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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】衣類設計支援装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20220615BHJP
【FI】
G06Q50/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021124617
(22)【出願日】2021-07-29
【審査請求日】2021-08-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521335362
【氏名又は名称】有限会社クロスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】田中 東一郎
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099960(JP,A)
【文献】特開2016-177457(JP,A)
【文献】特開2001-306900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された複数の採寸項目それぞれについて、採寸作業員が衣類を着用する着用者を測定して得た前記採寸項目の採寸値を読み上げる音声に基づいて前記採寸値を音声入力する音声入力部と、
前記採寸項目と採寸を行う順番が設定された設定情報に基づいて、前記音声入力された採寸値を採寸項目と関連付け、前記採寸項目と前記採寸項目の前記採寸値とを関連付けてなる採寸情報を出力可能な採寸情報出力部と、
を備え、
前記採寸情報は、前記採寸作業員が前記採寸値を読み上げる順序にしたがって前記採寸項目と前記採寸項目の前記採寸値とを関連付けた情報であ
衣類における各部の寸法値と採寸値範囲を関連付けて記憶する予め用意された複数の採寸用衣類情報から、前記採寸情報に基づいて1以上の前記採寸用衣類を選択する採寸用衣類選択部と、前記選択した1以上の採寸用衣類を表示する採寸用衣類表示部と、を更に備え、
前記選択した1以上の採寸用衣類から1の採寸用衣類を指定可能な採寸用衣類指定部と、
を更に備え、
寸法出力部は、前記指定された採寸用衣類が前記複数の寸法項目それぞれについてオーダーメイド用寸法と略同じ寸法を有するように補正可能な補正値を採寸項目毎に、採寸値範囲と補正値を関連付けて記憶するスキル情報テーブルに基づいて、出力可能である、衣類設計支援装置。
【請求項2】
前記採寸項目の前記採寸値が所定の範囲にない場合に所定の報知を行う異常報知部を更に備える、請求項1に記載の衣類設計支援装置。
【請求項3】
衣類型紙における各部の寸法値と採寸値範囲を関連付けて記憶する予め用意された複数の衣類型紙から、前記着用者に関する着用者情報と前記採寸情報とに基づいて1以上の前記衣類型紙を選択する衣類型紙選択部と、
前記衣類型紙に関する1以上の型紙寸法を出力可能な型紙寸法出力部と、
を更に備え、
前記1以上の型紙寸法は、前記1以上の前記衣類型紙に基づいて前記着用者の体型に応じたオーダーメイド衣類を製造可能な寸法である、請求項1または請求項2に記載の衣類設計支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィッターの作業を支援する衣類設計支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オーダースーツ受注の際、フィッターと称される採寸作業員によって、接客・採寸・ゲージ服選択・型紙補正・工場発注の一連の作業が行われる。このように、フィッターの作業は多岐に渡って行われる。そこで、従来、フィッターの作業を支援する技術として、特許文献1に記載された技術がある。
【0003】
特許文献1には、計測装置が、着用者の体形を3次元的に計測し、この計測結果に基づいて、着用者の3次元的な体形を示す体形データを生成する。この体形データに基づいて衣服設計支援装置が、着用者の3次元モデルの画像を表示し、更に、衣服を示す3次元モデルを、着用者の3次元モデルに着装させた状態で画像表示を行う。そして、店員が衣服設計支援装置を操作して衣服の形状の調整又は補正を行い、調整又は補正を行う毎に衣服を示す3次元モデルの画像表示を更新する、という、着用者毎に衣服の形状を個別に調整する作業を支援する衣服製造システムが提案されている。また、この衣服製造システムによれば、例えば、「いかり肩・なで肩(左)」の値が増加された場合に「『いかり肩・なで肩(左)』と『いかり肩・なで肩(右)』の値を揃えることで、全体的なバランスが良くなります。」のような助言メッセージを表示することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-142221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された技術によれば、上述したように、採寸は、着用者の体形を3次元的に計測することが可能な計測装置によって行われる。しかし、このような計測装置は高価であり、店舗によっては導入が困難な場合がある。このため、計測装置が導入されていない店舗では、採寸をフィッターが行うことになり、衣服設計支援装置に対する体形データの入力もフィッターが行うことになる。
【0006】
しかしながら、フィッターによる採寸は、バストやウエストの他に約20箇所前後の部位をメジャーで測る作業であり、フィッターの熟練度にもよるが、おおよそ30分前後の比較的長い時間が掛かる。このため、採寸中に来店した他の客を長時間待たせてしまい、これが原因でキャンセルになれば販売ロスに繋がるおそれがある。
【0007】
採寸に時間が掛かる要因として、フィッターは、各種の採寸項目を記入した用紙に採寸値を手書きで記入することによって採寸記録を残すことが考えられる。すなわち、上述したように採寸項目が多岐に渡っていることから、この採寸値の記入に係る時間が累積されることが考えられる。
【0008】
そこで、採寸値を用紙ではなく、キーボードの操作によってパソコンに入力することで、採寸値の記録に係る時間を低減することが可能になる。これにより、衣服設計支援装置に対する体形データの入力を別途行う必要がなくなる。しかし、採寸作業とキーボード操作とは同時に行えないため、計測と入力とを交互に繰り返すことになり、結果として、採寸に時間が掛かってしまうおそれがある。採寸に時間が掛かってしまうことにより、採寸を行い、採寸値に基づいてオーダーメイド衣類の製造を工場に発注するまでの一連の作業を含むオーダーメイド衣類の設計に時間が掛かってしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、採寸等によって例示されるオーダーメイド衣類を設計するための作業の作業時間を低減する支援を可能にする衣類設計支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備える。
【0011】
(1) 予め設定された複数の採寸項目それぞれについて、採寸作業員が衣類を着用する着用者を測定して得た前記採寸項目の採寸値を読み上げる音声に基づいて前記採寸値を音声入力する音声入力部と、
前記採寸項目と前記採寸項目の前記採寸値とを関連付けてなる採寸情報を出力可能な採寸情報出力部と、
を備え、
前記採寸情報は、前記採寸作業員が前記採寸値を読み上げる順序にしたがって前記採寸項目と前記採寸項目の前記採寸値とを関連付けた情報である、
衣類設計支援装置。
【0012】
(1)によれば、採寸作業員が衣類を着用する着用者を測定して得た採寸値を読み上げることによってこの採寸値が音声入力され、採寸値に対応する採寸項目に自動的に関連付けられる。このため、採寸作業の間に採寸値の音声入力が行われることから、従来における採寸値を用紙に記録する手間を省略することが可能になる。しかも、採寸作業員は採寸値を読み上げる間に次の採寸項目の採寸作業に移行することが可能になるため、採寸値の記録に係る作業を大幅に削減可能になる。このように、採寸等によって例示されるオーダーメイド衣類を設計するための作業の作業時間を低減する支援が可能になる。
【0013】
(2) (1)において、前記採寸項目の前記採寸値が所定の範囲にない場合に所定の報知を行う異常報知部を更に備える、衣類設計支援装置。
【0014】
(2)によれば、採寸値としてあり得ない数値が音声入力された場合に所定の報知を行うことで、採寸ミスによる作業時間の増大を防ぎ、採寸に掛かる作業時間を低減することが可能になる。したがって、採寸等によって例示されるオーダーメイド衣類を設計するための作業の作業時間を低減する支援が可能になる。
【0015】
(3) (1)、(2)において、予め用意された複数の採寸用衣類から、前記採寸情報に基づいて1以上の前記採寸用衣類を選択する採寸用衣類選択部と、前記選択された1以上の採寸用衣類を表示する採寸用衣類表示部と、を更に備える、衣類設計支援装置
【0016】
(3)によれば、予め用意された複数の採寸用衣類から着用者の体型に近い採寸用衣類を把握することが可能になり、着用者に何着も採寸用衣類を着せ替えさせることで、その分長く時間が掛かってしまう、といったことを低減することが可能になる。したがって、採寸等によって例示されるオーダーメイド衣類を設計するための作業の作業時間を低減する支援が可能になる。
【0017】
(4) (3)において、前記着用者に関する着用者情報と前記採寸情報とに基づいて、予め設定された複数の寸法項目それぞれについて前記着用者の体型に応じたオーダーメイド衣類における前記寸法項目のオーダーメイド用寸法を出力可能な寸法出力部と、
前記選択された1以上の採寸用衣類から1の採寸用衣類を指定可能な採寸用衣類指定部と、
を更に備え、
前記寸法出力部は、前記指定された採寸用衣類が前記複数の寸法項目それぞれについて前記オーダーメイド用寸法と略同じ寸法を有するように補正可能な補正値を出力可能である、衣類設計支援装置。
【0018】
(4)によれば、フィッターが、採寸用衣類におけるどの部分をどの程度補正すれば、着用者の体型に合うようになるかを数値として把握することが可能になる。これにより、衣類型紙の補正を行うための情報を容易に得ることが可能になる。このように、補正を行うための情報を得るための作業による作業時間の増大を防ぎ、採寸に掛かる作業時間を低減することが可能になる。したがって、採寸等によって例示されるオーダーメイド衣類を設計するための作業の作業時間を低減する支援が可能になる。
【0019】
(5) (1)~(4)において、予め用意された複数の衣類型紙から、前記着用者に関する着用者情報と前記採寸情報とに基づいて1以上の前記衣類型紙を選択する衣類型紙選択部と、
前記衣類型紙に関する1以上の型紙寸法を出力可能な型紙寸法出力部と、
を更に備え、
前記1以上の型紙寸法は、前記1以上の前記衣類型紙に基づいて前記着用者の体型に応じたオーダーメイド衣類を製造可能な寸法である、請求項1から4のいずれか1項に記載の衣類設計支援装置。
【0020】
(5)によれば、予め用意された複数の衣類型紙から、着用者に関する着用者情報と採寸情報とに基づいて1以上の前記衣類型紙を選択、出力可能になる。これにより、基準となる衣類型紙の情報を取得することが可能になり、着用者に採寸用衣類を着用させた場合に得られる着用者の要望に応じて衣類型紙を補正することが可能になる。このように、着用者の要望に応じて逐一衣類型紙の情報を取得し、補正する作業時間を低減することが可能になる。したがって、採寸等によって例示されるオーダーメイド衣類を設計するための作業の作業時間を低減する支援が可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、採寸等によって例示されるオーダーメイド衣類を設計するための作業の作業時間を低減する支援を可能にする衣類設計支援装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態における衣類設計支援装置の構成を示すブロック図である。
図2】客情報記憶部42が記憶する客情報テーブルの一例を示す図である。
図3】客別採寸情報記憶部43が記憶する客別採寸情報テーブルの一例を示す図である。
図4】採寸用衣類情報記憶部44が記憶する採寸用衣類情報テーブルの一例を示す図である。
図5】衣類型紙情報記憶部45が記憶する衣類型紙情報テーブルの一例を示す図である。
図6】スキル情報記憶部46が記憶するスキル情報テーブルの一例を示す図である。
図7】採寸値範囲情報記憶部47が記憶する採寸値範囲情報テーブルの一例を示す図である。
図8】フィッターによる作業の流れを示すフローチャートである。
図9】採寸作業支援処理の流れを示すフローチャートである。
図10】採寸情報の一例を示す説明図である。
図11】採寸情報の表示の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態における衣類設計支援装置1の構成を示すブロック図である。衣類設計支援装置1は、採寸作業員(以下、単に「フィッター」とも称する。)がオーダーメイド衣類を着用する着用者(以下、単に「客」とも称する。)を測定する採寸作業を支援する装置である。
【0025】
衣類設計支援装置1が設計を支援するオーダーメイド衣類は、特に限定されない。オーダーメイド衣類は、例えば、ジャケット、パンツ(「ズボン」とも称する。)、及びベストの1以上を含むビジネススーツ等が挙げられる。採寸項目が多く、採寸に熟練を要するビジネススーツの設計を支援可能であることにより、オーダーメイド衣類を製造するための採寸に掛かる作業時間をよりいっそう低減し得る。
【0026】
衣類設計支援装置1は、コンピュータ10と、マイク11と、入力装置12と、ディスプレイ13と、を備えている。
【0027】
コンピュータ10は、制御部20と、記憶部40と、I/F部50と、を備えている。コンピュータ10は、I/F部50を介してマイク11、入力装置12、及びディスプレイ13と接続可能に構成される。
【0028】
制御部20は、各種の処理を行うCPUと、CPUが処理を行うための作業フィールドとなるRAM等を備えている。
【0029】
記憶部40は、HDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)によって例示される大容量記憶装置を含んで構成される。記憶部40は、支援プログラムを記憶する支援プログラム記憶部41、客情報を記憶する客情報記憶部42、客別採寸情報を記憶する客別採寸情報記憶部43、採寸用衣類情報を記憶する採寸用衣類情報記憶部44、衣類型紙情報を記憶する衣類型紙情報記憶部45、スキル情報を記憶するスキル情報記憶部46、採寸値範囲情報を記憶する採寸値範囲情報記憶部47等を含んでいる。
【0030】
支援プログラムは、コンピュータ10にフィッターの作業を支援するための各種の機能を持たせるものである。コンピュータ10が支援プログラムを実行することにより、音声入力処理部21、採寸情報出力処理部22、異常報知処理部23、採寸用衣類選択処理部24、衣類寸法出力処理部25、型紙選択部26、型紙寸法出力処理部27、型紙寸法補正処理部28、シミュレーション表示処理部29、発注処理部30としての機能を果たす。これらの機能の詳細については後述する。
【0031】
図2は、客情報記憶部42が記憶する客情報テーブルの一例を示す図である。客情報テーブルは、客に関する客情報(「着用者情報」とも称する。)を識別可能な客情報IDと客情報とを関連付けて記憶する。客情報は、客の氏名、連絡先、年齢、オーダーメイド衣類に関する衣類好み等によって例示される客に関連する情報の1以上を含む。
【0032】
図2に示す客情報テーブルの一例では、客情報ID「CI0001」と、氏名「山田 太郎」、連絡先「0△△-△△46-△△51」、年齢「53」、及び衣類好み「ゆったりしたジャケットが好み」を含む客情報とが関連付けられて記憶されている。これにより、オーダーメイド衣類の製造に関する情報を客である「山田 太郎」に連絡できる。また、衣類好み「ゆったりしたジャケットが好み」を反映した衣類設計を行える。
【0033】
図3は、客別採寸情報記憶部43が記憶する客別採寸情報テーブルの一例を示す図である。客別採寸情報テーブルは、客を識別可能な客情報ID、採寸項目、及びフィッターによって計測された当該採寸項目の採寸値を関連付けてなる客別採寸情報と、客別採寸情報を識別可能な客別採寸情報IDとを関連付けて記憶する。客別採寸情報は、客別に作成され、記憶される。客別採寸情報テーブルが各種の採寸値を客別に記憶することにより、記憶した各種の採寸値を用いた衣類設計を行える。
【0034】
必須の態様ではないが、客別採寸情報テーブルは、客の採寸情報に関連づけてゲージ服(「採寸用衣類」とも称する。)を特定可能なゲージ服情報を記憶可能であることが好ましい。これにより、ゲージ服に応じて採寸値を補正する等のゲージ服情報を用いた処理を実行し得る。
【0035】
図3に示す客別採寸情報テーブルの一例では、客別採寸情報ID「CM0001」と、客情報ID「CI0001」と採寸項目「バスト(B)」と当該採寸項目に関する採寸値「100」とを含む客別採寸情報とが関連付けられて記憶されている。これにより、客情報ID「CI0001」で識別される客である「山田 太郎」を測定して得られたバストの採寸値「100」を用いた衣類設計を行える。
【0036】
また、図3に示す客別採寸情報テーブルの一例では、客別採寸情報ID「CM0002」と、客情報ID「CI0001」と採寸項目「中胴(MW)」と当該採寸項目に関する採寸値「95」とを含む客別採寸情報とが関連付けられて記憶されている。これにより、バストの採寸値だけでなく、中胴の採寸値「95」をも用いた衣類設計を行える。
【0037】
図4は、採寸用衣類情報記憶部44が記憶する採寸用衣類情報テーブルの一例を示す図である。採寸用衣類情報テーブルは、採寸用衣類に関する採寸用衣類情報を識別可能な客情報IDと採寸用衣類情報とを関連付けて記憶する。採寸用衣類情報は、所謂、ゲージ服と称される採寸用衣類に関する情報からなり、ゲージ服における各部位の寸法値及び/又は外観の画像情報等が含まれる。なお、以下の説明において、採寸用衣類をゲージ服と称する場合がある。
【0038】
ゲージ服は予め複数用意されており、フィッターが、採寸値に基づいて客の体型に近いと思われるゲージ服を選択することが好ましい。選択したゲージ服を客に着てもらうことにより、フィッターは、大きさ及び/又は着心地に関する情報を取得できる。
【0039】
図4に示す採寸用衣類情報テーブルの一例では、採寸用衣類情報ID「GC0001」と、採寸用衣類に関する寸法値、当該採寸用衣類を利用可能な採寸値の範囲を示す採寸値範囲、及び採寸用衣類の画像を含む採寸用衣類情報とが関連付けられて記憶されている。これにより、採寸用衣類に関する情報をフィッターに提示できる。そして、フィッターは、提示された採寸用衣類情報を用いて、客の体型に近いと思われるゲージ服を選択できる。
【0040】
図5は、衣類型紙情報記憶部45が記憶する衣類型紙情報テーブルの一例を示す図である。衣類型紙情報テーブルは、衣類型紙に関する衣類型紙情報を識別可能な衣類型紙情報IDと衣類型紙情報とを関連付けて記憶する。衣類型紙情報は、衣類の型紙に関する情報である。衣類型紙情報テーブルが衣類型紙情報を記憶することにより、記憶した衣類型紙情報が示す衣類型紙を用いた衣類設計を行える。
【0041】
図5に示す衣類型紙情報テーブルの一例では、衣類型紙情報ID「CP0001」と、衣類型紙に関する寸法値、当該型紙を利用可能な採寸値の範囲を示す採寸値範囲、及び衣類型紙に関する画像、を含む衣類型紙情報とが関連付けられて記憶されている。これにより、衣類型紙に関する情報をフィッターに提示できる。そして、フィッターは、提示された衣類型紙情報を用いて、客の体型に近いと思われる衣類型紙を選択できる。図5に示す衣類型紙情報テーブルの一例では、採寸値範囲は、衣類好みと関連付けられている。これにより、客の衣類好みを反映して衣類型紙を選択できる。図5に示す衣類型紙情報テーブルの一例では、採寸値範囲は、年齢と関連付けられている。これにより、客の年齢を反映して衣類型紙を選択できる。
【0042】
図6は、スキル情報記憶部46が記憶するスキル情報テーブルの一例を示す図である。スキル情報テーブルは、衣類型紙を採寸値に基づいて補正するスキルに関するスキル情報を識別可能なスキル情報IDとスキル情報とを関連付けて記憶する。スキル情報は、各種の補正に関する情報を含む。例えば、所定箇所を補正した場合にそれによって着心地が変わってくるため、他の箇所も合わせて補正する必要が出てくる。
【0043】
スキル情報には、所定箇所を補正した場合の他の補正箇所及び/又は補正の程度等の情報が含まれている。このような情報は、熟練度の高いフィッターによる経験から獲得できる情報である。これらの情報は数値化されてスキル情報記憶部46に記憶される。
【0044】
図6に示すスキル情報テーブルの一例では、スキル情報ID「SI0001」と、「バスト99.5-100.5cmならバスト補正値-2cm」とのスキルに関するスキル情報とが関連付けられて記憶されている。これにより、オーダーメイド衣類を製造する製造者にスキル情報に基づく補正値を提示できる。そして、製造者は、提示された補正値及び型紙に関する情報を用いて、客の体型等を反映したオーダーメイド衣類を製造できる。
【0045】
図7は、採寸値範囲情報記憶部47が記憶する採寸値範囲情報テーブルの一例を示す図である。採寸値範囲情報テーブルは、採寸値の範囲に関する採寸値範囲情報を識別可能な採寸値範囲情報IDと採寸値範囲情報とを関連付けて記憶する。
【0046】
採寸値範囲情報は、採寸値として計測し得る範囲に関する情報である。このような情報は、例えば、採寸値が通常取り得る値の上限及び下限並びに採寸値それぞれが満たす関係を示す不等式を含む。例えば、バスト(B)が通常取り得る値が80cm以上110cm以下であることを採寸値範囲情報テーブルに記憶できる。また、例えば、オーバーバストの採寸値が計測された場合に、バストの採寸値は所定の数式によって予測可能となる。このような数式も採寸値範囲情報として採寸値範囲情報記憶部47に記憶される。
【0047】
図7に示す採寸値範囲情報テーブルの一例では、採寸値範囲情報ID「MR0001」と、採寸値範囲情報「オーバーバスト-25cm<バスト<オーバーバスト-15cm」とが関連付けられて記憶されている。これにより、バストがオーバーバスト-25cm以上オーバーバスト-15cmの範囲にない場合に、バストの採寸値が異常値である可能性があるとの報知を行い得る。
【0048】
マイク11は、フィッターが発声した音声情報を入力するものである。マイク11から入力された音声情報は、コンピュータ10に送られる。マイク11は、特に限定されない。マイク11は、フィッターの口元近くに配置可能であることが好ましい。マイク11がフィッターの口元近くに配置可能であることにより、フィッターが発声した音声情報をよりいっそう確実に入力し得る。また、客が発声した音声情報を誤って入力することを防ぎ得る。
【0049】
入力装置12は、フィッター等の操作者によってコンピュータ10に命令信号及び/又は各種のデータ等を送信するものであり、マウス、タッチパネル、及び/又はキーボード等の入力機器が該当する。
【0050】
ディスプレイ13は、コンピュータ10によって作成された各種の情報を画像表示するものであり、液晶表示ディスプレイ等が該当する。
【0051】
次に、支援プログラムを実行することによってコンピュータ10が果たす機能について説明する。
【0052】
音声入力処理部21(「音声入力部」とも称する。)は、マイク11から入力された採寸値に関する音声情報を採寸値に変換する。採寸値に関する音声情報を採寸値に変換する手順では、音声情報が採寸値を読み上げる限られたパターンの情報に限定される。必須の態様ではないが、音声入力処理部21は、音声情報が採寸値を読み上げる等の限られたパターンのいずれであるかを判別する判定を行うことが好ましい。これにより、一般的な文章を読み上げる音声をテキスト情報に変換する手順より、変換の精度及び/又は速度を高め得る。
【0053】
採寸値に関する音声情報は、特に限定されず、例えば、採寸値をひと続きの数値として読み上げる音声(例えば、「ひゃくにじゅう」)でもよく、採寸値を桁ごとに読み上げる音声(例えば、「いち、に、ぜろ」)でもよく、採寸値の単位を含む音声(例えば、「ごじゅう、いんち(50インチであることを読み上げる音声)」)でもよい。
【0054】
必須の態様ではないが、音声入力処理部21は、マイク11から入力された採寸作業を指示する音声(例えば、直前の採寸値を測り直すことを指示する「キャンセル」「クリア」、バスト採寸値の測り直しを指示する「バスト修正」、採寸値の検証を指示する「チェック」、ゲージ服表示を指示する「ゲージ服表示」等)に関する音声情報を識別可能であることが好ましい。これにより、採寸作業員は、手指等を用いた入力を行うことなく採寸作業に関する指示を行える。したがって、採寸作業員は、巻尺等を用いた採寸作業を行いながら採寸作業に関する指示を行い得る。そして、採寸作業の時間を短縮できる。
【0055】
採寸情報出力処理部22は、各種の採寸項目と該当する採寸項目の採寸値とを関連付けてなる採寸情報を出力するものである。採寸情報は、ディスプレイ13に表示されるとともに、客別採寸情報記憶部43の客別採寸情報テーブルに記憶される。
【0056】
異常報知処理部23(「異常報知部」とも称する。)は、採寸項目に関連付けられた採寸値が異常値であるか否かを判断する。異常値であると判断した場合には、ディスプレイ13による画面表示及び/又は音声表示を行うことによって、採寸値が異常値である可能性があることを報知する。採寸値が異常値である可能性があることを報知することにより、採寸ミスによる作業時間の増大を防ぎ、採寸に掛かる作業時間を低減することが可能になる。また、誤った採寸値に基づいた発注書が工場に送信されることによるロスをも防ぎ得る。
【0057】
採寸用衣類選択処理部24(「採寸用衣類選択部」とも称する。)は、予め用意された複数の採寸用衣類(ゲージ服)から、採寸情報出力処理部22から出力された採寸情報に基づいて1以上のゲージ服を選択する。
【0058】
具体的に、フィッターが、入力装置12を操作して、ディスプレイ13に表示された型紙検索ボタンを押すことによって、採寸用衣類選択処理部24が採寸情報に基づいて1以上のゲージ服を選択する。採寸用衣類選択処理部24が選択したゲージ服の画像は、採寸用衣類表示部により、ディスプレイ13に表示可能である。
【0059】
この時、フィッターが、入力装置12を操作して、フィッターが接客の際に予め取得した情報、例えば、年齢及び/又は好みのフィット感等を入力すると、採寸用衣類選択処理部24は、スキル情報記憶部46に記憶されるスキル情報を参照して、自動的に理想のジャケットのバストサイズと半胴サイズを推定してディスプレイ13に表示することが可能である。
【0060】
そして、フィッターが、入力装置12を操作する等して、ディスプレイ13に表示されたゲージ服を参考に客に実際に試着させるゲージ服を、採寸用衣類指定部を介して指定することにより、客の採寸情報に関連づけてゲージ服を特定可能なゲージ服情報が客別採寸情報記憶部43に記憶される。
【0061】
衣類寸法出力処理部25(「採寸情報出力部」とも称する。)は、客情報と採寸情報とに基づいて、予め設定された複数の寸法項目それぞれについて客の体型に応じたオーダーメイド衣類における寸法項目のオーダーメイド用寸法を出力する。客情報には、好みのフィット感及び/又は後述するゲージ服を着用したときの着心地といった主観的な情報、客の年齢と言った数値情報等が含まれる。
【0062】
型紙選択部26(「衣類型紙選択部」とも称する。)は、予め用意された複数の衣類型紙から、客情報と採寸情報とに基づいて1以上の衣類型紙を選択する。型紙選択部26は、客がパンツあるいはベストをオーダーした場合に用いられる機能であり、フィッターの指示(例えば、入力装置12を操作してディスプレイ13に表示されている型紙検索ボタンを押すこと、型紙検索を指示する音声「型紙検索」等)に応じて、型紙選択部26が客にとって最適な型紙を推定して自動的に選択する。
【0063】
客にとって最適な型紙を推定して選択する方法は、特に限定されない。客にとって最適な型紙を推定して選択する方法は、例えば、採寸値が衣類型紙情報テーブルに記憶された採寸値範囲に含まれるよう型紙を選択する方法でよい。必須の態様ではないが、客にとって最適な型紙を推定して選択する方法は、衣類好みと関連付けられた採寸値範囲を参照して型紙を選択する方法を含むことが好ましい。これにより、衣類好みを反映して衣類型紙を選択できる。したがって、衣類好みを反映した衣類設計を行える。
【0064】
なお、客がジャケットをオーダーした場合には、フィッターが選択したゲージ服の中で客が最も着心地がよかったゲージ服の型紙をフィッターが指定する。型紙選択部26が選択した衣類型紙あるいはフィッターが指定した衣類型紙の情報は、客の採寸情報に関連づけて客別採寸情報記憶部43に記憶される。
【0065】
型紙寸法出力処理部27(「型紙寸法出力部」とも称する。)は、衣類型紙に関する1以上の型紙寸法を出力する。1以上の型紙寸法は、1以上の衣類型紙に基づいて客の体型に応じたオーダーメイド衣類を製造可能な寸法である。すなわち、型紙寸法出力処理部27は、客別採寸情報記憶部43に記憶されている衣類型紙の情報を出力し、補正値が記憶されている場合には、それらの値を反映した衣類型紙の情報を出力する。
【0066】
型紙寸法出力処理部27は、型紙寸法補正処理部28を含んでいる。型紙寸法補正処理部28は、フィッターによって指定されたゲージ服が、複数の寸法項目それぞれについてオーダーメイド用寸法と略同じ寸法を有するように補正可能な補正値を出力する。
【0067】
衣類寸法出力処理部25が出力したオーダーメイド用寸法、及び採寸情報出力処理部22が出力した補正値は、客の採寸情報に関連づけて客別採寸情報記憶部43に記憶される。具体的には、型紙寸法補正処理部28(「寸法出力部」とも称する。)は、ディスプレイ13に型紙選択部26が選択した衣類型紙を画像表示させ、フィッターが入力装置12を操作してこの画像に補正を加える作業が可能な状態にする。また、型紙寸法補正処理部28は、手動で補正を行う機能と、自動的に補正を行う機能を備えている。
【0068】
手動で補正を行う場合には、フィッターがディスプレイ13に表示された型紙情報を見ながら、入力装置12を操作して、接客時に取得した客の要望、及び/又は客にゲージ服を着用させた時に取得した内容等を反映させた補正値を入力する。
【0069】
ここで、補正値を入力した場合に、型紙寸法補正処理部28は、スキル情報記憶部46に記憶されているスキル情報を参照して、入力した補正値に伴って補正が必要となる他の補正箇所及び補正の程度をディスプレイ13に表示させる。フィッターは、ディスプレイ13に表示された補正情報を参考に各種の補正を行う。
【0070】
自動的に補正を行う場合には、フィッターが入力装置12を操作して、ディスプレイ13に表示されている自動補正ボタンを押すことにより、型紙寸法補正処理部28は、スキル情報記憶部46に記憶されるスキル情報を参照して、客の体型に合った補正値を自動的に推定する。この補正値は、客の採寸情報に関連づけて客別採寸情報記憶部43に記憶される。
【0071】
なお、型紙選択部26が選択した衣類型紙を用紙にプリントアウトし、その用紙に手書きで補正を加え、補正後に用紙をスキャナで読み取らせることによって取得した画像情報を補正情報とすることも可能である。そして、型紙選択部26が選択した衣類型紙の画像情報と、スキャナで読み取らせることによって取得した画像情報とを比較して補正値を求め、その補正値を客の採寸情報に関連づけて客別採寸情報記憶部43に記憶してもよい。
【0072】
シミュレーション表示処理部29は、ゲージ服及び/又は補正値が加味されたゲージ服の画像、型紙選択部26が選択した1以上の衣類型紙の画像、この衣類型紙に補正値が加味された衣類型紙の画像等を作成してディスプレイ13に表示する。
【0073】
発注処理部30は、型紙寸法出力処理部27が出力した衣類型紙の情報に基づいて、発注書を作成する。なお、作成した発注書を工場に送信する際に、所定の文面を付けて自動送信する機能を設けてもよい。
【0074】
図8は、フィッターによる作業の流れを示すフローチャートである。
【0075】
まず、フィッターは、接客を行い、客から氏名、住所、電話番号等を聞いて、入力装置12を用いて記憶部40の客情報記憶部42を登録する。次に、客の好みの生地・デザイン・ディテール等を確認して決める(S1)。
【0076】
次に、客の各部位の採寸を行う(S2)。各種の採寸項目と採寸を行う順番は予め設定されている。フィッターは、客に巻尺等を当てながら、採寸項目順に採寸値を測定して、記録媒体に記録する。次に、採寸値に基づいて、客の体型に合うゲージ服と呼ばれる採寸服を1又はそれ以上選択して、ゲージ服を客に試着させる。そして、長さ、大きさ、及び/又は着心地など具体的な要望を客に聞いていく(S3)。
【0077】
次に、ゲージ服の型紙に対して客の要望に応じて各種の補正を加えることにより、客の体型に合った型紙を作成する(S4)。
【0078】
そして、工場専用のオーダーシートにサイズ・デザイン・型紙のディテール・補正を書き込み、工場に発注する(S5)。
【0079】
これにより、採寸に掛かる作業時間を低減しつつ、客の採寸値等を反映したオーダーメイド衣類を製造できる。
【0080】
衣類設計支援装置1は、図8に示すステップS1の作業を支援する採寸支援処理と、図8に示すステップS2の作業を支援する採寸作業支援処理と、ステップS3の作業を支援するゲージ服選択支援処理と、ステップS4の作業を支援する型紙作成支援処理と、ステップS5の作業を支援する発注支援処理と、を実行することが可能である。
【0081】
採寸支援処理は、氏名、住所、電話番号、衣類好み等を客から聞きとり、客情報記憶部42の客情報テーブルに記憶する処理である。ディスプレイ13に聞きとる情報項目を表示し、聞き取った情報を客情報テーブルに記憶することにより、これらの情報を用いた衣類設計を行える。
【0082】
図9は、採寸作業支援処理の流れを示すフローチャートである。以下、図9を参照して採寸作業支援処理の好ましい流れの一例を示す。
【0083】
フィッターが採寸作業を行う際には、マイク11をフィッターの口元近くに配置するとともに、ディスプレイ13をフィッターが採寸作業をしながら視認可能な場所に配置する。
【0084】
そして、フィッターが採寸項目順に採寸を行いながら、計測した採寸値を発声することにより、その音声情報がマイク11に入力されてコンピュータ10に送られる。コンピュータ10の制御部20(音声入力処理部21)は、マイク11を介して送られた音声情報をテキスト化する(S11)。次に、制御部20(採寸情報出力処理部22)は、採寸項目とテキスト情報とを関連付けることによって採寸情報を出力する(S12)。採寸情報は、客別採寸情報記憶部43に記憶されるとともに、ディスプレイ13に表示される(S13)。
【0085】
なお、フィッターが1回の採寸を行う毎に採寸値を発声しても、3回の採寸を行う毎に3項目の採寸値をまとめて発声しても、更には、全ての採寸を行った後に全ての項目の採寸値をまとめて発声しても同じ結果が得られる。このため、音声入力のタイミングはフィッターが適宜決定することが可能である。
【0086】
フィッターは、音声によって採寸値を入力可能であるため、手指を入力に用いることがない。これにより、フィッターは、巻尺等を用いて測定を行いながら採寸値を入力できる。これにより、採寸に掛かる作業時間を低減できる。
【0087】
図10は、採寸情報の一例を示す説明図である。客情報記憶部42に客情報が登録されると、客情報に関連付けて、採寸情報を記録するための採寸情報記録フォーマットが作成され、客別採寸情報記憶部43に記憶される。
【0088】
図10(a)は採寸値が記憶される前の採寸情報記録フォーマットの一例であり、OB(オーバーバスト)、B(バスト)、MW(中胴)、W(ウエスト)、H(ヒップ)、・・・といった採寸項目が順に並んでいる。このため、実際の採寸情報記録フォーマットにおいて、フィッターは、OB(オーバーバスト)、B(バスト)、MW(中胴)、W(ウエスト)、H(ヒップ)、・・・の順に採寸する。
【0089】
なお、採寸項目の順番は、入力装置12の操作によって変更可能であり、フィッターの作業のし易さに応じて設定可能である。また、店舗に複数人のフィッターがいる場合には、客情報として担当フィッターの名前を登録する項目を設け、採寸情報記録フォーマットの採寸項目の順番を、登録された担当フィッターに対応して設定された採寸項目の順番に自動的に並び替えてもよい。
【0090】
採寸を行う際には、フィッターがコンピュータ10を操作して、採寸情報出力処理部22を実行させる。採寸情報出力処理部22を実行させると、合わせて音声入力処理部21が実行を開始する。そして、フィッターが採寸を行い、120、100、90、85、100、・・・と読み上げることにより、図10(b)に示すように、OB(オーバーバスト)が120cm、B(バスト)が100cm、MW(中胴)が90cm、W(ウエスト)85cm、H(ヒップ)が100cm、・・・と採寸情報記録フォーマットの採寸項目に関連付けて採寸値が記入される。
【0091】
図9に戻って、ディスプレイ13には、採寸情報記録フォーマットに基づく採寸情報が表示され、採寸情報記録フォーマットに採寸値が記入される毎に画面表示が更新される(S14)。
【0092】
次に制御部20(異常報知処理部23)は、採寸値が採寸値範囲情報記憶部47に記憶されている採寸値範囲情報の範囲外の数値であるか否かを判断する(S14)。採寸値範囲情報の範囲外の数値であると判断した場合には(S15のYES)、図11に示すように、ディスプレイ13に表示される採寸項目及び採寸値の外枠の表示態様を変えたり、背景色を変えたり、点滅させることによって、採寸値が異常な数値である可能性があることを報知する(S16)。
【0093】
そして、全ての採寸項目に採寸値が記入された場合に(S17のYES)、採寸作業支援処理が終了し、全ての採寸項目に採寸値が記入されていない場合には(S17のNO)、次の音声入力(S1)があるまで待機する。
【0094】
なお、音声入力において、音声入力処理部21は、フィッター以外の音声を受け付けないように設定してもよい。また、特定の入力が行われた場合に、その入力に応じた特定の処理を行ってもよい。例えば、フィッターが「キャンセル」あるいは「クリア」と発声した場合に、直近に入力された採寸値をクリアにしてもよい。
【0095】
これにより、異常値が報知された場合に、その異常値をクリアにして新たな採寸値を入力することが可能になる。また、全ての採寸項目に採寸値が記入された場合に、ディスプレイ13のチェックボタンを押下可能とし、フィッターが入力装置12を操作して、チェックボタンを押下すると寸法的に間違いが無いかもチェックし、間違いである可能性がある採寸値があれば注意喚起を促すようにしてもよい。
【0096】
ステップS3で行われるゲージ服選択支援処理においては、採寸用衣類選択処理部24が処理を行い、採寸情報に基づいて1以上のゲージ服を選択して、ディスプレイ13に表示させる。フィッターは、ディスプレイ13に表示されたゲージ服を参考に、客に着用させるゲージ服を選択して、実際に客に試着させる。
【0097】
なお、採寸用衣類選択処理部24は、1以上のゲージ服をディスプレイ13に表示させるとともに、ディスプレイ13に表示されたゲージ服の識別情報を採寸情報に関連付けて客別採寸情報記憶部43に記憶する。これにより、フィッターが選択したゲージ服の型紙情報を、衣類型紙情報記憶部45から読み出すことが可能になる。
【0098】
ステップS4で行われる型紙作成支援処理においては、型紙選択部26、型紙寸法補正処理部28、型紙寸法出力処理部27が処理を行う。まず、型紙選択部26が、型紙情報を衣類型紙情報記憶部45から呼び出して、ディスプレイ13に表示させる。このとき、呼び出した型紙情報の複製が、記憶部40の所定の記憶領域に記憶される。
【0099】
型紙寸法補正処理部28は、記憶部40の所定の記憶領域に記憶されている型紙情報に補正を加えて更新する。
【0100】
また、必要に応じて、シミュレーション表示処理部29の機能を用いて、ディスプレイ13に、補正後の型紙の形状、及び/又は補正後の型紙を用いて作成した衣類のシミュレーション画像を表示させることができる。
【0101】
型紙寸法出力処理部27は、型紙が決定した場合に、記憶部40の所定の記憶領域に記憶されている型紙情報を出力して、採寸情報に関連付けて客別採寸情報記憶部43に記憶される。
【0102】
ステップS5で行われる発注支援処理においては、発注処理部30が処理を行う。発注処理部30は、型紙寸法出力処理部27が出力した型紙情報に基づいて発注書を自動作成する。
【0103】
次に、本実施形態の衣類設計支援装置1を用いた、客のオーダー別に行うフィッターの作業の流れについて説明する。ここでは、ジャケット、パンツ、ベストのオーダーにおけるフィッターの作業について説明する。
【0104】
(ジャケット)
まず、接客において、客の年代・好みのフィット感等の要望を聞く。
【0105】
次に、採寸作業を行いながら、客の各部位の採寸値を衣類設計支援装置1に音声入力する。
【0106】
衣類設計支援装置1は、入力した採寸値に間違いが無いかチェックし、間違いの可能性がある採寸値があれば注意喚起を促し、フィッターに正しい採寸値を入力させる。
【0107】
次に、フィッターが型紙検索ボタンを押すと、採寸値に基づいて、客に合ったゲージ服(採寸用ジャケット)の候補を数着表示させるとともに、客の年齢及び/又は好みのフィット感等を考慮して自動的に理想のジャケットのバストサイズと半胴を表示させる。表示されたゲージ服(ジャケット)の候補より、実際に客に着せ付けるゲージ服(ジャケット)を選択する。ここでいう「客の年齢及び/又は好みのフィット感等を考慮して自動的に」とは、例えば、客の年齢及び衣類好みが衣類型紙テーブルに記憶された年齢及び衣類好みと矛盾しない採寸用衣類及び衣類型紙を選択することを指す。
【0108】
ゲージ服が決定した後、自動補正のボタンを押すことにより、ゲージ服の型紙に対して客の体型に合った補正値がスキル情報テーブルに記憶されたスキル情報に基づいて自動的に入力され、理想のジャケットサイズと補正を施す。
【0109】
そして、フィッターによって最終調整が行われた後、型紙データを出力して工場へ発注依頼する。
【0110】
(パンツ)
まず、接客において、客の年代・好みのフィット感等の要望を聞く。
【0111】
次に、採寸作業を行いながら、客の各部位の採寸値を衣類設計支援装置1に音声入力する。
【0112】
衣類設計支援装置1は、入力した採寸値に間違いが無いかチェックし、間違いの可能性がある採寸値があれば注意喚起を促し、フィッターに正しい採寸値を入力させる。
【0113】
次に、フィッターが型紙検索ボタンを押すと、採寸値に基づいて、客の年齢及び/又は好みのフィット感等を考慮して最適なパンツ型紙が自動的に選択され、更に適切な股上、渡り幅、ヒザ幅、及び/又は裾口幅等がスキル情報テーブルに記憶されたスキル情報に基づいて自動的に入力される。ここでいう「客の年齢及び/又は好みのフィット感等を考慮して」とは、例えば、客の年齢及び衣類好みが衣類型紙テーブルに記憶された年齢及び衣類好みと矛盾しない衣類型紙を選択することを指す。
【0114】
そして、フィッターによって最終調整が行われた後、型紙データを出力して工場へ発注依頼する。
【0115】
(ベスト)
まず、接客において、客の年代・好みのフィット感等の要望を聞く。
【0116】
次に、採寸作業を行いながら、客の各部位の採寸値を衣類設計支援装置1に音声入力する。
【0117】
衣類設計支援装置1は、入力した採寸値に間違いが無いかチェックし、間違いの可能性がある採寸値があれば注意喚起を促し、フィッターに正しい採寸値を入力させる。
【0118】
次に、フィッターが型紙検索ボタンを押すと、採寸値に基づいて、客の年齢及び/又は好みのフィット感等を考慮して最適なベスト型紙を選択し同時に適切なベスト後丈・ベスト前丈・上胴B/2、中胴W/2がスキル情報テーブルに記憶されたスキル情報に基づいて自動的に入力される。ここでいう「客の年齢及び/又は好みのフィット感等を考慮して」とは、例えば、客の年齢及び衣類好みが衣類型紙テーブルに記憶された年齢及び衣類好みと矛盾しない衣類型紙を選択することを指す。
【0119】
そして、フィッターによって最終調整が行われた後、型紙データを出力して工場へ発注依頼する。
【0120】
以上説明したように構成された本発明の実施形態によれば、フィッターが客の各部位を測定して得た採寸値を読み上げることによってこの採寸値が音声入力され、採寸値に対応する採寸項目に自動的に関連付けられて採寸情報が生成される。
【0121】
このため、採寸作業の間に採寸値の音声入力が行われることから、従来における採寸値を用紙に記録する手間を省略することが可能になる。しかも、採寸作業員は採寸値を読み上げる間に次の採寸項目の採寸作業に移行することが可能になるため、採寸値の記録に係る作業を大幅に削減可能になる。
【0122】
このように、採寸に掛かる作業時間を低減することが可能になることによって、他の客を長時間待たせることが防止し得る。そして、他の客がキャンセルしてしまうことによる販売ロスを低減することを見込み得る。
【0123】
また本実施形態によれば、採寸値としてあり得ない数値が音声入力された場合にディスプレイ13の採寸項目及び/又は採寸値の表示態様が変わることで報知を行っている。これにより、採寸ミスによる作業時間の増大を防ぎ、採寸に掛かる作業時間を低減することが可能になる。採寸値が異常値である可能性があることを報知することにより、採寸ミスによる作業時間の増大を防ぎ、採寸に掛かる作業時間を低減することが可能になる。また、誤った採寸値に基づいた発注書が工場に送信されることによるロスをも防ぎ得る。
【0124】
しかも、フィッターは、採寸作業中に、ディスプレイ13に表示された採寸項目及び採寸値を見ることによって、採寸項目と採寸値との関連付け、及び採寸値を確認できるため、採寸値の誤入力を低減することが可能になる。その結果、寸法が違うことによる客からのクレームを低減することを見込み得る。
【0125】
また本実施形態によれば、予め用意された複数の採寸用衣類(ゲージ服)から客の体型に近いゲージ服を把握することが可能になり、客に何着もゲージ服を着せ替えさせることで、その分長く時間が掛かってしまう、といったことを低減することが可能になる。
【0126】
また本実施形態によれば、採寸情報出力処理部22は、指定されたゲージ服が複数の寸法項目それぞれについてオーダーメイド用寸法と略同じ寸法を有するように補正可能な補正値を出力可能であるため、フィッターが、ゲージ服におけるどの部分をどの程度補正すれば、客の体型に合うようになるかを数値として把握することが可能になる。
【0127】
これにより、衣類型紙の補正を行うための情報を容易に得ることが可能になる。このように、補正を行うための情報を得るための作業による作業時間の増大を防ぎ、採寸に掛かる作業時間を低減することが可能になる。
【0128】
また本実施形態によれば、コンピュータ10が、予め用意された複数の衣類型紙から、客情報と採寸情報とに基づいて1以上の型紙を選択、出力可能になる。
【0129】
これにより、基準となる衣類型紙の情報を取得することが可能になり、客にゲージ服を着用させた場合に得られる客の要望に応じて衣類型紙を補正することが可能になる。
【0130】
このように、客の要望に応じて逐一衣類型紙の情報を取得し、補正する作業時間を低減することが可能になる。
【0131】
また本実施形態によれば、ジャケットの場合、採寸値を入力するだけで最適なゲージ服(型紙)を選択することができる。パンツ・ベストに関しても、客の年齢・好みのフィット感を考慮した上で、採寸値に基づいて、適切な型紙を選択し、全て自動計算で最適な数値を導き出すことができる。そして、客の体型に合った型紙補正を自動的に施すことができる。
【0132】
このように、本実施形態によれば、経験が浅いフィッターに対して効率的に作業を行うための支援を行うことが可能になる。これにより、オーダーメイド衣類を製造するための採寸に掛かる作業時間を低減できる。そして、採寸中に来店した他の客を長時間待たせることを防ぎ、他の客を待たせたことが原因でこの他の客がオーダーメイド衣類の製造依頼を取りやめる販売ロスを防ぐことも見込み得る。
【0133】
なお、本発明の思想の範疇において、当業者であれば各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0134】
例えば、前述の実施の形態及び各変形例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0135】
1 衣類設計支援装置
10 コンピュータ
11 マイク
12 入力装置
13 ディスプレイ
20 制御部
21 音声入力処理部
22 採寸情報出力処理部
23 異常報知処理部
24 採寸用衣類選択処理部
25 衣類寸法出力処理部
26 型紙選択部
27 型紙寸法出力処理部
28 型紙寸法補正処理部
29 シミュレーション表示処理部
30 発注処理部
40 記憶部
41 支援プログラム記憶部
42 客情報記憶部
43 客別採寸情報記憶部
44 採寸用衣類情報記憶部
45 採寸用衣類型紙情報記憶部
46 スキル情報記憶部
47 採寸値範囲情報記憶部
【要約】
【課題】オーダーメイド衣類を製造するための採寸に掛かる作業時間を低減することを可能にする衣類設計支援装置を提供すること。
【解決手段】本発明の衣類設計支援装置1は、予め設定された複数の採寸項目それぞれについて、採寸作業員が衣類を着用する着用者を測定して得た採寸項目の採寸値を読み上げる音声に基づいて採寸値を音声入力する音声入力処理部21と、採寸項目と採寸項目の採寸値とを関連付けてなる採寸情報を出力可能な採寸情報出力処理部22と、を備え、採寸情報は、採寸作業員が採寸値を読み上げる順序にしたがって採寸項目と採寸項目の採寸値とを関連付けた情報である。本発明の衣類設計支援装置1は、採寸項目の採寸値が所定の範囲にない場合に所定の報知を行う異常報知部23を更に備えることが好ましい。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11