(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】錠剤および錠剤印刷装置
(51)【国際特許分類】
A61K 9/44 20060101AFI20220615BHJP
A61J 3/06 20060101ALI20220615BHJP
G06K 19/06 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
A61K9/44
A61J3/06 Q
G06K19/06 037
G06K19/06 140
(21)【出願番号】P 2018120528
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】森川 聡一郎
【審査官】篭島 福太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104224743(CN,A)
【文献】特開2017-222375(JP,A)
【文献】特開2005-007842(JP,A)
【文献】特開2007-257360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0026064(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03260505(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03306532(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0119511(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/44
A61J 3/06
G06K 19/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤本体と、
平面座標上に設定された複数のセルを有し、前記複数のセルの各々が3値以上の情報を表す多次元バーコードを示す、前記錠剤本体の表面に定着したインク層と
を備え、
前記複数のセルの各々に形成された前記インク層は、潜像用の色材を有し、
前記インク層に含まれる色材は、結晶構造が異なる同種の材料を含み、
前記複数のセルの各々は、前記結晶構造の相違に基づいて3値以上の情報を表
し、
前記多次元バーコードは、可視用の色材で表現された第1多次元バーコードと、潜像用の色材で表現された第2多次元バーコードとを含み、
前記第2多次元バーコードにおいて、前記複数のセルのうち第1セルは、ルチル型の酸化チタンを含む可視光にとって透明な前記インク層によって形成され、前記複数のセルのうち第2セルは、アナターゼ型の酸化チタンを含む可視光にとって透明な前記インク層によって形成され、前記複数のセルのうち第3セルは、前記第1セルおよび前記第2セルよりも紫外線の吸収率が低く、反射率が高い前記インク層によって形成される、錠剤。
【請求項2】
請求項1に記載の錠剤であって、
前記インク層に含まれる色材は、酸化チタン粒子を含む、錠剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の錠剤であって、
前記複数のセルの各々は、特定の光照射条件下における吸光度の差を利用して3値以上の情報を表す前記多次元バーコードを表現する、錠剤。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の錠剤であって、
前記複数のセルの各々は、印刷濃度の相違に基づいて3値以上の情報を表す、錠剤。
【請求項5】
請求項4に記載の錠剤であって、
前記印刷濃度が、前記インク層における網点の大きさ、網点の数および前記インク層における色材濃度の少なくともいずれか一つに基づいて制御されている、錠剤。
【請求項6】
錠剤本体の表面に印刷を行う錠剤印刷装置であって、
前記錠剤本体の表面に、互いに異なる結晶構造を有する同種の材料を含んだ潜像用の複数のインクの液滴を、それぞれ吐出する複数のインクジェットヘッドを有する印刷部と、
平面座標上に設定された複数のセルを有し、前記複数のセルの各々が3値以上の情報を表す多次元バーコードを示す画像情報を生成する多次元コード生成部と、
前記画像情報を前記錠剤本体の前記表面に印刷するように前記複数のインクジェットヘッドからのインクの液滴の吐出を制御する印刷制御部と
を備え
、
前記多次元バーコードは、可視用の色材で表現された第1多次元バーコードと、潜像用の色材で表現された第2多次元バーコードとを含み、
前記第2多次元バーコードにおいて、前記複数のセルのうち第1セルは、ルチル型の酸化チタンを含む可視光にとって透明なインク層によって形成され、前記複数のセルのうち第2セルは、アナターゼ型の酸化チタンを含む可視光にとって透明なインク層によって形成され、前記複数のセルのうち第3セルは、前記第1セルおよび前記第2セルよりも紫外線の吸収率が低く、反射率が高いインク層によって形成される、錠剤印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤および錠剤印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、錠剤に対し印字を行う装置が急速に普及しており、薬剤名などが印刷されて識別性がより向上した錠剤が増えつつある。特にここ最近では、印刷用の版が要らず、錠剤に対して1錠毎に異なる画像を印刷可能であるというインクジェット方式の利点を活かし、薬剤名だけでなく錠剤のロット番号、消費期限、および、偽薬防止のためのセキュリティコードなどの情報を錠剤毎に可変的に印刷しようという試みが試験的になされるようになってきた。また、これらの情報を2次元バーコードで錠剤に印刷することも提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、錠剤の径は一般的に7[mm]~8[mm]程度であり、この範囲内に多くの情報量を有する2次元バーコードを印刷することは困難である。例えば直径8[mm]の錠剤に600[dpi]の解像度でQR(Quick Response)(登録商標)コードを印刷する場合、印刷できるQRコードのバージョンは1~3程度であり、その情報量は、十数桁~百桁程度の情報量でしかない。情報量を大きくするためには、印刷解像度を向上させて小さなセルサイズのQRコードを印刷するという方法があるが、この方法では読み取り装置の解像度も向上させる必要があり、コストが嵩んでしまうという課題がある。
【0005】
本願は、上記課題を解決するためのものであり、セルサイズの縮小とは別の手法で情報量を高めた印刷画像が印刷された錠剤、および、その印刷画像を錠剤に印刷できる錠剤印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
錠剤の第1の態様は、錠剤本体と、平面座標上に設定された複数のセルを有し、前記複数のセルの各々が3値以上の情報を表す多次元バーコードを示す、前記錠剤本体の表面に定着したインク層とを備え、前記複数のセルの各々に形成された前記インク層は、潜像用の色材を有し、前記インク層に含まれる色材は、結晶構造が異なる同種の材料を含み、前記複数のセルの各々は、前記結晶構造の相違に基づいて3値以上の情報を表し、前記多次元バーコードは、可視用の色材で表現された第1多次元バーコードと、潜像用の色材で表現された第2多次元バーコードとを含み、前記第2多次元バーコードにおいて、前記複数のセルのうち第1セルは、ルチル型の酸化チタンを含む可視光にとって透明な前記インク層によって形成され、前記複数のセルのうち第2セルは、アナターゼ型の酸化チタンを含む可視光にとって透明な前記インク層によって形成され、前記複数のセルのうち第3セルは、前記第1セルおよび前記第2セルよりも紫外線の吸収率が低く、反射率が高い前記インク層によって形成される。
【0010】
錠剤の第2の態様は、第1の態様にかかる錠剤であって、前記インク層に含まれる色材は、酸化チタン粒子を含む。
【0012】
錠剤の第3の態様は、第1または第2の態様にかかる錠剤であって、前記複数のセルの各々は、特定の光照射条件下における吸光度の差を利用して3値以上の情報を表す前記多次元バーコードを表現する。
【0013】
錠剤の第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる錠剤であって、前記複数のセルの各々は、印刷濃度の相違に基づいて3値以上の情報を表す。
【0014】
錠剤の第5の態様は、第4の態様にかかる錠剤であって、前記印刷濃度が、前記インク層における網点の大きさ、網点の数および前記インク層における色材濃度の少なくともいずれか一つに基づいて制御されている。
【0015】
錠剤印刷装置の第1の態様は、錠剤本体の表面に印刷を行う錠剤印刷装置であって、前記錠剤本体の表面に、互いに異なる結晶構造を有する同種の材料を含んだ潜像用の複数のインクの液滴を、それぞれ吐出する複数のインクジェットヘッドを有する印刷部と、平面座標上に設定された複数のセルを有し、前記複数のセルの各々が3値以上の情報を表す多次元バーコードを示す画像情報を生成する多次元コード生成部と、前記画像情報を前記錠剤本体の前記表面に印刷するように前記複数のインクジェットヘッドからのインクの液滴の吐出を制御する印刷制御部とを備え、前記多次元バーコードは、可視用の色材で表現された第1多次元バーコードと、潜像用の色材で表現された第2多次元バーコードとを含み、前記第2多次元バーコードにおいて、前記複数のセルのうち第1セルは、ルチル型の酸化チタンを含む可視光にとって透明なインク層によって形成され、前記複数のセルのうち第2セルは、アナターゼ型の酸化チタンを含む可視光にとって透明なインク層によって形成され、前記複数のセルのうち第3セルは、前記第1セルおよび前記第2セルよりも紫外線の吸収率が低く、反射率が高いインク層によって形成される。
【発明の効果】
【0016】
錠剤の第1および第4の態様によれば、単位面積当たりの情報量が大きい印刷画像(多次元バーコード)が印刷された錠剤を提供できる。また、可視光では視認しにくく、所定の方法により多次元バーコードを顕像化できる。しかも、結晶構造の異なる同種の材料同士が錠剤本体の表面上で接触しても、化学反応が生じにくく、インク層が安定する。
【0020】
錠剤の第2の態様によれば、安定したインク層を形成できる。
【0022】
錠剤の第3の態様によれば、特定の光を錠剤に照射することで、多次元バーコードを識別することができる。
【0023】
錠剤の第5の態様によれば、簡易に印刷濃度を制御できる。
【0024】
錠剤印刷装置の第1の態様によれば、単位面積当たりの情報量が大きい多次元バーコードを錠剤に印刷できる。また、可視光では視認しにくく、所定の方法により多次元バーコードを顕像化できる。しかも、結晶構造の異なる同種の材料同士が錠剤本体の表面上で接触しても、化学反応が生じにくく、インク層が安定する。
【0025】
本願明細書に開示される技術に関する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】錠剤の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図2】2次元バーコードの一例を概略的に示す図である。
【
図6】錠剤印刷装置の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図7】搬送ドラムおよび搬送ベルトの外観の一例を示す斜視図である。
【
図8】錠剤の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図9】錠剤の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。
【0028】
なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、異なる図面にそれぞれ示される構成の大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
【0029】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0030】
また、以下に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「側」、「底」、「表」または「裏」などの特定の位置と方向とを意味する用語が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、実際に実施される際の方向とは関係しないものである。
【0031】
また、以下に記載される説明において、「第1の」、または、「第2の」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0032】
また以下に参照する図面において、適宜にX軸、Y軸およびZ軸を有する直交座標系が付記されることがある。ここでは、Z軸は鉛直方向に沿うように配置され、X軸およびY軸は水平方向に沿うように配置されている。
【0033】
第1の実施の形態.
<錠剤>
図1は、錠剤9の構成の一例を概略的に示す平面図である。錠剤9は例えばOD(Oral Disintegration)錠、素錠、FC(Film Coating)錠または糖衣錠などの錠剤である。錠剤9は医薬品用途の錠剤であってもよく、食品用途の錠剤であってもよい。食品用途の錠剤の例としては、サプリメント等の健康食品およびラムネ等の錠菓が挙げられる。
【0034】
図1に例示するように、この錠剤9は、錠剤本体91と、錠剤本体91の表面に定着したインク層92とを備えている。
【0035】
<錠剤本体>
錠剤本体91は、錠剤9の本来的な効能(あるいは味)を発揮するための成分を含んでいる。錠剤本体91は、その成分を含んだ錠剤材料が一定の形状に圧縮および/または成形されることにより製造される。この錠剤本体91は、インク層92を形成する前の錠剤である、ともいえる。錠剤本体91は例えば円盤形状を有しており、
図1の例では、錠剤本体91は平面視において円形状を有している。ただし、錠剤本体91は必ずしも円盤形状に限らず、任意の形状を有していてもよい。
【0036】
<インク層>
インク層92は、錠剤本体91の表面に対して印刷が行われることで形成される。具体的には、所定の錠剤印刷装置によって錠剤本体91の表面にインクが吐出され、そのインクが当該表面に定着することによりインク層92が形成される。錠剤印刷装置の一例については後に詳述する。
【0037】
インクは少なくとも色材および溶媒を含んでいる。色材は、インクの溶媒中に溶け込む染料であってもよく、あるいは、インクの溶媒中に分散される顔料であってもよい。染料が採用される場合、インク層92は、錠剤本体91の表面からインクが染み込んだ部分に相当し、顔料が採用される場合、インク層92は、錠剤本体91の表面上でインクが乾燥した乾燥皮膜に相当する。インクには、色材および溶剤の他、適宜に、分散剤、表面張力調整剤、湿潤剤、水溶性樹脂、有機アミン、界面活性剤、pH(水素イオン指数)調整剤、キレート化剤、防腐剤、粘度調整剤および消泡剤の少なくともいずれか一つが含まれていてもよい。
【0038】
錠剤9は人に経口投与されるので、インク層92は、可食性を有する材料によって形成されることが好ましい。ここでいう「可食性」とは、人による摂食が認められていることを意味し、より具体的には、薬事法等の法律によって医薬品もしくは医薬品添加物として認められているもの、および/または、食品衛生法等の法律によって食品もしくは食品添加物として認められているものを意味する。
【0039】
<多次元バーコード>
図1に例示するように、インク層92は錠剤本体91の比較的広い主面に形成され、3次元以上の多次元バーコードMC1を示している。ここでは、多次元バーコードMC1を説明する前に、まず2次元バーコードを説明する。
【0040】
図2は、2次元バーコードの一例を概略的に示す図である。この2次元バーコードは、平面座標における位置に応じた2次元情報によって情報を表現することができる。例えば平面座標上に複数のセルC1が設定される。複数のセルC1はマトリクス状に配置されており、各セルC1は矩形状の形状を有している。
図2の例では、各セルC1の形状を図示すべく、各セルC1の輪郭に沿って破線が示されているものの、実際の2次元バーコードには、この破線が示される必要はない。各セルC1には適宜に黒色および白色のいずれか一方が付加される。つまり、各セルC1は自身に付加された白色および黒色によって2値を表現することができる。2次元バーコードはセルの平面座標における白黒パターンに応じて各種の情報を表現することができる。このような2次元バーコードとしては、例えばQR(Quick Response)コードを採用できる。
【0041】
図1に例示する多次元バーコードMC1においても、2次元バーコードと同様に、平面座標上に複数のセルC1が設定されている。
図1の例でも、各セルC1の輪郭を示す破線が示されているものの、実際にはこの破線は錠剤本体91には印刷されなくてもよい。
【0042】
多次元バーコードMC1においては、各セルC1は自身の状態(例えば色)に応じて3値以上の多値を表現する。ここでは一例として、各セルC1には、白色および黒色のみならず、その中間色としての灰色が適宜に付加される。
図1の例では、灰色が付加されたセルC1を斜線のハッチングで模式的に示している。各セルC1は白色、灰色および黒色によって3値を表現することができる。多次元バーコードMC1はこの3色のパターンに応じて情報を表現する。つまり、多次元バーコードMC1は、平面座標の位置に応じた2次元情報のみならず、第3の次元情報(ここではセルC1の色)も用いて情報を表現することができる。
【0043】
よって、多次元バーコードMC1の単位面積当たりの情報量を2次元バーコードに比して向上することができる。したがって、例えば多次元バーコードMC1は同じサイズでより大きな情報量を表現することができる。具体的には、多次元バーコードMC1は、錠剤9に関するより多くの情報を表現することができる。錠剤9に関する情報としては、例えば、その錠剤9の名前(錠剤名)、ロット番号、製造年月日、消費期限、用量、用法および偽薬防止のセキュリティコードなどの情報が挙げられる。あるいは、服薬者に関する情報を多次元バーコードMC1に含めてもよい。服薬者に関する情報としては、例えば、服薬者の氏名、年齢、身長、体重および服薬履歴などの情報が挙げられる。
【0044】
また単位面積当たりの情報量が大きいので、多次元バーコードMC1は2次元バーコードに比して、同じ情報量をより小さいサイズで表現することができる。例えば、多次元バーコードMC1を錠剤本体91の表面のうち比較的狭い領域に印刷することができる。これによれば、多次元バーコードMC1が印刷された領域以外の領域を他の印刷に有効に活用することができる。例えば、視認の必要性が低い情報を多次元バーコードMC1で印刷し、視認の必要性が高い情報を錠剤本体91の他の領域において文字、数字または記号等で印刷するとよい。視認の必要性が低い情報としては、例えばロット番号およびセキュリティコード等を採用でき、視認の必要性が高い情報としては、例えば錠剤9の名前等を採用することができる。これによれば、錠剤本体91の表面を有効に利用して情報を表示することができる。
【0045】
<グレースケール>
多次元バーコードMC1の白色のセルC1は、白色の色材を含んだインク層92によって形成されてもよく、あるいは、錠剤本体91の表面が白色である場合には、錠剤本体91自体の色によって形成されてもよい。なお、必ずしも白色を採用する必要はなく、判別可能な程度に他のセルと異なる色を採用すればよい。
【0046】
灰色のセルC1は、複数種の色材を含んだインク層92によって形成されてもよい。つまり、複数種の色材を混合することにより、灰色のセルC1が形成されてもよい。例えば赤色系(マゼンタ)、青色系(シアン)、および黄色系(イエロー)の色材を混合することにより、灰色を形成できる。
【0047】
あるいは、灰色はグレースケールにおける中間濃度で示すことができる。このグレースケールにおける中間濃度は網点によって表現されてもよい。
図3は、各濃度に対応したセルC1の一例を概略的に示す拡大図である。ここでは、各セルC1内の3×3の計9個の位置に網点921が形成されるものとする。網点921は例えば円形状を有しており、インク層92によって形成される。網点921の大きさは、例えば、錠剤本体91の表面に吐出されるインクの液滴の大きさによって調整される。
【0048】
図3の左側のセルC1は、網点921が比較的大きく、セルC1に対して網点921が占める面積割合が大きいので、巨視的には黒色を呈する。
図3の中央のセルC1は、網点921の径が小さく、セルC1の面積に対して網点921が占める面積の割合が比較的小さいので、巨視的には灰色を呈する。
図3の右側のセルC1には、網点921が形成されておらず、白色を呈する。以下では、3種のセルC1をそれぞれ印刷濃度が高い順にセルC11~C13とも呼ぶ。つまり、セルC11の印刷濃度が最も高く、セルC13の印刷濃度が最も低い。ここでいう印刷濃度とは、セルC1に対して色材が占める割合とみなすことができる。
【0049】
なお、セルC1の印刷濃度は必ずしも網点921の大きさに応じて調整される必要はない。各セルC1内の網点921の数を調整することで、セルC1の印刷濃度が調整されてもよい。
図4は、各濃度に対応したセルC1の一例を概略的に示す拡大図である。ここでは、各セルC1内の5×5の計25個の位置が網点921の候補位置であるとする。
図4の左側のセルC11は、全ての候補位置に網点921が形成されており、網点921の面積割合が大きいので、巨視的には黒色を呈する。
図4の中央のセルC12は、25個の候補位置のうち分散された9個の候補位置において網点921が形成されており、網点921の面積割合が比較的小さいので、巨視的には灰色を呈する。
図4の右側のセルC13には、網点921が形成されておらず、白色を呈する。
【0050】
なお、
図3および
図4の例では、黒色のセルC11も網点921によって形成されているものの、灰色のセルC12のみが網点921によって形成されてもよい。つまり、黒色のインク層92はセルC11の内部において全体的に形成されていてもよい(べた塗)。
【0051】
また、セルC1の印刷濃度は必ずしも網点921によって調整される必要はない。例えば、各セルC1内のインク層92における色材の濃度(含有率)によって調整されてもよい。ここでいうインク層92における色材の濃度とは、例えば、そのインク層92を構成する材料の総体積のうち、色材が占める割合である。
図5は、各濃度に対応したセルC1の一例を概略的に示す拡大図である。
図5の例では、セルC11,C12には、インク層92が全体的に形成されている。ただし、セルC11に形成されるインク層92(以下、インク層92aとも呼ぶ)は高い濃度で黒色の色材を含んでおり、セルC12に形成されるインク層92(以下、インク層92bとも呼ぶ)はインク層92aに比して低い濃度で黒色の色材を含んでいる。言い換えれば、セルC11の印刷には、高い濃度で黒色の色材を含むインクが用いられており、セルC12の印刷には、低い濃度で黒色の色材を含む灰色のインクが用いられている。各インクを構成する材料の種類は互いに同じであってもよい。つまりインク層92a,92bを構成する材料の種類は互いに同じであってもよい。
【0052】
なお、
図3および
図4においても、インク層92a,92bを適用してもよい。具体的には、色材の濃度が高いインク層92aがセルC11の網点921を形成し、色材の濃度が低いインク層92bがセルC12の網点921を形成してもよい。
【0053】
また上述の具体例では、各セルC1は3値を表現しているものの、4値以上の多値を表現してもよい。例えば各セルC1の状態としてグレースケールの濃度が異なる4つの色(白色、白色に近い灰色、黒色に近い灰色および黒色)を採用することにより、各セルC1は4値を表現することができる。これにより、多次元バーコードMC1の単位面積当たりの情報量はさらに向上する。
【0054】
<位置検出用シンボル>
図1に例示された多次元バーコードMC1は、QRコードを拡張したコードであり、
図1の例では、位置検出用のファインダシンボルFS1が設けられている。具体的には、ファインダシンボルFS1は、黒色の四角を形成する複数のセルC1と、その四角の取り囲む黒色の枠を形成する複数のセルC1とによって構成される。ファインダシンボルFS1は多次元バーコードMC1の3つの角部にそれぞれ配置されている。このファインダシンボルFS1は従来のQRコードと同様に黒色のセルC1のみによって構成されている。これによれば、多次元バーコードMC1を読み取る読み取り装置(不図示)は従来のアルゴリズムを用いて多次元バーコードMC1のファインダシンボルFS1を検出することができる。
【0055】
<錠剤印刷装置>
次に、錠剤に対して多次元バーコードを印刷できる錠剤印刷装置の一例を説明する。
図6は、錠剤印刷装置の構成の一例を概略的に示す図である。
図6に例示されるように、錠剤印刷装置1は、錠剤本体91の表裏両面に対して印刷処理を行うことができる装置である。
【0056】
例えば錠剤印刷装置1は、ホッパー8と、搬送ドラム10と、搬送ベルト20と、搬送ベルト30と、外観検査カメラ51と、外観検査ユニット52と、外観検査ユニット53と、印刷部61と、印刷部62を備える。また、錠剤印刷装置1は、装置に設けられた各駆動部を制御して錠剤9に対する検査処理および印刷処理を進行させる制御部3を備える。
【0057】
ホッパー8は、錠剤印刷装置1の筐体5の天井部上側に設けられる。ホッパー8は、多数の錠剤本体91(つまり印刷前の錠剤)を一括して装置内に投入するための投入部である。ホッパー8から投入された複数の錠剤本体91は、ホッパー8の傾斜面に沿って直進フィーダ122へ流れ込む。直進フィーダ122に供給された複数の錠剤本体91は、振動トラフの振動によって、回転フィーダ123側へ搬送される。そして、錠剤本体91は、回転フィーダ123における回転台の回転による遠心力で、回転台の外周部付近へ集まる。そして、回転台の外周部付近に集まった錠剤本体91は、回転台の外周部から搬送ドラム10まで鉛直下向きに延びる供給フィーダ124によって、搬送ドラム10に供給される。
【0058】
図7は、搬送ドラム10および搬送ベルト20の外観の一例を示す斜視図である。搬送ドラム10は、略円筒形状を有しており、回転駆動モータ(ここでは、図示しない)によってY軸方向に沿う中心軸を回転中心として時計回りに回転する。
図7に例示されるように、搬送ドラム10の外周面には複数の吸着孔11が形成されている。本実施の形態では、搬送ドラム10の中心軸に沿って等間隔で5列に吸着孔11が形成されている。また、5列1組の吸着孔11が搬送ドラム10の外周面の周方向に沿って等間隔で複数行に設けられている。
【0059】
吸着孔11の形状は、検査処理および印刷処理の対象物の形状に応じたものとなる。例えば、本実施の形態では円盤形状の錠剤本体91を処理するため、吸着孔11の形状も円形としている。吸着孔11のサイズは錠剤本体91の大きさよりもやや大きい。例えば、円盤形状の錠剤本体91の直径が約10mmであれば、吸着孔11の直径は約12mmとされる。
【0060】
複数の吸着孔11の底部には吸着孔11よりも小さな小孔が設けられており、複数の吸着孔11のそれぞれは当該小孔を介して搬送ドラム10の内部に設けられた吸引機構(ここでは、図示しない)と連通している。当該吸引機構を作動させることによって、複数の吸着孔11のそれぞれに大気圧よりも低い負圧を作用させることができる。これによって、搬送ドラム10の各吸着孔11は1個の錠剤本体91を吸着保持することができる。
【0061】
また、搬送ドラム10の内部には、搬送ベルト20に対向する部位の近傍にブロー機構が設けられている。当該ブロー機構は、吸着孔11の底部に設けられた上記の小孔に向けて加圧されたエアーを吹き付ける。ブロー機構が小孔にエアーを吹き付けることによって、吸着孔11には大気圧よりも高い圧力を作用させることができる。これによって、吸着孔11による錠剤本体91の吸着状態を解除することができる。このように、搬送ドラム10に設けられた複数の吸着孔11の全体には吸引機構によって吸引力を作用させつつも、搬送ベルト20に対向している5列1行の吸着孔11についてはブロー機構によって吸着を解除することができる。吸着解除された錠剤本体91は搬送ベルト20に受け渡される。
【0062】
搬送ベルト20は錠剤本体91を搬送する。搬送ベルト20は、複数の保持板22をベルト状につなぎ合わせたものを一対のプーリ10Aに掛け渡して構成される。一対のプーリ10Aが駆動モータ(ここでは、図示しない)によって回転駆動されることによって、複数の保持板22からなるベルト状体が
図6の矢印の方向に移動する。搬送ベルト20は、複数の保持板22からなるベルト状体の一部が搬送ドラム10の外周面に近接して対向するように設置されている。
【0063】
図7に例示されるように、複数の保持板22のそれぞれにはベルトの幅方向(Y軸方向)に沿って等間隔で複数の吸着孔21が形成されている。本実施の形態では、各保持板22にY軸方向に沿って5列に吸着孔21が形成されている。搬送ベルト20の吸着孔21自体の形状および大きさは搬送ドラム10の吸着孔11と同じである。また、各保持板22に5列に並べられた吸着孔21の間隔も、搬送ドラム10の中心軸に沿って5列に並べられた吸着孔11の間隔と等しい。
【0064】
吸着孔11と同様に、複数の吸着孔21の底部には吸着孔21よりも小さな小孔が設けられており、複数の吸着孔21のそれぞれは当該小孔を介して搬送ベルト20の内部に設けられた吸引機構と連通している。当該吸引機構を作動させることによって、複数の吸着孔21のそれぞれに大気圧よりも低い負圧を作用させることができる。これによって、搬送ベルト20の各吸着孔21は1個の錠剤本体91を吸着保持することができる。
【0065】
プーリ10Aが回転駆動されることにより、吸着孔21に吸着された錠剤本体91は
図6の矢印の方向に搬送される。錠剤本体91は後述のように搬送ベルト20による搬送中において、錠剤本体91の表面に対して印刷が行われる。
【0066】
また、搬送ベルト20の内部には、後述する搬送ベルト30に対向する部位の近傍にブロー機構が設けられている。当該ブロー機構は、吸着孔21の底部に設けられた上記の小孔に向けて加圧されたエアーを吹き付ける。ブロー機構が小孔にエアーを吹き付けることによって、吸着孔21には大気圧よりも高い圧力を作用させることができる。これによって、吸着孔21による錠剤本体91の吸着状態を解除することができる。錠剤本体91は鉛直下方に向いた状態で吸着解除される。錠剤本体91はこの吸着解除により落下して、搬送ベルト30に受け渡される。よって、錠剤本体91は搬送ベルト20上の姿勢とは表裏が反転した姿勢で搬送される。
【0067】
搬送ベルト30の構成は、搬送ベルト20と概ね同様である。すなわち、搬送ベルト30は、複数の保持板をベルト状につなぎ合わせたものを一対のプーリ10Bに掛け渡して構成される。一対のプーリ10Bが駆動モータによって回転駆動されることにより、搬送ベルト30は
図6の矢印の方向に移動する。搬送ベルト30は、複数の保持板からなるベルト状体の一部が搬送ベルト20に近接して対向するように設置されている。
【0068】
搬送ベルト30の保持板にも、ベルトの幅方向(Y軸方向)に沿って等間隔で複数(本実施の形態では5列)の吸着孔が形成されている。
【0069】
上記と同様に、搬送ベルト30の吸着孔には、搬送ベルト30の内部に設けられた吸引機構によって大気圧よりも低い負圧を作用させることができる。これによって、搬送ベルト30の各吸着孔は1個の錠剤本体91を吸着保持することができる。錠剤本体91は後述のように搬送ベルト30による搬送中において印刷が行われる。これにより、錠剤本体91の表裏両面にインク層92が形成された錠剤9が製造される。また、搬送ベルト30の内部には、例えば3箇所にわたって、ブロー機構が設けられている。ブロー機構がエアーを吹き付けることによって搬送ベルト30の吸着孔に大気圧よりも高い圧力を作用させて当該吸着孔による錠剤9の吸着状態を解除することができる。
【0070】
搬送ベルト30の3箇所のブロー機構は、いずれも下方または斜め下方に向けてエアーを吹き付ける。したがって、3箇所のブロー機構のうち、良品ダクト48に対向する部位に設けられたブロー機構がエアーを吹き付けることによって、吸着孔による錠剤9の吸着状態を解除して当該錠剤9を良品ダクト48に放出することができる。良品ダクト48に放出された錠剤9は良品回収ボックス58に回収される。
【0071】
また、外観不良品ダクト47に対向する部位に設けられたブロー機構がエアーを吹き付けることによって、吸着孔による錠剤9の吸着状態を解除して当該錠剤9を外観不良品ダクト47に放出することができる。外観不良品ダクト47に放出された錠剤9は外観不良品ボックス57に回収される。
【0072】
さらに、印刷不良品ダクト46に対向する部位に設けられたブロー機構がエアーを吹き付けることによって、吸着孔による錠剤9の吸着状態を解除して当該錠剤9を印刷不良品ダクト46に放出することができる。印刷不良品ダクト46に放出された錠剤9は印刷不良品ボックス56に回収される。
【0073】
外観検査カメラ51は、所定領域を撮像するための撮像部であり、例えばCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)カメラまたはCCD(Charge Coupled Device)カメラである。
【0074】
外観検査カメラ51は、撮像エリアが搬送ドラム10の外周面となるように当該外周面に対向して設置されている。
【0075】
外観検査カメラ51は、搬送ドラム10の吸着孔11に吸着保持されて搬送される複数の錠剤本体91を撮像する。外観検査カメラ51の撮像エリアの大きさは適宜のものとすることが可能であるが、搬送ドラム10の円筒周面を撮像することとなるため、その円筒周面の広範囲にわたって焦点を合わせることは困難である。このため、外観検査カメラ51の撮像エリアは、少なくとも外観検査カメラ51に対向している5列1行の錠剤本体91を撮像可能な大きさであればよい。
【0076】
外観検査ユニット52は、搬送ベルト20の搬送方向に沿って搬送ドラム10との対向位置よりも下流側であって、かつ、印刷部61よりも上流側を撮像できる位置に設けられている。外観検査ユニット52は、それぞれが1つの錠剤本体91を順次撮像する撮像ユニットを複数備えている。
【0077】
外観検査ユニット53は、搬送ベルト30の搬送方向に沿って搬送ベルト20との対向位置よりも下流側であって、かつ、印刷部62よりも上流側を撮像できる位置に設けられている。外観検査ユニット53は、それぞれが1つの錠剤本体91を順次撮像する撮像ユニットを複数備えている。
【0078】
なお、本実施の形態では、2つの外観検査ユニット52,53を備える錠剤印刷装置1が例示されているが、外観検査ユニットの配置および備えられる数は、本実施の形態に例示された場合に限定されるものではない。すなわち、外観検査ユニットが搬送経路における他の箇所に配置される場合を想定することもできるし、外観検査ユニットが1つ備えられる場合、外観検査カメラ51を外観検査ユニットに置き換えて外観検査ユニットが3つ備えられる場合、さらには、外観検査ユニットが3つ以上備えられる場合を想定することもできる。
【0079】
印刷部61および印刷部62は、複数のインクジェットヘッドを備えており、それら吐出ノズルからインクジェット方式によってインクの液滴を吐出する。インクジェットの方式は、ピエゾ素子(圧電素子)に電圧を加えて変形させることによってインクの液滴を吐出するピエゾ方式であってもよいし、ヒータに通電してインクを加熱することによってインクの液滴を吐出するサーマル方式であってもよい。
【0080】
本実施の形態においては、医薬品などの錠剤に印刷処理を行うため、印刷部61および印刷部62から吐出するインクとしては、可食性のインクを使用することが望ましい。また、印刷部61および印刷部62の各々は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)および黒(K)の4色のインクを吐出可能であり、これらを混合することによってカラー印刷が可能である。
【0081】
つまり、印刷部61は、シアンのインクが供給されるインクジェットヘッド61aと、マゼンタのインクが供給されるインクジェットヘッド61bと、イエローのインクが供給されるインクジェットヘッド61cと、黒色のインクが供給されるインクジェットヘッド61dとを有している。インクジェットヘッド61aは、印刷部61の下面に形成された吐出口を有している。インクジェットヘッド61aの吐出口は、錠剤9の搬送方向に対して交差する配列方向(例えば搬送方向に直交する方向)に沿って間隔を空けて配列される。なお、インクジェットヘッド61aの吐出口は配列方向を行方向とし、搬送方向を列方向とした行列状に配列されてもよい。他の色に対応する複数のインクジェットヘッド61b~61dも同様である。
【0082】
印刷部62も、各色に対応した複数のインクジェットヘッド62a~62dを有している。印刷部62の構成は印刷部61の構成と同様である。
【0083】
なお、印刷部61および印刷部62の各々が吐出するインクの色はこれに限られるものではない。また、それぞれのヘッドが吐出するインクの色が全て異なる色である必要はなく、一部のヘッドが吐出するインクの色が同じ色であってもよい。
【0084】
印刷部61は、搬送ベルト20の搬送方向に沿って外観検査ユニット52よりも下流側に設けられている。印刷部61は、搬送ベルト20に対して鉛直上方に位置しており、搬送ベルト20とZ軸方向において対向する。印刷部61は、搬送ベルト20によって吸着保持されて搬送される複数の錠剤9に対して印刷処理を行う。
【0085】
また、印刷部62は、搬送ベルト30の搬送方向に沿って外観検査ユニット53よりも下流側に設けられている。印刷部62は、搬送ベルト30に対して鉛直上方に位置しており、搬送ベルト30とZ軸方向において対向する。印刷部62は、搬送ベルト30によって吸着保持されて搬送される複数の錠剤9に対して印刷処理を行う。
【0086】
なお、印刷部61および印刷部62は、それぞれ搬送ベルト20および搬送ベルト30の幅方向全域をカバーするフルラインヘッドであることが好ましい。
【0087】
また、錠剤印刷装置1は、製品検査カメラ71および製品検査カメラ72を備える。製品検査カメラ71および製品検査カメラ72としては、例えばCCDカメラを用いることができる。製品検査カメラ71は、搬送ベルト20の搬送方向に沿って印刷部61よりも下流側を撮像できる位置に設けられている。例えば、製品検査カメラ71は、撮像エリアがプーリ10Aの外周面となるように当該外周面に対向して設置されている。製品検査カメラ71は、搬送ベルト20によって吸着保持されて搬送される複数の錠剤本体91を撮像する。
【0088】
製品検査カメラ72は、搬送ベルト30の搬送方向に沿って印刷部62よりも下流側を撮像できる位置に設けられている。例えば、製品検査カメラ72は、撮像エリアがプーリ10Bの外周面となるように当該外周面に対向して設置されている。製品検査カメラ72は、搬送ベルト30によって吸着保持されて搬送される複数の錠剤9を撮像する。
【0089】
また、錠剤印刷装置1は、ヒータ76およびヒータ77を備える。ヒータ76およびヒータ77としては、例えば熱風を吹き付けて錠剤本体91を加熱して乾燥させる熱風乾燥式ヒータを用いることができる。ヒータ76は、搬送ベルト20の搬送方向に沿って印刷部61よりも下流側に設けられている。ヒータ76は、印刷部61によって印刷処理が行われた錠剤本体91に対して熱風を吹き付ける。これにより、錠剤本体91の一方の表面上のインクの溶剤が乾燥してインク層92を形成する。
【0090】
ヒータ77は、搬送ベルト30の搬送方向に沿って印刷部62よりも下流側に設けられている。ヒータ77は、印刷部62によって印刷処理が行われた錠剤本体91に対して熱風を吹き付ける。これにより、錠剤本体91の他方の表面上のインクの溶剤が乾燥してインク層92を形成する。
【0091】
また、錠剤本体91の乾燥処理にはヒータが必ずしも用いられる必要はなく、錠剤本体91の種類によっては自然乾燥によって乾燥させることが望ましい場合もある。その場合には、ヒータ76およびヒータ77は備えられていなくてもよい。
【0092】
さらに、錠剤印刷装置1は、清掃機構83および清掃機構84を備える。搬送ベルト20および搬送ベルト30には、錠剤本体91から生じた粉体が付着することがある。清掃機構83および清掃機構84は、それぞれ搬送ベルト20および搬送ベルト30に付着した粉体を除去する。清掃機構83および清掃機構84としては、例えばエアーを吹き付けて周辺雰囲気を吸引回収するものを採用することができる。
【0093】
制御部3は、錠剤印刷装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う演算処理部(例えばCPU)、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアおよびデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えて構成される。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって錠剤印刷装置1における錠剤に対する処理が進行する。なお制御部3が実行する各種機能の一部または全部は専用のハードウェア回路で実行されてもよい。
【0094】
<制御部の機能部>
図6に例示するように、制御部3は多次元コード生成部31と印刷制御部32とを備えている。多次元コード生成部31には、所定の入力情報が入力される。入力情報は多次元バーコードMC1の変換元となる情報であり、例えば錠剤9に関する情報および服薬者に関する情報の少なくとも一方を含む。
【0095】
錠剤印刷装置1には、当該入力情報を入力するためのユーザインタフェース(不図示)が設けられていてもよい。このユーザインタフェースは例えばディスプレイと入力部とを有している。ディスプレイとしては、例えば液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイを採用できる。入力部としては、例えばマウス、キーボードおよびタッチパネルの少なくともいずれか一つを採用できる。作業員は入力部を用いて入力情報を入力することができる。入力部は、ユーザによって入力された入力情報を制御部3へ出力する。
【0096】
多次元コード生成部31は、予め設定された変換規則に従って入力情報を多次元バーコードMC1に変換する。即ち、多次元コード生成部31は、多次元バーコードMC1を示す画像情報IM1を生成する。多次元コード生成部31はこの画像情報IM1を印刷制御部32に出力する。
【0097】
変換規則としては公知のものを採用すればよいものの、その簡単な一例について概説する。例えば多次元コード生成部31は入力情報を3進数に変換し、その3進数の各桁における「0」「1」「2」をそれぞれ白色、灰色および黒色に割り当る。そして多次元コード生成部31は、その3進数の各桁に対応したセルC1に対して、割り当てた色を付加する。3進数の各桁とセルC1との対応関係は例えば予め設定されている。
【0098】
なお多次元バーコードMC1には、種々の設定情報が含まれることがある。種々の設定情報としては、例えば、多次元バーコードMC1に含まれるデータの種類(数字または英数字の別など)、誤り訂正レベルおよびコードのサイズなどの情報を採用することができる。多次元コード生成部31はこれらの設定情報も3進数に変換し、その3進数の各桁を、例えば予め設定された設定情報用のセルC1に配置する。
【0099】
錠剤本体91の表面に印刷された多次元バーコードMC1を読み取る読み取り装置においては、多次元バーコードMC1に基づいて入力情報が再現される。具体的には、当該読み取り装置はイメージセンサとディスプレイと制御部とを備えている。イメージセンサは例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであって、錠剤9を撮像してその撮像画像を生成し、その撮像画像を制御部に出力する。制御部はこの撮像画像をディスプレイに表示してもよい。制御部は、イメージセンサによって撮像された撮像画像から多次元バーコードMC1を抽出し、予め設定された変換規則に従って多次元バーコードMC1から入力情報を再現する。制御部は、再現した入力情報をディスプレイに表示する。これにより、ユーザは、多次元バーコードMC1に内蔵された入力情報を認識することができる。
【0100】
印刷制御部32には、多次元コード生成部31から画像情報IM1が入力される。印刷制御部32はこの画像情報IM1に基づいて印刷部61および印刷部62を制御して、錠剤本体91の表面に多次元バーコードMC1を印刷させる。
【0101】
上述のように白色、灰色および黒色はグレースケールにおける印刷濃度の相違で示すことができる。よって、印刷制御部32は黒色のインクの吐出状態(インクジェットヘッド61d,62dからのインクの吐出状態)を制御することで、多次元バーコードMC1を錠剤本体91の表面に印刷してもよい。例えば印刷制御部32は、印刷部61および印刷部62から吐出されるインクの液滴の径を制御することで、網点921の大きさを制御してセルC1の印刷濃度を制御する(
図3)。この液滴径は、ピエゾ方式であれば、例えばピエゾ素子に印加する電圧の大きさおよび周期によって制御される。
【0102】
あるいは、セルC1内の網点921の個数によって印刷濃度を調整する場合、印刷制御部32は、印刷部61および印刷部62の各々においてインクを吐出すべき吐出口を選択して、錠剤9の表面に滴下される液滴の数(つまり網点921の数)を制御することで、セルC1の印刷濃度を制御する(
図4)。
【0103】
あるいは、黒色に応じた濃度で色材を含む黒色インクと、灰色に応じた濃度で色材を含む灰色インクとを用いてもよい。黒色インクおよび灰色インクに含まれる成分の種類は互いに同じであってもよい。この黒色インクは上述のように印刷部61のインクジェットヘッド61dに供給される。また印刷部61には、灰色インクが供給されるインクジェットヘッドが新たに設けられてもよく、あるいは、インクジェットヘッド61a~61cのいずれかが灰色用のインクジェットヘッドとして機能してもよい。印刷部62も同様である。
【0104】
印刷制御部32は、印刷部61および印刷部62の各々を制御して、各インクジェットヘッドから適宜に黒色インクおよび灰色インクを吐出させて、各セルC1の印刷濃度を制御する(
図5)。
【0105】
以上のように、錠剤印刷装置1によれば、錠剤本体91の表面に多次元バーコードMC1を印刷することができる。これにより、より大きな情報を錠剤本体91の表面に印刷することができる。あるいは、より小さいサイズで情報を錠剤本体91の表面に印刷することができる。
【0106】
上述の錠剤印刷装置1では、インクジェット方式により、インクの液滴によって多次元バーコードMC1を錠剤本体91の表面に印刷している。よって、より精細に多次元バーコードMC1を印刷することができる。
【0107】
<検査機能>
制御部3は、錠剤本体91に印刷された印刷画像が適切か否かを判断する検査機能を有していている。例えば制御部3には、製品検査カメラ71および製品検査カメラ72によって撮像された撮像画像が入力される。製品検査カメラ71からの撮像画像には、印刷部61によって錠剤本体91の一方側の表面に印刷された多次元バーコードMC1が写っており、製品検査カメラ72からの撮像画像には、印刷部62によって錠剤本体91の他方側の表面に印刷された多次元バーコードMC1が写っている。制御部3は、これらの撮像画像に基づいて、多次元バーコードMC1が適切に印刷されたか否かを判断することができる。制御部3は、印刷不良となる錠剤9に対してブロー機構を制御することで、当該錠剤9を印刷不良品ボックス56に回収することができる。
【0108】
また制御部3は、各錠剤9の検査結果を管理する機能を有していてもよく、例えば、錠剤9の識別番号と、その錠剤に対する検査結果とを対応付けて、管理情報として記憶媒体等に記憶する。この管理情報は通信網上のサーバ等に格納されてもよい。
【0109】
<有彩色>
上述の例では、セルC1はグレースケールにおける印刷濃度の相違(例えば黒、灰色、白)に基づいて多値を表現しているものの、所定の彩度における印刷濃度の相違(例えば濃い赤、赤、薄い赤)に基づいて多値を表現しても構わない。
【0110】
また上述の例では、各セルC1は印刷濃度の相違によって3値以上の多値を表現した。しかしながら、各セルC1はカラー(有彩色)の彩度、明度および色相などの相違によって3値以上の多値を表現してもよい。例えば各セルC1に対して、複数の色のいずれか一つを適宜に付加することにより、各セルC1はその色の種類の数に応じた多値を表現できる。
図8および
図9は、多次元バーコードMC2が印刷された錠剤9の一例を概略的に示す平面図である。この多次元バーコードMC2においても、平面座標上に複数のセルC1が設定されており、各セルC1は矩形状の形状を有している。多次元バーコードMC2においては、各セルC1に対して適宜に4つの有彩色のうち一つが付加される。
【0111】
つまり、この多次元バーコードMC2は、第1色から第4色にそれぞれ対応した色材を含むインク層92Aからインク層92Dによって形成される。インク層92Aが形成されたセルC1は第1色を呈し、インク層92Bが形成されたセルC1は第2色を呈し、インク層92Cが形成されたセルC1は第3色を呈し、インク層92Dが形成されたセルC1は第4色を呈している。多次元バーコードMC1はこれら4色のパターンに応じて情報を表現する。
【0112】
図8の例では、4つの色をそれぞれ2種の斜線ハッチングと2種の砂地ハッチングとで示している。各セルC1には4つの色のうち一つが付加されるので、セルC1は4値を表現することができる。よって、多次元バーコードMC2の単位面積当たりの情報量を向上することができる。しかも、グレースケールで4値を表現する場合に比して、各色の差(例えば色差)を大きくすることが可能であるので、読み取り装置において、セルC1を区別しやすい。
【0113】
各セルC1に付加する第1色から第4色としては、印刷部61および印刷部62に供給されるインクの色を採用することが望ましい。上述の例では、印刷部61および印刷部62の各々には、青色系(シアン)、赤色系(マゼンタ)、黄色系(イエロー)および黒の4色のインクが供給される。よって、第1色から第4色としては、それぞれ、青色系、赤色系、黄色系および黒色を採用することが望ましい。言い換えれば、各セルC1に形成されるインク層92は、赤色系の色材、青色系の色材、黄色系の色材および黒色系の色材のいずれか一つのみを含んでいることが望ましい。これによれば、セルC1の各々に対して複数のインクを混合する必要がないので、印刷制御部32による制御を簡易にできる。つまり、インクジェット印刷での印刷が容易である。
【0114】
もちろん、セルC1に付加する色の種類として、インクの色の種類(上記例では4色)よりも多くの種類の色を採用してもよい。この場合には、印刷制御部32は各インクを適宜に混合してセルC1に対して所定の色を印刷することができる。この場合、各セルC1に形成されるインク層92は赤色系の色材、青色系の色材、黄色系の色材および黒色系の色材の少なくともいずれか一つを含む。これによれば、各セルC11は、5色以上の色によって5値以上の多値を表現することができる。これにより、多次元バーコードMC2の単位面積当たりの情報量をさらに向上することができる。
【0115】
図8では、多次元バーコードMC2は錠剤本体91の表面に対して全体的に形成されている。例えば多次元バーコードMC2が占める領域の面積は、錠剤本体91の一方側の表面積の半分よりも大きい。このように比較的大きなサイズで多次元バーコードMC2が印刷されているので、より大きい情報量を表現することができる。
【0116】
図9では、比較的小さなサイズで多次元バーコードMC2が印刷されている。例えば多次元バーコードMC2が占める領域の面積は、錠剤本体91の一方側の表面積の半分よりも小さく、
図9では、4分の1よりも小さい。多次元バーコードMC2のサイズが小さいほど、服薬者による拒否感を低減することができる。また、多次元バーコードMC2が表示されていない領域を他の印刷に利用することができる。また、
図9の例では、錠剤本体91の表面に割線911が形成されている。割線911は錠剤本体91の表面に形成された溝であって、錠剤本体91の中心を通って直線的に延在している。多次元バーコードMC2のサイズを小さくできるので、
図9に例示するように、割線911とは重ならない領域に多次元バーコードMC2を印刷することができる。
【0117】
第2の実施の形態.
第1の実施の形態では、インク層92は肉眼で視認可能な可視用の色材を含んでいた。つまり、錠剤印刷装置1は、可視用のインクを用いて印刷を行っていた。しかしながら、服薬者が認識する必要性が低い情報は、肉眼での視認性が低い潜像用のインクで印刷されてもよい。言い換えれば、インク層92に含まれる色材として潜像用の色材を採用してもよい。
【0118】
ここでいう「潜像」とは、可視光(例えば波長域400[nm]以上760[nm]以下)が照射された環境下において肉眼での識別(つまり視認)が困難であり、かつ、特定の条件下において顕像化する画像を意味する。
【0119】
可視光における視認が困難な画像としては、例えば透明な色材を含むインク層92によって形成された画像を採用できる。ここでいう「透明」とは、可視光についての透過率が高い性質を意味する。例えば波長域が400[nm]以上760[nm]以下の可視光の透過率は50[%]以上であり、好ましくは70[%]以上、より好ましくは90[%]以上である。また、潜像は必ずしも無色透明である必要はなく、可視光における視認困難性を確保できる程度において、有色透明であってもよい。
【0120】
なお潜像は必ずしも透明である必要はない。例えば錠剤本体91の表面の色と同色の色材を含むインク層92によって形成された画像を採用してもよい。背景色と同色の画像を視認することは困難だからである。ここでいう「同色」とは、色が完全に一致することの他、色差が小さいことも含む。要するに、可視光における視認困難性が確保できる程度において、錠剤本体91の表面とインク層92との間で色差が生じていても構わない。より具体的な一例として、錠剤本体91の表面との色差(例えばL*a*b*空間におけるユークリッド距離)が3.2よりも小さい色材、より好ましくは2.3よりも小さい色材を採用できる。
【0121】
顕像化のための特定の条件としては、不可視光の照射を採用することができる。不可視光としては、例えば200[nm]以上400[nm]未満の範囲の紫外線を採用することができる。
【0122】
不可視光によって画像を顕像化させるべく、インク層92に含まれる色材としては、不可視光についての反射率が錠剤本体91の表面とは異なる材料を採用する。この反射率差は、読み取り装置が多次元バーコードMC1を識別できる程度の値に設定される。これによれば、不可視光を錠剤9の表面に照射して、その反射光に基づいてイメージセンサで撮像を行うことにより、読み取り装置は、錠剤本体91の表面に印刷された多次元バーコードMC1を適切に認識することができる。
【0123】
以上のように、潜像用インクの色材としては、(i)可視光についての透過率が高く、かつ、不可視光についての反射率が錠剤本体91と相違する材料、または、(ii)錠剤本体91の表面と同色、かつ、不可視光についての反射率が錠剤本体91と相違する材料のいずれかを採用することができる。
【0124】
このような色材としては、例えば酸化チタン粒子を含む顔料を採用することができる。酸化チタン粒子は例えば球状を有しており、その径が非常に小さい場合には、酸化チタン粒子は可視光に対して高い透過率を有する。つまり、肉眼においてその顔料は透明である。よって、この酸化チタン粒子を色材として含むインク層92が形成する印刷画像(多次元バーコードMC1)は肉眼で識別しにくい。また酸化チタン粒子の径が大きくなると、可視光を散乱させるのでその顔料は白色系を呈する。この場合であっても、錠剤本体91の表面が白色系である場合には、この酸化チタン粒子を色材として含むインク層92が形成する印刷画像は肉眼で識別しにくい。酸化チタン粒子の平均一次粒径(体積平均粒子径)は例えば40[nm]~400[nm]程度に設定される。酸化チタン粒子の透明性は平均一次粒径が例えば40[nm]~100[nm]であるときに非常に高い。
【0125】
その一方で、酸化チタン粒子は紫外線に対して高い吸収率を有している。つまり、紫外線に対する吸光度は高く、その紫外線に対する反射率は低い。錠剤本体91の表面が紫外線の反射性を有している場合には、錠剤本体91の表面とインク層92とで紫外線についての反射率差が生じる。そこで、紫外線を錠剤9の表面に照射して、その反射光に基づいて撮像を行うことにより、錠剤本体91の表面に印刷された内容をその撮像画像において顕像化させることができる。なお、一般に市販されている白色系の錠剤本体91は紫外線の上記波長域についての反射性を有している。
【0126】
酸化チタン粒子は化学的および物理的に安定である。そのため、酸化チタン粒子からなる顔料は隠蔽性および着色性に優れ、さらに酸およびアルカリ、その他の環境に対する耐久性に優れている。
【0127】
酸化チタン粒子としては結晶構造がアナターゼ型(正方晶)、ルチル型(正方晶)またはブルーカイト型(斜方晶)のいずれのものも使用可能である。但し、印刷画像の隠蔽性向上の観点からは、ルチル型の結晶構造を有する酸化チタン粒子が好ましい。これにより、印刷画像が目視にて観察されるのを防止することができる。なお、本実施の形態において酸化チタン粒子とは、特に断らない限り結晶性の酸化チタン粒子を意味する。
【0128】
酸化チタン粒子としては市販品を用いることも可能であり、そのような市販品としては、例えば、STR-100N(商品名、堺化学工業(株)製、ルチル型)、TTO-51A(商品名、石原産業(株)、ルチル型)、TTO-55A(商品名、石原産業(株)、ルチル型)、TTO-55A(商品名、石原産業(株)、ルチル型)、TTO-80A(商品名、石原産業(株)、ルチル型)、MPT-140(商品名、石原産業(株)、ルチル型)、MPT-141(商品名、石原産業(株)、ルチル型)、MKR-1(商品名、堺化学工業(株)、ルチル型)、KA-10(商品名、チタン工業(株)、アナターゼ型)等が挙げられる。
【0129】
<印刷濃度>
潜像用の色材を含むインク層92によって形成された多次元バーコードMC1の一例は
図1と同様である。ここでは、各セルC1は印刷濃度に応じた多値を表現する。ここでいう印刷濃度とは、例えば、錠剤9の表面に対して不可視光を照射したときに当該表面から反射される反射光の強度によって示すこともできる。言い換えれば、印刷濃度は、錠剤9の表面からの反射光をイメージセンサで受光して得られる撮像画面において、セルC1の各々における画素値の総和によって表現される。色材として酸化チタン粒子を採用する場合には、その色材の濃度が高いほど多くの不可視光がインク層92で吸収されるので、その反射光の強度は低くなる。つまり、セルC1における反射光の強度(画素値の総和)が低いほど、そのセルC1の印刷濃度は高い。
【0130】
印刷濃度としては、例えば、第1濃度値、第1濃度値よりも高い第2濃度値、および、第2濃度値よりも高い第3濃度値を採用することができる。この場合、各セルC1は3つの濃度値に応じて3値を表現することができる。これにより、多次元バーコードMC1の単位面積当たりの情報量を2次元バーコードに比して向上することができる。もちろん、4つ以上の濃度値を採用することで、各セルC1が4値以上の多値を表現してもよい。これによれば、単位面積当たりの情報量をさらに向上することができる。なお複数のセルC1は、特定の光照射条件下(例えば不可視光の照射下)における吸光度の差を利用して、多次元バーコードMC1を表現している、ともいえる。
【0131】
印刷濃度は、例えば、セルC1に形成される網点の大きさ、または、セルC1に形成される網点の数に基づいて制御されてもよい(
図3および
図4も参照)。例えば
図3において、セルC13の印刷濃度は最も低く(例えば零)、セルC11の印刷濃度は最も高く、セルC12の印刷濃度はセルC11,C13の間となる。セルC11には、網点921が形成されずに、その全面にインク層92が形成されてもよい。
【0132】
<錠剤印刷装置>
第2の実施の形態にかかる錠剤印刷装置1の構成は第1の実施の形態と同様である。ただし、印刷部61および印刷部62は潜像用のインクを吐出可能である。潜像用のインクは印刷部61および印刷部62の両方に供給される。印刷部61は、潜像用のインクを吐出するインクジェットヘッドを有している。印刷部61には、潜像用のインクジェットヘッドが新たに設けられてもよいし、インクジェットヘッド61a~61dのいずれかが潜像用のインクジェットヘッドとして機能してもよい。印刷部62も同様である。
【0133】
印刷制御部32は印刷部61および印刷部62を制御して、潜像用のインクの液滴を錠剤本体91の表面に吐出させて、多次元バーコードMC1を印刷する。例えば印刷制御部32はインクの液滴の大きさを調整することで、または、インクを吐出すべき吐出口を変更することで、各セルC1における印刷濃度を調整して、多次元バーコードMC1を錠剤本体91の表面に印刷する。
【0134】
この多次元バーコードMC1は、照射される光の波長帯域に応じて状態が変化する。具体的には、多次元バーコードMC1は可視光が照射される環境下では人によって視認されにくく、不可視光が照射された環境下で専用の読み取り装置によって読み取られる。この読み取り装置は、照射部と、イメージセンサと、ディスプレイと、制御部とを備える。照射部は不可視光を照射する。例えば照射部は不可視光として紫外線を照射する。照射部としては、例えば、ブラックライト、水銀ランプ、メタルハイドランプ、キセノンランプ、LEDなどの光源を採用できる。イメージセンサは例えばCCDイメージセンサであり、不可視光を受光して撮像画像を生成し、その撮像画像を制御部に出力する。
【0135】
なおイメージセンサとしては、照射部からの不可視光についての受光感度が可視光についての受光感度よりも高いイメージセンサを採用するとよい。具体的には、当該不可視光の波長帯域のみを受光感度とするイメージセンサを採用してもよい。あるいは、当該不可視光の波長帯域の透過率が他の波長帯域よりも高いフィルタをイメージセンサの前方に設けてもよい。より具体的には、当該不可視光の波長帯域のみを透過させるフィルタを設けてもよい。これによれば、可視光による影響を低減して多次元バーコードMC1を適切に撮像することができる。
【0136】
錠剤9の表面に照射された不可視光は、多次元バーコードMC1が印刷される領域以外の領域では比較的高い反射率で反射し、多次元バーコードMC1が印刷される領域においては、印刷濃度が高いほど低い反射率で反射することとなる。つまり、セルC11において最も低い反射率で不可視光が反射し、セルC12において次に高い反射率で不可視光が反射し、セルC13において最も高い反射率で不可視光が反射する。したがって、この反射光に基づいて生成される撮像画像には、多次元バーコードMC1が写る。
【0137】
読み取り装置の制御部はこの撮像画像をディスプレイに表示してもよい。制御部は撮像画像から多次元バーコードMC1を抽出し、その多次元バーコードMC1から元の入力情報を復元する。制御部は、復元した入力情報をディスプレイに表示する。これにより、ユーザは多次元バーコードMC1に内蔵された入力情報を認識することができる。
【0138】
以上のように、多次元バーコードMC1は人によって視認されにくいので、服用時において人に拒否感を与えにくい。また多次元バーコードMC1は専用の読み取り装置によって読み取られるので、特定の関係者(例えば医者または薬剤師)は多次元バーコードMC1に内蔵された入力情報を認識することができる。
【0139】
<色材の濃度が異なるインク>
上述の例では、潜像用のインクの液滴の大きさ等を制御することで印刷濃度を制御している。しかしながら、各セルC1に形成されるインク層92内の色材の濃度を異ならせることで、各セルC1の印刷濃度を制御してもよい。言い換えれば、色材の濃度が異なる複数の潜像用インクを用いてもよい。例えば、潜像用の高濃度インク、および、高濃度インクよりも低い濃度で色材が含まれた潜像用の低濃度インクを用いる。高濃度インクおよび低濃度インクに含まれる成分の種類は互いに同じであってもよい。
【0140】
このような2種の高濃度インクおよび低濃度インクを用いた多次元バーコードMC1の一例は
図5と同様である。
図5に例示するように、高濃度インクによってセルC11に形成されるインク層92aには、色材が高い濃度で含まれるので、その印刷濃度は高い。低濃度インクによってセルC12に形成されるインク層92bには、色材が低い濃度で含まれるので、その印刷濃度はセルC11に比して低い。インク層92が形成されないセルC13には、色材が含まれないので、印刷濃度は最も低く、理想的には零である。
【0141】
錠剤印刷装置1の印刷部61には、高濃度インクの液滴を吐出するインクジェットヘッドと、低濃度インクの液滴を吐出するインクジェットヘッドとが設けられる。印刷部61には、これらのインクジェットヘッドが新たに設けられてもよいし、あるいは、インクジェットヘッド61a~61dのいずれか2つがそれぞれ高濃度用および低濃度用のインクジェットヘッドとして機能してもよい。印刷部62も同様である。
【0142】
印刷制御部32は印刷部61および印刷部62を制御して、適宜にインクジェットヘッドを切り替えることで、各セルC11に対して高濃度インクを、各セルC12に対して低濃度インクを、それぞれ吐出させる。これにより、多次元バーコードMC1を錠剤本体91の表面に印刷する。
【0143】
<色材の結晶構造が異なるインク>
上述の例では、1種類の色材を採用しているものの、必ずしもこれに限らない。例えば同種の色材であっても、結晶構造が異なる複数の色材を採用してもよい。結晶構造が相違すれば、その色材の不可視光についての反射率(あるいは吸光度)が互いに相違するので、結晶構造の相違によって印刷濃度が相違する。このような色材として、例えばアナターゼ型の酸化チタン粒子およびルチル型の酸化チタン粒子を採用することができる。例えば200[nm]以上400[nm]未満の波長域において、アナターゼ型の酸化チタン粒子の吸光度(あるいは反射率)は、ルチル型の酸化チタン粒子の吸光度(あるいは反射率)と異なる波形を有している。より具体的には、不可視光の波長が380[nm]以上400[nm]以下であるときに、ルチル型の酸化チタン粒子の吸光度はアナターゼ型の酸化チタン粒子の吸光度に対して十分に大きい。
【0144】
そこで、セルC11に形成されるインク層92の色材として、吸光度が比較的高いルチル型の酸化チタン粒子を採用し、セルC12に形成されるインク層92の色材として、吸光度が比較的低いアナターゼ型の酸化チタン粒子を採用する。各インク層92に含まれる色材の濃度は互いに同程度である。各インク層92はセルC1に対して全面的に形成されてもよい。
【0145】
この錠剤9の表面に対して不可視光(例えば380[nm]以上400[nm]以下の波長帯域)を照射すると、セルC11では、ルチル型の酸化チタン粒子が最も高い吸光度で不可視光を吸収するので、最も低い反射率で不可視光が反射し、セルC12では、アナターゼ型の酸化チタン粒子が低い吸光度で不可視光を吸収するので、比較的高い反射率で不可視光が反射し、セルC13では不可視光がほとんど吸収されないので、最も高い反射率で不可視光が反射する。したがって、この反射光に基づいて生成される撮像画像には、多次元バーコードMC1が写る。
【0146】
錠剤印刷装置1においては、ルチル型の酸化チタン粒子を色材として含む第1インク、および、アナターゼ型の酸化チタン粒子を色材として含む第2インクが採用される。つまり印刷部61は、第1インクの液滴を吐出する第1インクジェットヘッドと、第2インクの液滴を吐出する第2インクジェットヘッドとを有している。印刷部61には、第1インクジェットヘッドおよび第2インクジェットヘッドが新たに設けられてもよいし、あるいは、インクジェットヘッド61a~61dのいずれか2つがそれぞれ第1インクジェットヘッドおよび第2インクジェットヘッドとして機能してもよい。印刷部62も同様である。
【0147】
印刷制御部32は印刷部61および印刷部62を制御して、適宜にインクジェットヘッドを切り替えて、各セルC11に対して第1インクを、各セルC12に対して第2インクを、それぞれ吐出させる。これにより、多次元バーコードMC1を錠剤本体91の表面に印刷する。
【0148】
上述の例では、色材として、結晶構造の相違する同種の材料を採用している。これによれば、異種の材料を採用する場合に比して、次の点で好ましい。即ち、異種の材料が錠剤本体91の表面上で互いに接触すると異種材料同士が化学的に反応する場合があるものの、同種の材料が互いに接触しても、そのような化学反応が生じにくい。よって、このような化学反応に起因した不具合を抑制あるいは回避することができる。つまり、インク層92が安定する。
【0149】
<不可視光の吸収材料(錠剤本体)>
錠剤本体91の表面にも、不可視光を吸収する材料が含まれていてもよい。ただし、インク層92の吸光度とは異なる吸光度を有する材料を採用する必要がある。要するに、インク層92が形成された領域における不可視光の反射率と、それ以外の領域の不可視光の反射率とが互いに相違していればよい。例えば、錠剤本体91の表面にアナターゼ型の酸化チタンが含まれている場合、インク層92の色材としてルチル型の酸化チタン粒子を採用してもよい。これらの吸光度が相違するからである。そして、錠剤印刷装置1が、網点921の大きさまたは数を調整することで各セルC1における印刷濃度を調整して、多次元バーコードMC1を印刷することができる。
【0150】
<蛍光材料(錠剤本体)>
錠剤本体91の表面には、不可視光を吸収して発光する蛍光材料が含まれていても構わない。蛍光材料は不可視光を吸収し、その吸収した波長とは異なる波長の光(以下、蛍光と呼ぶ)を発する。蛍光材料としては、不可視光の照射の停止と共に速やかに発光を終了する材料を採用してもよく、あるいは、当該停止の後の期間でも発光を維持できる燐光材料を採用してもよい。
【0151】
この錠剤9の表面に不可視光を照射した場合、多次元バーコードMC1が形成される領域以外の領域は、その照射光とは異なる波長の蛍光を発する。一方で、多次元バーコードMC1が形成された領域では、その印刷濃度が高いほど低い強度で蛍光を発する。例えば印刷濃度が最も高いセルC11では、不可視光がインク層92で吸収されて錠剤本体91の表面にほとんど到達しないので、ほとんど蛍光を発しない。また、印刷濃度がセルC11よりも低くセルC13よりも高いセルC12では、不可視光の一部が吸収されて残りの一部が錠剤本体91の表面に到達するので、低い強度で蛍光を発する。印刷濃度が最も低いセルC13では、不可視光がほとんど吸収されずに錠剤本体91の表面に到達するので、高い強度で蛍光を発する。
【0152】
以上のように、錠剤9の表面に不可視光を照射したときの多次元バーコードMC1からの光(蛍光)の強度はセルC11~C13毎に相違する。
【0153】
読み取り装置においては、蛍光の波長帯域についての受光感度が他の波長帯域よりも高いイメージセンサを採用する。具体的には、蛍光の波長帯域のみを受光感度とするイメージセンサを採用してもよい。あるいは、蛍光の波長帯域の透過率が他の波長帯域よりも高いフィルタをイメージセンサの前方に設けてもよい。具体的には、蛍光の波長帯域のみを透過させるフィルタを設けてもよい。これによれば、イメージセンサは蛍光と同じ波長の光のみを受光して撮像画像を生成できる。これによれば、蛍光以外の光による影響を受けずに多次元バーコードMC1を適切に撮像することができる。読み取り装置の制御部はその撮像画像に基づいて、多次元バーコードMC1を識別することができる。
【0154】
<蛍光材料(インク層)>
潜像用のインク層92に含まれる色材として蛍光材料を採用してもよい。具体的には、蛍光材料としては、例えば、リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンリン酸エステルナトリウム、桂皮酸、L-トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、キニーネ、キニーネ塩酸塩二水和物、硫酸キニーネ、赤色3号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、フマル酸二ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、クロロフィルおよびローダミンからなる群より選ばれ得る。これらの蛍光材料は1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。この場合、錠剤本体91の表面には蛍光材料が含まれない。
【0155】
錠剤9の表面に不可視光を照射すると、各セルC1はその印刷濃度に応じた強度で蛍光を発する。イメージセンサはこの蛍光を受光して撮像画像を生成するので、撮像画像には多次元バーコードMC1が適切に写る。読み取り装置の制御部はその撮像画像に基づいて多次元バーコードMC1を識別することができる。
【0156】
<以上に記載された実施の形態における変形例について>
以上、実施の形態が説明されたが、この錠剤9および錠剤印刷装置1はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施の形態においては、錠剤9の表裏両面に印刷処理を行っていたが、表面または裏面のいずれか一方のみに印刷処理を行うようにしてもよい。
【0157】
例えば、表面のみに印刷処理を行うのであれば、搬送ベルト20の搬送中において表面が搬送ベルト20の外側を向いている錠剤本体91に対しては印刷部61によって印刷処理を行い、搬送ベルト30の搬送中において表面が搬送ベルト30の外側を向いている錠剤本体91に対しては印刷部62によって印刷処理を行う。
【0158】
また、上記実施形態においては、インクの液滴を吐出するインクジェット方式によって印刷処理を行っていたが、印刷処理の手法はこれに限定されるものではなく、凸版印刷、グラビア印刷を含む凹版印刷、または、レーザー印刷などであってもよい。
【0159】
また、錠剤本体91の形状は円盤形状に限定されるものではなく、例えば略楕円形状や棒状など他の形状であってもよい。この場合、各搬送部の吸着孔は錠剤本体91の形状に応じたものとなる。
【0160】
また、上記実施形態においては、5列1行の単位で錠剤本体91を搬送するようにしていたが、これに限定されるものではなく、1列で錠剤本体91を搬送するようにしてもよいし、2列以上の複数列にて錠剤本体91を搬送するようにしてもよい。
【0161】
また、上述の例では、錠剤本体91に対して印刷を行っているものの、印刷対象はカプセル剤であってもよい。要するに、固体製剤の本体に対して印刷を行えばよい。この場合、固体製剤の本体と、その本体の表面に定着したインク層とが固体製剤を構成する。また固体製剤印刷装置は、錠剤印刷装置1と同様の構成を有しており、少なくとも、固体製剤を搬送する搬送部と、固体製剤にインクの液滴を吐出するインクジェットヘッドと、多次元コード生成部と、印刷制御部とを備えている。
【0162】
上述の例では、多次元バーコードMC1,MC2は、平面座標上において、マトリックス状に配列される複数のセルC1を有しているものの、必ずしもこれに限らない。複数のセルC1は平面座標上においてどのように配列されてもよい。例えば複数のセルC1は1次元的に配列されてもよい。
【0163】
また上述の例では、多次元バーコードMC1,MC2の各セルC1は矩形状を有しているものの、必ずしもこれに限らない。各セルC1は任意の形状を有していてもよい。
【0164】
また第1の実施の形態において可視用の色材で表現された多次元バーコードMC1を説明し、第2の実施の形態において潜像用の色材で表現された多次元バーコードMC1を説明した。しかるに、可視用の色材と潜像用の色材の両方が採用されてもよい。つまり多次元バーコードMC1において、可視用のインク層92が形成されたセルC1、および、潜像用のインク層92が形成されたセルC1が混在してもよい。
【0165】
服薬者が読み取っても問題のない情報は可視用の色材で表現された多次元バーコードを用い、服薬者に読み取らせたくない情報は潜像用の色材で表現された多次元バーコードを用いてもよい。
【0166】
可視用の色材としては、潜像を顕在化する場合の不可視光に対しても高い吸光度を示す色材もある。そういった色材を用いた場合、不可視光を照射し潜像を顕在化した際には、潜像用の色材と可視用の色材との両方で多次元バーコードが表現される。
【0167】
以上のように、錠剤および錠剤印刷装置は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0168】
1 錠剤印刷装置
9 錠剤
31 多次元コード生成部
32 印刷制御部
61,62 印刷部
91 錠剤本体
92,92a,92b,92A~92D インク層
C1,C11~C13 セル
MC1,MC2 多次元バーコード