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特許7089435表面処理カーボンブラックの製造方法、およびゴム組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】表面処理カーボンブラックの製造方法、およびゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/48 20060101AFI20220615BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20220615BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20220615BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20220615BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
C09C1/48
C08J3/20 B CEQ
C08L21/00
C08K9/04
C09C3/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018150938
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2020026461
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堂籠 健斗
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-14151(JP,A)
【文献】国際公開第2009/084714(WO,A1)
【文献】特開2016-011373(JP,A)
【文献】特表2007-513233(JP,A)
【文献】特開2018-62621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00-3/12
C08J 3/20
C08L 21/00
C08K 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックが水に分散したカーボンブラック含有スラリー水溶液と、ジヒドラジド化合物を混合した後、前記水を除去する工程(工程(i))を含むことを特徴とする表面処理カーボンブラックの製造方法。
【請求項2】
前記工程(i)において、前記カーボンブラック含有スラリー水溶液と前記ジヒドラジド化合物を60℃以上の条件下で混合することを特徴とする請求項1記載の表面処理カーボンブラックの製造方法。
【請求項3】
前記カーボンブラック含有スラリー水溶液中、前記カーボンブラックの割合が、1~20重量%であることを特徴とする請求項1または2記載の表面処理カーボンブラックの製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の表面処理カーボンブラックの製造方法で得られた表面処理カーボンブラックと、ゴムを混練する工程(工程(ii))を含むことを特徴とするゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
前記ジヒドラジド化合物が、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、0.01~10重量部であることを特徴とする請求項4記載のゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理カーボンブラックの製造方法、およびゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム組成物を原料とした空気入りタイヤの低燃費性や低発熱性等の特性の向上を目的として、ゴム組成物にヒドラジド化合物を用いることが知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-95663号公報
【文献】特表2014-501827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、市場では、ゴム組成物において、よりスコーチ性(加工性)に優れ、かつ当該ゴム組成物を原料としたタイヤ(加硫ゴム)において、より低発熱性を有するものが求められているが、上記の特許文献のようなゴム組成物から得られた加硫ゴムは、当該特性に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、低発熱性を有する加硫ゴムが得られ、かつスコーチ性の低下が抑制できる(耐スコーチ性を有する)ゴム組成物が得られる、表面処理カーボンブラックの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、カーボンブラックが水に分散したカーボンブラック含有スラリー水溶液と、ジヒドラジド化合物を混合した後、前記水を除去する工程(工程(i))を含む表面処理カーボンブラックの製造方法、に関する。
【0007】
また、本発明は、前記表面処理カーボンブラックの製造方法で得られた表面処理カーボンブラックと、ゴムを混練する工程(工程(ii))を含むゴム組成物の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る表面処理カーボンブラックの製造方法およびゴム組成物の製造方法における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。但し、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0009】
本発明の表面処理カーボンブラックの製造方法は、カーボンブラックが水に分散したカーボンブラック含有スラリー水溶液と、ジヒドラジド化合物を混合した後、前記水を除去する工程(工程(i))を含む。カーボンブラック含有スラリー水溶液とジヒドラジド化合物を混合することで、ジヒドラジド化合物がカーボンブラックの表面(当該表面に存在する数少ない官能基(例えば、カルボキシル基など))に効率よく付着(結合)できるものと推定される。とくに、一定温度以上の条件下で、上記の混合をすることにより、ジヒドラジド化合物が十分に溶解できるため、カーボンブラックとジヒドラジド化合物の接触効率が上がることにより、ジヒドラジド化合物がさらに効率よく付着(結合)でき、ジヒドラジド化合物が付着(結合)したカーボンブラック含有スラリーが生成できると推定される。得られたジヒドラジド化合物が付着(結合)したカーボンブラック含有スラリーは、水を除去することにより、表面処理カーボンブラックが製造できる。
【0010】
このような表面処理カーボンブラックをゴム組成物の原料として用いることで、カーボンブラック表面に存在する前記ジヒドラジド化合物の炭素-炭素二重結合の部分が、ゴム成分(ポリマー)のラジカルとの反応や硫黄架橋に伴う反応によりゴム成分(ポリマー)と結合することができると推定されるため、得られる加硫ゴムは優れた低発熱性を有する。
【0011】
上記のような表面処理カーボンブラックをゴム組成物の原料として用いることで、未反応のジヒドラジド化合物が加硫反応を促進しないであることが推定されるため、ゴム組成物のスコーチ性の低下(悪化)を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<表面処理カーボンブラックの製造方法>
本発明の表面処理カーボンブラックの製造方法は、カーボンブラックが水に分散したカーボンブラック含有スラリー水溶液と、ジヒドラジド化合物を混合した後、前記水を除去する工程(工程(i))を含む。
【0013】
前記カーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックは、通常のゴム工業において、そのハンドリング性を考慮して造粒された、造粒カーボンブラックであってもよく、未造粒カーボンブラックであってもよい。カーボンブラックは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0014】
前記カーボンブラックは、加硫ゴムの補強性を向上させる観点から、DBP吸収量(ジブチルフタレート吸収量)が、80cm/100g以上であることが好ましく、110cm/100g以上であることがより好ましく、そして、180cm/100g以下であることが好ましく、140cm/100g以下であることがより好ましい。
【0015】
前記カーボンブラックは、加硫ゴムの低発熱性を向上させる観点から、窒素吸着比表面積が、30m/g以上であることが好ましく、50m/g以上であることがより好ましく、100m/g以上であることがさらに好ましく、そして、250m/g以下であることが好ましく、200m/g以下であることがより好ましく、180m/g以下であることがさらに好ましい。
【0016】
前記水は、イオン交換水、蒸留水、工業用水などの水を主成分とする媒体であるが、例えば、有機溶媒を含有する水であってもよい。
【0017】
前記カーボンブラック含有スラリー水溶液は、通常、前記カーボンブラックおよび前記水を混合することによって得られる。当該混合の方法としては、例えば、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機を使用してカーボンブラックを分散させる方法が挙げられる。必要に応じて、混合の際に分散機などの混合系全体を加温してもよい。なお、前記カーボンブラック含有スラリー水溶液は、後述するジヒドラジド化合物を添加して調製してもよい。
【0018】
前記カーボンブラック含有スラリー水溶液中、前記カーボンブラックの割合が、1~20重量%であることが好ましい。前記カーボンブラック含有スラリー水溶液中、前記カーボンブラックの割合は、水を除去する工程の作業効率を高める観点から、2重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましい。また、前記カーボンブラック含有スラリー水溶液中、前記カーボンブラックの割合は、カーボンブラック含有スラリー水溶液の粘度を低下させて攪拌効率を高める観点から、15重量%以下であることがより好ましく、12重量%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
前記ジヒドラジド化合物は、ヒドラジド基(-CONHNH)を分子中に2つ有する化合物であり、例えば、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、エイコサン二酸ジヒドラジド、7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジドなどが挙げられる。前記ジヒドラジド化合物は、これらの中でも、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドが好ましく、イソフタル酸ジヒドラジドがより好ましい。前記ジヒドラジド化合物は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0020】
前記カーボンブラック含有スラリー水溶液と、前記ジヒドラジド化合物を混合する方法は、例えば、上述した、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機を用いた方法のほか、スターラー、シェイカーなどの攪拌機を用いた方法などが挙げられる。
【0021】
前記ジヒドラジド化合物の使用量は、加硫ゴムの低発熱性を向上させる観点から、前記カーボンブラック100重量部に対して、0.02重量部以上であることが好ましく、0.05重量部以上であることがより好ましく、0.1重量部以上であることがさらに好ましく、0.2重量部以上であることがよりさらに好ましく、そして、ゴム組成物のスコーチ性の低下(悪化)を抑制(防止)する観点から、20重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることがより好ましく、5重量部以下であることがさらに好ましく、3重量部以下であることがよりさらに好ましい。
【0022】
前記カーボンブラック含有スラリー水溶液と前記ジヒドラジド化合物は、60℃以上の条件下で混合することが好ましい。また、前記カーボンブラック含有スラリー水溶液と前記ジヒドラジド化合物は、前記カーボンブラック含有スラリー水溶液中に前記ジヒドラジド化合物を十分に溶解させて、カーボンブラックとジヒドラジド化合物の接触効率を高める観点から、70℃以上の条件下で混合することがより好ましく、80℃以上の条件下で混合することがさらに好ましく、そして、安全性の観点から、前記水の沸点以下の条件下で混合することが好ましい。なお、上記の混合における処理時間は、使用するカーボンブラックの量などに依存するため一概に言えないが、通常、3.0~5.0分程度である。
【0023】
前記水を除去する方法は、前記工程(i)において、表面処理カーボンブラック(表面処理カーボンブラックの紛体)が得られる方法であれば、何ら制限されない。前記水を除去する方法は、通常、水の除去効率の観点から、濾過処理などによる脱水方法が好ましい。また、濾過処理などによって得られる表面処理カーボンブラックは、水分をより除去するため、乾燥処理することが好ましい。乾燥処理は、特に限定されず、例えば、熱風乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥などが挙げられる。
【0024】
<ゴム組成物の製造方法>
本発明のゴム組成物の製造方法は、前記表面処理カーボンブラックの製造方法で得られた表面処理カーボンブラックと、ゴムを混練する工程(工程(ii))を含む。
【0025】
前記ゴム組成物の原料としては、通常ゴム業界で使用される、ゴム、各種配合剤が挙げられる。
【0026】
前記ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)や、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などの合成ジエン系ゴムが挙げられる。ゴムは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0027】
前記ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、前記ジヒドラジド化合物は、加硫ゴムの低発熱性を向上させる観点から、0.01重量部以上であることが好ましく、0.03重量部以上であることがより好ましく、0.05重量部以上であることがさらに好ましく、0.1重量部以上であることがよりさらに好ましく、そして、ゴム組成物のスコーチ性の低下(悪化)を抑制(防止)する観点から、10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましく、3重量部以下であることがさらに好ましく、1.5重量部以下であることがよりさらに好ましい。
【0028】
前記ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、前記表面処理カーボンブラックは、加硫ゴムの補強性を向上させる観点から、30~100重量部であることが好ましく、35~80重量部であることがより好ましく、40~70重量部であることがさらに好ましい。
【0029】
前記各種配合剤としては、例えば、硫黄系加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛、メチレン受容体およびメチレン供与体、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、有機過酸化物、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などが挙げられる。
【0030】
前記硫黄系加硫剤としての硫黄は、通常のゴム用硫黄であればよく、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。硫黄系加硫剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0031】
前記硫黄の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して0.3~6.5重量部であることが好ましい。硫黄の含有量が0.3重量部未満であると、加硫ゴムの架橋密度が不足してゴム強度などが低下し、6.5重量部を超えると、特に耐熱性および耐久性の両方が悪化する。加硫ゴムのゴム強度を良好に確保し、耐熱性と耐久性をより向上するためには、硫黄の含有量がゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して1.0~5.5重量部であることがより好ましい。
【0032】
前記加硫促進剤としては、通常のゴム用加硫促進剤であればよく、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などが挙げられる。加硫促進剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0033】
前記加硫促進剤の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して1~5重量部であることが好ましい。
【0034】
前記老化防止剤としては、通常のゴム用老化防止剤であればよく、芳香族アミン系老化防止剤、アミン-ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などが挙げられる。老化防止剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0035】
前記老化防止剤の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して1~5重量部であることが好ましい。
【0036】
前記表面処理カーボンブラック、前記ゴム、および前記各種配合剤の配合(添加)の方法は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練する方法が挙げられる。
【0037】
前記混練する方法は特に限定されないが、例えば、硫黄系加硫剤および加硫促進剤などの加硫系成分以外の成分を、任意の順序で添加し混練する方法、同時に添加して混練する方法、また、全成分を同時に添加して混練する方法などが挙げられる。また、混練する回数は、1回または複数回であってもよい。混練する時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、2~5分程度とすればよい。また、混練機の排出温度は、120~170℃とすることが好ましく、120~150℃とすることがより好ましい。なお、混練機の排出温度は、前記加硫系成分を含む場合、80~110℃とすることが好ましく、80~100℃とすることがより好ましい。
【0038】
本発明の表面処理カーボンブラックを含むゴム組成物は、耐スコーチ性を有する。また、当該ゴム組成物から得られた加硫ゴムは、低発熱性を有するため、空気入りタイヤ用に適している。
【実施例
【0039】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0040】
(使用原料)
a)ジヒドラジド化合物:イソフタル酸ジヒドラジド(日本ファインケム社製)
b)カーボンブラック:「シースト6(ISAF)」(窒素吸着比表面積119m/g、DBP吸収量114cm/100g)(東海カーボン社製)
c)天然ゴム:「RSS#3」
d)酸化亜鉛:「酸化亜鉛2種」(三井金属鉱業社製)
e)ステアリン酸:「ビーズステアリン酸」(日油社製)
f)老化防止剤:N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、「アンチゲン6C」(住友化学社製)
g)硫黄:「5%油入微粉末硫黄」(鶴見化学工業社製)
h)加硫促進剤(A):N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、「サンセラーCM-G」(三新化学工業社製)
i)加硫促進剤(B):N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、「ノクセラーNS-P」(大内新興化学社製)
【0041】
<実施例1>
<工程(i):表面処理カーボンブラックの製造>
水3600gに、カーボンブラック(「シースト6」(ISAF)、東海カーボン社製)を400g添加し、PRIMIX社製ロボミックスを使用してカーボンブラックを分散させながら70℃まで昇温した。さらに、カーボンブラック/ジヒドラジド化合物の重量比が表1記載の重量比となるように、ジヒドラジド化合物として、イソフタル酸ジヒドラジド0.4gを添加して、攪拌してスラリー混合物を調製した(該PRIMIX社製ロボミックス条件:回転数が9,000rpm、処理時間が30分、処理温度が70℃)。次いで、得られたスラリー混合物を、濾紙を用いて濾過処理して脱水した後、得られた濾過物を一晩真空乾燥(70℃)して、表面処理カーボンブラック1を製造した。なお、表1中のカーボンブラックおよびジヒドラジド化合物の配合比率は、表2記載のゴム組成物に含まれるゴム成分の全量を100重量部としたときの重量部(phr)で示す。
【0042】
<工程(ii):ゴム組成物および未加硫ゴム組成物の製造>
上記で得られた表面処理カーボンブラック1と、表2に記載の各原料(硫黄と加硫促進剤を除く成分)を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:3分、排出温度:150℃)することにより、ゴム組成物を製造した。次いで、得られたゴム組成物に、表2に記載の硫黄、加硫促進剤(A)および加硫促進剤(B)を加え、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:1分、排出温度:90℃)することにより、未加硫ゴム組成物を製造した。なお、表2中の配合比率は、ゴム組成物に含まれるゴム成分の全量を100重量部としたときの重量部(phr)で示す。また、表2中の表面処理カーボンブラックの重量部は、カーボンブラックとジヒドラジド化合物の合計重量のみを表す。
【0043】
<実施例2~4>
<工程(i):表面処理カーボンブラックの製造>
カーボンブラック/ジヒドラジド化合物の重量比を、表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、表面処理カーボンブラック2~4を製造した。
【0044】
<工程(ii):ゴム組成物および未加硫ゴム組成物の製造>
表面処理カーボンブラックの種類と配合量を表2に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、ゴム組成物および未加硫ゴム組成物を製造した。
【0045】
<比較例1~2>
表2に記載の各原料(硫黄と加硫促進剤を除く成分)を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:3分、排出温度:150℃)することにより、ゴム組成物を製造した。次いで、得られたゴム組成物に、表2に記載の硫黄、加硫促進剤(A)および加硫促進剤(B)を加え、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:1分、排出温度:90℃)して、未加硫ゴム組成物を製造した。
【0046】
上記の実施例及び比較例で得られた未加硫ゴム組成物について以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0047】
<耐スコーチ性の評価>
耐スコーチ性の評価は、JIS K6300に準拠して、(株)東洋精機製作所製のロータレスムーニー測定機を用い、未加硫ゴム組成物を125℃で1分間予熱後、最低粘度Vmより5ムーニー単位上昇するのに要した時間t5を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、スコーチタイムが長く、耐スコーチ性に優れることを意味する。
【0048】
上記の実施例及び比較例で得られた未加硫ゴム組成物を、150℃、30分間の条件で加硫することにより、加硫ゴムを製造した。得られた加硫ゴムについて以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0049】
<発熱性の評価>
発熱性の評価は、(株)東洋精機製作所製の粘弾性試験機を用い、静歪み10%、動歪み±2%、周波数50Hz、温度60℃の条件下で、損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100として指数で表示した。指数が小さいほど、発熱し難く、低発熱性に優れることを示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】