122】
RNA発現は、RNAの一連のプローブへのハイブリダイゼーションによって決定され得る。プローブはアレイ内に配置されてい得る。マイクロアレイプラットフォームは企業(Affymetrix、IlluminaおよびAgilentなど)が製造しているものを含む。RNA発現はまた、次世代シークエンシング技術(RNA-seqなど)を用いてモニターされ得る。
【0123】
同様に、1以上のマーカーの活性(例えば酵素活性)が創傷液において測定され得る。酵素活性は、例えば基質(これは標識されてい得る)のプロセシングを検出することによって測定され得る。例えば、アッセイは蛍光発生基質アッセイであり得る。酵素活性は、適切なラテラルフローアッセイを用いて検出され得る。適切なアッセイ形式の例には、国際特許出願WO2009/024805、WO2009/063208、WO2007/128980、WO2007/096642、WO2007/096637、WO2013/156794およびWO2013/156795(これらの各内容は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載のアッセイが含まれる。
【0124】
本発明の別の態様において、本明細書に記述される方法は、創傷液の試料採取および分析を反復することによって創傷の状態を長期的にモニターすることを促進するために間隔を置いて反復される。したがって、例えば、創傷に所定の期間接触しており、創傷液を吸収している本明細書に記述される製品を取り出した後、創傷を再被覆する前に、本明細書に記述される新たな滅菌された製品が新たな創傷被覆材下において創傷に接触して配置され、本方法は創傷に接触している新たな製品に関して反復される。前記間隔は、1/2、1、2、3、4、5もしくは6日毎、毎週もしくは毎月またはそれらの組合せであり得る。前記間隔はまた、24時間、48時間、120時間もしくは144時間またはそれらの組合せであり得る。本明細書で議論されるように、本製品は、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標(すなわち創傷の状態の変化)が与えられた場合にのみ、さらなるテストのために実験室に送達され得る。それにもかかわらず、創傷が再被覆される毎に新たな製品を使用することによって、初期のマーカーのテストは定期的に反復して実行され、結果として下流のテストのための試料が毎回得られるという利点が得られる。
【0125】
この様式において創傷液を長期的にモニターすることはまた、所定の期間創傷液に接触させた(「所定の接触時間」)後の本製品による視覚的指標の非存在下においても実行され得る。例えば、本製品は創傷との接触から取り出され得(そして、新たな滅菌された製品が配置され得)、創傷由来の液体が試料採取されてから所定の期間(「所定の試料採取時間」)が経過している場合、吸収された創傷液は本明細書に記述されるように分析される。所定の試料採取時間は、1、2、3、4、5もしくは6日毎、毎週もしくは毎月またはそれらの組合せであり得る。所定の試料採取時間はまた、24時間毎、48時間毎、120時間毎もしくは144時間毎またはそれらのあらゆる組合せであり得る。好ましい実施態様において、所定の試料採取時間は、(介在期間における本製品由来の視覚的指標の非存在下において)前回試料が採取されてから4週間後である。したがって、例えば、本製品は創傷が被覆されるたびに、または約3~4日間隔で配置され得る。介在期間において視覚的指標を示す本製品がない場合においても、本製品は月に一度、慣例的に実験室に送達され得る。
【0126】
創傷液の経時的な試料採取および分析を介した創傷の状態に関する経時的なデータの集約によって、臨床医は創傷の状態の進行および/または処置の有効性をより理解しやすくなる。例えば、記述されているように、創傷液を長期的にモニターすることは臨床医に、創傷の状態が経時的に悪化しており、したがって現在の処置は効果がないことを現在の手法よりも迅速および/または定量的な様式で示し得る。結果的に臨床医は、創傷治癒を促進するために代替の処置をより迅速に選択できる。あるいは、データは臨床医に、創傷液および/または創傷環境のさらなるテストが必要であることを示し得る。さらに、集約されたデータは、臨床医が創傷の状態の経時的な変化の程度および方向に依存して、介護者(訪問看護師または家族など)による創傷液のさらなる試料採取および創傷の再被覆に関する訪問スケジュールを立てることを可能にする。
【0127】
さらなる実施態様において、創傷液中に過剰なプロテアーゼ活性が存在しないことは、創傷の既存の処置を継続すべきである(すなわち変更すべきでない)ことを示す。
【0128】
本発明の別の関連する態様において、創傷の状態をエクスサイチュでモニターするために(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーを含む本製品が提供される。本製品は、創傷液中の(例えば(所定の)閾値レベル以上の)プロテアーゼ活性のラテラルフローに基づく検出を可能にする。本製品は、迅速で高感度なエクスサイチュにおける治療現場での検出を可能にする。結果として、プロテアーゼ感受性ポリマーの創傷液への曝露は通常、より少ない時間である。
【0129】
したがって、本発明のこの態様において、創傷の状態をモニターするための製品が提供され、該製品は以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる:
a.創傷液を添加する試料適用ゾーン
b.(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーを含み、本質的に該ポリマーからなり、または該ポリマーからなる、試料適用ゾーンの下流にある反応ゾーン;
c.有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなる、試料適用ゾーンの下流にあるゾーン;
d.試料適用ゾーン、反応ゾーンおよび有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーンの下流にある表示ゾーン;
ここで、試料適用ゾーンは液体を表示ゾーンに伝達する(ここで、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断は、創傷液と共に有色粒子の表示ゾーンへの輸送をもたらし、これにより第1の表示ゾーンにおいてプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える)。創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において、表示ゾーンは有色粒子を含まない。したがって、有利なことに、創傷液中のプロテアーゼ活性の存在下における有色粒子の表示ゾーンへの伝達は、創傷液中のプロテアーゼ活性の正の指標を使用者に与える。好ましい実施態様において、表示ゾーンにおける色の変化および/または増強は肉眼で確認できる。あるいは、または肉眼を介した観察に加えて、色の変化および/または増強は、分光光度計またはこの目的に適した他のそのような装置(これは当業者に周知である)を用いて検出および/または定量化され得る。
【0130】
ゾーン間の創傷液の伝達はあらゆる適切な(例えば毛細管作用を介する)手段によるものであり得る。本開示のあらゆる箇所において、ゾーンは創傷液に曝露される前の状態における製品と共に規定されることに言及しておく。したがって、本製品は、創傷液の試料適用ゾーンから反応ゾーンおよび有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーンを介し、表示ゾーンへの方向性のある流動に依存している。したがって、本製品は、試料適用ゾーン、反応ゾーン、有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーン、および表示ゾーンを配置する固体支持体を提供する。あらゆる適切な固体支持体が利用され得る。例えば、本製品は固体支持体として試験紙またはキャピラリーフローデバイス(capillary flow device)を含み得、本質的にこれからなり得、またはこれからなり得る。固体支持体はクロマトグラフ媒体を含み得、本質的にクロマトグラフ媒体からなり得、またはクロマトグラフ媒体からなり得る。固体支持体は液体が通過できるあらゆる物質(流体チャンネルまたは多孔質膜など)で作成され得る。本発明のある実施態様において、クロマトグラフ媒体はストリップまたは膜(例えばニトロセルロースストリップまたはニトロセルロース膜)を含み、本質的にこれからなり、またはこれからなる。キャピラリーフローデバイスの場合、試料適用ゾーン、反応ゾーン、有色粒子ゾーンおよび表示ゾーンのうち1つ以上は、キャピラリーチャンネル(capillary channel)によって接続された別々のチャンバーに位置する。いくつかの実施態様において、本発明の製品は試験紙およびキャピラリーフローチャンネル(capillary flow channel)の組み合わせに依存し得る。例えば、試料適用ゾーンは吸収性物質を含み得、本質的に吸収性物質からなり得、または吸収性物質からなり得、創傷液は反応ゾーンに沿って流れる。反応ゾーンの下流において、固体支持体は(試料適用ゾーンおよび/または反応ゾーンと比較して)狭いキャピラリーチャンネルを規定し得、表示ゾーンにおける有色粒子の濃度を補助し得る。いくつかの実施態様において、本製品は本明細書に記述されるように、試料適用ゾーン、反応ゾーン、有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーンおよび表示ゾーンが配置されているマトリックスを含み、本質的に該マトリックスからなり、または該マトリックスからなる。
【0131】
本発明の特定の実施態様において、試験紙およびキャピラリーデバイスは1以上のデボス加工されたキャピラリーフローチャンネルを含み得る。例えば、1以上のデボス加工されたキャピラリーフローチャンネルを含む試験紙またはキャピラリーフローデバイスは2つの(例えばプラスチックの)部分から形成され得、各部分は1以上のデボス加工された領域/空洞を有する面を含み、2つの部分は(例えば超音波溶接または接着によって)互いに連結され、各面上のデボス加工された領域/空洞が1以上のキャピラリーフローチャンネルを形成するように配置されている。あるいは、試験紙またはキャピラリーフローデバイスは、1以上のデボス加工された領域/空洞を有する面を含む単一の(例えばプラスチックの)部分を含み得る。前記1以上のデボス加工された領域/空洞上に、1以上のデボス加工された領域/空洞を含む前記面と連結している接着層が置かれ、したがって1以上のキャピラリーフローチャンネルを形成する。接着層は例えば平箔またはフィルム層であり得る。接着層は、あらゆる適切な手段(例えば接着または超音波溶接)によって1以上のデボス加工された領域/空洞を含む面と連結され得る。
【0132】
特定の実施態様において、有色粒子は反応ゾーン内に含まれる。したがって、有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーンは反応ゾーン内に組み込まれる(すなわち、これらは1つであり、全体として同一の「ゾーン」である)。
【0133】
さらなる実施態様において、有色粒子はポリマー内に捕捉されている。これはポリマーを有色粒子と共に乾燥させることによって達成され得る。結果として、ポリマーは捕捉された粒子の着色を示す。ポリマーが創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によって切断されない限り、有色粒子はポリマー内に捕捉されたままである。創傷液を試料適用ゾーンに添加した後、創傷液は反応ゾーンに伝達される。創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断は有色粒子の表示ゾーンへの放出をもたらし、これにより表示ゾーンを介して創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える。
【0134】
有色粒子が架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーに捕捉されているこれらの実施態様のために、これはポリマーを有色粒子と共に乾燥させることによって達成され得る。結果として、ポリマーは捕捉された粒子の着色を示す。ポリマーが創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によって切断されない限り、有色粒子はポリマー内に捕捉されたままである。創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断の後、有色粒子はマトリックスに沿って/を介して輸送され、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える。本明細書の他の箇所に記述されるように、いくつかの好ましい実施態様において、架橋剤はメタクリル酸塩またはその誘導体である。ポリマー分子(通常、ゼラチン、コラーゲンおよび/またはエラスチン)は、メタクリル酸、無水メタクリル酸またはそれらの誘導体で修飾され、その後、メタクリル酸、無水メタクリル酸またはそれらの誘導体は当業者に公知の適切な条件下で結合される。したがって、これらの実施態様のために、ポリマー間の架橋は、メタクリル酸塩またはその誘導体を含み、本質的にこれからなり、またはこれからなる。他の実施態様において、グルタルアルデヒドまたはその誘導体が架橋剤として使用され得る。架橋は当業者に公知のあらゆる適切な条件下で達成され得る。ゼラチンを含み、本質的にゼラチンからなり、またはゼラチンからなるポリマー分子が最も好ましい。
【0135】
したがって、本発明はまた、以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる創傷の状態をモニターするための製品を提供する:
a.創傷液を添加する試料適用ゾーン
b.(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマー内に捕捉された有色粒子を含み、本質的に該有色粒子からなり、または該有色粒子からなる、試料適用ゾーンの下流にある反応ゾーン;および、
c.試料適用ゾーンおよび反応ゾーンの下流にある表示ゾーン;
ここで、試料適用ゾーンは液体を表示ゾーンに伝達し、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断は、創傷液と共に有色粒子の表示ゾーンへの輸送をもたらし、これにより第1の表示ゾーンにおいてプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える。
【0136】
代替の実施態様において、有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーンが反応ゾーンの下流に存在する(すなわち、該ゾーンは反応ゾーンとは別個であり、反応ゾーンと表示ゾーンとの間に配置される)。
【0137】
したがって、本発明はまた、以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる創傷の状態をモニターするための製品を提供する:
a.創傷液を添加する試料適用ゾーン
b.(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーを含み、本質的に該ポリマーからなり、または該ポリマーからなる、試料適用ゾーンの下流にある反応ゾーン;
c.有色粒子を含み、本質的に該有色粒子からなり、または該有色粒子からなる、反応ゾーンの下流にあるゾーン;
d.試料適用ゾーン、反応ゾーンおよび有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーンの下流にある表示ゾーン;
ここで、試料適用ゾーンは液体を表示ゾーンに伝達し、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断は、創傷液と共に有色粒子の表示ゾーンへの輸送をもたらし、これにより第1の表示ゾーンにおいてプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える。
【0138】
特定の実施態様において、反応ゾーンおよび/またはそれに含まれ、本質的にそれからなり、またはそれからなる(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーは、(それに含まれるプロテアーゼ活性が十分に存在しない場合において)創傷液が通過することを防ぐ(より具体的には、創傷液が反応ゾーンの下流にあるゾーン(すなわち、有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーンおよび表示ゾーン)に到達することを防ぐ)障壁を形成する。創傷液への曝露により、創傷液中に存在する(例えば閾値レベルを超えた、十分な)プロテアーゼ活性によるポリマーの切断は障壁を破壊し、有色粒子の表示ゾーンへの輸送をもたらし、これにより表示ゾーンを介して創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える。したがって、有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーンが反応ゾーンの下流にあるこれらの実施態様のために、ポリマーが創傷液中に存在する(例えば閾値レベルを超えた)プロテアーゼ活性によって切断され、障壁が破壊されない限り、有色粒子が創傷液に接触することは妨げられる。
【0139】
いくつかの実施態様において、本製品は、創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において、有色粒子にマスクされている視覚的シンボルを含む。例えば、視覚的シンボルは、あらゆる適切な手段(例えば消えないインク)を用いて有色粒子が最初に沈着しているマトリックス上に印刷され得る。創傷液への曝露の後、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断は、有色粒子の表示ゾーンへの輸送をもたらし、これにより視覚的シンボルが現れる。
【0140】
さらなる実施態様において、本製品は、創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下に、有色粒子が第2の表示ゾーンにおいて確認できるように、有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーンに配列された(例えば、該ゾーン上の、および/または該ゾーンによって規定された)第2の表示ゾーンをさらに含む。本明細書において、このさらなる表示ゾーンは「第2の表示ゾーン」と呼ばれる。このような実施態様のために、表示ゾーンのみが明白な視覚的指標を使用者に提供できるように、製品の残部はマスクされてい得る。
【0141】
さらなる実施態様において、試料適用ゾーン、反応ゾーンおよび有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーンの下流にある表示ゾーンは、表示ゾーンにおいて有色粒子を捕獲するための捕獲分子を含み、本質的に該捕獲分子からなり、または該捕獲分子からなる。これは、容易に解釈される信号の生成を補助し得る。捕獲分子は、信号(したがってプロテアーゼ活性)のある程度の定量化を可能にし得る目で確認できる線または他のシンボルを生成するように配置され得る。捕獲分子は有色粒子に結合できるあらゆる分子である。これらは、例えば有色粒子に特異的に結合する抗体またはアプタマーを含み得、本質的にこれからなり得、またはこれからなり得る。具体的な実施態様において、捕獲分子は有色粒子に特異的に結合する抗体である。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルの起源であり得る。また、フラグメントおよび誘導体抗体が利用され得、これは特異的な結合機能を保持しているFabフラグメント、ScFv、単一ドメイン抗体、ナノ抗体、重鎖抗体およびアプタマーなどを含むが、これらに限定されず、これらは「抗体」の定義に含まれる。具体的な抗体およびアプタマーを作製する方法は当業者に周知である。抗体はヒト起源または非ヒト起源(例えばラットまたはマウスなどのげっ歯類)であり得、公知の技術(Jones et al., Nature (1986) May 29-Jun. 4;321(6069):522-5; Roguska et al., Protein Engineering, 1996, 9(10):895-904; and Studnicka et al., Humanizing Mouse Antibody Frameworks While Preserving 3-D Structure. Protein Engineering, 1994, Vol.7, pg 805)に従ってヒト化などがされてい得る。
【0142】
さらなる実施態様において、本製品は、試料適用ゾーン、反応ゾーンおよび有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーンの下流にある表示ゾーンの下流端に障壁を含む。すなわち、表示ゾーンは、有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーンと障壁との間に配置され、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断後、有色粒子が表示ゾーンに放出された後に有色粒子が表示ゾーンに蓄積するように、障壁は表示ゾーンに対して配置される。したがって、障壁は、放出された有色粒子が表示ゾーンを超えて移動することを防ぐ。例えば、障壁は多孔性物質を含み得、本質的に多孔性物質からなり得、または多孔性物質からなり得、ここで孔径は、液体およびカットオフ値未満の分子量を有する分子は障壁を通過できるが、有色粒子が障壁を通過できるほど大きくない孔径である。当業者は、用いる有色粒子に依存する適切な分子量カットオフを有する適切な物質を選択できる。あるいは、固体支持体がクロマトグラフ媒体(ニトロセルロース膜など)または他の多孔質膜を含み、本質的にこれからなり、またはこれからなる実施態様のために、障壁は固体支持体自体の領域を含み得、この領域は有色粒子の直径よりも小さい孔径を有する(一方で、液体の通過を未だ可能とする)細孔を含む。このような領域は、例えばマトリックスのこの領域を圧搾または圧縮することによって作成され得る。圧縮は、有色粒子の直径よりも小さくなるように孔径を減少させるのに十分な程度である。したがって、有色粒子は圧搾/圧縮された領域(障壁)を通過できず、したがって創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断後における有色粒子の表示ゾーンへの放出の後に表示ゾーン内に蓄積する。
【0143】
具体的な実施態様において、(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーは(コラーゲンプラークを形成していてもよい)コラーゲンを含み、本質的に該コラーゲンからなり、または該コラーゲンからなる。好ましい実施態様において、コラーゲンは本発明における使用の前に、完全に、実質的にまたは部分的に変性している。これがコラーゲンの部分的な加水分解によって生じている場合、当業者に周知のように、これは「ゼラチン」と呼ばれる。したがって、これらの好ましい実施態様において、ポリマーはゼラチンを含み、本質的にゼラチンからなり、またはゼラチンからなる。いくつかの実施態様において、ポリマーはエラスチンを含み、本質的にエラスチンからなり、またはエラスチンからなる。
【0144】
特定の実施態様において、試料適用ゾーンおよび反応ゾーンは少なくとも部分的に重複している。したがって、いくつかの実施態様において、創傷液は反応ゾーンに直接添加され得る。これは、プロテアーゼ活性の非存在下において本製品を介した創傷液の輸送を防ぐためのその上流部分である。
【0145】
したがって、本発明はまた、以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる創傷の状態をモニターするための製品を提供する:
a.創傷液を添加する試料適用ゾーン;
b.(架橋されていてもよい)ゼラチン内に捕捉されている有色(好ましくはポリスチレン)微粒子を含み、本質的に該微粒子からなり、または該微粒子からなる、試料適用ゾーンの下流にある反応ゾーン;および
c.試料適用ゾーンおよび反応ゾーンの下流にある表示ゾーン;
ここで、試料適用ゾーンは液体を表示ゾーンに伝達し、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるゼラチンの切断は、創傷液と共に有色(ポリスチレン)微粒子の表示ゾーンへの輸送をもたらし、これにより第1の表示ゾーンにおいてプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える。
【0146】
本発明はまた、以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる創傷の状態をモニターするための製品を提供する:
a.創傷液を添加する試料適用ゾーン;
b.(架橋されていてもよい)ゼラチンを含み、本質的に該ゼラチンからなり、または該ゼラチンからなる、試料適用ゾーンの下流にある反応ゾーン;
c.有色(好ましくはポリスチレン)微粒子を含み、本質的に該微粒子からなり、または該微粒子からなる、反応ゾーンの下流にあるゾーン;
d.試料適用ゾーン、反応ゾーン、および有色ポリスチレン微粒子を含み、本質的に該微粒子からなり、または該微粒子からなるゾーンの下流にある表示ゾーン;
ここで、試料適用ゾーンは液体を表示ゾーンに伝達し、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるゼラチンの切断は、創傷液と共に有色(ポリスチレン)微粒子の表示ゾーンへの輸送をもたらし、これにより第1の表示ゾーンにおいてプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える。
【0147】
上述のあらゆる製品および実施態様は、製品を含むハウジングをさらに含み得る。ハウジングが提供される場合、ハウジングは有色粒子を観察するための1以上(例えば2つ)の表示窓を含み得、本質的に該表示窓からなり得、または該表示窓からなり得る。これらの表示窓は、創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において有色粒子が第1の表示窓において確認できるが、第2の表示窓において確認できないように、ハウジングに沿って配置され得る。表示窓は本製品の表示ゾーンを規定するのに役立つ。したがって、1以上の表示ゾーンを含むこれらの実施態様のために、1以上の表示窓は、表示ゾーンが表示窓を介して確認できるように配列され得る。
【0148】
いくつかの実施態様において、創傷液への曝露の前に、プロテアーゼ感受性ポリマー、有色粒子および任意成分である1以上の架橋剤は混合され得、混合物として反応ゾーン(これは、本明細書の他の箇所で記述されるように試料適用ゾーンと重複してい得る)に適用され得る。創傷液への曝露の前に、混合物は、1以上の架橋剤が存在する場合に架橋形成を促進し、かつ/またはしたがって有色粒子が捕捉されている(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーを反応ゾーン内に固定するために、(例えばUV光を用いて)乾燥または硬化され得る。この手法は治療現場において行われ得る。したがって、本発明はまた、以下を含む部品のキットを提供する:
(i)本明細書に規定される試料適用ゾーン、((架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーおよび有色粒子を有さない)反応ゾーンおよび表示ゾーンを含む製品;
(ii)プロテアーゼ感受性ポリマー;
(iii)有色粒子;および
(iv)任意に1以上の架橋剤(好ましくはメタクリル酸塩、無水メタクリル酸またはそれらの誘導体)。
【0149】
いくつかの実施態様において、プロテアーゼ感受性ポリマーおよび有色粒子は予め形成された混合物として提供される。
【0150】
部品のキットの製品(上記特徴(i)参照)はさらに、本明細書に記述される1以上のさらなる特徴(ハウジング、第2の表示ゾーンおよび/または障壁など)を含み得る。これらの特徴は、単純に簡潔さのためにここでは繰り返されない。
【0151】
代替の実施態様において、創傷液への曝露の前に、プロテアーゼ感受性ポリマーおよび任意成分である1以上の架橋剤は混合され得、混合物として反応ゾーン(これは、本明細書の他の箇所で記述されるように試料適用ゾーンと重複してい得る)に適用され得る。有色粒子は反応ゾーンと表示ゾーンとの間に配置される別個のゾーンに適用される。創傷液への曝露の前に、混合物は、1以上の架橋剤が存在する場合に架橋形成を促進し、かつ/または(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーを反応ゾーン内に固定するために、(例えばUV光を用いて)乾燥または硬化され得る。この手法は治療現場において行われ得る。したがって、本発明はまた、以下を含む部品のキットを提供する:
(i)本明細書に規定される試料適用ゾーン、((架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーを有さない)反応ゾーン、表示ゾーン、および反応ゾーンと表示ゾーンとの間に配置される有色粒子を受け取るゾーンを含む製品;
(ii)プロテアーゼ感受性ポリマー;
(iii)有色粒子;および
(iv)任意に1以上の架橋剤(好ましくはメタクリル酸塩、無水メタクリル酸またはそれらの誘導体)。
【0152】
いくつかの実施態様において、プロテアーゼ感受性ポリマーおよび有色粒子は予め形成された混合物として提供される。
【0153】
部品のキットの製品(上記特徴(i)参照)はさらに、本明細書に記述される1以上のさらなる特徴(ハウジング、第2の表示ゾーンおよび/または障壁など)を含み得る。これらの特徴は、単純に簡潔さのためにここでは繰り返されない。
【0154】
特定の実施態様において、マトリックスはクロマトグラフ媒体を含み、本質的にクロマトグラフ媒体からなり、またはクロマトグラフ媒体からなる。いくつかの実施態様において、マトリックスは1以上のキャピラリーフローチャンネルを含み、本質的に1以上のキャピラリーフローチャンネルからなり、または1以上のキャピラリーフローチャンネルからなり、創傷液はこれに沿って/を介して移動し得る。さらに、マトリックスは、一度試料適用ゾーン(または本明細書に記述される類似のもの)に適用された創傷液がマトリックスに沿って/を介して移動する際に濃縮されるようにエッチングされてい得る。したがって、有利なことに、本製品を用いてプロテアーゼ活性を検出するのに必要な創傷液の量は減少する。
【0155】
あるいは、反応ゾーンおよび/または表示ゾーンを含まず、本質的に該ゾーンからならず、または該ゾーンからならない本製品の部分は、あらゆる有色粒子がエンドユーザーに確認できないようにマスクされてい得る。これは、解釈される信号を単純化するのに役立つ。
【0156】
関連する態様において、本発明はまた、以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる創傷の状態をモニターする方法を提供する:
i.創傷液の試料を、以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる製品の試料適用ゾーンに適用する:
a.創傷液を添加する試料適用ゾーン;
b.(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマーを含み、本質的に該ポリマーからなり、または該ポリマーからなる、試料適用ゾーンの下流にある反応ゾーン;
c.有色粒子を含み、本質的に該有色粒子からなり、または該有色粒子からなる、試料適用ゾーンの下流にあるゾーン;および
d.試料適用ゾーン、反応ゾーンおよび有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーンの下流にある表示ゾーン;
ここで、試料適用ゾーンは液体を表示ゾーン(これは創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において有色粒子を含まない)に伝達し、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断は、創傷液と共に有色粒子の表示ゾーンへの輸送をもたらし、これにより第1の表示ゾーンにおいてプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える;ならびに
ii.表示ゾーンにおける有色粒子によって与えられるプロテアーゼ活性の視覚的指標を検出する。
【0157】
いくつかの実施態様において、有色粒子は、創傷液への曝露の前に反応ゾーンにおけるプロテアーゼ感受性ポリマー内に捕捉されてい得る。したがって、本発明はまた、以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる創傷の状態をモニターする方法を提供する:
i.創傷液の試料を、以下を含み、本質的に以下からなり、または以下からなる製品の試料適用ゾーンに適用する:
a.創傷液を添加する試料適用ゾーン;
b.(架橋されていてもよい)プロテアーゼ感受性ポリマー内に捕捉されている有色粒子を含み、本質的に該有色粒子からなり、または該有色粒子からなる、試料適用ゾーンの下流にある反応ゾーン;および
c.試料適用ゾーンおよび反応ゾーンの下流にある表示ゾーン;
ここで、試料適用ゾーンは液体を表示ゾーン(これは創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において有色粒子を含まない)に伝達し、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断は、創傷液と共に有色粒子の表示ゾーンへの輸送をもたらし、これにより第1の表示ゾーンにおいてプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える;ならびに
ii.表示ゾーンにおける有色粒子によって与えられるプロテアーゼ活性の視覚的指標を検出する。
【0158】
これらの方法において使用される本製品は、上述される特徴のうち1つ以上を含み得る。これらの特徴は、単純に簡潔さのためにここでは繰り返されない。
【0159】
本方法の特定の実施態様において、表示ゾーンにおいて測定される有色粒子は、創傷液中のプロテアーゼ活性の定量化を与える。いくつかの実施態様において、本方法に用いられる製品は(本明細書の他の箇所に記述されるように)2つの表示ゾーンを含み、(創傷液およびプロテアーゼ活性の非存在下において)有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーンの上に(すなわち、垂直配向で)配置される第2の表示ゾーンにおける有色粒子の減少は、創傷液およびプロテアーゼ活性への曝露後における有色粒子を含み、本質的に有色粒子からなり、または有色粒子からなるゾーンの下流にある表示ゾーンにおける有色粒子の増加と比較および/または定量化される。好ましい実施態様において、各表示ゾーンにおける色の変化は肉眼で確認できる。あるいは、または肉眼を介する観察に加えて、色の変化は分光光度計またはこの目的に適した他のそのような装置(これは当業者に周知である)を用いて検出および/または定量化され得る。
【0160】
いくつかの実施態様において、本方法は創傷液の流量を補助するために本製品に追加の液体を適用することをさらに含む。これは「チェイス液」と呼ばれ得る。追加の液体は緩衝液を含み得、本質的に緩衝液からなり得、または緩衝液からなり得る。緩衝液は、本方法に用いられる創傷液および/または他の物質の性質に適合してい得る。例えば、「チェイス液」は試験紙の細孔を介して創傷液を輸送するために用いられ得る。追加の液体の使用は、放出される有色粒子のマトリックスに沿った/を介した伝達を改善し得る。追加の液体は、有色粒子のマトリックスへの望ましくない接着を防ぐために界面活性剤を含み得、本質的に界面活性剤からなり得、または界面活性剤からなり得る。
【0161】
本発明の別の態様において、本明細書に記述される方法は、創傷液の試料採取および分析を反復することによって創傷の状態を長期的にモニターすることを促進するために間隔を置いて反復される。前記間隔は、1、2、3、4、5もしくは6日毎、毎週もしくは毎月またはそれらの組合せであり得る。創傷の状態に関する経時的なデータの集約によって、臨床医は創傷の状態の進行および/または処置の有効性をより理解しやすくなる。例えば、記述されているように、創傷液を長期的にモニターすることは臨床医に、創傷の状態が経時的に悪化しており、したがって現在の処置は効果がないことを現在の手法よりも迅速および/または定量的な様式で示し得る。結果的に、臨床医は創傷治癒を促進するために代替の処置をより迅速に選択できる。あるいは、データは臨床医に、創傷液および/または創傷環境のさらなるテストが必要であることを示し得る。
【0162】
さらなる実施態様において、過剰なプロテアーゼ活性が存在しないことは、創傷の既存の任意の処置を継続すべきである(すなわち変更すべきでない)ことを示す。
【0163】
本発明のあらゆる態様における特定の実施態様において、創傷は慢性創傷である。「慢性創傷」は、創傷治癒の正常なプロセスが創傷治癒の段階における1以上の時点で中断される創傷であることが理解されるはずである。例えば、治癒の特定の段階(炎症または増殖など)に固定される創傷。慢性創傷は、隆起した過剰増殖性だが非進行性の創縁、および/または細胞外マトリックスの破壊をもたらす過剰量のマトリックスメタロプロテアーゼおよびそれらの阻害剤の減少からなる不均衡な酵素環境を含み、本質的に該環境からなり、または該環境からなる炎症産物および炎症性サイトカインに富んだ局所的な創傷環境によって特徴付けられ得る。通常の慢性創傷には、糖尿病性潰瘍、血管性潰瘍および褥瘡が含まれる。
【0164】
本発明のあらゆる態様における特定の実施態様において、創傷液を取得する対象は動物である。特定の実施態様において、動物はヒトである。
【0165】
特定の実施態様において、本明細書に記述される製品は本明細書に記述される方法に使用される。
【0166】
本発明の実施態様は以下の項によって規定され得る:
【0167】
1.創傷液を吸収するマトリックスを含む創傷の状態をモニターするための製品、ここで該マトリックスは以下を含む:
a.マトリックス上/内における架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーが形成する反応ゾーン
b.有色粒子;
ここで、ポリマーおよび有色粒子は、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断が有色粒子のマトリックスに沿った/を介した輸送をもたらし、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与えるように配置される。
【0168】
2.有色粒子がポリマー内に捕捉されており、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断が有色粒子のマトリックスに沿った/を介した放出をもたらし、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える、項1記載の製品。
【0169】
3.視覚的指標が有色粒子の分散を含む、項2記載の製品。
【0170】
4.マトリックスが、創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下においてポリマー内に捕捉されている有色粒子によってマスクされている視覚的シンボルを含み、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標が、ポリマーが切断され、有色粒子が放出された際の視覚的シンボルの出現を含む、項2または3に記載の製品。
【0171】
5.マトリックスが、創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において有色粒子を含まない表示ゾーンを含み、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断が有色粒子のマトリックスに沿った/を介した放出をもたらし、表示ゾーンにおいてプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える、項2~4のいずれかに記載の製品。
【0172】
6.表示ゾーンにおいて確認できるマトリックスが有色粒子を捕獲する捕獲分子を含む、項5記載の製品。
【0173】
7.マトリックスが、有色粒子が表示ゾーン内に蓄積するように、表示ゾーンの(下流)末端に配列される障壁を含む、項5記載の製品。
【0174】
8.有色粒子がポリスチレン微粒子を含む、項1~7のいずれかに記載の製品。
【0175】
9.架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーが、創傷液中の(例えば閾値レベルを超えた)プロテアーゼ活性の非存在下において創傷液が有色粒子に接触することを防ぐ障壁を形成し、創傷液中に存在する(例えば閾値レベルを超えた)プロテアーゼ活性によるポリマーの切断が障壁を破壊し、有色粒子のマトリックスに沿った/を介した流動をもたらし、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える、項1~8のいずれかに記載の製品。
【0176】
10.マトリックスが創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において有色粒子を含まない表示ゾーンを含み、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断が障壁を破壊し、有色粒子のマトリックスに沿った/を介した流動をもたらし、表示ゾーンにおいてプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える、項9記載の製品。
【0177】
11.表示ゾーンにおいて確認できるマトリックスが有色粒子を捕獲する捕獲分子を含む、項10記載の製品。
【0178】
12.マトリックスが、有色粒子が表示ゾーン内に蓄積するように表示ゾーンの(下流)末端に配列される障壁を含む、項10または11記載の製品。
【0179】
13.マトリックスが、創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において有色粒子によってマスクされている視覚的シンボルを含み、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標が、ポリマーが切断され、障壁が破壊され、有色粒子がマトリックスに沿って/を介して流動した際の視覚的シンボルの出現を含む、項9~12のいずれかに記載の製品。
【0180】
14.ポリマーがコラーゲンポリマーを含む、項1~13のいずれかに記載の製品。
【0181】
15.ポリマーがゼラチンポリマーを含む、項1~14のいずれかに記載の製品。
【0182】
16.ポリマーがエラスチンポリマーを含む、項1~15のいずれかに記載の製品。
【0183】
17.架橋がメタクリル酸塩またはその誘導体を含む、項1~16のいずれかに記載の製品。
【0184】
18.架橋がグルタルアルデヒドまたはその誘導体に由来する、項1~17のいずれかに記載の製品。
【0185】
19.プロテアーゼがセリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼおよび/またはグルタミン酸プロテアーゼである、項1~18のいずれかに記載の製品。
【0186】
20.コラーゲンおよび/またはゼラチンポリマーを含むテストマトリックス、ここで該ポリマーはメタクリル酸架橋またはグルタルアルデヒドに由来する架橋を含む。
【0187】
21.創傷中のプロテアーゼ活性の測定における使用のためのメタクリル酸で架橋されたゼラチンポリマー。
【0188】
22.創傷液中のプロテアーゼ活性を測定するための基質としての架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーの使用。
【0189】
23.ポリマーが、コラーゲン、ゼラチンおよび/またはエラスチンポリマーを含む、項22記載の使用。
【0190】
24.架橋がメタクリル酸塩を含み、かつ/またはグルタルアルデヒドに由来する、項22または23に記載の使用。
【0191】
25.以下を含む創傷の状態をモニターする方法:
a.創傷液の試料を項1~19のいずれかに規定される製品に適用する
b.有色粒子によって与えられるプロテアーゼ活性の視覚的指標を検出する。
【0192】
26.有色粒子が、創傷液中のプロテアーゼ活性の定量化を与えるマトリックスの領域において測定される、項25記載の方法。
【0193】
27.該領域が表示ゾーンを含む、項26記載の方法。
【0194】
28.2つの表示ゾーンが存在し、一方のゾーンにおける有色粒子の減少が第2のゾーンにおける有色粒子の増加と比較される、項26または27に記載の方法。
【0195】
29.以下を含む創傷液中のプロテアーゼ活性を測定するためのマトリックスを作成する方法:
a.メタクリル酸で修飾されたポリマーを含む溶液を、創傷液を吸収できるマトリックスに適用する
b.該ポリマーにUV光を照射し、これにより該ポリマーを架橋する。
【0196】
30.工程a)の溶液が有色粒子を含み、工程b)が有色粒子の架橋されたポリマー内への捕捉をもたらす、項29記載の方法。
【0197】
31.溶液が少なくとも30℃の温度で適用される、項29または30記載の方法。
【0198】
32.ポリマーが、ゼラチン、コラーゲンおよび/またはエラスチンポリマーを含む、項29~31のいずれかに記載の方法。
【0199】
33.マトリックスが視覚的指標を含み、工程a)において溶液が視覚的指標を覆うように適用される、項29~31のいずれかに記載の方法。
【0200】
34.以下を含む、項1~19のいずれかに規定される製品を作成するためのキット:
a.架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマー
b.有色粒子。
【0201】
35.マトリックスをさらに含む、項32記載のキット。
【0202】
36.マトリックスを含むハウジングをさらに含む、項33記載のキット。
【0203】
37.ハウジングが、有色粒子を観察するための1以上(例えば2つ)の表示窓を含む、項34記載のキット。
【0204】
38.以下を含む創傷の状態をモニターするための製品:
a.創傷液を添加する試料適用ゾーン
b.プロテアーゼ感受性ポリマーを含む、試料適用ゾーンの下流にある反応ゾーン;
c.有色粒子を含む、試料適用ゾーンの下流にあるゾーン;
d.試料適用ゾーン、反応ゾーンおよび有色粒子を含むゾーンの下流にある表示ゾーン;
ここで、試料適用ゾーンは液体を表示ゾーンに伝達し、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断は、創傷液と共に有色粒子の表示ゾーンへの輸送をもたらし、これにより第1の表示ゾーンにおいてプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える。
【0205】
39.有色粒子が反応ゾーン内に含まれる、項38記載の製品。
【0206】
40.有色粒子がポリマー内に捕捉されており、創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によるポリマーの切断が有色粒子の表示ゾーンへの放出をもたらし、これにより表示ゾーンを介して創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える、項38または39に記載の製品。
【0207】
41.有色粒子を含むゾーンが反応ゾーンの下流にある、項38記載の製品。
【0208】
42.反応ゾーンが、創傷液が表示ゾーンに到達することを防ぐ障壁を形成し、創傷液中に存在する(例えば閾値レベルを超えた)プロテアーゼ活性によるポリマーの切断が障壁を破壊し、有色粒子の表示ゾーンへの輸送をもたらし、これにより表示ゾーンを介して創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える、項38~41のいずれかに記載の製品。
【0209】
43.製品が創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において有色粒子にマスクされている視覚的シンボルを含み、創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標が視覚的シンボルの出現を含む、項38~42のいずれかに記載の製品。
【0210】
44.創傷液への曝露の前およびプロテアーゼ活性の非存在下において有色粒子を含むゾーンの上に配列される第2の表示ゾーンを規定する、項43記載の製品。
【0211】
45.表示ゾーンが、表示ゾーンにおける有色粒子を捕獲するための捕獲分子を含む、項38~44のいずれかに記載の製品。
【0212】
46.有色粒子が第1の表示ゾーンに蓄積するように、表示ゾーンの下流端に障壁を含む、項38~45のいずれかに記載の製品。
【0213】
47.ポリマーがコラーゲンポリマーを含む、項38~46のいずれかに記載の製品。
【0214】
48.ポリマーがゼラチンポリマーを含む、項38~47のいずれかに記載の製品。
【0215】
49.ポリマーがエラスチンポリマーを含む、項38~48のいずれかに記載の製品。
【0216】
50.試料適用ゾーンおよび反応ゾーンが少なくとも部分的に重複している、項38~49のいずれかに記載の製品。
【0217】
51.以下を含む創傷の状態をモニターする方法:
a.創傷液の試料を、項38~50のいずれかに規定される製品の試料適用ゾーンに適用する;
b.表示ゾーンにおける有色粒子によって与えられるプロテアーゼ活性の視覚的指標を検出する。
【0218】
52.表示ゾーンにおいて測定される有色粒子が創傷液中のプロテアーゼ活性の定量化を与える、項51記載の方法。
【0219】
53.第2の表示ゾーンをさらに含み、第2のゾーンにおける有色粒子の減少が第1のゾーンにおける有色粒子の増加と比較される、項51または52に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0220】
【
図1A】
図1Aは、本発明のある実施態様を示す模式図であり、本明細書に記述される製品は創傷被覆材下において創傷に接触して配置される。
【0221】
【
図1B】
図1Bは、創傷液の吸収および創傷液中に存在するプロテアーゼ活性による架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマーの切断後における、本明細書に記述される製品による視覚的指標の生成を示す模式図である。
【0222】
【
図2】
図2は、本明細書に記述される製品のラテラルフローに基づく実施態様を示す模式図である。
【0223】
【
図3】
図3は、本明細書に記述される製品のラテラルフローに基づくさらなる実施態様を示す模式図である。
【0224】
【
図4】
図4は、メタクリル酸修飾前の未修飾ゼラチンのNMRスペクトルを示す。
【0225】
【
図5】
図5は、メタクリル酸で完全に修飾されたゼラチン(GELMA)のNMRスペクトルを示す。
【0226】
【
図6】
図6は、(好ましくは創傷におけるインサイチュでの使用のための)本発明における例示的な製品の上面図(A)および分解側面図(B)を示す。
【0227】
【
図7】
図7は、使用中の本明細書に記述される製品を示す(時間=0時間)。
【0228】
【
図8】
図8は、24、48および72時間後における、パパイン存在下および非存在下において
図7に示される製品を使用した結果を示す。
【0229】
【
図9】
図9は、使用中の本明細書に記述されるさらなる製品を示す(時間=0時間)。
【0230】
【
図10】
図10は、24および48時間後における、マトリックスメタロプロテアーゼ9(MM9)およびヒト好中球エラスターゼ(HNE)の存在下および非存在下において
図9に示される製品を使用した結果を示す。
【0231】
【
図11】
図11は、120および144時間後における、マトリックスメタロプロテアーゼ9(MM9)およびヒト好中球エラスターゼ(HNE)の存在下および非存在下において
図9に示される製品を使用した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0232】
本発明は、限定されないが、単に本発明の理解を助けるために図面を参照して記述される。
【0233】
本明細書に記述される製品(1)を
図1Aに模式的に示す。本製品(1)は、創傷液を吸収できる(好ましくはインサイチュでの適用のために生物学的に不活性な)マトリックス(2)、および架橋されたプロテアーゼ感受性ポリマー(3)内に捕捉されている有色粒子(この場合、マトリックス(2)上または内において架橋されたゼラチン内に捕捉されている有色ポリスチレン微粒子(PSM))を含み、本質的にこれらからなり、またはこれらからなる。架橋されたゼラチン(3)内に捕捉されている有色粒子はマトリックス(2)内で乾燥され得、またはマトリックス(2)に結合され得、適切な有色PSMの場合に、マトリックスの全体または実質的な部分を黒色に見えるようにし、テストユニットまたは反応ゾーンを形成する。架橋されたゼラチン(3)内に捕捉されている有色粒子は、創傷によって放出された液体中のプロテアーゼ(ゼラチナーゼ)活性を測定するのに使用される。架橋されたゼラチン(3)は、創傷液中に存在する(例えば閾値濃度以上の)ゼラチナーゼによって分解される。
【0234】
本製品(1)が創傷被覆材(6)下において、対象(5)上の創傷(これは慢性創傷であり得る)(4)に接触して配置される場合、マトリックス(2)は創傷液を吸収する。創傷液が十分なゼラチナーゼ活性を含む場合(特にゼラチナーゼ活性が閾値レベル以上に存在する場合)、マトリックス(2)上または内の架橋されたゼラチン(3)は断片に分解される。一度分解されると、PSMはもはや捕捉されず、遊離してマトリックスを介して/に沿って分散する。この場合、
図1Bに示されるように、PSMのマトリックスを介した/に沿った分散は、創傷液への曝露の前におけるPSMによるマトリックスの反応ゾーンに起因した黒色の着色を除去し、本製品上に印刷された視覚的シンボル(十字形など)(7)が現れる。視覚的シンボルの出現は、創傷中の異常なプロテアーゼ活性の存在を示す。
【0235】
十字形(7)は正のテスト結果を与え、したがって有利であるが、必須ではない。代わりに、(さらなるシンボルが現れない)着色の散逸がテストの結果として使用され得る。
【0236】
図2は、本明細書に記述される製品のラテラルフローに基づく実施態様を示す模式図である。試料適用ゾーンは、(灰色の直線矢印(22)で表される)創傷液を適用する(21)ことが示されている。この特定の場合において、試料適用ゾーンは、創傷液(22)を回収するためのスワブ(swab)として働く可動性の芯(wick)である。この芯(21)は固体支持体(23)(この場合、これは流体が毛細管作用により流れる(ラテラルフローイムノアッセイの試験紙に類似する)多孔性試験紙である)と流体的に接続可能である。有色PSMが捕捉されているメタクリル酸で架橋されたゼラチン(GELMA)は固体支持体上に反応ゾーン(24)を形成する。創傷液は毛細管作用を介して反応ゾーン(24)に伝達される。創傷液中に存在するプロテアーゼ活性はGELMAを切断し、PSMを放出する。移動している液体の剪断応力は放出されたPSMを同伴させ、これらは液体と共に表示ゾーン(25)内に輸送され、これにより創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える。
【0237】
代替の実施態様において、ゼラチンは、メタクリル酸塩の代わりにグルタルアルデヒドまたはその誘導体を用いて架橋され得る。創傷液への曝露の前に、ゼラチン、有色PSMおよびグルタルアルデヒドが混合され得、固体支持体上に反応ゾーン(24)を形成するために混合物として適用され得る。創傷液への曝露の前に、混合物は、架橋形成を促進し、グルタルアルデヒドで架橋された(したがって有色PSMが捕捉されている)ゼラチンを固体支持体(23)に固定するために乾燥され得、これにより反応ゾーン(24)が形成され得る。
【0238】
さらなる実施態様において、少なくとも固体支持体(23)および任意に芯(21)を含む本製品は、反応ゾーン(24)の(液体の移動方向における)下流に表示窓を有するケーシングに収納され得る。そのような実施態様において、表示窓は表示ゾーン(25)を規定する。したがって、創傷液中のプロテアーゼ活性によるGELMAまたはグルタルアルデヒドで架橋されたゼラチンの切断後に放出されたPSMは表示窓において観察され得る。任意に設けられる第2の表示窓は反応ゾーン(24)上に配置され得る。したがって、PSMが創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によって放出された場合、色の減少がこのさらなる表示窓を介して観察され得る。
【0239】
さらなる実施態様において、表示ゾーン(25)は、PSMに特異的に結合できる捕獲分子を含み得、本質的に該捕獲分子からなり得、または該捕獲分子からなり得る。したがって、放出されたPSMは、観察および潜在的な定量化を補助するために所定の位置で停止および濃縮される。捕獲分子は、PSMの表面上に結合している抗原を特異的に認識する抗体を含み得、本質的に該抗体からなり得、もしくは該抗体からなり得、またはPSMを結合できる他のいくつかの分子種(イオン交換相互作用を引き起こす荷電分子を含む)を含み得、本質的に該分子種からなり得、もしくは該分子種からなり得る。
【0240】
さらなる実施態様において、デバイスは、創傷液を試験紙の細孔を介して輸送し、(タンパク質分解が開始している場合に)PSMのマトリックスからの抽出を最大化し、それらを表示ゾーン(24)に効率的に輸送するために「チェイス液」として働く、(PSMの試験紙への望ましくない接着を防ぐための界面活性剤を含む)適合した緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水pH7.2など)の供給源と連結してい得る。
【0241】
図3は、本明細書に記述される製品のラテラルフローに基づくさらなる実施態様を示す模式図である。
【0242】
本製品は、吸収物質(31)を含み、本質的に吸収物質(31)からなり、または吸収物質(31)からなる試料適用ゾーン、プロテアーゼ感受性ポリマー分子(この場合、ゼラチン(32))から形成される障壁(反応ゾーン)、有色粒子(34)(この場合、Monastral blue色素分子(MBDM))を含み、本質的に有色粒子(34)からなり、または有色粒子(34)からなるゾーン、および表示ゾーン(35)を含み、本質的にこれらからなり、またはこれらからなる固体支持体(30)を含み、本質的に該固体支持体(30)からなり、または該固体支持体(30)からなる。本製品はまた、任意の液体をマトリックスに沿って/を介して誘導および濃縮するためのエッチング(33)を含んでいてもよい。
【0243】
動作中において、創傷液の試料は試料適用ゾーン(31)に添加され、ゼラチン障壁(32)に到達するまで、(
図3において製品模式図と平行に示される)大きな矢印で示される方向に毛細管作用によって移動する。創傷液中のプロテアーゼ活性の非存在下において、ゼラチンプラグ(gelatin plug)は無傷のままであり、創傷液がゼラチンプラグを通過するのを防ぐ。したがって、MBDMはマトリックスに対して乾燥されたままであり、表示ゾーンに伝達されない。結果として、プロテアーゼ活性の視覚的指標は表示ゾーンにおいて与えられない。しかしながら、創傷液中のプロテアーゼ(ゼラチナーゼ)活性の存在下において、ゼラチンプラグは切断され、創傷液は毛細管作用によって表示ゾーンに移動し得る。その際、創傷液は創傷液と共にMBDMを表示ゾーンに輸送し、これにより創傷液中のプロテアーゼ活性の視覚的指標を与える。
【0244】
さらなる実施態様において、固体支持体(30)は、有色粒子(34)を含み、本質的に有色粒子(34)からなり、または有色粒子(34)からなるゾーンの(液体の移動方向における)下流に表示窓を有するケーシングに収納され得、これは表示ゾーン(35)を包含し、規定し得る。したがって、創傷液中のプロテアーゼ活性によるゼラチン障壁の切断および破壊の後に放出された有色粒子(例えばMBDM)は、表示窓において観察され得る。任意に設けられる第2の表示窓が、有色粒子(34)を含み、本質的に有色粒子(34)からなり、または有色粒子(34)からなるゾーンの上に配置され得る。したがって、MBDMが創傷液中に存在するプロテアーゼ活性によって放出された場合、色の減少がこのさらなる表示窓を介して観察され得る。
【実施例】
【0245】
実施例1.ゼラチンおよびメタクリル酸塩からのGELMAの作製
ゼラチンを無水メタクリル酸でのエンドキャッピングによって修飾し、メタクリルアミド末端ゼラチン(本明細書において「GELMA」と呼ばれる)を得た(一般的なスキームを以下に示す)。
【化1】
【0246】
多種多様な方法および条件を使用してこの物質を生成する多数の参考文献が存在するが、以下のようなBae Hoon Lee et.al (RSC adv., 2015, 5, 106094)によって使用される方法をこの目的のために用いた。
【0247】
pH1~2での酸処理によって得られるAタイプゼラチン(pH7~9の等電点)を用いた。効率的な置換(エンドキャッピング)を得るために、大過剰の無水メタクリル酸を必要とした。反応からの副生成物はメタクリル酸であるため、反応のpHは徐々に等電点領域未満まで低下し、これはエンドキャッピングの減少をもたらした。これを回避するため、Bae Hoon Lee et.al.は、反応混合物をpH7~9の間に維持するために炭酸緩衝液を使用し、pH調整のために無水メタクリル酸および水酸化ナトリウムの交互の添加を用いた。この方法は、最小量の副反応(メタクリル酸エステルを伴うヒドロキシ基末端)を伴う効率的なエンドキャッピングを可能にした。これはまた、使用する試薬の量を減少させ、精製の工程において除去される無機塩の量を最小化した。反応生成物をタンジェンシャルフロー濾過(TFF)で精製したが、単純な透析法も使用され得る。
【0248】
詳細な方法
Aタイプゼラチン[175ブルーム](10g)および100mlの0.1M炭酸緩衝液(100ml)[3.18g NaCO3、5.86g NaHCO3]を、オーバーヘッドスターラー、温度プローブおよびpHメーターを取り付けた丸底フラスコ中で混合した。混合物を60℃に加熱し、固体を溶解した。次いで反応温度を50℃に下げ、pHを確認し、9.0に調整した。
【0249】
この溶液にメタクリル酸(167μl)を滴下し、pHを約8.5に低下させ、反応混合物を25分間撹拌した。その後、pHを20%NaOH溶液でpH9.0に戻し、さらに5分間撹拌した。
【0250】
全体で1mlのメタクリル酸が添加されるまで、合計3時間の反応時間において、メタクリル酸およびpH調整のラウンド(round)をさらに5回繰り返した。
【0251】
最終的に、pHを50%酢酸で7.4に調整した。得られた混合物を、0.2ミクロンのPTFE濾過膜に通してタンジェンシャルフロー濾過のリザーバー中に濾過した。次いで混合物を、3kD midi-Kros MPE TFF膜を用いて約15の膜間圧で、水(洗浄用の水)に対して透析濾過(dia-filter)することによって精製した。全6Lを透析濾過し、<10μSの透過導電率(permeate conductivity)を得た。得られた淡黄色の溶液をフィレンツェフラスコ(Florentine flask)に移行し、2日間凍結乾燥させた。これにより、本明細書に記述される製品を調製するのに使用する準備ができている白色のポリスチレン様物質8.7gを得た。
【0252】
生成物におけるメタクリル酸置換の程度をプロトンNMRによって決定した。結果を
図4および5に示す。
図4からのピークの減少または喪失(例えば約3ppmにおけるリジンメチレンピーク)および
図5における(例えば4.8ppm、5.7ppmおよび5.9ppmの)新たなピークの出現は、GELMA生成物におけるメタクリル酸基の取り込みを示すことを言及しておく。これらの結果は、反応が約2.95~3.1ppmにおけるピークの減少を伴ってよく進行していることを裏付ける。
【0253】
元素分析(CHNおよびNa)
【表1】
これらのデータは未だいくらかのナトリウムが存在していることを示すが、これは問題を引き起こさなかった。
【0254】
考察
この方法は、2gのパイロット規模で2回行われた。一方の反応生成物を透析(12~14KDカットオフ)によって精製し、他方をTFF(3KDaカットオフ)によって精製した。両物質は本明細書に記述される製品の製造のために等しく良好に機能した。TFF精製の簡便さおよび効率のために、この方法を用いてより大きな10gのバッチを精製することを決めた。この方法は再現性があり、簡便で効率的であった。
【0255】
結論
ゼラチンメタクリル酸(GELMA)を作製するために使用された方法は、この目的に適している。必要に応じて、当業者はこの配合処方を公知の方法および手法(自動化された塩基の添加を用いた一定のpH調整など)によってさらに最適化し得る。商業的応用のためのスケールアップは、公知の方法および手順によって容易に達成され得る。
【0256】
実施例2:本発明における製品の製造
製造プロセスは以下の操作の全部または一部を含み、その詳細は使用者の必要性および製造工場の制約に従って最適化され得る。
【表2】
【0257】
容易に製造される実用的な製品として有用であることが見出されている、特定の限定されない形式は以下である:
【0258】
・2.5mmの奥行きおよび15mmの直径である医療用フォーム(medical foam)で作られた医療用吸収性物質のディスク。
・「+」シンボルをディスクの上面の中央の位置に持続性のインクで印刷する。印刷された「+」は幅4mmである。
・「+」を、架橋されたメタクリル酸で修飾されたゼラチン(GELMA)を含み、本質的に該ゼラチンからなり、または該ゼラチンからなる有色試薬で被覆する(したがって見えなくなる)
・本製品は、上面に接着した弾性がある透明の薄い被覆物質を有する。好ましい被覆は医療グレードのポリウレタンである。
・個々の15mmのディスクを単一のユニットとしてパッケージングし、滅菌する。
【0259】
このような製品の模式図を
図6に示す。
図6Aは、製品の上面図を示す。持続性の十字形が付けられたディスクを、架橋されたメタクリル酸で修飾されたゼラチン(GELMA)を含み、本質的に該ゼラチンからなり、または該ゼラチンからなる有色試薬の適用によって被覆し、隠す。
図6Bは、ポリウレタンフィルム(61)、架橋されたメタクリル酸で修飾されたゼラチン(GELMA)(62)を含み、本質的に該ゼラチンからなり、または該ゼラチンからなる有色試薬、および吸収性マトリックス(63)を含み、本質的にこれらからなり、またはこれらからなる製品の分解側面図を示す。
【0260】
実施例3:製造-GELMA試薬の湿性沈着および組み立て
製品に必要なストック物質(Stock material):
・吸収性物質のロールストック(roll stock)
・(接着剤が既に適用されている)ポリウレタンのロールストック
・修飾されたゼラチン(GELMA)
・着色されたポリスチレン微粒子
・持続性のインク
・非透湿性のパッケージング(ラミネート加工された箔であり得る)
【0261】
【0262】
注記:
工程4:
・有色試薬は保管および沈着の間、高温で維持されることが必要とされる。これは試薬が凝固するのを防ぐためである。
・沈着される体積は非常に小さい(ディスク当たり5マイクロリットル)。加温および修飾されたゼラチンの粘性は(水よりは高いが)高くない。必要に応じて、粘性は増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロース、または単により多くの未修飾ゼラチン)を添加することで増強され得る。
・有色試薬は吸収性物質に吸収されるべきではなく、さもなければ指標マトリックスは均一に架橋されず、それが形成するマトリックスの深さは損なわれる。これは、吸収性物質の選択および/または予め架橋されたGELMA試薬の性質に影響を与える。
・有色試薬の沈着は印刷された「+」シンボルと共に配列される必要がある。有色試薬は予め印刷された「+」シンボルのすべてを被覆する(見えなくする)限り、表示が円形であり得る。したがって位置合わせは重要である。
【0263】
工程5:
・UVランプを用いて有色試薬を所定の位置に固定する。露光時間は15~30秒であり、これはランプの出力に依存する。これまでのところ、約300nmおよび約380nmのUVランプを供給し、1~100mW/cm2の範囲のエネルギーレベルであるランプが有効であることが見出されている。
【0264】
工程6:
・固定された有色試薬をパッケージングの前に乾燥させる。着色されたマトリックスプロテアーゼを乾燥させるのに熱風洞(hot air tunnel)が使用され得る。他の選択肢が考慮され得る。
【0265】
インサイチュでの使用のための例示された製品によって直面および克服される課題
直面する課題:
1)乾燥したゼラチンがマトリックスを創傷液に長期間曝露するテストにより適したものとなるように、乾燥したゼラチンの性質を改変すること。(購入した、またはコラーゲンに由来する)通常の状態のゼラチン(変性したコラーゲン)は適切なマトリックス構造を形成するように乾燥され得るが、これはプロテアーゼ非存在下においても、溶解したタンパク質を含む水性液体(通常の創傷温度における創傷液など)に徐々に溶解する。一方、過剰に修飾されたゼラチンはプロテアーゼ切断に対して過剰な抵抗性となり得る。未修飾ゼラチンは特定の条件下で機能し得るが、架橋されたゼラチンはより頑強であり、より長期間にわたって機能できる。
【0266】
2)製造において、沈着したゼラチン溶液は担体物質に強く接着するように所定の位置に非常に迅速に固定されなければならず、さもなければスメアし、または除去される。あるいは、非常に遅い非経済的な処理を使用しなければならない。
【0267】
3)色素で修飾されたゼラチンは、臨床的に関連があるレベルのプロテアーゼによる破壊を可能にするのに十分薄い深さで適切な担体表面上に沈着する場合、十分に強い着色を形成しない場合がある。
【0268】
4)この適用に望まれる操作の単純性は、複雑なプロセス(免疫アッセイまたは2以上の操作工程を必要とする他の手法など)を可能としない。
【0269】
5)デバイスは創傷と物理的に接触しなければならないため、創傷における使用が認可されていない反応性成分、または創傷における使用の歴史がない反応性成分は使用できない。
【0270】
6)デバイスのために設計される操作のいくつかの態様は、被覆材下において創傷の表面上にインサイチュで少なくとも1日間および潜在的に数日間放置できることを必要とする。
【表4】
【0271】
本製品は、液体を採取する能力をほとんどまたは全く持たない非常に薄い構造の形式であり得る。本製品は、創傷液によって単に「湿潤性」である不織布の担体内に組み込まれたインサイチュでのテストユニットとして提示され得る。本製品はこの様式において創傷表面上に位置し得、ここで本製品は単に、安価で極めて使用しやすいプロテアーゼ活性指標として被覆材下において必要に応じて様々な時間機能し得る。その非常に単純な実施態様において、本製品は取り扱いおよび観察がしづらくなるが、担体を伴わずに使用され得、これは単にゼラチンフィルムの着色および架橋された部分として提示され得る。あるいは、指標マトリックスは15mmX2.5mmの寸法を有する複合ユニットの一部であり得、その中に透明なカバー、不織布の担体層およびフォームの試料コレクタ層が存在する。
【0272】
実施例4:メタクリル酸で架橋されたゼラチンに基づく使用における本発明における製品の実証
使用した物質
GELMA:無水メタクリル酸で修飾されたゼラチン。(Sigma-Aldrich(製品番号276685)から供給された無水メタクリル酸。Sigma Aldrichから供給されたゼラチン、ブタのAタイプ、300ブルーム(製品番号G2500))。
【0273】
光開始剤「Daracure」、Sigma Aldrichから供給された2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(製品番号410896)。
【0274】
Polysciences, Inc.から供給されたPolybead(登録商標) Polystyrene Blur Dyed Microsphere(直径0.5ミクロン、2.5%固形分)(製品番号15709)。
【0275】
Coveris Advanced Coatings (Wrexham, UK)から供給されたポリウレタンフィルム(Inspire 2331)。
【0276】
foam Freudenberg(以前はPolymer Health Technologies)(Ebbw Vale, UK)から供給されたポリウレタンフォーム(無料サンプル)。
【0277】
方法
2.5mgのDaracure粉末を500μlの1x濃度のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に添加することによって、0.5w/v%の光開始剤(PI)溶液を調製した。混合物を、全ての固体が溶解するまで周期的なボルテックス混合(vortex mixing)をしながら60℃まで加熱した。光開始剤が完全に溶解した後、50mgのGELMA粉末を溶液に添加し、この溶液をGELMAが溶解するように穏やかに混合した。この溶解プロセス中において、GelMA/PI/PBS溶液の温度を、周期的なボルテックス混合をしながら40℃まで低下させた。GELMAがゲルに凝固するのを防ぐために溶液の温度を40℃に維持した。青色のポリスチレン微粒子を、マイクロ粒子の原液1質量部に対してGELMA/PI/PBS 9質量部の比率で最後に添加した。均一な溶液であることを保証するために、溶液を十分に混合した。混合物中の終濃度は、0.45%光開始剤、8.1%GELMAおよび0.25%マイクロ粒子であった。
【0278】
GELMA/微粒子/光開始剤混合物の5μlのアリコートを取り出し、30μmの透明ポリウレタンフィルム(Coveris advanced coatings、Inspire 2331)の接着表面上の中心に、10x10mm四方のフィルム当たり1つの5μlスポットという比率で沈着させた。各液滴を穏やかに撹拌し、青色の混合物の液滴を直径4~5mmの青色の円形に分散させた。正方形のポリウレタン(PU)フィルムを広域スペクトルUVランプ(Dr. Honle, Germany;出力は約100mW/cm2)下に15秒間配置し、架橋を開始し、GELMAを重合した。最終的に、正方形のPU上に重合されたスポットを室温で3時間空気乾燥させた。
【0279】
スポットを乾燥させた後、(それ自体の単一の青色の指標スポットを含む)正方形の各PUを露出した接着剤を介してPUフォーム(厚さ5mm)の同様の大きさの一片に貼り付け、一組の複合性の正方形を作製した。したがって、各正方形は、2つの層の間に保持された架橋されたGELMAの乾燥した青いスポットを有する接着剤の層によって所定の位置に保持された一片の透明な薄いPUフィルムで覆われたPUフォームの層からなっていた。青色のGELMAのスポットを、その最上面が接着剤に接触し、その下面がPUフォームに直接接触するように配置した。持続性のマーカーペンを用いて、描かれた十字形の一部が青色の指標の外縁を逸脱しないように十字形が青色のGELMAスポット上に配置されるように、4mm(高さおよび幅)の青色の十字形を複合性の各正方形の最上面(透明PUフィルム層の上面)に描いた。この配置によって、青色の十字形はその真下の強い青色のスポットによって視覚的に見えなくなった。これが完成すると、正方形はプロテアーゼ活性の指標として使用される準備が整った。
【0280】
組み立てられた指標の反応性をテストするために3つのテスト溶液を調製し、それぞれは以下の組成を含む標準的なパパイン活性化緩衝液に基づいていた:脱イオン水中の4.22mM l-システインHCL、3.6mM EDTA、0.2M NaCl、pH7。テスト溶液1は0.1mg/mlのパパイン(約1000ユニット/g)を含み、テスト溶液2は0.001mg/mlのパパインを含み、テスト溶液3は0mg/mlのパパインを含んでいた。調製した指標の正方形のうち2つを、吸収性PUフォームが溶液に浸るようにテスト溶液1を含むペトリ皿中に配置した。この状況において、溶液は青色のスポットと直接接触していた。2つの正方形を溶液2中に同様に配置し、さらに2つの正方形を溶液3中に配置した。正方形をテスト溶液と接触させて配置する前に(すなわち乾燥状態において)撮影し、テスト溶液で最初に湿らせた際に再度撮影し、さらにテスト溶液に最初に接触させた後、37℃で24、48および72時間経過した際に再度撮影した。
【0281】
結果
実験の所定の時点における青色のGELMAスポットの状態を
図7および8に示す。乾燥状態および任意のテスト溶液に最初に湿らせた際(すなわち、時間=0時間)において、青色のGELMAスポットが完全に無傷であることがわかる(
図7)。この状態において、青色の十字形はいかなる正方形上においても露出されていない。以降の各時点において、両濃度のパパインの存在下ではGELMAのほとんど完全な消化が観察された(
図8)。これは提示の変化によって見られ、青色の有色スポットは青色の有色十字形に変化する。これは、GELMAのゼラチン成分が活性なプロテアーゼ酵素によって消化され、次に捕捉および固定化された微粒子を放出するためである。有色微粒子は分散し、フォーム全体に均一に広がり、PUの上部に消えない十字形が現れる。対照的に、パパインを含まない溶液(負の対照)に曝露された青色のGELMAスポットは構造的完全性の損失の観察可能なしるしを有さず、全体の時間経過を通して無傷のままであった(
図7および8)。これらの正方形では、青色の有色円形スポットが残存し、PUフィルムの上部に標識された青色の十字形は現れなかった。
【0282】
結論
これらの結果から、プロテアーゼ活性がない水溶液に曝露された場合に、青色のポリスチレン微粒子と混合した架橋されたGELMAが無傷のままであることは明らかである。プロテアーゼ活性が試料溶液に導入された場合、GELMAは(代表的なプロテアーゼとしての)パパインによって容易に切断され、したがって青色の微粒子を放出し、これは青色の微粒子が根底にあるフォームの層全体に分散することを可能にする。この状態の変化はプロテアーゼ活性を示し、単純な色の分散または上書きされた持続性の調色された十字形(または他のシンボル)の出現のいずれかとして観察され得る。
【0283】
この結果はまた、好中球エラスターゼおよびマトリックスメタロプロテアーゼ9を用いて観察された。これら両方は実施例5に示されるように、感染性または炎症性創傷液中に存在すると考えられる。
【0284】
実施例5:メタクリル酸で架橋されたゼラチンに基づく使用における本発明における製品の実証
使用した物質
GelMA:無水メタクリル酸で修飾されたゼラチン。(Sigma-Aldrich(製品番号276685)から供給された無水メタクリル酸。Sigma Aldrichから供給されたゼラチン、ブタのAタイプ、175ブルーム(製品番号G2625))。
【0285】
光開始剤「Daracure」、Sigma Aldrichから供給された2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(製品番号410896)。
【0286】
Polysciences, Inc.から供給されたPolybead(登録商標) Polystyrene Blur Dyed Microsphere(直径0.5ミクロン、2.5%固形分)(製品番号15709)。
【0287】
Anowo Ltd.から供給されたOrion不織布(4osyの重量)。
【0288】
方法
2.5mgのDaracure粉末を500μlの1x濃度のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に添加することによって、0.5w/v%の光開始剤(PI)溶液を調製した。混合物を、全ての固体が溶解するまで周期的なボルテックス混合をしながら60℃まで加熱した。光開始剤が完全に溶解した後、50mgのGELMA粉末を溶液に添加し、この溶液をGELMAが溶解するように穏やかに混合した。この溶解プロセス中において、GelMA/PI/PBS溶液の温度を、周期的なボルテックス混合をしながら40℃まで低下させた。GELMAがゲルに凝固するのを防ぐために溶液の温度を40℃に維持した。青色のポリスチレン微粒子を、マイクロ粒子の原液1質量部に対してGELMA/PI/PBS 9質量部の比率で最後に添加した。均一な溶液であることを保証するために、溶液を十分に混合した。混合物中の終濃度は、0.45%光開始剤、8.1%GELMAおよび0.25%マイクロ粒子であった。
【0289】
GELMA/微粒子/光開始剤混合物の1μlのアリコートを取り出し、Orion不織布材料の5x5mmの正方形上の中心に沈着させた。一連の繰り返しの沈着を行った。Orionパッドを広域スペクトルUVランプ(Dr. Honle, Germany;出力は約100mW/cm2)下に15秒間配置し、架橋を開始し、GELMAを重合する前に、液滴をOrionパッド中に拡散させた。最終的に、正方形のOrion上に重合されたスポットを室温で3時間空気乾燥させた。
【0290】
組み立てられた指標の反応性をテストするために一連のテスト溶液を調製した。マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP9)およびヒト好中球エラスターゼ(HNE)酵素を、以下の組成を含む活性化緩衝液に希釈した:脱イオン水中の50mM Tris緩衝液、10mM塩化カルシウム二水和物、100mM塩化ナトリウム、50μM塩化亜鉛、0.025w/w%ブリッジ35、0.05%アジ化ナトリウム。各酵素を以下の酵素濃度を与えるように活性化緩衝液中に希釈した:0、0.15、0.31、0.62、1.25、2.5、5および10マイクログラム/ml。各酵素希釈物のために調製された指標の正方形のうち2つをペトリ皿に配置し、一連の材料の正方形を8x2の形式で得た。各対について、25μLの関連する酵素希釈物を正方形毎に添加した。正方形をテスト溶液と接触させて配置する前に(すなわち乾燥状態において)撮影し、テスト溶液で最初に湿らせた際に再度撮影し、さらにテスト溶液に最初に接触させた後、37℃で24、48、120および144時間経過した際に再度撮影した。
【0291】
結果
実験結果を
図9~11に示す。乾燥状態および任意のテスト溶液に最初に湿らせた際(すなわち、時間=0時間)において、青色のGELMAスポットが完全に無傷であることがわかる(
図9)。以降の各時点において、MMP9およびHNEのいずれの存在下においても、GELMAの消化が観察された(
図10および11)。これはOrion不織布材料全体における色の分散(および減弱)によって示される。これは、GELMAのゼラチン成分が活性なプロテアーゼ酵素によって消化され、次に捕捉および固定化された微粒子を放出するためである。有色微粒子は分散し、Orion不織布材料全体に均一に広がる。対照的に、MM9またはHNEを含まなかった溶液(0μg/ml;負の対照)に曝露された青色のGELMAスポットは構造的完全性の損失の観察可能なしるしを有さず、全体の時間経過を通して無傷のままであった(
図9~11)。したがって、この結果は、GELMAが活性なMMP9およびHNEプロテアーゼ活性に曝露された場合における目で確認できる色の減弱/損失を示す。24時間目において、より高い濃度の両酵素はGELMAを消化し、有色微粒子のOrion不織布材料全体への分散を伴って(時点=0時間において存在していた)有色スポットを消失させた。インキュベーション時間が増加するにつれて、より低濃度の活性酵素はGELMAを切断でき、有色微粒子を放出でき、これは色の減弱/損失をもたらした(
図10および11)。この時間経過は、GELMAがMMP9およびHNE酵素の両方によって消化可能であることを明らかに示す。酵素を含まない対照スポットはテストを通して無傷のままであり、架橋されたGELMAが37℃で長いインキュベーション期間(144時間)にわたって拡散または溶解しないことを確認した。
【0292】
結論
これらの結果から、プロテアーゼ活性がない水溶液に曝露された場合に、青色のポリスチレン微粒子と混合した架橋されたGELMAが無傷のままであることは明らかである。活性なプロテアーゼ活性が存在する場合、GELMAは(創傷中の生体関連酵素の代表である)MMP9およびHNEによって容易に切断され、したがって青色の微粒子を放出し、これは青色の微粒子が根底にある吸収性の層全体に分散することを可能にする。この状態の変化はプロテアーゼ活性を示し、単純な色の分散、またはいくつかの実施態様において、上書きされたシンボル(例えば十字形)もしくは最初の有色スポットの真下のシンボル(例えば十字形)の結果としての出現のいずれかによって観察され得る。
【0293】
本発明の範囲は、本明細書に記述される具体的な実施態様によって限定されるべきではない。実際、本明細書に記述される改変に加えて、本発明の様々な改変が上述の記述および添付の図面から当業者に明らかとなる。そのような改変は添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。さらに、本明細書に記述される本発明のあらゆる態様および実施態様は、あらゆる他の矛盾しない実施態様に広く適用可能および組合せ可能であると見なされ、これは必要に応じて本発明の他の態様(孤立した態様を含む)から得られる実施態様を含む。様々な出版物が本明細書で引用されており、これらの開示は参照によってその全体が組み込まれる。