(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置
(51)【国際特許分類】
B60R 22/28 20060101AFI20220615BHJP
B60R 22/34 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
B60R22/28 106
B60R22/28 107
B60R22/34
(21)【出願番号】P 2018040106
(22)【出願日】2018-03-06
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 康二
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-287621(JP,A)
【文献】特開2008-238998(JP,A)
【文献】特開2010-100114(JP,A)
【文献】特開2015-054647(JP,A)
【文献】特開2015-231817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00 - 22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
シートベルトと、
前記フレームに回転可能に支持されるとともに前記シートベルトを巻き取るスプールと、
非作動時に前記スプールの回転を許容し、作動時に前記スプールのシートベルト引出し方向の回転を阻止するロック機構と、
前記シートベルトにかかる荷重を制限して乗員のエネルギを吸収緩和するエネルギ吸収機構と、
を備え、
前記エネルギ吸収機構は、
前記スプール内に内蔵され、一端部が減速機構を介して前記スプールに連結され、他端部が前記ロック機構でロック可能であって、前記スプールと前記ロック機構との回転差によってエネルギを吸収する第1エネルギ吸収部材と、
前記減速機構の前記第1エネルギ吸収部材側の出力部と前記スプールとを連結し、前記スプールと前記出力部の回転差によってエネルギを吸収する第2エネルギ吸収部材と、
を有する、
シートベルトリトラクタ。
【請求項2】
前記エネルギ吸収機構の作動時の荷重伝達が前記スプール、前記減速機構、前記第1エネルギ吸収部材または前記第2エネルギ吸収部材、の順となる、
請求項1に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項3】
フレームと、
シートベルトと、
前記フレームに回転可能に支持されるとともに前記シートベルトを巻き取るスプールと、
非作動時に前記スプールの回転を許容し、作動時に前記スプールのシートベルト引出し方向の回転を阻止するロック機構と、
前記シートベルトにかかる荷重を制限して乗員のエネルギを吸収緩和するエネルギ吸収機構と、
を備え、
前記エネルギ吸収機構は、第1エネルギ吸収部材と、第2エネルギ吸収部材と、前記スプールと前記第1エネルギ吸収部材との間に配置される減速機構とを有し、
前記第2エネルギ吸収部材は、前記減速機構の前記第1エネルギ吸収部材側の出力部と前記スプールとを連結し、
前記ロック機構が作動状態のとき、
前記減速機構による前記スプールから前記第1エネルギ吸収部材への減速比を1に維持し、
前記第2エネルギ吸収部材は変形を起こすような外力を受けずに、相対的に大きなエネルギ吸収荷重で吸収緩和する第1段階と、
前記減速機構の前記減速比を1以上の所定値に切り替え、
前記第1エネルギ吸収部材及び前記第2エネルギ吸収部材は変形し、相対的に中位のエネルギ吸収荷重で吸収緩和する第2段階と、
前記減速機構の前記減速比を前記所定値に維持し、
前記第2エネルギ吸収部材は、前記第2段階で前記スプールと前記出力部との連結が解除されることにより作用せずに、かつ、前記第1エネルギ吸収部材は変形し、相対的に小さなエネルギ吸収荷重で吸収緩和する第3段階と、を実施可能であり、
前記減速機構の作動方法によって、前記第1段階、前記第2段階、前記第3段階のうち少なくとも1つを実施する、
シートベルトリトラクタ。
【請求項4】
前記減速機構による前記スプールから前記第1エネルギ吸収部材への減速比を1から1より大きい所定値へと切り替える切替機構を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項5】
前記第1エネルギ吸収部材は、トーションバーであり、
前記第2エネルギ吸収部材は、前記減速機構の前記トーションバー側の出力部と前記スプールとを連結し、前記スプールと前記トーションバーの回転差による変形によってエネルギを吸収するDピンである、
請求項4に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項6】
前記エネルギ吸収機構は、前記ロック機構が作動状態のとき、
前記切替機構が前記減速比を1に維持し、相対的に大きなエネルギ吸収荷重で前記トーションバーがねじられる第1段階と、
前記切替機構が前記減速比を前記所定値に切り替え、相対的に小さなエネルギ吸収荷重で前記トーションバーがねじられ、かつ、前記Dピンが変形する第2段階と、
前記切替機構が前記減速比を前記所定値に維持し、前記Dピンが前記スプールから抜け、相対的に小さなエネルギ吸収荷重で前記トーションバーがねじられる第3段階と、
を実施可能であり、
前記切替機構が前記減速比を1に維持した場合には前記第1段階のみ実施可能であり、
前記切替機構が前記減速比を前記所定値に切り替えるタイミングを早くした場合には前記第2段階及び前記第3段階のみを実施可能である、
請求項5に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項7】
前記減速機構は、サンギヤ、プラネタリギヤ、インターナルギヤ、キャリアを有する遊星歯車機構であり、
前記サンギヤが前記スプールと一体的に回転し、
前記キャリアが前記トーションバーと一体的に回転し、
前記切替機構は、前記インターナルギヤと前記サンギヤとを連結して一体回転させて前記減速比を1とする状態から、前記インターナルギヤと前記サンギヤとの連結を解除して、かつ、前記インターナルギヤの回転を止めて、前記減速比を前記所定値とする状態へと切り替える、
請求項5または6に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項8】
前記切替機構は、
前記サンギヤと一体回転する前記スプールと前記インターナルギヤとの連結及び解除を軸方向に移動することによって切り替えるリリースリングと、
前記リリースリングに解除方向に駆動力を与える駆動機構と、
前記インターナルギヤを係止して回転を止めるパウルと、
を有する、
請求項7に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項9】
前記減速機構は、サンギヤ、プラネタリギヤ、インターナルギヤ、キャリアを有する遊星歯車機構であり、
前記インターナルギヤが前記スプールと一体的に回転し、
前記キャリアが前記トーションバーと一体的に回転し、
前記切替機構は、前記インターナルギヤと前記サンギヤとを連結して一体回転させて前記減速比を1とする状態から、前記インターナルギヤと前記サンギヤとの連結を解除して前記サンギヤの回転を止めて前記減速比を前記所定値とする状態へと切り替える、
請求項5または6に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項10】
乗員を拘束するシートベルトと、
前記シートベルトを引き出し可能に巻き取るとともに、緊急時に作動して前記シートベルトの引出しを阻止する、請求項1~9のいずれか1項に記載のシートベルトリトラクタと、
前記シートベルトリトラクタから引き出された前記シートベルトに摺動可能に支持されたタングと、
車体または車両シートに設けられ、前記タングが離脱可能に係止されるバックルと、
を備えるシートベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルトリトラクタ及びこれを備えるシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車等の車両に装備されているシートベルト装置は、例えばシートベルト装着状態で衝突時等の車両に大きな車両減速度が作用した場合のような緊急時に、シートベルトで乗員を拘束することにより乗員のシートからの飛び出しを阻止する。
【0003】
このようなシートベルト装置においては、シートベルトを巻き取るシートベルトリトラクタを備えている。このシートベルトリトラクタでは、シートベルトは非装着時にはスプールに巻き取られているが、装着時には引き出されて乗員に装着される。そして、前述のような緊急時にシートベルトリトラクタのロック手段が作動してスプールのベルト引出方向の回転を阻止することにより、シートベルトの引出しが阻止される。これにより、緊急時にシートベルトは乗員を拘束する。
【0004】
ところで、この従来のシートベルト装置のシートベルトリトラクタにおいては、車両衝突等の緊急時にシートベルトが乗員を拘束するとき、車両減速度が生じるため、乗員が慣性により前方へ移動しようとする。このため、シートベルトには荷重が加えられるとともに、乗員はこのシートベルトからエネルギを加えられるようになる。乗員に対してこのエネルギは、できれば制限される方が望ましい。
【0005】
そこで、シートベルトリトラクタにおいては、従来、トーションバーを設けて、シートベルト装着状態での緊急時に、エネルギ吸収部材の作用によりこのシートベルトにかかる荷重を制限して乗員のエネルギを吸収緩和するエネルギ吸収機構(以下、EA機構ともいう)を備えるシートベルトリトラクタが開発されている。
【0006】
しかしながら、従来のシートベルトリトラクタは、衝突後の制限荷重が1つの制限荷重に設定されるだけである。実際には、乗員に加えられるエネルギは、乗員の体重等によって種々異なる。このように種々異なる大きなエネルギに対して、1つの制限荷重で対応するだけではなく、車両緊急時の状況に応じて制限荷重を設定する方が、乗員をより効果的にかつより適切に拘束することができる。
【0007】
そこで、シートベルトにかかる制限荷重を種々設定することができるシートベルトリトラクタが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0008】
この特許文献1、2に開示のシートベルトリトラクタは、EA特性の異なる2つのEA機構(2種類のトーションバー、または、トーションバー及びDピン)を設けるとともに、これらのEA機構を緊急時の状況に応じて1つまたは2つ作動するようにしている。このように、2つのEA機構を適宜選択して作動することで、シートベルトにかかる制限荷重を緊急時の状況に応じて2段階に設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6176719号公報
【文献】特許第5160373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、乗員にとって適正なEA荷重は例えば乗員の体格などの乗員個々の特性によって異なる。そこで従来の2つのEA要素で1または2段階のEA荷重を設定可能な構成に対して、2つのEA要素でも3段階以上のEA荷重を設定できると、よりきめ細かいEA荷重の制御が可能となる。しかし、EA荷重の段階を増やすためにEA要素を増やすと、シートベルトリトラクタのコストや重量が増えてしまう。
【0011】
本発明は、よりきめ細かいEA荷重コントロールが可能なシートベルトリトラクタ及びこれを備えるシートベルト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態の一観点に係るシートベルトリトラクタは、フレームと、シートベルトと、前記フレームに回転可能に支持されるとともに前記シートベルトを巻き取るスプールと、非作動時に前記スプールの回転を許容し、作動時に前記スプールのシートベルト引出し方向の回転を阻止するロック機構と、前記シートベルトにかかる荷重を制限して乗員のエネルギを吸収緩和するエネルギ吸収機構と、を備え、前記エネルギ吸収機構は、前記スプール内に内蔵され、一端部が減速機構を介して前記スプールに連結され、他端部が前記ロック機構でロック可能であって、前記スプールと前記ロック機構との回転差によってエネルギを吸収する第1エネルギ吸収部材と、前記減速機構の前記第1エネルギ吸収部材側の出力部と前記スプールとを連結し、前記スプールと前記出力部の回転差によってエネルギを吸収する第2エネルギ吸収部材と、を有する。
【0013】
同様に、本発明の実施形態の一観点に係るシートベルト装置は、乗員を拘束するシートベルトと、前記シートベルトを引き出し可能に巻き取るとともに、緊急時に作動して前記シートベルトの引出しを阻止する、上記のシートベルトリトラクタと、前記シートベルトリトラクタから引き出された前記シートベルトに摺動可能に支持されたタングと、車体または車両シートに設けられ、前記タングが離脱可能に係止されるバックルと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、よりきめ細かいEA荷重コントロールが可能なシートベルトリトラクタ及びこれを備えるシートベルト装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るシートベルトリトラクタが適用されるシートベルト装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係るシートベルトリトラクタの分解斜視図である。
【
図3】シートベルトリトラクタのうちEA機構を含むシャフトサブアセンブリの分解斜視図である。
【
図4】
図3に示すシャフトサブアセンブリの組立斜視図である。
【
図6】EA機構の動作の第1段階の状態を示す模式図である。
【
図7】EA機構の動作の第2段階の状態を示す模式図である。
【
図8】EA機構の動作の第3段階の状態を示す模式図である。
【
図9】切替機構がインターナルギヤとスプールとを係合している状態を示す図である。
【
図10】切替機構がインターナルギヤとスプールとの係合を解除している状態を示す図である。
【
図11】本実施形態により実現可能なスプールの回転ストロークとEA荷重の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。なお、以下の説明において、
図2以降の各図面で示すx方向、y方向、z方向は互いに垂直な方向である。x方向はスプール12の回転軸の方向である。y方向、z方向は、それぞれスプール12の回転軸からの遠心方向であり、典型的にはz方向は上下方向である。
【0017】
まず
図1を参照して、実施形態に係るシートベルトリトラクタ3が適用されるシートベルト装置1の構成の一例を説明する。
【0018】
シートベルト装置1は、車両に搭載された車載システムの一例である。シートベルト装置1は、例えば、シートベルト4と、シートベルトリトラクタ3と、ショルダーアンカー6と、タング7と、バックル8とを備える。
【0019】
シートベルト4は、車両のシート2に座る乗員9を拘束するウェビングの一例であり、リトラクタ3に引き出し可能に巻き取られる帯状部材である。シートベルト4の先端のベルトアンカー5は、シート2又はシート2の近傍の車体に固定される。
【0020】
シートベルトリトラクタ3は、シートベルト4の巻き取り又は引き出しを可能にする巻き取り装置の一例であり、車両衝突時等の所定値以上の減速度が車両に加わると、シートベルト4がシートベルトリトラクタ3から引き出されることを制限する。シートベルトリトラクタ3は、シート2又はシート2の近傍の車体に固定される。
【0021】
ショルダーアンカー6は、シートベルト4が挿通するベルト挿通具の一例であり、シートベルトリトラクタ3から引き出されたシートベルト4を乗員9の肩部の方へガイドする部材である。
【0022】
タング7は、シートベルト4が挿通するベルト挿通具の一例であり、ショルダーアンカー6によりガイドされたシートベルト4にスライド可能に取り付けられた部品である。
【0023】
バックル8は、タング7が着脱可能に連結される部品であり、例えば、シート2又はシート2の近傍の車体に固定される。
【0024】
次に
図2~
図5を参照して、実施形態に係るシートベルトリトラクタ3と、本実施形態の要部であるエネルギ吸収機構60の構成を説明する。なお、以下ではエネルギ吸収機構60はEA(Energy Absorption)機構60とも表記する。
図2は、実施形態に係るシートベルトリトラクタ3の分解斜視図である。
図3は、シートベルトリトラクタ3のうちEA機構60を含むシャフトサブアセンブリ20の分解斜視図である。
図4は、
図3に示すシャフトサブアセンブリ20の組立斜視図である。
図5は、EA機構60の構成を模式的に示す図である。なお、
図5の模式図は、
図3,4に記載の部品を一部省略して、主にEA機構60の接続関係を示している。
【0025】
図2に示すように、シートベルトリトラクタは、プリテンショナ(PT)サブアセンブリ10と、シャフトサブアセンブリ20と、駆動機構30と、切替機構40と、ロック機構50と、を備える。
【0026】
PTサブアセンブリ10は、フレーム11にプリテンショナが搭載されている。プリテンショナは、シャフトサブアセンブリ20のパドルホイール53と接続されており、プリテンショナの作動によって、パドルホイール53がプリテンショナから回転力を受け、これによりスプール12がシートベルト4を引き込む方向に回転する。
【0027】
また、フレーム11には、切替機構40のパウル42が設置されている。フレーム11は、y方向を向いて配置される背板11aと、この背板11aのx方向両側端から直交する方向に突設された左右の側壁11b,11cと、を備え、断面コ字状を形成している。側壁11bはx正方向側、側壁11cはx負方向側に配置されて対向している。側壁11b,11cには、それぞれ円形状の開口11d、11eが形成される。
【0028】
シャフトサブアセンブリ20は、シートベルト4の一端が係止され、シートベルト4が巻きつけられるスプール12を備える。シャフトサブアセンブリ20は、x方向の回転軸まわりに回転可能にフレーム11に取り付けられる。また、シャフトサブアセンブリ20は、
図3に示すように、シートベルトにかかる荷重を制限して乗員のエネルギを吸収緩和するEA機構60も備える。EA機構60の詳細については後述する。
【0029】
切替機構40は、EA機構60の連結状態を切り替える。切替機構40は、リリースリング41と、パウル42とを備える。リリースリング41は環状部材であり、シャフトサブアセンブリ20の一部である。パウルは、フレーム11の側壁11bに取り付けられる。切替機構40の詳細についても後述する。
【0030】
駆動機構30は、切替機構40の切替動作のための駆動力を出力する。駆動機構30は、レバー31と、イニシエータ32と、Oリング33と、ピストン34と、ハウジング35とを有する。
【0031】
レバー31は、環状の部材であり、スプール12の回転軸と同心円状に配置され、周方向の所定距離を移動可能にハウジング35に嵌合される。イニシエータ32は、マイクロガスジェネレータであり、ピストン34を内蔵し、Oリング33を介してハウジング35に取り付けられる。イニシエータ32が発生するガスによりピストン34がレバー31を周方向に押圧して、これによりレバー31は周方向に移動する。
【0032】
また、レバー31は、この周方向の移動によって、ハウジング35に対してx負方向側に突き出すように移動するように、ハウジング35との嵌合部分の構造が形成されている。 なお、このような駆動機構30の構成については、例えば、国際公開第2015/076377号などに開示されている。
【0033】
ロック機構50は、スプール12の軸部を構成する後述するトーションバー61に連結され、非作動時に前記スプールの回転を許容し、作動時に前記スプールのシートベルト引出し方向の回転を阻止する。ロック機構50は、
図2に示すロックサブアセンブリ51と、
図3に示すロッキングベース52とを有する。
【0034】
なお、ロック機構50やプリテンショナ、スプール12の具体的な構成や動作については従来からある通常の構成でよいので説明を省略する。
【0035】
図2に示すように、シャフトサブアセンブリ20は、フレーム11の側壁11b,11cの開口11d,11eをx方向に貫通して設置され、x正方向側の開口11dからの突出部分にはリリースリング41が配置され、x負方向側の開口11eからの突出部分ではロックサブアセンブリ51と接続される。フレーム11のx負方向側の側壁11cにはリテーナ14が取り付けられ、ロックサブアセンブリ51が内蔵される。この状態で、スプール12は、フレーム11に回転可能に支持されるとともにシートベルト4を巻き取ることができる。
【0036】
駆動機構30は、レバー31がパウル42を径方向外側に押し出した状態で(
図9(b)参照)フレーム11のx正方向側の側壁11bに取り付けられる。駆動機構30のx正方向側からは、さらにベアリングプレート15、スペーサ16、リターンスプリング13が取り付けられる。
【0037】
リターンスプリング13は、一端がスプール12の軸部を構成する後述するトーションバー61に連結され、他端がケースに取り付けられ、スプール12をベルト巻取方向に付勢する図示しないスプリングを有する。
【0038】
図3に示すように、シャフトサブアセンブリ20は、スプール12と、リリースリング41と、EA機構60と、リリースリングホルダ21と、ベアリングシャフト22と、ロッドガイド23と、ロッキングベース52と、パドルホイール53と、を有する。
【0039】
EA機構60は、シートベルトにかかる荷重を制限して乗員のエネルギを吸収緩和するための装置である。
図3、
図5に示すように、EA機構60は、2つのエネルギ吸収要素としてトーションバー61(第1エネルギ吸収部材)と、D(Deformation)ピン62(第2エネルギ吸収部材)とを有する。また、EA機構60は減速機構63を有する。また、上述の切替機構40もEA機構60の一部である。
【0040】
トーションバー61は、スプール12とロック機構50との回転差によってエネルギを吸収するエネルギ吸収要素である。
図3,5に示すように、トーションバー61は、スプール12の軸中心に形成された貫通孔12dに挿入されてスプール12内に内蔵される。トーションバー61は、x正方向側の一端部61aが減速機構63を介してスプール12に連結され、x負方向側の他端部61bがロック機構50に連結される。
【0041】
トーションバー61の一端部61aは、円環状のコネクタ70に嵌入されて、コネクタ70を介して減速機構63のキャリア67に連結固定される。また、一端部61aの先端はリターンスプリング13に連結される。
【0042】
トーションバー61の他端部61bは、ベアリングシャフト22、ロッドガイド23を通って、ロッキングベース52と一体回転可能に嵌合される。ロッキングベース52には、x正方向側からパドルホイール53もトーションバー61の外周側に取り付けられる。トーションバー61は、他端部61bがロック機構50でロック可能であり、ロック機構50の作動時には他端部61bの回転が停止される。
【0043】
Dピン62は、減速機構63のトーションバー61側の出力部(本実施形態ではキャリア67)とスプール12とを連結し、スプール12と減速機構63の出力部の回転差により生じる塑性変形によってエネルギを吸収するエネルギ吸収要素である。
【0044】
減速機構63は、所定の減速比でスプール12からトーションバー61へ回転を伝達する。本実施形態では、減速機構63は遊星歯車機構であり、
図3、
図5に示すように、サンギヤ64と、プラネタリギヤ65と、インターナルギヤ66と、キャリア67とを含む。
【0045】
サンギヤ64は、遊星歯車機構の軸心の径方向外側に回転自在に配置されている外歯歯車である。インターナルギヤ66は、サンギヤ64の径方向外側、かつ、サンギヤ64と同軸上に回転自在に配置されている内歯歯車である。プラネタリギヤ65は、サンギヤ64とインターナルギヤ66との間に配置されており、サンギヤ64及びインターナルギヤ66とそれぞれ噛み合う外歯歯車である。プラネタリギヤ65は複数個(
図3では3個)が配置され、サンギヤ64やインターナルギヤ66と同軸上に配置されたキャリア67によって回転自在に支持されている。本実施形態では、
図3に示すように、プラネタリギヤ65は、円板状のキャリア67とリングプレート69によりx方向両側から挟持され、x負方向側からピン68が貫通されてx正方向側のキャリア67に連結されている。
【0046】
サンギヤ64は、スプール12に固定され、スプール12と一体的に回転する。キャリア67は、コネクタ70を介してトーションバー61の一端部61aに連結固定され、トーションバー61の一端部61aと一体的に回転する。
【0047】
図3に示すように、リングプレート69にはDピン62を貫通する貫通孔69aが設けられ、スプール12のx正方向側端面にはDピン62を挿入する挿入孔12cが設けられている。Dピン62は、x正方向側から貫通孔69aを通って挿入孔12cに挿入される。上述のとおりリングプレート69はキャリア67と一体回転可能に連結されているので、このようにDピン62を取りつけることによって、キャリア67とスプール12とを連結した状態にできる。
【0048】
切替機構40は、減速機構63によるスプール12からトーションバー61への減速比を、1から、1より大きい所定値へと切り替える。具体的には、切替機構40は、(1)インターナルギヤ66とサンギヤ64(スプール12)とを連結して一体回転させて減速比を1とする第1の状態(
図9参照)から、(2)インターナルギヤ66とサンギヤ64との連結を解除して、かつ、インターナルギヤ66の回転を止めて、減速比を所定値とする第2の状態(
図10参照)へと切り替える。
【0049】
切替機構40は、上述のとおりリリースリング41とパウル42とを有する。リリースリング41は、サンギヤ64と一体回転するスプール12とインターナルギヤ66との連結及び解除を軸方向(x方向)に移動することによって切り替える。
【0050】
ここで、
図3、
図4に示すように、スプール12は、x正方向側の端部に径方向に突出するフランジ12aを有する。フランジ12aは、径方向外側の外縁にx正方向側に立設する周壁を有し、有底円筒状に形成されている。フランジ12aの内径は、インターナルギヤ66を内周側に嵌め込み可能な大きさで形成される。そして、フランジ12aの周壁には、x正方向側の端面からx負方向側に掘り下げられた切り欠き部12bが設けられる。また、インターナルギヤ66は円筒形状のx負方向側の端面からx正方向側に掘り下げられた切り欠き部66aが設けられる。フランジ12aの切り欠き部12bと、インターナルギヤ66の切り欠き部66aは、周方向の位置が同一となるように設けられる。
【0051】
一方リリースリング41には、
図3、
図4に示すように、円環状の部分から径方向内側に突出する爪部41aが設けられる。爪部41aは、周方向の位置が切り欠き部12b、66aと同一であり、切り欠き部12b、66aと係合可能な位置に設けられる。そして、本実施形態では、このリリースリング41の爪部41aが、リリースリング41のx方向の移動によって、切り欠き部12b、66aの両方と係合した状態、すなわちインターナルギヤ66とスプール12(サンギヤ64)とが連結した状態と、切り欠き部12bのみと係合した状態、すなわちインターナルギヤ66とスプール12(サンギヤ64)との連結が解除された状態とを実現できる。
【0052】
図2~
図4に示すように、インターナルギヤ66の円筒形状の外周面には、x正方向側の端部に径方向外側に突出するラチェット歯車66bが設けられている。ラチェット歯車66bは、パウル42と係合した際にインターナルギヤ66の一方向の回転を規制する。すなわち、パウル42がインターナルギヤ66のラチェット歯車66bと係合することによって、インターナルギヤ66を係止して回転を止めることができる。
【0053】
図6~
図10を参照して本実施形態のシートベルトリトラクタ3におけるEA機構60の動作を説明する。
図6は、EA機構60の動作の第1段階の状態を示す模式図である。
図7は、EA機構60の動作の第2段階の状態を示す模式図である。
図8は、EA機構60の動作の第3段階の状態を示す模式図である。
【0054】
本実施形態では、EA機構60は、ロック機構50が作動状態となると、下記の第1~第3段階をこの順番で実施可能である。
【0055】
EA機構60の動作の第1段階では、切替機構40が減速比を1に維持し、相対的に大きなエネルギ吸収荷重でトーションバー61がねじられる。
【0056】
図6に示すように、第1段階では、切替機構40のリリースリング41は、スプール12の切り欠き部12bと、インターナルギヤ66の切り欠き部66aの両方と係合する。また、切替機構40のパウル42は、インターナルギヤ66のラチェット歯車66bと係合せず、インターナルギヤ66は自由に回転可能な状態である。これにより、スプール12(すなわちサンギヤ64)とインターナルギヤ66が連結されて一体回転する。また、サンギヤ64とインターナルギヤ66との間に回転差が無いので、プラネタリギヤ65及びキャリア67もサンギヤ64(スプール12)と一体回転する。したがって、遊星ギヤ機構のすべてのギヤが一体回転する状態となるので、シートベルト4からスプール12に伝わったエネルギは、リリースリング41、インターナルギヤ66、プラネタリギヤ65、キャリア67を介してトーションバー61へ直接伝わる。すなわち、減速機構63の減速比は1となる。また、スプール12とキャリア67との間にも回転差がないので、Dピン62は変形を起こすような外力を受けない。
【0057】
すなわちEA機構60の動作の第1段階では、減速機構63による減速が無く、相対的に大きなエネルギ吸収荷重でトーションバー61がねじられ、主にトーションバー61によるエネルギ吸収が行われる。
【0058】
図9は、切替機構40がインターナルギヤ66とスプール12とを係合している状態を示す図である。すなわち
図9は、EA機構60の動作の第1段階のときの切替機構40の状態を示す。
図9の(a)は、
図4に示した、シャフトサブアセンブリ20の構成例におけるインターナルギヤ66とスプール12との係合部分Aの拡大図である。
図9の(b)は、(a)の状態を模式的に示す断面図である。
【0059】
図9(a)に示すように、インターナルギヤ66のx負方向側の端部は、スプール12のフランジ部12aのx正方向側の端部より内側に配置され、両者が重畳している。また、インターナルギヤ66の端部の一部にはx正方向側に切り欠かれた切り欠き部66aが設けられ、スプール12の端部の一部にはx負方向側に切り欠かれた切り欠き部12bが設けられる。これらの切り欠き部66a、12bは、周方向の同一位置に配置されると共に、x方向に対向配置される。切り欠き部66aのx方向の深さは、切り欠き部12bのx方向深さより小さく形成される。このため、インターナルギヤ66のx負方向側の端部66cは、スプール12の切り欠き部12bのx方向の途中位置に配置される。
【0060】
このように切り欠き部12b、66aにより形成される開口部に、リリースリング41の爪部41aが係合される。爪部41aの径方向長さは、径方向内側のインターナルギヤ66の切り欠き部66aと少なくとも一部が重なる寸法であり、好ましくは、
図9に示すように先端が切り欠き部66aより軸心側に突出する寸法である。
【0061】
図9に示す状態では、リリースリング41の爪部41aは、インターナルギヤ66の切り欠き部66aのx正方向側の底部に位置する。このとき
図9(b)に示すように、周方向(z方向)から視たときに、爪部41aは、切り欠き12b、66aの両方と係合している。また、
図9(b)に示すように、このとき切替機構40のパウル42は、駆動機構30のレバー31によってインターナルギヤ66の径方向外側に押し出されており、インターナルギヤ66は自由に回転可能な状態である。つまり、
図9では、切替機構40によってインターナルギヤ66とスプール12とが一体回転可能に連結されている。
【0062】
EA機構60の動作の第2段階では、切替機構40が減速比を1以上の所定値に切り替え、相対的に小さなエネルギ吸収荷重でトーションバー61がねじられ、かつ、Dピン62が変形する。
【0063】
図7に示すように、第2段階では、切替機構40のリリースリング41は、駆動機構30によりx負方向側へ移動され、インターナルギヤ66の切り欠き部66aとの係合が解除され、スプール12の切り欠き部12bのみと係合する。これにより、スプール12(すなわちサンギヤ64)とインターナルギヤ66との連結が解除される。また、切替機構40のパウル42は、駆動機構30の作動に伴い、インターナルギヤ66のラチェット歯車66bと係合し、インターナルギヤ66は回転を規制される。これにより、サンギヤ64とインターナルギヤ66との間に回転差が発生するので、キャリア67は、サンギヤ64とプラネタリギヤ65との間のギヤ比に応じて減速回転する。したがって、シートベルト4からスプール12に伝わったエネルギは、サンギヤ64、プラネタリギヤ65、キャリア67を介してトーションバー61へ減速されて伝わる。すなわち、減速機構63の減速比は1以上の所定値となる。この所定値は、サンギヤ64とプラネタリギヤ65との間のギヤ比によって決まる。また、スプール12とキャリア67との間に回転差が生じるので、Dピン62は周方向に外力を受けて、この外力により塑性変形しながらスプール12の挿入孔12cから徐々に抜け出す。
【0064】
すなわちEA機構60の動作の第2段階では、減速機構63による減速が行われ、相対的に小さなエネルギ吸収荷重でトーションバー61がねじられると共に、Dピン62の塑性変形も生じる。すなわち、トーションバー61とDピン62の両方によるエネルギ吸収が行われる。
【0065】
EA機構60の動作の第3段階では、切替機構40が減速比を所定値に維持し、Dピン62がスプール12から抜け、相対的に小さなエネルギ吸収荷重でトーションバー61がねじられる。
【0066】
図8に示すように、第3段階では、第2段階と同様に、切替機構40のリリースリング41はスプール12の切り欠き部12bのみと係合し、切替機構40のパウル42はインターナルギヤ66の回転を規制するので、減速機構63の減速比は1以上の所定値となる。また、第3段階ではDピン62はスプール12の挿入孔12cから抜け落ち、Dピン62の塑性変形によるエネルギ吸収はできない。
【0067】
すなわちEA機構60の動作の第3段階では、減速機構63による減速され、相対的に小さなエネルギ吸収荷重でトーションバー61がねじられ、また、Dピン62の塑性変形によるエネルギ吸収が無いので、第2段階よりもエネルギ吸収荷重が小さくなる。
【0068】
図10は、切替機構40がインターナルギヤ66とスプール12との係合を解除している状態を示す図である。すなわち
図10は、EA機構60の動作の第2、第3段階のときの切替機構40の状態を示す。
図10の(a)(b)の概略は、
図9の(a)(b)と同様である。
【0069】
図10(b)に示すように、駆動機構30が作動してレバー31がx負方向側に移動するのに伴い、切替機構40のリリースリング41もレバー31に押圧されてx負方向側へ移動する。この結果、
図10(a)に示すように、リリースリング41の爪部41aは、インターナルギヤ66の切り欠き部66aから外れ、スプール12の切り欠き部12bのみと係合する状態となる。また、
図10(b)に示すように、このとき切替機構40のパウル42は、レバー31による径方向外側への保持力がなくなるので、径方向内側へ移動して、インターナルギヤ66のラチェット歯車66bと係合した状態となる。これにより、インターナルギヤ66の回転が規制される。
【0070】
図6~
図10を参照して説明したように、本実施形態のシートベルトリトラクタ3では、EA機構60の作動時の荷重伝達が、スプール12、減速機構63、トーションバー61(第1エネルギ吸収部材)またはDピン62(第2エネルギ吸収部材)、の順となる。
【0071】
図11は、本実施形態により実現可能なスプール12の回転ストロークとEA荷重の特性を示す図である。
図11(a)は、
図6~
図8を参照して説明した、EA機構60の動作を第1~第3段階の順番で実施した場合の特性である。
図11(a)に示すように、スプール12の回転ストロークが発生する初期段階では、EA機構60の動作の第1段階Aが実施され、主にスプール12からの外力が減速無しで伝わるトーションバー61によるエネルギ吸収が行われる。第1段階AではEA荷重は相対的に最も大きくなる。その後駆動機構30が作動すると、EA機構60の動作の第2段階Bに遷移し、減速機構63の減速比が増加してトーションバー61のEA荷重が減少するが、Dピン62の変形によるエネルギ吸収の分だけEA荷重が上乗せされる。第2段階BではEA荷重は第1段階と第3段階の中間値となり、相対的に中位となる。そして、Dピン62が抜け落ちると、EA機構60の動作の第3段階Cに遷移し、スプール12からの外力が減速機構63により減速されて伝わるトーションバー61によるエネルギ吸収のみが行われる。第3段階CではEA荷重は相対的に最も小さくなる。
【0072】
従来のEA機構では、シートベルトにかかる制限荷重を種々設定することができるように、EA特性の異なる2つのEA機構を設けるとともに、これらのEA機構を緊急時の状況に応じて1つまたは2つ作動するようにしている。つまり、本実施形態と同様にトーションバーとDピンの2つのEA要素を備える場合、
図11(a)に点線で示すように、2段階のEA荷重しか設定できない。したがって、EA要素の数より大きい数のEA荷重の設定はできなかった。
【0073】
これに対して本実施形態では、スプール12とトーションバーとの間に減速機構63を設けて減速比を切り替えることによって、2つのEA要素を有する構成で3種類のEA荷重を設定できる。このように、本実施形態のシートベルトリトラクタ3は、EA要素の数より大きい数のEA荷重の設定が可能となるので、よりきめ細かいEA荷重コントロールが可能となる。また、EA荷重の段階を増やすためにEA要素を増やさなくても済むので、リトラクタの小型化も図れる。
【0074】
また、本実施形態では、駆動機構30の作動タイミングを制御することによって、EA荷重の特性を変化させることができる。例えば
図11(b)に示すように、第1段階のEA荷重に達する前に駆動機構30を作動させれば、第1段階を経ずに第2段階Bを最初に実施できる。その後、Dピン62が抜け落ちると第3段階Cに遷移する。つまり、駆動機構30の作動タイミングを早くして、切替機構40が減速機構63の減速比を1以上の所定値に切り替えるタイミングを早くした場合には、EA機構60の動作の第2段階B及び第3段階Cのみを実施可能である。また、
図11(c)に示すように、駆動機構30を作動させず、切替機構40が減速機構63の減速比を1に維持した場合には、第2段階Bに遷移させずに第1段階Aのみを実施可能である。
【0075】
このように、本実施形態では、減速機構63の作動方法(減速比を1から所定値に切り替えるタイミングや、切替の有無の変更)によって、第1段階A、第2段階B、第3段階Cのうち少なくとも1つを実施することができる。また、第1段階A、第2段階B、第3段階Cが実施されるスプール12の回転ストロークの範囲を調整できる。
【0076】
図12は、実施形態の変形例を示す模式図である。スプール12及びトーションバー61と、減速機構63との連結構造は、上記実施形態のものに限られない。スプール12からトーションバー61への減速比を1か1以上の所定値に切り替えることができればよい。
【0077】
例えば
図12に示すように、インターナルギヤ66がスプール12と一体的に回転し、キャリア67がトーションバー61と一体的に回転する構成でもよい。この場合、切替機構40は、インターナルギヤ66とサンギヤ64とを連結して一体回転させて減速比を1とする状態と、インターナルギヤ66とサンギヤ64との連結を解除してサンギヤ64の回転を止めて減速比を1より大きい所定値とする状態とを切り替える。
【0078】
また、上記実施形態では、減速機構63の減速比を切り替える切替機構40としてリリースリング41とパウル42を組み合わせて用いる構成を例示したが他の構成でもよい。また、減速機構63は遊星歯車機構以外の構成でもよい。
【0079】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0080】
上記実施形態では、EA機構60がトーションバー61とDピン62の2つのエネルギ吸収部材を有する構成を例示したが、これに限られず、例えばEAプレートやトーションパイプなど他の部材を適用してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 シートベルト装置
4 シートベルト
3 シートベルトリトラクタ
7 タング
8 バックル
11 フレーム
12 スプール
40 切替機構
41 リリースリング
42 パウル
50 ロック機構
60 EA機構(エネルギ吸収機構)
61 トーションバー(第1エネルギ吸収部材)
62 Dピン(第2エネルギ吸収部材)
63 減速機構
64 サンギヤ
65 プラネタリギヤ
66 インターナルギヤ
67 キャリア