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  • 特許-皮膚美白用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】皮膚美白用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/125 20160101AFI20220615BHJP
   A61K 31/7016 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
A23L33/125 ZNA
A61K31/7016
A61P17/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021069140
(22)【出願日】2021-04-15
【審査請求日】2021-10-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500101243
【氏名又は名称】株式会社ファーマフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 裕晃
(72)【発明者】
【氏名】山津 敦史
(72)【発明者】
【氏名】金 武祚
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/166677(WO,A1)
【文献】特開2008-115135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/125
A61K 31/7016
A61P 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレハロースを有効成分として含む、経口摂取用の皮膚美白用組成物。
【請求項2】
トレハロースを少なくとも約0.001w/v%の濃度で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記トレハロースは約1mg~約10g/日の量で経口摂取される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
メラニン生成を抑制する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
チロシナーゼ発現を抑制する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
飲食品、食品添加物、医薬部外品、または医薬品である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
肌の明度を向上させる非治療的な方法であって、トレハロースを有効成分として含む皮膚美白用組成物を経口摂取する工程を含む、方法。
【請求項8】
前記組成物が、前記トレハロースを少なくとも約0.001w/v%の濃度で含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記肌が、メラニンが沈着している肌の部分を含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記経口摂取する工程は、前記有効成分を約1mg~約10g/日の量で経口摂取するように行われる、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の皮膚美白用組成物を経口摂取する工程を有する、非治療的な美白方法。
【請求項12】
トレハロースを有効成分として含む、経口摂取用のメラニン生成抑制剤。
【請求項13】
トレハロースを少なくとも約0.001w/v%の濃度で含む、請求項12に記載の抑制剤。
【請求項14】
前記トレハロースは約1mg~約10g/日の量で経口摂取される、請求項12または13に記載の抑制剤。
【請求項15】
チロシナーゼ発現を抑制する、請求項12~14のいずれか一項に記載の抑制剤。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか一項に記載のメラニン生成抑制剤を含有する、皮膚美白用組成物。
【請求項17】
飲食品、食品添加物、医薬部外品、または医薬品である、請求項16に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚美白用組成物に関する。具体的には、トレハロースを有効成分として含む皮膚美白用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線曝露による日焼けのほか、シミ、そばかす、くすみなどの皮膚における色素の沈着は、色素細胞(メラノサイト)のメラニン生成が亢進された後、過剰に生成されたメラニンがターンオーバーの異常などによって生じることが知られている。このような皮膚における色素の沈着は外観から容易に認められるため、多くの人にとって美容上の大きな悩みとなっており、美白剤や美白用化粧料などの需要は近年大きいものとなっている。
【0003】
このような需要をうけて、近年においては、皮膚における色素の沈着の予防や改善を目的とする美白剤や美白用化粧料として、メラニン産生抑制剤、チロシナーゼ阻害剤、チロシナーゼ遺伝子発現抑制剤、α-MSH阻害剤、抗酸化剤などの色素沈着が生じる作用機序に着目した美白剤が開発されている。
【0004】
しかしながら、このような美白剤における美白効果は、その作用を発揮する濃度では望まない副作用が生じることもあり、安全性が高く、かつ優れた美白作用を有する美白剤の開発が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、トレハロースに美白作用があることを見出し、このトレハロースを用いることにより、安全性が高く、かつ優れた美白作用を有する皮膚美白用組成物や、この組成物を用いて、肌の明度を向上させる方法を提供する。
【0006】
したがって、本発明の主要な観点によれば、以下の発明が提供される。
(項目1)
トレハロースを有効成分として含む、皮膚美白用組成物。
(項目2)
トレハロースを少なくとも約0.001w/v%の濃度で含む、上記項目に記載の組成物。
(項目3)
前記組成物は経口摂取または皮膚に塗布される、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目4)
前記トレハロースは約1mg~約10g/日の量で経口摂取または皮膚に塗布される、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
メラニン生成を抑制する、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
チロシナーゼ発現を抑制する、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
飲食品、食品添加物、化粧品、医薬部外品、または医薬品である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目A1)
肌の明度を向上させる方法であって、トレハロースを有効成分として含む皮膚美白用組成物を適用する工程を含む、方法。
(項目A2)
前記組成物が、前記トレハロースを少なくとも約0.001w/v%の濃度で含む、上記項目に記載の方法。
(項目A3)
前記適用は、前記組成物の経口摂取および肌表面への塗布を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A4)
前記肌が、メラニンが沈着している肌の部分を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A5)
前記適用する工程は、前記有効成分を約1mg~約10g/日の量で適用するように行われる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目B1)
上記項目のいずれか一項に記載の皮膚美白用組成物を皮膚に塗布し、または経口摂取する工程を有する、非治療的な美白方法。
(項目C1)
トレハロースを有効成分として含む、メラニン生成抑制剤。
(項目C2)
トレハロースを少なくとも約0.001w/v%の濃度で含む、上記項目に記載の抑制剤。
(項目C3)
前記抑制剤は経口摂取または皮膚に塗布される、上記項目のいずれか一項に記載の抑制剤。
(項目C4)
前記トレハロースは約1mg~約10g/日の量で経口摂取または皮膚に塗布される、上記項目のいずれか一項に記載の抑制剤。
(項目C5)
チロシナーゼ発現を抑制する、上記項目のいずれか一項に記載の抑制剤。
(項目C6)
上記項目のいずれか一項に記載のメラニン生成抑制剤を含有する、皮膚美白用組成物。
(項目C7)
飲食品、食品添加物、化粧品、医薬部外品、または医薬品である、上記項目に記載の組成物。
【0007】
本開示において、上記の1つまたは複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。なお、本開示のさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【0008】
なお、上記した以外の本開示の特徴及び顕著な作用・効果は、以下の発明の実施形態の項及び図面を参照することで、当業者にとって明確となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物により、メラニンの合成を抑制し、肌の明度を高めることができる。また肌に塗布しても経口で摂取しても美白などの美容効果を得ることができるため、化粧品だけではなく、美白効果を備えたサプリメントなどの補助食品としても提供することができ、利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態において、トレハロース含有物を摂取した場合の肌明度の改善効果を示すグラフである。トレハロース含有物摂取群とプラセボ群について、8週間(11~12月)にわたって毎日摂取した場合の肌明度を比較した。
図2図2は、本発明の一実施形態において、B16メラノーマ細胞でのチロシナーゼ遺伝子発現の比較結果を示すグラフである。チロシナーゼの産生を刺激するMSHを添加したMSH群、MSHを添加していないコントロール群、MSHとトレハロースを添加したトレハロース群(0.38%、0.76%、1%)のそれぞれについて、チロシナーゼ遺伝子発現を比較した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0012】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0013】
本明細書において、「約」とは、後に続く数値の±10%を意味する。
【0014】
本明細書において、「美白」とは、色素沈着の予防および/または改善をいい、より具体的には、シミ、くすみ、そばかす、日焼け、皮膚の炎症や刺激による黒ずみ等のメラニン産生亢進、過剰蓄積、及び沈着異常等により生じる色素沈着症状の、予防および/または改善をいう。
【0015】
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。したがって、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができる。
【0016】
本発明の一局面において、トレハロースを有効成分として含む、皮膚美白用組成物が提供される。
【0017】
トレハロースは2分子のα-グルコースがα-1,1-グリコシド結合してできた非還元性の二糖類であり、多くの動植物や微生物中に天然に含まれている。トレハロースには、α,α型構造(α-D-グルコピラノシルα-D-グルコピラノシド)、α,β型構造(ネオトレハロース)、β,β型構造(イソトレハロース)の異性体が存在する。本発明においては、いずれの型を用いてもよく、1種単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。トレハロースは様々な機能を有し、例えば、甘味成分等の食品に添加物として広く使用されている。現在はでん粉から工業的に大量生産されており、市販品としても容易に入手可能である。市販品のトレハロースについても、本発明の方法による効果を損なわない範囲において本発明の方法に用いることができる。
【0018】
食品に使われているトレハロースはジャガイモやトウモロコシのデンプンから製造されることができるが、酵母などの微生物を大量に培養してトレハロースを抽出することもできる。
【0019】
本発明の皮膚美白用組成物は、特に限定されないが、経皮または経口で摂取する態様とすることができる。
【0020】
(飲食品)
本発明の一実施形態において、本発明の組成物を経口摂取または経口投与する場合の態様としては、飲食品や食品添加物とすることができ、または医薬部外品や医薬品とすることもできる。
【0021】
飲食品の態様とする場合、トレハロースの含有量は所望の効果を発揮し得る量であればよく、飲食品の種類や組成物を添加する飲食品の形態に応じて適宜変更することもでき、例えばトレハロースの含有量を組成物全量に対して総量で、好ましくは約0.001~約10w/v%、約0.01~約10w/v%、約0.1~約10w/v%、より好ましくは約0.1~約8w/v%、さらに好ましくは約1~約5w/v%とすることができる。一実施形態において、本発明の組成物におけるトレハロースの含有量は、例えば、約0.38w/v%とすることもできる。
【0022】
また本発明の一実施形態において、本発明の組成物を飲食品の態様とする場合、その製造に際しては、食品製造において通常使用される成分を任意に配合することができる。任意の成分としては、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味料及び香味料等を用いることができる。炭水化物としては、単糖類、例えば、ブドウ糖、果糖など;二糖類、例えば、マルトース、スクロース、オリゴ糖など;及び多糖類、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖及び、キシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールが挙げられる。香味料としては、天然香味料(タウマチン、ステビア抽出物等)及び合成香味料(サッカリン、アスパルテーム等)を使用することができる。その他に、通常食品に添加される、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味剤、矯臭剤、pH調整剤、着色剤等の添加物を使用してもよい。
【0023】
本発明の一実施形態において、飲食品の形態としては、液状、ペースト状、固体、粉末、顆粒等の形態とすることができる。また他の実施形態において、本発明の組成物は、可溶性粉末とすることができ、タブレット、ハードカプセル、ゼリー、ドリンクなどの他の任意の飲食品に含有、添加または混合することもできる。
【0024】
本発明のトレハロースを有効成分として含む皮膚美白用組成物を含有する飲食品の好ましい摂取量は特に限定されないが、トレハロース量換算で1日当たり約0.001mg~約10gとすることが、十分に効果が発揮される観点から好ましく、さらに約0.01mg~約10g、さらに約1mg~約10gとすることが好ましく、1日当たり約38mgの量で摂取することもできる。この1日分の量を一度に、または数回に分けて摂取することができる。また、単回摂取する他に、連続的にまたは断続的に数週間~数か月の間摂取することが好ましい。
【0025】
(皮膚外用剤)
本発明の皮膚美白用組成物を経皮投与や皮膚に塗布する態様としては、化粧品、医薬部外品、及び医薬品等の皮膚外用剤とすることができる。皮膚外用組成物の剤型としては、特に限定されるものではないが、例えば、ローション剤型、乳液やクリーム等の乳化剤型、オイル剤型、ジェル剤型、パック剤型などが挙げられる。
【0026】
本発明の組成物を皮膚外用剤の態様とする場合は、トレハロースの含有量は所望の効果を発揮し得る量であればよく、化粧品の種類や組成物を混合する皮膚外用剤の形態に応じて適宜変更することもでき、例えばトレハロースの含有量を組成物全量に対して総量で、好ましくは約0.001~約10w/v%、より好ましくは約0.01~約10w/v%、さらに好ましくは約0.1~約8w/v%とすることができる。一実施形態において、本発明の組成物におけるトレハロースの含有量は、例えば、約0.38w/v%とすることもできる。
【0027】
本発明の組成物は、皮膚外用剤の態様である場合、トレハロース以外に通常の皮膚外用組成物に配合される成分を、本発明の効果を損なわない限りにおいて任意に含有することができる。そのような成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類を使用してもよい。
【0028】
また、本発明の皮膚美白用組成物には、トレハロース以外の美白剤を共に配合することもできる。そのような美白剤としては、例えば、アルキルレゾルシノール、アスコルビン酸またはその誘導体、胎盤抽出物、ユキノシタやハトムギなどの植物抽出物、アルブチン、コウジ酸、グルタチオン、乳酸、システインなどを挙げることができる。
【0029】
本発明のトレハロースを有効成分として含む皮膚美白用組成物を含有する化粧品や皮膚外用剤の好ましい塗布量は特に限定されないが、トレハロース量換算で1日当たり約0.001mg~約10gとすることが、十分に効果が発揮される観点から好ましく、さらに約0.01mg~約10g、さらに約0.1mg~約10g、約1mg~約10g、約1mg~約1000mg、約10mg~約100mgとすることが好ましく、1日当たり約38mgの量で塗布することもできる。この1日分の量を一度に、または数回に分けて塗布することができる。また、単回塗布する他に、連続的にまたは断続的に数週間~数か月の間塗布することが好ましい。
【0030】
(メラニン生成およびチロシナーゼ遺伝子発現の抑制)
本発明の一実施形態において、本願発明の皮膚美白用組成物は、経口摂取した場合、または皮膚に塗布した場合のいずれにおいても、メラニン生成を抑制することができる。また他の実施形態において、本願発明の皮膚美白用組成物は、経口摂取した場合、または皮膚に塗布した場合のいずれにおいても、チロシナーゼ遺伝子の発現を抑制することができる。
【0031】
本発明の一局面において、肌の明度を向上させる方法であって、トレハロースを有効成分として含む皮膚美白用組成物を適用する工程を含む、方法が提供される。
【0032】
本発明の肌の明度を向上させる方法に用いる組成物は、トレハロースの含有量は所望の効果を発揮し得る量であればよく、適用する肌の部位や適用態様に応じて適宜変更することもでき、例えばトレハロースの含有量を組成物全量に対して総量で、好ましくは約0.001~約10w/v%、より好ましくは約0.01~約10w/v%、さらに好ましくは約0.1~約8w/v%とすることができる。一実施形態において、本発明の組成物におけるトレハロースの含有量は、例えば、約0.38w/v%とすることもできる。
【0033】
本発明の肌の明度を向上させる方法において、トレハロースを有効成分として含む皮膚美白用組成物は、経口摂取または肌表面に塗布する態様とすることができる。肌に塗布する態様とする場合、どのような肌にも適用することができるが、メラニンが沈着している肌の部分に適用することで、本発明の皮膚美白用組成物による美白効果をより効率的に得ることができる。
【0034】
本発明の肌の明度を向上させる方法において、トレハロースを有効成分として含む皮膚美白用組成物の適用量は特に限定されないが、トレハロース量換算で1日当たり約0.001mg~約10gとすることが、十分に効果が発揮される観点から好ましく、さらに約0.01mg~約10g、さらに約0.1mg~約10g、約1mg~約10g、約1mg~約1000mg、約10mg~約100mgとすることが好ましく、1日当たり約38mgの量で適用することもできる。この1日分の量を一度に、または数回に分けて適用することができる。また、単回適用する他に、連続的にまたは断続的に数週間~数か月の間適用することが好ましい。
【0035】
本発明の一実施形態において、本発明の肌の明度を向上させる方法によれば、トレハロースを有効成分として含む皮膚美白用組成物を少なくとも約8週間適用した場合に、当該組成物を適用していない肌と比べて、当該組成物を適用した肌の明度は約0.5%、約0.7%、約1%、約1.5%、約1.6%、約1.8%、約2%、約5%、約8%、約10%、約15%、約20%、約30%、約40%、約60%、約80%、または約100%向上することができる。
【0036】
本発明の一局面において、皮膚美白用組成物を皮膚に塗布し、または経口摂取する工程を有する、非治療的な美白方法が提供される。この場合、本発明の美白方法に用いられる皮膚美白用組成物としては、本明細書の他の箇所で説明される皮膚美白用組成物を用いることができる。
【0037】
また他の局面において、トレハロースを有効成分として含む、メラニン生成抑制剤を提供することができる。この場合、本発明のメラニン生成抑制剤は、他の賦形剤と共に、皮膚美白用組成物とすることができる。このような皮膚美白用組成物は、本明細書の他の箇所で説明される皮膚美白用組成物として用いることができる。
【0038】
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0039】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例
【0040】
(実施例1:トレハロース含有物摂取による肌明度の改善効果)
トレハロース含有物をヒトに経口摂取した場合の肌明度の改善効果を確認した。試験デザインはダブルブラインド並行群間試験とし、予め肌明度がほぼ等しくなるように2群に分けた被験者について、トレハロース含有物100mg(トレハロースとして38mg)/日を経口摂取した群(N=12)と、プラセボ(対照)100mg/日を経口摂取した群(N=12)とに分けた。それぞれの群において、トレハロース含有物またはプラセボは、1日1回摂取することとし、8週間(11~12月)にわたって毎日摂取させた。
【0041】
肌明度の測定は、Skin color sensor(SCS-1,Moritex Co.)を用いて、0、2、4、6、8週目に、両腕の同箇所の明度を経時的に測定した。
【0042】
結果を図1に示した。トレハロース含有物摂取群はプラセボ群と比べて、2週間の時点で肌明度の向上傾向が見られはじめ、トレハロース含有物摂取群はプラセボ群に比べて肌明度が8週間で1.6%改善することがわかった。
【0043】
(実施例2:トレハロース含有物によるチロシナーゼ遺伝子発現抑制効果)
B16マウスメラノーマ細胞を用いてトレハロース含有物によるチロシナーゼ遺伝子発現への影響を確認した。
【0044】
使用試薬としては以下のものを用いた。
・継代用培地:10%FBS,1%P/S,D-MEM(低グルコース、富士フィルム041-29775)
・サンプル添加用培地(D-MEM/2%FBS):2%FBS,1%P/S,D-MEM(低グルコース、富士フィルム041-29775)
・PBS(-):ボトル(富士フィルム)でも粉末(ダルベッコ)でもどちらでも使用可能
・α-MSH:(Wako,338-40571) 0.1mMとなるようフィルターしたDWで溶解後、50μLずつエッペンチューブに分注し、-25℃で保管。使用時に解凍し、100nM MSHとなるようD-MEM/2%FBS培地に溶解させた。
・トレハロース含有物:必要な分を量り取り、10mg/mLとなるように、100nM MSH,D-MEM/2%FBSを加えて溶解し、フィルター滅菌を行って使用した。
・トレハロース:必要な分を量り取り、10,7.6,3.8mg/mLとなるように、100nM MSH,D-MEM/2%FBSをそれぞれ加えて溶解し、フィルター滅菌を行って使用した。
・ISOGEN II:ニッポンジーン、311-07361
・RNA抽出用Distilled Water:ニッポンジーン、312-90103
・Iso propanol:富士フィルム、168-21675
・75% EtOH:EtOH(Wako、057-00456)とRNA抽出用DWを3:1で混ぜて調製した。
・PrimeScript RT reagent kit:タカラバイオ、RR037A
・TB Green Premix Ex Taq II:タカラバイオ、RR820A
・βアクチンプライマー:FASMAC、F配列:ACTATTGGCAACGAGCGGTT(配列番号1)、R配列:ATGGATGCCACAGGATTCCA(配列番号2)
各5μMとなるようFプライマーとRプライマーを混合した溶液を作製。
・チロシナーゼプライマー:FASMAC、F配列:GCCCAGCATCCTTCTTC(配列番号3)、R配列:TAGTGGTCCCTCAGGTGTCC(配列番号4)
各5μMとなるようFプライマーとRプライマーを混合した溶液を作製。
【0045】
(細胞培養・サンプル添加)
24穴プレートに、1.0×10cell/mL、0.5mL/wellで播種し、翌日、培地をD-MEM/2%FBSに交換した。4~6時間後、D-MEM/2%FBS+α-MSH 100nM(比率としては、D-MEM/2%FBS 50mL+0.1mM α-MSH 50μL)に溶かしたサンプルを0.5mL/wellで添加した。ポジティブコントロールとしてはα-MSH 100nM添加D-MEM/2%FBSを、ネガティブコントロールとしてはD-MEM/2%FBSを用いた。これを24時間培養した。
【0046】
(RNA抽出)
PBSで一度washした後、ISOGEN IIを0.4mL/well加え、エッペンドルフチューブに回収した。RNA抽出用のDWを0.16mL/エッペンドルフチューブ加え、エッペンドルフチューブ立てで挟み、15秒激しく撹拌した後、5~10分静置した。その後、遠心を20℃で120×100gで15分間行った。上清0.5mL/エッペンドルフチューブを回収し、別のエッペンドルフチューブに加えた。イソプロパノールを0.5mL/エッペンドルフチューブ加え、転倒混和した後、5~10分静置した。その後、遠心を20℃で120×100gで10分間行った。
【0047】
デカントし、75% EtOHを0.5mL/エッペンドルフチューブ加えた。その後、遠心を20℃で80×100gで5分間行った。さらにデカントし、75% EtOHを0.5mL/エッペンドルフチューブ加えた(2回目)。その後、遠心を20℃で80×100gで5分間行った。またさらにデカントし、さかさまにしたまま約20分間にわたって風乾させた。RNA抽出用のDWを30μL/エッペンドルフチューブ加え、RNAを溶解させて-80℃で保存した。
【0048】
(cDNA合成)
RNAの濃度をプレートリーダーを用いて測定し、200ng/μLとなるように8連チューブにRNA溶液を加えた。PrimeScriptの1.buffer、2.RT enzyme、3.dT primers(50μM)、及び4.random 6mers(100μM)を、1:0.25:0.25:0.25:0.25(μL)/1サンプルとなるよう混和し、ボルテックス後、スピンダウンをして調製した。まとめて調製したのち、1.75μL/wellで加えた。
【0049】
RNA溶液とPrimeScriptのmixとDWでtotal 10μLとなるようにDWを加え、8連チューブのフタを閉め、ボルテックス、スピンダウンをしたのち、サーマルサイクラーで反応させた(37℃、15分→85℃、15秒→4℃)。反応後、DW 30μL/well加え、ボルテックス、スピンダウンをした。
【0050】
(PCR)
TB green、5μM F/R primer mix、DWが5:0.8:0.2/1サンプルとなるよう混和し、ボルテックス後、スピンダウンをして調製した。まとめて調製したのち、6μL/wellでPCR用96 well plateに加えた。DWを加えたcDNA溶液を4μL/wellでPCR用96 well plateに加え、圧着フィルムでシーリングしたのち、ボルテックス、スピンダウンをした。
【0051】
リアルタイムPCR装置を立ち上げ、測定し、サンプルタイプは全てUnknown、サイクルは60℃で40サイクルとした。βアクチンのCt-チロシナーゼのCt=ΔCtを計算し、2^(ΔCt)=ΔΔCt値を算出した。ポジティブコントロールのΔΔCt値の平均をチロシナーゼ遺伝子発現率100%として、各ΔΔCt値から遺伝子発現率を算出した。
【0052】
結果を図2に示した。この結果、チロシナーゼの産生を刺激するMSHの存在化でトレハロースを加えるとチロシナーゼ遺伝子発現が抑制されることがわかった(トレハロース1%、0.76%、0.38%)。このことから、トレハロースはチロシナーゼ遺伝子の発現を抑制することがわかった。またトレハロースの濃度を上昇させることによりチロシナーゼ遺伝子発現の抑制効果も上昇する傾向が見られたことから、さらにトレハロースの濃度を上昇させることにより、MSHを添加していないコントロール群と同等のチロシナーゼ遺伝子発現となることも予想できた。
【0053】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の組成物により、メラニンの合成を抑制し、肌の明度を高めることができる。また肌に塗布しても経口で摂取しても美白などの美容効果を得ることができるため、化粧品やサプリメントの分野において有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0055】
配列番号1~4:実施例1で用いたフォワードまたはリバースプライマー
【要約】
【課題】 安全性が高く、かつ優れた美白作用を有する美白剤を提供すること。
【解決手段】 本願発明は、トレハロースを有効成分として含む、皮膚美白用組成物を提供する。また本願発明は、肌の明度を向上させる方法であって、トレハロースを有効成分として含む皮膚美白用組成物を適用する工程を含む、方法を提供する。
【選択図】なし
図1
図2
【配列表】
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