(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】入浴水改質用品およびこれを用いた入浴方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20220615BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220615BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20220615BHJP
A61H 33/02 20060101ALN20220615BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/02
A61Q19/10
A61H33/02 A
(21)【出願番号】P 2017085166
(22)【出願日】2017-04-24
【審査請求日】2019-08-28
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508141689
【氏名又は名称】株式会社宮本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【氏名又は名称】小林 均
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【氏名又は名称】林 司
(72)【発明者】
【氏名】宮本 隆
【合議体】
【審判長】森井 隆信
【審判官】井上 典之
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3105710(JP,U)
【文献】特開2014-090895(JP,A)
【文献】登録実用新案第3154748(JP,U)
【文献】特開2004-330011(JP,A)
【文献】特開2001-149940(JP,A)
【文献】栗田繕彰ほか,「還元系水素入浴剤の水素化マグネシウムの特性」,温泉科学(J.Hot Spring Sci.),2013年,63巻,2~12頁
【文献】「水素風呂が家庭で楽しめるMgパック入り入浴製品「金の美湯」販売開始」,ジャパンファインスチール株式会社,プレスリリース,2018年12月20日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の、金属マグネシウム(Mg)単体を
実質的に100重量%含有する粒子を、水を透過する網体で封入してなることを特徴とする入浴水改質用品。
【請求項2】
前記粒子の平均粒径が、1.0~9.0mmであることを特徴とする請求項
1に記載の入浴水改質用品。
【請求項3】
前記水を透過する網体が、ポリエステル繊維製であることを特徴とする請求項
1又は2に記載の入浴水改質用品。
【請求項4】
入浴水1リットルに対し、前記粒子が1~10gとなる量で投入されることを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載の入浴水改質用品。
【請求項5】
請求項1~
4いずれかに記載の入浴水改質用品を、浴槽の入浴水に投入して入浴することを特徴とする入浴方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽の入浴水に投入して入浴水を改質するために用いる入浴水改質用品およびこの入浴水改質用品を用いた入浴方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浴槽中の入浴水(以下、単に「入浴水」という。)をアルカリ性にする、入浴水に水素を含有させる等の改質を加えることにより、入浴者に健康増進効果・美容効果を与えることは従来から行われている。
【0003】
肌がすべすべになる、湯冷めしにくくなる等の温泉効果を得るために、入浴水をアルカリ性に改質する方法としては、薬剤・入浴剤を入浴水に投入する方法、陽極と陰極との間に電圧を印加する装置を用いる方法(特許文献1および2)等が知られている。
【0004】
また、入浴者の健康増進効果・美容促進効果を期待して、入浴水に水素を含有させて改質する方法としては、水素ガスを入浴水に供給する方法(特許文献3)、水の電気分解により水素含有水を生成する方法(特許文献4)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-263048号公報
【文献】特開2001-149940号公報
【文献】特許第4907254号公報
【文献】特開2016-022469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような、入浴水をアルカリ性に改質する(以下、「アルカリ改質」という。)ために、薬剤・入浴剤を浴水に投入する方法は、入浴毎に行う必要があるため、面倒かつ経済的でなく、また、特許文献1および2のような電流、電圧を用いる方法は、大がかりな装置を用いるため経済的でなく、さらに入浴者にとって危険でもある。
【0007】
また、上記のような、入浴水に水素を含有させて改質する(以下、「水素改質」という。)ために、特許文献3のような水素ガスを用いる方法や特許文献4のような電流・電圧用いる方法は、大がかりな装置を用いるため経済的でなく、さらに入浴者にとって危険でもある。
【0008】
本発明の課題は、簡単、経済的かつ安全に、アルカリ改質および水素改質を行うことのできる入浴水改質用品およびこれを用いた入浴方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、金属マグネシウム(Mg)単体が水と反応して、水素(H2)、マグネシウムイオン(Mg2+)および水酸化物イオン(OH-)が発生する反応を利用することにより、水酸化物イオン(OH-)によるアルカリ改質および水素(H2)による水素改質が簡単、経済的かつ安全に行えるばかりでなく、マグネシウムイオン(Mg2+)の作用により、入浴者に一層の健康増進効果・美容促進効果等を与えられることを見出してこの発明をなしたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、アルカリ改質および水素改質を簡単、経済的かつ安全に行うことができ、入浴者に、アルカリ改質による肌がスベスベになる、湯冷めしにくくなる等の温泉効果、水素改質による翌朝の目覚め時が爽快となる等の健康増進効果・美容促進効果を与えるだけでなく、マグネシウムイオン(Mg2+)の作用により、入浴者の皮膚の汚れ・体臭が除去できる等の一層の健康増進効果・美容促進効果を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の入浴水改質用品の第一の実施例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の入浴水改質用品の第二の実施例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2で示した入浴水改質用品から、外部網体を外した状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2で示した入浴水改質用品の上下両面に設けられている外部網体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、複数個の、金属マグネシウム(Mg)単体を50重量%以上含有する粒子を、水を透過する網体で封入してなる入浴水改質用品およびこれを用いた入浴方法に関するものである。
【0013】
金属マグネシウム(Mg)単体が水と反応して水素を発生する反応は、次の反応式で表される。
Mg+2H2O→H2+Mg2++2OH-
【0014】
この反応は、マグネシウムのイオン化傾向によって水との酸化還元反応が起こるために生じる反応であるが、マグネシウムはカルシウム、ナトリウムに比べてイオン化傾向が小さいので、マグネシウム(Mg)は入浴水(H2O)と比較的ゆっくりと反応して、水素(H2)、マグネシウムイオン(Mg2+)および水酸化物イオン(OH-)を発生する。
【0015】
そして、発生した水酸化物イオン(OH-)、水素(H2)及びマグネシウムイオン(Mg2+)により、入浴者に、次のような健康増進効果・美容促進効果を与えることができる。
1)水酸化物イオン(OH-)で入浴水がアルカリ改質されることにより、入浴者に肌がスベスベになる、湯冷めしにくくなる等の健康増進効果・美容促進効果を与えることができる。
2)水素(H2)で入浴水が水素改質されることにより、入浴者に翌朝の目覚め時が爽快となる等の健康増進効果・美容促進効果を与えることができる。
3)マグネシウムイオン(Mg2+)の作用により、入浴者の皮膚の汚れ・体臭が除去できる等の一層の健康増進効果・美容促進効果を与えることができる。
【0016】
上記1)のアルカリ改質による健康増進効果・美容促進効果は、特許文献1にも記載されているように、アルカリ単純温泉で知られているような温泉効果である。
上記2)の水素改質による健康増進効果・美容促進効果は、特許文献3にも記載されているように、分子状水素ガスを溶解させた水素水の、生体中の活性酸素および/またはフリーラジカルを除去する効果によるものである。
【0017】
本発明では、上記1)のアルカリ改質および上記2)の水素改質による健康増進効果・美容促進効果を簡単、経済的かつ安全に入浴者に与えられるだけでなく、上記3)のマグネシウムイオン(Mg2+)の作用による優れた効果を奏するものである。
【0018】
上記3)の効果について説明する。
まず、マグネシウムイオン(Mg2+)の作用により、入浴者の皮膚の汚れ・体臭を除去することができる。石鹸、ボディソープ等の界面活性剤を使用して体を洗浄すると、皮膚の汚れと共に油脂も除かれるため、皮膚が乾燥したり、カサカサすることとなるが、マグネシウムイオン(Mg2+)の作用により入浴者の皮膚の汚れ・体臭が除去できるため、石鹸、ボディソープ等の界面活性剤を使用して体を洗浄する必要がなくなる。
【0019】
さらに、入浴水には水道水の残留塩素が含まれており、これにより皮膚が過敏な者は痒みを感じることがあるが、マグネシウムイオン(Mg2+)にはこの残留塩素を除去する作用があるため(Mg2++2Cl-→MgCl2)、水道水の残留塩素に伴う問題を解決することができる。
また、マグネシウムイオン(Mg2+)には、除菌・洗浄・消臭効果があることから、浴室のカビ防止、浴槽、排水溝等の汚れ、臭い等を防止できるという効果も生じる。
【0020】
本発明の入浴水改質用品に用いられるマグネシウム粒子の組成としては、上記のように、金属マグネシウム(Mg)単体は室温の水と比較的ゆっくりと反応して水素を発生することから、水素(H2)、マグネシウムイオン(Mg2+)および水酸化物イオン(OH-)の発生量を多くするために、金属マグネシウム(Mg)単体を比較的高い割合で含有するものが好ましい。
【0021】
本発明の「金属マグネシウム(Mg)単体を50重量%以上含有する粒子」とは、金属マグネシウム(Mg)単体を比較的高い割合で含有する粒子を意味しており、具体的には、金属マグネシウム(Mg)単体を50重量%以上含有するものであり、80重量%以上含有するものが好ましく、実質的に100重量%含有するものがより好ましい(この「実質的に」とは、「現在一般に知られており、現場の生産ベースで採用される精製手段によっては、除去しきれない不純物を、マグネシウム粒子の成分からは除外して考えた場合」を意味する。)。
【0022】
マグネシウム粒子が含有することができる、主成分の金属マグネシウム(Mg)単体以外の成分としては、
1)マグネシウム鉱石が含有していたり、マグネシウムの精錬、加工などの工程で随伴してくる、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)などの不純物
2)水素発生に伴う作用、並びに入浴水を弱アルカリ性にする作用を阻害しない物質
が挙げられる。
【0023】
本発明の入浴水改質用品に用いられるマグネシウム粒子の平均粒径は、単位体積当たりの表面積を大きくして水素の発生量多くする観点からは小さいほど好ましいが、小さくするにしたがい粒子の強度が低下し、取り扱いも難しくなるため、製造および使用上の観点から、平均粒径は1.0~9.0mmであることが好ましく、3.0~7.0mmであることがより好ましく、4.0~6.0mmであることが最も好ましい。
【0024】
本発明の入浴水改質用品は、複数個のマグネシウム粒子を、水を透過する網体で封入したものであるので、使用時には浴槽に入れやすく、使用後には浴槽から取り出しやすいものとなっている。
【0025】
この網体の素材は、耐水性があるものであれば、各種天然繊維、合成繊維を用いることができるが、強度が高く、使用後の乾燥が容易で、洗濯時に着色傾向の小さいポリエステル繊維を用いることが好ましい。
【0026】
この網体自体の織り方としては、水を透過するものであれば各種の織り方が採用できる。また、網体によるマグネシウム粒子の封入手段としては、マグネシウム粒子が漏れ出さないものであれば各種の封入手段が採用できるが、入浴に繰り返し使用しても、網体に穴が開いたり、縫製部が解けないよう、網体を複数層にする、縫製部に補強布を縫い付けることが好ましい。また、網体に取手を取り付けておけば、使用後に浴槽から取り出したり、乾燥したりする場合に便利である。
【0027】
本発明の入浴水改質用品は、入浴前または入浴時に、浴槽内の入浴水に投入して用いられる。水素(H2)、マグネシウムイオン(Mg2+)および水酸化物イオン(OH-)を十分に発生させるためには、少なくとも入浴の10分前に入浴水に入浴水改質用品を投入しておくのが好ましい。
【0028】
入浴水に対するマグネシウム粒子の投入量を多くするほど、水素(H2)、マグネシウムイオン(Mg2+)および水酸化物イオン(OH-)の時間当たりの発生量を増やすことができるが、実用上および経済的観点から、入浴水1L当たり1~10g程度のマグネシウム粒子を投入することが好ましい。
【0029】
本発明の入浴水改質用品は、マグネシウム粒子が消費されて無くなってしまうまで、何度も繰り返し入浴に使用することができる。
本発明の入浴水改質用品に用いられるマグネシウム粒子は、溶融したマグネシウムを水中に滴下することなどにより、製造することができる。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例をあげて本発明を説明する。なお、本発明は、以下で説明する具体例に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
【0031】
図1に示す入浴水改質用品の第一の実施例は、網袋2内に複数個のマグネシウム粒子1を封入したものである。
【0032】
この入浴水改質用品は次の手順で作製される。
1)1枚の長方形状の網体を長手方向に中央部で折り重ねる。
2)2つの辺を縫製して網袋2を形成する(縫目は図示していない)。
3)縫製していない辺を開き、その開口から袋体に複数個のマグネシウム粒子1を網袋2内に入れる。
4)本体の開口部を縫製して(これにより網袋の縫目6が形成される)、複数個のマグネシウム粒子1を網袋2内に封入する。
【0033】
次に、
図2に示す入浴水改質用品の第二の実施例は、網袋を2層(内部網体3および外部網体4)にして補強することにより、封入したマグネシウム粒子1が漏れ出しにくくしたものである。
【0034】
この入浴水改質用品は次の手順で作製される。
1)2枚の長方形の内部網体3の間に複数個のマグネシウム粒子1を配した後、内部網体3の縁部を縫製する(これにより内部網体の縫目7が形成される)。
2)2枚の、内部網体3よりも大きな長方形の外部網体4を、上記1)で作製した物の上下に重ねる。
3)外部網体縁部を縫製する(これにより縫目8が形成される)。
【0035】
[製造例]
本発明の入浴水改質用品を以下のようにして製造した。
<マグネシウム粒子の製造>
溶融した金属マグネシウム(Mg)単体を水中に投入してマグネシウム粒子を製造し、篩い分けして、直径が4.8~5.3mmの範囲、平均重量が約0.14gの略球状のマグネシウム粒子を得た。
このマグネシウム粒子の成分を分析した結果は、次のとおりであった。
マグネシウム(Mg) 99.950重量%、 鉄(Fe) 0.015重量%、
アルミニウム(Al) 0.022重量%、 鉛(Zn) 0.010重量%、
その他 0.003重量%
【0036】
<入浴水改質用品の製造>
上で得られたマグネシウム粒子1,000g(約7,200個)を用いて、第二の実施例(
図2)の入浴水改質用品(以下、「改質用品」という。)を製造した。この改質用品は、縦16cm、横27cm、厚さ3cm程度の略直方体形状であり、内部網体、外部網体はポリエステル製である。
【0037】
<改質用品を用いた入浴テスト>
本願発明の効果([1]肌のスベスベ感、[2]湯冷めのしにくさ、[3]汚れ・体臭の除去、[4]翌朝目覚め時の爽快感)を確認するため、10人のテスターにこの改質用品を貸与して以下の条件でテスト(以下、「入浴テスト」という。)を行った。
〇各テスターは、3日間連続して、改質用品を浴槽の入浴水に投入して、入浴テストを行う。
〇改質用品は入浴の10分前に、浴槽の入浴水に投入する。
〇入浴テストは、各テスターの通常の入浴法(入浴時間、浴槽に浸かる時間・回数、入浴水温度など)で行う。ただし、入浴テストでは、石鹸、ボディソープ等の界面活性剤で身体を洗浄しないこととする。
〇上記[1]~[4]の効果の評価は、今回の入浴法を、通常の入浴法と比較した感触が、次の5つのどれに該当するかを選択することにより行う。
*評価A:通常の入浴法より優れる
*評価B:通常の入浴法よりやや優れる
*評価C:通常の入浴法と変わらない
*評価D:通常の入浴法よりやや劣る
*評価E:通常の入浴法より劣る
【0038】
<入浴テストの評価結果>
入浴テストの評価結果を、下記表1にまとめた。
【0039】
【0040】
この入浴テストの結果から、本発明の入浴水改質用品を浴槽の入浴水に投入して行った入浴法は、[1]肌のスベスベ感、[2]湯冷めのしにくさ、[3]汚れ・体臭の除去、および[4]翌朝目覚め時の爽快感の効果において、これを用いない通常の入浴法に比べ、優れていることがわかる。
【0041】
また、この入浴テストでは、上記[1]~[4]以外にも、風呂場のマットに黒カビが生えなくなった、入浴水を用いて洗髪すると髪がサラサラになった、乾燥肌・アカギレ・皮膚の炎症が治った等の効果・効能も報告された。
【符号の説明】
【0042】
1: マグネシウム粒子
2: 網袋
3: 内部網体
4: 外部網体
6: 網袋の縫目
7: 内部網体の縫目
8: 縫目