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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】皮膚外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20220615BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220615BHJP
   A61Q 1/06 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
A61K8/39
A61K8/31
A61Q1/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018058169
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019167325
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 紗弥香
(72)【発明者】
【氏名】飯田 昌枝
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-250927(JP,A)
【文献】特開2015-193607(JP,A)
【文献】特表2009-529032(JP,A)
【文献】特開2011-140481(JP,A)
【文献】特開2016-056173(JP,A)
【文献】特開2017-114786(JP,A)
【文献】国際公開第2011/071148(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/123824(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水添ポリイソブテン及び脂肪酸ポリグリセリンを含み、前記脂肪酸ポリグリセリンが、炭素数12以上の脂肪酸と重合度5以上のポリグリセリンのエステルであり、
前記水添ポリイソブテンと前記脂肪酸ポリグリセリンが、質量比1:1で混合したときにゲルを形成し、
ワックスを含む場合には、生物由来のワックスを含むことを特徴とする皮膚外用組成物。
【請求項2】
水の含有量が1質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項3】
シリコーン系油剤を含む、請求項1又は2に記載の皮膚外用組成物。
【請求項4】
前記シリコーン系油剤が、単位構造として少なくとも下記化学式(1)で表される単位構造を有することを特徴とする、請求項3に記載の皮膚外用組成物。
化学式(1)
【化1】
【請求項5】
前記シリコーン系油剤が、下記化学式(2)で表される単位構造及び/又は下記化学式(3)で表される単位構造を有することを特徴とする、請求項4に記載の皮膚外用組成物。
化学式(2)
【化2】
化学式(3)
【化3】
【請求項6】
前記シリコーン系油剤がジフェニルジメチコンであることを特徴とする、請求項3~5の何れか一項に記載の皮膚外用組成物。
【請求項7】
色材を有することを特徴とする、請求項3~6の何れか一項に記載の皮膚外用組成物。
【請求項8】
植物性ワックス及び/又は動物性ワックス、並びに合成ワックスを含むことを特徴とする、請求項1~7の何れか一項に記載の皮膚外用組成物。
【請求項9】
植物性ワックスを含むことを特徴とする、請求項に記載の皮膚外用組成物。
【請求項10】
前記植物性ワックスがカルナバロウ、キャンデリラロウ及びミツロウからなる群から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする、請求項に記載の皮膚外用組成物。
【請求項11】
前記合成ワックスが、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びポリエチレン・ポリプロピレンコポリマーワックスからなる群から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする、請求項8~10の何れか一項に記載の皮膚外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油剤を含む皮膚外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅の化粧もちには大きく分けて、長時間、唇上に色やつやが残っているロングラスティング効果、及びコーヒーカップなどの食器や、ストローなどに口紅がつかない二次付着レス効果の2つの要素がある(非特許文献1)。従来、口紅の分野ではこの2つの観点から化粧もちを向上させる研究が行われてきた。
特に二次付着レス効果を向上させるために、肌への塗布後に、シリコーン系油剤が上層に、エステル油が下層に分離するような性質をもつ唇用化粧料が提案されている。
【0003】
肌への塗布後に相分離を起こす性質を持つ唇用化粧料は、例えば、特許文献1~4において開示されている。
特許文献1には、モノイソステアリン酸グリセリンとメチルフェニルシリコーンと水および/またはグリセリンとワックスを特定量含む唇用化粧料が記載されている。
特許文献2には、水添ポリイソブテン、メチルフェニルシリコーン、親油性界面活性剤及びワックスを特定量含む唇用化粧料が記載されている。
特許文献3には、ブロック型アルキレンオキシド誘導体、ジメチルジフェニルポリシロキサン、ジイソステアリン酸ジグリセリル及び/又はトリイソステアリン酸ジグリセリルを特定量含む唇用化粧料が記載されている。
【0004】
また、特許文献4には、多価アルコール変性シリコーン、常温液状のエステル油、着色剤、25℃における屈折率が1.47以上の油剤及び融点が35~45℃で常温で固体のトリグリセリルを含有することを特徴とする油性化粧料が開示されている。
そして、特許文献4には、当該油性化粧料を肌や口唇に塗布すると、皮膚の水分や、空気中の水分により、多価アルコール変性シリコーンと油剤が相分離して化粧膜にツヤを与え、多価アルコール変性シリコーンが水分により粘性が高まって化粧膜が強固になり、化粧持続性が向上することが記載されている(段落0006)。
【0005】
また、特許文献5には、水和膜形成能に優れ、化粧もちの良いイソステアリン酸ポリグリセリルとシリコーン系油剤を含む皮膚外用組成物が開示されている。
【0006】
これらの化粧料は肌への塗布後に相分離を起こすという有利な効果を発揮する反面、特殊な油分同士の組み合わせゆえに、これらをゲル状の安定した組成物として提供することには困難があった。特許文献6に記載の技術では、組成物にゲル化剤を添加することによりこの問題を解決している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2010/113956号パンフレット
【文献】特開2011-140481号公報
【文献】特開2011-42610号公報
【文献】特開2014-181218号公報
【文献】特開2017-114786号公報
【文献】WO2014/069403号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【文献】日本化粧品技術社会(2003).『化粧品辞典』、P137~138、丸善株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は、ゲル化効果を有する組成の油剤を含み、化粧もちに優れた化粧料を提供することにある。
また、ワックスを含む油性固形化粧料の二次付着レス効果を向上させる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、水添ポリイソブテン及び脂肪酸ポリグリセリンを含み、前記脂肪酸ポリグリセリンが、炭素数12以上の脂肪酸と重合度5以上のポリグリセリンのエステルであることを特徴とする皮膚外用組成物である。
本発明の皮膚外用組成物は化粧もちに優れる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、水の含有量が1質量%以下である。水の含有量が前記範囲である本発明の皮膚外用組成物は扱い易さに優れる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、シリコーン系油剤を含む。シリコーン系油剤を含むことにより、さらに優れた化粧もち効果を得ることができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記シリコーン系油剤が、単位構造として少なくとも下記化学式(1)で表される単位構造を有することを特徴とする。
【0014】
化学式(1)
【化1】
【0015】
上記シリコーン系油剤を含む本発明の皮膚外用組成物は、ロングラスティング効果及び保湿持続効果に優れる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記シリコーン系油剤が、下記化学式(2)で表される単位構造及び/又は下記化学式(3)で表される単位構造を有する。
【0017】
化学式(2)
【化2】
【0018】
化学式(3)
【化3】
【0019】
上記シリコーン系油剤を含む本発明の皮膚外用組成物は、ロングラスティング効果及び保湿持続効果により優れる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記シリコーン系油剤がジフェニルジメチコンである。
ジフェニルジメチコンを含む本発明の皮膚外用組成物は、ロングラスティング効果及び保湿持続効果により優れる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、色材を有する。
本発明の皮膚外用組成物に含まれる水添ポリイソブテン及び脂肪酸ポリグリセリンは、色材も抱え込むことができるため、色落ちや色移りが起こりにくい。
【0022】
本発明の好ましい形態では、植物性ワックス及び/又は動物性ワックス、並びに合成ワックスを含む。
これらワックスを含む形態の本発明の皮膚外用組成物は、二次付着レス効果に特に優れる。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記水添ポリイソブテンと前記脂肪酸ポリグリセリンが、質量比1:1で混合したときにゲルを形成することを特徴とする。
かかる形態の皮膚外用組成物は、二次付着レス効果に優れている。
【0024】
本発明の好ましい形態では、植物性ワックスを含む。
植物性ワックスを含む形態の本発明の皮膚外用組成物は、二次付着レス効果、感触の良さ、そして成型性に優れる。
【0025】
本発明の好ましい形態では、前記植物性ワックスがカルナバロウ、キャンデリラロウ及びミツロウからなる群から選ばれる一種又は二種以上である。
これらの植物性ワックスを含む形態の本発明の皮膚外用組成物は、特に二次付着レス効果に優れる。
【0026】
本発明の好ましい形態では、前記合成ワックスが、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びポリエチレン・ポリプロピレンコポリマーワックスからなる群から選ばれる一種又は二種以上である。
これら合成ワックスを含む形態の本発明の皮膚外用組成物は、特に成型性に優れる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は化粧もちに優れた皮膚外用組成物を提供することができる。また、本発明の好ましい形態では、二次付着レス効果に優れた皮膚外用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の皮膚外用組成物は水添ポリイソブテンと、炭素数12以上の脂肪酸と重合度5以上のポリグリセリンのエステルである脂肪酸ポリグリセリン(以下、特定脂肪酸ポリグリセリンともいう)を必須の構成として含む。これら2種の成分を混合するとゲル化する性質があるため、本発明の皮膚外用組成物は肌への優れた密着性を発揮し、化粧もちに優れる。
【0029】
本発明においてはどのような重合度の水添ポリイソブテンを用いることができる。
本発明においては、20℃における粘度が、好ましくは10000mpa・s以上、より好ましくは50000mpa・s以上、さらに好ましくは100000mpa・s以上、さらに好ましくは120000mpa・s以上、さらに好ましくは130000mpa・s以上の高粘度の水添ポリイソブテン(以下、高粘性水添ポリイソブテンともいう)を使用することが好ましい。
【0030】
高粘性水添ポリイソブテンの粘度の上限は特に限定されないが、20℃における粘度が、好ましくは2000000mpa・s以下、より好ましくは1800000mpa・s以下、さらに好ましくは1400000mpa以下、さらに好ましくは1200000mpa・s以下である。
【0031】
上述した粘度の範囲の高粘性水添ポリイソブテンを用いることで、特定脂肪酸ポリグリセリンと組み合わせたときに良好な密着性を発揮するゲルを形成させることができ、化粧もちに優れた皮膚外用組成物を提供することができる。
【0032】
高粘性水添ポリイソブテンの含有量は、好ましくは0.01~30質量%、より好ましくは0.1~20質量%、さらに好ましくは1~15質量%、さらに好ましくは1~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%である。
【0033】
また、高粘性水添ポリイソブテンに加え、これよりも低粘度の水添ポリイソブテン(以下、低粘性水添ポリイソブテンともいう)を併せて含有させることが好ましい。
低粘性水添ポリイソブテンの粘度の上限は特に限定されないが、20℃における粘度が、好ましくは1000mpa・s以下、より好ましくは500mpa・s以下、さらに好ましくは200mpa・s以下、さらに好ましくは100mpa・s以下である。
【0034】
低粘性水添ポリイソブテンの粘度の下限は、20℃において、好ましくは10mpa・s以上、より好ましくは20mpa・s以上、さらに好ましくは50mpa・s以上、さらに好ましくは60mpa・s以上、さらに好ましくは70mpa・s以上である。
【0035】
上述した粘度の範囲の低粘性水添ポリイソブテンを高粘性水添ポリイソブテンと組み合わせて含有することによって分離を防ぐことができ、安定性や成型性に優れた皮膚外用組成物を提供することができる。
【0036】
なお、上記粘度は、20℃、1気圧において定法(例えば、B型粘度計(DIGITAL VISMETRON VDA:芝浦システム株式会社製)を用いる測定)により得られる数値である。
【0037】
低粘性水添ポリイソブテンの含有量は、より好ましくは1~50質量%、さらに好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは10~30質量%、さらに好ましくは15~25質量%である。
【0038】
高粘性水添ポリイソブテンと低粘性水添ポリイソブテンの含有質量比は、好ましくは1:100~10:1、より好ましくは1:50~1:1、さらに好ましくは1:20~1:5、さらに好ましくは1:15~1:7である。
【0039】
特定脂肪酸ポリグリセリンを構成する脂肪酸は、炭素数は12以上であればよく、不飽和であっても飽和であってもよい。特定脂肪酸ポリグリセリンを構成する脂肪酸の炭素数の上限は、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。
【0040】
特定脂肪酸ポリグリセリンを構成するポリグリセリンの重合度は5以上であればよく、その上限は好ましくは40、より好ましくは30、さらに好ましくは20、さらに好ましくは15、さらに好ましくは12である。
【0041】
特定脂肪酸ポリグリセリンの脂肪酸基の数は特に限定されないが、好ましくは10以下、より好ましくは7以下、さらに好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。
【0042】
特定脂肪酸ポリグリセリンとしては、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-5、トリミリスチン酸ポリグリセリル-5、ステアリン酸ポリグリセリル-5、ラウリン酸ポリグリセリル-5、トリラウリン酸ポリグリセリル-5、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10が挙げられる。
【0043】
特にトリイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-5、トリミリスチン酸ポリグリセリル-5、オレイン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-5、トリオレイン酸ポリグリセリル-5、トリラウリン酸ポリグリセリル-10が好ましく例示でき、さらには、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-5が好ましく例示できる。
【0044】
特定脂肪酸ポリグリセリンの含有量は、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは1~30質量%、さらに好ましくは5~20質量%、さらに好ましくは7~15質量%である。
【0045】
特定脂肪酸ポリグリセリンと水添ポリイソブテンとの含有質量比は、好ましくは1:100~10:1、より好ましくは1:50~1:1、さらに好ましくは1:20~1:3、さらに好ましくは1:15~1:5である。
【0046】
水添ポリイソブテンのうち高粘性水添ポリイソブテンと特定脂肪酸ポリグリセリンとの含有質量比は、好ましくは10:1~1:100、より好ましくは5:1~1:20、より好ましくは1:1~1:10、さらに好ましくは1:2~1:8である。
【0047】
低粘性水添ポリイソブテンを含む場合には、特定脂肪酸ポリグリセリンと低粘性水添ポリイソブテンとの含有質量比は、好ましくは5:1~1:50、さらに好ましくは2:1~1:10、さらに好ましくは1:1~1:5である。
【0048】
本発明の皮膚外用組成物はシリコーン系油剤を含むことが好ましい。
シリコーン系油剤を含有する本発明の皮膚外用組成物は、肌への塗布後に水添ポリイソブテン及び特定脂肪酸ポリグリセリンを含む肌に密着する層と、シリコーン系油剤を含む表層に分離する。そのため、経時で被膜表面につやを有する化粧もちの良い皮膚外用組成物を提供することができる。
また、シリコーン系油剤に加え、色材を含有する形態とすれば、色材が肌に密着する層に取り込まれるため、色落ちや色移りを効果的に防止することができる。
【0049】
色材としては、通常唇用化粧料に用いられる色材であれば良い。無機顔料であっても、有機顔料であっても、パール剤であってもよい。
色材の含有量は好ましくは1~15質量%である。
【0050】
シリコーン系油剤としてはジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状シリコーンやオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シリコーンの何れも用いることができる。特に、単位構造として少なくとも下記化学式(1)で表される単位構造を有するシリコーン系油剤を用いることが好ましい。
【0051】
化学式(1)
【化4】
【0052】
また、本発明のより好ましい実施の形態では、下記化学式(2)で表される単位構造及び/又は下記化学式(3)で表される単位構造を有するシリコーン系油剤を含むことが好ましい。
【0053】
化学式(2)
【化5】
【0054】
化学式(3)
【化6】
【0055】
このようなシリコーン系油剤として、ジフェニルメチルシロキシフェニルメチコン/フェニルシルセスキオキサンクロスポリマー、ジフェニルジメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、ジメチコン等を好ましく例示することができ、特に好ましくはジフェニルジメチコンを例示することができる。
【0056】
シリコーン系油剤としては、25℃で液体であるIOB値0.1以下の油剤、また、25℃における平均溶解性パラメーターが7.0(J/cm)1/2未満の油剤、そして、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基などの極性基を有さない油剤が好ましい。
【0057】
シリコーン系油剤の粘度は、20℃において、好ましくは60000mpa・s以下、より好ましくは2000mpa・s以下である。
なお、上記粘度は25℃、1気圧において定法(例えば、B型粘度計(DIGITAL VISMETRON VDA:芝浦システム株式会社製)を用いる測定)により得られる数値である。
【0058】
このようなシリコーン系油剤としては、PH-1560(ジフェニルメチルシロキシフェニルメチコン/フェニルシルセスキオキサンクロスポリマー、東レ・ダウコーニング社)、シリコーンKF54(ジフェニルジメチコン、信越シリコーン社)、シリコーンKF54HV(ジフェニルジメチコン、信越シリコーン社)、PDM1000(トリメチルシロキシフェニルジメチコン、旭化成ワッカーシリコーン社)、シリコーンKF96-10(ジメチコン、信越シリコーン社)などの市販品を用いても良い。
【0059】
本発明においてシリコーン系油剤の含有量は、好ましくは10~85質量%、より好ましくは15~80質量%、さらに好ましくは20~75質量%、さらに好ましくは25~70質量%、さらに好ましくは30~65質量%である。
シリコーン系油剤の含有量を前記範囲とすることによって、皮膚外用組成物の化粧もちをより向上させることができる。
【0060】
シリコーン系油剤を含有する形態においては、シリコーン系油剤と水添ポリイソブテン及び特定脂肪酸ポリグリセリンの含有質量比は、好ましくは100:1~1:100、より好ましくは10:1~1:10、さらに好ましくは5:1~1:5、さらに好ましくは3:1~1:2、さらに好ましくは2:1~1:1である。

シリコーン系油剤とイソステアリン酸ポリグリセリルの量比を前記範囲とすることによって、皮膚外用組成物の化粧もちをより向上させることができる。
【0061】
本発明においてはワックスを含むことが好ましい。ワックスとしては例えば、オゾケライト、セレシン、パラフィン、ペトロラタム、フィッシャー・トロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素系ワックス;カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ライスワックス、サンフラワーワックス、水添ホホバ油、モクロウ等の植物性ワックス;ミツロウ、鯨ロウ等の動物性ワックス;シリコーンワックス、フッ素系ワックス、ポリエチレンワックス、合成ミツロウ等の合成ワックス;脂肪酸、高級アルコール及びこれらの誘導体などが挙げられる。
【0062】
ワックスの含有量は、好ましくは1~30質量%、より好ましくは2~20質量%、さらに好ましくは5~15質量%である。
【0063】
特に植物性ワックスや動物性ワックスなどの生物由来のワックスと、合成ワックスを組み合わせて含むことが好ましい。これにより二次付着レス効果に特に優れた皮膚外用組成物を提供することができる。
【0064】
合成ワックスと組み合わせる生物由来ワックスとしては、植物性ワックスが好適に例示でき、特にキャンデリラロウ、カルナウバロウ、ミツロウがより好適に例示できる。
これらは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
また、生物由来ワックスと組み合わせる合成ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレン・ポリプロピレンコポリマーワックスを好適に例示することができる。
これらは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
この場合、生物由来ワックスと合成ワックスの含有質量比は、好ましくは1:100~50:1、より好ましくは1:20~10:1、さらに好ましくは1:10~5:1、さらに好ましくは1:5~1:1、さらに好ましくは1:3~1:1である。
【0067】
ワックスを含む形態においては、皮膚外用組成物に含まれる水添ポリイソブテンと特定脂肪酸ポリグリセリンが、質量比1:1で混合したときにゲルを形成するような組み合わせであることが好ましい。このような組み合わせの水添ポリイソブテンと特定脂肪酸ポリグリセリンを含む皮膚外用組成物は、特に二次付着レス効果に優れる。ここで、ゲルを形成するか否かは、後述する試験例に記載の方法に準じて評価できる。
【0068】
本発明の皮膚外用組成物は、本発明の効果を損ねない限度において、通常使用される任意成分を含有することもできる。この様な任意成分としては、例えば、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、2,4-ヘキサンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤;桂皮酸系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類フェノキシエタノール等の抗菌剤;アルギニン、グルタミン酸、水溶性ビタミン類等;アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液などが好ましく例示できる。
【0069】
本発明の皮膚外用組成物は、唇用化粧料に応用することが好ましい。唇用化粧料としては、リップグロス、口紅(液状、固形状のもの双方を含む)、リップクリームを例示することができる。特にワックスを含む形態の本発明の皮膚外用組成物は、固形唇用化粧料に応用することが好ましい。
本発明の唇用化粧料は、二次付着レス効果、ロングラスティング効果及び保湿持続効果に優れる。
【実施例
【0070】
<試験例1>ゲル化試験(1)
水添ポリイソブテン(20℃ 粘度:133800mpa・s、20℃ 粘度:1104000)と、種々の油剤を1:1の割合で混合し、ゲルを形成するか否か評価した。また、ゲルを形成した混合物については、これを6時間室温で静置し、ゲルの形態を維持しているか否かを評価した。結果を表1及び2に示す。なお、混合物をスクリュー管に充填した状態で90°に傾けたときに流動性を示さない状態のときに、ゲルの形態となっているものと評価した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
表1及び2に示すように、炭素数が12以上である脂肪酸と、重合度が5以上のポリグリセリンのエステルである脂肪酸ポリグリセリンは、水添ポリイソブテンと混合したときにゲルを形成した。
【0074】
<試験例2>ゲル化試験(2)
トリイソステアリン酸ポリグリセリル-10と、表3に列挙する油剤を1:1の割合で混合し、この混合物を6時間室温で静置し、ゲルの形態を維持しているか否かを評価した。表3に結果を示す。
【0075】
【表3】
【0076】
表3に示すように、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-10と混合したとき、大多数の油剤はゲルを形成しないが、水添ポリイソブテンはゲルを形成した。
【0077】
試験例1及び2の結果は、炭素数が12以上である脂肪酸と、重合度が5以上のポリグリセリンのエステルである脂肪酸ポリグリセリンと、水添ポリイソブテンとを含む皮膚外用組成物は、これら2成分がゲルを形成するために皮膚への密着性に優れ、良好な化粧もちを示すことを表している。
【0078】
<試験例2>固形化粧料の評価(1)
表3に示す処方の油性固形化粧料を以下の方法で調製した。まず、成分(a)を105℃~110℃で加熱溶解し、ここへ成分(b)を投入し、100℃~105℃で攪拌し、溶解した。成分(b)の溶解を確認後、成分(c)を投入し、100℃~105℃で攪拌した。均一に攪拌ができたところで、112℃にて脱泡し、これを容器に充填することで、実施例1~9及び比較例1~3の油性固形化粧料を調製した。
【0079】
調製した油性固形化粧料について以下の方法により二次付着レス効果、感触(伸びのよさ)成型性について評価した。結果を表4に示す。
(二次付着レス効果)
油性固形化粧料を適量上腕内側に塗布し、塗布から1分後に塗布面へ指を押し付け、押し付けた指をさらに白色版に押しつけて、付着した色素の量を指標に二段階評価をした。良好な二次付着レス効果が見られる場合は○、そうでない場合は×の評価をつけた。
(感触)
熟練の評価者に自己の肌に油性固形化粧料を塗布させ、その伸びやすさについて○と×の二段階評価をさせた。
(成型性)
調製した油性固形化粧料を熟練の評価者に観察させ、分離が観察される場合には×、分離が観察されない場合には〇の評価をつけた。
【0080】
【表4】
【0081】
表4に示すとおり、生物由来(植物性)ワックスと合成ワックスを組み合わせて用いることが、二次付着レス効果と、固形化粧料に求められる成型性との観点から好ましいことがわかった。
また、脂肪酸の炭素数12以上、ポリグリセリンの重合度5以上の条件に当てはまらないトリイソステアリン酸ポリグリセリル-2を含む場合には、成型性及び二次付着レス効果に劣っていた。
【0082】
<試験例3>固形化粧料の評価(2)
上述した実施例1に含まれるトリイソステアリン酸ポリグリセリル-10に代えて、表5に示す脂肪酸ポリグリセリルを配合した油性化粧料を試験例2と同様の方法で調製した。調製した油性固形化粧料について、二次付着レス効果を評価した。評価方法は◎、○、△、×の4段階評価としたこと以外は、試験例2と同じである。
【0083】
【表5】
【0084】
表4及び5の結果より、ワックスを含む油性固形化粧料にあっては、炭素数が12以上である脂肪酸と重合度が5以上のポリグリセリンのエステルである脂肪酸ポリグリセリンと、水添ポリイソブテンを組み合わせて含有すること、そして、ワックスとして生物由来(植物性)ワックスと合成ワックスを組み合わせて含有すること、が成型性と二次付着レス効果の観点から好ましいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明はリップスティックに応用できる。