(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】ウェットシート
(51)【国際特許分類】
A47K 7/00 20060101AFI20220615BHJP
A47L 13/17 20060101ALI20220615BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20220615BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220615BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20220615BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220615BHJP
A61K 36/752 20060101ALI20220615BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220615BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20220615BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20220615BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20220615BHJP
A61K 8/43 20060101ALI20220615BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220615BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220615BHJP
A61K 31/14 20060101ALI20220615BHJP
C11D 17/04 20060101ALN20220615BHJP
C11D 3/48 20060101ALN20220615BHJP
【FI】
A47K7/00 G
A47L13/17 A
A61Q19/10
A61K8/02
A61K8/9789
A61P31/04
A61K36/752
A61K9/70
A61K8/365
A61K8/41
A61K8/49
A61K8/43
A61P43/00 121
A61K47/12
A61K31/14
C11D17/04
C11D3/48
(21)【出願番号】P 2018114693
(22)【出願日】2018-06-15
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 達也
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124060(JP,A)
【文献】特開2015-148023(JP,A)
【文献】特開2001-206818(JP,A)
【文献】特開2009-131474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 7/00
A47L 13/17
A61Q 19/10
A61K 8/02
A61K 8/9789
A61P 31/04
A61K 36/752
A61K 9/70
A61K 8/365
A61K 8/41
A61K 8/49
A61K 8/43
A61P 43/00
A61K 47/12
A61K 31/14
C11D 17/04
C11D 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート体に薬液を含浸させたウェットシートであって、
前記薬液は、
グレープフルーツ種子エキス
と、アロエエキスと、グリセリンと、オレンジエキスと、を含有し、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する除菌活性値が2.0以上であり、
接触角が
35.75°以下であることを特徴とするウェットシート。
【請求項2】
前記薬液は、
1.0×10
-2
質量%以上のグレープフルーツ種子エキスと、
1.0×10
-2
質量%以上のアロエエキスと、
1.0×10
-2
質量%以上のグリセリンと、
1.0×10
-2
質量%以上のオレンジエキスと、
を含有することを特徴とする請求項1に記載のウェットシート。
【請求項3】
前記薬液は、
99.0質量%以上の水と、
1.0×10
-2
質量%以上、3.0×10
-2
質量%以下のグレープフルーツ種子エキスと、
5.0×10
-3
質量%のクエン酸と、
1.0×10
-3
質量%のクエン酸ナトリウムと、
5.0×10
-2
質量%の塩化ベンザルコニウムと、
3.0×10
-2
質量%の塩化セチルピリジニウムと、
2.0×10
-2
質量%のポリアミノプロピルビグアニドと、
を含有することを特徴とする請求項1
又は2に記載のウェットシート。
【請求項4】
前記シート体は、引張強度が、MD方向に45N以上、CD方向に10N以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のウェットシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェットシートに関する。
【背景技術】
【0002】
手の汚れの除去や清掃等に用いられる除菌効果を有するウェットシートとしては、大別して、含浸させる薬液にアルコールが含まれるものと、含まれないものとがあるが、従来、アルコールが含まれないものにおいては、除菌活性値を向上するために、プロピレングリコール及びパラベンを使用していた。しかし、プロピレングリコール及びパラベンを使用すると、薬液が使用者の肌に付着した際にべたつきを感じることがあった。
そこで、薬液にアルコールが含まれず、かつプロピレングリコール及びパラベンを使用しない、除菌効果を有するウェットシートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明においては、プロピレングリコール及びパラベンを含有しないものの、いまだ使用者が感じるべたつきの低減は十分ではなかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、十分な除菌力を有しつつ、使用者がべたつきを感じにくいウェットシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
シート体に薬液を含浸させたウェットシートであって、
前記薬液は、
グレープフルーツ種子エキスと、アロエエキスと、グリセリンと、オレンジエキスと、を含有し、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する除菌活性値が2.0以上であり、
接触角が35.75°以下であることを特徴とする。
本発明によれば、十分な除菌力を有しつつ、使用者がべたつきを感じにくいウェットシートを提供することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のウェットシートであって、
前記薬液は、
1.0×10
-2
質量%以上のグレープフルーツ種子エキスと、
1.0×10
-2
質量%以上のアロエエキスと、
1.0×10
-2
質量%以上のグリセリンと、
1.0×10
-2
質量%以上のオレンジエキスと、
を含有することを特徴とする
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のウェットシートであって、
前記薬液は、
99.0質量%以上の水と、
1.0×10
-2
質量%以上、3.0×10
-2
質量%以下のグレープフルーツ種子エキスと、
5.0×10
-3
質量%のクエン酸と、
1.0×10
-3
質量%のクエン酸ナトリウムと、
5.0×10
-2
質量%の塩化ベンザルコニウムと、
3.0×10
-2
質量%の塩化セチルピリジニウムと、
2.0×10
-2
質量%のポリアミノプロピルビグアニドと、
を含有することを特徴とする。
本発明によれば、十分な除菌力を有しつつ、使用者がべたつきを感じにくいウェットシートを提供することができる。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のウェットシートであって、
前記シート体は、引張強度が、MD方向に45N以上、CD方向に10N以上であることを特徴とする。
本発明によれば、ウェットシートを十分な強度とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、十分な除菌力を有しつつ、使用者がべたつきを感じにくいウェットシートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態であるウェットシートについて詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、これに限定されるものではない。
【0012】
[実施形態の構成]
{全体構成}
本実施形態のウェットシートは、シート体に薬液が含浸されたものである。
【0013】
{シート体}
本発明において用いるシート体としては、後述の薬液を含浸させることができるものであれば、特に限定はないが、柄のない不織布であり、かつ引張強度(長辺100mm、短辺50mmの試験片を長辺方向に引っ張り、これが破断したときの最大点荷重によって測定した値(株式会社エー・アンド・ディー製のTENSILON RTG-1210を用いた。))が、抄紙機上の紙の進行方向(MD方向)に45N以上であり、抄紙機上の紙の進行方向と直角な方向(CD方向)に10N以上であることが望ましい。
【0014】
また、シート体を構成する原料繊維としては、レーヨン、PET(ポリエチレンテレフタレート)等を用いたものであることが望ましい。
【0015】
また、シート体の目付は、20~80gsmであることが好ましい。なお、目付は、JIS P 8124:2011に従って測定した坪量をいう。
【0016】
{薬液}
薬液としては、以下のものを用いる。
なお、薬液含浸率は50質量%以上、400質量%以下であることが好ましい。なお薬液含浸率とは、薬液含浸前のシート体の質量と、含浸させる薬液の質量とを測定し、薬液含浸前のシート体の質量に対する含浸させる薬液の質量の割合を算出したものをいう。
【0017】
薬液としては接触角が43°以下のものを用いる。接触角が36°以下のものを用いることがさらに好ましい。
なお、接触角は、固液界面解析システム(協和界面科学株式会社のDrop Master 300)を用いて液滴法にて測定を行った。具体的には、上記システムに付属のシリンジを用いて、液滴をアルミ製の台の表面に接触させて着滴させた後、自動的にパソコンに取得した画像の解析を行い、接触角を算出した。
【0018】
また、清掃時の除菌効果を十分なものとするため、除菌力が99%以上である必要がある。
なお、ここで除菌力が99%以上とは、大腸菌及び黄色ブドウ球菌の両者に対して、除菌活性値が2.0以上であることをいう。なお、除菌活性値の測定は、一財社団法人 日本衛生材料工業連合会編、「ウエットワイパー類の除菌性能試験方法」(平成27年11月16日改定)に準じて行った。
具体的には、適当な汚れと共に細菌を試験担体(ステンレス板)に接種し、乾燥後拭取り装置に設置する。試験試料(ウエットワイプまたは対照液を塗布した綿布)を巻きつけたおもりで試験担体上を所定回数拭取り、5分間静置する。5分後、試験担体を不活性化剤に移し、試験試料の細菌の増殖を抑制したり死滅させる性質を不活性化させた後、試験担体上の生菌数を測定する。
試験試料の除菌活性値は、対照試料及び試験試料で拭取り後、それぞれの試験担体上に残存する生菌数の常用対数値の差で示す。
【0019】
このような薬液としては、具体的には、例えば以下の6成分を含有し、これら6成分の含有量の合計が1.0質量%以下であり、水の含有量が99.0質量%以上であるものを用いることができる。
1.0×10-2質量%以上、5.0×10-2質量%以下のグレープフルーツ種子エキス
1.0×10-3質量%以上、5.0×10-3質量%以下のクエン酸
1.0×10-3質量%以上、5.0×10-3質量%以下のクエン酸ナトリウム
1.0×10-2質量%以上、5.0×10-1質量%以下の塩化ベンザルコニウム
1.0×10-2質量%以上、5.0×10-2質量%以下の塩化セチルピリジニウム
1.0×10-3質量%以上、5.0×10-2質量%以下のポリアミノプロピルビグアニド
【0020】
グレープフルーツ種子エキスは、抗菌作用を有することから含有されているものである。
クエン酸は、pH調整及び緩衝作用を有することから含有されているものである。
クエン酸ナトリウムは、pH調整及び緩衝作用を有することから含有されているものである。
塩化ベンザルコニウムは、抗菌作用を有することから含有されているものである。
塩化セチルピリジニウムは、抗菌作用を有することから含有されているものである。
ポリアミノプロピルビグアニドは、抗菌作用を有することから含有されているものである。
【0021】
また、薬液はさらに、1.0×10-3質量%以上、5.0×10-2質量%以下のオレンジエキスを含有していてもよい。
【0022】
{実施形態の効果}
十分な除菌効果を有するウェットシートを、アルコールを含有しない薬液を用いて製作した場合、従来のものにおいては、使用者が感じるべたつきを十分に低減できなかった。
これに対して、本実施形態によれば、薬液の接触角が上記の範囲であることによって、使用者の手肌等に付着した薬液が広がり易くなり、アルコールを含有せずとも、これが蒸発し易くなる。
したがって、アルコールを含有しない薬液を用いた場合においても、十分な除菌効果を有しつつ、使用者が感じるべたつきを低減することが可能となる。
【実施例】
【0023】
次に、本発明の実施例及び比較例に係るウェットシートにつき、除菌力の評価、接触角測定及びべたつき等に関する評価を行った結果について説明する。
【0024】
[実施例及び比較例の構成]
以下の実施例及び比較例に係るウェットシートを用意した。
【0025】
{実施例1}
(シート体)
大きさ:MD方向200mm、CD方向150mm
成分:レーヨン:40質量%、PET(ポリエチレンテレフタレート):40質量%、PE(ポリエチレン)及びPP(ポリプロピレン)の混合物:20質量%
構成:スパンレース不織布
目付:34g/m2
(薬液)
精製水:99.434%
塩化ベンザルコニウム50%水溶液:1.0×10-1%
(塩化ベンザルコニウム: 5.0×10-2%)
塩化セチルピリジニウム:3.0×10-2%
ポリアミノプロピルビグアニド20%水溶液:1.0×10-1%
(ポリアミノプロピルビグアニド: 2.0×10-2%)
グレープフルーツ種子エキス:1.0×10-2%
フェノキシエタノール:3.0×10-1%
クエン酸:5.0×10-3%
クエン酸ナトリウム:1.0×10-3%
アロエエキス:1.0×10-2%
グリセリン:1.0×10-2%
(薬液含浸率)
250%
【0026】
{実施例2}
(シート体)
実施例1と同様。
(薬液)
精製水:99.424%
塩化ベンザルコニウム50%水溶液:1.0×10-1%
(塩化ベンザルコニウム: 5.0×10-2%)
塩化セチルピリジニウム:3.0×10-2%
ポリアミノプロピルビグアニド20%水溶液:1.0×10-1%
(ポリアミノプロピルビグアニド: 2.0×10-2%)
グレープフルーツ種子エキス:1.0×10-2%
フェノキシエタノール:3.0×10-1%
クエン酸:5.0×10-3%
クエン酸ナトリウム:1.0×10-3%
アロエエキス:1.0×10-2%
グリセリン:1.0×10-2%
オレンジエキス:1.0×10-2%
(薬液含浸率)
実施例1と同様。
【0027】
{実施例3}
(シート体)
実施例1と同様。
(薬液)
精製水:99.404%
塩化ベンザルコニウム50%水溶液:1.0×10-1%
(塩化ベンザルコニウム: 5.0×10-2%)
塩化セチルピリジニウム:3.0×10-2%
ポリアミノプロピルビグアニド20%水溶液:1.0×10-1%
(ポリアミノプロピルビグアニド: 2.0×10-2%)
グレープフルーツ種子エキス:3.0×10-2%
フェノキシエタノール:3.0×10-1%
クエン酸:5.0×10-3%
クエン酸ナトリウム:1.0×10-3%
アロエエキス:1.0×10-2%
グリセリン:1.0×10-2%
オレンジエキス:1.0×10-2%
(薬液含浸率)
実施例1と同様。
【0028】
{比較例1}
(シート体)
実施例1と同様。
(薬液)
精製水:96.184%
プロピレングリコール:3.0%
塩化ベンザルコニウム50%水溶液:1.0×10-1%
(塩化ベンザルコニウム: 5.0×10-2%)
塩化セチルピリジニウム:3.0×10-2%
ポリアミノプロピルビグアニド20%水溶液:1.0×10-1%
(ポリアミノプロピルビグアニド: 2.0×10-2%)
グレープフルーツ種子エキス:1.0×10-2%
パラオキシ安息香酸メチル:2.0×10-1%
パラオキシ安息香酸エチル:5.0×10-2%
パラオキシ安息香酸プロピル:2.0×10-2%
フェノキシエタノール:3.0×10-1%
クエン酸:5.0×10-3%
クエン酸ナトリウム:1.0×10-3%
(薬液含浸率)
実施例1と同様。
【0029】
[試験方法]
上記実施例及び比較例に係るウェットシートを用いて、以下の試験を行った。
【0030】
{除菌力試験}
上記実施例及び比較例に用いられた薬液について、大腸菌及び黄色ブドウ球菌の2菌種に関する除菌活性値の測定を行った。
具体的には、段落0018に示した方法を用いた。
【0031】
{接触角測定}
上記実施例及び比較例に用いられた薬液について、接触角の測定を行った。
具体的には、段落0017に示した方法を用いた。
【0032】
{べたつき等の評価}
上記実施例及び比較例に係るウェットシートについて、被験者8人に実際に手肌を拭かせ、べたつき難さ、乾き易さ、耐久性、拭き易さ、汚れ落ちにつき、1から7の7段階で評価させ、その平均値を算出した。なお、4を平均(一般的なウェットシート程度)として、極めて良好な場合に7、極めて不良な場合を1とし、平均よりやや良好な場合を5、平均よりやや不良な場合を3とし、平均より良好な場合を6、平均より不良な場合を2とした。
【0033】
[試験結果]
試験の結果を表Iに示す。
【0034】
【0035】
[評価]
実施例と比較例との比較から、ウェットシートに含浸させる薬液の接触角を小さくすることによって、べたつき難さ、乾き易さ、拭き易さ、汚れ落ちを改善できることが分かる。