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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220615BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220615BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220615BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20220615BHJP
   B32B 3/10 20060101ALI20220615BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20220615BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
B32B27/00 M
B32B3/30
B32B3/10
C09J7/24
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017134481
(22)【出願日】2017-07-10
(65)【公開番号】P2018021181
(43)【公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2016142776
(32)【優先日】2016-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 健史
(72)【発明者】
【氏名】山本 康徳
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-150389(JP,A)
【文献】登録実用新案第3185524(JP,U)
【文献】特開2010-058975(JP,A)
【文献】特開2008-115259(JP,A)
【文献】実開平02-085137(JP,U)
【文献】特開平10-291376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0197434(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0061802(US,A1)
【文献】特開2001-277757(JP,A)
【文献】登録実用新案第3101717(JP,U)
【文献】特開2001-143043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と該基材の一方の面上に配置された粘着剤層とを含む粘着シートであって、
前記粘着シートは、被着体に貼り付けられて該被着体を保護する保護シート部と、前記保護シート部を囲む切取り予定線によって該保護シート部と区画されたマージン部とを含み、かつ前記切取り予定線に沿って設けられた破断補助構造を備えており、
前記基材は樹脂フィルムを主構成要素として含み、
前記粘着シートは長尺状であってロール状に巻回されており、該粘着シートの長手方向に配列された複数の保護シート部を含み、
前記粘着シートは、分割予定線で仕切られた複数の貼付けブロックを含み、各貼付けブロックは少なくとも一つの前記保護シート部と該保護シート部を囲む前記マージン部とを含み、
前記保護シート部を被着体に貼り付けた後に該被着体から前記粘着シートを剥がす方向に前記マージン部を引っ張ることにより前記マージン部が前記保護シート部から切り取られるように構成されている、粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層の表面が前記基材の他方の面に剥離可能に当接している、請求項に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記破断補助構造は、切れ目および溝の少なくとも一方を含む、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
基材と該基材の一方の面上に配置された粘着剤層とを含む粘着シートであって、
前記粘着シートは、被着体に貼り付けられて該被着体を保護する保護シート部と、前記保護シート部を囲む切取り予定線によって該保護シート部と区画されたマージン部とを含み、かつ前記切取り予定線に沿って設けられた破断補助構造を備えており、
前記基材は樹脂フィルムを主構成要素として含み、
前記保護シート部の180度剥離強度が3N/25mm以上であり、
前記保護シート部を被着体に貼り付けた後に該被着体から前記粘着シートを剥がす方向に前記マージン部を引っ張ることにより前記マージン部が前記保護シート部から切り取られるように構成されており、
前記破断補助構造は、前記切取り予定線に沿って延びる溝を少なくとも含む、粘着シート。
【請求項5】
前記基材のうち前記溝の底を構成する樹脂材料の引張弾性率が300MPa以上である、請求項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記基材は、前記樹脂フィルムとしてポリオレフィン系樹脂フィルムを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
基材と該基材の一方の面上に配置された粘着剤層とを含む粘着シートであって、
前記粘着シートは、被着体に貼り付けられて該被着体を保護する保護シート部と、前記保護シート部を囲む切取り予定線によって該保護シート部と区画されたマージン部とを含み、かつ前記切取り予定線に沿って設けられた破断補助構造を備えており、
前記基材は樹脂フィルムを主構成要素として含み、
前記保護シート部の180度剥離強度が3N/25mm以上であり、
前記保護シート部を被着体に貼り付けた後に該被着体から前記粘着シートを剥がす方向に前記マージン部を引っ張ることにより前記マージン部が前記保護シート部から切り取られるように構成されており、
前記マージン部には、前記粘着シートの位置決めをアシストする位置決め補助部が設けられている、粘着シート。
【請求項8】
前記被着体は車両を構成する部材である、請求項1から7のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項9】
基材と該基材の一方の面上に配置された粘着剤層とを含む粘着シートであって、
前記粘着シートは、被着体に貼り付けられて該被着体を保護する保護シート部と、前記保護シート部を囲む切取り予定線によって該保護シート部と区画されたマージン部とを含み、かつ前記切取り予定線に沿って設けられた破断補助構造を備えており、
前記基材は樹脂フィルムを主構成要素として含み、
前記保護シート部の180度剥離強度が3N/25mm以上であり、
前記保護シート部を被着体に貼り付けた後に該被着体から前記粘着シートを剥がす方向に前記マージン部を引っ張ることにより前記マージン部が前記保護シート部から切り取られるように構成されており、
前記被着体は車両を構成する部材である、粘着シート。
【請求項10】
部材の表面に保護シートが貼り付けられた保護シート付き部材を製造する方法であって:
請求項1から9のいずれか一項に記載の粘着シートを用意すること;
前記保護シート部を前記部材に貼り付けること;および、
前記部材から前記粘着シートを剥がす方向に前記マージン部を引っ張ることにより、前記保護シート部を前記部材上に残して該保護シート部から前記マージン部を切り取ること;
を包含する、保護シート付き部材の製造方法。
【請求項11】
部材の表面に保護シートを貼り付ける方法であって、
請求項1から9のいずれか一項に記載の粘着シートを用意すること;
前記保護シート部を前記部材に貼り付けること;および、
前記部材から前記粘着シートを剥がす方向に前記マージン部を引っ張ることにより、前記保護シート部を前記部材上に残して該保護シート部から前記マージン部を切り取ること;
を包含する、保護シートの貼付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関し、詳しくは、被着体に貼り付けられて該被着体を保護する保護シート部を含む粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
金属板や塗装鋼板、合成樹脂板等の表面を傷や汚れ等の損傷から防止する目的で、該表面に保護シートを接着して保護する技術が知られている。このような保護シートは、一般に、樹脂フィルム等により構成されたシート状の基材の片面に粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)を有し、その粘着剤を介して被着体(保護対象物)に接着されることにより該被着体の表面を覆って保護目的を達成し得るように構成されている。保護シートに関する技術文献として、特許文献1,2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5203593号公報
【文献】特開2007-50622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保護シートは、一般に、保護対象物のうち保護を目的とする領域(保護対象領域)に見合った外形を有していることが望ましい。この点に関し、特許文献1には、断続的な切り込みの内側に形成された接着用シートとその外側に位置する不要シート部分とを備え、不要シート部分を幅方向に引っ張ることにより接着用シートと不要シート部分とを分離可能な貼付用シートが記載されている。しかし、特許文献1に記載の技術では、分離された接着用シートの外形精度が低く、あるいは外形精度が不安定になりがちである。また、特許文献2には、車両被覆部とその片端に延設された変形防止部との隣接位置に切断用のミシン目が設けられている車両保護フィルム積層体が記載されているが、該車両保護フィルム積層体はあらかじめ所定部位の形状に合わせてカットされているため、外周端面に塵埃等が付着しやすく、また被着体への貼付け作業時に作業者の手指等が車両被覆部の粘着面に直に触れる事態が生じやすいので粘着面が汚染されやすいという不都合がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、保護対象物の表面に外形精度のよい保護シートを効率よく設置し得る粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書によると、基材と該基材の一方の面上に配置された粘着剤層とを含む粘着シートが提供される。上記粘着シートは、被着体に貼り付けられて該被着体を保護する保護シート部と、上記保護シート部を囲む切取り予定線によって該保護シート部と区画されたマージン部とを含む。上記粘着シートは、また、上記切取り予定線に沿って設けられた破断補助構造を備えている。上記基材は樹脂フィルムを主構成要素として含む。上記粘着シートは、上記保護シート部を被着体に貼り付けた後に該被着体から上記粘着シートを剥がす方向に上記マージン部を引っ張ることにより、上記マージン部が上記保護シート部から切り取られるように構成されている。
【0007】
上記構成の粘着シートにおいて、保護シート部は、被着体の保護に用いられる領域であって、マージン部を切り取ることにより独立した保護シートを形成する領域である。上記粘着シートによると、保護シート部を被着体に貼り付けた後に該被着体から該粘着シートを剥がす方向にマージン部(保護シート部を囲む周辺領域)を引っ張るという簡単な操作によって、マージン部の切取りを精度よく行うことができる。したがって、被着体表面に外形精度のよい保護シートが貼り付けられた状態を効率よく実現することができる。また、保護シート部の周囲にマージン部が設けられているので、貼付け作業者は、必要に応じて粘着シートのマージン部を掴んで位置合わせや貼り直し等を行うことができる。したがって、保護シート部の粘着面に作業者の手指等が直に触れる事態を回避し、該粘着面の汚染による保護性能の低下を防ぐことができる。保護シート部がマージン部で囲まれていることは、使用前の粘着シートにおいて保護シート部の外周端面への塵埃等の付着を防止する観点からも好ましい。
【0008】
好ましい一態様に係る粘着シートは、粘着剤層の表面(粘着面)が該粘着シートの背面(粘着面とは反対側の面であり、典型的には基材の他方の面を兼ねる。)に剥離可能に当接することで該粘着面が保護された形態であり得る。このように構成することにより、粘着シートとは別体の剥離ライナーを含まない形態とすることができる。かかる形態の粘着シートは、被着体への貼付け時に粘着シートから剥離ライナーを分離除去する必要がないので作業性がよく、廃棄物低減の観点からも好ましい。
なお、粘着面が粘着シートの背面に剥離可能に当接している形態の具体例としては、一の粘着シートの粘着面を他の一の粘着シートの背面に当接させて複数枚の粘着シートが積み重なっている形態(積層形態)や、長尺状の粘着シートが粘着面を背面に当接させてロール状に巻回されている形態(ロール形態)等が挙げられる。
【0009】
好ましい一態様に係る粘着シートは、長尺状であって、ロール状に巻回されており、該粘着シートの長手方向に配列された複数の保護シート部を含む。このように構成された粘着シートは、必要な長さをロール形態から巻き出し、保護シート部を被着体に貼り付けてマージン部を切り取る操作を繰り返すことにより、複数の被着体に効率よくかつ精度よく保護シートを設置することができる。
【0010】
ここに開示される粘着シートは、上記破断補助構造として切れ目および溝の少なくとも一方を含むことが好ましい。このことによって、保護シート部からのマージン部の切取りを容易に精度よく行うことが可能となる。
【0011】
好ましい一態様において、上記破断補助構造は、上記切取り予定線に沿って延びる溝を少なくとも含む。このような溝を有することにより、保護シート部が被着体に貼り付けられた粘着シートを剥離方向に引っ張る際に上記溝に沿って粘着シートがその厚さ方向に精度よく引き裂かれ、外周部の外観のよい保護シートが形成される傾向にある。
【0012】
破断補助構造が溝を含む態様において、上記基材のうち上記溝の底を構成する樹脂材料の引張弾性率は300MPa以上であることが好ましい。これにより、該溝に沿って粘着シートをよりシャープに引き裂くことができ、保護シートの外形精度および外観品質が向上する傾向にある。
【0013】
ここに開示される粘着シートの一態様において、基材としては、ポリオレフィン系樹脂フィルムを含んで構成された基材を好ましく採用し得る。これにより、粘着シートの曲面追従性が向上する傾向にある。
【0014】
ここに開示される粘着シートは、上記保護シート部が3N/25mm以上の180度剥離強度を示すことが好ましい。上記剥離強度が所定以上であることにより、保護シート部を被着体に貼り付けてマージン部を剥離方向に引っ張って切り取る操作を安定して行うことができる。これにより、マージン部の切取り作業性や切取り精度が向上し得る。
【0015】
ここに開示される粘着シートは、分割予定線で仕切られた複数の貼付けブロックを含み得る。ここで、各貼付けブロックは、少なくとも一つの上記保護シート部と、該保護シート部を囲む上記マージン部とを含む。このように構成された粘着シートを用いて、貼付けブロック単位で被着体への貼付けおよび切取りを行うことにより、複数の被着体に効率よくかつ精度よく保護シートを設置することができる。
【0016】
ロール状に巻回された長尺状の粘着シートにおいて、上記複数の貼付けブロックは、上記粘着シートを幅方向に横断するように設定された分割予定線を介して、該粘着シートの長手方向に配列され得る。このように構成された粘着シートは、例えば、一の貼付けブロックに対応する長さをロール形態から巻き出し、保護シート部を被着体に貼り付けた後または貼り付ける前に上記分割予定線に沿って上記一の貼付けブロックを次の貼付けブロックから切り離した後、上記保護シート部からマージン部を切り取る操作を繰り返すことにより、複数の被着体に効率よくかつ精度よく保護シートを設置することができる。
【0017】
ここに開示される粘着シートには、該粘着シートの位置決めをアシストする位置決め補助部を設けることができる。このことによって、被着体と保護シート部との位置合わせを効率よく行うことができ、作業性を向上させることができる。好ましい一態様において、上記位置決め補助部は、粘着シートの上記マージン部に設けることができる。このようにマージン部を利用して位置決め補助部を設けることにより、保護シート部の性能への影響を抑えつつ位置決め作業性を向上させることができる。
【0018】
この明細書によると、部材の表面に保護シートが貼り付けられた保護シート付き部材を製造する方法が提供される。その製造方法は、樹脂フィルムを主構成要素とする基材と、該基材の一方の面上に配置された粘着剤層と、を含む粘着シートを用意することを含む。上記粘着シートは、被着体に貼り付けられて該被着体を保護する保護シート部と、上記保護シート部を囲む切取り予定線により該保護シート部と区画されたマージン部とを含み、かつ上記切取り予定線に沿って設けられた破断補助構造を備えている。上記製造方法は、また、上記保護シート部を上記部材に貼り付けることと、上記部材から上記粘着シートを剥がす方向に上記マージン部を引っ張ることにより上記保護シート部を上記部材上に残して該保護シート部から上記マージン部を切り取ることとを含む。かかる製造方法によると、上記保護シート部により構成された保護シートを部材の表面に精度よくかつ効率よく貼り付けることができる。したがって、高品質の保護シート付き部材を生産性よく製造することができる。
【0019】
この明細書によると、部材の表面に保護シートを貼り付ける方法が提供される。その貼付け方法は、樹脂フィルムを主構成要素とする基材と、該基材の一方の面上に配置された粘着剤層と、を含む粘着シートを用意することを含む。上記粘着シートは、被着体に貼り付けられて該被着体を保護する保護シート部と、上記保護シート部を囲む切取り予定線により該保護シート部と区画されたマージン部とを含み、かつ上記切取り予定線に沿って設けられた破断補助構造を備えている。上記貼付け方法は、また、上記保護シート部を上記部材に貼り付けることと、上記部材から上記粘着シートを剥がす方向に上記マージン部を引っ張ることにより上記保護シート部を上記部材上に残して該保護シート部から上記マージン部を切り取ることとを含む。かかる貼付け方法によると、上記保護シート部により構成された保護シートを部材の表面に精度よくかつ効率よく貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係る粘着シートの使用方法を例示する説明図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】一実施形態に係る粘着シートの使用方法を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0022】
ここに開示される粘着シートの一形態につき、図面を参照しながら説明する。
図1に示す粘着シート1は、被着体(保護対象物)90に貼り付けられて該被着体90を保護する保護シート部2と、保護シート部2を囲む切取り予定線3によって保護シート部2と区画されたマージン部4とを含む。保護シート部2は、被着体90のうち保護対象領域に対応する形状(図1に示す例では、長方形板状の被着体90の上面形状と一致する長方形状)を有している。粘着シート1は、切取り予定線3に沿って保護シート部2からマージン部4を切り取る(切り離す)ことにより、上記保護対象領域に対応する外周形状を有する独立した保護シートが形成されるようになっている。なお、この明細書において、切取り予定線が保護シート部を囲むとは、該保護シート部から形成される保護シートの外周長さの半分以上(典型的には外周長さの60%以上、例えば75%以上)が切取り予定線を介してマージン部と隣接していることをいう。したがって、ここに開示される粘着シートは、図1に示す粘着シート1のように保護シート部2の全周が切取り予定線3で囲まれた形態に限定されず、例えば、長方形状の保護シート部のうち三辺が切取り予定線を介してマージン部で囲まれ、残りの一辺は粘着シートの外端により構成された形態であってもよい。また、上記残りの一辺が後述する貼付けブロック間を仕切る分割予定線となっていてもよい。すなわち、切取り予定線の一部が上記分割予定線を兼ねていてもよい。好ましい一態様では、保護シート部の全周が切取り予定線で囲まれている。
【0023】
粘着シート1は、基材10と、その一方の面10A上に配置された粘着剤層50とを含む。基材10の他方の面(背面)10Bは剥離面となっている。基材10は、単層または多層(二層以上)の樹脂フィルムを主構成要素として含む。多層の樹脂フィルムとしては、図2に示すように、基材10の一方の面10Aを構成する前面層12と、基材の背面10Bを構成する背面層16と、それらの間に配置された中間層14と、を有する三層構造の樹脂フィルムを好ましく採用し得る。粘着剤層50は、典型的には連続的に形成されるが、目的や用途によっては点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成されてもよい。また、粘着剤層50は、少なくとも保護シート部2の一部(典型的には、保護シート部2の外周に沿う環状部分)に設けられていればよく、マージン部4の一部または全体には粘着剤層50が設けられていなくてもよい。粘着シート1の生産性の観点から好ましい一態様として、基材10の一方の面10Aの全範囲に粘着剤層50が設けられている態様が挙げられる。好ましい他の一態様として、基材10の一方の面10Aにおいて保護シート部2の全範囲およびマージン部4のうち保護シート部2に隣接する範囲に粘着剤層50が設けられ、マージン部4のうち基材10の長手方向の一端または両端に沿う帯状部分には粘着剤層50が設けられない態様が挙げられる。
【0024】
粘着シート1は、切取り予定線3に沿って、すなわち切取り予定線3の線上に設けられた破断補助構造30を備えている。これにより、保護シート部2が被着体に貼り付けられた粘着シート1のマージン部4を剥離方向に引っ張ると、切取り予定線3に沿って粘着シート1が厚さ方向に破断してマージン部4が保護シート部2から切り取られ、残った保護シート部2によって上記被着体上で保護シートが形成されるようになっている。図1に示す例では、破断補助構造30は、ミシン目32、スリット34および溝36の組合せにより構成されている。ここで、ミシン目32およびスリット34は、基材10を貫通する切れ目である。溝36は、基材10を貫通しない深さの窪みであって、基材10の一方の面10A側に設けられていてもよく、他方の面(背面)10B側に設けられていてもよく、両側に設けられていてもよい。図1に示す例では、溝36は、基材10の他方の面10B側から該基材10の厚さの概ね3/4に至るまで加工刃を進入させることにより形成された刻み目であって、これは極めて細いV字状の溝としても把握され得る。
【0025】
図1に示す例において、破断補助構造30を構成するミシン目32、スリット34および溝36の具体的配置は次のとおりである。すなわち、長方形状の切取り予定線3のうち、短辺3A,3Cの全長にわたってミシン目32が形成されている。また、長辺3B,3Dでは、それぞれ、両端にスリット34が設けられ、それらのスリット34の端部を結ぶように溝36が形成されている。これにより、切取り予定線3の長辺3Bに沿う断面は、図2に示すように、長辺3Bの両端では保護シート部2とマージン部4との間に基材10を貫通するスリット34が設けられ、スリット34の間では溝36の底36Aにより保護シート部2とマージン部4とが繋がった構造となっている。長辺3Dに沿う断面も同様の構造を有する。粘着シート1の保護シート部2とマージン部4とは、溝36の底36Aおよび短辺3A,3Cに配置されたミシン目32の間において繋がっている。
【0026】
図1に示す粘着シート1は、長尺状であって、粘着剤層50の表面(粘着面)1Aを基材10の背面10B(この実施形態では、粘着シート1の背面1Bを兼ねる。)に剥離可能に当接させてロール状に巻回されることにより、粘着シートロール100を構成している。すなわち、粘着シートロール100は、粘着シート1とは別体の剥離ライナーを含まない。このように剥離ライナーを含まない粘着シートロール100では、該粘着シートロール100から粘着シート1を繰り出すことにより粘着面1Aが基材の背面10Bから離れて露出する。したがって、粘着シート1の繰り出しとは別に剥離ライナーを除去して粘着面1Aを露出させる操作が不要となり、粘着シート1の貼付け作業性が向上する。また、粘着シートロール100が剥離ライナーを含まないことは、粘着シートロール100の軽量化による作業者の負担軽減や、粘着シート1の長尺化による粘着シートロール100の交換頻度低減の観点からも好ましい。また、資源の節約の観点からも好ましい。
【0027】
粘着シートロール100を構成する粘着シート1は、該粘着シート1の長手方向に配列された複数の貼付けブロックを含む。図1には、粘着シート1の巻回外周端側から2つの貼付けブロック100A,100Bを示している。上述した保護シート部2およびマージン部4は、各貼付けブロック毎に形成されている。このように構成された粘着シート1によると、貼付けブロック単位で保護シート部2の貼付けおよびマージン部4の切取りを行うことにより、保護シート部2により構成された保護シートを効率よくかつ精度よく被着体90の表面に配置することができる。なお、図1には一の貼り付けブロックに一の保護シート部が含まれる構成を例示しているが、これに限定されず、一の貼付けブロックに二以上の保護シート部が含まれるように構成してもよい。
【0028】
各貼付けブロックの間には、粘着シート1を幅方向に横切る分割予定線102が設定されている。この分割予定線102に沿って適切なタイミングで粘着シート1を切断することにより、貼付けブロック単位での保護シート部2の貼付けおよびマージン部4の切取りの作業性を向上させることができる。粘着シート1には、分割予定線102に沿って分割補助構造120が設けられていることが好ましい。この分割補助構造120により、カッター等の切断器具を使用しなくても各貼付けブロックを分割予定線102に沿って切り離し得るようになっている。分割補助構造120は、例えば、破断補助構造30と同様のミシン目、スリット、溝、およびこれらの組合せにより構成され得る。図1に示す例では、分割予定線102の全長にわたって形成されたミシン目によって分割補助構造120が構成されている。なお、このような分割補助構造を設けず、適切な切断器具を用いて貼付けブロック間の切り離しを行うようにしてもよい。
【0029】
貼付けブロック100A,100Bの各マージン部4には、保護シート部2の被着体90に対する位置決めに役立つ位置決め補助部42が形成されている。図1に示す例では、位置決め補助部42は略円形の貫通孔であって、例えば被着体90に対して所定の位置に配置された円柱状の位置決め治具(図示せず)を上記貫通孔に通すことで保護シート部2と被着体90との位置合わせを容易化し得るようになっている。なお、図1に示す例ではマージン部4のうち保護シート部2より先端側(巻回外周端側)であって粘着シート1の幅方向の両端付近にそれぞれ1つ(合計2つ)の位置決め補助部42を配置しているが、位置決め補助部42の配置および数はこれに限定されない。
【0030】
このように構成された粘着シート1は、例えば以下のようにして好適に用いることができる。すなわち、図1に示すように、粘着シートロール100から1回分の貼付けブロックを繰り出し、粘着シート1の先端に位置する貼付けブロック100Aが、被着体90の上面(保護対象面)との間に若干の間隔をあけて、該被着体90の上方に張り渡されるようにする。被着体90は、例えば、自動車の構成部材(例えば、車体の外装板やピラー)であり得る。貼付けブロック100Aの位置決め補助部42を図示しない位置決め治具にセットすることにより、被着体(部材)90と保護シート部2との位置合わせを行う。このとき、必要に応じてマージン部4を掴んで位置の修正または微調整を行ってもよい。そして、保護シート部2を被着体90に貼り付ける。特に限定するものではないが、この貼付け操作は、例えば保護シート部2の前端(図1における手前側、すなわち粘着シート1の先端側)から後端側に向かって保護シート部2の被着体90への圧着が進行するように行うことができる。保護シート部の圧着は、必要に応じてスキージ等の貼付け具を用いて行うことができる。
【0031】
保護シート部2を被着体90に貼り付けた後、貼付けブロック100Aと貼付けブロック100Bとを仕切る分割予定線102に沿って粘着シート1を切断する。これにより貼付けブロック100Aを残りの粘着シート1から切り離す。そして、図3に示すように、粘着シート1(ここでは貼付けブロック100A)を被着体90から剥がす方向にマージン部4を引っ張ることにより、保護シート部2の被着体90に対する粘着力および破断補助構造30を利用して、保護シート2を被着体90上に残してマージン部4を切取り予定線3に沿って切り取る。残された保護シート2によって被着体90を保護する保護シートが構成される。このようにして、保護シートが表面に設置された被着体90(保護シート付き部材)を得ることができる。
【0032】
その後、新たな被着体90をセットし、粘着シートロール100から次の1回分の貼付けブロックを繰り出し、粘着シート1の先端に位置する貼付けブロック100Bを用いて上述した貼付けブロック100Aと同様に被着体90の表面に保護シートを設置する。これを繰り返すことにより、粘着シートロール100を用いて複数の被着体90に効率よく保護シートを設置することができる。
【0033】
なお、粘着シート1を被着体90から剥がす方向(典型的には、被着体90の表面に対して正の角度をなす方向)にマージン部4を引っ張るにあたり、その引張り角度(引張り方向と被着体90の表面とのなす角度)は、保護シート部2を被着体90上に残してマージン部4を切取り得る角度であればよく、特に限定されない。上記引張り角度は、例えば、被着体90の表面に対して30度以上(好ましくは45度以上)の角度とすることができる。上記引っ張りによる保護シート部2の浮き上がりを抑制する観点から、上記引張り角度は、通常、60度以上とすることが適当である。切取り予定線3に沿って粘着シート1を効率よく破断(典型的には、粘着シート1の厚さ方向への破断)させて切取り精度を向上させる観点から、上記引張り角度は、90度以上(例えば90度を超える角度)とすることが好ましく、105度以上、さらには120度以上(例えば135度以上)としてもよい。引張り角度の上限は特に制限されないが、作業性の観点から、通常は180度未満(例えば160度以下)とすることが適当である。
【0034】
特に限定するものではないが、マージン部4を引っ張る方向は、保護シート部2の長手方向に概ね沿う方向(例えば、上記長手方向とのなす角度が30度以内、より好ましくは15度以内、例えば10度以内となる方向)とすることが好ましい。これにより切取り精度が向上する傾向にある。図1に示すように粘着シート1の長手方向と保護シート部2の長手方向とが概ね一致する場合、マージン部4の切取りは、粘着シート1の先端側(図1における手前側)から開始してもよく、後端側から開始してもよい。作業性の観点から、図3に示す例のように、貼付けブロック100Aの後端において図1に示す分割予定線102に沿って粘着シート1を切断した後、上記後端側に位置するマージン部4を前端側に引っ張ることにより該後端側からマージン部4の切取りを開始する態様を好ましく採用し得る。
【0035】
また、上述した例では保護シート部2を被着体90に貼り付けた後に貼付けブロック100Aを残りの粘着シート1(すなわち、貼付けブロック100B以降の部分)から切り離したが、貼付けブロック100Aを粘着シート1から切り離した後に該貼付けブロック100Aを被着体90に貼り付けてもよい。粘着シート1の取扱い性(例えば、貼付け作業性)の観点から、貼付けブロック100Aの長さが例えば15cm以上(特に30cm以上)である場合には、保護シート部2を被着体90に貼り付けた後に貼付けブロック100Aを粘着シート1から切り離す態様を採用することが好ましい。かかる態様によると、貼付けブロック100Aの後端が残りの粘着シート1に繋がっているので、粘着シートロール100と貼付けブロック100A(より具体的には、例えば位置決め補助部42)との間に張力をかけて該貼付けブロック100Aを保持することにより、保護シート部2の皺や縒れを防止することができる。また、貼付けブロック100Aを残りの粘着シート1から切り離す前に保護シート部2を被着体90に貼り付けることは、保護シート部2の汚染を防ぐ観点からも好ましい。
【0036】
図1に示す実施形態において、破断補助構造30は、切取り予定線3の線上にのみ設けられ、切取り予定線3の内側および外側には設けられていない。したがって粘着シート1は、切取り予定線3の内側、すなわち保護シート部2の範囲内には切れ目(ミシン目またはスリット)を有しない。このように構成することにより、保護シート部2から形成される保護シートにおいて良好な保護性能を発揮することができる。また、切取り予定線3の内側または外側に外れて配置された破断補助構造30を有しないことにより、マージン部4を切取り予定線3に沿って外形精度よく切り取ることができる。
【0037】
<破断補助構造>
ここに開示される粘着シートは、保護シート部とマージン部とを区画する切取り予定線に沿って破断補助構造が設けられていることにより、保護シート部からマージン部を精度よく切り取ることができる。上記粘着シートは、カッター等の切断器具の使用を要することなく上記マージン部の切取りを行い得るように構成されている。上記破断補助構造は、かかる切取りに役立つ構造であればよく、特に限定されない。すなわち、ここに開示される技術における破断補助構造は、図1に示す例に限定されず、切取り予定線に沿ってマージン部を切り取る操作を容易化または高精度化するために役立つ構造であればよい。破断補助構造の好適例として、切れ目および溝が挙げられる。ここに開示される技術における破断補助構造は、1種または2種以上の切れ目により構成されてもよく、1種または2種以上の溝により構成されてもよく、これらを組み合わせて構成されていてもよい。
【0038】
(切れ目)
この明細書において、破断補助構造を形成する切れ目とは、基材を貫通する線状または点状の孔をいい、ミシン目およびスリットを包含する概念である。上記切れ目は、基材上に粘着剤層を配置する前に形成してもよく、配置した後に形成してもよい。粘着剤組成物の塗工性等の観点から、一態様において、粘着剤層の形成後に切れ目を形成する態様を好ましく採用し得る。この場合、上記切れ目は、基材に加えて粘着剤層を貫通していてもよく、基材を貫通して粘着剤層の厚さの途中に至っていてもよい。あるいは、基材を貫通するが粘着剤層には至らない切れ目であってもよい。
【0039】
上記ミシン目とは、所定の間隔(非切れ目部)を介して切取り予定線上に配列される一連の切れ目群であって、各切れ目の長さAと上記非切れ目部の長さBとの比(A:B)が0.3:1~5:1の範囲にあるものをいう。ここで、上記長さA,Bとは、切取り予定線に沿う長さをいう。ミシン目を構成する切れ目の数は、典型的には3以上、例えば5以上であり得、上限は特に限定されない。ミシン目を構成する各切れ目の長さAは、通常、0.1mm以上とすることが適当であり、0.3mm以上(より好ましくは0.5mm以上、例えば1mm以上)とすることが好ましい。長さAの上限は、粘着シート1の取扱い性向上(例えば、切れ目に隣接する部分において粘着シートに弛みや垂れが生じる事象の抑制、ひいては貼付け作業性の向上)等の観点から、通常、20cm以下とすることが適当であり、15cm以下が好ましく、12cm以下(例えば10cm以下)がより好ましい。一態様において、ミシン目を構成する各切れ目の長さAは、10mm未満とすることができ、7mm以下、さらには5mm以下としてもよい。
【0040】
上記スリットとは、上記ミシン目に該当しない切れ目であって、例えば、切れ目の長さAと該切れ目に隣接する非切れ目部の長さBとの比(A:B)が5:1より大きい(例えば、A:Bが7:1、10:1、100:1等の)切れ目をいう。各スリットの長さAは、破断補助効果の観点から、通常、2mm以上とすることが適当であり、5mm以上(例えば7mm以上)とすることが好ましい。長さAの上限は、粘着シート1の取扱い性(例えば、貼付け作業性)の観点から、通常、20cm以下とすることが適当であり、15cm以下が好ましく、12cm以下(例えば10cm以下)がより好ましい。
【0041】
上記非切れ目部(ミシン目を構成する切れ目間の非切れ目部や、スリットに隣接する非切れ目部であり得る。)は、切取り予定線のうち破断補助構造30が設けられていない部分(非加工部)であってもよく、後述する溝(例えば刻み目)が設けられた部分であってもよい。粘着シートの取扱い性の向上(例えば、マージン部を切り取る操作を意図的に行う前に上記非切れ目部が非意図的に破断する事象の抑制)の観点から、非切れ目部の長さは、通常、凡そ0.3mm以上とすることが適当であり、0.5mm以上(例えば0.7mm以上)とすることが好ましい。非切れ目部が非加工部である場合、該非切れ目部の長さは、切取り精度の観点から、通常、15mm以下とすることが適当であり、10mm以下とすることが好ましく、7mm以下、さらには5mm以下(例えば3mm以下)としてもよい。ここに開示される技術における切取り予定線は、その全長(すなわち、保護シート部とマージン部との境界線の全長)にわたって、非加工部の長さが15mmを超える部分を有しないことが好ましい。一方、非切れ目部に溝(例えば刻み目)が設けられている場合は、該非切れ目部の長さの上限は特に制限されない。
【0042】
切れ目を形成する方法は特に限定されず、例えば公知のミシン目加工機やスリット加工機を用いる方法を採用することができる。切れ目を形成する加工は、基材の一方の面側から行ってもよく、他方の面(背面)側から行ってもよい。粘着剤層の形成後に切れ目を形成する場合には、加工刃に粘着剤が付着する事象を防止する観点から、基材の背面側から加工を行う方法を好ましく採用し得る。
【0043】
(溝)
この明細書において、破断補助構造を形成する溝とは、基材を貫通しない窪みをいう。上記溝は、周囲(典型的には、切取り予定線の両側)に比べて基材の厚さが部分的に小さくなっている箇所として把握され得る。このような溝を切取り予定線上に設けることにより、該溝に沿って粘着シートの破断を進行させ、あらかじめ設定した切取り予定線から実際の破断位置が逸れる事象(すなわち、予定とは異なる方向に破断が進行する事象)を防止し、外形精度のよい保護シートを形成することができる。また、上記溝に沿って粘着シートを滑らかに引き裂くことができるので、破断部の外観のよい保護シートが形成される傾向にある。例えば、基材を構成する樹脂フィルムが部分的に引き伸ばされることで生じ得るヒゲやササクレを効果的に抑制することができる。
【0044】
なお、ここでいう溝の概念には、基材の一方の面から該基材を貫通しない深さまで加工刃を進入させ、次いで該加工刃を除いて形成される刻み目のように、実質的に幅を有しない形態のものが含まれる。上記溝の他の形態としては、切削加工や型押し(プレス加工)により形成された凹部が例示される。基材を切取り予定線に沿って精度よく破断しやすくする効果が高く、かつ破断部の外観に優れることから、上記刻み目を好ましく採用し得る。上記溝(例えば刻み目)は、基材上に粘着剤層を配置する前に形成してもよく、配置した後に形成してもよい。粘着剤組成物の塗工性等の観点から、一態様において、粘着剤層の形成後に溝を形成する態様を好ましく採用し得る。
【0045】
基材の厚さに対する溝の深さは、適切な破断補助効果が得られるように設定することができ、特に限定されない。一態様において、基材の厚さに対する溝の深さは、例えば5%以上とすることができ、より高い破断補助効果を得る観点から20%以上(より好ましくは40%以上、例えば60%以上)とすることが好ましい。また、粘着シートの取扱い性の観点からは、通常、基材の厚さに対する溝の深さを95%以下(好ましくは85%以下、例えば80%以下)とすることが適当である。また、上記溝は、該溝の底における基材の厚さ(すなわち、溝の底から基材の反対側表面までの厚さ)が例えば2μm以上となるように形成することができる。粘着シートの取扱い性の観点から、通常は、上記溝の底における基材の厚さを5μm以上(例えば7μm以上)とすることが適当である。上記溝の底における基材の厚さの上限は特に限定されないが、例えば30μm以下とすることができ、20μm以下としてもよい。
【0046】
溝の長さは特に限定されない。例えば、溝の長さを5mm以上(好ましくは7mm以上、例えば10mm以上)とすることにより、溝を設けることによる効果がよりよく発揮され得る。一態様において、溝の長さは、50mm以上であってもよく、さらには100mm以上であってもよい。
【0047】
溝を形成する方法は特に限定されず、例えば公知の刻み目加工機、切削加工機、プレス機等を用いる方法を採用することができる。プレスにより溝を形成する場合、該溝は、基材の一方の面側に形成してもよく、他方の面(背面)側に形成してもよく、基材の両側の対応する位置に形成してもよい。刻み目または切削による溝を形成する場合(特に、粘着剤層の形成後に溝を形成する場合)には、破断補助効果や加工容易性の観点から、基材の背面側に溝を形成することが好ましい。
【0048】
(破断補助構造の構成)
特に限定するものではないが、上記破断補助構造の構成(加工パターン)のいくつかの好適例につき説明する。
ここに開示される粘着シートは、上記破断補助構造として、マージン部の切取り開始端(典型的には、保護シート部の長手方向のいずれかの端部)の少なくとも一部に切れ目を有することが好ましい。上記切れ目は、ミシン目およびスリットのいずれでもよい。上記切取り開始端にミシン目およびスリットの両方が配置されていてもよい。このことによって、マージン部の切取りをスムーズに開始することができ、上記開始端において保護シートが被着体から浮き上がる事態を抑制し得る。また、あらかじめ形成した切れ目を利用して切取り開始箇所を規定することにより、切取り予定線に沿って正確な切取りが開始されやすくなる。したがって、マージン部の切取り後において外形精度のよい保護シートを形成することができる。このような破断補助構造の一好適例として、切取り開始端の幅のほぼ全体(例えば、上記幅の75%以上、好ましくは85%以上に相当する長さ)にわたってミシン目またはスリットが設けられている構造が挙げられる。
【0049】
好ましい一態様において、上記破断補助構造は、マージン部の切取り開始端から切取り終了端に向かう部分、すなわち切取り予定線の側辺部分の少なくとも一部長さの範囲に溝が形成された構造とすることができる。かかる構造によると、上記側辺部分の切取り速度(マージン部の引張り速度)を高めても形状精度および外観のよい保護シートが得られる傾向にある。このことは、保護シートの貼り付け効率向上の観点から有利である。上記側辺部分の全長にわたって溝が設けられていてもよく、例えばミシン目またはスリットと組み合わせて側辺部分の一部長さにのみ溝が設けられていてもよい。非切れ目部の数をより少なくし得るという観点からは、側辺部分に配置する切れ目として、通常、ミシン目よりスリットのほうが有利である。また、側辺部分にミシン目および/またはスリットを配置する場合、上記非切れ目部に溝が設けられた構成とすることにより、該非切れ目部において破断部の外観を向上させることができ、より外形精度のよい保護シートが形成され得る。なお、特に限定するものではないが、一態様において、両側辺部分に設けられる破断補助構造を概ね対称な構造とすることができる。このことによってマージン部の切取りを両側辺部分において概ね同様に進行させやすくなり、作業性が向上する。
【0050】
好ましい一態様において、上記破断補助構造は、例えば後述する実施例におけるパターン7のように、切取り予定線の側辺部分の一端であってマージン部の切取り開始端に続いて、または該切取り開始端に近接して配置された切れ目(典型的にはスリット)と、該切れ目の切取り終了端に連続または近接して形成された溝(典型的には刻み目)とを有する構造とすることができる。このように構成された粘着シートによると、側辺部分の切取り開始端に配置された切れ目によって側辺部分で粘着シートの破断が進行する方向を効果的に規定し、次いで該切れ目の切取り終了端に連続または近接する溝に沿って側辺部分における粘着シートの破断を進行させることにより、形状精度および外観のよい保護シートをより確実に、かつ効率よく得ることができる。なお、上記切れ目が切取り開始端側の端部に近接するとは、上記端部から切れ目の端までの距離が7mm以下(好ましくは5mm以下、例えば3mm以下)であることをいう。また、上記溝が切取り終了端側の端部に近接するとは、該端部から溝の端までの距離が7mm以下(好ましくは5mm以下、例えば3mm以下)であることをいう。
【0051】
マージン部の切取り終了端における破断補助構造は、特に限定されない。一態様において、切取り終了端における破断補助構造を、切取り開始端における構造と概ね同様とすることができる。これにより、所望により保護シート部の長手方向のいずれか任意の方向から切取りを開始することが可能となり、粘着シートの使い勝手が向上する。
【0052】
ここに開示される粘着シートは、上記切取り予定線が、該粘着シートの基材を構成する樹脂フィルムの流れ方向(MD;以下、単に「粘着シートのMD」と表現することもある。)に向かって延びる部分を有する形状を有する態様で好ましく実施され得る。一般に樹脂フィルムはMDに沿う方向に裂けやすい性質を有する。したがって、粘着シートの剥離方向にマージン部を引っ張って該マージン部を切り取る使用態様に適している。ここで、切取り予定線が粘着シートのMDに向かって延びるとは、切取り予定線の延びる方向と上記MDとのなす角度が45度以内(好ましくは30度以内、より好ましくは15度以内)であることをいう。かかる方向に延びる部分を50mm以上(例えば100mm以上)連続する切取り予定線を有する粘着シートによると、ここに開示される技術の適用効果が特によく発揮され得る。また、切取り予定線の側辺部分(切取り開始端から切取り終了端に向かう部分)が上記方向に延びる部分を有するように構成されていることが好ましい。上述のように上記側辺部分が溝(好ましくは、切取り開始端に配置された切れ目に連続または近接する溝)を有する構造が特に好ましい。なお、長尺状の粘着シートでは、上記樹脂フィルムのMDは、通常、該粘着シートの長手方向と概ね一致する。
【0053】
ここに開示される粘着シートは、該粘着シートのMD(典型的には、長尺状の粘着シートにおける長手方向)が保護シート部の長手方向となるように上記切取り予定線が設定されている態様で好ましく実施され得る。かかる態様によると、上記粘着シートのマージン部を概ねMDに沿って引っ張ることにより、該マージン部を容易にかつ精度よく切取って外観のよい保護シートを形成することができる。
【0054】
ここに開示される粘着シートに設けられる切取り予定線は、マージン部の側辺部分(切取り開始端から切取り終了端に至る部分)に、該側辺部分の延びる方向が上記切取り開始端側に逆転する部分を有しないことが好ましい。換言すると、切取り開始端から切取り終了端に向かう直線(粘着シートのMDとほぼ平行な直線であり得る。)と上記側辺部分の延びる方向とのなす角度が90度を超える部分を有しないことが好ましい。上記角度が常に60度以下(より好ましくは45度以下、例えば30度以下)であることが好ましい。上記角度が60度を超える部分を有する場合には、は破断補助構造として切れ目(例えばスリット)が設けられていることが好ましい。これにより、上記部分の存在にかかわらず、外周の形状精度および外観のよい保護シートが形成されやすくなる傾向にある。
【0055】
<引張弾性率>
(引張弾性率E
破断補助構造として溝を有する粘着シートにおいて、基材のうち上記溝の底を構成する樹脂材料の引張弾性率(以下「底部弾性率」ともいう。)Eは、特に限定されない。被着体への貼付け前における粘着シートの取扱い性向上の観点から、底部弾性率Eが200MPa以上であることが好ましい。底部弾性率Eは、例えば200MPa~4000MPaであり得、200MPa~2000MPaであってもよく、200MPa~1000MPaであってもよい。
好ましい一態様において、底部弾性率Eを300MPa以上とすることができる。底部弾性率Eが高くなると、粘着シートを溝に沿って厚さ方向に引き裂く際に、該溝の底部を構成する樹脂材料が部分的に引き伸ばされることで生じ得るヒゲやササクレが効果的に抑制され得る。したがって、より外形精度および外観に優れた保護シートが形成される傾向にある。かかる観点から、底部弾性率Eは、400MPa以上であってもよく、500MPa以上であってもよい。一態様において、底部弾性率Eは650MPa以上であってよく、750MPa以上であってもよい。底部弾性率Eは、溝の底を構成する樹脂材料の組成、樹脂フィルムの製造方法や製造条件等により調整することができる。
【0056】
(引張弾性率E
基材を構成する樹脂フィルムの全体の引張弾性率(以下「全体弾性率」ともいう。)Eは、特に限定されない。被着体への貼付け前における粘着シートの取扱い性向上の観点から、全体弾性率Eが200MPa以上(例えば200MPa~4000MPa)であることが好ましい。
ここに開示される技術の一態様において、全体弾性率Eが2000MPa以下(より好ましくは1500MPa以下、例えば1000MPa以下)である基材を好ましく採用し得る。全体弾性率Eが低くなると、該基材を用いた粘着シートから形成される保護シートの曲面追従性が向上する傾向にある。かかる観点から、基材の全体弾性率Eは、800MPa以下であってよく、700MPa以下であってもよい。
また、一態様において、全体弾性率Eが300MPa以上(より好ましくは400MPa以上、例えば500MPa以上)の基材を好ましく採用し得る。基材の全体弾性率Eが高くなると、マージン部の切取りにより形成される保護シートの外形精度および外観が向上する傾向にある。切取り予定線上に非加工部(例えば、ミシン目間またはスリットの端部間に位置する非加工部や、切れ目と溝との間に位置する非加工部であり得る。)を有する粘着シートでは、全体弾性率Eを高くして、上記非加工部におけるヒゲやササクレの発生を抑えることが特に有意義である。全体弾性率Eは、樹脂フィルムを構成する樹脂材料の組成、樹脂フィルムの構造、樹脂フィルムの製造方法や製造条件等により調整することができる。なお、単層の樹脂フィルムを用いて構成された基材では、底部弾性率Eと全体弾性率Eとは一致する。
【0057】
上記引張弾性率(底部弾性率Eおよび全体弾性率E)は、測定対象部分を構成する樹脂材料により構成された単層の樹脂フィルムを測定サンプルとして、JIS K 7161に準拠して測定される引張弾性率をいう。具体的には、上記樹脂フィルムを、MDを長手方向として幅10mmの短冊状にカットして試験片を作製する。JIS K 7161:1994に準拠して23℃、50%RHの条件下で上記試験片を引張速度300mm/分、チャック間距離50mmの条件で延伸することにより、応力-ひずみ曲線を得る。引張弾性率は、規定された2点のひずみε1,ε2の間の曲線の線形回帰により求めることができる。後述の実施例においても同様の方法で測定される。測定サンプルに用いる樹脂フィルムの厚さは特に限定されないが、通常は、厚さが20μm~100μm(例えば凡そ40μm)程度の樹脂フィルムを用いることが適当である。
【0058】
<180度剥離強度>
ここに開示される粘着シートは、上記保護シート部の180度剥離強度(以下、単に「剥離強度」ともいう。)は特に限定されないが、被着体の表面を適切に保護する観点から、通常は、例えば凡そ0.5N/25mm以上(典型的には凡そ1N/25mm以上)とすることが適当である。好ましい一態様において、粘着シートの保護シート部の剥離強度は、例えば3N/25mm以上とすることができ、4N/25mm以上であってもよく、5N/25mm以上であってもよい。保護シート部が所定以上の剥離強度を有することにより、マージン部を剥離方向に引っ張って切り取る際に保護シート部が被着体表面から浮き上がりにくくなるので、マージン部の切取り操作を安定して行いやすくなる。これにより、上記切取りにより形成される保護シートの外周部の形状精度や外観が向上し得る。また、保護シート部を被着体に貼り付ける際の貼り直し容易性や、保護の役割を終えた粘着シートを被着体から剥がす際の除去性の観点から、粘着シートの剥離強度は、通常、20N/25mm以下であることが適当であり、15N/25mm以下(例えば10N/25mm以下)であることが好ましい。
【0059】
保護シート部の180度剥離強度は、次のようにして測定される。具体的には、粘着シートの保護シート部を幅25mmの短冊状にカットした測定サンプルにつき、23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの接着面をステンレス鋼板(SUS430BA板)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、引張試験機を使用して、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、上記測定サンプルの剥離強度(N/25mm)を測定する。引張試験機としては、例えばミネベア社製の「引張圧縮試験機、TG-1kN」を用いることができる。後述の実施例においても同様の方法で測定される。保護シート部の剥離強度は、例えば、粘着剤層の組成や厚さにより調整することができる。
【0060】
なお、粘着シートのマージン部が粘着剤層を有する態様において、該マージン部の剥離強度は特に限定されない。マージン部の剥離強度は、例えば、保護シート部の剥離強度と同等であり得る。
【0061】
<位置決め補助部>
ここに開示される粘着シートには、該粘着シートの位置決めをアシストする位置決め補助部が形成されていてもよい。上記位置決め補助部は、典型的には、保護シート部の被着体に対する位置決めに役立つ部分として把握され得る。かかる機能を果たし得る限り、位置決め補助部の形態は特に限定されない。上記位置決め補助部は、例えば、保護シート部に対して所定の位置関係となるように粘着シートに設けられ、位置合わせ治具との係合により位置合わせを行い得る構造部分であり得る。このような構造部分の好適例として、粘着シートに設けられた貫通孔、切欠き、凹凸等が挙げられる。この種の位置決め補助部はマージン部に配置することが好ましい。これにより、保護シート部による保護性能を損なうことなく、該保護シートの位置決めを効率よく行うことができる。ロール形態の粘着シートでは、作業性の観点から、図1に示す例のように、保護シート部よりも粘着シートの先端側に位置決め補助部が配置された構成を好ましく採用し得る。なお、位置決め補助部の形態は上記の例に限定されず、例えば、光学的に検出可能なマーキング(例えば、印刷や書き込みによる着色)、異部材の配置(例えば、識別ラベルの貼付け、信号の発信または反射を可能とする素子の固定)等であってもよい。また、位置決め補助部は、保護シート部の保護性能を損なわない形態(例えば上記マーキング等)であれば、保護シート部に設けられてもよく、マージン部および保護シート部の両方に設けられてもよい。
【0062】
<粘着シートのサイズ等>
ここに開示される粘着シートの幅は、保護対象領域のサイズに応じて、それに対応するサイズの保護シート部からマージン部を適切に切取り得るように設定することができ、特に限定されない。被着体への貼付け作業性の観点から、粘着シートの幅は、通常、凡そ150cm以下とすることが適当であり、100cm以下とすることが好ましく、80cm以下(例えば60cm以下)であってもよい。また、粘着シートの幅は、例えば5cm以上であってよく、10cm以上または20cm以上であってもよい。
【0063】
ここに開示される粘着シート(典型的には、ロール状に巻回された粘着シート)の長さは、例えば1m以上とすることができ、5m以上または10m以上であってもよい。一態様において、粘着シートの長さは、100m以上(例えば200m以上、さらには300m以上)であり得る。より長い粘着シートによると、より多数の保護シート部を長尺方向に設けることができる。すなわち、一の粘着シートロールを用いて設置し得る保護シートの数が多くなる。これにより、粘着シートロールの交換頻度が減り、保護シートが貼り付けられた被着体(例えば部材)の生産性が向上する。粘着シートの長さの上限は、特に制限ないが、例えば2000m以下であり得る。
【0064】
ここに開示される粘着シートにおいて、保護シート部のサイズは、該保護シート部が貼り付けられる保護対象領域のサイズに応じて設定することができ、特に限定されない。保護シート部のサイズは、例えば、該保護シート部に外接する最小の長方形における長辺の長さLが5cm以上となるサイズであり得る。上記長さLが10cm以上(例えば20cm以上)である態様によると、ここに開示される技術を適用して保護シートを設置することによる効果(例えば、保護シートの設置効率の向上、外形精度の向上、外観の向上のうち一または二以上の効果)がよりよく発揮され得る。上記長さLの上限は、マージン部を切り取る際の作業性の観点から、通常、150cm以下とすることが適当であり、100cm以下(例えば80cm以下)であってもよい。なお、上記保護シート部に外接する最小の長方形は、長辺の長さLと短辺の長さLとが等しい形状、すなわち正方形であってもよい。
【0065】
上記保護シート部の形状は、該保護シート部に外接する最小の長方形における短辺の長さLに対して長辺の長さLが1.0倍~100倍となる形状であり得る。ここに開示される技術は、上記長辺の長さLが上記短辺の長さLの1.05倍以上である態様で好ましく実施され得る。好ましい一態様において、上記長辺の長さLは、上記短辺の長さLの1.2倍以上(より好ましくは1.5倍以上、例えば2倍以上)であり得る。このような形状の保護シート部では、ここに開示される技術を適用して該保護シート部からマージン部を切り取ることの意義がよりよく発揮され得る。上記長辺の長さLは、上記短辺の長さLの5倍以上であってもよく、10倍以上であってもよい。また、一態様において、上記長辺の長さLは、上記短辺の長さLの50倍以下であってよく、30倍以下であってもよい。
【0066】
ここに開示される粘着シートにおける保護シート部の向きは、該保護シート部に外接する最小の長方形における長辺と、粘着シートの長手方向または該粘着シートの基材を構成する樹脂シートのMDとのなす角度が凡そ45度以内(好ましくは凡そ30度以内、より好ましくは凡そ15度以内、例えば5度以内)となるように設定することができる。上記角度が実質的に0度であってもよい。
【0067】
切取り予定線を介して保護シート部を囲むマージン部のサイズは特に限定されない。例えば、マージン部のうち最も幅の狭い箇所における幅は、保護シート部を被着体に貼り付けた後にマージン部を引っ張って切り取る際における作業性(例えば、マージン部の保持性や強度)の観点から、通常、5mm以上とすることが適当であり、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上であり得る。また、廃棄物削減の観点から、マージン部のうち最も幅の狭い箇所における幅を例えば500mm以下とすることができる。
【0068】
<基材>
ここに開示される粘着シートの基材は、樹脂フィルムを主構成要素として含む。かかる基材を用いて構成された粘着シートは、上述のように保護シート部を被着体に貼り付けた粘着シートのマージン部を剥離方向に引っ張って該マージン部を切り取る使用態様に適している。また、被着体上に残された保護シート部によって該被着体の保護に適した保護シートを形成することができる。なお、基材が樹脂フィルムを主構成要素として含むとは、基材の重量に占める樹脂フィルムの重量が50%を超えることをいう。樹脂フィルム(表面に剥離処理、プライマー処理等の表面処理が施された樹脂フィルムであり得る。)により構成された基材は、樹脂フィルムを主構成要素として含む基材の一典型例である。基材を構成する樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。
【0069】
ここでいう「樹脂フィルム」は、例えば以下に示すような樹脂成分を主体とする樹脂組成物を膜状に成形してなるフィルムであって、いわゆる不織布や織布とは区別される概念(すなわち、不織布や織布を除く概念)である。実質的に非発泡の樹脂フィルムが好ましい。ここで、非発泡の樹脂フィルムとは、発泡体とするための意図的な処理を行っていない樹脂フィルムを指し、具体的には、発泡倍率が凡そ1.1倍未満(例えば1.05倍未満、典型的には1.01倍未満)の樹脂フィルムであり得る。
【0070】
樹脂フィルムを構成する樹脂成分の例としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等)、塩化ビニル樹脂(典型的には、軟質塩化ビニル樹脂)、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン系樹脂(エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等)、ウレタン(メタ)アクリレート、熱可塑性エラストマー(オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー等)、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられ得る。
【0071】
ここに開示される粘着シートは、例えば、ポリオレフィン系樹脂フィルムまたはポリエステル系樹脂フィルムを主構成要素として含む基材を備える態様で実施することができる。なかでも、ポリオレフィン系樹脂フィルムを主構成要素として含む基材が好ましい。ここでポリオレフィン系樹脂フィルムとは、主成分がポリエチレン(PE)樹脂および/またはポリプロピレン(PP)樹脂である樹脂フィルムをいう。ポリオレフィン系樹脂フィルムは、PE樹脂とPP樹脂との合計量が該ポリオレフィン樹脂フィルムの50重量%超(好ましくは70重量%以上、例えば85重量%以上)を占めるものであり得る。
【0072】
上記PP樹脂は、構成単量体としてプロピレンを含む種々のポリマー(プロピレン系ポリマー)を主成分とするものであり得る。1種または2種以上のプロピレン系ポリマーから実質的に構成されるPP樹脂であってもよい。ここでいうプロピレン系ポリマーの概念には、ホモポリプロピレンの他、プロピレンと他のモノマーとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)やブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)が包含される。ここでいうプロピレン系ポリマーの概念には、例えば以下のものが含まれる。
プロピレンのホモポリマー(ホモポリプロピレン)。例えばアイソタクチックポリプロピレン。
プロピレンと他のα-オレフィン(典型的には、エチレンおよび炭素原子数4~10のα-オレフィンから選択される1種または2種以上)とのランダムコポリマー(ランダムポリプロピレン)。好ましくは、プロピレンを主モノマー(主構成単量体、すなわち単量体全体の50重量%以上を占める成分)とするランダムポリプロピレン。
プロピレンに他のα-オレフィン(典型的には、エチレンおよび炭素原子数4~10のα-オレフィンから選択される1種または2種以上)をブロック共重合したコポリマー(ブロックポリプロピレン)。好ましくは、プロピレンを主モノマー(主構成単量体、すなわち単量体全体の50重量%以上を占める成分)とするブロックポリプロピレン。
【0073】
上記PE樹脂は、構成単量体としてエチレンを含む種々のポリマー(エチレン系ポリマー)を主成分とするものであり得る。1種または2種以上のエチレン系ポリマーから実質的に構成されるPE樹脂であってもよい。上記エチレン系ポリマーは、エチレンのホモポリマーであってもよく、主モノマーとしてのエチレンに、副モノマーとして他のα-オレフィンを共重合(ランダム共重合、ブロック共重合等)させたものであってもよい。上記α-オレフィンの好適例としては、プロピレン、1-ブテン(分岐1-ブテンであり得る。)、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等の、炭素原子数3~10のα-オレフィンが挙げられる。例えば、上記副モノマーとしてのα-オレフィンが10重量%以下(典型的には5重量%以下)の割合で共重合されたエチレン系ポリマーを主成分とするPE樹脂を好ましく採用し得る。
【0074】
上記PE樹脂は、また、重合性官能基に加えて別の官能基を有するモノマー(官能基含有モノマー)とエチレンとのコポリマーを含むPE樹脂や、かかる官能基含有モノマーをエチレン系ポリマーに共重合させたPE樹脂等であってもよい。エチレンと官能基含有モノマーとのコポリマーとしては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-(メタ)アクリル酸(すなわち、アクリル酸および/またはメタクリル酸)共重合体が金属イオンで架橋されたもの、等が挙げられる。
【0075】
PE樹脂の密度は特に限定されない。ここでいうPE樹脂の概念には、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のいずれもが含まれる。一態様において、上記PE樹脂の密度は、例えば0.90~0.94g/cm程度であり得る。好ましいPE樹脂として、LDPEおよびLLDPEが挙げられる。
【0076】
特に限定するものではないが、上記ポリオレフィン樹脂材料としては、MFR(melt flow rate)が0.5~80g/10分(例えば0.5~10g/10分)程度の範囲にあるものを好ましく使用することができる。ここでMFRとは、JIS K
7210に準拠して、温度230℃、荷重21.18Nの条件でA法により測定して得られる値をいう。
【0077】
上記ポリオレフィン樹脂フィルムは、上記ポリオレフィン樹脂として少なくともPP樹脂を含むことが好ましい。例えば、PP樹脂を20重量%以上(より好ましくは30重量%以上)含む組成のポリオレフィン樹脂フィルムが好ましい。このような組成によると、ヒゲやササクレの発生防止に適した底部弾性率Eおよび/または全体弾性率Eを有する樹脂フィルムが好適に実現され得る。
【0078】
一態様において、PP樹脂による連続構造(連続相)が形成されているポリオレフィン樹脂フィルムを好ましく用いることができる。多層構造の樹脂フィルムにおいて、少なくとも一つの層はPP樹脂の連続構造を有する層であることが好ましい。上記PP樹脂の連続構造を有する層は、該樹脂フィルムの一方の表面および/または他方の表面を構成するように配置されていることが好ましい。かかる構成の樹脂フィルムを用いて、溝を含む破断防止構造であって該溝の底が上記PP樹脂の連続構造を有する層となるように構成することにより、外形精度および外観のよい保護シートを形成することができる。
【0079】
多層構造の樹脂フィルムにおいて、該樹脂フィルムに含まれる層の数は、例えば2~5程度であり得る。例えば、基材の一方の面(粘着剤層が配置される側の表面)を構成する前面層と、基材の他方の表面(背面)を構成する背面層と、それらの間に配置された中間層と、を有する三層構造の樹脂フィルムを好ましく採用し得る。一態様において、前面層と背面層の一方または両方(好ましくは両方)を、中間層よりも引張弾性率の高い樹脂材料により構成することができる。かかる構成によると、マージン部の切取り性と保護シートの曲面追従性とをより好適に両立する粘着シートが実現され得る。
【0080】
特に限定するものではないが、上記三層構造の樹脂フィルムは、中間層の厚さが樹脂フィルムの総厚の例えば凡そ20%~凡そ80%(好ましくは凡そ30%~凡そ70%)を占めるように構成することができる。一態様において、前面層と背面層との厚さは、概ね同程度とすることができ、例えば前面層の厚さが背面層の厚さの0.5倍~1.5倍程度であることが好ましい。前面層の厚さと背面層の厚さが実質的に同じであってもよい。
【0081】
上記樹脂フィルムには、必要に応じて無機粉末を配合することができる。これにより、紫外線等の光を遮蔽し、基材や粘着剤層の光劣化を抑制することができる。無機粉末としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ等の酸化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム等の硫酸塩;等を用いることができる。
【0082】
上記無機粉末の一好適例として、酸化チタン(TiO)が挙げられる。酸化チタンの種類は特に限定されず、例えばルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型等のいずれの結晶型の酸化チタンも使用可能である。なかでもルチル型の酸化チタンが好ましい。粒子表面に被覆処理が施された酸化チタンを用いてもよい。酸化チタン粒子を被覆する材料は特に限定されず、例えばシリカ、アルミナ、酸化亜鉛などの無機酸化物であり得る。好適例として、粒子表面をSi-Al等で被覆した高耐候性タイプの酸化チタン(典型的にはルチル型の酸化チタン)が挙げられる。
【0083】
無機粉末の配合量は、良好な光遮蔽効果を得る観点から、該基材全体の5重量%以上が適当であり、6重量%以上が好ましく、7重量%以上がより好ましい。また、基材の強度や成形性等を考慮して、無機粉末の含有割合としては、基材全体の30重量%以下が適当であり、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。多層構造の樹脂フィルムにおいて、無機粉末は、一部の層にのみ配合されていてもよく、全ての層に同一のまたは異なる割合で配合されていてもよい。
【0084】
基材には、必要に応じて、耐候性向上剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等)、帯電防止剤、スリップ剤等の、粘着シートの基材用のプラスチックフィルムに使用され得る公知の添加剤を適宜配合することができる。光安定剤の例としては、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類、ベンゾエート類等を有効成分とするものが挙げられる。酸化防止剤の例としては、アルキルフェノール類、アルキレンビスフェノール類、チオプロピレン酸エステル類、有機亜リン酸エステル類、アミン類、ヒドロキノン類、ヒドロキシルアミン類等を有効成分とするものが挙げられる。このような添加剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。添加剤の配合量は、粘着シートの基材用樹脂フィルムにおける通常の配合量と同程度とすることができる。
【0085】
基材の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択し得る。例えば、厚さが凡そ300μm以下の基材を用いることができる。被着体の表面形状への追従性等の観点から、基材の厚さは、例えば200μm以下とすることができ、100μm以下が適当であり、75μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。基材の厚さは、例えば10μm以上とすることができ、強度や取扱性および光遮蔽性の観点から15μm以上が適当であり、20μm以上が好ましく、25μm以上(例えば30μm以上)がより好ましい。
【0086】
上記ポリオレフィン樹脂フィルムは、ポリオレフィン樹脂を含む樹脂成分と、無機粉末と、必要に応じて用いられる他の材料(添加剤等)とを含有する樹脂材料を、従来公知の手法でシート形状に成形して得られたものであり得る。例えば、押出成形、インフレーション成形等の従来公知の一般的なフィルム成形方法を適宜採用してポリオレフィン樹脂フィルムを製造することができる。マージン部の切取り作業性や保護シートの外観等の観点から、樹脂フィルムの製造方法として押出成形法を好ましく採用し得る。
【0087】
基材のうち粘着剤層が設けられる側の面には、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、基材と粘着剤層との接着性、言い換えると粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。基材の前面にヒドロキシル基(-OH基)等の極性基が導入されるような表面処理を好ましく採用し得る。これにより粘着剤層の投錨性を向上させ、ひいては非糊残り性を向上させることができる。
【0088】
基材のうち粘着剤層が設けられる側の面とは反対側の面(背面)には、必要に応じて、帯電防止処理、剥離処理、撥水処理等の表面処理が施されていてもよい。基材の背面に剥離処理を施すことにより、粘着シートをロール状に巻回したものの巻き戻しを容易にする等の効果が得られる。上記剥離処理は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の各種の剥離処理剤を用いて、基材の背面に剥離処理層を形成する処理であり得る。
【0089】
<粘着剤層>
ここに開示される粘着シートの粘着剤層を構成する粘着剤の種類は特に限定されず、例えばゴム系粘着剤(天然ゴム系、合成ゴム系、これらの混合系等)、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤等の公知の各種粘着剤から選択される1種または2種以上の粘着剤を含んで構成された粘着剤層であり得る。ここで、ゴム系粘着剤とは、ゴム系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤をいう。ゴム系粘着剤その他の粘着剤についても同様の意味である。また、粘着剤のベースポリマーとは、該粘着剤に含まれるゴム状のポリマー(室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマーをいう。)のうちの主成分を指し、典型的にはポリマー成分の50重量%超(例えば70重量%以上であり得、90重量%以上であってもよい。)を占める成分をいう。
【0090】
(ゴム系粘着剤)
好ましい一態様では、上記粘着剤層が、ゴム系ポリマーをベースポリマー(ポリマー成分の主成分)とする粘着剤組成物から形成されたゴム系粘着剤により構成されたゴム系粘着剤層である。ゴム系粘着剤におけるベースポリマーの例としては、天然ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR);ポリイソプレン;レギュラーブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム等のブチルゴム類;ポリイソブチレン、イソプレン-イソブチレン共重合体またはその変性物等のイソブチレン系ポリマー;A-B-A型ブロック共重合体ゴムおよびその水素化物、例えばスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体ゴム(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体ゴム(SIS)、スチレン-ビニル・イソプレン-スチレンブロック共重合体ゴム(SVIS)、SBSの水素化物であるスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体ゴム(SEBS)、SISの水素化物であるスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体ゴム(SEPS);等の種々のゴム系ポリマーが挙げられる。
【0091】
ここに開示される技術は、非架橋タイプの粘着剤からなる粘着剤層を備える態様で好ましく実施され得る。非架橋タイプの粘着剤としては、上述のようなA-B-A型ブロック共重合体ゴムまたはその水素化物をベースポリマーとする粘着剤、イソブチレン系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤等が例示される。なかでもイソブチレン系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤組成物から形成された非架橋の粘着剤(ポリイソブチレン系粘着剤)からなる粘着剤層が好ましい。非架橋タイプの粘着剤層は、被着体表面にストレスを与えにくく、貼付け跡が残りにくいので、保護シート用の粘着剤層として好適である。
【0092】
上記イソブチレン系ポリマーは、イソブチレンのホモポリマー(ホモイソブチレン)であってもよく、イソブチレンを主モノマーとするコポリマーであってもよい。該コポリマーは、例えば、イソブチレンとノルマルブチレンとの共重合体、イソブチレンとイソプレンとの共重合体(レギュラーブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、部分架橋ブチルゴム等)、これらの加硫物や変性物(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基等の官能基で変性したもの)等であり得る。接着強度の安定性(例えば、経時や熱履歴によって接着強度が過剰に上昇しない性質)の観点から好ましく使用されるイソブチレン系ポリマーとして、ホモイソブチレンおよびイソブチレン-ノルマルブチレン共重合体が挙げられる。なかでもホモイソブチレンが好ましい。
【0093】
イソブチレン系ポリマーの分子量は特に制限されず、例えば重量平均分子量(Mw)が凡そ1×10~150×10のものを適宜選択して使用することができる。互いにMwの異なる複数のイソブチレン系ポリマーを組み合わせて使用してもよい。使用するイソブチレン系ポリマー全体のMwは、凡そ10×10~150×10(より好ましくは凡そ30×10~120×10、典型的には40×10~105×10、例えば凡そ50×10~100×10)の範囲にあることが好ましい。
【0094】
上記ポリイソブチレン系粘着剤は、このようなイソブチレン系ポリマーから選択される一種または二種以上をベースポリマーとするものであり得る。該ポリイソブチレン系粘着剤は、上記ベースポリマーに加えて、副成分としてポリイソブチレン系以外のポリマーを含有するものであり得る。かかるポリマーの例としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等が挙げられる。これらポリイソブチレン系以外のポリマーの含有量は、通常はポリイソブチレン系粘着剤に含まれるポリマー成分全体の10重量%以下とすることが好ましい。ポリイソブチレン系以外のポリマーを実質的に含有しない粘着剤であってもよい。
【0095】
上記粘着剤は、必要に応じて粘着付与剤を含むことができる。好ましく使用し得る粘着付与剤の例として、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、それらの水素添加物等の粘着付与樹脂が挙げられる。このような粘着付与剤は、一種を単独で、あるいは二種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0096】
ここに開示される粘着剤は、好ましい一態様において、SP値が8.5(単位[(cal/cm1/2]。以下同じ。)以上の粘着付与樹脂Thsを含み得る。粘着付与樹脂Thsとしては、例えば、SP値が8.5~15の範囲にあるものを好ましく採用し得る。例えば、かかるSP値を有するフェノール系化合物、アミン系化合物、ロジン系樹脂(例えば未変性ロジン)等を粘着付与樹脂Thsとして用いることができる。粘着付与樹脂Thsは、一種を単独でまたは二種以上を適宜組み合わせて用いることができる。このような粘着付与樹脂Thsは、少量の使用により粘着力を効果的に向上させ得る。したがって、被着体に対する粘着力の向上と被着体表面の低汚染性との両立に適している。
【0097】
ここで、SP値とは、化合物の溶解性を示すものであって、フェドーズ(Fedors)が提案した方法で化合物の基本構造から計算される値である。具体的には、25℃における各原子または原子団の蒸発エネルギーΔe(cal)と、同温度における各原子または原子団のモル容積Δv(cm)とから、以下の式にしたがってSP値が計算される。
SP値(δ)=(ΣΔe/ΣΔv)1/2
(参考文献:山本秀樹著、「SP値 基礎・応用と計算方法」、第4刷、株式会社情報機構出版、2006年4月3日発行、第66~67頁)。
【0098】
粘着付与樹脂Thsとして使用し得るフェノール系化合物の好適例として、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール系樹脂およびテルペン変性フェノール樹脂が挙げられる。アルキルフェノール樹脂としては、例えば、tert-ブチルフェノール樹脂、tert-アミルフェノール樹脂、tert-オクチルフェノール樹脂のように、炭素原子数が3以上のアルキル基(典型的には、炭素原子数が3~18、例えば5~12のアルキル基)を側鎖に有するものを好ましく採用し得る。ここに開示される技術における粘着剤に用いられる粘着付与樹脂Thsの一好適例として、SP値9.5以上(典型的には9.5~15、例えば10~15)のフェノール系化合物が挙げられる。かかるフェノール系化合物として、住友デュレズ社製の商品名「デュレズ(Durez)19900」が例示される。なお、粘着付与樹脂Thsは、典型的には、これを含有する系中の光劣化反応における紫外線の吸収や、ラジカルのトラップや安定化を目的としない材料である。したがって、一般に酸化防止剤や光安定剤として用いられる材料は、ここでいう粘着付与樹脂Thsとは区別される。
【0099】
粘着付与剤を使用する場合における使用量は、ベースポリマー100重量部に対して例えば凡そ0.1~50重量部とすることができる。通常は、ベースポリマー100重量部に対する配合量を0.1~5重量部とすることが好ましい。あるいは、粘着付与剤を実質的に含まない組成の粘着剤であってもよい。
【0100】
高SP値の粘着付与樹脂Thsを使用する場合において、その使用量は、ベースポリマー100重量部当たり、通常は5重量部以下(例えば2.5重量部以下)とすることが適当であり、1.0重量部以下(典型的には0.01~1.0重量部)とすることが好ましい。ここに開示される技術は、上記粘着剤における粘着付与樹脂Thsの含有量がベースポリマー100重量部に対して0.8重量部以下(より好ましくは0.5重量部以下、例えば0.01~0.4重量部)である態様で好ましく実施され得る。また、粘着付与樹脂Thsの含有量の下限は、粘着付与樹脂Thsの作用を好適に発現させる観点から、ベースポリマー100重量部に対して0.05重量部以上(例えば0.1重量部以上、典型的には0.2重量部以上)とすることが好ましい。
【0101】
(アクリル系粘着剤)
好ましい他の一態様では、上記粘着剤層が、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤により構成されたアクリル系粘着剤層である。かかるアクリル系粘着剤層は、透明性等の観点から好ましく採用され得る。
【0102】
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料における全モノマー成分の50重量%超を占める成分をいう。なお、本明細書中において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。
【0103】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1~20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C1-20」と表すことがある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、RがC1-14(例えばC2-10、典型的にはC4-9)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、Rが水素原子でRがC4-9の鎖状アルキル基であるアルキルアクリレートがより好ましい。
【0104】
がC1-20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n-ブチルアクリレート(BA)および2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。BAおよび2EHAは、いずれか一方を単独で、または両者を組み合わせて好ましく使用され得る。
【0105】
全モノマー成分中における主モノマーの配合割合は、凡そ70重量%以上(例えば凡そ85重量%以上、典型的には凡そ90重量%以上)であることが好ましく、また、通常は凡そ99.5重量%以下(例えば凡そ99重量%以下)とすることが好ましい。モノマー成分としてC4-9アルキルアクリレートを使用する場合、該モノマー成分中に含まれるアルキル(メタ)アクリレートのうちC4-9アルキルアクリレートの割合は、凡そ70重量%以上であることが好ましく、凡そ90重量%以上であることがより好ましく、凡そ95重量%以上(典型的には凡そ99重量%以上凡そ100重量%以下)であることがさらに好ましい。好ましい一態様では、上記モノマー成分がBAおよび2EHAの少なくとも一方を含む。ここに開示される技術は、例えば、BAおよび2EHAの合計量が全モノマー成分の凡そ50重量%以上(典型的には凡そ70重量%以上、例えば凡そ90重量%以上)を占める態様で好ましく実施され得る。
【0106】
主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。副モノマーとしては、例えばカルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等の官能基含有モノマーの1種または2種以上を使用することができる。凝集力向上等の観点から、副モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーおよび/または水酸基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが好ましい。カルボキシ基含有モノマーの好適例としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。水酸基含有モノマーの好適例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0107】
副モノマーの量は、所望の凝集力が実現されるように適宜選択すればよく、特に限定されない。通常は、接着力と凝集力とをバランス良く両立させる観点から、副モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の凡そ0.5重量%以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ1重量%以上である。また、副モノマーの量は、通常、全モノマー成分中の凡そ30重量%以下とすることが適当であり、凡そ15重量%以下(例えば凡そ10重量%以下)とすることが好ましい。
【0108】
アクリル系ポリマーには、本発明の効果を顕著に損なわない範囲で、上記以外のモノマー(その他モノマー)が共重合されていてもよい。上記その他モノマーは、例えば、アクリル系ポリマーのガラス転移温度の調整、粘着性能(例えば剥離性)の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤の凝集力を向上させ得るモノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等)、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。上記その他モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記その他モノマーの含有量は、全モノマー成分中、凡そ30重量%以下(例えば凡そ10重量%以下)とすることが好ましく、また、例えば凡そ0.01重量%以上(典型的には凡そ0.1重量%以上)とすることができる。
【0109】
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として一般的に用いられる各種の重合方法を適用して該ポリマーを得ることができる。また、上記アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体、グラフト共重合体等であってもよい。生産性等の観点から、通常はランダム共重合体が好ましい。
【0110】
アクリル系粘着剤は、ベースポリマーとしての上記アクリル系ポリマーに加えて、例えばエポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、シラン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の公知の架橋剤をさらに含む粘着剤組成物を用いて形成することができる。架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。架橋剤の使用量は特に限定されず、所望の凝集力が得られるように設定することができる。通常は、アクリル系ポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量を0.05~10重量部(好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.3~7重量部、例えば1~5重量部)程度とすることが適当である。
【0111】
ここに開示される技術における粘着剤(例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤等)には、当該粘着剤への含有が許容される適宜の成分(添加剤)を必要に応じて配合することができる。かかる添加剤の例として、軟化剤、剥離助剤、顔料または充填材、酸化防止剤、光安定剤(ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤等を包含する意味である。)等が挙げられる。このような添加剤は、それぞれ、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。各添加剤の配合量は、例えば、保護シート用粘着剤の分野における通常の配合量と同程度とすることができる。
【0112】
ここに開示される技術における粘着剤層は、例えば、水分散型粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物または活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。粘着剤層の形成は、公知の粘着シートにおける粘着剤層形成方法に準じて行うことができる。例えば、粘着剤組成物を基材に直接付与(典型的には塗布)して乾燥させる方法(直接法)を好ましく採用することができる。また、粘着剤組成物を剥離性のよい表面(例えば、剥離ライナーの表面、離型処理された基材背面等)に付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。
【0113】
粘着剤層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜決定することができる。被着体表面に対する密着性の観点から、粘着剤層の厚さは、通常、2μm以上とすることが適当であり、3μm以上とすることが好ましい。一態様において、マージン部の切取り操作を安定して行うために適した粘着力(剥離強度)を実現しやすくする観点から、粘着剤層の厚さを5μm以上(例えば7μm以上)とすることが好ましい。また、粘着力の経時上昇抑制や再剥離性の観点から、粘着剤層の厚さは、通常、100μm以下とすることが適当であり、30μm以下が好ましく、20μm以下(例えば15μm以下)としてもよい。
【0114】
<用途>
ここに開示される粘着シートの保護シート部が貼り付けられる被着体(保護対象物)の種類は特に限定されない。上記被着体は、例えば、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム、亜鉛メッキ鋼板等の金属材料;ガラス、セラミックス等の無機材料;ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂(典型的には、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA))、環状ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリルスチレンアクリレート共重合体(ASA)、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料;天然ゴム、合成ゴム、アクリルゴム、熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等)のゴム材料;これらの複合素材;等からなる表面を備える被着体であり得る。被着体の表面は、アクリル系、ポリエステル系、アルキド系、メラミン系、ウレタン系、酸エポキシ架橋系、あるいはこれらの複合系(例えばアクリルメラミン系、アルキドメラミン系)等の塗料による塗装面であってもよい。
【0115】
上記被着体は、上述のような材料を用いて形成された資材、成形体、部材、製品等であり得る。特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートは、各種の部材を保護する用途に好ましく用いられ得る。例えば、上記粘着シートの保護シート部から構成される保護シートを部材の表面(保護対象面)に設置する用途に好適である。上記部材の一好適例として、自動車等の車両を構成する部材が挙げられる。車両を構成する部材の非限定的な例としては、車体の外装板、ピラー、窓板、内装材、構造材等が挙げられる。
【0116】
被着体の表面性状は特に限定されない。粘着シートの保護シート部を被着体に貼り付けた後にマージン部を引っ張って切り取る操作を行いやすいという観点から、平滑な表面を有する保護対象物に好ましく適用され得る。例えば、樹脂材料(例えばアクリル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂等)やガラス材料により構成された平滑な表面を有する部材表面を被着体とすることが好ましい。
【0117】
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1) 基材と該基材の一方の面上に配置された粘着剤層とを含む粘着シートであって、
上記粘着シートは、被着体に貼り付けられて該被着体を保護する保護シート部と、上記保護シート部を囲む切取り予定線によって該保護シート部と区画されたマージン部とを含み、かつ上記切取り予定線に沿って設けられた破断補助構造を備えており、
上記基材は樹脂フィルムを主構成要素として含み、
上記保護シート部を被着体に貼り付けた後に該被着体から上記粘着シートを剥がす方向に上記マージン部を引っ張ることにより上記マージン部が上記保護シート部から切り取られるように構成されている、粘着シート。
(2) 上記粘着シートは長尺状であってロール状に巻回されている、上記(1)に記載の粘着シート。
(3) 上記粘着剤層の表面が上記粘着シートの背面に剥離可能に当接している、上記(1)または(2)に記載の粘着シート。
(4) 上記粘着シートの長手方向に配列された複数の上記保護シート部を含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載の粘着シート。
(5) 上記破断補助構造は、切れ目および溝の少なくとも一方を含む、上記(1)~(4)のいずれかに記載の粘着シート。
【0118】
(6) 上記破断補助構造は、上記切取り予定線に沿って延びる溝を少なくとも含む、上記(1)~(5)のいずれかに記載の粘着シート。
(7) 上記溝は上記基材の背面側に形成されている、上記(6)に記載の粘着シート。
(8) 上記基材のうち上記溝の底を構成する樹脂材料の引張弾性率が300MPa以上である、上記(6)または(7)に記載の粘着シート。
(9) 上記破断補助構造は、上記マージン部の切取り開始端に配置された切れ目を含む、上記(1)~(8)のいずれかに記載の粘着シート。
(10) 上記破断補助構造は、上記マージン部の切取り開始端に配置された切れ目に連続または近接して形成された溝を含む、上記(9)に記載の粘着シート。
【0119】
(11) 上記基材は、上記樹脂フィルムとしてポリオレフィン系樹脂フィルムを含む、上記(1)~(10)のいずれかに記載の粘着シート。
(12) 上記保護シート部の180度剥離強度が3N/25mm以上である、上記(1)~(11)のいずれかに記載の粘着シート。
【0120】
(13) 上記粘着シートは、分割予定線で仕切られた複数の貼付けブロックを含む、上記(1)~(12)のいずれかに記載の粘着シート。
(14) 上記複数の貼付けブロックの各々は、少なくとも一つの上記保護シート部と該保護シート部を囲む上記マージン部とを含む、上記(13)に記載の粘着シート。
(15) 上記粘着シートは長尺状であってロール状に巻回されており、上記複数の貼付けブロックは、上記粘着シートを幅方向に横断するように設定された分割予定線を介して、該粘着シートの長手方向に配列されている、上記(13)または(14)に記載の粘着シート。
(16) 上記分割予定線に沿って形成された分割補助構造を備える、上記(13)~(15)のいずれかに記載の粘着シート。
(17) 上記粘着シートの位置決めをアシストする位置決め補助部を有する、上記(1)~(16)のいずれかに記載の粘着シート。
(18) 上記位置決め補助部は上記マージン部に設けられている、上記(17)に記載の粘着シート。
【0121】
(19) 上記保護シート部の形状は、該保護シート部に外接する最小の長方形における長辺の長さLが短辺の長さLの1.05倍以上となる形状である、上記(1)~(18)のいずれかに記載の粘着シート。
(20) 上記保護シート部に外接する最小の長方形における長辺と、粘着シートの長手方向または該粘着シートの基材を構成する樹脂シートのMDとのなす角度が45度以内である、上記(1)~(19)のいずれかに記載の粘着シート。
(21) 上記基材の厚さは10μm以上100μm以下(例えば25μm以上75μm以下)である、上記(1)~(20)のいずれかに記載の粘着シート。
(22) 上記粘着剤層の厚さは3μm以上30μm以下(例えば5μm以上15μm以下)である、上記(1)~(21)のいずれかに記載の粘着シート。
(23) 上記粘着剤層は、非架橋タイプの粘着剤からなる粘着剤層である、上記(1)~(22)のいずれかに記載の粘着シート。
【0122】
(24) 部材の表面に保護シートが貼り付けられた保護シート付き部材を製造する方法であって:
樹脂フィルムを主構成要素とする基材と該基材の一方の面上に配置された粘着剤層とを含む粘着シートを用意すること、ここで、上記粘着シートは、被着体に貼り付けられて該被着体を保護する保護シート部と、上記保護シート部を囲む切取り予定線により該保護シート部と区画されたマージン部とを含み、かつ上記切取り予定線に沿って設けられた破断補助構造を備えている;
上記保護シート部を上記部材に貼り付けること;および、
上記部材から上記粘着シートを剥がす方向に上記マージン部を引っ張ることにより、上記保護シート部を上記部材上に残して該保護シート部から上記マージン部を切り取ること;
を包含する、保護シート付き部材の製造方法。
(25) 部材の表面に保護シートを貼り付ける方法であって、
樹脂フィルムを主構成要素とする基材と該基材の一方の面上に配置された粘着剤層とを含む粘着シートを用意すること、ここで、上記粘着シートは、被着体に貼り付けられて該被着体を保護する保護シート部と、上記保護シート部を囲む切取り予定線により該保護シート部と区画されたマージン部とを含み、かつ上記切取り予定線に沿って設けられた破断補助構造を備えている;
上記保護シート部を上記部材に貼り付けること;および、
上記部材から上記粘着シートを剥がす方向に上記マージン部を引っ張ることにより、上記保護シート部を上記部材上に残して該保護シート部から上記マージン部を切り取ること;
を包含する、保護シートの貼付け方法。
【実施例
【0123】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り、重量基準である。
【0124】
各例において使用した基材および粘着剤組成物は、以下のとおりである。
(基材S1)
PP(日本ポリプロ株式会社製のホモポリプロピレン、商品名「ノバテックPP FY4」、MFR=5.0。以下同じ。)70部とPE(日本ポリエチレン株式会社製の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、商品名「カーネル KF380」、密度d=0.925g/cm。以下同じ。)30部とを含む成形材料(PP/PE)を、Tダイフィルム成形機にて溶融混練し、押出成形することにより、厚さ40μmの単層の樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムの背面を長鎖アルキル系剥離処理剤で処理したものを基材S1として使用した。
なお、この基材S1および以下の基材S2~S6の作製に使用する成形材料には、それぞれ、樹脂材料100部に対してTiO(石原産業製、Si-Alで被覆したルチル型二酸化チタン、商品名「タイペーク(TIPAQUE) CR-95」)10部を配合した。
【0125】
(基材S2)
PPとPEとをTダイフィルム成形機にて溶融混練し、三層共押出成形することにより、PPにより構成された背面層と前面層との間にPEにより構成された中間層を有する三層構造の樹脂フィルム(厚さ40μm)を得た。背面層、中間層、前面層の厚さは、それぞれ10μm、20μm、10μmとなるようにした。この樹脂フィルムの背面に基材S1と同様の剥離処理を施したものを基材S2として使用した。
【0126】
(基材S3)
PPとPEとをTダイフィルム成形機にて溶融混練し、三層共押出成形することにより、PEにより構成された背面層と前面層との間にPPにより構成された中間層を有する三層構造の樹脂フィルム(厚さ40μm)を得た。背面層、中間層、前面層の厚さは、それぞれ10μm、20μm、10μmとなるようにした。この樹脂フィルムの背面に基材S1と同様の剥離処理を施したものを基材S3として使用した
【0127】
(基材S4)
Tダイフィルム成形機にてPPを押出成形することにより、厚さ40μmの単層の樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムの背面に基材S1と同様の剥離処理を施したものを基材S4として使用した
【0128】
(基材S5)
Tダイフィルム成形機にてPEを押出成形することにより、厚さ40μmの単層の樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムの背面に基材S1と同様の剥離処理を施したものを基材S5として使用した
【0129】
(基材S6)
PP70部とPE30部とを含む成形材料(PP/PE)と、PE70部とPP30部とを含む成形材料(PE/PP)とを、Tダイフィルム成形機にて溶融混練し、押出成形することにより、PE/PPにより構成された背面層と前面層との間にPP/PEにより構成された中間層を有する三層構造の樹脂フィルム(厚さ40μm)を得た。背面層、中間層、前面層の厚さは、それぞれ10μm、20μm、10μmとなるようにした。この樹脂フィルムの背面に基材S1と同様の剥離処理を施したものを基材S6として使用した
【0130】
(基材S7)
東レ株式会社製のPETフィルム、商品名「ルミラーS105」(厚さ38μm)の背面に基材S1と同様の剥離処理を施したものを基材S7として使用した。
【0131】
各例に係る基材について、上述した方法により全体弾性率Eを測定した。三層構造の基材については、前面層形成用の樹脂材料を用いて厚さ40μmの単層の樹脂フィルムを作製し、この樹脂フィルムを測定サンプルとして上述した方法により底部弾性率Eを測定した。結果を表1,2に示す。これらの表において、単層の基材の底部弾性率Eとしては、該基材の全体弾性率Eと同じ値を記載している。
【0132】
(粘着剤組成物A1)
ポリイソブチレン(BASF社製の商品名「Oppanol N80」)を有機溶剤に溶解して、粘着剤組成物A1を調製した。
【0133】
(粘着剤組成物A2)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器を用いて、2-エチルヘキシルアクリレート50部、n-ブチルアクリレート50部、アクリル酸5部および2-ヒドロキシエチルアクリレート1部を含むモノマー混合物を、重合溶媒としてトルエン、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリルを用いて窒素還流しながら60℃6時間溶液重合させることにより、アクリル系ポリマーのトルエン溶液(固形分濃度30%)を得た。このトルエン溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマー100部に対してエポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)0.5部を加えて混合することにより、粘着剤組成A2を調製した。
【0134】
(粘着剤組成物A3)
アクリル系ポリマー100部に対するエポキシ系架橋剤の使用量を2部に変更した他は粘着剤組成物A2の調製と同様にして、粘着剤組成物A3を調製した。
【0135】
<粘着シートの作製>
(例1)
基材S1の糊面側表面に粘着剤組成物A1を塗布し、80℃で1分間乾燥させて厚さ10μmの粘着剤層を形成し、縦60cm、横30cmの長方形状に裁断して、未加工の粘着シート(破断補助構造未形成の粘着シート)を得た。このとき、粘着シートの縦方向が基材のMD(すなわち押出し方向)となるようにした。次いで、この未加工粘着シートの中央部に、縦20cm、横10cmの長方形状の切取り予定線に沿って、後述するパターン1の加工(破断補助構造形成加工)を施して、本例に係る加工済み粘着シートを得た。
なお、例1の粘着シートおよび以下の例2~7および例9~17に係る粘着シートには、パターン1~7のいずれかの加工のほか、位置決め部として、粘着シートの長手方向の一端の両角部に直径10mmの円形の貫通孔をそれぞれ形成した。
【0136】
(例2~8)
パターン1に代えて表1に示すパターンの加工をそれぞれ施した他は例1と同様にして、例2~8に係る加工済み粘着シートを得た。
【0137】
(例9)
例9としては、未加工の粘着シートを使用した。
【0138】
(例10~14)
基材S1に代えて表2に示す基材をそれぞれ使用した他は例7と同様にして、例10~14に係る粘着シートを得た。
【0139】
(例15~17)
表2に示す基材および粘着剤組成物をそれぞれ使用した他は例7と同様にして、例15~17に係る粘着シートを得た。
【0140】
<加工パターン>
(パターン1)
短辺(2辺とも同じ):両端5mmを残して長さ90mmのスリットを形成した。
長辺(2辺とも同じ):両端5mmを残して、長さ90mmのスリットを2本、10mmの間隔をおいて形成した。
【0141】
(パターン2)
切取り予定線の全長にわたってミシン目加工を施した。ミシン目を構成する切れ目の長さAは3mmとし、切れ目の間隔Bは2mmとした(すなわち、A:B=1.5:1)。上記ミシン目加工は、公知のミシン目加工機を用いて、基材の背面側から行った。
【0142】
(パターン3)
基材の背面側から加工刃を進入させることにより、切取り予定線の全長にわたって深さ30μmの刻み目を形成した。
【0143】
(パターン4)
短辺(2辺とも同じ):パターン2と同様のミシン目を全長にわたって形成した。
長辺(2辺とも同じ):パターン3と同様の刻み目を全長にわたって形成した。
【0144】
(パターン5)
短辺(2辺とも同じ):パターン2と同様のミシン目を全長にわたって形成した。
長辺(2辺とも同じ):パターン1の長辺と同様に、両端5mmを残して、長さ90mmのスリットを2本、10mmの間隔をおいて形成した。
【0145】
(パターン6)
パターン1において、隣接するスリットの端部を結ぶように、切取り予定線に沿ってパターン3と同様の刻み目を形成した。
【0146】
(パターン7)
短辺(2辺とも同じ):パターン2と同様のミシン目を全長にわたって形成した。
長辺(2辺とも同じ):両端に長さ10mmのスリットを形成し、それらのスリットの間にパターン3と同様の刻み目(長さ180mm)を形成した。
【0147】
(パターン8)
パターン7における長方形状の切取り予定線の形状を、両長辺の中央部180mmの範囲(すなわちパターン7において刻み目が形成された範囲)が短辺の一端側にそれぞれ10mmオフセットし、上記長辺中央部の両端(すなわち、刻み目の両端)と短辺とを半径10mmの円弧状のスリットで繋いだ形状に変更した。
【0148】
<貼付け試験>
縦20cm、横10cmの長方形状に成形されたPMMA板を被着体とし、各例に係る粘着シートの切取り予定線をPMMA板の外周に位置合わせして、該粘着シートのうち上記切取り予定線の内側の部分(保護シート部)を上記PMMA板に圧着した。次いで、各粘着シートの長手方向における他端(位置決め部が形成された側とは反対側の端部)においてPMMA板からはみ出している部分(マージン部)を手で掴み、PMMA板の表面に対して約120度~150度の角度で長尺方向に引っ張ることにより、保護シート部からマージン部を切り取った。その後、PMMA板上に残った保護シート部から構成された保護シートの外周部を目視で観察した。かかる貼付け試験を各例につき3回行い、粘着シートの性能を次の観点から評価した。
【0149】
(貼付け作業性)
以下の4水準により、保護シート部の貼付け作業性を評価した。
E:貼付け作業性に問題がない(貼付け作業性に優れる)。
G:貼付け位置の調整や貼り直しのために作業時間が長くなることがある(貼付け作業性良好)。
A:粘着シートの取扱いに慎重を要するため作業時間が長くなることがある(実用上許容可能な貼付け作業性を有する)。
P:保護シート部の粘着面に触れることなく被着体に貼り付けることができない(貼付け作業性に乏しい)。
【0150】
(切取り作業性)
以下の4水準により、マージン部を切り取る際の作業性を評価した。
E:途中で手を止めることなくマージン部を切り取ることができる(切取り作業性に優れる)。
G:部分的にマージン部の切取り作業に慎重を要することにより、作業時間がやや長くなる(切取り作業性良好)。
A:部分的に保護シート部を手で押さえてマージン部を切り取る必要があることにより、作業時間が長くなる(実用上許容可能な切取り作業性を有する)。
P:マージン部の切取りにはカッター等の切断器具が必要である(切取り作業性に乏しい)。
【0151】
(保護シートの外観)
以下の4水準により、保護シートの外周部における外観を評価した。
E:ササクレやヒゲは全くみられない(外観に優れる)。
G:ササクレやヒゲの発生がみられるが、少数であり、目立たない(外観良好)。
A:ササクレやヒゲの数が多い、または長くて視認されやすい(実用上許容可能な外観を有する)。
P:ササクレやヒゲにより保護シートの外周形状が損なわれ、被着体表面の全域を覆うことができない(外観不合格)。
【0152】
<曲面追従性>
長方形平板状のPMMA板を、垂直方向の曲率が3000mm、水平方向の曲率が5000mmの三次元形状となるように熱変形させたものを被着体とした。各例に係る未加工の粘着シートを縦20cm、横10cmの長方形状に裁断し、上記被着体の中央部に室温で貼り付けて、30分経過後の状況を目視で観察した。その観察結果に基づいて、以下の4水準で曲面追従性を評価した。
E:保護シートの全域において浮きはみられない(曲面追従性に優れる)。
G:保護シートの外周において部分的にわずかな浮きがみられる(曲面追従性良好)。
A:保護シートの外周において部分的に明らかな浮きがみられる(実用上許容可能な曲面追従性を有する)。
P:曲面に追従できずに保護シートの剥がれが発生する(曲面追従性に乏しい)。
【0153】
結果を表1,2に示す。これらの表には、各例に係る粘着シートにおいて上述した方法で測定した剥離強度を併せて示している。
【0154】
【表1】
【0155】
【表2】
【0156】
これらの表に示されるように、切取り予定線に沿って破断補助構造が設けられた例1~8および例10~17の粘着シートは、いずれも、実用上許容可能なレベルの貼付け作業性および切取り作業性を有するものであった。切取り開始端に切れ目を有する加工パターンを適用した粘着シートは、特に切取り作業性が良好であった。なお、剥離強度が低い例17の粘着シートは、マージン部を切り取る際に保護シート部が浮き上がりやすく、同じ加工パターンを適用した他の粘着シートに比べて作業時間が長くなる傾向であった。
【0157】
また、基材S1を用いた検討において、各側辺部分を2つのスリットにより構成した粘着シートや、切取り予定線における側辺部分に破断補助構造として溝(刻み目)を設けた粘着シートによると、外観のよい保護シートを形成することができた。側辺部分にスリットと溝の組合せによる破断補助構造を設けた例6は特に外観に優れていた。例2に係る粘着シートでは、側辺部分に設けられたミシン目間に複数の非加工部が存在することから、保護シートの外周部においてやや多くのヒゲが観察された。また、例11では保護シートの側辺部分においてササクレが観察され、例12では側辺部分におけるササクレと切取り開始端および切取り終了端におけるヒゲが観察されたが、いずれも保護シートの保護性能を損なうほどのものではなかった。
【0158】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0159】
1 粘着シート
1A 粘着面
1B 背面
2 保護シート部
3 切取り予定線
3A,3C 短辺
3B,3D 長辺
4 マージン部
10 基材
10A 一方の面
10B 他方の面(背面)
12 前面層
14 中間層
16 背面層
30 破断補助構造
32 切れ目(ミシン目、破断補助構造)
34 切れ目(スリット、破断補助構造)
36 溝(刻み目、破断補助構造)
36A 底
42 位置決め補助部
50 粘着剤層
90 被着体(保護対象物、部材)
100 粘着シートロール
100A,100B 貼付けブロック
102 分割予定線
120 分割補助構造
図1
図2
図3