(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】残留塩素検出装置及び残留塩素検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20220615BHJP
G01N 27/26 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
G01N27/416 316Z
G01N27/26 371F
G01N27/26 371A
G01N27/26 371D
(21)【出願番号】P 2018146403
(22)【出願日】2018-08-03
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000116633
【氏名又は名称】愛知時計電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】五明 智夫
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 慎司
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-154758(JP,A)
【文献】特開2016-114376(JP,A)
【文献】特開平05-164717(JP,A)
【文献】山本耕司,貯水槽における残留塩素の挙動,生活衛生,1983年,27-4,212-215
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
G01N 33/18
C02F 1/50
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道水の遊離残留塩素を検出する残留塩素検出装置であって、
水道管から排出される水道水から前記遊離残留塩素の除去処理を行う除去処理部と、
イオン化傾向が異なる1対の電極と、
前記除去処理が済んだ処理済み水道水に前記1対の電極が浸漬された状態でそれら電極間に生じる第1電圧と、前記除去処理が行われていない未処理水道水に前記1対の電極が浸漬された状態でそれら電極間に生じる第2電圧とを検出する計測部と、
前記第2電圧から水道水の前記遊離残留塩素以外の含有物による電圧成分を、前記第1電圧に基づいて差し引いて差分電圧を求める差分演算部と、
を備える残留塩素検出装置。
【請求項2】
前記除去処理部は、前記水道管から排出される水道水が予め定められた基準時間以上、貯留される貯留部を有し、前記基準時間以上の貯留によって前記除去処理が行われ、
前記1対の電極が前記貯留部に固定された状態で前記第1電圧及び前記第2電圧が検出される請求項1に記載の残留塩素検出装置。
【請求項3】
前記差分演算部は、前記第2電圧と、その第2電圧の検出の直前に検出される第1電圧とから前記差分電圧を求める請求項2に記載の残留塩素検出装置。
【請求項4】
前記貯留部から水道水を排水しかつ排水用バルブにて開閉される排水口と、
前記貯留部へと水道水を給水しかつ給水用バルブにて開閉される給水口と、
前記処理済み水道水から前記未処理水道水に入れ替えるときを含めて前記貯留部が常に略満水状態に維持されるように、前記排水用バルブ及び前記給水用バルブを制御する弁制御部とを備える請求項2又は3に記載の残留塩素検出装置。
【請求項5】
前記給水用バルブが全開状態での前記給水口からの給水量が、前記排水用バルブが全開状態での前記排水口からの排水量より大きくなっていると共に、
前記弁制御部は、前記貯留部内を前記処理済み水道水から前記未処理水道水に入れ替えるときに、前記排水用バルブ及び前記給水用バルブを共に全開にする請求項4に記載の残留塩素検出装置。
【請求項6】
前記貯留部内の水道水を撹拌する撹拌機を有する請求項2乃至5の何れか1の請求項に記載の残留塩素検出装置。
【請求項7】
前記貯留部の上面が開口している請求項2乃至6の何れか1の請求項に記載の残留塩素検出装置。
【請求項8】
水道水の遊離残留塩素を検出する残留塩素検出方法であって、
水道管から排出される水道水から前記遊離残留塩素の除去処理を行った処理済み水道水にイオン化傾向が異なる1対の電極を浸漬してそれら電極間に生じる第1電圧を検出すると共に、前記除去処理が行われていない未処理水道水に前記1対の電極を浸漬してそれら電極間に生じる第2電圧を検出し、
前記第2電圧から、水道水の前記遊離残留塩素以外の含有物による電圧成分を前記第1電圧に基づいて差し引いて差分電圧を求め、その差分電圧を利用して前記遊離残留塩素を検出する残留塩素検出方法。
【請求項9】
前記水道管から排出される水道水を予め定められた基準時間以上、貯留部に貯留することで前記除去処理を行い、
前記1対の電極を前記貯留部に固定して前記第1電圧と前記第2電圧とを検出する請求項8に記載の残留塩素検出方法。
【請求項10】
前記第2電圧と、その第2電圧の検出の直前に検出される第1電圧とから前記差分電圧を求める請求項9に記載の残留塩素検出方法。
【請求項11】
前記処理済み水道水から前記未処理水道水に入れ替えるときを含めて前記貯留部を常に略満水状態に維持する請求項9又は10に記載の残留塩素検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水道水の遊離残留塩素を検出する残留塩素検出装置及び残留塩素検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の残留塩素検出方法として、イオン化傾向が異なる1対の電極を水道水に浸漬してそれら電極間に生じる電圧に基づいて遊離残留塩素を検出する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-114376号公報(段落[0008])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の残留塩素検出方法では、水道水の遊離残留塩素以外の含有物の影響を受け難くして検出精度を高くする技術が開発されている。しかしながら、その効果は十分ではないので、従来より高い精度で遊離残留塩素を検出することが可能な技術の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、水道水の遊離残留塩素を検出する残留塩素検出装置であって、水道管から排出される水道水から前記遊離残留塩素の除去処理を行う除去処理部と、イオン化傾向が異なる1対の電極と、前記除去処理が済んだ処理済み水道水に前記1対の電極が浸漬された状態でそれら電極間に生じる第1電圧と、前記除去処理が行われていない未処理水道水に前記1対の電極が浸漬された状態でそれら電極間に生じる第2電圧とを検出する計測部と、前記第2電圧から水道水の前記遊離残留塩素以外の含有物による電圧成分を、前記第1電圧に基づいて差し引いて差分電圧を求める差分演算部と、を備える残留塩素検出装置である。
【0006】
請求項2の発明は、前記除去処理部は、前記水道管から排出される水道水が予め定められた基準時間以上、貯留される貯留部を有し、前記基準時間以上の貯留によって前記除去処理が行われ、前記1対の電極が前記貯留部に固定された状態で前記第1電圧及び前記第2電圧が検出される請求項1に記載の残留塩素検出装置である。
【0007】
請求項3の発明は、前記差分演算部は、前記第2電圧と、その第2電圧の検出の直前に検出される第1電圧とから前記差分電圧を求める請求項2に記載の残留塩素検出装置である。
【0008】
請求項4の発明は、前記貯留部から水道水を排水しかつ排水用バルブにて開閉される排水口と、前記貯留部へと水道水を給水しかつ給水用バルブにて開閉される給水口と、前記処理済み水道水から前記未処理水道水に入れ替えるときを含めて前記貯留部が常に略満水状態に維持されるように、前記排水用バルブ及び前記給水用バルブを制御する弁制御部とを備える請求項2又は3に記載の残留塩素検出装置である。
【0009】
請求項5の発明は、前記給水用バルブが全開状態での前記給水口からの給水量が、前記排水用バルブが全開状態での前記排水口からの排水量より大きくなっていると共に、前記弁制御部は、前記貯留部内を前記処理済み水道水から前記未処理水道水に入れ替えるときに、前記排水用バルブ及び前記給水用バルブを共に全開にする請求項4に記載の残留塩素検出装置である。
【0010】
請求項6の発明は、前記貯留部内の水道水を撹拌する撹拌機を有する請求項2乃至5の何れか1の請求項に記載の残留塩素検出装置である。
【0011】
請求項7の発明は、前記貯留部の上面が開口している請求項2乃至6の何れか1の請求項に記載の残留塩素検出装置である。
【0012】
請求項8の発明は、水道水の遊離残留塩素を検出する残留塩素検出方法であって、水道管から排出される水道水から前記遊離残留塩素の除去処理を行った処理済み水道水にイオン化傾向が異なる1対の電極を浸漬してそれら電極間に生じる第1電圧を検出すると共に、前記除去処理が行われていない未処理水道水に前記1対の電極を浸漬してそれら電極間に生じる第2電圧を検出し、前記第2電圧から、水道水の前記遊離残留塩素以外の含有物による電圧成分を前記第1電圧に基づいて差し引いて差分電圧を求め、その差分電圧を利用して前記遊離残留塩素を検出する残留塩素検出方法である。
【0013】
請求項9の発明は、前記水道管から排出される水道水を予め定められた基準時間以上、貯留部に貯留することで前記除去処理を行い、前記1対の電極を前記貯留部に固定して前記第1電圧と前記第2電圧とを検出する請求項8に記載の残留塩素検出方法である。
【0014】
請求項10の発明は、前記第2電圧と、その第2電圧の検出の直前に検出される第1電圧とから前記差分電圧を求める請求項9に記載の残留塩素検出方法である。
【0015】
請求項11の発明は、前記処理済み水道水から前記未処理水道水に入れ替えるときを含めて前記貯留部を常に略満水状態に維持する請求項9又は10に記載の残留塩素検出方法である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1及び8の発明では、遊離残留塩素の除去処理済みの水道水に1対の電極を浸漬して第1電圧を検出する。そして、未処理水道水に1対の電極を浸漬して検出される第2電圧から遊離残留塩素以外の含有物による電圧成分を第1電圧に基づいて差し引き、差分電圧を求めるので、その差分電圧を利用して遊離残留塩素を従来より高い精度で検出することができる。
【0017】
請求項2及び9の発明では、処理済み水道水及び未処理水道水が貯留される貯留部に1対の電極が固定されるので、第1電圧及び第2電圧の検出条件の均一化が容易になり、このことによっても遊離残留塩素を高い精度で検出することができる。
【0018】
上記差分電圧は、第2電圧とその直後に検出される第1電圧とから求めてもよいし、請求項3及び10の発明のように、第2電圧とその直前に検出される第1電圧とから求めてもよい。前者の場合には、第1電圧及び第2電圧の検出の間に、遊離残留塩素を除去するための除去時間を要し、後者の場合は、水道水の入れ替え時間を要する。通常は、除去時間に比べて入れ替え時間を短くすることができるので、請求項3及び10の発明によれば、第1電圧と第2電圧の検出条件の均一化が容易になる。
【0019】
電極は、空気に触れているか水に触れているかで表面状態が相違し、それが電圧検出の外乱因子になり得る。これに対し、請求項4及び11の発明では、処理済み水道水から未処理水道水に入れ替えるときを含めて貯留部が常に略満水状態に維持されので、第1電圧と第2電圧の外乱を抑えた検出が可能になる。
【0020】
請求項5の構成によれば、排水用バルブ及び給水用バルブを共に全開するだけで貯留部を満水状態に維持して処理済み水道水から未処理水道水に入れ替えることができる。
【0021】
請求項6の構成によれば、攪拌機によって貯留部内の水道水を撹拌することで、残留塩素検出装置の除去の促進を図ることができる。なお、電圧の検出時には、攪拌機を止めて水道水内の流れを止めることが好ましい。
【0022】
請求項7の構成では、貯留部の上面が開口しているので、貯留している水道水が空気に触れて遊離残留塩素の除去が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
以下、
図1~
図3に示された残留塩素検出装置10及び残留塩素検出方法の実施形態について説明する。
図1には、本実施形態の残留塩素検出装置10が概念的に示されている。この残留塩素検出装置10には、上面が開放した槽構造の貯留部11が備えられている。貯留部11の上方には、水道管12の排出口が配置されている。その水道管12は水道管網の幹管である上水道管13から分岐されていて、水道管12の排出口が貯留部11にとっての給水口12Aになっている。また、給水口12Aは、給水用バルブ12Vによって開閉される。給水用バルブ12Vは、例えばソレノイドを駆動源として備え、全開状態と全閉状態とに切り替えられる。
【0025】
貯留部11の下部には排水口11Aが備えられ、排水用バルブ11Vにて開閉されるようになっている。排水用バルブ11Vもソレノイドを駆動源として備え、全開状態と全閉状態とに切り替えられる。また、貯留部11の満水状態で排水用バルブ11Vが開いたときの排水口11Aからの排水量より、給水用バルブ12Vが開いたときの給水口12Aからの給水量の方が僅かに多い設定になっている。なお、給水用バルブ12V及び排水用バルブ11Vの一方又は両方を、流量制御可能な流量制御弁としてもよい。
【0026】
貯留部11の下方には、ドレインパン14が備えられている。そして、貯留部11からオーバーフローする水道水と排水口11Aから排出される水道水とがドレインパン14に受け入れられる。なお、ドレインパン14に受け入れられた水道水は、例えばドレインパン14の排出口14Aから下水等に排出される。
【0027】
貯留部11には、撹拌機15が備えられている。撹拌機15は、例えば、モータを駆動源として備え、満水状態の貯留部11内の水道水に水没する回転翼15Aを有する。また、駆動源は、図示しないブラケットにより貯留部11の上方に配置されている。そして、例えば水道水を泡立てない程度の低速で回転翼15Aが回転して水道水を撹拌する。
【0028】
貯留部11には、1対の電極16A,16Bが固定され、貯留部11内の水道水に浸漬される。それら電極16A,16Bは、互いにイオン化傾向が異なる金属であって、一方の電極16Aは、遊離残留塩素と反応し易い金属(例えば、白金、イリジウム、金又はパラジウム)で構成される一方、他方の電極16Bは、遊離残留塩素と反応し難い金属(例えば、SUS316、SUS316L、SUS430、タングステン、タンタル、チタン、モリブデン又はジルコニウム)で構成されている。
【0029】
1対の電極16A,16Bは、計測部17に接続されていて、電極16A,16Bの間に発生する電圧が計測部17によって検出される。
【0030】
なお、計測部17は、電極16A,16Bの間に接続された抵抗素子を備えて、その抵抗素子の両端子間の電圧を検出する構成になっているが、電極16A,16Bの間の通電によって水道水の遊離残留塩素以外の含有物が消失しないようにするために、電極16A,16Bの間にスイッチを備えて、電圧検出時以外は電極16A,16Bの間が断絶されるようにしてもよい。
【0031】
計測部17による電圧検出のタイミング及び、前述の撹拌機15、給水用バルブ12V、排水用バルブ11Vの動作のタイミングは制御部20にて制御される。その制御部20は、マイコンと記憶部とを有し、記憶部には
図2及び
図3に示した制御プログラムPG1が記憶されている。そして、残留塩素検出装置10が起動されると、制御プログラムPG1がマイコンにて実行され、以下のように各部位が制御される。
【0032】
即ち、
図2に示すように、残留塩素検出装置10の起動に伴って制御プログラムPG1が実行されて、その貯留処理(S11)が実行される。貯留処理(S11)が実行されると、排水用バルブ11Vが閉じられ、給水用バルブ12Vが開かれた状態が、予め定められた第1給水時間に亘って維持され、その後、両バルブ11V,12Vが閉じた状態にされる。これにより、貯留部11が満水状態にされる。
【0033】
なお、上記したように給水時間に基づいて貯留部11を満水にする以外の構成として、貯留部11の上端部に1対の検知端子を設け、それら検知端子間が水道水にて短絡されたか否かによって貯留部11が満水になったか否かを検出し、給水用バルブ12Vを閉じるようにしてもよい。
【0034】
次いで、メインタイマーによる時間計測がスタートされ(S12)、撹拌機15が起動される(S13)。そして、メインタイマーが所定の第1チェック時間(例えば、例えば、スタートから22時間)を計測するまで撹拌機15が連続運転される(S14のNOのループ)。これにより、貯留部11に貯留された水道水の遊離残留塩素の除去処理が完了し、貯留部11が処理済み水道水で満たされ、その処理済み水道水に1対の電極16A,16Bが浸漬された状態になる。
【0035】
なお、撹拌機15を設けずに、貯留部11内の水道水を放置してもよいが、撹拌機15で撹拌した方が遊離残留塩素の除去処理が促進される。また、貯留部11の上面は閉じていてもよいが、本実施形態の貯留部11のように上面が開口していれば、貯留している水道水が空気に触れて遊離残留塩素の除去処理が促進される。さらに、遊離残留塩素の除去処理の促進のために、遊離残留塩素と結合し易くかつ、それ以外の水道水の含有物と結合し難い物質を水道水に添加してもよい。そのような物質としては、例えば、遊離残留塩素と結合して腐食し易い金属(鉄、鉄合金等)が挙げられる。また、そのような腐食し易い金属で撹拌機15の回転翼15Aを構成してもよい。ここで、金属イオンの溶解度は、非金属物質のイオンの溶解度に比べて非常に小さいので金属の酸化生成物による前記電圧計測への影響は小さいと推測される。また、遊離残留塩素の除去処理の促進が必要ではないときには回転翼15Aに対するカソード防食を行い、必要であるときにのみカソード防食を解除する構成としてもよい。
【0036】
メインタイマーが第1チェック時間を計測し(S14でYES)、撹拌機15が停止されたら(S15)、メインタイマーが所定の第2チェック時間(例えば、第1チェック時間から15分)を計測するまで放置される(S16のNOのループ)。これにより、貯留部11内の処理済み水道水内が静水化される。
【0037】
メインタイマーが第2チェック時間を計測したら(S16でYES)、処理済み水道水に浸漬されている1対の電極16A,16Bの間の電圧が第1電圧E1として検出される(S17)。この電圧検出は、例えば、所定間隔(例えば、1秒)で複数回(例えば、10回)行われて、その平均が第1電圧E1として記憶される。
【0038】
第1電圧E1の検出後、水入替処理(S18)が行われる。水入替処理(S18)では、給水用バルブ12Vと排水用バルブ11Vとが共に開かれた状態が、第2給水時間に亘って維持され、その後、両バルブ11V,12Vが閉じられる。これにより、貯留部11内の水道水が、遊離残留塩素の除去処理が行われていない未処理水道水に入れ替えられ、その未処理水道水に1対の電極16A,16Bが浸漬された状態になる。
【0039】
ここで、第2給水時間は、例えば約30分程度であり、実験的に求められる。具体的には、例えば、貯留部11内の水道水を着色し、給水用バルブ12Vと排水用バルブ11Vとを共に開いて、貯留部11内の水道水が無色透明になるまでの時間が第2給水時間として実験的に求められる。
【0040】
また、上述したように給水用バルブ12Vを通過する給水量の方が、排水用バルブ11Vを通過する排水量より多いので、貯留部11から水道水がオーバーフローした状態で水道水の入れ替えが行われる。これにより、貯留部11は、常に満水状態に維持され、電極16A,16Bの浸漬状態が一定に維持される。
【0041】
次いで、メインタイマーが第3チェック時間(例えば、水入替処理(S18)後から15分)を計測するまで待機して貯留部11内の未処理水道水の静水化を待ってから(S19のNOのループ)、未処理水道水に浸漬している1対の電極16A,16Bの間の電圧が第2電圧E2として検出される(S20)。
【0042】
次いで、第2電圧E2から第1電圧E1を差し引いた値の絶対値が差分電圧ΔEとして演算される(S21)。そして、その差分電圧ΔEが、予め設定された基準差分電圧L1以上であるか否かによって、水道水の遊離残留塩素が、法律で規定される基準濃度以上(例えば、0.1[ppm]以上)になっているか否かが判定され(S22)、基準濃度以上でなかった場合には、例えば遠隔地の検出本体部に異常の報知を行う(S23)。そして、メインタイマーが停止されかつリセットされて(S24)、上記したステップS12に戻り、上記動作が繰り返される。
【0043】
なお、本実施形態では、ステップS21を実行している制御部20のマイコンが、特許請求の範囲に記載された「差分演算部」に相当する。また、本実施形態では、遊離残留塩素が基準濃度以上であるか否かを検出していたが、差分電圧ΔEと予め設定されたデータテーブルとから遊離残留塩素の濃度を検出してもよいし、差分電圧ΔEの値そのものを、遊離残留塩素の濃度の代用値である検出結果として出力又は記憶する構成としてもよい。さらには、第1電圧E1と第2電圧E2とを検出本体部に送信し、検出本体部で差分電圧ΔEを求めてもよい、その場合、検出本体部が「差分演算部」に相当し、残留塩素検出装置10と検出本体部とから特許請求の範囲に記載された「残留塩素検出装置」が構成されることになる。
【0044】
本実施形態の残留塩素検出装置10及び残留塩素検出方法に関する説明は以上である。次にそれらの作用効果について説明する。上記したように本実施形態の残留塩素検出装置10及び残留塩素検出方法では、遊離残留塩素の除去処理を行った処理済み水道水に1対の電極16A,16Bを浸漬して第1電圧E1を検出する。そして、未処理水道水に1対の電極16A,16Bを浸漬して検出される第2電圧E2から遊離残留塩素以外の含有物による電圧成分を第1電圧E1に基づいて差し引き、差分電圧ΔEを求めるので、その差分電圧ΔEを利用して遊離残留塩素を従来より高い精度で検出することができる。
【0045】
ここで、1対の電極16A,16Bは貯留部11に固定されているので、第1電圧E1と第2電圧E2の検出条件の均一化が容易になる。また、1対の電極16A,16Bは空気に触れているか水に触れているかによって表面状態が相違し、それが電圧検出の外乱因子になり得るが、本実施形態では、処理済み水道水と未処理水道水との入れ替え時も含めて貯留部11が常に略満水状態に維持されるので、外乱を抑えた電圧検出が可能になる。また、水道水の流動も電圧検出の外乱因子になり得るが、本実施形態では水道水を静水化した状態で電圧を検出するので、このことによっても外乱を抑えた電圧検出が可能になる。
【0046】
なお、本実施形態では、第2電圧E2とその直前に検出された第1電圧E1とから差分電圧ΔEを求めていたが、第2電圧E2とその直後に検出された第1電圧E1とから差分電圧ΔEを求めてもよい。その場合には、第1電圧E1及び第2電圧E2の検出の間に遊離残留塩素を除去するための長い処理時間を要することになるが、本実施形態のように、第2電圧E2とその直前に検出された第1電圧E1とから差分電圧ΔEを求めた場合には、短時間で第1電圧E1と第2電圧E2の両方を検出することができ、検出条件の均一化が容易になる。
【0047】
[第2実施形態]
本実施形態の残留塩素検出装置10Vは、
図4に示されており、主として貯留部30の構造が第1実施形態と異なる。即ち、本実施形態の残留塩素検出装置10Vは、上水道管13から分岐した分岐路31の上流部と下流部とに給水用バルブ12Vと排水用バルブ11Vとを設けて、それらの間部分を貯留部30としたものである。また、電極16A,16Bは、貯留部30を貫通した状態に固定されている。なお、本実施形態の残留塩素検出装置10Vには、撹拌機15,ドレインパン14は設けられていない。その他の構成に関しては第1実施形態と同じである。本実施形態の構成によっても第1実施形態と同様に作用効果を奏する。
【0048】
[第3実施形態]
本実施形態の残留塩素検出装置10Wは、
図5に示されており、第2実施形態の変形例であって、貯留部30を貫通する1対の電極16A,16Bとは別に、上水道管13を貫通する1対の電極16C,16Dを備える。そして、第1電圧E1を貯留部30に固定の電極16A,16Bで検出し、第2電圧E2を上水道管13に固定の電極16C,16Dで検出する。また、貯留部30に固定の電極16A,16Bと、上水道管13に固定の電極16C,16Dとを同じ水道水に浸漬して電圧を検出したときの差に基づいて、補正係数を実験的に求めておき、制御部20は、その補正係数で第1電圧E1を補正したものを第2電圧E2から差し引いて差分電圧ΔEを演算するようになっている。その他の構成は、第2実施形態と同様であり、本実施形態の構成によっても第1及び第2の実施形態と同様に作用効果を奏する。
【0049】
[他の実施形態]
(1)前記第1実施形態の残留塩素検出装置10において、ステップS20にて第2電圧E2を検出した後、メインタイマーが24時間を計測するまで待って停止及びリセットし(S24)、上記したステップS12に戻る構成にして、第1電圧E1及び第2電圧E2が、それぞれ毎日、同じ時刻に検出されるようにしてもよい。また、貯留部11及び電極16A,16Bを複数設けておき、第1電圧E1及び第2電圧E2が、それぞれ毎日、所定の間隔を空けて複数回に亘って検出されるようにしてもよい。
【0050】
(2)第2及び第3の実施形態では、
図4及び
図5に示されているように、分岐路31のうち貯留部30になっている部分の断面がそれ以外の部分の断面より大きくなっているが、貯留部30全体を均一径のパイプ構造とし、貯留部30が分岐路31の両端部と同じパイプ構造になっていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10,10V,10W 残留塩素検出装置
11,30 貯留部
11A 排水口
11V 排水用バルブ
12 水道管
12A 給水口
12V 給水用バルブ
13 上水道管
15 撹拌機
16A~16D 電極
17 計測部
20 制御部(差分演算部、弁制御部)
E1 第1電圧
E2 第2電圧
ΔE 差分電圧