(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】微細気泡生成器
(51)【国際特許分類】
B01F 23/20 20220101AFI20220615BHJP
B01F 25/10 20220101ALI20220615BHJP
B01F 25/452 20220101ALI20220615BHJP
【FI】
B01F23/20
B01F25/10
B01F25/452
(21)【出願番号】P 2017030361
(22)【出願日】2017-02-21
【審査請求日】2020-01-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000154233
【氏名又は名称】株式会社富士計器
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【氏名又は名称】西山 善章
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正志
(72)【発明者】
【氏名】市澤 順一
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-209509(JP,A)
【文献】特開2008-307511(JP,A)
【文献】特開2010-240592(JP,A)
【文献】特開2015-077566(JP,A)
【文献】特開2007-050341(JP,A)
【文献】特開2015-155088(JP,A)
【文献】特開2014-004566(JP,A)
【文献】特開2010-075838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02- 4/00
B01F 21/00-35/95
B05B 1/02
C02F 1/00-1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の水圧で供給される水道水の給水管に取り付けられる微細気泡生成器であって、
水道水の流れる方向に沿って上流側に配置される取水部と下流側に配置されるノズルを備え、
前記ノズルは、前記流れる方向に沿って
入口側の第1通水路と、
中央部の頸部と、出口側の第2通水路とからなる通水路を有し、
前記第1通水路は、その入口から前記頸部へ水道水が流速を上げて流れるように、径が漸次縮小する円錐形状をなし、
前記第2通水路は、前記頸部からその出口へ前記頸部から放出された水道水が微細な気泡を発生させる急激な圧力降下を生じるように、径が漸次増大する円錐形状をなし、
前記取水部は、前記ノズルの前記第1通水路の入口側に配置された厚板からなり、前記厚板を前記流れる方向に沿って貫通する複数の取水孔を有し、
前記
複数の取水孔
のそれぞれは、
水道水
の流れる方向
に対して前記取水部の軸に対して傾斜
した斜円柱状に形成され、且つ、前記斜円柱は、水道水の入口側から出口側に向けての中間部において前記傾斜の角度をより大きくする屈曲部が形成され、
前記各取水孔の内壁
は、該取水孔を通過する水道水の乱流度を上げる多数の突起からなる凹凸
面で形成され
、
前記取水孔を通過する水道水は、
前記屈曲部により捻じれが生じた状態で前記多数の突起に衝突した後、前記取水部の軸に対して傾斜した方向に放出され、
前記放出された水道水は、前記第1通水路の前記円錐形状の内壁に対して斜め方向から衝突して前記螺旋状の旋回流となって前記頸部へ流れ込むように形成された、ことを特徴とする微細気泡生成器。
【請求項2】
前記
複数の取水孔は、
前記取水部の前記厚板の平面上で等間隔
に円状に設け
られたことを特徴とする請求項1に記載の微細気泡生成器。
【請求項3】
前記取水部の下流に複数
の前記ノズルを直列に配置したことを特徴とする請求項1
又は2に記載の微細気泡生成器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に微細気泡を含ませる微細気泡生成器に関する。
【背景技術】
【0002】
微細気泡とは、気泡の直径がおよそ100μm以下のマイクロバブルやナノバブル(直径50~500nm程度)のことであり、毛穴よりも微小な小さな泡が毛穴や汗腺の汚れを効果的に除去することができ、特に美容や健康での様々な分野で利用されている。そして、微細気泡は、これらの用途以外にも、植物の成長を促進させるなどの目的でも利用されている。
【0003】
このような微細気泡(以下、「ファインバブル」と称す)を含有する液体を発生するには、高速せん断方式、加圧圧壊方式、キャビテーション方式などが知られているが、その多くが、アスピレータ方式などで、外部から空気を吸引している。或いは、強制注入している。例えば、特許文献1には、加速手段にて加速される液体、及び気液混合手段によりケーシングに導入される気体(直径が数ミリ程度の気泡)から成る混合流体をケーシング内でキャビテーションを起こさせて、マイクロバブルを発生するマイクロバブル発生装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、入口から出口に向かいその中心軸に直交する断面積を漸減する通水用入口側の第1ノズルと、第1ノズルの出口から連通して設けられた連通路を介して連続して配設され、入口から出口に向かってその中心軸に直交する断面積を漸増する通水用出口側の第2ノズルと、前記連通路にのみ開口した隙間又は側室とを有するマイクロバブル発生装置が開示されている。この特許文献2のマイクロバブル発生装置は、外部から空気を吸入することなしに、水の中の溶存空気からキャビテーション方式によってマイクロバブルを発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-21343号公報
【文献】特開2009-136864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1によるマイクロバブル発生装置は、タンクに貯留した水を加速して行う気液混合は装置が大型化し、水道直結型の簡易なタイプが望まれる家庭用には不向きである。
【0007】
また、特許文献2によるマイクロバブル発生装置は、側室を備える連通路で急膨張した水流を第2ノズルで絞りによる減圧するために、使用するのに十分な量の水が供給できなくなることがある。そのため、そのときの水道圧の状況に応じて側室の軸流方向での幅サイズを調整しなければならない煩わしさがある。そして、このような調整機構を備えることで、ノズル全体の構成が複雑となっている。
【0008】
上記点より本発明は、家庭用への水道水の給水管に直結されて、外部から空気を導入することなしに、簡単な構造により効果的にマイクロバブルを発生することが可能な微細気泡生成器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、所定の水圧で供給される水道水の給水管に取り付けられる微細気泡生成器であって、水道水の流れる方向に沿って上流側に配置される取水部と下流側に配置されるノズルを備え、前記ノズルは、前記流れる方向に沿って入口側の第1通水路と、中央部の頸部と、出口側の第2通水路とからなる通水路を有し、前記第1通水路は、その入口から前記頸部へ水道水が流速を上げて流れるように、径が漸次縮小する円錐形状をなし、前記第2通水路は、前記頸部からその出口へ前記頸部から放出された水道水が微細な気泡を発生させる急激な圧力降下を生じるように、径が漸次増大する円錐形状をなし、前記取水部は、前記ノズルの前記第1通水路の入口側に配置された厚板からなり、前記厚板を前記流れる方向に沿って貫通する複数の取水孔を有し、前記複数の取水孔のそれぞれは、水道水の流れる方向に対して前記取水部の軸に対して傾斜した斜円柱状に形成され、且つ、前記斜円柱は、水道水の入口側から出口側に向けての中間部において前記傾斜の角度をより大きくする屈曲部が形成され、前記各取水孔の内壁は、該取水孔を通過する水道水の乱流度を上げる多数の突起からなる凹凸面で形成され、前記取水孔を通過する水道水は、前記屈曲部により捻じれが生じた状態で前記多数の突起に衝突した後、前記取水部の軸に対して傾斜した方向に放出され、前記放出された水道水は、前記第1通水路の前記円錐形状の内壁に対して斜め方向から衝突して前記螺旋状の旋回流となって前記頸部へ流れ込むように形成された、ことを特徴としている。
【0010】
ここで、前記取水孔は、円状に等間隔で複数設けるとよい。この取水孔は、同じ方向で隣の取水孔の向きに水道水を放出するよう前記傾斜を設けると更によい。
【0011】
そして、一組の前記第1通水路と前記第2通水路とを複数直列に配置することで、各ノズルでのキャビテーション発生が繰り返され、マイクロバブルの含有率が高まる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水道圧で給送される水道水は取水孔内で乱流が形成され、そして、取水孔から斜めに放出された水道水は第1通水路の内壁を旋回して流速を上げながら下流へ進み、第2通水路で拡散して放出されるため、効果的なキャビテーション由来のマイクロバブルが生成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る微細気泡生成器の側面断面図を示す。
【
図2】微細気泡生成器の(a)は上流側からの外観斜視図を示し、(b)は下流側からの外観斜視図を示す。
【
図3】(a),(b),(c)はそれぞれ微細気泡生成器の取水部の上流側からの平面図、側面図、下流側からの平面図を示す。
【
図4】ノズル内でのキャビテーション作用の模式的な説明図を示す。
【
図5】取水孔が屈曲形成された取水部の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る微細気泡生成器1の構成を側断面図で示し、水道の配水管や高架水槽等からの水を蛇口へと導く給水管2の途中に配置される。
【0015】
微細気泡生成器1は、筒体3の中に円柱形状のノズル6を配置して構成される。
図2の(a),(b)は、筒体3の上流側及び下流側からの外観を斜視図でそれぞれ示している。筒体3は断面の径が異なる第1円筒部4と第2円筒部5とから成り、径が小さい方の第1円筒部4はその外周に雄ネジ部4aを有して、給水管2の上流管部2Aに挿入されて螺合により接続され、径の大きい第2円筒部5はその内周に雌ネジ部5aを有して、挿入される給水管2の下流管部2Bの先端と螺合により接続される。そして、第1円筒部4の外周には環状のゴムパッキン7が嵌め込まれており、第1円筒部4が給水管2に挿入されたとき、上流管部2Aの環状の端面はゴムパッキン7を介在して第2円筒部5の端面と接触する。
【0016】
ノズル6は、その外径が第1円筒部4の内径と略等しく、ノズル6の一部が第1円筒部4に挿入された状態で筒体3の中に保持される。ノズル6の内部は、左右の両端から中央部に向けてそれぞれ絞り込まれた形状の通水部8が設けられている。すなわち、通水部8は、その中央部に断面の径が最小となる頸部9が形成されて、頸部9からそれぞれ左右に延びるにしたがい径が大きくなるよう略円錐状に刳り抜かれた構造となっている。よって、通水部8は、水道水の流れる方向に沿って径が漸次縮小する第1通水路8aと、第1通水路8aの出口側に連通して設けられ水道水の流れる方向に沿って径が漸次増大する第2通水路8bとで構成されている。ノズル6の入口側である第1通水路8aの最大口径は、出口側である第2通水路8bの最大口径より大きくすることが好ましいが、同じ寸法であっても或いは逆に入口が狭くても良い。
【0017】
取水部10は円形の厚板で構成されて、筒体3の中にあってノズル6の第1通水路8aの入口側に配置される。本例の取水部10には
図2に示すように、平面上に等間隔で軸方向に貫通する4個の丸孔の取水孔11を円状に穿設している。取水孔11は、設置される水道水の配管等の流量に応じて最大でも20個程度まで設けることができる。したがって、取水孔11の数が多くなるときには、円状に等間隔で配置するよりは、取水部10の平面に一様に均しく配置するのが好ましい。
【0018】
そして、
図3(b)の側面図で示すように、この取水孔11は奥行き方向の中心軸が給水管2の軸に対して傾斜するよう設けられている。よって、各取水孔11は斜円柱の形状となるため、取水孔11を通過する水道水は取水部10の軸より傾斜した方向に放出されて、上流管部2Aからの水道水流にひねりが加えられ、旋回流となって取水部10から放出されることになる。尚、
図3(b)では、取水孔11の1つだけが代表して示されている。
【0019】
このとき各取水孔11は、
図3(c)では反時計回りにて旋回流となりながら隣の取水孔11の方向へと水道水を放出するように、それぞれの傾斜が設けられている。したがって、各取水部10を通過する水道水は、矢印で示すように同一方向にひねられた旋回流となって、ノズル4の第1通水路8aへと導入する。
【0020】
さらに、取水孔11の内壁表面を凹凸面11aとすることで、水道水は乱流度を上げながら取水孔11から放出される。本例では多数の突起を設けて凹凸面11aを形成している。このように乱流度を向上させることで水道水中の溶存空気が取り出しやすくなり、ノズル4内でキャビテーション気泡が効果的に発生させることができる。
【0021】
各取水孔11から旋回流となって放出される水道水は、第1通水路8aの内壁に斜めから突き当たるため、
図4に示すように螺旋状に旋回しながら頸部9へ進む。そして、第1通水路8aは絞った構造であるため、頸部9に向けて近づくほど速度を上げ、頸部9から第2通水路8bへ放出される。
【0022】
こうして速度を増した水道水は、頸部9から高圧で吹き出されて、第2通水路8b内で拡散される。これにより急激な圧力低下が生じて、沸騰現象により水道水中には無数の微細なキャビテーション気泡が発生し、下流管部2Bへと放出される。一般的な水道水圧は1.5kgf/cm2から3kgf/cm2(0.15MPa0.3)が下限とされており、ノズル6は、一般家庭に供給されている水道水の中に含まれている空気をこの水道水圧だけで、キャビテーションにより微細化された気泡を含む水にする。この場合の理想的な水道水圧は、2.0乃至4.0kgf/cm2(0.2乃至0.39MPa)である。
【0023】
上記の実施形態においては、第1通水路8aの最大口径を第2通水路8bの最大口径より大きくしているが、同一口径として頸部9を中心に対称となる形状で構成してもよい。また、頸部9からそれぞれの最大口径部までの水平方向での寸法が異なっていてもよく、要は第1通水路8aから吹き出される水道水の圧力と、第2通水路8b内での拡散による低下する圧力との関係で、適切な量と微細気泡としての質のキャビテーション気泡が生成できればよい。
【0024】
また、取水孔11の形状を
図5に示すように、入口側から出口側に向けての形状を斜円柱ではなく、中間に屈曲部を有する形状に構成するとよい。これにより、取水孔11の中を通過する水道水の流れには捻じれが生じるために、取水孔11の内壁の凹凸面11aと相俟って乱流度が更に高まり、ノズル11内でのキャビテーション気泡の発生効果を向上させることができる。
【0025】
微細気泡生成器1は、一般家庭に供給されている水道に直結されて、水道水の中に含まれている空気を水道水の圧力だけで、キャビテーション作用でマイクロバブル化している。そして、微細気泡生成器1は、水道メーターの下流側に配置されるが、水道メーターから蛇口までの配管距離は平均で15メートル程度とされている。この場合、マイクロバブルの目視は不可能であるが、暗所におけるレーザーポインターによって被処理水にレーザーを当てて気泡からの反射光を検出することで、15メートルの配管の末端でもマイクロバブルが形成されていることが確認される。
【0026】
さらに効率良くマイクロバブルを生成するには、前段のノズル6の第2通水路8bに後段のノズル6の第1通水路8aを接続する関係で、複数のノズル6を直列に第2円筒部5の内部に配置して、キャビテーション発生を繰り返す構成にするとよい。
【符号の説明】
【0027】
1 微細気泡生成器
2 給水管
8a 第1通水路
8b 第2通水路
10 取水部
11 取水孔
11a 凹凸面