(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】シャッターケース運搬時のケース補強構造及び搬入方法
(51)【国際特許分類】
E06B 9/17 20060101AFI20220615BHJP
【FI】
E06B9/17 W
(21)【出願番号】P 2018114885
(22)【出願日】2018-06-15
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【氏名又は名称】畑添 隆人
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】張 俊偉
【審査官】芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-214237(JP,A)
【文献】特開2011-132736(JP,A)
【文献】米国特許第4399855(US,A)
【文献】独国実用新案第202007004843(DE,U1)
【文献】特開2001-40778(JP,A)
【文献】特開平4-136343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00
9/02
9/06- 9/18
9/40- 9/50
9/56- 9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の側面板と、上面板と、下面板と、前面板とからなり、背面側に開口を備えたシャッターケースにおいて、
前記上面板と前記下面板間には、開口側に位置して、ケース幅方向に間隔を存して複数の支承部材を取り外し可能に設けて
あり、
前記シャッターケースには1つあるいは複数の補強部材が設けてあり、前記補強部材は、前記上面板の下面の後端側に位置する上側部位、前記下面板の上面の後端側に位置する下側部位を含み、
前記支承部材の上端は前記上側部位に取り外し可能に設けてあり、前記支承部材の下端は前記下側部位に取り外し可能に設けてあり、
前記補強部材は、前記上面板の下面の後端に設けられ、長さ方向両端部が側面板まで達していない長尺状の上側補強部材、前記下面板の上面の後端に設けられ、長さ方向両端部が側面板まで達している長尺状の下側補強部材、ケース幅方向に間隔を存して複数設けられ、上側部及び下側部を備えた中間補強部材、前記上側補強部材の長さ方向端部と前記側面板との間に位置して、前記上面板の下面の後端側に設けた受け材、を含み、
前記上側部位には、前記上側補強部材、前記中間補強部材の上側部、前記受け材が含まれ、
前記下側部位には、前記下側補強部材、前記中間補強部材の下側部が含まれ、
前記支承部材は、前記上側補強部材に対応するケース幅内に位置する第1支承部材と、前記上側補強部材の長さ方向端部と前記側面板との間に対応するケース幅内に位置する第2支承部材と、を含み、
前記第1支承部材の上端は、前記上側補強部材、前記中間補強部材の上側部の一方あるいは両方に取り外し可能に設けてあり、前記第1支承部材の下端は、前記下側補強部材、前記中間補強部材の下側部の一方あるいは両方に取り外し可能に設けてあり、
前記第2支承部材の上端は、前記受け材に取り外し可能に設けてあり、前記第2支承部材の下端は、前記下側補強部材に取り外し可能に設けてある、
重量シャッターケース運搬時・保管時のケース補強構造。
【請求項2】
前記支承部材の上端、下端の両方あるいは一方が前記補強部材に取り外し可能に連結されている、
請求項
1に記載のケース補強構造。
【請求項3】
前記支承部材の上端、下端の一方が前記補強部材に取り外し可能に連結されており、他方が前記補強部材に当接している、
請求項
2に記載のケース補強構造。
【請求項4】
支承部材を取り外し可能に連結する手段は溶接である、
請求項
2、
3いずれか1項に記載のケース補強構造。
【請求項5】
工場において、左右の側面板と、上面板と、下面板と、前面板とからなり、背面側に開口を備えたシャッターケースに対して、前記上面板と前記下面板の間に、開口側に位置して、ケース幅方向に間隔を存して複数の支承部材を取り外し可能に設けてシャッターケースを補強するステップと、
運搬時に、前記補強されたシャッターケースを積み重ねた状態とするステップと、
現場において、前記補強されたシャッターケースから前記支承部材を取り外してシャッターケースを得るステップと、
からなるシャッターケースの搬入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッターケース運搬時のケース補強構造及び搬入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大開口部の開閉に用いられる重量シャッターのシャッターケース(以下、「重量シャッターケース」という)は、左右一対の側面板の間に上面板、下面板、前面板を設けてシャッターカーテンの収納空間を形成した箱型のシャッターケースないし角ケースである。このような重量シャッターケースの基本形状は、特許文献1、2に記載されている。
【0003】
重量シャッターケースは、工場で組み立てられ、取付現場まで運搬されて、シャッター装置(建物開口部上方の左右のブラケット、ブラケット間に支持された巻取シャフト、巻取シャフトに巻装されたシャッターカーテン、駆動側ブラケットに支持された開閉機等を収納して覆うように)に取り付けられる。
【0004】
重量シャッターケースは、工場製作後から現場での取付までの運搬工程(工場内での運搬、工場から取付現場への運搬)において、運搬時の効率や省スペースのため、複数のケースを積み重ねた状態で運搬する場合が多い。この時、下側のシャッターケースに上側のケース重量が作用するが、ケース板は、通常、板厚1.6tの薄板から形成されているため、垂直方向の荷重が負荷することで下側のシャッターケースが変形してしまうおそれがあった。変形したシャッターケースを現場で元の形状に修復することは手間を要し、現場におけるシャッターケースの取付作業の効率を低下させることになる。
【文献】特開2002-194969号
【文献】特開2011-214237号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複数のシャッターケースを重ねた状態で保管ないし運搬する場合であっても、下側のシャッターケースの変形を防止することができるケース補強構造及び搬入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するべく本発明が採用した技術手段は、
左右の側面板と、上面板と、下面板と、前面板とからなり、背面側に開口を備えたシャッターケースにおいて、
前記上面板と前記下面板間には、開口側に位置して、ケース幅方向に間隔を存して複数の支承部材を取り外し可能に設けてなる、
シャッターケース運搬時・保管時のケース補強構造、である。
本明細書において、前面板が位置する側を「前」とし、背面側ないし開口側(シャッターケースが躯体に取り付けられた場合には躯体側)を「後」とする。したがって、上面板や下面板の開口側の端部は「後端」であり、「後端」に近い側は「後端側」ないし「後側」であり、「後端」に近い側の部位は、「後側部位」として規定される。
【0007】
1つの態様では、前記シャッターケースには1つあるいは複数の補強部材が設けてあり、前記補強部材は、前記上面板の下面の後端側に位置する上側部位、前記下面板の上面の後端側に位置する下側部位を含み、
前記支承部材の上端は前記上側部位に取り外し可能に設けてあり、前記支承部材の下端は前記下側部位に取り外し可能に設けてある。
【0008】
1つの態様では、前記補強部材は、前記上面板の下面の後端に設けられ、長さ方向両端部が側面板まで達していない長尺状の上側補強部材、前記下面板の上面の後端に設けられ、長さ方向両端部が側面板まで達している長尺状の下側補強部材、ケース幅方向に間隔を存して複数設けられ、上側部及び下側部を備えた中間補強部材、前記上側補強部材の長さ方向端部と前記側面板との間に位置して、前記上面板の下面の後端側に設けた受け材、を含み、
前記上側部位には、前記上側補強部材、前記中間補強部材の上側部、前記受け材が含まれ、
前記下側部位には、前記下側補強部材、前記中間補強部材の下側部が含まれ、
前記支承部材は、前記上側補強部材に対応するケース幅内に位置する第1支承部材と、前記上側補強部材の長さ方向端部と前記側面板との間に対応するケース幅内に位置する第2支承部材と、を含み、
前記第1支承部材の上端は、前記上側補強部材、前記中間補強部材の上側部の一方あるいは両方に取り外し可能に設けてあり、前記第1支承部材の下端は、前記下側補強部材、前記中間補強部材の下側部の一方あるいは両方に取り外し可能に設けてあり、
前記第2支承部材の上端は、前記受け材に取り外し可能に設けてあり、前記第2支承部材の下端は、前記下側補強部材に取り外し可能に設けてある。
【0009】
1つの態様では、前記支承部材の上端、下端の両方あるいは一方が前記補強部材に取り外し可能に連結されている。
1つの態様では、前記支承部材の上端、下端の一方が前記補強部材に取り外し可能に連結されており、他方が前記補強部材に当接している。
【0010】
1つの態様では、支承部材を取り外し可能に連結する手段は溶接であり、当該溶接は、衝撃を加えることで当該支承部材が容易に離脱可能な程度の溶接である。
1つの態様では、支承部材を取り外し可能に連結する手段は螺子を用いた連結である。
【0011】
本発明が採用した他の技術手段は、
工場において、左右の側面板と、上面板と、下面板と、前面板とからなり、背面側に開口を備えたシャッターケースに対して、前記上面板と前記下面板の間に、開口側に位置して、ケース幅方向に間隔を存して複数の支承部材を取り外し可能に設けてシャッターケースを補強するステップと、
運搬時に、前記補強されたシャッターケースを積み重ねた状態とするステップと、
現場において、前記補強されたシャッターケースから前記支承部材を取り外してシャッターケースを得るステップと、
からなるシャッターケースの搬入方法、である。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、左右の側面板と、上面板と、下面板と、前面板とからなり、背面側に開口を備えたシャッターケースにおいて、前記上面板と前記下面板間には、開口側に位置して、ケース幅方向に間隔を存して複数の支承部材を取り外し可能に設けることでシャッターケースを補強したので、シャッターケースを上下に積み重ねた状態で保管ないし運搬する場合であっても、上面板、下面板間に、ケース開口側(前面板、側面板から離れており、前面板、側面板によって支持されない部位)に位置して取り外し可能に設けた支承部材が上面板の後側部位に下向きに作用する垂直荷重に対抗し、保管時、運搬時における垂直荷重に起因するシャッターケースの変形を防止する。
【0013】
支承部材は、シャッターケースの上面板と下面板の間に取り外し可能に設けてあるので、現場に搬入された補強されたシャッターケースから支承部材を取り外して、建物開口部上方の所定位置に取り付ければよい。また、取り外し可能な取り付け手段として、衝撃を加えることで支承部材を容易に離脱可能な程度の溶接を採用することで、現場において簡単に支承部材を取り外すことができ、現場におけるシャッターケースの取付作業の効率を低下させることもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A)は、重量シャッターケースを背面側かつ斜め上方から見た斜視図であり、(B)は、重量シャッターケースを背面側かつ斜め下方から見た斜視図である。
【
図2】(A)は、重量シャッターケースを背面側から見た正面図、(B)は重量シャッターケースの底面図である。
【
図3】
図2(A)におけるIII-III断面図である。
【
図4】
図3の上端部位、下端部位の部分拡大図である。
【
図6】
図5の上端部位、下端部位の部分拡大図である。
【
図7】重量シャッターケースが取り付けられた状態を示し、平面図、前面から見た正面図、左側面図、右側面図である。
【
図8】運搬時に重量シャッターケースが積み重ねられた状態を示し、(A)は背面側かつ斜め上方から見た斜視図であり、(B)背面側かつ斜め下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1(A)は、重量シャッターケース(以下、「シャッターケース」という)Cを背面側(後方)かつ斜め上方から見た斜視図、(B)は、シャッターケースCを背面側(後方)かつ斜め下方から見た斜視図であり、
図2(A)は、シャッターケースCを背面側から見た正面図、(B)はシャッターケースCの底面図である。
【0016】
図1、
図2に示すように、工場で製作されたシャッターケースCは、水平状に延びる上面板1、垂直状に延びる左右の側面板2、3、垂直状に延びる前面板4、水平状に延びる下面板5からなる箱型ケースであり、背面が開口している。また、ケース板は、板厚1.6tの薄肉鋼鈑からなる。建物開口部の上方部位に取り付けられたシャッターケースCの内部空間には、左右のブラケット12、13、左右のブラケット12、13に支持された巻取シャフト(図示せず)、巻取シャフトに巻装されたシャッターカーテンS、ブラケット12に連結された取付部14に取り付けられた開閉機M、が収納される(
図7参照)。
【0017】
シャッターケースCにおいて、一側の側面板2の幅寸法(奥行寸法)は他側の側面板3の幅寸法(奥行寸法)よりも大きくなっており、ケースの上面板1、下面板5の幅方向一側は幅広となっており、前面板4は、第1部分40と、幅方向一側の幅広部に対応する第2部分41と、第1部分40と第2部分41を結ぶ第3部分42とからなる。シャッターケースCの幅方向の一側の内部空間の奥行寸法を大きくすることで、重量シャッターの巻取シャフトを回転駆動するための開閉機Mの収納空間を確保している。
【0018】
シャッターケースCは、上面板1、側面板2、3、前面板4、下面板5を形成する各ケース板を工場で箱状に組み立てることで得られる。具体的には、上面板1の前端部位と前面板4の上端部位が接続され、下面板5の前端部位と前面板4の下端部位が接続され、上面板1の幅方向の一端部位と側面板2の上端部位が接続され、上面板1の幅方向の他端部位と側面板3の上端部位が接続され、下面板5の幅方向の一端部位と側面板2の下端部位が接続され、下面板5の幅方向の他端部位と側面板3の下端部位が接続され、前面板4の幅方向の一端部位と側面板2の前端部位が接続され、前面板4の幅方向の他端部位と側面板3の前端部位が接続される。ケース板同士の接続手段としては、溶接や螺子が例示される。シャッターケースCの角部(上面板1、側面板2、3、前面板4、下面板5の継ぎ部)には長尺状の補強部材(例えば、断面視L形状のアングル材)が設けてある。
【0019】
このように、左右一対の側面板2、3の間に上面板1、下面板5、前面板4を設けてシャッターカーテンS等の収納空間を形成した箱型のシャッターケースCは、工場で組み立てられ、取付現場まで運搬されてシャッター装置に取り付けられるが、箱型のシャッターケースCには、上面板1の後端側(シャッターケースCが取り付けられた状態では躯体側)に固定された上側補強部材6と、下面板5の後端側(躯体側)に位置して左右の側面板2、3間に架け渡された下側補強部材7と、シャッターケースCの左右方向中間部において、上面板1と前面板4と下面板5に接合する側面視コ字状の中間補強部材8が設けられている。これらの補強部材6、7、8について以下に説明する。
【0020】
シャッターケースCの上面板1の後端には、長尺状の上側補強部材6が設けてある。上側補強部材6は、水平辺60と垂下辺61から断面視L形状の鋼材であり、水平辺60を上面板1の後端部位の下面に接続することで上面板1に取り付けられている。上側補強部材6は、上面板1の幅方向に亘って設けてあるが、左右のブラケット12、13の振れ止め部材15、16及び振れ止め部材15、16の支持部17との干渉を避けるため、上面板1の幅方向両端部までは達しない長さとなっている(
図7参照)。
【0021】
より詳しく説明すると、左右のブラケット12、13は、躯体Wに対して持ち出し状に設けられるものであり、また、左右のブラケット12、13間にはシャッターカーテンが連結された巻取シャフトが支持されることから左右のブラケット12、13には相当の重量が負荷することになり、振れ止め部材15、16によって左右のブラケット12、13の取付を補強している。振れ止め部材15、16は水平に延びる長尺状の部材であり、一端がブラケット12、13の上端部位に連結され、支持部17(躯体Wに設けられる)に連結されている。振れ止め部材15、16及び支持部17の高さ位置が、上側補強部材6の高さ位置と略同じであることから、振れ止め部材15、16及び支持部17を設けるスペースを確保するため、上側補強部材6の両端は、側面板2、3まで達していない。
【0022】
下面板5の後端は、上面板1の後端よりもシャッターケースCの前側に位置しており、下面板5の後端には垂直状の立ち上がり片50が形成されており、下面板5の後端部位及び立ち上がり片50に、長尺状の下側補強部材7が設けてある。下側補強部材7は、まぐさ材であり、スムーサの取付台としても機能する。下側補強部材7は、上辺70、下辺71、上辺70と下辺71の一端側を連結する垂直辺72、上辺70の他端側の上側垂直辺73、下辺71の他端側の下側垂直辺74とから断面視略C形状を備えた鋼材であり、下辺71を下面板5の後端部位の上面に接続し、上側垂直辺73、下側垂直辺74を立ち上がり片50に接続することで、下面板5に取り付けられている。下側補強部材7は、下面板5の全幅に亘って設けてある。
【0023】
シャッターケースCが建物開口部上方に設けられた状態において、下面板5の後端と躯体Wとの間には建物開口部の開閉時にシャッターカーテンSが通る開口が形成される。かかる開口の幅方向両端に位置して、左右のブラケット12、13には、シャッターカーテンの幅方向両端部を受け入れて案内するガイドレールGの上端部位が設けられている。
【0024】
シャッターケースCの内面には、幅方向に間隔を存して複数の中間補強部材8が設けてある。中間補強部材8は、上面板1に当接する上側部80と、下面板5に当接する下側部81と、上側部80と下側部81の前端同士を接続し、前面板4に当接する垂直部82と、から側面視略コ字形状を備えている。上側部80、下側部81、垂直部82はそれぞれ断面視L形状の鋼材である。
図4に示すように、上側部80は水平辺800と垂直辺801から断面視L形状に形成されており、水平辺800が上面板1の下面に接続されており、垂直辺801が上面板1の下面から垂下している。下側部81は水平辺810と垂直辺811から断面視L形状に形成されており、水平辺810が下面板5の上面に接続されており、垂直辺811が下面板5の上面から垂直に立ち上がっている。垂直部82はシャッターケースCの幅方向に延びる第1辺820と前後方向に延びる第2辺821から断面視L形状に形成されており、第1辺820が前面板4の内面に接続されており、第2辺821が前面板4の内面から後方に向かって垂直に延びている。上側部80の垂直辺801と垂直部82の第2辺821、下側部81の垂直辺811と垂直部82の第2辺821を接続するように補強材83、84が設けてある。
【0025】
シャッターケースCに作用する垂直荷重において、前側及び幅方向両端に作用する力は、垂直方向に延びる前面板4、左右の側面板2、3によって支持される。また、シャッターケースCに作用する垂直荷重は、シャッターケースCの幅方向に間隔を存して設けた中間補強部材8によっても支持される。しかしながら、シャッターケースCを背面側(後端側)は、建物開口部上方に設置した左右のブラケット12、13間に支持された巻取シャフトや巻取シャフトに巻装されたシャッターカーテンSを覆うように被せて取り付けるために開口状となっており、シャッターケースCの後側は前側や幅方向両端に比べて垂直荷重に対して脆弱である。
【0026】
本実施形態に係るシャッターケースCでは、上面板1と下面板5間に、後側(開口側)に位置して、ケース幅方向に間隔を存して複数の第1支承部材9、第2支承部材10が取り外し可能に設けてある。第1支承部材9、第2支承部材10は、シャッターケースCを積み重ねた時に特に下側のシャッターケースCに作用する垂直方向の力に対抗する補強部材であり、当該補強部材の圧縮方向の力(垂直荷重)を支持することができればよく、棒状ないし柱状の部材から形成することができる。
図1、2に示すように、第2支承部材10は、シャッターケースCの幅方向両端部位に位置して設けられ、第1支承部材9は、幅方向両端部位の2本の第2支承部材10間に位置して、ケース幅方向に間隔を存して複数本設けられている。本実施形態では、第1支承部材9は側面視傾斜姿勢で設けられ、第2支承部材10は垂直姿勢で設けられるが、第1支承部材9、第2支承部材10は高さ方向に延びて上面板1と下面板5の間に突っ張るように設けられていればよく、第1支承部材9、第2支承部材10の姿勢は限定されない。
【0027】
図3、
図4に示すように、第1支承部材9は、第1辺90と第2辺91から断面視L形状を有する長尺部材であって、上端は上側補強部材6及び中間補強部材8の上側部80の後端に簡易な溶接によって取り外し可能に連結されており、下端は中間補強部材8の下側部81の後側部位に簡易な溶接によって取り外し可能に連結されている。本実施形態では、第1支承部材9の上端を上面板1の後端(下面板5の後端よりも後側に位置する)の上側補強部材6に連結していることから第1支承部材9は、上面板1と下面板5との間で傾斜姿勢(前方に向かって下向き傾斜状)で延びている。第1支承部材9は、上面板1の後側部位と下面板5の後側部位の間で突っ張ることで、上面板1の後側部位に下向きに作用する垂直荷重を負担することができ、積み重ねた状態でのシャッターケースCの運搬時に、上面板1の後側部位の変形を防止することができる。
【0028】
第1支承部材9の上端及び下端の溶接は、ハンマー等で衝撃を加えることで第1支承部材9がシャッターケースCから容易に離脱可能な程度の溶接であるので、現場において簡単に第1支承部材9を取り外すことができる。第1支承部材9は、予めシャッターケースCに内蔵されている補強部材(上側補強部材6、中間補強部材8)を介して上面板1、下面板5に溶接されているので、第1支承部材9を取り付けるために新たに補強部材を設ける必要がなく、また、上面板1、下面板5に補強部材を介して間接的に取り付けられるので、現場で溶接を破壊して第1支承部材9を離脱する際に、上面板1、下面板5に破損や変形を生じることがない。
【0029】
本実施形態では、第1支承部材9の上端を上側補強部材6及び中間補強部材8の上側部80に連結しているが、第1支承部材9の上端を上側補強部材6のみ、あるいは、中間補強部材8の上側部80のみに着脱可能に連結してもよい。本実施形態では、第1支承部材9の下端を中間補強部材8の下側部81に連結しているが、第1支承部材9の下端を下側補強部材7あるいは下側補強部材7及び中間補強部材8の下側部81に連結してもよい。
【0030】
本実施形態では、第1支承部材9を、ケース幅方向において、中間補強部材8が設けられた位置に合わせて取り付けてあるが、第1支承部材9を、中間補強部材8とは異なる位置で取り外し可能に設けてもよい。この場合、例えば、第1支承部材9の上端を上側補強部材6に取り外し可能に連結し、下端を下側補強部材7に取り外し可能に連結してもよい。
【0031】
第2支承部材10は、シャッターケースCの幅方向両端に位置して設けられおり、第2支承部材10が設けられる部位には、上側補強部材6、中間補強部材8は存在しない。
図1(B)、
図2(A)に示すように、上面板1の下面の幅方向の両端部位には、短尺の受け材11が固定されている。
図6に示すように、受け材11は水平辺110と垂直辺111とから断面視L形状を備えた鋼材であり、水平辺110を上面板1の下面に固定することで、垂直辺111が上面板1の下面から垂下するようになっている。受け材11は、左右のブラケット12、13の振れ止め部材15、16及び振れ止め部材15、16の支持部17と干渉しないような位置に取り付けられる。受け材11は、第2支承部材10が上面板1の下面に直接当接ないし連結することを防止して上面板1を補強する補強部材である。
【0032】
図6に示すように、第2支承部材10は、第1辺100と第2辺101から断面視L形状を有する長尺部材であって、上端は受け材11の垂直辺111に簡易な溶接によって取り外し可能に連結されており、第2支承部材10の下端は下側補強部材7の垂直辺72に簡易な溶接によって取り外し可能に連結されている。
図5に示すように、本実施形態では、第2支承部材10は、上面板1と下面板5との間で垂直姿勢で延びている。第2支承部材10は、シャッターケースCの幅方向両端部位において、上面板1の後側部位と下面板5の後側部位の間で突っ張ることで、上面板1の幅方向両端部位の後側部位に下向きに作用する垂直荷重を負担することができ、積み重ねた状態でのシャッターケースCの運搬時に、上面板1の幅方向両端部位の後側部位の変形を防止することができる。
【0033】
第2支承部材10の上端及び下端の溶接は、ハンマー等で衝撃を加えることで第2支承部材10がシャッターケースCから容易に離脱可能な程度の溶接であるので、現場において簡単に第2支承部材10を取り外すことができる。第2支承部材10は、受け材11、予めシャッターケースCに内蔵されている補強部材(下側補強部材7)を介して上面板1、下面板5に溶接されているので、第2支承部材10を取り付けるために短尺の受け材11のみを設ければよく、また、上面板1、下面板5に補強部材を介して間接的に取り付けられるので、現場で溶接を破壊して第2支承部材10を離脱する際に、上面板1、下面板5に破損や変形を生じることがない。
【0034】
第2支承部材10の上端を、受け材11の水平辺110及び垂直辺111に当接させ、下端を、下側補強部材7の垂直辺72に簡易な溶接によって取り外し可能に連結してもよい。このような取付態様であっても、運搬時の衝撃や振動で第2支承部材10が外れないことが確認されている。
【0035】
本実施形態に係るシャッターケースCの工場での製作、運搬、現場への搬入、取り付けの流れについて説明する。先ず、工場において、上面板1、左右一対の側面板2、3と、前面板4、下面板5を箱状に組み立て、さらに、上面板1の下面の後端に上側補強部材6を取り付け、下面板5の上面の後端に下側補強部材7を取り付け、ケース幅方向に間隔を存した複数箇所にコ字状の中間補強部材8を取り付けることで、シャッターケースCを得る。
【0036】
シャッターケースCの幅方向において、中間補強部材8が設けられた位置に対応して、上面板1の下面の後側部位と、下面板5の上面の後側部位との間に、第1支承部材9を取り外し可能に取付ける。具体的には、第1支承部材9の上端を上側補強部材6および/あるいは中間補強部材8の上側部80の後端部位に簡易に溶接し、第1支承部材9の下端を中間補強部材8の下側部81の後端部位に簡易に溶接する。
【0037】
シャッターケースCの幅方向において、上側補強部材6の長さ方向両端部と側面板2、3との間に位置させて、上面板1の下面の後側部位と、下面板5の上面の後側部位との間に、第2支承部材10を取り外し可能に取り付ける。具体的には、上面板1の下面のケース幅方向両端側部位の後側部位には受け材11を固定し、第2支承部材10の上端を受け材11に当接ないし簡易に溶接し、第2支承部材10の下端を下側補強部材7に簡易に溶接する。
【0038】
こうすることで、工場において、第1支承部材9、第2支承部材10によって補強されたシャッターケースCを得る。シャッターケースCは、
図8に示すように、複数のシャッターケースCを積み重ねた状態で保管、運搬され、積み重ねた状態で取付現場に搬入される。複数のシャッターケースCが積み重ねられた状態において、下側のシャッターケースCには下向きの垂直方向の荷重が作用するが、上面板1の前側及び幅方向両端に作用する荷重は、垂直方向に延びる前面板4、左右の側面板2、3によって支持され(シャッターケースCの幅方向に間隔を存して設けた中間補強部材8によっても部分的に支持される)、上面板1の後側に作用する荷重は、上面板1の後側部位と下面板5の後側部位との間に突っ張るように取り外し可能に設けた第1支承部材9、第2支承部材10によって支持され、保管時、運搬時に、シャッターケース(特に、下側に位置するシャッターケース)Cの上面板1が変形することが防止される。
【0039】
取付現場において、補強されたシャッターケースCから第1支承部材9、第2支承部材10を取り外して、建物開口部上方に取付可能な状態となったシャッターケースCを得る。第1支承部材9、第2支承部材10はハンマー等で衝撃を与えることで容易に破壊される程度の溶接によって上面板1、下面板5間に設けてあるので、現場において、ハンマー等や重量物で第1支承部材9、第2支承部材10に衝撃を与えることで簡単に取り外すことができる。したがって、現場におけるシャッターケースCの取付作業の作業効率を低下させることはない。
【0040】
建物開口部上方の幅方向両端部には左右のブラケット12、13が躯体Wに対して持ち出し状に設けてあり、左右のブラケット12、13間には巻取シャフトが支持されており、巻取シャフトにはシャッターカーテンSが巻装されており、ブラケット12には躯体Wから離間する側に設けた取付部14には開閉機Mが取り付けられており、建物開口部の幅方向両端には左右のガイドレールGが設けてある。シャッターケースCは、左右のブラケット12、13、巻取シャフト、巻取シャフトに巻装されたシャッターカーテンS、開閉機Mを覆うように正面から嵌め込まれ、左右のブラケット12、13等に固定することで取り付けられる。
【符号の説明】
【0041】
1 上面板
2 側面板
3 側面板
4 前面板
5 下面板
6 上側補強部材
7 下側補強部材
8 中間補強部材
9 第1支承部材
10 第2支承部材
11 受け材(補強部材)
C シャッターケース