(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】気管切開チューブホルダー
(51)【国際特許分類】
A61M 16/04 20060101AFI20220615BHJP
A61M 25/02 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
A61M16/04 Z
A61M25/02 504
(21)【出願番号】P 2021107340
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2022-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521286075
【氏名又は名称】合同会社ネックガードフロンティア
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】関口夏織
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0374735(US,A1)
【文献】特開2010-088792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0281895(US,A1)
【文献】中国実用新案第206577219(CN,U)
【文献】中国実用新案第211461665(CN,U)
【文献】特開2018-130184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/04
A61M 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切欠が設けられた筒状であって内側に気管切開チューブを保持することが可能なチューブ保持部と、
端部においてバンドを通すための孔が形成され、
開角度が90度より大きく180度未満の略V字状に形成されて使用者の喉に当てるための喉当て部と、
前記喉当て部と前記チューブ保持部を接続する接続台部と、を備えた気管切開チューブホルダー
であって、
前記喉当て部及び前記接続台部は、前記チューブ保持部の前記切欠の部分に対応した切欠部分を備えているチューブホルダー。
【請求項2】
前記チューブ保持部及び前記喉当て部はエラストマーにより一体で形成された請求項1記載の気管切開チューブホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気管切開チューブホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療的ケア児が増加傾向にある。医療的ケア児とは、厚生労働省の資料によると、医学の進歩を背景として、NICU(新生児集中治療室)等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養等の医療的ケアが日常的に必要な障碍児のことである。
【0003】
医療的ケア児の中には、例えば、気管軟化症という病気で気管の一部が潰れているため気管を切開して気管切開孔を形成せざるを得ない患者がいる。気管切開してできたこの気管切開孔にはカニューレを装着して呼吸を確保し、更には、スピーチバルブ又は人口鼻を付けて発声や呼吸を行っている(例えば下記特許文献1参照)。ここで「カニューレ」とは、体腔・血管内等に挿入し、気管切開の際の空気の通路とする場合に用いるパイプ状の医療器具をいう。
【0004】
ところで、気管切開孔にカニューレに代えて、略T字状に形成された可撓性のある素材からなるチューブを用い、この一部を気管切開孔から気管に挿入する一方一部を気管切開孔から突出させることにより、気管が閉塞してしまうことを防止するとともに気管切開孔からの気道確保を可能とする気管切開チューブに関する技術が例えば下記非特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/ResultDataSetPDF/270031_20400BZZ00292000_1_04_05
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献1に記載の気管切開チューブに関する技術は、カニューレとは異なり、非常に小型化が可能であり、可撓性のあるシリコーン等の素材で構成されており、患者(使用者)にとって負担が少ないといった利点があり有用である。
【0008】
しかしながら、上記気管切開チューブは可撓性のある小型の素材であるため、使用者の気管切開孔から突出した部分を引っ張ることで気管から抜け出てしまう場合がある。この場合、応急処置を施したうえで施術可能な医療機関まで移動し、再び気管切開チューブを挿入する手術を行わなければならない。すなわち、仮にこの気管切開チューブが抜けた場合、使用者に大きな負担が生じてしまうといった課題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、気管切開チューブが気管切開孔から抜けにくくする気管切開チューブホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る気管切開チューブホルダーは、切欠が設けられた筒状であって内側に気管切開チューブを保持することが可能なチューブ保持部と、チューブ保持部に接続され、端部においてバンドを通すための孔が形成され、略V字状に形成されて使用者の喉に当てるための喉当て部と、を備えたものである。
【0011】
また、本観点において、限定されるわけではないが、チューブ保持部及び喉当て部はエラストマーにより一体で形成されていることが好ましい。
【0012】
また、本観点において、限定されるわけではないが、一対の喉当て部の開角度は90度より大きく180度未満であることが好ましい。
【0013】
また、本観点において、限定されるわけではないが、喉当て部と前記チューブ保持部は、接続台部を介して接続されていることが好ましい。
【0014】
また、本観点において、限定されるわけではないが、喉当て部及び接続台部は、チューブ保持部の切欠部分に対応した切欠部分を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上、本発明によって、気管切開チューブが気管切開孔から抜けにくくする気管切開チューブホルダーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る気管切開チューブホルダーの斜視図である。
【
図2】実施形態に係る気管切開チューブホルダーの上面図である。
【
図3】実施形態に係る気管切開チューブホルダーの底面図である。
【
図4】実施形態に係る気管切開チューブホルダーの正面図である。
【
図5】実施形態に係る気管切開チューブホルダーの背面図である。
【
図6】実施形態に係る気管切開チューブホルダーの右側面図である。
【
図7】実施形態において保持対象とする気管切開チューブの概略図である。
【
図8】気管切開チューブが使用者に取り付けた場合のイメージ図である。
【
図9】実施形態に係る気管切開チューブホルダー及び気管切開チューブを使用者に取り付けた場合のイメージ図である。
【
図10】実際に作製した気管切開チューブホルダーの写真図である。
【
図11】実際に作製した気管切開チューブホルダー及び気管切開チューブを使用者に取り付けた場合の写真図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、また以下に示す実施形態、実施例において記載される具体的な例示についても適宜変更及び調整が可能であり、これらに限定されるものではない。
【0018】
図1乃至
図6は、本実施形態に係る気管切開チューブホルダー(以下「本ホルダー」という。)1の概略を示す図である。より具体的に
図1は本ホルダー1の斜視図、
図2は本ホルダー1の上面図、
図3は本ホルダー1の底面図、
図4は本ホルダー1の正面図、
図5は本ホルダー1の背面図、
図6は本ホルダー1の右側面図である。なお、左側面図は右側面図と同様にあらわされるため省略する。
【0019】
また、
図7は、気管切開チューブTの概略を示す図であり、
図8は、気管切開チューブTが患者(使用者)に取り付けられた場合のイメージ図であり、
図9は、本ホルダー1を使用者に装着した場合のイメージである。
【0020】
本ホルダー1は、これらの図が示すように、切欠21が設けられた筒状であって内側に気管切開チューブを保持することが可能なチューブ保持部2と、チューブ保持部2に接続され、端部においてバンドを通すための孔31が形成され、略V字状に形成されて使用者の喉に当てるための喉当て部3と、を備えたものである。
【0021】
本ホルダー1は、上記の構成により、気管切開チューブTを使用者の喉から抜けにくくし、喉において安定的に保持することができるものである。
【0022】
また、本ホルダー1の材質は、本ホルダー1の効果を発揮することができる限りにおいて限定されるわけではなく、エラストマーにより一体で形成されていることが好ましい。エラストマーとは弾性を備えた高分子化合物であり、例えばウレタンゴムやシリコーンゴム等の熱硬化性のエラストマーであっても、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系の熱可塑性のエラストマーであってもよい。また、チューブ保持部2及び喉当て部3は一体に形成されていることが強度及び製造効率の観点から好ましいが、別々に製造して接合して一体に形成する構成としてもよい。
【0023】
また、本ホルダー1において、チューブ保持部2は、上記の通り切欠21が設けられた筒状であって内側に気管切開チューブTを保持することが可能な部材である。切欠21が設けられているため、この部分を少し開き、気管切開チューブTを挿入すること及び取り外すことが可能である。なお、チューブ保持部2において切欠21の周囲にはつまみ部分22が形成され、この切欠21の大きさを調整することが可能である。
【0024】
また、本ホルダー1において、チューブ保持部2は、喉当て部3に対し、接続台部4を介して接続されていることが好ましい。この接続台部4の材質についても、チューブ保持部2と同様である。上記チューブ保持部2及び喉当て部3と一体に形成してもよいし、別々に製造して接合することで一体にしてもよい。
【0025】
本ホルダー1では、チューブ保持部2は上記の通りチューブを保持するために切欠開閉するといった動きの大きな部分である。一方、喉当て部3は後述のようにある程度安定した形状で使用者の喉に当たる形状となっているため、これらの間に変形の大きさに違いが存在する。そのためこれらを解消するために接続台部4を設けている。
【0026】
また、喉当て部3及び接続台部4は、チューブ保持部2の切欠部分に対応した切欠部分を備えていることが好ましい。具体的には、チューブ保持部2切欠21の部分には接続台部4が設けられていない、即ち切欠部分41を設けている。これにより、チューブ保持部2の中でも動きの大きな切欠21周辺には固定する部材を設けず、一方で切欠21とは離れた場所では接続台部4によって安定的に接続が可能である。
【0027】
また、本ホルダー1において喉当て部3は、上記の通り、チューブ保持部2に接続台部4を介して接続され、使用者の喉に当てるためのものである。
【0028】
また、本ホルダー1において、その端部において、バンドBを通すための孔31が形成されている。使用者はこの孔31にバンドBを通し、首の周りにバンドBを巻き回して他方の孔31にも通すことで喉にこのホルダー1を固定することが可能となる。
【0029】
また、本ホルダー1において、喉当て部3は、略V字状に形成されて使用者の喉に当てる形状となっていることが好ましい。このような形状とすることで、吊り下げた形をとることができ、比較的余裕をもってバンドBを首に巻き回すことができ、苦しくなるほどきつく締める必要がないといった利点がある。また、この場合において、一対の喉当て部3の開角度は90度より大きく180度未満であることが好ましく、より好ましくは110度以上130度以下であることが好ましい。
【0030】
なお、本ホルダー1においては、上記の図から明らかであるが、V字の鋭角側にチューブ保持部2の切欠21が設けられる構成となっていることが好ましい。このようにすることで、V字の鋭角側が使用者のあごに近い側(鉛直方向上向き)となり、これとともにチューブ保持部2の切欠21もあごに近い側(鉛直方向上向き)となり、気管切開チューブTのチューブ保持部2の挿入と取り外しを鉛直方向上側から行うことができ、重力によって気管切開チューブTが脱落してしまうおそれを少なくすることができる。
【0031】
以上、本ホルダー1は、気管切開チューブTを気管切開孔から抜けにくくする気管切開チューブホルダーとなる。また本ホルダー1の追加な効果としては、例えば、気管切開チューブTが自重によって垂れることでその気道が狭くなってしまうおそれを少なくすることが可能であるとともに、気管に気管切開チューブが入ってしまうことも防止することができる。更に、気管切開チューブTが動くことで使用者の喉内においても動くことにより生ずる肉芽の発生を抑えることができるといった効果がある。
【0032】
(実施例)
ここで、上記実施形態に係る気管切開チューブホルダーについて実際に作製し、その効果を確認した。
図10は実際に作製した気管切開チューブホルダーの写真図であり、
図11は実際に使用者に取り付けた場合の写真図である。今回の気管切開チューブホルダーによると、激しい動きを行う場合でも非常に安定的に保持し取り付けることが可能となり、気管切開チューブが抜けるかもしれないという心配から解放されることによる大変な安心を得ることができることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、気管切開チューブホルダーとして産業上の利用可能性がある。
【要約】
【課題】気管切開チューブが気管切開孔から抜けにくくする気管切開チューブホルダーを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の一観点に係る気管切開チューブホルダーは、切欠が設けられた筒状であって内側に気管切開チューブを保持することが可能なチューブ保持部と、チューブ保持部に接続され、端部においてバンドを通すための孔が形成され、略V字状に形成されて使用者の喉に当てるための喉当て部と、を備えたものである。
【選択図】
図1