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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】使用済み衛生用品の処理装置用分離機
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/30 20220101AFI20220615BHJP
   B09B 101/67 20220101ALN20220615BHJP
【FI】
B09B3/30 ZAB
B09B101:67
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020556343
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2020027645
【審査請求日】2020-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】507394639
【氏名又は名称】株式会社サムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪田 勇
(72)【発明者】
【氏名】岡野 公美
(72)【発明者】
【氏名】鴨沢 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】阪田 乾仁
(72)【発明者】
【氏名】阪田 光子
(72)【発明者】
【氏名】山田 稔
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167152(JP,A)
【文献】実開昭62-136237(JP,U)
【文献】実開昭61-005789(JP,U)
【文献】特開平07-000976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00-5/00
A61L 2/00
B04B 1/00-15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外胴分離槽(8)と、
前記外胴分離槽(8)内に回転自在に設けられ投入された使用済み衛生用品(2)と処理液(3)とで使用済み衛生用品(2)を構成する素材に分離する内胴分離槽(9)と、
前記内胴分離槽(9)を回転駆動する駆動手段(119)と、を備えた使用済み衛生用品の処理装置用分離機(4)であって、
前記内胴分離槽(9)が、筒状で複数の穴が設けられた周壁(113)と、この周壁(113)の軸方向の端面を閉塞する端面壁(24、25)と、で形成され、
前記周壁(113)の軸方向の端部と前記端面壁(25)とが連結する連結隅部(114)を覆うように前記周壁(113)の内面側と前記端面壁(25)の内面側との間に貼り付き防止板(115)を設け
前記貼り付き防止板(115)は、前記連結隅部(114)を覆う湾曲板部(116)と、この湾曲板部(116)の幅方向の両側部に延設された取付板部(117)とで形成されていることを特徴とする使用済み衛生用品の処理装置用分離機(4)。
【請求項2】
前記内胴分離槽(9)の前記周壁(113)の内側には、軸方向に沿って長尺で内胴分離槽(9)の回転中心に向けて突出する掻き上げ突起(9a、9a、9a、9a)が周方向に複数個設けられ、
前記貼り付き防止板(115)は、前記掻き上げ突起(9a、9a、9a、9a)間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の使用済み衛生用品の処理装置用分離機(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み紙おむつや使用済みの尿取りパッド等の使用済み衛生用品の処理装置に用いられる使用済み衛生用品の処理装置用分離機に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済み衛生用品としての使用済み紙おむつを分解処理し、使用済み紙おむつを構成する素材を回収する使用済み衛生用品の処理装置が特許文献1で提案されている。この使用済み衛生用品の処理装置では、所定の重量の使用済み紙おむつと、使用済み紙おむつを分解処理する処理液とを分離機内に投入し、使用済み紙おむつに処理液を浸漬させることで分解処理している。
【0003】
上記分離機は、外胴分離槽と、この外胴分離槽内に回転自在に設けられた内胴分離槽と、内胴分離槽を回転駆動する駆動手段とで形成されている。内胴分離槽内に使用済み紙おむつを投入し、外胴分離槽内に処理液を供給し、駆動手段によって内胴分離槽を外胴分離槽内で回転駆動する。これにより使用済み紙おむつに処理液が染み込み、紙おむつを構成する素材、すなわちパルプ、プラスチック、その他に分解する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6326166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、回転する内胴分離槽内で使用済み紙おむつが分解すると、内胴分離槽を回転させる回転軸側の隅部分に、分解されたパルプが貼り付き、内胴分離槽を繰り返し回転させると貼り付いたパルプが塊となって隅部に付着してしまう。このため、使用済み紙おむつを処理液によって分解処理しても、全てのパルプを回収することができないおそれがある。
【0006】
また、内胴分離槽を繰り返し回転駆動させる場合、回転軸側の隅部に貼り付いたパルプの塊が内胴分離槽の重さに加わるため、内胴分離槽の回転が遅くなったり、良好な処理を行うことができなくなるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、内胴分離槽の回転軸側の隅部にパルプの塊が付着するのを防止し、使用済み紙おむつを良好に処理することができる使用済み衛生用品の処理装置用分離機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の廃棄物の処理プラントの第1の態様は、外胴分離槽と、前記外胴分離槽内に回転自在に設けられ投入された使用済み衛生用品と処理液とで使用済み衛生用品を構成する素材に分離する内胴分離槽と、前記内胴分離槽を回転駆動する駆動手段と、を備えた使用済み衛生用品の処理装置用分離機であって、前記内胴分離槽が、筒状で複数の穴が設けられた周壁と、この周壁の軸方向の端面を閉塞する端面壁と、で形成され、前記周壁の軸方向の端部と前記端面壁とが連結する連結隅部を覆うように前記周壁の内面側と前記端面壁の内面側との間に貼り付き防止板を設け、 前記貼り付き防止板は、前記連結隅部を覆う湾曲板部と、この湾曲板部の幅方向の両側部に延設された取付板部とで形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の態様は、前記内胴分離槽の前記周壁の内側には、軸方向に沿って長尺で内胴分離槽の回転中心に向けて突出する掻き上げ突起が周方向に複数個設けられ、前記貼り付き防止板は、前記掻き上げ突起間に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内胴分離槽の周壁の軸方向の端部と端面壁とが連結する連結隅部を覆うように周壁の内面側と端面壁の内面側との間に貼り付き防止板を設けたことにより、内胴分離槽の回転軸側の隅部にパルプの塊が付着することがなくなり、内胴分離槽の回転が遅くなることがないので、良好な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る使用済み衛生用品の処理装置の概略構成を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施の形態に係る使用済み衛生用品の処理装置の分離機を示す正面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る使用済み衛生用品の処理装置の分離機を示し、図2のIII-III線に沿って切断した断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る使用済み衛生用品の処理装置の分離機が傾斜した状態を示す側面図である。
図5】使用済み衛生用品の処理装置に用いられた分離機の内胴分離槽と外胴分離槽の一部を拡大した断面図である。
図6】内胴分離槽の一部を破断した破断斜視図である。
図7】本発明の実施の形態に係る使用済み衛生用品の処理装置に用いられるパルプ回収装置の概略を示す概略構成図である。
図8】パルプ回収装置のロータリスクリーンを示す断面構成図である。
図9】本発明の実施の形態に係る使用済み衛生用品の処理装置の選別機を示す正面図である。
図10】本発明の実施の形態に係る使用済み衛生用品の処理装置の選別機を示し、図9のIX-IX線に沿って切断した断面図である。
図11】本発明の実施の形態に係る使用済み衛生用品の処理装置の選別機を示し、図9の矢視XI方向から見た側面図である。
図12】選別機に用いられるパルプ取出コンベアを示し、(a)はコンベアベルトを示す断面図、(b)はパルプ取出コンベアの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る使用済み衛生用品の処理装置用分離機について説明する。本実施の形態に係る使用済み衛生用品の処理装置用分離機(以下「分離機」という)4は、使用済み衛生用品の処理装置1に用いられて、使用済み衛生用品を、紙おむつを構成する複数種の素材に分解処理する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
使用済み衛生用品の処理装置(以下、「処理装置」という)は、使用済み衛生用品を、衛生用品を構成する複数種の素材と、使用済み衛生用品に吸収されている汚物とを分離し、分離した素材を回収する。
【0015】
本実施の形態において処理される衛生用品としての紙おむつは、表面材、漏れ防止の立体ギャザー、吸水材、防水材、その他によって構成されている。表面材は、ポリエステルやポリプロピレンの不織布などが使用されている。漏れ防止の立体ギャザーは不織布と伸縮性素材が使用されている。吸水材は、吸水紙、綿状パルプ、高分子吸収材などの組み合わせで構成されている。防水材は、紙おむつの外側を覆う防水シートで合成繊維等からなる不織布が使用されている。その他に、紙おむつを止める粘着テープ、止着材等が使用されている。本実施の形態において、素材とは、紙おむつの高分子吸収体、表面材、立体ギャザー等に用いられているプラスチック、吸水紙等に用いられているパルプ、粘着テープやゴム等のその他を意味する。
【0016】
また、本実施の形態における処理装置に用いられる分解水は、分解剤としての石灰と、消毒剤としての次亜塩素酸と、水とを混合したものであり、処理する使用済み紙おむつの種類、処理する使用済み紙おむつの量によって、石灰、次亜塩素、水の配合量が設定されている。また、必要に応じて、洗浄剤や漂白剤等を加えても良い。
【0017】
なお、分解水として石灰と水とを混合したものを用い、消毒剤としての次亜塩素酸は、石灰と水とを混合した分解水とは別に処理装置に供給しても良い。本実施の形態では、分解剤としての石灰と、水と、消毒剤としての次亜塩素酸とを混合したものを分解水としている。
以下、処理装置とこの処理装置に用いられる本実施の形態の分離機4について説明する。なお、本実施の形態では、衛生用品として使用済紙おむつ2を処理する例について説明する。
【0018】
[処理装置の全体構成]
図1に示すように、本実施の形態の処理装置1は、使用済み紙おむつ2と、この紙おむつ2を分解する分解水(図2参照)3とが投入され、投入された分解水3と使用済み紙おむつ2を混ぜ合わせて使用済み紙おむつ2を複数種の素材に分離するとともに使用済み紙おむつ2に吸収されている汚物(汚水)を分離し、複数種の素材を脱水する分離機4と、分離機4内の分解水3とともに汚物含む排水を外部へ排出する排出部5と、分離機4によって分離された素材が投入され乾燥させることで使用済み紙おむつ2を構成する少なくともパルプとプラスチックを選別可能な選別機6とを備えている。
【0019】
[分離機]
図2図3に示すように、本実施の形態の分離機4は、筐体7と、外胴分離槽8と、内胴分離槽9と、分解水供給部10とで構成されている。外胴分離槽8は筐体7に防振装置(不図示)を介して固定されている。内胴分離槽9は、外胴分離槽8内に回転自在に配置されている。分解水供給部10は、内胴分離槽9内の使用済み紙おむつ2に分解水3を供給する。
【0020】
筐体7は、箱形形状に形成されている。筐体7の前面側11には、円形の投入・取出口12と、投入・取出捕捉板13とが設けられている。投入・取出口12からは、使用済み紙おむつ2が内胴分離槽9内に投入され、内胴分離槽9に残った固形物が排出される。投入・取出捕捉板13は、内胴分離槽9内に残った固形物を排出する際に、投入・取出口12の周囲に固形物が散在しないように捕捉する。
【0021】
投入・取出口12の開口縁部には、円形状の投入・取出扉14が回動自在に設けられている。投入・取出扉14は、筐体7の前面側11に位置している状態で投入・取出口12を閉塞する。また、投入・取出扉14は、筐体7の前面側11に対して略180度回動した状態で投入・取出口12を開放する。
【0022】
筐体7の下部底部の基台15には、図示しない傾斜装置が設けられている。この傾斜装置により、筐体7は、前面側11の下部角部16を支点として図4において時計回り方向に回動して傾斜し、後面側17の下部角部18を支点として図4において反時計回り方向に回動して傾斜する。
【0023】
使用済紙おむつ2を筐体7内の内胴分離槽9内に投入する場合は、投入・取出口12を開放状態にし、筐体7を、後面側17の下部角部18を支点として図4において反時計回り方向に回動させる。この状態で使用済み紙おむつ2が内胴分離槽9内に投入される。
【0024】
また、内胴分離槽9内に残っている固形物を筐体7の内胴分離槽9から排出する場合は、投入・取出口12を開放状態にし、筐体7を、前面側11の下部角部16を支点して時計回り方向に回動させる。この状態では、内胴分離槽9内の固形物が投入・取出捕捉板13上に排出され、後述するコンベア68上に排出される。
【0025】
使用済み紙おむつ2は、一般家庭や、病院、老人ホーム等から集積された後に、図1に示すように、計量コンベア19によって計量されて所定量の重さの一塊とされる。この一塊とされた使用済みおむつ2が、投入機20によって吊り下げられ、分離機4の前面側11まで移動される。分離機4の前面側11まで、投入機20によって移動した使用済み紙おむつ2は、投入・取出口12から筐体7の内部、すなわち、外胴分離槽8の内側の内胴分離槽9内に投入される。
【0026】
外胴分離槽8は、図3に示すように、円筒形状で、一方の端面21側が筐体7の前面側11の内面に密着した状態で固定されている。一方の端面21には、筐体7の投入・取出口12に連通する開口部22が形成されている。他方の端面23は閉塞されている。このため、投入・取出扉14が投入・取出口12を閉じている状態では、外胴分離槽8は内部が密封されている。この外胴分離槽8内に内胴分離槽9が回転自在に配置されている。
【0027】
内胴分離槽9は、外胴分離槽8の内径より小さい内径の円筒形状で、外周の周壁113全体に小径の穴が、パンチング等によって形成されている。また、内胴分離槽9の内壁には、4つの突起9aが周方向に等間隔に設けられている。これらの突起9aは、断面形状が内胴分離槽9の中心に向かって鋭角状に突出し、内胴分離槽9の軸方向に沿って長尺に形成されている。内胴分離槽9の一方の端面側の端面壁24が筐体7の前面側11に位置し、他方の端面側の端面壁25が筐体7の後面側17に位置している。一方の端面壁24側には、筐体7の投入・取出口12と連通する開口部26が形成されている。他方の端面壁25側からは、回転駆動軸27が筐体7の後面側17に向けて突出している。
【0028】
また、図5及び図6に示すように、内胴分離槽9の周壁113の軸方向の端部と他方の端面壁25とが連結し周方向に連続する連結隅部114を覆うように周壁113の内面側と端面壁25の内面側との間に貼り付き防止板115が設けられている。貼り付き防止板115は、連結隅部114を覆う湾曲板部116と、この湾曲板部116の幅方向の両側部に延設された取付板部117とで形成されている。また、貼り付き防止板115は、4つの突起9a、9a、9a、9a間にそれぞれ設けられている。
【0029】
また、他方の端面壁25の中心の回転軸連結部118を貫通した回転駆動軸27は筐体7の後面側17に向けて突出している。この回転駆動軸27は、外胴分離槽8の端面壁23を貫通している。外胴分離槽8の端面壁23を貫通した回転駆動軸27には、駆動手段119の回転駆動力が伝達される。
【0030】
図5に示すように、駆動手段119は、端面壁23を貫通した回転駆動軸27を回転可能に支持する2つのベアリング120、121と、これらの2つのベアリング120、121を支持する軸支持ブロック122と、回転駆動軸27の先端側に固定されたプーリ123と、駆動モータ126(図3参照)の駆動軸とプーリ123との間に巻き掛けられてプーリ123に回転駆動力を伝達する伝達ベルト124とで構成されている。
【0031】
軸支持ブロック122は、筐体7と外胴分離槽8に固定されている。これにより、内胴分離槽9は、筐体7、外胴分離槽8によって回転可能に片持ち支持されている。また、ベアリング120と外胴分離槽8の端面壁23との間には、主軸シール125が設けられている。この主軸シール125は、外胴分離槽8の端面壁23を回転駆動軸27が貫通する部分でシールして、分解水供給部10によって外胴分離槽8内に供給された処理液が外部へ漏れるのを防止している。
【0032】
分解水供給部10は、図1及び図2に示すように、分解剤タンク28と、洗剤タンク29と、分解水供給口30と、供給ポンプ31と、管路32、33とで構成されている。分解剤タンク28には、所定の割合に配合された分解剤と水と消毒剤とを混合した分解水3が貯留されている。なお、分解水として石灰と水とを混合したものを用い、消毒剤としての次亜塩素酸は、石灰と水とを混合した分解水とは別に処理装置に供給しても良い。この場合には、洗剤と同様の別の管路で消毒剤(次亜塩素酸)を内胴分離槽9内に送っても良い。洗剤タンク29には、洗剤が貯留されている。分解水供給口30は、図2図3に示すように、投入・取出扉14の中心より上部側の位置に設けられている。
【0033】
このため、内胴分離槽9の中心位置より上部側から分解剤と水と消毒剤とを混合した分解水3が内胴分離槽9内に供給される。供給ポンプ31は、分解剤と水と消毒剤とが混合された分解水を供給する分解水供給口30に送る。管路32は、分解剤タンク28から分解水供給口30まで分解剤を送る。管路33は、洗剤タンク29から洗剤を内胴分離槽9内まで送る。
【0034】
分解水供給口30に送られた分解水は、図3に示すように、内胴分離槽9内に投入されている使用済み紙おむつ2に上部側から降り注がれる。内胴分離槽9内の使用済み紙おむつに、分解水が上部側から降り注ぐことにより使用済み紙おむつ2には、満遍なく分解水が染み渡り、いわゆるナイアガラ方式によって分解水が内胴分離槽9内に投入された使用済み紙おむつ2に注がれる。
【0035】
そして、分解水がナイアガラ方式によって使用済み紙おむつ2に上部から降り注がれる状態で内胴分離槽9が回転駆動されることにより、供給された分解水によって、使用済み紙おむつ2は、構成する複数種の素材と、使用済み紙おむつ2に吸収されている汚物(汚水)とが分離される。この場合、使用済紙おむつ2は、内胴分離槽9内の突起9aによってかき回されるので、下部側の使用済紙おむつ2も上部側に移動し、分解水が上部から降り注がれる。これにより、分解水が使用済紙おむつ2に満遍なく浸漬(浸透)し、使用済紙おむつ2が分離される。分解水に溶けることのない固形物(溶けなかったパルプ、プラスチック)は内胴分離槽9内に残り、分解水に溶けてパンチング等によって形成された内胴分離槽9の穴を通過したパルプや汚物(汚水)は、排出部5に排出される。
【0036】
[排出部]
排出部5は、図2図3に示すように、外胴分離槽8内の分解水が排出される排水受け槽34と、排水を濾過して一旦貯留する排水ピット35と、排水受け槽34と排水ピット35とを連通し排水を排水ピット35に流す排水管36とで構成されている。排水受け槽34は、外胴分離槽8の下部側に配置され、筐体7に固定されている。排水受け槽34からは回収管37が突出している。この回収管37は、外胴分離槽8内まで延設されている。回収管37は、排水受け槽34と外胴分離槽8内とを連通している。
【0037】
そして、回収管37は、外胴分離槽8内の排水、すなわち、供給された分解水によって使用済み紙おむつ2から分解され、高分子ポリマーに含まれていた汚物(尿等の汚水)、付着していた汚物、パルプが混在した分解水を排水受け槽34内に排出する。排水受け槽34に排水されたパルプを含む分解水は、排水管36を通って排水ピット35に貯留される。排水ピット35に貯留された分解水中には、パルプが大量に含まれており、パルプ回収装置38によってパルプが分解水と分離されて回収される。
【0038】
パルプ回収装置38は、図7に示すように、一次ピット39と、一次ロータリスクリーン40aと、一次スクリュウ脱水機42aと、排水パルプ洗浄槽41と、二次ロータリスクリーン40bと、二次スクリュウ脱水機42bとで構成されている。一次ピット39には、内胴分離槽9内から排出されたパルプと汚物(汚水)が溶け込んだ分解水が、排水ピット35からポンプ43によって送られる。排水ピット35、一次ピット39を通すことにより、分解水中に混在している大きな部材(プラスチック、ビニール手袋等)が分離される。排水ピット35、一次ピット39を通って混在している大きな部材が分離された分解水は、ポンプ44によって一次ロータリスクリーン40aに送られる。
【0039】
一次ロータリスクリーン40aは、図8に示すように、ロータリーシャフト46と、このロータリーシャフト46を回転駆動させるモータ47と、ロータリーシャフト46の回転により回転するスクリーンドラム48とが筐体45内に設けられて概略構成されている。二次ロータリスクリーン40bは一次ロータリスクリーン40aと同構成なので説明は省略する。
【0040】
スクリーンドラム48内には、一次ピット39から、パルプと汚物(汚水)が溶け込んでいる分解水が供給口49より投入される。この一次ロータリスクリーン40aによって、分解水中の固形物(パルプ)が分解水の水分と分離され、分解水から分離された水分は筐体45の下部に集められて回収される。分解水から分離されたパルプは、一次スクリュウ脱水機42aに送られる。一次スクリュウ脱水機42aに送られたパルプは、脱水された後に排水パルプ洗浄槽41に送られる。排水パルプ洗浄槽41内でパルプは洗浄液(水)と混ぜ合わされて洗浄され、ポンプ51によって二次ロータリスクリーン40bに送られる。二次ロータリスクリーン40bに送られた洗浄後のパルプは、固形物(パルプ)と洗浄液(水)とに分離される。洗浄液(水)と分離された固形物(パルプ)は二次スクリュウ脱水機42bに送られ、固形物(パルプ)と分離された洗浄液(水)は一次ロータリスクリーン40aにより回収される分解水と同様に回収される。二次スクリュウ脱水機42bに送られた水分を含んだ固形物(水)は、脱水されて、回収槽50に回収される。
【0041】
また、パルプを含む分解水が外胴分離槽8から排出部5に排出されると、内胴分離槽9内には固形物として、水分を含んだ状態のプラスチック(分解された高分子ポリマーを含む)と、分解水中に溶けることのなかった固形物としてのパルプが残る。
【0042】
内胴分離槽9が回転している状態で、分解水を内胴分離槽9内に供給することで使用済み紙おむつはパルプ、プラスチック、高分子ポリマーから分解された汚物等に分解される。分解水に溶け出したものは排出部5によって外部に排出され、分解水に溶けることのない固形物が内胴分離槽9内に残る。分解水に溶け出したものは、パルプ、高分子ポリマーから出た汚物(汚水)であり、これらは排出部5から排出される。この場合、分解水に溶け出たパルプが、排出部5によって内胴分離槽9から排出されるので、内胴分離槽9内の内容物(分解水に溶けることのなかったパルプ、プラスチック)の容量は少なくなっている。
【0043】
内胴分離槽9内への分解水の供給を停止した後に、内胴分離槽9を回転させることにより、固形物であるパルプとプラスチックに残っていた水分が脱水される。この脱水によってパルプとプラスチックから取り出された分解水は排出部5により排出される。脱水後の固形物、すなわち分解水に溶けることのなかった固形物であるパルプとプラスチックは内胴分離槽9内に残る。これらのプラスチックとパルプが混在した固形物は、投入・取出口12からコンベア68によって選別機6へと送られる。
【0044】
[選別機]
選別機6は、図9、10、11に示されるように、筐体53と、外胴選別槽54と、内胴選別槽55と、取出搬送部56と、乾燥風供給部57とで構成されている。外胴選別槽54は、筐体53内に固定、支持されている。内胴選別槽55は、外胴選別槽54内に回転可能に配置されている。取出搬送部56は、外胴選別槽54の下部に設けられて、選別されたパルプが取り出されて搬送される。乾燥風供給部57は、筐体53の上部に配置されて外胴選別槽54内に乾燥風を供給する。
【0045】
筐体53は、箱型形状に形成され、基台58上に設置されている。基台58は、載置台59と、この載置台59の四隅に設けられた4本の脚部60と形成されている。載置台59には、筐体53を図11において反時計回りに回動させる傾斜装置61が設けられている。この傾斜装置61は、筐体53の一面側62の下部に配置されたエアシリンダ63と、筐体53の他面側64の下部に配置された回動支持部65とで形成されている。
【0046】
筐体53の一面側62には、矩形状の投入口66が形成されている。投入口66は、筐体53に設けられ上下方向にスライドする投入口扉67によって開閉可能となっている。また、投入口66には、分離機4の投入・取出口12との間に掛け渡されたコンベア68の一端68aが連結されている。
【0047】
そして、分離機4によって、分離され脱水された状態のパルプとプラスチックの固形物が、分離機4の投入・取出口12からコンベア68によって搬送され選別機6の投入口66から選別機6の内部に投入される。これにより、選別機6の内部に設けられている内胴選別槽55内に、脱水された状態のパルプとプラスチックの固形物が投入される。
【0048】
筐体53の他面側64には、円形状の取出口69が形成されている。この取出口69は、筐体53の上部に回動自在に支持された取出口扉70によって開閉可能となっている。また、取出口69の左右の開口縁には、取出用側壁71、71が設けられている。そして、選別機6によって選別されたプラスチックが取出口69から取り出される。
【0049】
外胴選別槽54は、円筒形状で、一方の端面72側が筐体53の一面側62の内面に密着され、他方の端面73側が筐体53の他面側64の内面に密着された状態で筐体53に固定されている。また、一方の端面72には、筐体53の投入口66に連通する投入側の開口部74が形成され、他方の端面73には、筐体53の取出口69に連通する取出側の開口部75が形成されている。
【0050】
外胴選別槽54の外周側面76には、図9に示すように、外胴選別槽54の上部側であって上端から周方向の一側に偏った位置に、乾燥風が内部に供給される乾燥風導入口77が形成されている。さらに、外周側面76には、外胴選別槽54の上部側であって上端から周方向の他側に偏った位置に、乾燥風が外部に排出される乾燥風排出口78が形成されている。乾燥風導入口77は、後述する乾燥風供給部57の乾燥風導入路105と連通され、乾燥風排出口78は、後述する乾燥風供給部57の乾燥風排出路106と連通されている。
【0051】
そして、乾燥風導入口77から導入された乾燥風は、内胴選別槽55内に送られて、内胴選別槽55内で、パルプとプラスチックを乾燥させた後に、乾燥風排出口78から外部に排出される。外胴選別槽54の外周側面76の下部には、パルプ排出口79が、外胴選別槽54の軸方向の全域に亘って、かつ外胴選別槽54の直径の略半分の幅寸法に形成されている。このパルプ排出口79からは内胴選別槽55の外周の穴から外側に排出されたパルプが、後述する取出搬送部56に排出される。
【0052】
内胴選別槽55は、外胴選別槽54より若干小径の円筒形状で、軸方向の両端面は開口され、外胴選別槽54の開口部74、75と連通されている。また、周方向の側面には、パンチング等によって形成された複数の貫通穴が全体的に形成されている。さらに、内胴選別槽55の内部には、6個の突起(桟)86が内周壁に等間隔で設けられている。
【0053】
内胴選別槽55は、4個の駆動ローラ87によって外胴選別槽54内で回転自在に支持されている。駆動ローラ87は、筐体53に支持されており、外周の一部が外胴選別槽54の外周を貫通している。外胴選別槽54の外周を貫通した駆動ローラ87の外周は、外胴選別槽54内の内胴選別槽55の外周に当接している。これらの駆動ローラ87には、図示しない駆動モータからの回転駆動力がベルト等を介して伝達される。駆動ローラ87に伝達された回転駆動力によって、内胴選別槽55は、外胴選別槽54内で一方向に回転する。回転している内胴選別槽55内には、乾燥風供給部57から乾燥風が導入され、投入されている水分を含んだパルプとプラスチックが乾燥される。
【0054】
乾燥風供給部57は、ヒータ103と、ファン104と、乾燥風導入路105と、乾燥風排出路106とで構成されている。ヒータ103は、ヒータボックス107と、このヒータボックス107内に配置されたヒータ本体108とで構成されている。ヒータ103は、筐体53の天板53a上に載置されている。ヒータボックス107は、上下の対向する両面がそれぞれ開口されている。一方の開口は外方に向けて開口され、他方の開口は乾燥風導入路105に連通されている。ヒータ本体108は、複数の熱交換用のパイプ(不図示)で形成されている。このパイプには、高温の蒸気が供給される。パイプの周囲を外気が通過することで外気が加熱される。そして、一方の開口から導入された外気を、ヒータ本体108によって加熱して乾燥風を生成し、この乾燥風を他方の開口から乾燥風導入
路105内に送り込む。
【0055】
ファン104は、送風ボックス109と、この送風ボックス109内に配置されたブロアファン本体110とで構成されている。ファン104は、筐体53の天板53a上に、ヒータ103に隣設して載置されている。送風ボックス109には、乾燥風排出路106と連通する開口と、ダクト111と連通する開口とが設けられている。そして、ファン104は、外胴選別槽54内の乾燥風を乾燥風排出路106を通して吸い出してダクト111内へ送風する。
【0056】
ダクト111はバグフィルタを有するパルプ回収装置112に接続されている。ファン104が、外胴選別槽54内から乾燥風を排出(吸い出す)することにより、ヒータ103に外気が導入され、ヒータ本体108により加熱された乾燥風が外胴選別槽54内に供給される。これにより、回転する内胴選別槽55内のパルプとプラスチックとから水分が蒸発しパルプとプラスチックが乾燥されて選別される。また、ファン104によって外胴選別槽54から吸い出された乾燥風は、ダクト111を介してパルプ回収装置112に送られ、バグフィルタによって乾燥風に含まれるパルプが回収される。
【0057】
パルプとプラスチックとが乾燥されると、パルプとプラスチックは分離されて選別される。選別されたパルプとプラスチックのうちパルプは、取出搬送部56によって外部に取り出される。
【0058】
取出搬送部56は、外胴選別槽54の下部に設けられて複数種の素材のうちのパルプが貯留されるパルプ受け槽80と、このパルプ受け槽の底部81を開閉する扉82と、パルプ受け槽80の下部側に配置されてパルプ受け槽80から扉82の開放で落下したパルプを外部へ搬送するパルプ取出コンベア85とで構成されている。
【0059】
パルプ受け槽80の底部81には、底部81を開放可能な観音開きの扉82が形成されている。扉82は、底部81の対向する開口縁部に回動自在にそれぞれ支持された一対の蓋板83、83と、これらの蓋板83、83が底部81を閉塞する位置と開放する位置に回動させるエアシリンダ84とで形成されている。エアシリンダ84は、載置台59の下部に揺動自在に支持され、駆動軸84a、84aの先端部はそれぞれ蓋板83、83に連結されている。
【0060】
この観音開きの扉82は、駆動軸84a、84aがシリンダ内に引き込んだ状態で、蓋板83、83が底部81を閉塞する。底部81を扉82が閉塞した状態では、内胴選別槽55内で選別されたパルプが内胴選別槽55の外周の穴を通過して外胴選別槽54内に排出され、パルプ受け槽80内に集積(貯留)される。また、駆動軸84a、84aがシリンダから突出した状態で、蓋板83、83を互いに離間する方向に回動させて底部81を開放すると、集積(貯留)されているパルプ受け槽80内のパルプが後述するパルプ取出コンベア85上に落下する。
【0061】
パルプ取出コンベア85は、図12(a)、(b)に示すように、フレーム88と、駆動ロール89及び従動ロール90と、駆動モータ94と、コンベアベルト92と、拡散防止片93、93とで構成されている。駆動ロール89には駆動モータ94の回転駆動力が伝達され、駆動ロール89に伝達された回転駆動力はコンベアベルト92を介して従動ロール90に伝達される。駆動ロール89の回転により、コンベアベルト92が一方向に移動し、コンベアベルト92上のパルプが搬送される。
【0062】
上記フレーム88は、長尺状の底壁95と、この底壁95の両側部から同方向に立ち上がる一対のガイド側壁96、96とで形成されている。駆動ロール89は、ガイド側壁96、96間に配置された本体部97と、この本体部97の両端面から突出しガイド側壁96、96に回転可能に支持された回転軸97a、97aとで形成されている。一方の回転軸97aは、駆動モータ94と連結されて、駆動モータ94の回転駆動力が伝達される。駆動モータ94は、一方のガイド側壁96の外側に配置されている。
【0063】
従動ロール90は、ガイド側壁96、96間に配置された本体部98と、この本体部98の両端面から突出しフレーム88に回転可能に支持された回転軸98a、98aとで形成されている。また、駆動ロール89と従動ロール90間にコンベアベルト92が巻き掛けられている。そして、従動ロール90は、駆動ロール89の回転駆動力がコンベアベルト92を介して伝達されて回転する。
【0064】
駆動ロール89の本体部97には、軸方向の中間位置が縮径されて溝99が設けられている。一方、駆動ロール89の本体部97の外周に巻き掛けられるコンベアベルト92の裏面側には、幅方向(ガイド側壁間)の中間部に、本体部97の溝99に挿入される突起100が形成されている。
【0065】
コンベアベルト92は、駆動ロール89に巻き掛けられるベルト中央部101と、このベルト中央部101の両側に一体に設けられた傾斜部102、102とで形成されている。上記突起100は、ベルト中央部101の裏面側に搬送方向(コンベアベルト92が移動する方向)に沿って全周にわたり設けられている。そして、突起100が駆動ロール89の溝99内に嵌合されることにより、コンベアベルト92がガイド側壁96、96間で駆動ロール89の軸方向に移動することがなく、コンベアベルト92が蛇行することがない。
【0066】
傾斜部102、102は、駆動ロール89の溝99と両端面との中間位置からガイド側壁96、96に向けてそれぞれ登り傾斜に形成されている。傾斜部102、102の側端部102a、102aはガイド側壁96、96にそれぞれ接触している。側端部102a、102aの上部に、拡散防止片93、93がそれぞれ設けられている。
【0067】
拡散防止片93、93は、ガイド側壁96、96の内面96a、96aに一端が固定され、他端側が、コンベアベルト92の傾斜部102、102上に当接している。この状態ではコンベアベルト92の側端部102a、102aとガイド側壁96、96との接触部分が拡散防止片93、93によって覆われている。これにより、乾燥風供給部57によって供給された乾燥風によって乾燥されてプラスチックと選別されたパルプがコンベアベルト92の裏面側に飛び散ることがなく、コンベアベルト92の裏面側にパルプが入り込むことがない。
【0068】
次に、処理装置1による、使用済み紙おむつ2の処理手順について説明する。
図1に示すように、所定の重さに計量されて一塊とされた使用済み紙おむつ2は、投入機20によって分離機4の前面側11に運ばれる。
【0069】
分離機4は、投入・取出扉14が、投入・取出口12を開放した状態で、下部角部18を中心に図4において反時計回り方向に回動し傾斜している。この状態の分離機4の投入・取出口12から、所定の重さに計量され一塊とされた使用済み紙おむつ2が内胴分離槽9内に投入される。使用済紙おむつ2が内胴分離槽9内に投入された後に、分離機4を傾斜した状態から元の位置に戻す。
【0070】
次に、内胴分離槽9を所定の回転数で回転させる。内胴分離槽9を所定の回転数で回転させた状態で、供給ポンプ31によって分解水を分解水供給口30から内胴分離槽9内に供給する。これとともに、洗剤を内胴分離槽9内に供給する。
【0071】
内胴分離槽9を回転させながら分解水を内胴分離槽9内に供給すると、突起9aにより使用済紙おむつ2がかき回されて、下部側の使用済紙おむつ2も上部側に移動し、上部側から分解水が降り注がれ分解水が染みこんでいく。これによりパルプ、プラスチックが使用済み紙おむつ2から分離される。これとともに、分解水中の水と石灰により高分子ポリマーが分解され、高分子ポリマーに吸収されている尿等の汚物(汚水)が水分となって内胴分離槽9内に出てくる。
【0072】
したがって、使用済み紙おむつ2は、分解水中に溶け込んだパルプ、尿等の汚物(水分)、プラスチック、その他に分離される。内胴分離槽9を所定の回転数で回転させながら、所定量の分解水と洗剤を内胴分離槽9内に投入し、所定時間内胴分離槽9を回転させた後に、パルプや尿等の汚物(水分)を含む分解水を、排出部5から外部に排出する。内胴分離槽9内には、分解水に溶け込まなかったパルプ、プラスチック、その他の素材が残る。
【0073】
内胴分離槽9内に、所定量の分解水を供給した状態で、内胴分離槽9を所定時間回転させた後、分解水を排出部5から排出し、内胴分離槽9を一定時間回転させる。これにより、内胴分離槽9内の、分解水に溶け込まなかったパルプとプラスチックが脱水される。脱水した水分(分解水と高分子ポリマーから出た尿等の汚水)は排出部5に排出される。排出部5に排出された分解水は、排水管36を通って排水ピット35に貯留され、パルプ回収装置38によってパルプが回収される。
【0074】
次に、内胴分離槽9内に設けられた貼り付き防止板115の作用について説明する。所定量の使用済み紙おむつ2と、所定量の使用済み紙おむつ2の重量に応じた所定量の分解水3とが投入された内胴分離槽9が駆動手段119の駆動力によって回転すると、内胴分離槽9内で使用済み紙おむつ7がパルプ、プラスチック、その他に分解される。
【0075】
回転する内胴分離槽9内で分解水3によって使用済み紙おむつ2が、パルプ、プラスチック、その他の素材に分解されると、これらのパルプ、プラスチック、その他の素材は、内胴分離槽9内で突起9a、9a、9a、9aによって掻き上げられる。このとき、パルプは、内胴分離槽9の内壁の軸方向端部と端面壁25とが連結する連結隅部114側へ移動する。連結隅部114側へ移動したパルプは、貼り付き防止板115の湾曲板部116によって連結隅部114側への移動が阻止され、湾曲板部116に当接する。湾曲板部116に当接したパルプは、内胴分離槽9が回転することで突起9a、9a、9a、9aによって再び掻き上げられる。
【0076】
これにより、内胴分離槽9内で使用済み紙おむつ2から分解されたパルプが連結隅部114側に集まって固まることがなくなり、連結隅部114に貼り付くことがなくなって、内胴分離槽9の回転側の連結隅部にパルプの塊が付着することがない。
【0077】
なお、分解水を排出部5から排出した後に、内胴分離槽9内に洗浄水を所定量投入し、内胴分離槽9を所定時間回転させ、その後、内胴分離槽9内の洗浄水を排出部5に排出させても良い。すなわち、使用済紙おむつ2をパルプとプラスチックに分離し、高分子ポリマーを分解水によって分解した後に、洗浄水によって内胴分離槽9のパルプ、プラスチック、分解した高分子ポリマーを洗浄、すなわちすすぎを行っても良い。この場合でもすすぎに使用した洗浄水中には、パルプが混在しているので、排出部5に排出し、パルプ回収装置38によって回収することができる。
【0078】
内胴分離槽9を回転させて脱水を所定時間行った後に、分離機4の投入・取出口12を開放した状態で、分離機4を下部角部16を中心に回動させる。分離機4を下部角部16を中心に回動させると、内胴分離槽9内の脱水された状態のパルプとプラスチックが混在したものが、コンベア68上に取り出される。コンベア68上に取り出されたパルプとプラスチックが混在したものは、搬送されて選別機6の投入口66から内胴選別槽55内に投入される。
【0079】
内胴選別槽55内にパルプとプラスチックとを投入した後に、投入口66を投入口扉67によって閉塞する。この状態で内胴選別槽55を所定の回転数で回転させるとともに、ヒータ103のヒータ本体108に高温の蒸気を投入し、フアン104を駆動する。外胴選別槽54内には、外気がヒータ103により加熱され、乾燥風となって乾燥風導入口77から導入され、内胴選別槽55の外周面の穴から内胴選別槽55内に導入される。これにより、内胴選別槽55内の脱水後の、若干水分を含むパルプとプラスチックが乾燥される。
【0080】
内胴選別槽55内で乾燥されたパルプは、内胴選別槽55の外周に設けた穴を通過して外胴選別槽54に入り、パルプ受け槽80内に集積され、貯留される。これとともに、ファン104によって吸い出された乾燥風は、ダクト111を通してパルプ回収装置112に送られ、バグフィルタによって捕捉される。この結果、内胴選別槽55内には、乾燥したプラスチックが残る。
【0081】
そして、パルプ受け槽80に集積(貯留)されたパルプは、観音開きの扉82を開放して底部81を開放させることにより、パルプ取出コンベア85に排出され、回収される。また、ファン104により内胴選別槽55内から乾燥風と共に吸い出されたパルプは、パルプ回収装置112によって回収される。また、内胴選別槽55に残った乾燥したプラスチックは、取出口69から取り出される。
【0082】
内胴選別槽55に残った乾燥したプラスチックを取出口69から取り出す際には、筐体53を傾斜装置61によって傾斜させて内胴選別槽55内から取り出す。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態によれば、内胴分離槽9の周壁113の軸方向の端部と端面壁25とが連結する連結隅部114を覆うように周壁113の内面側と端面壁25の内面側との間に貼り付き防止板115を設けたことにより、内胴分離槽9の回転軸側の隅部にパルプの塊が付着することがなくなり、内胴分離槽9の回転が遅くなることがないので、良好な処理を行うことができる。
【0084】
また、本実施の形態によれば、分離機4によって投入された分解水と使用済み紙おむつ2とを混ぜ合わせることにより、使用済み紙おむつ2が複数種の素材(パルプ、プラスチック、その他)に分離される。これとともに使用済み紙おむつ2内の汚物(尿等の汚水)が分離され、排出部5によって分解水ともに外部へ排出される。また、選別機6によって、分離機4にて分離されたパルプとプラスチックを乾燥させることで少なくともパルプとプラスチックとが選別される。
【0085】
これにより、紙おむつを構成する複数種の素材(パルプ、プラスチック、その他)に使用済み紙おむつを分離することができ、これと共に高分子ポリマーに吸収されている汚物も高分子ポリマーから分離され、使用済み紙おむつ2を少なくともパルプとプラスチックに選別することができる。
【0086】
また、上記実施の形態では、分離機4で、使用済み紙おむつ2から分離しパルプ回収装置38で回収されるパルプと、選別機6で選別されパルプ受け槽80に集積されて回収されるパルプと、乾燥風内に含まれパルプ回収装置112によって回収されるパルプとを使用済み紙おむつ2から回収している。これにより、使用済み紙おむつ2からパルプを効率良くもれなく回収することができる。
【0087】
また、上記実施の形態では、最終的に乾燥したプラスチックを回収することができる。これにより、回収したプラスチックを再利用することもできる。
【0088】
また、上記実施の形態では、分解水を内胴分離槽9内の使用済み紙おむつ2に浸漬(浸透)させる際に、内胴分離槽9内の使用済み紙おむつ2の上部から降り注ぐ(撒き散らす)ので、使用済み紙おむつ2に素早く分解水が染み渡り、内胴分離槽9内での使用済み紙おむつの分離時間、分解時間を短縮することが可能となる。
【0089】
すなわち、内胴分離槽9内に分解水を予め供給した状態では、分解水は内胴分離槽9の下部側に貯まっているため、この状態で内胴分離槽9内に使用済み紙おむつ2を投入すると、内胴分離槽9の下部側に貯まっている分解水によって投入された使用済み紙おむつが浮いた状態となる。このように、分解水内で使用済み紙おむつ2が浮いた状態で内胴分離槽9を回転させると、分解水に浸かっていない使用済み紙おむつが存在し、使用済み紙おむつの分離、分解に時間がかかる。
【0090】
これに対して、分解水を内胴分離槽9内の使用済み紙おむつの上部から降り注ぐように、すなわちナイアガラ方式にて供給することにより、分解水が使用済み紙おむつ2に素早く浸透し、分離、分解が促進される。加えて、突起9aにより内胴分離槽9内の使用済紙おむつ2がかき回されるので、下部側の使用済紙おむつ2も上部側に移動し、上部から分解水が降り注がれるので、使用済紙おむつ2の全体に、素早く分解水が浸透する。
【0091】
また、上記実施の形態において、分解水中の石灰によって内胴分離槽9内で高分子ポリマーが分解して内胴分離槽9内に出てきた尿等の汚物(汚水)は、分解水とともに使用済紙おむつ2を分離させるので、無駄な量の分解水を投入する必要がない。また、高分子ポリマー内の汚物(汚水)も使用済紙おむつ2の分離に寄与するので、余分な量の分解水を投入する必要がなく、分解水中に溶け出したパルプとともに分解水を排出部5に排出する際にも短時間で排出することができるので、内胴分離槽9内で、分離、分解のための作業時間を大幅に短縮することができる。
【0092】
すなわち、一定量の分解水を内胴分離槽9内に投入し、この分解水によって使用済み紙おむつを分解して高分子ポリマーから出た尿等の汚水も、使用済紙おむつ2の分離に寄与するため、内胴分離槽9内に投入する分解水の量を少なくすることができ、排出部5に排出する場合にも短時間で排出することができる。これにより、分離,分解のための作業時間を短縮することが可能となる。
【0093】
また、上記実施の形態によれば、選別機6からパルプ受け槽80に回収されたパルプを取り出すパルプ取出コンベア85は、コンベアベルト92の両側部に傾斜部102、102を設けたことにより、粉体状のパルプをコンベアベルト92の幅方向の中心側に集めることができる。
【0094】
また、上記実施の形態によれば、パルプ取出コンベア85のガイド側壁96、96に拡散防止片93、93を設けたことにより、粉状のパルプがコンベアベルト92の裏面側に飛散するのを防止することができる。
【0095】
また、上記実施の形態のパルプ取出コンベア85では、駆動ロールの軸方向の中間部に溝99を設け、この溝99にコンベアベルト92の幅方向の中間部に設けた突起100を嵌合させることにより、コンベアベルト92の蛇行を防止することができる。
【0096】
なお、上記実施の形態では、洗剤は、分解水とは別の管路にて内胴分離槽9内に供給したが、分解水と共に内胴分離槽9内に供給してもよい。この場合、洗剤は、分解水中の石灰によって高分子ポリマーが分解して出てくる尿等の汚物(汚水)とともに内胴分離槽9の回転によってパルプやプラスチックを洗浄する。
【0097】
また、上記実施の形態では、衛生用品として使用済紙おむつを処理する例について説明したが、上記処理装置1は、尿取りパッド、生理用ナプキン等高分子ポリマーにより水分を吸収する衛生用品であれば、パルプとプラスチックと汚物(汚水)を分離し、分解して回収することができる。
【0098】
上述の通り、本発明の実施の形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る使用済み衛生用品の処理装置は、使用済みの紙おむつの処理以外に、高分子ポリマーによって尿等の汚物を吸収させる衛生用品、例えば生理用ナプキンや、尿取りパッド等を処理する際にも利用可能である。
【符号の説明】
【0100】
4 使用済み衛生用品の処理装置用分離機
8 外胴分離槽
9 内胴分離槽
24 一方の端面壁
25 他方の端面壁
113 周壁
114 連結隅部
115 貼り付き防止板
119 駆動手段


【要約】
【課題】内胴分離槽の回転軸側の隅部にパルプの塊が付着するのを防止し、使用済み紙おむつを良好に処理することができる使用済み衛生用品の処理装置用分離機を提供する。
【解決手段】本発明は、外胴分離槽8と、外胴分離槽8内に回転自在に設けられ投入された使用済み衛生用品2と処理液3とで使用済み衛生用品2を構成する素材に分離する内胴分離槽9と、内胴分離槽9を回転駆動する駆動手段119と、を備えた使用済み衛生用品2の処理装置に用いられた使用済み衛生用品の処理装置用分離機4であって、内胴分離槽9が、筒状で複数の穴が設けられた周壁113と、この周壁113の軸方向の端面を閉塞する端面壁24、25と、で形成され、周壁113の軸方向の端部と端面壁25とが連結する連結隅部114を覆うように周壁113の内面側と端面壁25の内面側との間に貼り付き防止板115を設けたことを特徴とする。
【選択図】 図5

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12