(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】耐火物用骨材、その製造方法、及びそれを用いた耐火物
(51)【国際特許分類】
C04B 35/66 20060101AFI20220615BHJP
C04B 14/02 20060101ALI20220615BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
C04B35/66
C04B14/02 B
F27D1/00 N
(21)【出願番号】P 2018171970
(22)【出願日】2018-09-13
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】小山 厚徳
(72)【発明者】
【氏名】平田 慧
(72)【発明者】
【氏名】谷口 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】松吉 瑞治
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-016526(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170840(WO,A1)
【文献】国際公開第00/030999(WO,A1)
【文献】特開2009-203090(JP,A)
【文献】特開2018-108902(JP,A)
【文献】特開2014-037327(JP,A)
【文献】特開2002-179471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/66
C04B 14/02
F27D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶相にCaO・6Al
2O
3を含み、粒径3mm以上6mm未満に篩分けした粒子のかさ密度が0.60g/cm
3以上0.95g/cm
3以下であり、0.002質量%以上0.05質量%以下のホウ素が含有されてなることを特徴とする耐火物用骨材。
【請求項2】
請求項1に記載の耐火物用骨材を用いてアルミナセメントを結合材とした不定形耐火物。
【請求項3】
カルシア原料、アルミナ原料及びホウ素化合物を含む骨材原料に水を加えて成形後、1200℃~1700℃で焼成して得られる請求項1に記載の耐火物用骨材の製造方法。
【請求項4】
さらに造孔材を15質量%以下配合する請求項3に記載の耐火物用骨材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業炉等で使用される耐火物分野等への利用が可能な、耐火物用骨材及びそれを用いた不定形耐火物に関するものであり、特に、優れた強度特性と断熱性能を有する耐火物用骨材とその製造方法に関する。
【0002】
近年、耐火物分野では、施工性の向上や補修のし易さ等から不定形化が進み、溶融金属や高温のスラグに接する部位にまで、不定形耐火物は広く使用されるようになっている。
【0003】
耐火物が使用される各種工業炉は、環境問題よりCO2排出削減に取り組まなければならない状況になっている。使用される耐火物の断熱性を高めることにより、炉内温度及び加熱対象物の昇温と温度の保持のために使用するエネルギーを低減することができ、CO2排出量の削減に有効となる。
【0004】
耐火物の断熱性を高めるために、その構成原料よりも熱を伝え難い空気の利用を図り、組織を多孔化する方法が用いられる。不定形耐火物においても、中空質や多孔質の耐火骨材を配合することや、練混ぜの際に加える水の量を多く調整するなどして、耐火物の組織を多孔化することにより断熱性の向上が図られている。
【0005】
断熱性の高い耐火物は、工業炉内の高温部となる稼働面に近い個所で使用するほど、伝熱及び耐火物への蓄熱を低減することが可能となるが、多孔化により強度や耐食性が低下して寿命が短くなる。また、1000℃を超える高温度域で使用される場合に、耐火物組織中の気孔が大きいと、放射伝熱により熱が伝わり易くなり断熱性が低下する場合がある。
【背景技術】
【0006】
特許文献1では、耐火物用骨材にCA6を用いることで断熱性に優れた耐火物を提供することが提案されている。提案されている耐火物用骨材は多孔質のCA6粒子であり、耐熱性にも優れ、断熱性の高い耐火物用骨材として有望である。
【0007】
特許文献2では、CA6を結晶相とした多孔質な断熱性骨材が粗粒域に配合され微粒域にはアルミナ質原料及びアルミナセメントが配合された耐火性粉体組成物と、施工水とを含む断熱耐火物が提案されており、鋼片加熱炉や均熱炉のスキッドパイプ又はそれを支えるサポートパイプ等を被覆する断熱材に利用可能であるとしている。
【0008】
特許文献3には、CA6組成の六方晶系結晶のポーラスな断熱骨材を骨材として使用し、マトリックス部にアルミナセメント及びアルミナ微粉を使用し、粒径1mm以下のCaO/Al2O3質量比が0.24~0.32となるようにした断熱耐火組成物が開示されている。
【0009】
特許文献4には、CA6組成の軽量粒、アルミナ微粉およびアルミナセメントから構成され、不定形耐火物粉体の1mm以下の微粉部におけるCaO/Al2O3質量比が0.13より大きく、0.24未満の範囲内にあることを特徴とする軽量断熱不定形耐火物が開示されている。
【0010】
特許文献5では、結晶相がCA6であり、粒径3mm以上6mm未満に篩分けしたときの嵩密度が0.6g/cm3以下であり、粒径1mm未満に篩分けしたときの、粒径20μm以下の体積累計が30%以下であることを特徴とする耐火物用骨材とそれを用いた不定形耐火物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】PCT/WO00/30999号公報
【文献】特開2009-203090号公報
【文献】特開2014-37327号公報
【文献】特開2018-108902号公報
【文献】特開2018-16526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述の特許文献に使用されている多孔質耐火骨材であるCA6は、断熱性能に優れるが、気孔率が大きいために粒子の強度に乏しく、アルミナセメントを含むマトリックス部の強度を高めた場合でも、粒子表層の剥離や粒子の破断により、耐火物の強度を高めることが困難となる課題がある。また、流動性を得るために加える水量が多くなることによっても、耐火物の強度が低くなるため、衝撃・振動が加わったり耐摩耗性が要求される箇所や、溶融金属やスラグに接触する箇所への利用が困難となり、適用箇所が制限される課題がある。
【0013】
本発明者は、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、CA6粒子の気孔量を調整することで、その強度を高めてCA6粒子の破壊や剥離を抑制することにより、耐火物の強度を高めることができ、かつ良好な断熱性能を得ることを見出した。
【0014】
また、本発明者は、CA6粒子の製造において、原料にホウ素化合物を適量添加することにより、粒子中のCA6組成の純度が高くなり、粒子の強度が増し、このCA6粒子を用いて不定形耐火物を製造した場合に、強度が改善される知見を得て、本発明に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
即ち、本発明は、結晶相にCA6を含有し、粒径3mm以上6mm未満に篩分けしたときの、かさ密度が0.60g/cm3以上、0.95g/cm3以下であり、0.002質量%以上0.05質量%以下のホウ素が含有される耐火物用骨材を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記耐火物用骨材を用いて、アルミナセメントを結合材とした不定形耐火物を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、結晶相にCA6を含む耐火物用骨材において優れた断熱性能を有しつつ、強度を高めることができ、これを用いた不定形耐火物も、優れた断熱性能と強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例であるCA6粒子のエックス線回折分析結果を比較例と対比して示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
CA6粒子の製造においては、カルシア原料とアルミナ原料等の原料の他、ホウ素化合物を混合、若しくは混合粉砕して、最終的に合成されるカルシウムアルミネートのCaOとAl2O3のモル比がおおよそ1:6の成分割合になるように配合し、水と混練して成形後、1200℃~1700℃の温度で焼成して得られたものを、粗砕及び粉砕機によって解砕し、分級されて製造されるものである。
【0021】
カルシア原料としては、粉末状の石灰石や生石灰、或いはCaO・Al2O3(CA)、CaO・2Al2O3(CA2)、12CaO・7Al2O3(C12A7)、3CaO・Al2O3(C3A)等を用いることが可能であり、これらの原料を複数種組み合わせて用いても構わない。
【0022】
アルミナ原料としては、酸化アルミニウム(Al2O3)や遷移アルミナ、ギブサイト(Al(OH)3)、ベーマイト(AlO(OH))等を用いることが可能であり、これらの原料を複数種組み合わせて用いても構わない。ただし、多孔体のCA6粒子を合成するにはアルミニウムの水和物であるギブサイトやベーマイトを用いることが優位であることが知られている。ギブサイトをアルミナ原料として用いることで、鱗片状のCA6の一次結晶が凝集した多孔体構造のものが得られやすく好ましい。
【0023】
CA6粒子に内在する気孔量を増すために、原料に造孔材を添加することができる。例えば、可燃性物質を造孔材として原料に添加することで、焼成時に造孔材が燃焼・気化し、合成されたCA6粒子に空隙が形成され、気孔の多いCA6粒子が形成される。造孔材としては、澱粉(コーンスターチ)、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、アクリル樹脂、ラテックス等を用いることが可能である。中でも澱粉(コーンスターチ)を用いると、比較的安価で数十μmの大きさの空隙を形成することが可能である。
【0024】
しかし、造孔材により形成した空隙はCA6の結晶間に生じる数μm程の間隙よりも大きく、これが欠陥となり粒子の強度を低下させる要因となる。造孔材にコーンスターチを用いる場合、その添加量は総原料中の10質量%より小さいことが好ましい。
【0025】
本発明の耐火物用骨材の製造方法において、好ましくは骨材原料にホウ素化合物を添加する。ホウ素化合物を添加することで、焼成時にフラックスとして作用し、形成された液相を通して各種原料の物質拡散を促し、未反応原料の残留が抑制され、また、鱗片状のCA6の一次結晶間の結合が強くなり、CA6粒子としての強度が高くなるという効果が得られる。
【0026】
骨材原料に加えるホウ素化合物の種類及び添加量は特に限定されないが、焼成後のCA6粒子に含まれるホウ素量が0.002~0.05質量%となるように調整する。原料中のホウ素量が少ないと、CA6の生成量が少なくなり粒子の強度が高くなる効果が得られない。一方、原料中のホウ素量が多いと焼結の進行による焼き締まりが起こり、断熱性に優れた多孔組織が得られなくなることに加えて、不定形耐火物として加水混練した場合に、ホウ素成分が溶出してアルミナセメントの反応を抑制してしまう。ホウ素化合物は、ホウ酸(H3BO3)、無水四ホウ酸ナトリウム(Na2B4O7)、四ホウ酸ナトリウム十水和物(Na2B4O7・10H2O)などが利用できる。
【0027】
カルシア原料、アルミナ原料、造孔材及びホウ素化合物等の原料を混合する方法としては、特に限定されるものでは無く、各材料を所定の割合になるように配合し、V型ブレンダー、コーンブレンダー、ナウターミキサー、パン型ミキサー及びオムニミキサー等の混合機を用いて、均一に混合することが可能である。混合時間は、特に限定されるものでは無く、混合機により最適値はあるが、5分以上が好ましく、15分以上がより好ましい。混合時間の上限の指定は無い。
【0028】
本発明の耐火物用骨材の製造方法では、カルシア原料及びアルミナ原料を含む混合原料を水と混合して成形後、焼成炉に投入し、1200℃~1700℃で焼成する。焼成温度が1200℃より低いと焼成が不充分となり、未反応原料が残留し耐火物としての強度不足や高温使用での安定性不良の原因となる。また、焼成温度を1700℃より高くしようとすると設備的に大掛かりとなってしまう一方で、CA6粒子の物性は1700℃で焼成したものとほとんど変わらない。焼成方法としては、電気炉、シャトルキルン、ロータリーキルン等の設備を用いることが可能である。
【0029】
本発明の耐火物用骨材の製造方法では、焼成したCA6焼成物を粗砕機あるいは粉砕機を用いて粗粉砕したものを、分級器によって適切な粒度に調整される。使用する粗砕機としては、限定されるものでは無いが、ジョークラッシャー、インパクトクラッシャー、ロールークラッシャー、コーンクラッシャー等が使用できる。粉砕機としては、限定されるものでは無いが、ローラーミル、ボールミル、振動ミル、タワーミル、ジェットミル等が使用できる。分級器はジャイロシフター、トロンメル、振動ふるいなどのふるい分け装置を用いて、ふるい目のサイズを調整することで所定の粒度の粒子を得ることができる。
【0030】
本発明者は、ホウ素化合物を添加して製造されたCA6焼成物を用いて狙いとする粒度に粉砕したときに、強度の大きい破砕状のCA6粒子が得られやすく、このCA6粒子を用いて耐火物を製造した場合に、耐火物内のCA6粒子とマトリックス物質との界面の面積が大きく結合力が強くなり、耐火物の強度が改善されることを見出している。
【0031】
CA6焼成物の機械的強度を強くすることで、粗粉砕及び分級処理時の破面の摩耗が抑制されるようになる為に、破砕状で表面積の大きいCA6粒子の製造が可能になると考えられる。CA6粒子の耐火用骨材に含まれるホウ素の量は0.002質量%以上0.05質量%以下であることが好ましい。0.002質量%より少ないと強度改善の効果が充分得られにくい。CA6粒子中にホウ素成分が多量に存在すると、水を加えて不定形耐火物の混練物を作製した際に、アルミナセメントの反応を阻害するため、0.05質量%より多くのホウ素の含有は好ましくない。
【0032】
本発明の不定形耐火物は、結晶相にCA6を含み、粒径3mm以上6mm未満に篩分けしたときの、かさ密度が0.60g/cm3以上、0.95g/cm3以下である耐火物用骨材と、アルミナセメントとを含むキャスタブルに所定量の水を添加し、混錬したものを型枠に鋳込むことによって成型される。
【0033】
例えば、本発明のCA6粒子を30~75質量%、アルミナセメントを15~50質量%、粒径45μm未満のアルミナ微粉を0~25質量%を含む不定形耐火物を使用する。CA6粒子の配合量が75質量%より多いと耐火物としての強度が不足し、30質量%より少ないと充分な断熱性が得られない。また、アルミナセメントの配合量が50質量%より多いと耐熱性が低下し、15質量%より少ないと耐火物としての強度が不足する。粒径45μm未満のアルミナ微粉はアルミナセメントとの反応により断熱耐火物のマトリックス成分となり、アルミナ微粉を配合しない場合と比較して強度が改善されるが、アルミナ微粉を25質量%より多くしてもそれ以上強度は改善しない。
【0034】
本発明の不定形断熱耐火物の製造方法における各材量の混合方法は、特に限定されるものでは無いが、通常の不定形耐火物の製造方法に準じ、各構成原料を所定の割合になるように配合し、V型ブレンダー、コーンブレンダー、ナウターミキサー、パン型ミキサー、及びオムニミキサー等の混合機を用いて均一混合する方法が可能である
【0035】
本発明の不定形断熱耐火物の施工において、前記キャスタブルに所定量の水を添加し、配合、混錬する。添加する水の配合量は、キャスタブルの合計量に対して外掛けで20~40質量%であることが好ましい。20質量%より少ないと充分な流動性が確保できず施工不良となりやすく、また40質量%より多いと耐火物の強度が低くなるためである。
【0036】
以下、実施例に基づき本発明をさらに説明する。
[実施例1~7、比較例1~3]
【0037】
カルシア原料として炭酸カルシウムを、アルミナ原料として水酸化アルミニウム、造孔材としてコーンスターチを、添加剤としてホウ酸を、表1に示す配合に計量後、ナウターミキサーを用いて混合した。
【0038】
<使用材料>
炭酸カルシウム:船尾鉱山製 船尾石灰石
水酸化アルミニウム:住友化学製 C301N
コーンスターチ:日本コーンスターチ製 Y-3P
ホウ酸:関東化学 特級試薬
【0039】
混合された原料を、パン型造粒機を用いて水を加えながら直径約20mmに造粒成形し、アルミナ製の容器に入れ、電気炉中(大気雰囲気)で最高温度1500℃で1時間の焼成を行った。その後、放冷して得られたCA6焼成物をジョークラッシャーで解砕して、CA6を含む耐火骨材を製造した。得られたCA6粒子をめのう乳鉢で粉砕して、エックス線回折分析用及びホウ素量測定用のサンプルとした。
【0040】
X線回折分析評価結果を表1に、実施例3、実施例6、実施例7及び比較例2のCA6骨材のエックス線回折スペクトルを
図1に示す。ホウ酸を配合した実施例1~実施例7及び比較例1、3では、焼成温度が1500℃の場合に、CA6を主体とした鉱物組成となっていることが分かる。一方、比較例2のホウ素を含まないものはAl
2O
3及びCaO・2Al
2O
3(CA2)の反応中間体が多く残留していることが分かる。
【0041】
CA6粒子に含まれるホウ素含有量はICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法により測定した。結果を表1に示す。炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム及びコーンスターチ量が同程度でホウ酸量を変えた実施例3、6及び7を比べると、ホウ酸の添加量が多いほどCA6粒子に含まれるホウ素量が多くなる。また、ホウ酸の配合量が同じ場合は、炭酸カルシウム及び水酸化アルミニウムが少なく、コーンスターチが多いほどホウ素量が多くなる傾向となった。ホウ酸を配合しない比較例2は、検量下限値である2.5ppmよりも小さい含有量となる。
【0042】
<CA6粒子の物性評価方法と判定>
(1)かさ密度:粒径3mm以上6mm未満に篩分けしたCA6粒子を、内容積400cm3のSUS製容器に、得られたCA6粒子の骨材を容器の口から溢れるまで盛った後、10回タッピング(高さ1cmより落下)後、容器の口から溢れている骨材をすり切り、容器の重さ増分を内容積で割った値をかさ密度とした。
(2)骨材耐荷重:3~6mmのCA6粒子の骨材1粒を水平な定盤の上に置き、定盤と平行な面を持つ荷重計測器でCA6粒子の骨材を押し込み、骨材が破壊されるまでの最大荷重を計測し、20点の測定値の平均値を骨材耐荷重とした。ここで、骨材耐荷重の合否判定基準として、40N以上を○(合格)、40N未満を×(不合格)とした。
【0043】
表1の実施例1~7より、かさ密度が0.60~0.95g/cm3であり、ホウ素含有量が0.002~0.05質量%の範囲内にある場合に、骨材耐荷重が40N以上と高くなっていることが分かる。一方、比較例2のようにホウ酸を添加せずにCA6粒子を製造した場合、骨材耐荷重が40Nより低い値となった。また、比較例3のようにホウ素含有量が過剰となる場合は、骨材耐荷重は高いものの、かさ密度が大きくなり断熱性が低下することが考えられる。
【0044】
【0045】
[実施例8~14、比較例4~6]
実施例1~7及び比較例1~3で得られたCA6骨材を、粒径3mm以上6mm未満、1mm以上3mm未満、粒径1mm未満に篩分けしたもの、粒子径45μm以下のアルミナ微粉及びアルミナセメントを、表2に示す配合に計量後、万能ミキサーを用いてドライミックスし、CA6粒子を骨材とする不定形耐火物を作製した。
【0046】
<使用材料>
アルミナ微粉:Almatis社製T-60、粒度325F
アルミナセメント:デンカ製 ハイアルミナセメントスーパーVS-2
【0047】
<不定形耐火物の物性評価方法と判定>
(1)フロー値:JIS R 2521に準じた装置を用い、練混ぜ後の混練物をフローコーンに詰めた後、フローコーンを上方に取り去り、打撃を加えずに混練物が拡がった最大径とこれに直角方向の拡がり径を測定し、その平均値をフリーフロー値とした。フリーフロー値が180~220mmとなるように加える水量を調整した。
(2) 硬化時間:混練物を入れたポリビーカーを断熱容器に入れて、その中心付近に測温抵抗体を挿し込み、温度記録計を用いて発熱曲線を測定し、練混ぜ開始から発熱曲線がピークに達するまでの時間を測定して硬化時間とした。硬化時間が24時間以内となり、問題なく脱枠可能であったものを〇(合格)とし、硬化時間が24時間を超えたものは×(不合格)とした。
(3)曲げ強度:JIS R 2553に基づき、40×40×160mmの型枠に混練物を詰め、24時間養生した後脱枠して試料とした。110℃に調整した乾燥機内で24時間の加熱処理したもの、乾燥後600℃及び1400℃で3時間加熱処理したものの曲げ強さを測定した。いずれの加熱処理温度で曲げ強さが3.0MPa以上となったものを○(合格)、3.0MPa未満を×(不合格)とした。
(4)熱伝導率:混練物を用いてJIS R 2616熱線法試験に準じた角柱状試験試料を作製した。比較例6は硬化時間が大きいため、48時間養生した後に脱枠し、その他は24時間で脱枠した。脱枠後の試料を110℃で24時間乾燥した後、600℃で加熱処理を施して水分を除去した試料の1400~1430℃の雰囲気における熱伝導率をJIS R 2251-1に基づいて測定した。ここで、熱伝導率が1.5W/m・K以下のものを〇(合格)、1.5W/m・Kより大きいものを×(不合格)とした。
【0048】
表2の実施例8~14より、実施例1~7のCA6粒子の骨材を用いて製造した不定形耐火物では、硬化時間、強度及び熱伝導率が得られた。一方、かさ密度及び骨材の耐荷重が小さい比較例1のCA6粒子を用いた比較例4の不定形耐火物は、強度が低く不合格であった。また、ホウ素の含有量が少なく、鉱物組成及び骨材の耐荷重が不合格である比較例2の骨材を用いた比較例5の不定形耐火物も強度が低く不合格であった。ホウ素量が多く、かさ密度の大きい比較例3のCA6粒子を用いた不定形耐火物は、硬化時間が36時間程となり24時間よりも大きいために不合格であった。
【0049】
実施例8~14の1400℃程度雰囲気における熱伝導率は最大でも1.23W/m・Kであり合格となり、高温度の雰囲気においても優れた断熱性を有することが分かる。一方、ホウ素量が多く、かさ密度の大きい比較例3は、養生時間を長くして十分に硬化させた場合でも、熱伝導率が大きいために不合格であった。
【0050】
【産業上の利用可能性】
【0051】
CA6粒子の製造において、造孔材の配合量と原料にホウ素化合物を適量添加することにより、CA6粒子の破壊強度が改善されるとともに、ホウ素化合物を添加して製造されたCA6焼成物を用いて狙いとする粒度に調整した場合に、強度と断熱性能に優れたCA6粒子の製造が可能であり、このCA6粒子を用いて不定形耐火物を製造した場合に、強度と断熱性能に優れた不定形耐火物が得られる。