(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】多層管状成形体および多層管状成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 11/04 20060101AFI20220615BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20220615BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220615BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220615BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
F16L11/04
B32B1/08 B
B32B27/30 101
B32B27/32 C
B32B27/32 E
B32B27/30 B
B32B27/28 101
(21)【出願番号】P 2022504160
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2021036592
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2020178442
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000134534
【氏名又は名称】株式会社トヨックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 大地
(72)【発明者】
【氏名】沼田 健一
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-236782(JP,A)
【文献】特開2005-198858(JP,A)
【文献】特開平02-224763(JP,A)
【文献】特開2020-165506(JP,A)
【文献】米国特許第04627844(US,A)
【文献】特表2006-503642(JP,A)
【文献】特開平02-209154(JP,A)
【文献】特開2008-133897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/04
B32B 1/08
B32B 27/30
B32B 27/32
B32B 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンを主成分として含有する内層と、
ポリ塩化ビニルを主成分として含有する外層と、
前記内層と前記外層との間に設けられ、前記内層と前記外層とを接着する機能を備え、側鎖に芳香族環を有する第1のポリオレフィンおよび側鎖にエステル含有基を有する第2のポリオレフィンを含有する中間層とを有することを特徴とする多層管状成形体。
【請求項2】
前記中間層における前記第1のポリオレフィンの含有量と前記第2のポリオレフィンの含有量との質量での比は、95:5~50:50である請求項1に記載の多層管状成形体。
【請求項3】
前記中間層における前記第1のポリオレフィンと前記第2のポリオレフィンとの合計での含有量は、75質量%以上である請求項1または2に記載の多層管状成形体。
【請求項4】
前記第1のポリオレフィンは、スチレングラフトポリオレフィンおよびポリスチレンを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の多層管状成形体。
【請求項5】
前記第2のポリオレフィンは、無水マレイン酸変性エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の多層管状成形体。
【請求項6】
前記内層における前記ポリオレフィンの含有量は、75質量%以上である請求項1~5のいずれか1項に記載の多層管状成形体。
【請求項7】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の多層管状成形体。
【請求項8】
前記外層における前記ポリ塩化ビニルの含有量は、40~70重量%である請求項1~7のいずれか1項に記載の多層管状成形体。
【請求項9】
前記内層の厚さに対する前記外層の厚さの比は、1~10である請求項1~8のいずれか1項に記載の多層管状成形体。
【請求項10】
前記内層に対する前記外層の接着強度は、10N/25mm以上である請求項1~9のいずれか1項に記載の多層管状成形体。
【請求項11】
前記内層、前記中間層および前記外層の共押出成形による一体化物である請求項1~10のいずれか1項に記載の多層管状成形体。
【請求項12】
請求項11に記載の多層管状成形体を製造する方法であって、
前記ポリオレフィンを含有する内層形成用材料と、前記ポリ塩化ビニルを含有する外層形成用材料と、前記第1のポリオレフィンおよび前記第2のポリオレフィンを含有する中間層形成用材料とを共押出して、前記多層管状成形体を得ることを特徴とする多層管状成形体の製造方法。
【請求項13】
前記内層形成用材料の融点と前記外層形成用材料の融点との差の絶対値は、1~40℃である請求項12に記載の多層管状成形体の製造方法。
【請求項14】
前記中間層形成用材料の融点と前記内層形成用材料の融点との差の絶対値は、5~35℃である請求項12または13に記載の多層管状成形体の製造方法。
【請求項15】
前記中間層形成用材料のメルトフローインデックスと前記内層形成用材料のメルトフローインデックスとの差の絶対値は、4.5~10g/10minである請求項12~1
4のいずれか1項に記載の多層管状成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層管状成形体および多層管状成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柔軟性(可撓性)に優れることから、ポリ塩化ビニルの管状成形体が広く使用されている。しかしながら、特定の分野(例えば、食品加工、化粧品製造、化学品製造等の分野)においては、管状成形体に高い耐薬品性および耐熱性が求められることがあるが、この要求をポリ塩化ビニルの管状成形体では満たすことができない。
ポリオレフィンは、ポリ塩化ビニルに比較して耐薬品性および耐熱性に優れる。したがって、上記要求を満たすため、ポリ塩化ビニルの管状成形体を外層とし、ポリオレフィンの内層を設けることが考えられる。
【0003】
ところが、ポリ塩化ビニルは、極性のポリマーであり、ポリオレフィンは、無極性のポリマーである。すなわち、ポリ塩化ビニルとポリオレフィンとは、それらの極性が大きく異なる。このため、これらを直接接着することは困難である。
そこで、特許文献1には、ポリ塩化ビニルの外層とポリオレフィンの内層とを、無水マレイン酸変性エチレン-酢酸ビニル共重合体の中間層により接着したチューブが開示されている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1のチューブでは、外層と内層との接着性が未だ不十分であることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高い耐薬品性および耐熱性を有し、かつ接着強度に優れる多層管状成形体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の(1)~(15)の本発明により達成される。
(1) ポリオレフィンを主成分として含有する内層と、
ポリ塩化ビニルを主成分として含有する外層と、
前記内層と前記外層との間に設けられ、前記内層と前記外層とを接着する機能を備え、側鎖に芳香族環を有する第1のポリオレフィンおよび側鎖にエステル含有基を有する第2のポリオレフィンを含有する中間層とを有することを特徴とする多層管状成形体。
【0007】
(2) 前記中間層における前記第1のポリオレフィンの含有量と前記第2のポリオレフィンの含有量との質量での比は、95:5~50:50である上記(1)に記載の多層管状成形体。
【0008】
(3) 前記中間層における前記第1のポリオレフィンと前記第2のポリオレフィンとの合計での含有量は、75質量%以上である上記(1)または(2)に記載の多層管状成形体。
【0009】
(4) 前記第1のポリオレフィンは、スチレングラフトポリオレフィンおよびポリスチレンを含む上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の多層管状成形体。
【0010】
(5) 前記第2のポリオレフィンは、無水マレイン酸変性エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の多層管状成形体。
【0011】
(6) 前記内層における前記ポリオレフィンの含有量は、75質量%以上である上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の多層管状成形体。
【0012】
(7) 前記ポリオレフィンは、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種を含む上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の多層管状成形体。
【0013】
(8) 前記外層における前記ポリ塩化ビニルの含有量は、40~70重量%である上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の多層管状成形体。
【0014】
(9) 前記内層の厚さに対する前記外層の厚さの比は、1~10である上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の多層管状成形体。
【0015】
(10) 前記内層に対する前記外層の接着強度は、10N/25mm以上である上記(1)~(9)のいずれか1つに記載の多層管状成形体。
【0016】
(11) 前記内層、前記中間層および前記外層の共押出成形による一体化物である上記(1)~(10)のいずれか1つに記載の多層管状成形体。
【0017】
(12) 上記(11)に記載の多層管状成形体を製造する方法であって、
前記ポリオレフィンを含有する内層形成用材料と、前記ポリ塩化ビニルを含有する外層形成用材料と、前記第1のポリオレフィンおよび前記第2のポリオレフィンを含有する中間層形成用材料とを共押出して、前記多層管状成形体を得ることを特徴とする多層管状成形体の製造方法。
【0018】
(13) 前記内層形成用材料の融点と前記外層形成用材料の融点との差の絶対値は、1~40℃である上記(12)に記載の多層管状成形体の製造方法。
【0019】
(14) 前記中間層形成用材料の融点と前記内層形成用材料の融点との差の絶対値は、5~35℃である上記(12)または(13)に記載の多層管状成形体の製造方法。
【0020】
(15) 前記中間層形成用材料のメルトフローインデックスと前記内層形成用材料のメルトフローインデックスとの差の絶対値は、4.5~10g/10minである上記(12)~(14)のいずれか1つに記載の多層管状成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高い耐薬品性および耐熱性を有し、かつ接着強度に優れる多層管状成形体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の多層管状成形体の実施形態を部分的に切り欠いて示す斜視図である。
【
図3】プラズマ処理装置の全体構成を示す概略図である。
【
図4】
図3のプラズマ処理装置を使用して、内層の外周面をプラズマ処理している状態を示す断面図である。
【
図5】耐圧ホースの構成を部分的に切り欠いて示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の多層管状成形体および多層管状成形体の製造方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<多層管状成形体>
図1は、本発明の多層管状成形体の実施形態を部分的に切り欠いて示す斜視図、
図2は、
図1中のA-A線断面図である。
図1に示す多層管状成形体1は、内層2と、外層3と、内層2と外層3との間に設けられた中間層4とを有している。
以下、各層の構成について、順次説明する。
【0024】
<<内層2>>
内層2は、ポリオレフィンを主成分として含有する層である。ポリオレフィンは、耐薬品性および耐熱性に優れる。このため、ポリオレフィンを主成分として含有する内層2を設けることにより、多層管状成形体1に、高い耐薬品性および耐熱性を付与することができる。
ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高密度ポリエチレン(VHDPE)のようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンとα-オレフィンとの共重合体等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
中でも、ポリオレフィンは、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、LDPE、HDPE、VHDPEおよびポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、HDPEを含むことがさらに好ましい。これらのポリオレフィンを使用することにより、内層2の耐熱性をより向上させ易い。
【0026】
ポリオレフィンの重量平均分子量は、10,000~400,000程度であることが好ましく、50,000~110,000程度であることがより好ましい。
なお、本明細書中において、重量平均分子量は、ゲルパミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0027】
ポリオレフィンには、内層2の特性を損なわない範囲で、他のポリマー、各種添加剤を添加してもよい。
他のポリマーとしては、例えば、スチレン系ブロック共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル等が挙げられる。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、染料、顔料、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、無機フィラー(シリカ、タルク、マイカ等)等が挙げられる。
【0028】
内層2におけるポリオレフィンの含有量は、75質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であってもよい。この場合、内層2にポリオレフィンに基づく特性を十分に付与することができる。
【0029】
<<外層3>>
外層3は、ポリ塩化ビニルを主成分として含有する層である。ポリ塩化ビニルは、柔軟性に優れる。ここで、ポリオレフィンを主成分として含有する内層2は、柔軟性(可撓性)が低くなり易いが、ポリ塩化ビニルを主成分として含有する外層3と組み合わせることにより、多層管状成形体1全体として、高い柔軟性(可撓性)を確保することができる。
なお、ポリ塩化ビニルは、変性されていてもよい。かかる変性ポリ塩化ビニルとしては、例えば、アクリル変性ポリ塩化ビニル、ポリウレタン変性ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体変性ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
ポリ塩化ビニルの重量平均分子量は、40,000~200,000程度であることが好ましく、80,000~160,000程度であることがより好ましい。
【0030】
外層3の柔軟性を高める観点から、ポリ塩化ビニルには、各種可塑剤を添加してもよい。
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、フタル酸ジノルマルデシル(DnDP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)のようなフタル酸エステル類、アジピン酸ジイソブチル(DIBA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)のようなアジピン酸エステル類、トリメリット酸トリエステルのようなトリメリット酸エステル類、ポリエステル可塑剤等が挙げられる。
また、ポリ塩化ビニルおよび可塑剤には、外層3の特性を損なわない範囲で、内層2で挙げたのと同様の各種添加剤を添加してもよい。
外層3におけるポリ塩化ビニルの含有量は、40~70質量%程度であることが好ましく、45~65質量%程度であることがより好ましい。この場合、外層3にポリ塩化ビニルに基づく柔軟性を十分に付与することができる。
【0031】
図2に示すように、内層2の厚さT2[mm]に対する外層3の厚さT3[mm]の比(T3/T2)は、1~10程度であることが好ましく、3~7程度であることがより好ましい。T3/T2を上記範囲とすることにより、多層管状成形体1の柔軟性を十分に高めつつ、多層管状成形体1に優れた耐薬品性および耐熱性を付与することができる。
T2の具体的な値は、特に限定されないが、0.1~3mm程度であることが好ましく、0.2~0.5mm程度であることがより好ましい。
また、T3の具体的な値も、特に限定されないが、0.5~4mm程度であることが好ましく、0.7~3mm程度であることがより好ましい。
【0032】
内層2と外層3との間には、中間層4が設けられている。この中間層4は、内層2と外層3とを接着する機能を備えている。なお、中間層4の主たる機能は、接着機能であるが、中間層4は、その他、例えば、クッション機能、耐キンク機能、ガス透過抑制機能、UVカット機能、耐熱性向上機能等の他の機能を発揮してもよい。
中間層4は、側鎖に芳香族環を有する第1のポリオレフィンと、側鎖にエステル含有基を有する第2のポリオレフィンとを含有する。
【0033】
第1のポリオレフィンが有する芳香族環は、電子の偏りが大きく、電子密度の低い部分(正に帯電する部分)が存在する。一方、ポリ塩化ビニルが有する塩素原子は、電子親和力が大きく、電子密度が高まることにより、負に帯電している。このため、第1のポリオレフィンが有する芳香族環に、ポリ塩化ビニルが有する塩素原子が強く引き寄せられ、ファンデルワールス力が働くことで安定する。すなわち、第1のポリオレフィンとポリ塩化ビニルとが高度に相互作用することにより、外層3と中間層4とが接着すると考えられる。
【0034】
一方、第2のポリオレフィンが有するエステル含有基は、互いに隣接するC=O結合およびC-O結合(または、C-O-C結合)を含む。C=O結合は、C-O結合より電子密度が高く、これらの間に空間が生じている。この空間にポリオレフィンの水素原子が強く引き寄せられ、水素結合が生成されることで安定化する。すなわち、第2のポリオレフィンとポリオレフィンとが高度に相互作用することにより、内層2と中間層4とが接着すると考えられる。
【0035】
また、第1のポリオレフィンおよび第2のポリオレフィンは、いずれも主鎖に飽和炭化水素構造を有する。これらは、互いに親和性が高く、相分離し難い。
ポリ塩化ビニルは、極性のポリマーであり、ポリオレフィンは、無極性のポリマーである。ポリ塩化ビニルとポリオレフィンとは、それらの極性が大きく異なるため、本来、内層2と外層3とは直接接着することが困難である。
これに対して、本発明では、2種の側鎖に官能基を有するポリオレフィン(接着性ポリオレフィン)を含む中間層4を設けたことにより、上述の作用により、内層2と外層3との間に中間層4を介した優れた接着性が発現したと考えられる。
【0036】
第1のポリオレフィンが有する芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、フラン環等が挙げられる。中でも、第2のポリオレフィンとの親和性の低下を抑制する観点からは、ベンゼン環が好ましい。
かかる第1のポリオレフィンとしては、例えば、スチレングラフトポリオレフィン、ポリスチレン等が挙げられる。
中でも、第1のポリオレフィンは、スチレングラフトポリオレフィンおよびポリスチレンを含むことが好ましい。かかる第1のポリオレフィンは、より高度にポリ塩化ビニルと相互作用することができる。また、この場合、第1のポリオレフィンは、スチレングラフトポリオレフィンとポリスチレンとの混合物(ポリマーアロイ等)であってもよく、ポリスチレンのコアとスチレングラフトポリオレフィンのシェルとを有するコア/シェル構造物であってもよい。
【0037】
第2のポリオレフィンが有するエステル含有基としては、例えば、アルキルエステル基、アリールエステル基、マレイン酸無水物基、コハク酸無水物基、フタル酸無水物基等が挙げられる。中でも、第1のポリオレフィンとの親和性の低下を抑制する観点からは、アルキルエステル基およびマレイン酸無水物基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
かかる第2のポリオレフィンは、例えば、無水マレイン酸変性エチレン-酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
中でも、第2のポリオレフィンは、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含むことが好ましい。かかる第2のポリオレフィンは、より高度にポリオレフィンと相互作用することができる。
【0038】
エチレン-酢酸ビニル共重合体に対する無水マレイン酸の付加量またはグラフト量は、エチレン-酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、0.0001~15質量部程度であることが好ましく、0.001~10質量部程度であることがより好ましい。
【0039】
中間層4における第1のポリオレフィンの含有量と第2のポリオレフィンの含有量との質量での比(第1のポリオレフィン:第2のポリオレフィン)は、95:5~50:50程度であることが好ましく、90:10~50:50程度であることがより好ましく、90:10~80:20程度であることがさらに好ましい。かかる量比で第1のポリオレフィンおよび第2のポリオレフィンを中間層4が含有することにより、内層2および外層3との接着性がバランスよく発現する。
中間層4の粘・接着性を高める観点から、第1のポリオレフィンおよび第2のポリオレフィンには、各種タッキファイヤー(粘着向上剤)を添加してもよい。
タッキファイヤーとしては、例えば、ロジン系、ロジン誘導体系、テルペン樹脂系、テルペン誘導体系のような天然タッキファイヤー、石油樹脂系、スチレン樹脂系、クマロンインデン樹脂系、フェノール樹脂系、キシレン樹脂系のような合成タッキファイヤー等が挙げられる。
【0040】
また、第1のポリオレフィンおよび第2のポリオレフィンには、中間層4の特性を損なわない範囲で、内層2で挙げたのと同様の各種の他のポリマーおよび添加剤を添加してもよい。
中間層4における第1のポリオレフィンと第2のポリオレフィンとの合計での含有量は、75質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であってもよい。この場合、中間層4に第1のポリオレフィンおよび第2のポリオレフィンに基づく特性を十分に付与することができる。
【0041】
なお、中間層4中において、第1のポリオレフィンおよび第2のポリオレフィンの含有量は、厚さ方向に沿って変化していてもよい。例えば、第1のポリオレフィンの含有量が外層3側から内層2側に向かって減少し、かつ、第2のポリオレフィンの含有量が外層3側から内層2側に向かって増大するような傾斜材料で、中間層4を構成してもよい。
また、第1のポリオレフィンおよび第2のポリオレフィンの含有量の中間層4の厚さ方向に沿った変化は、連続的であっても、段階的であってもよい。
中間層4の厚さの具体的な値は、特に限定されないが、0.2~2mm程度であることが好ましく、0.2~1mm程度であることがより好ましい。この場合、多層管状成形体1が必要以上に肉厚となることを防止しつつ、内層2および外層3への高い接着性を維持することができる。
【0042】
内層2に対する外層3の接着強度は、10N/25mm以上であることが好ましく、20N/25mm以上であることがより好ましく、40N/25mm以上であることがさらに好ましい。なお、接着強度の上限は、通常、100N/25mm程度である。この場合、多層管状成形体1において、内層2と外層3とが十分に剥離し難いと判断することができる。したがって、かかる接着強度を有する多層管状成形体1は、稼働部に配置される管状成形体に好適に使用される。
【0043】
このような多層管状成形体1は、内層2、中間層4および外層3の共押出成形による一体化物であることが好ましい。かかる多層管状成形体1は、内層2および外層3と中間層4との接着性がより向上し易い。
以上のような多層管状成形体1の用途は、十分な柔軟性を備え、優れた耐薬品性および耐熱性も優れる。このため、多層管状成形体1は、例えば、食品加工、化粧品製造、化学品製造等の分野で好適に使用される。
【0044】
本発明の多層管状成形体の製造方法は、内層2、中間層4および外層3の共押出成形による一体化物として多層管状成形体1を製造する方法である。
具体的には、上記ポリオレフィンを含有する内層形成用材料と、上記ポリ塩化ビニルを含有する外層形成用材料と、上記第1のポリオレフィンおよび上記第2のポリオレフィンを含有する中間層形成用材料とを共押出して、3層構造の多層管状成形体1を得る。共押出によれば、内層2および外層3と中間層4との接着性が十分に高い多層管状成形体1を比較的簡便に製造することができる。
【0045】
また、内層2および外層3と中間層4との接着強度をより高める観点からは、各層成形用材料の融点およびメルトフローインデックス(MFI)が所定の関係を満足するように設計することが好ましい。
内層形成用材料の融点と外層形成用材料の融点との差の絶対値は、1~40℃程度であることが好ましく、3~25℃程度であることがより好ましい。
中間層形成用材料の融点と内層形成用材料の融点との差の絶対値は、5~35℃程度であることが好ましく、10~25℃程度であることがより好ましい。
【0046】
内層形成用材料の融点の具体的な値は、120~150℃程度であることが好ましく、125~140℃程度であることがより好ましい。
外層形成用材料の融点の具体的な値は、100~160℃程度であることが好ましく、120~155℃程度であることがより好ましい。
中間層形成用材料の融点の具体的な値は、130~170℃程度であることが好ましく、140~160℃程度であることがより好ましい。
【0047】
中間層形成用材料のMFIと内層形成用材料のMFIとの差の絶対値は、1~15g/10min程度であることが好ましく、4.5~10g/10min程度であることがより好ましい。
内層形成用材料のMFIの具体的な値は、0.05~0.3g/10min程度であることが好ましく、0.1~0.2g/10min程度であることがより好ましい。
中間層形成用材料のMFIの具体的な値は、1~15g/10min程度であることが好ましく、4.5~10g/10min程度であることがより好ましい。
【0048】
また、多層管状成形体1は、内層2を形成した後、この内層2の外周面側に中間層4および外層3を共押出成形により積層して製造することもできる。
この場合、内層2の外周面は、プラズマ処理により変性されていること、すなわち、中間層4との接着性を高める官能基(以下、「接着性官能基」と記載する。)が導入されていることが好ましい。これにより、内層2と中間層4との親和性を高め、これらの接着性をより向上させることができる。
【0049】
内層2の外周面に導入する接着性官能基としては、例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシ基のような親水性基、アルキル基、ビニル基のような疎水性基が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
接着性官能基として親水性基を導入する場合、この親水性基にさらにジビニルモノマーやシランカップリング剤を反応させてもよい。これにより、内層2の外周面に重合性官能基を導入することができる。この場合、内層2と中間層4との接着性をより高め易い。
また、プラズマ処理用ガスに、トリメチルビニルシランを添加するようにしてもよい。この場合、ポリエチレンのようなポリオレフィンの外表面に、直接、ビニル基を導入することができる。
【0050】
内層2の外周面に対するプラズマ処理は、例えば、次のようなプラズマ処理装置を使用して好適に行うことができる。
図3は、プラズマ処理装置の全体構成を示す概略図、
図4は、
図3のプラズマ処理装置を使用して、内層の外周面をプラズマ処理している状態を示す断面図である。
図3に示すプラズマ処理装置100は、内腔部210を備える円筒状の誘電体200と、誘電体200の内周面側に配置され、軸方向に沿って巻回されたコイル状の内部電極300と、誘電体200の外周面側に配置され、内部電極300との間に交流電圧を印加する外部電極400と、交流電圧の印加によりプラズマを発生させるためのガスを内腔部210に供給するガス供給部500とを有する。
【0051】
また、内部電極300の一端側の引き出し線310と他端側の引き出し線320との間は、配線330で接続され、引き出し線410と配線420とを介して、交流電源600が接続されている。外部電極400は、引き出し線410を介して接地され、配線420と配線330とが導通している。なお、引き出し線310、引き出し線320、配線330、配線420および引き出し線410は、絶縁材料で被覆されている。
ガス供給部500から内腔部210にガスを供給しつつ、内部電極300に交流電流を流すことにより、プラズマ放電が生じる。その結果、内腔部210内にプラズマが集中的に発生し、この内腔部210に内層2を通過させれば、内層2の外周面が選択的にプラズマ処理される。
以下、各部の構成について、順次説明する。
【0052】
<誘電体200>
誘電体200の構成材料としては、比誘電率(εr)および耐熱性ができるだけ高い誘電材料が好ましく、石英(εr=3.8)、アルミナ(εr=9.4)、窒化ホウ素(εr=12)のようなセラミックスがより好ましい。
誘電体200の厚さは、特に限定されないが、0.5~10mm程度であることが好ましく、1~5mm程度であることがより好ましい。
また、誘電体200の長さも、特に限定されないが、50~500mm程度であることが好ましく、100~300mm程度であることがより好ましい。
【0053】
<内部電極300>
内部電極(印加側電極)300は、誘電体200の軸方向に沿って配置され、誘電体200の内周面に接触している。この内部電極300は、誘電体200の軸方向に沿って、線状または帯状の線材をコイル状に巻回してなるコイル状体で構成されている。
ここで、内部電極は、誘電体200の軸方向に沿って配置され、かつ、周方向に沿って併設された複数の棒状体、誘電体200の軸方向に沿って、かつ、誘電体200と同心的に配置される複数のリング状体等で構成することも考えられる。
【0054】
しかしながら、内部電極を棒状体で構成する場合、内層2を円筒状のまま処理するには、内層2のサイズ(外径)に応じて配置数を調整する必要が生じる。また、誘電体200の軸方向(内層2の挿入方向)に沿って棒状体を配置するため、内層2の外周面の周方向に沿って処理ムラが発生することが懸念される。
一方、内部電極をリング状体で構成する場合、プラズマ処理の時間を稼ぐために、配置数を多くする必要がある。この場合も、軸方向に沿って処理ムラが生じないように、隣り合うリング状体同士が重なり合わないように配置する必要がある。
【0055】
これに対して、内部電極300をコイル状体で構成することにより、内層2の外周面の周方向かつ軸方向に沿ってムラなくプラズマ処理することができるようになる。
内部電極300を構成する線材のピッチ(
図4中のP)は、0.5~10mm程度であることが好ましく、1~7.5mm程度であることがより好ましい。この場合、巻回された線材同士の隙間、発生したプラズマで十分に充填することができ、よって、内層2の外周面をより均一にプラズマ処理し易くなる。
また、内部電極300を構成する線材の長手方向と直交する方向での断面形状は、円形状であってもよいが、
図4に示すような矩形状(角形状)や三角形状、M字形状のような角を有する形状であることが好ましい。この場合、線材の角部からプラズマ放電を内層2に向けて発生させ易くなる。
【0056】
線材の断面積は、特に限定されないが、0.001~9mm2程度であることが好ましく、0.005~2mm2程度であることがより好ましい。
内部電極300のコイル状部分(引き出し線310、320を除いた部分)の長さも、特に限定されないが、25~250mm程度であることが好ましく、50~200mm程度であることがより好ましい。
内部電極300(線材)の構成材料としては、導電性材料であればよく、特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス鋼、銅、銀、金、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、アルミニウム、カーボン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
<外部電極400>
外部電極(接地側電極)400は、誘電体200の軸方向に沿って配置され、誘電体200の外周面に接触している。この外部電極400は、誘電体200の軸方向に沿って配置された網状または箔状(シート状)の円筒状体で構成されている。
外部電極400を円筒状体で構成することにより、コイル状体で構成される内部電極300の作用と相まって、内層2の外周面を、その周方向に沿ってムラなく、プラズマ処理することができる。
外部電極400の厚さは、特に限定されないが、0.01~1mm程度であることが好ましく、0.05~0.5mm程度であることがより好ましい。
【0058】
また、外部電極400の長さは、内部電極300のコイル状部分を包含することができる程度のサイズであることが好ましい。
外部電極400の構成材料としては、導電性材料であればよく、特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス鋼、銅、銀、金、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、アルミニウム、カーボン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
以上のような構成のプラズマ処理装置100によれば、内層2を変形させることなく、内腔部210を通過させることができるため、その外周面を選択的にプラズマ処理することができる。また、内層2の外周面の周方向に沿った処理ムラも生じ難い。
ここで、内層2を介して内側および外側に電極を配置する構成のプラズマ処理装置では、内層2の内周面も不本意にプラズマ処理されることがある。内層2の内周面がプラズマ処理されると、内層2の機能(例えば、耐薬品性、撥水性、防汚性、抽出性)が低下または消失するおそれがある。このため、内層2の内周面をプラズマ処理することは回避したい。これに対して、本実施形態のプラズマ処理装置100によれば、かかる不都合を防止することができる。
【0060】
このようなプラズマ処理装置100を使用した多層管状成形体1の製造方法は、誘電体200の内腔部210に内層2を通過させつつ、その外表面にプラズマ処理する工程(プラズマ処理工程)と、内層2の外周に中間層4および外層3を被覆する工程(被覆工程)とを有する。
[1]プラズマ処理工程
まず、ガス(以下、「プラズマ処理用ガス」と記載する。)を、ガス供給部500からプラズマ処理装置100の内腔部210内に供給する。この状態で、交流電源600により、内部電極300と外部電極400との間に交流電圧を印加する。これにより、内腔部210内でプラズマ放電が生じ、プラズマが集中的に発生する。
【0061】
次いで、内腔部210内に内層2を通過させる。これにより、内層2の外周面は、その先端部から順にプラズマ処理される。
このとき、内部電極300と内層2との離間距離(
図4中のG)は、特に限定されないが、1~10mm程度であることが好ましく、1~5mm程度であることがより好ましく、1~3mm程度であることがさらに好ましい。内部電極300と内層2との離間距離を上記範囲に設定することにより、内層2の変質および劣化を防止しつつ、その外周面を選択的にプラズマ処理することができる。
このプラズマ処理により、内層2の外周面を励起状態とし、外周面に存在する元素をガスの種類に応じて接着性官能基を置換して導入することができる。
【0062】
プラズマ処理用ガスとしては、例えば、アルゴン、ヘリウムのような希ガス、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素、四フッ化メタン、メタン、エタン等が挙げられ、これらの1種を単独で、または、2種以上の混合ガスとして用いることができる。
例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)で構成される内層2の外周面に、カルボキシ基を導入する場合、好ましくは、内部電極300と内層2との離間距離Gを1~2mmに設定し、プラズマ処理用ガスとして、アルゴンと二酸化炭素とメタンとを20~99:80~0.5:2~0の量比で含む混合ガスが使用される。
【0063】
交流電圧の最大値は、1~20kV程度であることが好ましく、5~10kV程度であることがより好ましい。
交流電圧の周波数は、1~30kHz程度であることが好ましく、5~15kHz程度であることがより好ましい。
交流電圧の印加時間は、0.1~20秒程度であることが好ましく、1~10秒程度であることがより好ましい。
かかる条件でプラズマ処理すれば、内層2の外周面に、より正確に目的とする接着性官能基を導入することができる。
【0064】
[2]被覆工程
次に、内層2の外周面に、例えば、共押出成形等により中間層4および外層3を形成する。これにより、多層管状成形体1が得られる。
かかる方法によれば、内層2の外周面に、予め、接着性官能基が導入されているため、中間層4を内層2に直接かつ強固に接着することができる。
なお、中間層4および外層3を内層2の外周に被覆した後、中間層4および外層3の構成材料に応じて、内層2と中間層4との接着性をより高めるために、中間層4および外層3を加熱処理してもよい。
【0065】
さらに、多層管状成形体1は、内層2を形成した後、この内層2の外周面側に中間層4および外層3を、順次、押出成形により積層して製造することもできる。
この場合、内層2の外周面および中間層4の外周面の一方または双方は、プラズマ処理により変性されていることが好ましい。これにより、内層2と中間層4との親和性または中間層4と外層3との親和性を高め、これらの接着性をより向上させることができる。
このプラズマ処理は、上記プラズマ処理装置100を使用して、同様に行うことができる。
【0066】
以上、本発明の多層管状成形体および多層管状成形体の製造方法について説明したが、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではない。
本発明の多層管状成形体は、上述した実施形態の構成において、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。
また、本発明の多層管状成形体の製造方法は、上述した実施形態の構成において、他の任意の工程を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の工程と置換されていてよい。
【0067】
本発明の多層管状成形体は、例えば、チューブ、ホース等として使用することができる。
また、本発明の多層管状成形体は、必要に応じて、補強線材等からなる補強層や最外層を設けることにより、耐圧ホースとすることもできる。
かかる耐圧ホースの一例を
図5に示す。
図5は、耐圧ホースの構成を部分的に切り欠いて示す斜視図である。
図5に示す耐圧ホース10は、内層2、外層3および中間層4を備え、外層3の外側に補強層5および最外層6を順に備える構造を有している。
【0068】
補強層5を構成する補強線材としては、例えば、ポリエステル、ナイロン(登録商標)またはアラミド繊維等からなる複数本または単数本のブレード、細いモノフィラメント(monofilament:単繊維)を編んだマルチフィラメント、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等からなるモノフィラメント、テープ状の糸からなるフラットヤーン(またはテープヤーン)、ステンレス等からなる金属線またはステンレスに類する硬質材料からなるコイル等が挙げられる。
【0069】
このような補強線材は、外層3に沿って螺旋状に巻き付けられることで網状に形成するか、または外層3に沿ってニット編みされることで中空円筒形の網状に編み込むことが好ましい。これにより、耐圧ホース10の耐圧性能、保形性能等の物性を向上させることができる。
また、最外層6の構成材料としては、外層3との密着性が良好な樹脂材料が好ましく使用される。
【実施例1】
【0070】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各層形成用材料の調製
1-1.内層形成用材料
ポリエチレンを100質量%で含有する内層形成用材料を調製した。なお、ポリエチレンの重量平均分子量は80,000であり、内層形成用材料の融点は131℃であり、MFIは0.11g/10minであった。
1-2.外層形成用材料
ポリ塩化ビニルを55.6質量%およびDINP(可塑剤)44.4質量%で含有する外層形成用材料を調製した。なお、ポリ塩化ビニルの重量平均分子量は81,250であり、外層形成用材料の融点は135℃であった。
また、ポリ塩化ビニルおよび可塑剤には、外層5の特性を損なわない範囲で、内層2で挙げたのと同様の各種添加剤を添加してもよい。
1-3.中間層形成用材料
第1のポリオレフィンとしてスチレングラフトポリオレフィンとポリスチレンとの混合物(三菱ケミカル株式会社製、「モディックGK110」)と、第2のポリオレフィンとして無水マレイン酸変性エチレン-酢酸ビニル共重合体(三井化学株式会社製、「アドマーNF528」)とを、混合比を変更しつつ混合して、中間層形成用材料を調製した。なお、中間層形成用材料の融点は155℃であり、MFIは6.9g/10minであった。
【0071】
2.多層管状成形体の製造
(実施例1)
内層形成用材料、中間層形成用材料および外層形成用材料を溶融させ、三層押し出し機を用いて共押出して、3層構成の多層管状成形体を製造した。
なお、内層の厚さを0.3mm、中間層の厚さを0.3mm、外層の厚さを0.9mm、内径を12.4mm、外径を15.4mmとした。
また、内層形成用材料のポリエチレンのMFIは、0.11g/10minであり、中間層形成用材料の第1のポリオレフィンとしてスチレングラフトポリオレフィンとポリスチレンとの混合物(三菱ケミカル株式会社製、「モディックGK110」)と、第2のポリオレフィンとして無水マレイン酸変性エチレン-酢酸ビニル共重合体(三井化学株式会社製、「アドマーNF528」)とを質量で90:10の混合比で含む混合物のMFIは、6.9g/10minであった。
(実施例2~4)
第1のポリオレフィンと第2のポリオレフィンとの混合比が異なる中間層形成用材料を使用した以外は、実施例1と同様にして、多層管状成形体を製造した。
【0072】
(比較例1)
第2のポリオレフィンの混合を省略した中間層形成用材料(すなわち、第1のポリオレフィンを100質量%で含有する中間層形成用材料)を使用した以外は、実施例1と同様にして、多層管状成形体を製造した。
(比較例2)
第1のポリオレフィンの混合を省略した中間層形成用材料(すなわち、第2のポリオレフィンを100質量%で含有する中間層形成用材料)を使用した以外は、実施例1と同様にして、多層管状成形体を製造した。
【0073】
3.評価
3-1.耐薬品性
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびポリ塩化ビニル(PVC)について、各種薬液に対する耐性を評価した。耐薬品性の評価試験は、ポリエチレン製のサンプル、ポリプロピレン(PP)製のサンプルおよびポリ塩化ビニル製のサンプルを、それぞれ所定の温度の薬液に48時間浸漬した後、水洗し、その状態を目視で確認することにより行った。
その後、耐薬品性について、以下の評価基準に従って評価した。
[評価基準]
◎:問題なく使用可能である。
〇:若干影響を受けるが、条件により十分に使用可能である。
△:使用に際して十分に確認が必要である。
×:使用に適さない。
【0074】
この評価結果を、以下の表1に示す。
【0075】
【0076】
表1に示す結果から、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)の方が、ポリ塩化ビニル(PVC)より、いずれの薬液に対する耐性も高いことが判る。
【0077】
3-2.接着強度
各実施例および各比較例で得られた多層管状成形体を、常温中において25mm幅に切り出し、内層と外層とを引張試験機(引張速度:100mm/min)で引張剥離することにより、接着強度を測定した。
その後、接着強度について、以下の評価基準に従って評価した。
[評価基準]
◎:接着強度が40N/25mm以上である。
〇:接着強度が20N/25mm以上、40N/25mm未満である。
△:接着強度が10N/25mm以上、20N/25mm未満である。
×:接着強度が10N/25mm未満である。
【0078】
この評価結果を、以下の表2に示す。
なお、表2中には、第1のポリオレフィンおよび第2のポリオレフィンを、それぞれ「第1のPO」および「第2のPO」として示す。
【0079】
【0080】
表2に示すように、各実施例で得られた多層管状成形体は、中間層を介した内層と外層との接着強度が高かった。また、この接着強度は、第1のポリオレフィンと第2のポリオレフィンとの配合比を変化させると向上することが確認された。
これに対して、各比較例で得られた多層管状成形体は、中間層を介した内層と外層との接着強度が明らかに低かった。
なお、各実施例および各比較例で得られた多層管状成形体は、いずれも内層を備えることにより、耐熱性試験後に変形が認められず、耐熱性に優れていた。
【符号の説明】
【0081】
1 多層管状成形体
10 耐圧ホース
2 内層
3 外層
4 中間層
5 補強層
6 最外層
100 プラズマ処理装置
200 誘電体
210 内腔部
300 内部電極
310 引き出し線
320 引き出し線
330 配線
400 外部電極
410 引き出し線
420 配線
500 ガス供給部
600 交流電源
G 離間距離
P ピッチ
【要約】
【課題】高い耐薬品性および耐熱性を有し、かつ接着強度に優れる多層管状成形体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】多層管状成形体1は、ポリオレフィンを主成分として含有する内層2と、ポリ塩化ビニルを主成分として含有する外層3と、内層2と外層3との間に設けられ、内層2と外層3とを接着する機能を備え、側鎖に芳香族環を有する第1のポリオレフィンおよび側鎖にエステル含有基を有する第2のポリオレフィンを含有する中間層4とを有する。
【選択図】
図1