(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】水封灰出しコンベヤ装置
(51)【国際特許分類】
F23J 1/02 20060101AFI20220615BHJP
【FI】
F23J1/02 C
(21)【出願番号】P 2018056757
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093388
【氏名又は名称】鈴木 喜三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100093506
【氏名又は名称】小野寺 洋二
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】松山 智哉
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-133438(JP,U)
【文献】特開平09-142896(JP,A)
【文献】実開平03-121325(JP,U)
【文献】特開2015-221399(JP,A)
【文献】特開2005-334819(JP,A)
【文献】実開平01-136249(JP,U)
【文献】特開平04-288404(JP,A)
【文献】特開2007-003041(JP,A)
【文献】特開昭53-137571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉(20)の炉底ホッパー(21)の下部を、冷却水を封止して浸漬する水封ケーシング(2)と、前記水封ケーシング(2)内で前記炉底ホッパー(21)の下方を横断して移動する如く前記水封ケーシング(2)の一端側に設けた駆動歯車(5)と他端側に設けた従動歯車(6)間に掛け渡されたスクレーパ(4)付きの一対のチェーンからなるチェーンコンベヤ(3)を有する水封灰出しコンベヤ装置(1)であって、
前記水封ケーシング(2)の一端側に、当該チェーンコンベヤ(3)のフォワード側(F)チェーン(3a)が、そのフォワード(F)方向の走行に伴い前記スクレーパ(4)で掻き揚げ搬送された前記水封ケーシング(2)の底壁に沈殿する焼却灰を外部に搬出するための底灰排出シュート(9)を備え、
前記チェーンコンベヤ(3)のリターン側(R)の前記炉底ホッパー(21)から見て当該チェーンコンベヤ(3)の走行方向下流側の当該チェーンコンベヤ(3)下部に、当該炉底ホッパー(21)の内側に浮遊する未燃物(30)を前記スクレーパ(4)で水封ケーシング(2)の他端側に掻き揚げ搬送するための案内底板(7)を設け、
前記水封ケーシング(2)の他端側に、前記掻き揚げ搬送された前記未燃物(30)を外部に搬出するための未燃物排出シュート(10)を備え
、
前記チェーンコンベヤ(3)のリターン側(R)の当該チェーンコンベヤ(3)の走行方向上流側に、当該炉底ホッパー(21)の近傍に浮遊する前記未燃物(30)に水封水中に沈積する方向の力を与え、当該炉底ホッパー(21)の水封部を潜り抜けさせるための流体噴射ノズル(14)を有し、
前記チェーンコンベヤ(3)のリターン方向(R)の走行に伴う前記スクレーパ(4)と前記案内底板(7)による前記未燃物(30)の捕捉と掻き揚げ搬送を容易にしたことを特徴とする水封灰出しコンベヤ装置。
【請求項2】
前記流体噴射ノズル(14)で噴射される流体は高速空気流であり、前記流体噴射ノズル(14)から噴射された高速空気流の押圧力で前記未燃物(30)を水封水(16)中に押し込むことを特徴とする請求項
1に記載の水封灰出しコンベヤ装置。
【請求項3】
前記流体噴射ノズル(14)で噴射される流体は微細な気泡塊であり、当該気泡塊による水封水(16)の密度低減に起因する浮力の低減で当該未燃物(30)を水封水(16)中に沈下させることを特徴とする請求項
1に記載の水封灰出しコンベヤ装置。
【請求項4】
前記流体噴射ノズル(14)で噴射される流体は高圧水流であり、当該高圧水流の押圧力で前記未燃物(30)を水封水(16)中に押し込むことを特徴とする請求項
1に記載の水封灰出しコンベヤ装置。
【請求項5】
前記案内底板(7)の前記炉底ホッパー(21)側の前端領域は前記水封水(16)中に没しており、前記従動歯車(6)側の後端領域は当該従動歯車(6)の近傍に向ってリターン側(R)のチェーンコンベヤ(3b)と略平行して漸次前記水封水(16)から脱出する如く設置されていることを特徴とする請求項1乃至
4の何れかに記載の水封灰出しコンベヤ装置。
【請求項6】
前記水封ケーシング(2)の前記他端側で、前記案内底板(7)の前記炉底ホッパー(1)側の前端領域と前記水封ケーシング(2)の前記他端側の後端領域に対応する位置、当該案内底板(7)を点検するための点検窓を設けたことを特徴とする請求項1乃至
5の何れかに記載の水封灰出しコンベヤ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物焼却炉に係り、特に浮遊性の未燃焼物の排出を円滑にした水封灰出しコンベヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物焼却炉の焼却灰を連続して排出できる水封式の灰出しコンベヤ装置が知られている。水封式の灰出しコンベヤ装置は、水封ケーシング内の両端に配置された歯車にかけ渡された一対のエンドレスなチェーンと、当該一対のチェーン間に一定間隔で連結した多数のスクレーパを取り付けた、所謂スクレーパチェーンを備えるのが一般的である。
【0003】
水封ケーシングは冷却水を貯留する水槽であり、この水封ケーシングの両端で、冷却水の水面よりも上方に前記した歯車がそれぞれ設置される。歯車の一方は駆動歯車で、他方は従動歯車である。駆動歯車は適宜の電動機(モータ)で駆動される。なお、従動歯車は一個に限らず、コンベヤ装置のサイズ、架張形状、チェーンの種類、等に応じて複数個設置される場合もある。
【0004】
灰出しコンベヤ装置は、焼却炉の灰排出部の下部に設置されて当該焼却炉から排出される焼却灰を受け、水封ケーシングの底壁に堆積した焼却灰をスクレーパで上記歯車の近辺に設けた排出シュートに掻き揚げて外部に取り出す動作を連続的に行うようになっている。この種の従来技術を開示したものとしては、特許文献1、特許文献2、特許文献3、等を挙げることができる。
【0005】
特許文献1は、サイドチェーンにワイパーブレードが付いているコンベヤをクーラントの液面から液面上に傾斜させ、スクレーパを摺動させて異物を掻き揚げる多数の細孔を有するスクリーン板を設けた工作機械のクーラントから金属等の切粉を分離する処理装置を開示する。
【0006】
特許文献2は、冷却水槽中でスクレーパ付きチェーンコンベヤのスクレーパに当接するスリットを有する分別部をコンベヤのリターン側下部に設置して、スクレーパの掻き揚げ動作で大径の水砕スラグを外部に排出する溶融スラグ処理技術を開示する。なお、冷却水の上部に存在する浮灰をリターン側コンベヤの外周にあるスクレーパで搬送することの記載もある。
【0007】
特許文献3は、炉底ホッパーの下に配設され水封用の水を収容した水槽(ケーシング)の上部両端に架け渡されて水槽内の灰を掻き上げるスクレーパ付のチェーンコンベヤを備え、ケーシングの底壁に堆積する焼却灰をスクレーパで掻き揚げて外部に排出する水封式炉底灰コンベヤ装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5489231号公報
【文献】特許第3370497号公報
【文献】特開平07-12325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
産業廃棄物等の焼却炉には、ストーカー式、ロータリーキルン式、流動床式などがある。何れの焼却炉も、焼却炉内から排出される焼却灰が高温で、かつ大量の粉塵を伴うことから、所謂、水封式のチェーンコンベヤを用いた取出し装置を設置しているものが多い。
【0010】
水封式のチェーンコンベヤ装置は、焼却炉の炉底ホッパーの下方に設置され、当該炉底ホッパーの下端を冷却水に浸漬させて焼却灰排出口を水封している。
そして、当該炉底ホッパーの下部を浸漬する水封ケーシングの内部には、チェーンコンベヤが配置される。当該チェーンコンベヤは水封ケーシング内で炉底ホッパーの下方を横断して移動する如く当該水封ケーシングの一端側上方と他端側上方のそれぞれに設けた歯車(通常は、スプロケット)の間に掛け渡されたスクレーパ付きの一対の平行配置のチェーンからなる。過酷な環境での稼働を考慮し、このチェーンはショートリンクチェーンとするのが一般的である。
【0011】
ところで、医療廃棄物など、多種類の廃棄物を処理する焼却炉では、混在する種々の廃棄物を炉内に投入するが、所定の焼却条件では完全に焼却されないで未燃物として炉から排出されるものも混入している。このよう未燃物は、水封ケーシングの冷却水(以下、水封水とも称する)上面近傍に浮遊し、チェーンコンベヤのスクレーパに掛からずに
図1に示す炉底ホッパー領域に滞留してしまう場合がある。
そして、その量が多い場合は炉底ホッパー内の水封水の上層に堆積して大きな塊となり、排出不可能な所謂、未燃物ブリッジを形成してしまい、排出困難な状態をもたらす。
【0012】
未燃物ブリッジが形成された場合は、焼却設備を一時的に停止し、堆積した未燃物を人手で除去する作業が必要となる。高温焼却炉の炉底ホッパー付近での人手による未燃物の除去作業は作業効率が低いのみならず極めて大きな危険を伴う。また、焼却設備の停止は一時的であっても、停止による処理量の減少や、再立ち上げに伴う焼却用燃料の余分な消費を必要とする。
【0013】
さらに、この種の水封式のチェーンコンベヤ装置が配置される焼却炉は、高温かつ大量の粉塵を伴う環境での稼働であるため、その内部を観察するカメラなどの設置は難しく、特に、焼却灰が水中に落下する炉底ホッパーの内は視界が無に近いため、監視カメラを設置することは不可能に近い。そのため、運転中には、人員を動員して、定期的な巡回で上記したような未燃物の有無を定期的に確認する必要がある。
【0014】
本発明の目的は、上記した諸課題を解決し、炉底ホッパーの内に浮遊する未燃物の炉底ホッパー付近での滞留を解消し、焼却設備を停止させる状況の発生を極力低減して高効率で安全性の高い水封灰出しコンベヤ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は、水封コンベヤのリターン側走行(コンベヤチェーンの移動)を利用し、水封水に浮遊する未燃物を回収して、未燃物専用に設けた排出シュートに排出する構成とした。
【0016】
本発明の代表的な構成を記述すれば、以下のとおりである。なお、下記では、理解を容易にするため、本発明の構成要件に実施例中で対応する符号を付してあるが、本発明はこれら符号を付した構成で限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0017】
〈1〉本発明に係る水封灰出しコンベヤ装置(1)は、冷却水を封止して焼却炉(20)の炉底ホッパー(21)の下部を浸漬する水封ケーシング(2)と、前記水封ケーシング(2)内で前記炉底ホッパー(21)の下方を横断して移動する如く前記水封ケーシング(2)の一端側に設けた駆動歯車(5)と他端側に設けた従動歯車(6)間に掛け渡されたスクレーパ(4)付きの一対のチェーンからなるチェーンコンベヤ(3)を有する。本発明では、このチェーンコンベヤをスクレーパコンベヤ、あるいは単にコンベヤとも称する。
【0018】
前記水封ケーシング(2)の一端側に、当該チェーンコンベヤ(3)のフォワード(F)側チェーン(3a)が、そのフォワード方向(F)の走行に伴い前記スクレーパ(4)で掻き揚げ搬送された前記水封ケーシング(2)の底壁に沈殿する焼却灰を外部に搬出するための底灰排出シュート(9)を備える。
【0019】
前記チェーンコンベヤ(3)の前記炉底ホッパー(21)から見て当該チェーンコンベヤ(3)の走行方向下流側のリターン側(R)の当該チェーンコンベヤ(3)下部に、当該炉底ホッパー(21)の近傍に浮遊する未燃物(30)を前記スクレーパ(4)で水封ケーシング(2)の他端側に掻き揚げ搬送するための案内底板(7)を設けている、
【0020】
前記水封ケーシング(2)の他端側に、前記掻き揚げ搬送された前記未燃物(30)を外部に搬出するための未燃物排出シュート(10)を備える。
【0021】
〈2〉リターン側(R)の前記チェーンコンベヤ(3)の走行方向上流側に位置する当該炉底ホッパー(21)の近傍に浮遊する前記未燃物(30)に水封水中に沈積する方向(好ましくはリターン側(R)のチェーンコンベヤ走行方向)の力を与えるための流体噴射ノズル(14)を設け、前記チェーンコンベヤ(3)のリターン方向(R)の走行に伴う前記スクレーパ(4)と前記案内底板(7)による前記未燃物(30)の捕捉と掻き揚げ搬送を容易にしている。
流体噴射ノズル(14)の噴射方向を、浮遊する未燃物をリターン側(R)のチェーンコンベヤの走行方向に指向させるようにするのが望ましく、例えば水封水の水面から45度傾斜程度の角度で当該チェーンコンベヤの走行方向に傾斜させるのが好適である。
【0022】
〈3〉前記流体噴射ノズル(14)で噴射される流体は高速空気流であり、前記流体噴射ノズルから噴射された高速空気流の押圧力で前記未燃物(30)を水封水(16)中に押し込み、炉底ホッパー(21)の水封部を潜り抜けさせ、当該未燃物(30)を前記リターン側のチェーンコンベヤ(3b)の走行方向へ流し、スクレーパによる捕捉を容易にしている。
【0023】
〈4〉前記流体噴射ノズル(14)で噴射される流体は微細な気泡塊であり、当該気泡塊による水封水の密度低減に起因する浮力の低減で当該未燃物(30)を水封水(16)中に沈下させ、炉底ホッパー(21)の水封部を潜り抜けさせ、当該未燃物(30)を前記リターン側のチェーンコンベヤ(3b)の走行方向へ流し、スクレーパによる捕捉を容易にしている。
【0024】
〈5〉前記流体噴射ノズル(14)で噴射される流体を高圧水流とすることもでき、当該高圧水流の押圧力で前記未燃物(30)を水封水(16)中に押し込むことで、炉底ホッパー(21)の水封部を潜り抜けさせ、当該未燃物30を前記リターン側のチェーンコンベヤ(3b)の走行方向へ流し、スクレーパによる捕捉を容易にしている。
【0025】
〈6〉前記炉底ホッパー(21)側の前記案内底板(7)の前端領域は前記水封水(16)中に没しており、前記従動歯車(6)側の後端領域は当該従動歯車(6)の近傍に向って前記リターン側のチェーンコンベヤ(3b)と略平行して漸次前記水封水(16)から脱出する如く設置されている。
【0026】
〈7〉前記水封ケーシング(2)の前記他端側で、前記案内底板(7)の前記炉底ホッパー(21)側の前端領域に対応する位置に、当該案内底板(7)を視認するための点検窓(13)を設けている。
【0027】
〈8〉前記チェーンコンベヤには平行する一対のショートリンクのエンドレスチェーンを用いた。なお、流体噴射ノズル(14)は水封水中に噴射部分を没して設置するものに限らず、噴射圧との兼ね合いで、水封水の水面から離れた位置から流体を噴射するようにしてもよい。また、その設置位置も、未燃物の種類などを勘案して、前記炉底ホッパー(21)内における前記リターン側のチェーンコンベヤ走行方向の上流に限らず、水封灰出しコンベア装置(1)の側面から見て流体噴射ノズル(14)が傾斜角を持って水平に平行移動した状態での直上又は側面に設置することもできる。本数も複数とし、あるいは扁平なスリット状噴射口を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0028】
上記本発明の構成としたことにより、浮遊性の未燃物が炉底ホッパーの下端に未燃物ブリッジを形成することなく、コンベヤのスクレーパで搬送され、水封水から未燃物排出シュートへの搬送路では案内底板とスクレーパの協働により、案内底板に近接走行、あるいは摺動走行するスクレーパチェーンによって未燃物が確実に搬送され、未燃物排出シュートへのスムーズな未燃物排出が可能となる。
【0029】
また、本発明の構成としたことにより、焼却設備を一時的にせよ停止させて人手による危険な除去作業をする必要がなく、焼却設備を連続して稼働させることができ、高い作業効率で、かつ余分な燃料費の消費も回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る水封灰出しコンベヤ装置の実施例を説明する模式図である。
【
図2】
図1に示した水封灰出しコンベヤ装置を焼却炉側から下方を見た要部上面図である。
【
図3】
図1のA-A線から主要部分を見た要部模式図である。
【
図4】
図1に示した水封灰出しコンベヤ装置のスクレーパコンベヤによる未燃物の捕捉と案内底板との協働による搬送態様の説明図である。
【
図5】
図1に示した水封灰出しコンベヤ装置の流体噴射ノズルの効果とスクレーパコンベヤによる未燃物の捕捉と案内底板との協働による搬送態様の説明図である。
【
図6】本発明に係る水封灰出しコンベヤ装置の全体構成例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態につき実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
図1は本発明に係る水封灰出しコンベヤ装置1の1実施例を説明する模式図、
図2は水封灰出しコンベヤ装置1を焼却炉20側から下方を見た要部上面図、
図3は
図1のA-A線から主要部分を見た要部模式図である。
図において、1は水封灰出しコンベヤ装置、2は水封ケーシング、3はスクレーパ付きチェーンコンベヤ(チェーンコンベヤ)、4はスクレーパ、5は駆動歯車、6は従動歯車、7は案内底板、8は駆動モータ、9は底灰排出シュートである。
また、10は未燃物排出シュート、11、12、13は点検窓、14は流体噴射ノズル、15は支持架台、16は水封水(冷却水)、17は気泡、20は焼却炉、21は炉底ホッパー、22は焼却灰(未燃物を含む)、30は浮上性未燃物である。
本実施例において、水封ケーシング2はスクレーパ付きチェーンコンベヤ3の搬送路を取り囲む略U字形の容器であり、中央領域で該スクレーパ付きチェーンコンベヤ3が水没する如く水封水(冷却水)16を貯留し、封止してある。
【0033】
本発明にかかる水封灰出しコンベヤ装置1は、焼却炉20の炉底ホッパー21の下部を浸漬する水封ケーシング2と、水封ケーシング2内で炉底ホッパー21の下方を横断して移動する如く水封ケーシング2の一端側に設けた駆動歯車5と他端側に設けた従動歯車6間に掛け渡されたスクレーパ4付きの平行走行する一対のチェーンからなるスクレーパ付きチェーンコンベヤ3を有する。炉底ホッパー21からは未燃物を含む焼却灰22が水封水16中に落下する構成となっている。
【0034】
前記水封ケーシング2の一端側は、前記スクレーパ付きチェーンコンベヤ3のフォワード側(矢印F)チェーン3aのフォワード方向(F)の走行に伴いスクレーパ4で掻き揚げ搬送された水封ケーシング2の底壁に沈殿する焼却灰を外部に搬出するための底灰排出シュート9を備える。
【0035】
そして、スクレーパ付きチェーンコンベヤ3の炉底ホッパー21から見て当該チェーンコンベヤ3の走行方向下流側のリターン側における当該チェーンコンベヤ3の下部に、当該炉底ホッパー21の近傍に浮遊する未燃物30をスクレーパ4で水封ケーシング2の他端側に掻き揚げ搬送するための案内底板7が設けられている。
なお、水封ケーシング2には、前記案内底板7の先端領域(炉底ホッパー21に近接するスクレーパ4との係合部分)を観察できる位置に点検窓13を設けることが好ましい。点検窓13は、浮遊する未燃物30が前記案内底板7の先端領域に引っかかり詰まっていた場合に、除去作業をする機能を兼ねる。
【0036】
また、水封ケーシング2の他端側には、スクレーパ付きチェーンコンベヤ3で掻き揚げ搬送された未燃物30を外部に搬出するための未燃物排出シュート10を備える。水封灰出しコンベヤ装置1は支持架台15で支えられている。駆動歯車5は駆動モータ8で駆動される。
なお、水封ケーシング2の駆動歯車5に臨む位置及び従動歯車6を臨む位置には、それぞれ点検窓11、12を設け、駆動歯車5と従動歯車6の状態を点検できる構造となっている。点検窓12のもう一つの機能としては、前記案内底板7の後端領域から浮遊していた未燃物30が未燃物排出シュート10に排出される際の詰まりの確認がある。
【0037】
本発明にかかる水封灰出しコンベヤ装置1は、前記チェーンコンベヤ3のリターン側(R)の当該チェーンコンベヤ3の走行方向上流側に、炉底ホッパー21の近傍に浮遊する前記未燃物30を水封水16中に押し込んで、炉底ホッパー21の水封部を潜り抜けさせ、当該未燃物30を前記リターン側のチェーンコンベヤ3bの走行方向へ流す力を与えるための流体噴射ノズル14を備えた構造である。
この流体噴射ノズル14は空気流、ガス流、気泡塊、水流などを水封水16の中、あるいは水面に向けて噴射する。この噴射により、未燃物30を水封水16中に押し込んで、炉底ホッパー21の水封部を潜り抜けさせ、当該未燃物30を前記リターン側のチェーンコンベヤ3bの走行方向へ流し、スクレーパ付きチェーンコンベヤ3のリターン方向(R)の走行に伴うスクレーパ4と案内底板7による未燃物30の捕捉と掻き揚げ搬送が容易になる。
【0038】
典型的には、流体噴射ノズル14で噴射される流体は高速空気流であり、流体噴射ノズル14から噴射された高速空気流の押圧力で未燃物30を水封水16中に押し込んで、炉底ホッパー21の水封部を潜り抜けさせ、当該未燃物30を前記リターン側のチェーンコンベヤ3bの走行方向へ流し、スクレーパ4による捕捉を容易にする。
本実施例では、流体噴射ノズル14を4本設置しているがこれに限らない。流体噴射ノズル14の流体噴射方向を任意に変更し、あるいは揺動させる構成としてもよい。
【0039】
また、流体噴射ノズル14で噴射される流体として微細な気泡塊を用いることもできる。微細な気泡塊は、水封水16に差し込んで設置した流体噴射ノズル14の先端部に例えばセラミックス製の多孔質フィルタを装入し、流体として空気流を用いることで実現できる。気泡塊は水封水16の密度を低減し、気泡塊で未燃物30を包み込むことで周囲水封水16の密度低減に起因する浮力の減少で当該未燃物30を水封水16中に沈下させ、炉底ホッパー21の水封部を潜り抜けさせ、当該未燃物30を前記リターン側のチェーンコンベヤ3bの走行方向へ流し、スクレーパ4による捕捉を容易にする。空気に替えて炉内気体を導入することもできる。
【0040】
さらに、流体噴射ノズル14で噴射される流体として高圧水流を用いることもできる。高圧水流の押圧力で未燃物30を水封水16中に押し込むことで、炉底ホッパー21の水封部を潜り抜けさせ、当該未燃物30を前記リターン側のチェーンコンベヤ3bの走行方向へ流し、スクレーパ4による捕捉を容易にする。
【0041】
図4は
図1に示した水封灰出しコンベヤ装置1のスクレーパ付きチェーンコンベヤによる未燃物の捕捉と案内板との協働による搬送態様を説明する図である。
案内底板7の前記炉底ホッパー21側の領域は水封水16中に没している。案内底板7の従動歯車6側の後端領域は当該従動歯車6の近傍に向ってリターン側のチェーン3bの移動と略平行して漸次水封水16から脱出する如く設置されている。
【0042】
図4に示したものは、未燃物30が比較的浮上性が小さく、水封水16の擾乱等でスクレーパ4に捕捉され易いものである場合を示し、前記した流体噴射ノズルを用いる必要なくスクレーパ付きチェーンコンベヤ3を稼働できる状況を説明するものである。
【0043】
図5は
図1に示した水封灰出しコンベヤ装置の流体噴射ノズルの効果とスクレーパ付きチェーンコンベヤによる未燃物の捕捉と案内底板との協働による搬送態様の説明図であり、空気流の吹込みで浮遊している未燃物30を沈ませ、炉底ホッパー21の水封部を潜り抜けさせて、前記リターン側のチェーンコンベヤ3bの走行方向へ流し、スクレーパ付きチェーンコンベヤ3のスクレーパ4が水面から浮上する際に捕捉する状態を示す。この例では、炉底ホッパー21の下部に未燃物30が堆積し、ブリッジを形成するのを回避できるようにしている。
【0044】
図5に示した構成例では、流体噴射ノズル14の先端が水封水16に差し込まれた状態で設置されているが、必ずしも水中に差し込む必要はなく、水封水16の表面に近接させて配置してもよい。
すなわち、焼却炉20から排出された焼却灰22のうち、浮遊性の未燃物30は水封水16の表層に滞留することから、この未燃物30に対して、流体噴射ノズル14から空気流等を水封水16中に噴射する構成となっている。
【0045】
浮遊性の未燃物30は流体噴射ノズル14から吹き込まれた空気流に巻き込まれて、炉底ホッパー21の水封部を潜り抜けさせて、前記リターン側のチェーンコンベヤ3bの走行方向へ流し、スクレーパ付きチェーンコンベヤ3のスクレーパ4が水面から浮上し、スクレーパ付きチェーンコンベヤ3のスクレーパ4に捕捉される。スクレーパ4に捕捉された未燃物30は、リターン側のチェーン3bの矢印R方向の走行によるスクレーパ4の移動で案内底板7が配置されている位置まで搬送される。案内底板7上まで搬送された未燃物30は、当該案内底板7が受け皿となるので、スクレーパ付きチェーンコンベヤ3のスクレーパ4間から落下することなく、リターン側のチェーン3bの移動に伴って下流側に搬送され、案内底板の7a部分から未燃物排出シュート10へ排出される。案内底板の7a部分と未燃物排出シュート10の間にスクレーパ4が通過移動するためのクリアランスがあるが、未燃物30の落下の勢いで未燃物排出シュート10へ排出することができる。この動作の継続で、炉底ホッパー21の下部に未燃物30が堆積してブリッジを形成するのが回避される。
【0046】
図5に示す実施例においては、流体噴射ノズル14から吹き込む空気流は、コンプレッサ23、リザーバタンク24及びバルブ25の高圧空気源から供給される。
なお、流体噴射ノズル14の先端部に含水性の多孔質フィルタを装入して微細空気を生成し、この微細な気泡を未燃物30の下方に噴射し、可燃物を囲む水封水16の密度を低下させることで浮力を低下させ、未燃物を沈下させて炉底ホッパー21の水封部を潜り抜けさせ、当該未燃物30を前記リターン側のチェーンコンベヤ3bの走行方向へ流し、スクレーパ4に捕捉され易くすることもできる。
【0047】
また、空気流に替えて炉底ホッパー21内のガスあるいは炉内雰囲気のガスを用いることもできる。
上記した空気流の噴射を含め、流体ノズル14からの流体の噴射は常時駆動である必要はなく、定期的に、あるいは焼却対称物の種類や作業員の経験に応じた任意のタイミングでバルブ25を解放するようにすることができる。また、炉底ホッパー21での未燃物30の浮遊状態を検出するセンサを設置し、このセンサ出力に基づいてバルブ25の解放と閉止の制御を行うようにすることもできる。
【0048】
図6は本発明に係る水封灰出しコンベヤ装置の全体構成例を説明する図である。水封ケーシング2は焼却炉20の下部に設置されている。水封ケーシング2の駆動歯車5側には水封ケーシング2の底壁から掻き揚げた焼却灰を外部に排出する底灰排出シュート9を有し、この底灰排出シュート9の下部には従来と同様に、焼却灰回収カート26が出入りする。
【0049】
また、水封ケーシング2の従動歯車6側には浮上性の未燃物30を外部に排出する未燃物排出シュート10を有し、この未燃物排出シュート10の下部に未燃物回収カート27が出入りするようになっている。未燃物回収カート27に回収された未燃物30は、再度焼却炉に戻されて焼却処理がなされる。このとき、再度焼却炉に戻される前に脱水あるいは乾燥処理を施すことで再度の未燃焼物発生を回避又は低減させることができる。
【0050】
本実施例の焼却炉20はロータリーキルン炉であるが、本発明に係る水封灰出しコンベヤ装置1は、ロータリーキルン炉の焼却灰搬出に限るものではなく、ストーカー炉などとの組み合わせにも同様に適用できる。
【0051】
本実施例におけるスクレーパ付きチェーンコンベヤ3に使用するチェーンコンベヤはショートリンクチェーンであるが、ローラーチェーンなど、他の形式のチェーンを用いることも可能である。なお、焼却炉の灰出しコンベヤのような過酷な環境での使用には、構造が単純で耐久性のよいショートリンクチェーンが好適である。
【0052】
上記の実施例では、焼却炉設備における焼却灰の搬送処理について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、水封式のコンベヤを用いて浮遊物を搬送する各種設備にも同様に適用できるものである。
【符号の説明】
【0053】
1・・・水封灰出しコンベヤ装置
2・・・水封ケーシング
3・・・スクレーパ付きチェーンコンベヤ
4・・・スクレーパ
5・・・駆動歯車
6・・・従動歯車
7・・・案内底板
8・・・駆動モータ
9・・・底灰排出シュート
10・・・未燃物排出シュート
11、12、13・・・点検窓
14・・・流体噴射ノズル
15・・・支持架台
16・・・水封水(冷却水)
17・・・気泡
20・・・焼却炉
21・・・炉底ホッパー
22・・・焼却灰(未燃物を含む)
23・・・コンプレッサ
24・・・リザーバタンク
25・・・バルブ
26・・・焼却灰回収カート
27・・・未燃物回収カート
30・・・浮上性未燃物