(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】戸車
(51)【国際特許分類】
E05D 13/00 20060101AFI20220615BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
E05D13/00 A
E05D15/06 107
E05D15/06 112
(21)【出願番号】P 2018109457
(22)【出願日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 隆
【審査官】芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-62058(JP,U)
【文献】実開昭55-47593(JP,U)
【文献】実開昭58-67056(JP,U)
【文献】特開2016-138439(JP,A)
【文献】実開昭57-102677(JP,U)
【文献】実開昭60-150287(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 11/00-15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子に装着されてレール上を移動可能な戸車であって、
前記障子に固定される戸車枠と、前記戸車枠に軸支された車輪と、前記戸車枠に着脱可能なガイド部材とを備えており、
前記戸車枠は、互いに連結された一対の枠側面部を有しており、
前記ガイド部材は、下端部にレールガイド溝が形成されたガイド本体部と、前記戸車枠
に係合する係合部とを有しており、
前記ガイド本体部は、前記係合部が前記戸車枠に係合した状態で前記一対の枠側面部の内面に当接する構成とされ、
前記係合部は、前記ガイド本体部から上方に延出した一対の弾性片部と、前記一対の弾性片部の上端部にそれぞれ形成されている共に前記一対の枠側面部に係合する係合爪とを有しており、
前記一対の係合爪は、前記一対の枠側面部の上縁に係合可能に構成されており、
前記ガイド本体部および前記戸車枠のうちの一方には、当該他方に当接する位置決め突部が形成されている
ことを特徴とする戸車。
【請求項2】
障子に装着されてレール上を移動可能な戸車であって、
前記障子に固定される戸車枠と、前記戸車枠に軸支された車輪と、前記戸車枠に着脱可能なガイド部材とを備えており、
前記戸車枠は、互いに連結された一対の枠側面部を有しており、
前記ガイド部材は、下端部にレールガイド溝が形成されたガイド本体部と、前記戸車枠に係合する係合部とを有しており、
前記ガイド本体部は、前記係合部が前記戸車枠に係合した状態で前記一対の枠側面部の内面に当接する構成とされ、
前記係合部は、前記ガイド本体部から上方に延出した一対の弾性片部と、前記一対の弾性片部の上端部にそれぞれ形成されている共に前記一対の枠側面部に係合する係合爪とを有しており、
前記一対の弾性片部の上端部には、摘み部がそれぞれ形成されており、
前記一対の摘み部は、前記ガイド部材の前記戸車枠への取付状態で、前記一対の枠側面部に対してそれぞれ間隔を隔てて配置されている
ことを特徴とする戸車。
【請求項3】
請求項
1または請求項
2に記載の戸車において、
前記戸車枠は、前記障子に固定される外枠と、前記外枠に対して上下に位置調整可能に取り付けられた内枠とを備えており、
前記内枠は、前記一対の枠側面部を有しており、
前記車輪は、前記内枠に軸支されており、
前記外枠は、前記一対の枠側面部が連結ピンを介して回動可能に取り付けられた一対の外枠側面部と、前記一対の外枠側面部を連結した外枠上面部とを有しており、
前記内枠は、前記一対の枠側面部を連結していると共に前記外枠上面部に当接する高さ調整ねじが螺合した内枠連結部を有しており、
前記ガイド部材は、前記車輪よりも前記連結ピンから離れた位置に配置されている
ことを特徴とする戸車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右方向にスライド可能な障子を備えた片引き窓、引き違い窓等の各種窓に用いられる戸車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、枠体に外障子、内障子および網戸が左右方向にスライド可能に配置された引き違い窓が知られており(特許文献1参照)、網戸には枠体のレール上に置かれる戸車装置(戸車)が設けられている。この戸車装置は、網戸の縦框下部に固定される固定部材と、固定部材に上下に揺動可能に取り付けられた可動部材と、可動部材に軸支された車輪とを備えており、固定部材の下端部には、下方で開口した挿入溝が形成されており、この挿入溝に枠体のレールが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の戸車装置では、固定部材自体に挿入溝が形成されているので、この挿入溝が形成された部分を戸車装置から外すことはできない。このため、例えばこのような戸車装置を既設窓などに用いようとした場合、厚さ寸法が大きいレールを挿入溝に収めるのが困難であったり、また、網戸に設けられた気密材などが挿入溝を形成している部分に干渉してしまったりするおそれがあり、戸車装置の汎用性を向上することが困難である。
【0005】
本発明の目的は、汎用性を向上できる戸車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の戸車は、障子に装着されてレール上を移動可能な戸車であって、前記障子に固定される戸車枠と、前記戸車枠に軸支された車輪と、前記戸車枠に着脱可能なガイド部材とを備えており、前記ガイド部材は、下端部にレールガイド溝が形成されたガイド本体部と、前記戸車枠に係合する係合部とを有していることを特徴とする。
本発明の戸車によれば、ガイド部材が戸車枠に着脱可能に構成されているので、ガイド部材を戸車枠に取り付けた状態と取り外した状態との使い分けができる。例えばガイド部材を取り付けた状態としてレールガイド溝に窓枠などのレールを配置させることで、車輪の脱輪止めや障子などの外れ止めとして機能させることができる。また、例えば、既設窓などのレールの厚さ寸法が大きくて当該レールにガイド部材が干渉してしまう場合や、障子などに設けられた気密材にガイド部材が干渉してしまう場合には、ガイド部材を取り外した状態とすることで、前述した干渉が生じることなく戸車を用いることができる。このように本発明の戸車は汎用性が高いので、左右方向にスライド可能な障子を備えた片引き窓、引き違い窓などの各種の建具に用いることができる。
【0007】
本発明の戸車では、前記戸車枠は、互いに連結された一対の枠側面部を有しており、前記ガイド本体部は、前記係合部が前記戸車枠に係合した状態で前記一対の枠側面部の内面に当接していてもよい。
このような構成によれば、戸車の取付状態でガイド本体部が一対の枠側面部の内面に当接するので、障子がレールに対して見込み方向に揺動することでガイド部材に前記見込み方向の力が加えられても、枠側面部によってガイド本体部を保持することで当該力を受けることができる。
【0008】
本発明の戸車では、前記係合部は、前記ガイド本体部から上方に延出した一対の弾性片部と、前記一対の弾性片部の上端部にそれぞれ形成されている共に前記一対の枠側面部に係合する係合爪とを有していてもよい。
このような構成によれば、一対の弾性片部が弾性変形するので、ガイド部材を戸車枠に取り付けるために一対の係合爪を一対の枠側面部の間に容易に挿入することができる一方、ガイド部材を戸車枠から取り外すために係合爪を押すなどして弾性片部を弾性変形させることで、係合爪の枠側面部に対する係合を容易に外すことができる。
【0009】
本発明の戸車では、前記一対の係合爪は、前記一対の枠側面部の上縁に係合可能に構成されており、前記ガイド本体部および前記戸車枠のうちの一方には、当該他方に当接する位置決め突部が形成されていてもよい。
このような構成によれば、ガイド本体部および戸車枠のうちの一方の位置決め突部が当該他方に当接するので、ガイド部材の戸車枠に対する上下位置を位置決めしつつ、一対の係合爪を一対の枠側面部の上縁に係合させることができる。また、このように枠側面部の上縁に係合爪が係合するので、例えば係合爪が枠側面部に形成された係合孔などに係合する構成と比べて、係合爪を枠側面部から簡単に外すことができる。
【0010】
本発明の戸車では、前記一対の弾性片部の上端部には、摘み部がそれぞれ形成されており、前記一対の摘み部は、前記ガイド部材の前記戸車枠への取付状態で、前記一対の枠側面部に対してそれぞれ間隔を隔てて配置されていてもよい。
このような構成によれば、指やラジオペンチなどの工具によって一対の摘み部を挟み持つことで一対の弾性片部を弾性変形させることができ、一対の係合爪を一対の枠側面部から簡単に外すことができる。
【0011】
本発明の戸車では、前記戸車枠は、前記障子に固定される外枠と、前記外枠に対して上下に位置調整可能に取り付けられた内枠とを備えており、前記内枠は、前記一対の枠側面部を有しており、前記車輪は、前記内枠に軸支されており、前記外枠は、前記一対の枠側面部が連結ピンを介して回動可能に取り付けられた一対の外枠側面部と、前記一対の外枠側面部を連結した外枠上面部とを有しており、前記内枠は、前記一対の枠側面部を連結していると共に前記外枠上面部に当接する高さ調整ねじが螺合した内枠連結部を有しており、前記ガイド部材は、前記車輪よりも前記連結ピンから離れた位置に配置されていてもよい。
このような構成によれば、高さ調整ねじの回転によって内枠を外枠に対して回動させることで車輪やガイド部材の高さ位置を調整するピボット式の戸車を構成でき、このように構成された戸車においても、ガイド部材を内枠に取り付けた状態と取り外した状態との使い分けができる。また、ガイド部材が車輪よりも連結ピンから離れた位置に配置されているので、例えばガイド部材が車輪よりも連結ピンに近い位置に配置されている場合と比べて、内枠の外枠に対する回動によってガイド部材を上下に大きく移動させることができる。このため、例えば障子が持ち上げられた場合には、ガイド部材が大きく下方に下がるので、障子がレールから更に外れ難い構成にできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、汎用性を向上できる戸車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る戸車を分解して示す斜視図。
【
図4】前記実施形態に係る戸車のガイド部材を示す説明図。
【
図5】前記実施形態に係る戸車の使用状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~
図3において、本実施形態に係る戸車1は、窓枠と外障子および内障子とを備えた引き違い窓などの建具に用いられるものであり、外枠2および内枠3を備えた戸車枠10と、車輪4と、ガイド部材5とを備えている。
以下の説明において、戸車1の前後方向をX軸方向とし、戸車1の上下方向をY軸方向とし、戸車1の幅方向(見込み方向)をZ軸方向とする。X,Y,Z軸方向は互いに直交する。
【0015】
外枠2は金属製であり、Z軸方向において互いに対向する一対の外枠側面部21,22と、外枠側面部21,22の上縁を連結した外枠上面部23とを有している。外枠側面部21,22の前端側(X軸方向における一端側)には連結ピン6が挿通される軸孔24が形成されており、外枠側面部21,22の後端側(X軸方向における後端側)にはZ軸方向において内側に突出した内側突部25が形成されており、内側突部25よりも上側部分には、後述する高さ調整ねじ8の軸部を目視可能とする側孔26が形成されている。また、外枠側面部21,22の下縁のうちX軸方向における中間部は、凹状に窪んだ凹部27が形成されている。外枠上面部23のX軸方向における中間部には、ラジオペン等の工具を差し込める上孔28が形成されている。上孔28は、車輪4に対して上方に位置することで車輪4の逃がし孔にもされている。
【0016】
内枠3は金属製であり、Z軸方向において互いに対向する一対の内枠側面部31,32(枠側面部)と、内枠側面部31,32の上縁を連結した内枠連結部33,34とを有している。
内枠側面部31,32の前端側(X軸方向における一端側)には連結ピン6が挿通される軸孔35が形成されており、内枠側面部31,32の後端側(X軸方向における他端側)における下縁には、後述する位置決め突部58,59が嵌合する嵌合凹部36が形成されており、内枠側面部31,32の後端側における上縁には、後述する係合爪54,55が係合する係合凹部37が形成されており、内枠側面部31,32のX軸方向における中間部には、車輪4を軸支する軸ピン7が取り付けられている。内枠連結部33は、軸孔35よりも後端側であって軸ピン7よりも前端側の位置で内枠側面部31,32の上縁同士を連結しており、内枠連結部34は、内枠側面部31,32のうち係合凹部37よりも後端側の位置で内枠側面部31,32の上縁同士を連結している。内枠連結部34には高さ調整ねじ8が螺合しており、高さ調整ねじ8の軸部の先端は
図2に示すように外枠上面部23に当接する。また、内枠連結部34は、内側突部25に対して上方に配置されており、内枠連結部34が内側突部25に当接することで、内枠3が外枠2から過度に飛び出ることを防止する構成とされている。
【0017】
ガイド部材5は樹脂製であり、
図4に示すように、下端部にレールガイド溝51が形成されたガイド本体部50と、ガイド本体部50から上方に延出した一対の弾性片部52,53と、弾性片部52,53の上端部にそれぞれ形成された係合爪54,55および摘み部56,57と、ガイド本体部50から側方に突出した一対の位置決め突部58,59とを有している。本実施形態では、弾性片部52,53および係合爪54,55によって戸車枠10に係合する係合部70が構成されている。
ガイド本体部50は、上面501、下面502、前面503、後面504および一対の側面505,506を有して略直方体状に形成されており、下面502に前述したレールガイド溝51がX軸方向に沿って形成されている。また、下面502は、戸車1のX軸方向における前端側から後端側に向かって斜め上に傾斜した傾斜面502Aを有している。
弾性片部52は、ガイド本体部50の上面501から上方に延出しており、そのX軸方向に沿った幅寸法は、側面505の幅寸法と同じ寸法とされている。また、弾性片部52のY軸方向における長さ寸法L1は、内枠側面部31の嵌合凹部36から係合凹部37までのY軸方向における上下寸法L2よりも短い寸法とされている。弾性片部53は弾性片部52と概略同様に形成されているので説明を省略する。ガイド本体部50の側面505および弾性片部52の側面521は、内枠側面部31の内面に当接する当接側面61を構成しており、ガイド本体部50の側面506および弾性片部53の側面531は、内枠側面部32の内面に当接する当接側面62を構成している。
係合爪54は、弾性片部52の側面521よりもZ軸方向において外側に突出しており、係合凹部37に掛けられる掛け面65と、掛け面65に連続していると共にX軸方向における外側から内側に向かって傾斜した傾斜面66とを有している。係合爪55は、弾性片部53の側面531よりもZ軸方向において外側に突出しており、係合爪54と同様に掛け面65および傾斜面66を有している。係合爪54,55の突出方向は逆方向である。
摘み部56は係合爪54に隣接して設けられており、摘み部57は係合爪55に隣接して設けられており、摘み部56,57は前面503側に位置しており、係合爪54,55は後面504側に位置している。摘み部56,57は断面略L字形状に形成されており、摘み部56の立上り部分は、弾性片部52から弾性片部53側に寄った位置に配置されており、摘み部57の立上り部分は、弾性片部53から弾性片部52側に寄った位置に配置されている。
位置決め突部58は、ガイド本体部50の側面505からZ軸方向に突出しており、内枠側面部31の下縁に当接する横突部63と、横突部63に対して上方に位置していると共に内枠側面部31の嵌合凹部36に嵌合する嵌合凸部64とを有している。位置決め突部59は位置決め突部58と概略同様に形成されているので説明を省略する。
【0018】
以上の戸車1は
図5に示すように用いられる。
図5(A)では、戸車1は障子の下框11における断面略コ字形状の溝部12に装着されており、窓枠13のレール14に沿って移動可能である。
図5(A)において、戸車1の外枠2は下框11に固定されており、車輪4はレール14上に載せられている。この戸車1にはガイド部材5が取り付けられており、レールガイド溝51にレール14が配置されており、このガイド部材5によってレール14からの車輪4の脱落や障子外れを防止している。
ここで、ガイド部材5の内枠3への取り付けは、ガイド部材5を内枠3の下方から上方に向かって差し込んで行う。具体的には、
図1に示すように、まず、係合爪54,55および摘み部56,57を内枠側面部31,32間に下方から挿入する。このとき、係合爪54,55は、傾斜面66が内枠側面部31,32の下縁に当たりながら内枠側面部31,32間に滑り込んでいき、弾性片部52,53はZ軸方向に互いに接近する方向に弾性変形する。続いて、弾性片部52,53を内枠側面部31,32間に挿入し、更に、ガイド本体部50のうち位置決め突部58,59よりも上側部分を内枠側面部31,32間に挿入する。次に、ガイド部材5を内枠3に挿入しながら位置決め突部58,59の嵌合凸部64を内枠側面部31,32の嵌合凹部36に嵌合させる。位置決め突部58,59の横突部63が内枠側面部31,32の下縁に当接する際に、係合爪54,55が内枠側面部31,32の係合凹部37に係合することで、ガイド部材5は内枠3に取り付けられる。このとき、一対の当接側面61,62は内枠側面部31,32の内面にそれぞれ当接し、摘み部56,57の立上り部分は、内枠側面部31,32の内面に対してZ軸方向に間隔を隔てて配置される。
このように内枠3に取り付けられたガイド部材5には、車輪4がレール14に載せられた使用状態において係合爪54,55が係合凹部37から外れるY軸方向の力は加えられない。また、ガイド本体部50が内枠側面部31,32に挟まれているので、障子の見込み方向の揺動によってガイド部材5にレール14が当たることでガイド部材5にZ軸方向の力が加えられても、ガイド部材5が内枠3に保持されるので、前記Z軸方向の力を受けられる。
【0019】
図5(B)に示すレール14は、
図5(A)に示すレール14と比べて、厚さ寸法Tが大きくなっており、ガイド部材5のレールガイド溝51にレール14を配置しようとすると、ガイド部材5がレール14に干渉してしまう。このため、ガイド部材5を内枠3から取り外した状態の戸車1を下框11に装着している。ガイド部材5の取り外しは次のように行う、まず、
図2および
図3(A)に示す外枠2の上孔28に工具としてのラジオペンチを挿入し、その先端を摘み部56,57および内枠側面部31,32間に差し込む。次に、ラジオペンチによって摘み部56,57を挟み持って互いに接近させる。これにより、弾性片部52,53も互いに接近するように弾性変形させて係合爪54,55を係合凹部37から外す。最後にガイド部材5を内枠3から下方に引き抜く。このようにしてガイド部材5を内枠3から取り外す。
図5(C)に示す下框11には、
図5(A)および
図5(B)に示す気密材15とは異なる形状の気密材16が取り付けられており、この気密材16がガイド部材5に干渉する位置にある。このため、前述同様にガイド部材5を内枠3から取り外した状態の戸車1を下框11に装着している。
【0020】
[本実施形態の効果]
(1)本実施形態では、戸車1は、ガイド部材5が戸車枠10に着脱可能であるので、前述したようにガイド部材5を戸車枠10に取り付けた状態と取り外した状態との使い分けができる。例えばガイド部材5を取り付けた状態としてレールガイド溝51にレール14を配置させることで、車輪4の脱輪止めや障子などの外れ止めとして機能させることができる(
図5(A)参照)。また、例えば、既設窓などのレール14の厚さ寸法が大きくて当該レール14にガイド部材5が干渉してしまう場合(
図5(B)参照)や、障子などに設けられた気密材16にガイド部材5が干渉してしまう場合(
図5(C)参照)には、ガイド部材5を取り外した状態とすることで、前述した干渉が生じることなく戸車1を用いることができる。このように本実施形態の戸車1はガイド部材5を着脱可能とすることで汎用性が高められている。
(2)戸車1の取付状態でガイド本体部50が一対の内枠側面部31,32の内面に当接するので、例えば弾性片部52,53だけが一対の内枠側面部31,32に当接する場合と比べて、障子がレール14に対して見込み方向に揺動することでガイド部材5にZ軸方向の力が加えられても、内枠側面部31,32によってガイド本体部50を保持することで当該力を受けることができる。
(3)係合部70は、ガイド本体部50から上方に延出した一対の弾性片部52,53と、弾性片部52,53の上端部にそれぞれ形成されている共に一対の内枠側面部31,32に係合する係合爪54,55とを有している。このため、弾性片部52,53が弾性変形するので、ガイド部材5を内枠3に取り付けるために係合爪54,55を内枠側面部31,32の間に容易に挿入することができる一方、ガイド部材5を内枠3から取り外すために係合爪54,55を押すなどして弾性片部52,53を弾性変形させることで、係合爪54,55の内枠側面部31,32に対する係合を容易に外すことができる。
(4)位置決め突部58,59が内枠側面部31,32に当接するので、ガイド部材5の内枠3に対する上下位置を位置決めしつつ、係合爪54,55を内枠側面部31,32の上縁に係合させることができる。また、このように内枠側面部31,32の上縁に係合爪54,55が係合するので、例えば係合爪54,55が内枠側面部31,32に形成された係合孔などに係合する構成と比べて、係合爪54,55を内枠側面部31,32から簡単に外すことができる。
(5)一対の弾性片部52,53の上端部に形成された一対の摘み部56,57は、ガイド部材5の内枠3への取付状態で内枠側面部31,32に対してそれぞれ間隔を隔てて配置されているので、指やラジオペンチなどの工具によって摘み部56,57を挟み持つことで弾性片部52,53を互いに接近する方向に弾性変形させることができ、これにより係合爪54,55を内枠側面部31,32から簡単に外すことができる。
(6)戸車枠10は、外枠2と、外枠2に対して上下に位置調整可能に取り付けられた内枠3とを備えており、内枠3が一対の内枠側面部31,32を有しており、車輪4は内枠3に軸支されており、外枠側面部21,22に内枠側面部31,32が連結ピン6を介して回動可能に取り付けられている。このため、高さ調整ねじ8の回転によって内枠3を外枠2に対して回動させることで車輪4やガイド部材5の高さ位置を調整するピボット式の戸車1を構成でき、このように構成された戸車1においても、ガイド部材5を内枠3に取り付けた状態と取り外した状態との使い分けができる。また、ガイド部材5が車輪4よりも連結ピン6からX軸方向に離れた位置に配置されているので、例えばガイド部材5が車輪4よりも連結ピン6に近い位置に配置されている場合と比べて、内枠3の外枠2に対する回動によってガイド部材5を上下に大きく移動させることができる。このため、例えば障子が持ち上げられた場合には、ガイド部材5が大きく下方に下がるので、障子がレール14から更に外れ難い構成にできる。
【0021】
[変形例]
前記実施形態では、係合爪54,55は内枠側面部31,32の上縁に形成された係合凹部37に係合するが、例えば内枠側面部31,32に形成された係合孔に係合してもよい。このような構成とした場合、ガイド部材5にY軸方向やX軸方向にほとんど力が加わらない使用状態であれば、位置決め突部58,59の構成を省略してもよい。
前記実施形態では、弾性片部52,53の上端部に摘み部56,57が形成されて係合爪54,55の係合解除を容易に行える構成となっているが、例えば係合爪54,55を指などによって互いに接近するように直接に押して前記係合解除を行う場合には前記摘み部56,57は使用されないのでこれらの構成を省略してもよい。
前記実施形態では、内枠3が外枠2に回動可能に取り付けられるピボットタイプの戸車1を構成したが、このほか、内枠3や車輪4が外枠2に対して上下にスライド可能に取り付けられるスライドタイプの戸車を構成してもよい。
前記実施形態では、外枠2と、外枠2に対して上下位置を調整可能な内枠3とを備えた戸車枠10が構成されているが、戸車1に車輪4の高さ位置を調整する機構を構成する必要がない場合には、内枠3の構成を省略して、外枠2を戸車枠10としてもよい。この場合、車輪4は外枠2に軸支され、ガイド部材5の係合部70は外枠2に係合され、ガイド本体部50は外枠2の外枠側面部21,22の内面に当接する。
また、前述したように内枠3がない場合、ガイド部材5は、ガイド本体部50から上方に延出した弾性片部52,53および係合爪54,55によって構成された係合部70に代えて、例えばガイド本体部50のX軸方向において側方に形成された係合部を有していてもよい。この場合、ガイド部材5は、外枠2の外枠側面部21,22間にX軸方向にスライド挿入されて前記係合部が外枠2に係合する構成とされてもよい。
前記実施形態では、位置決め突部58,59は、ガイド本体部50から突出して形成されて内枠側面部31,32の下縁に当接する構成とされているが、これに限らず、例えば内枠側面部31,32の内面に凹部や孔部が形成され、この凹部や孔部に嵌合する位置に配設された位置決め突部を有していてもよく、また、内枠側面部31,32の内面に位置決め突部が形成され、前記位置決め突部に嵌合する凹部や孔部がガイド本体部50に形成されていてもよい。
前記実施形態に係る戸車1は、左右方向にスライド可能な障子のほか、網戸などに装着されてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1…戸車、10…戸車枠、11…下框、12…溝部、13…窓枠、14…レール、15,16…気密材、2…外枠、21,22…外枠側面部、23…外枠上面部、24,35…軸孔、25…内側突部、26…側孔、27…凹部、28…上孔、3…内枠、31,32…内枠側面部、33,34…内枠連結部、36…嵌合凹部、37…係合凹部、4…車輪、5…ガイド部材、50…ガイド本体部、501…上面、502…下面、502A,66…傾斜面、503…前面、504…後面、505,506…側面、51…レールガイド溝、52,53…弾性片部、521,531…側面、54,55…係合爪、56,57…摘み部、58,59…位置決め突部、6…連結ピン、61,62…当接側面、63…横突部、64…嵌合凸部、65…掛け面、7…軸ピン、70…係合部、8…高さ調整ねじ、L1…長さ寸法、L2…上下寸法、T…厚さ寸法。