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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】メタン発酵装置およびメタン発酵方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/65 20220101AFI20220615BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
B09B3/65
B09B5/00 Z ZAB
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018139003
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020014994
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境サ-ビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【弁理士】
【氏名又は名称】津村 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100197549
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昌三
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】野村 和利
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-144361(JP,A)
【文献】特開2017-148777(JP,A)
【文献】特開2012-086157(JP,A)
【文献】特表2006-520684(JP,A)
【文献】特開2012-183510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00 - 5/00
B09C 1/00 - 1/10
C02F 11/00 - 11/20
C02F 3/28 - 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオガスを発生させる発酵液を収容する発酵槽と、
前記発酵槽から取り出された前記発酵液と、発酵適物を含む廃棄物と、を混合して流動物を得るとともに前記廃棄物に由来する発酵不適物の少なくとも一部を分離させる混合部と、
前記発酵槽から取り出された前記発酵液を前記混合部に送る引き抜きルートと、
前記流動物を前記混合部から前記発酵槽に送る投入ルートと、
前記発酵槽内の前記発酵液を循環させる循環ルートと、
を具備し、
前記循環ルートから前記引き抜きルートが第一分岐部で分岐し、前記投入ルートが前記循環ルートの前記第一分岐部よりも下流側の第二分岐部で合流しており、
前記混合部は、前記分離させた発酵不適物を沈降させるデッドスペースを有し、
前記デッドスペースよりも上方に前記流動物を前記投入ルートに放出する吐出口を有する、メタン発酵装置。
【請求項2】
前記デッドスペースに、前記分離させた発酵不適物を排出する掻き寄せ排出機構が設けられている、請求項に記載のメタン発酵装置。
【請求項3】
前記混合部の容積が、前記発酵槽の容積の20%以下である、請求項1または2に記載のメタン発酵装置。
【請求項4】
前記混合部における前記流動物の滞留時間が、0.5日以内である、請求項1~3のいずれか1項に記載のメタン発酵装置。
【請求項5】
(i)発酵液を収容する発酵槽から前記発酵液を部分的または間欠的に取り出して混合部に送る工程と、
(ii)前記混合部で、前記発酵槽から取り出された発酵液と発酵適物を含む廃棄物とを混合して流動物を得るとともに前記廃棄物に由来する発酵不適物の少なくとも一部を分離させる工程と、
(iii)前記流動物を前記混合部から前記発酵槽に送る工程と、
(iv)前記発酵槽内で前記発酵適物の加水分解、酸発酵およびメタン発酵を進行させてバイオガスを発生させる工程と、
(v)前記発酵槽内の前記発酵液を循環させる工程と、
を具備し、
前記工程(ii)において、前記混合部への前記廃棄物の供給を停止し、その後、前記混合部で沈降分離された前記発酵不適物を前記混合部から除去する工程、を更に有し、
前記工程(i)が、前記発酵液を循環させるために前記発酵槽より引き抜かれた発酵液の一部を前記混合部に送ることを含み、
前記工程(iii)が、前記流動物を、前記循環する発酵液の一部を前記混合部に送るよりも下流側で、前記循環する発酵液と合流させ、前記循環する発酵液とともに前記発酵槽に送ることを含む、メタン発酵方法。
【請求項6】
前記混合部における前記流動物の滞留時間が、0.5日以内である、請求項5に記載のメタン発酵方法。
【請求項7】
前記工程(ii)において、前記発酵液100質量部に対して混合される前記廃棄物の量が、10~50質量部である、請求項5または6に記載のメタン発酵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紙ごみのような固形廃棄物をメタン発酵槽に導入するメタン発酵装置およびメタン発酵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
湿式のメタン発酵システムでは、例えば分別された生ごみが可溶化槽に貯留される。可溶化槽では、生ごみの加水分解と酸発酵(すなわち可溶化)が進行し、有機酸を含むスラリーが得られる。その後、スラリーはメタン発酵槽に送られ、メタン発酵槽内で嫌気性微生物により分解される(特許文献1参照)。このとき生成するバイオガスは、一般に約60vol%のメタンと約40vol%の二酸化炭素とを含み、エネルギー源として有用である。
【0003】
廃棄物を減容化するとともにバイオガスの生成量を増加させる観点から、生ごみだけでなく、紙ごみのような有機物を含む固形廃棄物を原料に用いることが望ましい。例えば、特許文献2は、有機性固形廃棄物を槽内で発酵液に浸漬させつつ可溶化し、バイオガスにまで分解することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-246461号公報
【文献】特開2012-86157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固形廃棄物は空気を内包しやすいことに加え、様々な性状、形状もしくは比重の材料を含んでいる。よって、メタン発酵槽に投入するまでに、発酵適物から空気を脱気するとともに発酵不適物を適宜に除去し得るシステムを構築することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、バイオガスを発生させる発酵液を収容する発酵槽と、前記発酵槽から取り出された前記発酵液と、発酵適物を含む廃棄物と、を混合して流動物を得るとともに前記廃棄物に由来する発酵不適物の少なくとも一部を分離させる混合部と、前記発酵槽から取り出された前記発酵液を前記混合部に送る引き抜きルートと、前記流動物を前記混合部から前記発酵槽に送る投入ルートと、前記発酵槽内の前記発酵液を循環させる循環ルートと、を具備し、前記循環ルートから前記引き抜きルートが第一分岐部で分岐し、前記投入ルートが前記循環ルートの前記第一分岐部よりも下流側の第二分岐部で合流しており、前記混合部は、前記分離させた発酵不適物を沈降させるデッドスペースを有し、前記デッドスペースよりも上方に前記流動物を前記投入ルートに放出する吐出口を有する、メタン発酵装置に関する。
【0007】
本発明の別の側面は、(i)発酵液を収容する発酵槽から前記発酵液を部分的または間欠的に取り出して混合部に送る工程と、(ii)前記混合部で、前記発酵槽から取り出された発酵液と発酵適物を含む廃棄物とを混合して流動物を得るとともに前記廃棄物に由来する発酵不適物の少なくとも一部を分離させる工程と、(iii)前記流動物を前記混合部から前記発酵槽に送る工程と、(iv)前記発酵槽内で前記発酵適物の加水分解、酸発酵およびメタン発酵を進行させてバイオガスを発生させる工程と、(v)前記発酵槽内の前記発酵液を循環させる工程と、を具備し、前記工程(ii)において、前記混合部への前記廃棄物の供給を停止し、その後、前記混合部で沈降分離された前記発酵不適物を前記混合部から除去する工程、を更に有し、前記工程(i)が、前記発酵液を循環させるために前記発酵槽より引き抜かれた発酵液の一部を前記混合部に送ることを含み、前記工程(iii)が、前記流動物を、前記循環する発酵液の一部を前記混合部に送るよりも下流側で、前記循環する発酵液と合流させ、前記循環する発酵液とともに前記発酵槽に送ることを含む、メタン発酵方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るメタン発酵装置およびメタン発酵方法によれば、発酵槽内で紙ごみのような固形廃棄物の可溶化とメタン発酵とを安定的に進行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るメタン発酵システムの一例の構成を示すブロック図である。
図2】発酵液と原料廃棄物とを混合して流動物を得るとともに発酵不適物を分離させる混合部の一例の模式図である。
図3】発酵液中を浮遊する発酵不適物を除去する分離装置の一例の模式図である。
図4】原料廃棄物を分別する前処理装置の一例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係るメタン発酵装置には、固形廃棄物が原料として発酵槽内に導入される。発酵槽内では、固形廃棄物中の発酵適物の加水分解、酸発酵およびメタン発酵が進行し、バイオガスが生成される。すなわち、メタン発酵装置は、バイオガスを発生させる発酵液を収容するとともに、発酵適物の加水分解、酸発酵およびメタン発酵を進行させる発酵槽を具備する。
【0011】
本実施形態に係るメタン発酵装置は、発酵適物の酸発酵を促すための可溶化槽を具備しないメタン発酵システムの構築を可能にし得る。湿式のメタン発酵システムでは、分別された生ごみを貯留し、生ごみの加水分解と酸発酵を進行させる可溶化槽が通常設置される。一方、本実施形態に係るメタン発酵装置では、固形廃棄物が原料として発酵槽内に導入される。固形廃棄物は、事前に発酵不適物の一部が除去された原料廃棄物として供給される。原料廃棄物は、発酵槽から部分的に取り出された発酵液と混合される。こうして得られる原料廃棄物を含む流動物がメタン発酵槽に導入される。
【0012】
固形廃棄物は、発酵適物を含み、多少の発酵不適物を含み得る。固形廃棄物は、例えば、家庭から出される一般ごみであってもよい。一般ごみに含まれる発酵不適物は予め十分に分別される。
以下、メタン発酵の原料として用いる固形廃棄物を、原料廃棄物と称する。
【0013】
発酵液とは、発酵適物の加水分解と酸発酵を経た後、メタン発酵を促進する菌体による消化分解を経て得られた液状物である。
【0014】
発酵適物とは、加水分解および酸発酵(すなわち可溶化)を経てメタン発酵により分解され得る有機物をいう。発酵適物としては、例えば、生ごみ、紙ごみ、生分解性プラスチックなどが挙げられるが、特に限定されない。
【0015】
発酵不適物とは、可溶化に適さない材料であり、例えば、金属、プラスチック、鉱物、貝殻類などが挙げられる。発酵不適物は、予め十分に分別される場合でも、原料廃棄物に混在し得る。このような発酵不適物は、適宜、装置系内から分別により除去される。
【0016】
本発明の実施形態に係るメタン発酵装置は、バイオガスを発生させる発酵液を収容する発酵槽と、発酵槽から部分的または間欠的に取り出された発酵液と原料廃棄物とを混合して流動物を得るとともに原料廃棄物に由来する発酵不適物の少なくとも一部を分離させる混合部と、発酵槽から取り出された発酵液を混合部に送る引き抜きルートと、流動物を混合部から前記発酵槽に送る投入ルートとを具備する。
【0017】
また、本発明に係るメタン発酵方法は、(i)発酵液を収容する発酵槽から発酵液を部分的または間欠的に取り出して混合部に送る工程と、(ii)混合部で、発酵槽から取り出された発酵液と原料廃棄物とを混合して流動物を得るとともに原料廃棄物に由来する発酵不適物の少なくとも一部を分離させる工程と、(iii)流動物を混合部から発酵槽に送る工程と、(iv)発酵槽内で発酵適物の加水分解、酸発酵およびメタン発酵を進行させてバイオガスを発生させる工程とを具備する。
【0018】
混合部は、発酵適物の可溶化を目的とする可溶化槽ではないので、例えば、混合部の容積は、発酵槽の容積の20%以下である。また、混合部において、流動物もしくは原料廃棄物の滞留時間は、例えば0.5日以内である。
【0019】
混合部における流動物の滞留時間は、1日あたり混合部に投入される発酵適物量、1日分の発酵適物を混合部に分割して投入する際の分割回数(例えば1~6回)、発酵液と発酵適物との混合割合等により決定される変数である。一般的には、混合部における流動物の滞留時間がX日(または時間)以下であるとは、例えば混合部に原料廃棄物が導入されてからX日(または時間)以内に混合物内の流動物を発酵槽に送る場合をいう。
【0020】
混合部は、その内部で分離させた発酵不適物を沈降させるデッドスペースを有してもよい。このとき、混合部は、デッドスペースよりも上方に流動物を放出する吐出口を有する。デッドスペースには、分離させた発酵不適物を排出する掻き寄せ排出機構を設けてもよい。発酵不適物の除去は、混合部への原料廃棄物の供給を停止してから行われることが好ましい。これにより、混合部に供給された原料廃棄物内の発酵適物が発酵不適物とともに除去される量を抑制することができる。
【0021】
メタン発酵装置は、発酵槽内の発酵液を循環させる循環ルートを更に有してもよい。例えば、発酵液を発酵槽の下方より引き抜いてから上方に戻すことにより発酵液Lを循環させることができる。発酵液を循環させることで、発酵適物の加水分解、酸分解およびメタン発酵が促進される。発酵液の循環は、メタン発酵により生成するバイオガスの滞留も抑制するため、ガス回収も容易になる。発酵液の循環により発生する液流は、高比重な発酵不適物を攪拌し、発酵槽の底部に沈殿させるため、そのような発酵不適物の分離と回収も容易になる。
【0022】
メタン発酵装置が循環ルートを有する場合、循環ルートから引き抜きルートを第一分岐部で分岐させてもよい。すなわち発酵液を循環させるために発酵槽から引き抜かれた発酵液の少なくとも一部が混合部に送られるように、循環ルートから引き抜きルートを分岐させてもよい。この場合、循環ルートの一部は、発酵槽から混合部に発酵液を送る引き抜きルートの一部として利用される。循環ルートで発酵液を循環させるための駆動力を付与するポンプを、引き抜きルートで発酵液を混合部へ送るポンプとして利用してもよい。
【0023】
投入ルートを循環ルートの第一分岐部よりも下流側の第二分岐部に合流させてもよい。これにより、流動物が循環する発酵液とともに発酵槽に送られるため、流動物と発酵液との混合が促進される。また、流動物が引き抜きルートに逆流しにくい。この場合、循環ルートの一部は、投入ルートの一部として利用される。また、投入ルートで流動物を発酵槽に送るための駆動力を付与するポンプは、循環ルートで発酵液を発酵槽へ送るポンプとは別に設ければよい。
【0024】
引き抜きルートおよび投入ルート等の各ルートは、流動物が通過し得る配管などで構成すればよい。
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら更に説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0026】
図1に、本発明に係るメタン発酵装置100を含むメタン発酵システム10の一例の構成を示す。メタン発酵装置100は、発酵液Lを収容する発酵槽110と、発酵槽110から引き抜かれた発酵液Lと原料廃棄物Cとを混合して流動物Sを得る混合部120と、発酵槽110から取り出された発酵液Lを混合部120に送る第1引き抜きルートR11と、流動物Sを混合部120から発酵槽110に送る投入ルートR2とを具備する。
【0027】
メタン発酵装置100は、発酵液Lを発酵槽110の下方より引き抜いてから上方に戻す循環ルートR3を有する。発酵槽110の下方には、発酵液Lを抜き取る第一吐出口114が設けられている。発酵液Lは、循環ルートR3に設けられた第1ポンプ(ヒドロスタル)P1の駆動力によって第一吐出口114から引き抜かれて上方に送られる。発酵液Lを循環させることで、発酵槽110内の発酵適物の発酵が促進されるとともに、発酵不適物の分別と回収が容易になる。
【0028】
循環ルートR3の下流端部は二股に分岐しており、2つの分岐路は、それぞれ循環ルートR3を通過した発酵液Lを発酵槽110に放出する上部吹出口111および液中吹出口112を有する。上部吹出口111の上流側および液中吹出口112の上流側には、それぞれバルブV1およびV2が設けられている。
【0029】
発酵槽110は、縦型の円筒状容器であり、内部が嫌気性雰囲気に維持されるように密閉性を有する。発酵槽110は、発酵不適物を沈降させるデッドスペースを有してもよい。デッドスペースに沈降する高比重物は、第一底部出口113から適宜に外部に排出して除去される。第一底部出口113は、例えば掻き寄せ排出機構を有することが好ましい。
【0030】
図1では、第1引き抜きルートR11および第2引き抜きルートR12の上流側と循環ルートR3の上流側とが共通の配管により構成されている。発酵液Lは、循環ルートR3に設けられた第1ポンプP1の駆動力により発酵槽110の下方から引き抜かれる。第1引き抜きルートR11および第2引き抜きルートR12は、第一分岐点T1で循環ルートR3から分岐している。第一分岐点T1の下流に設けられたバルブV3と第1引き抜きルートR11に設けられたバルブV10とを開き、第2引き抜きルートR12に設けられたバルブ11を閉じることにより、発酵液Lが第1引き抜きルートR11を通って混合部120に送られる。バルブV3およびV10を開いたままで、発酵液Lの発酵槽110内での循環と発酵液Lの混合部120への供給とを並行して行ってもよい。このような並行動作は一定期間にわたり連続的に行い得る。
【0031】
混合部120は、原料廃棄物Cと発酵液Lとを混合して、原料廃棄物Cに流動性を持たせ、発酵槽110内での原料廃棄物Cの分散性を向上させるとともに流動物Sから空気を脱気するという意義を有する。混合部120における流動物の滞留時間は、0.5日より短くてもよく、例えば3時間以下もしくは2時間以下であり、0.5時間以下であってもよい。原料廃棄物Cは、混合部120で発酵液Lと混合攪拌され、液状もしくはスラリー状に分散させた後、気密性が保たれた発酵槽110に導入もしくは移送される。混合部120から発酵槽110に送られる流動物Sは、酸発酵は多少進み得るが、少なくとも大きくは進んでいない。流動物中の発酵適物の加水分解および酸発酵は、メタン発酵が行われる発酵槽110内で進行する。
【0032】
混合部120内の流動物Sは、第2ポンプP2(破砕ポンプ)の駆動力により引き抜かれる。流動物Sは、投入ルートR2を通過し、バルブV4を介して発酵槽110に供給される。投入ルートR2をバルブV4の上流側で分岐させ、分岐路を循環ルートR3と第二分岐部T2で合流させてもよい。第二分岐部T2の上流側のバルブV6を開くことで、流動物Sは循環ルートR3に合流し、上部吹出口111および/または液中吹出口112から発酵槽110に放出される。このとき、発酵液Lの発酵槽110内での循環と、流動物Sの発酵槽110への供給とが並行して行われてもよい。このような並行動作は一定期間にわたり連続的に行い得る。第二分岐部T2は第一分岐部T1よりも循環ルートR3の下流側に設ければよい。これにより、混合部120で得られた流動物Sの第2引き抜きルートR12への逆流を防止できる。よって、後述するような分離装置300を設ける場合でも、流動物S中の発酵適物が除かれることが防止される。
【0033】
バッチ方式でメタン発酵を行う場合、流動物Sを発酵槽110に導入した後、発酵が完了するまではバルブV3を閉じてもよい。
【0034】
メタン発酵システム100は、水蒸気を発酵槽110に導入する蒸気入口を有してもよい。水蒸気は、発酵槽110の内部を、例えば50~60℃の適正温度範囲内に維持するための熱源として発酵槽110に導入される。水蒸気は、発酵液Lのアンモニア濃度もしくは有機酸濃度を制御する希釈水としても機能する。紙ごみのような固形廃棄物を用いる場合、発酵液のアンモニア濃度が上昇しにくい。よって、外部から希釈水を追加する必要はなく、発酵槽内の発酵液量は、比較的長期にわたり適正範囲内に維持される。なお、発酵槽110の内部を適正温度範囲内に維持する方法として、蒸気による加温以外の方法を用いてもよい。
【0035】
発酵槽110に送られた発酵適物は、発酵槽110内の制限されたスペースで、順次、加水分解される。発酵槽110とは別に、発酵適物の加水分解および酸発酵を進行させるための可溶化槽を設置する必要はない。上記メタン発酵装置100では、発酵適物の可溶化に必要なスペースが大幅に削減される。これに伴い、必要機器点数およびエネルギー消費量も削減される。以上により、メタン発酵システム10の構築と運営に必要なコストが削減される。
【0036】
発酵槽110内に導入される発酵適物量は、発酵槽110内の有機酸量に影響を与える。発酵槽110内の発酵適物量は、混合部120から発酵槽110に送る流動物Sの量を制御することで調整可能である。発酵槽110内の発酵液Lの有機酸濃度は、混合部120から発酵槽110に送る流動物Sの量を適正に制御することで適正範囲内に維持される。
【0037】
混合部120には、空気を内包する有機物を含む固形廃棄物が導入されるため、混合部120の内部を良好な嫌気性雰囲気に維持することは困難である。ただし、混合部120の容積を発酵槽110の容積よりも大幅に小さくすれば、混合部120に送られて空気と接触する発酵液量は制限される。混合部120の容積を発酵槽110の容積の20%以下とすれば、発酵槽110から過剰の発酵液Lが抜き取られることもなく、発酵液量の増減変化が小さくなる。混合部120の容積は、例えば、発酵槽110の容積の20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
【0038】
混合部120で流動物Sを得る場合、発酵液100質量部に対して混合される原料廃棄物Cの量は、10~50質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましい。原料廃棄物Cの性状、物性、含水率によっては流動性を増す目的で外部から水を追加する必要はない。十分な流動性を有する流動物Sを得ることで、配管の詰まりなどの様々な不具合の発生率が低減される。配管の詰まりを更に抑制するには、流速を大きくする対策を講じる他、横方向の配管勾配、-45°~+45°の勾配とすることが好ましい。加えて、配管内堆積物を保留させる任意配管(トラップ配管部)を併設することが好ましい。
【0039】
発酵槽110は、基本的にその内部が大気との接触を遮断する構造である。発酵液Lへの日光照射も抑制する必要がある。一方、発酵槽110の内部状況、すなわち発酵槽110内における浮上性ごみ(スカム(SCUM))発生状況、発酵液L中の夾雑物濃度、発酵液LのpH値などを把握する必要もある。混合部120は、このような状況把握のための発酵液Lのモニタリング部としての機能も果たす。この場合、後述するような分離装置300を設ける場合でも、発酵液Lは第一分岐部T1から分離装置300をバイパスして混合部120に送られる。
【0040】
図2に、混合部120の一例の模式図を示す。混合部120は、外部から導入される原料廃棄物Cと発酵液Lとを混合できるように構成されている。混合部120は、発酵槽110よりも十分に小型の混合容器121と、攪拌羽122と、生成した流動物Sを発酵槽110に移動させる第2ポンプP2とを具備する。第2ポンプP2の駆動力により、流動物Sは混合部120から第二吐出口124を通過して発酵槽110に向かう投入ルートR2に放出される。第2ポンプP2には、流動物Sに含まれる有機物を含む固形廃棄物を破砕し得る破砕ポンプを用いることが好ましい。
【0041】
混合容器121は、その内部に原料廃棄物Cを投入するための第一投入口125と発酵液Lを投入するための第二投入口126とを有する。混合容器121の容積が小さいので、混合容器121の内部に空気が侵入し、嫌気性が損なわれても、発酵槽110の内部への影響は無視できる。
【0042】
混合部120で原料廃棄物Cと発酵液Lとを混合すると、混合部120内で、高比重物(例えば、金属、砂利、貝殻)および軽比重物(例えば発砲スチロール)が比重分離作用により分離される。よって、混合部120では、高比重の堆積物(SED)と軽比重の浮遊物を容易に取り出して除去することができる。具体的には、高比重物は混合容器121の底部のデッドスペース121dに堆積する。デッドスペース121dは、混合部120で得られる流動物Sの第二吐出口124よりも鉛直下方の領域である。一方、軽比重物は、第二吐出口124よりも鉛直上方の混合スペース121uにおいて、流動物の液面に浮遊物として浮遊する。その結果、高比重物および軽比重物は、第二吐出口124から放出されにくくなり、発酵不適物による弊害を低減することができる。
【0043】
デッドスペースに沈降する高比重物(SED)は、第二底部出口123から適宜に外部に排出される。第二底部出口123は、例えば掻き寄せ排出機構127を有することが好ましい。軽比重の浮遊物は液面から所定の吸引装置により除去すればよい。このように、発酵不適物を混合部120で予め除くことにより、メタン発酵装置の稼働時における不具合の発生率が大きく低減される。すなわち、軽比重物を低減することで、発酵槽内でのガス抜けが軽比重物で阻害されにくくなり、高比重物を低減することで、発酵槽110のデッドスペースに沈降する堆積物の量が軽減され、第一底部出口113からの堆積物の排出が阻害されにくくなる。更に、発酵液を循環させる際には配管の詰まりが軽減される。
【0044】
混合部120からの発酵不適物(高比重物および軽比重物)の除去は、混合部120への原料廃棄物Cの供給を停止してから行えばよい。これにより、混合部120に新たに供給された原料廃棄物Cに含まれる発酵適物が発酵不適物とともに除去されることを防止できる。
【0045】
発酵槽110内には、沈殿する高比重物、液面に浮遊する軽比重物の他に、発酵液L中を浮遊する発酵不適物(以下、液中浮遊物と称する。)が存在する。発酵槽110において液中浮遊物を分離することは困難である一方、有機固形物を含む原料廃棄物を用いると、発酵液における液中浮遊物量は増加する傾向にある。液中浮遊物は、配管の閉塞などの不具合の原因になる。
【0046】
浮遊性不適物は、発酵槽110から部分的または間欠的に取り出された発酵液Lを分離装置300により濾過して除去すればよい。図1のメタン発酵システムでは、第2引き抜きルートR12が分離装置300を通過するように構成されており、分離装置300で液中浮遊物が分離された後の発酵液(分離液FL)が混合部120に送られる。なお、浮遊性不適物を除去することが目的の場合、分離装置に送られる発酵液には原則として凝集剤等は添加しない。
以下、第2引き抜きルートR12のうち、分離装置300から混合部120までのルートを濾液ルートR4と称する。
【0047】
図3に、分離装置300の一例である回転円板式濃縮機の構成を示す。図3(a)には、分離装置300が具備する濾過部310と隙間自浄部320との関係を鳥瞰図として模式的に示す。隙間自浄部320は、複数の回転軸323と、回転軸323にそれぞれ固定され、その軸方向に沿って間隔を空けて配置された複数のディスク状回転体321とを具備する。図3(b)には、濾過部310と隙間自浄部320との関係を回転軸323に沿った断面図として模式的に示す。
【0048】
濾過部310は、発酵不適物の搬送方向に沿って延出配置された複数の帯状部315により形成され、隣接する帯状部315間にはスリット状隙間312Gが形成されている。複数の帯状部315の上端面がスリット状隙間312Gとともに濾過面311Sを形成している。図3(b)に、濾過面311Sのレベルを破線で示す。複数の回転軸323は、複数の帯状部315の下方に、それぞれ帯状部315の長手方向と交わるように軸支されている。複数のディスク状回転体321は、それぞれがスリット状隙間312G内で323回転軸の回転に伴って上下動する。
【0049】
ディスク状回転体321は、その偏心位置で回転軸323に固定されている。軸心方向で互いに隣接するディスク状回転体321は、回転軸323の回転に伴う上下動位相が一つのディスク321毎に180度異なっている。隣接する回転軸323間では、隣接するディスク状回転体321の上下動位相は同じである。回転軸323が、すべて同一方向に同速度で同期して回転するため、回転軸323が半回転する毎に、模式図内の左右に示した状態が交互に実現される。
【0050】
浮遊性不適物と分解途中の発酵適物とを分別することは一般的には困難であるが、分離装置300によれば、溶解せずに比較的大きいサイズを維持している不適物を選択的に除去することが可能である。発酵液Lは、分離装置300の濾過部310の上方から濾過面311Sの入口側端部に向けて流し込まれる。入口側端部は、隙間自浄部320の回転方向の後方端部である。比較的大きいサイズを有する浮遊性不適物は、濾過部310と隙間自浄部320との隙間を通過せず、濾過面311Sにトラップされる。トラップされた不適物は、隙間自浄部320の回転によって濾過面311Sを回転方向の前方に移動し、所定の出口に向けて搬送される。分離された不適物は残渣汚泥RCとして回収される。
【0051】
分離装置300では、隙間自浄部320が常時上下動しているため、濾過部310と隙間自浄部320との隙間が閉塞しにくい。一方、例えばメッシュタイプのスクリーンを用いると、メッシュが容易に目詰まりを起こす。
【0052】
分解途中のサイズの小さい発酵適物を含む発酵液Lは、隙間自浄部320と濾過部310との隙間を通過し、貯留槽170または混合120に分離液FLとして回収される。
【0053】
分離液FLは、濾液ルートR4へ送らずに貯留槽170に回収してもよい。このとき分離装置300と混合部120との間の濾液ルートR4に設けられたバルブV5は閉じられ、貯留槽170と分離装置300との間に設けられたバルブV7が開かれる。貯留槽170に回収された分離液FLは、第3ポンプP3の駆動力により回収ルートR5とバルブV8を通過させて発酵槽110に戻すか、発酵槽110の状態を適正に維持するために廃棄してもよい。分離液FLには、アンモニアなどの発酵阻害物質が蓄積されるため、逐次、部分的にメタン発酵システム外に排出することが望ましい。
【0054】
分離液FLを廃棄する際には、貯留槽170内の分離液FLに凝集剤を混合し、凝集剤を含む発酵液Lを、脱水ルートR6とバルブV9を通過させて脱水装置180に送り、残渣汚泥と脱水濾液に分離してから廃棄すればよい。
【0055】
分離装置300は、液中浮遊物の除去だけでなく、発酵槽110内の発酵適物の分解状態を確認する際にも利用できる。発酵の立ち上げ時、定常運転時などには、発酵槽110の内部を目視で確認することは困難であるが、分離装置300によれば発酵液中の適物の消化分解状態を濾過面311Sに残る浮遊性不適物を目視して明確に把握することができるため、原料廃棄物Cの供給量の制御が容易になる。
【0056】
図4に、原料廃棄物Cを分別するための前処理装置の一例の構成を示す。前処理装置200は、外部から導入される廃棄物C1を移送する第1搬送装置210と、第1搬送装置210から供給される廃棄物C1を破砕する破砕機220と、破砕機220で破砕された破砕廃棄物C2を移送する第2搬送装置230と、分別機240とを具備する。
【0057】
第1搬送装置210は、例えば、ベルトコンベアであり、連続的に装置系内に導入される廃棄物C1の一定期間内の供給量を均等化して破砕機220に供給する。破砕機220は、例えば、二軸破砕機であり、大型の有機物を含む固形廃棄物を細かく破砕し、分別機240での処理に適した大きさになるように破砕前処理をする。第2搬送装置230は、例えば、ベルトコンベアであり、破砕された固形廃棄物を含む破砕廃棄物C2の一定期間内の供給量を均等化して分別機240に供給する。
【0058】
分別機240は、どのような構成でもよいが、例えば複数の孔を有するメッシュ、パンチングメタルなどの多孔シートで構成された円筒型のドラムとドラム内に設けられた回転破砕刃とを有する。破砕廃棄物C2は、ドラム内に導入される。破砕廃棄物C2のうち、多孔シートの孔径よりも小さい固形物は、ドラム内を流通する風力と遠心力によりドラム外に放出される。放出された固形物は、適正な含有量の発酵適物を含む原料廃棄物Cとして回収される。布、プラスチックシートなどの軽比重物および金属などの高比重物は発酵不適物NCとして、ドラム内から回収される。
【0059】
上述した実施形態は本発明の一態様であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成や制御態様は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0060】
10:メタン発酵システム
100:メタン発酵装置
110:発酵槽
111:上部吹出口
112:液中吹出口
113:第一底部出口
114:第一吐出口
120:混合部
121:混合容器
121d:デッドスペース
121u:混合スペース
122:攪拌羽
123:第二底部出口
124:第二吐出口
125:第一投入口
126:第二投入口
127:掻き寄せ排出機構
170:貯留槽
180:脱水装置
200:前処理装置
210:第1搬送装置
220:破砕機
230:第2搬送装置
240:分別機
300:分離装置
310:濾過部
311S:濾過面
312G:スリット状隙間
315:帯状部
320:隙間自浄部
321:ディスク状回転体
C1:廃棄物
C2:破砕廃棄物
C:原料廃棄物
NC:発酵不適物
L:発酵液
FL:発酵液(濾液)
S:流動物
RC:残渣汚泥
P1~P3:第1~第3ポンプ
R11:第1引き抜きルート
R12:第2引き抜きルート
R2:投入ルート
R3:循環ルート
R4:濾液ルート
R5:回収ルート
V1~V9:バルブ
T1:第一分岐部
T2:第二分岐部

図1
図2
図3
図4