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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】免疫学的試薬
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220615BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220615BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220615BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220615BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220615BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220615BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220615BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220615BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20220615BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220615BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220615BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220615BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K14/725
A61P25/00
A61P43/00 111
A61P37/06
A61P31/18
A61P31/00
A61P35/00
A61P43/00 105
A61K39/395 N
A61K39/395 Y
A61K39/395 D
A61K35/76
A61K48/00
A61K51/04 200
G01N33/53 D
G01N33/574 A
C07K16/28
C07K16/46
A61K38/16
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018538647
(86)(22)【出願日】2017-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 IB2017000031
(87)【国際公開番号】W WO2017125815
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2020-01-17
(31)【優先権主張番号】62/286,269
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/290,745
(32)【優先日】2016-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517036884
【氏名又は名称】マブクエスト エスエー
【氏名又は名称原語表記】MabQuest SA
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】パンタレオ,ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】フェンウィック,クレイグ
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-340714(JP,A)
【文献】特表2008-544755(JP,A)
【文献】Eur. J. Immunol.,2003年,33,p.3117-3126
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
C12N
C12P
C07K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトPD-1に結合し、配列番号176のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号190のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、ヒト化抗体またはその断片。
【請求項2】
前記断片が、Fab、F(ab') 、Fab’、一本鎖抗体またはF断片である、請求項1に記載のヒト化抗体またはその断片。
【請求項3】
T細胞の表面からPD-1のインターナリゼーションを誘導するためのものである、請求項1または2に記載のヒト化抗体またはその断片。
【請求項4】
前記T細胞が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染したヒトT細胞である、請求項3に記載のヒト化抗体またはその断片。
【請求項5】
抗原特異的CD8 + 細胞の機能的疲弊を救済及びその増殖を高めるためのものである、請求項1または2に記載のヒト化抗体またはその断片。
【請求項6】
前記T細胞が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に特異的である、請求項5に記載のヒト化抗体またはその断片。
【請求項7】
ヒト患者におけるがんを治療するためのものである請求項1または2に記載のヒト化抗体またはその断片。
【請求項8】
抗PD-1抗体ペムブロリズマブと併用される、請求項3~7のいずれかに記載のヒト化抗体またはその断片。
【請求項9】
異なる抗原に対する第2の結合特異性を有する結合剤である、請求項1または2に記載のヒト化抗体またはその断片。
【請求項10】
前記ヒト化抗体またはその断片に固定的に付着した検出可能な標識もしくはエフェクター部分とを含む、請求項1または2に記載のヒト化抗体またはその断片の誘導体。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載の抗体またはその断片、または請求項10に記載の誘導体と、少なくとも1つの医薬上許容される担体とを含む組成物。
【請求項12】
請求項1~9のいずれかに記載の抗体またはその断片、または請求項10に記載の誘導体とともに、または請求項11に記載の組成物がさらに、抗PD-1抗体ペムブロリズマブを含む組成物。
【請求項13】
請求項1に記載のヒト化抗体またはその断片をコードする単離ポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項13に記載の1または複数のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項15】
請求項14に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項16】
請求項13に記載の1または複数のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その両方がここに参照することによって全体として本開示に組み込まれる、2016年1月22日出願の米国特許出願第62/286,269号、及び2016年2月3日出願の米国特許出願第62/290,745号の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、プログラム細胞死1(PD-1)(例えば、ヒトPD-1)に対する特異性を有する結合剤、並びに感染症(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV))、がん及び/又は自己免疫を治療及び/又は予防するためにそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
HIVが流行し始めてから40年目に入り、HIVの病因に関する理解が進み、強力で安全な抗ウイルス薬の開発が大きな進歩を遂げてきた。30種を超える抗ウイルス薬が登録され、組合せ抗レトロウイルス療法(ART)が罹患率及び死亡率に及ぼす影響は顕著なものとなっている。しかしながら、ARTを最適に順守した患者においてHIV複製の長期間にわたる抑制が達成されてきたにもかかわらず、治療の中断後にはHIVは常に逆戻りする。さらに、成功した療法は、ARTの非存在下でHIV複製を制御できるウイルス特異的免疫応答を誘導せず、或いはその回復/発生を可能にしない。従って、大半のHIV感染対象においてHIV複製及び関連疾患を制御するために生涯にわたりARTが必要とされる。
【0004】
HIVに潜伏感染した長寿命のセントラルメモリーCD4 T細胞集団が、HIV細胞リザバーの重要な構成要素として、及びHIVの永続性の主要原因として、血液中において同定されている。この潜伏細胞リザバーの寿命は、ARTを用いた完全HIV抑制の存在下ではおよそ70年であると推定されている。しかし、近年の試験は、リンパ節内に常在するCD4 T細胞の2つの集団が、HIVの感染、複製及び生成のための主要なCD4 T細胞コンパートメントとして機能することを証明している。これらの2つのCD4 T細胞集団は、PD-1及びCXCR5の発現によって規定され、PD-1CXCR5、すなわち濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)、及びPD-1CXCR5CD4 T細胞集団を含む。
【0005】
HIV潜伏細胞リザバーの確立及び維持を担う多数のメカニズムが提案されている。そのメカニズムの1つは、HIV細胞リザバーを補充し得る、ART下での最小ウイルス複製の持続である。従って、ARTは、HIV複製の完全抑制を誘導することができず、ART下での「天然」HIV-1特異的免疫応答も、進行中の残留ウイルス複製を完全に抑制及び排除することができない。ART及びHIV特異的免疫応答の失敗は、永続的なHIV細胞リザバーをも標的とする代替介入を検討する理論的根拠を提供する。
【0006】
これまでに多数の免疫学的介入が検討されてきたが、現在でも、持続的な抗ウイルス療法なしにウイルス複製が抑制されるHIVの機能的治癒を達成することを目標として、さらに開発が続けられている(9)。治療的ワクチン戦略は検討された主要な介入戦略であったが、その結果は、実験動物モデル及び患者において、CMVをベースとするベクターHIVワクチン(NHPモデルにおいて50%の有効性;10)を除いて、わずかな有効性しか示していない。近年の試験は、HIV感染症における治療薬として抗エンベロープ広域中和抗体(bNabs)を使用する可能性に関して興味深い結果をもたらした(11、12)。さらに、アンタゴニストPD-1抗体(Ab)は、HIV感染患者においてT細胞機能を回復させることが示されており、HIV特異的T細胞応答の効力を増強する治療戦略として、これらの抗体を使用する可能性が提案されている(13、14)。
【0007】
浸潤性腫瘍特異的CD8 T細胞が、増殖し及び細胞傷害活性を媒介する能力に関して機能不全であることはよく確証されている。大半の浸潤性腫瘍特異的CD8 T細胞は、いわゆる機能的疲弊状態にある。浸潤性腫瘍特異的CD8 T細胞の疲弊を担う主要なメカニズムは、多数の調節受容体及び特にPD-1調節受容体の発現の増加である。PD-1/PDL-1/2(PD-1リガンド)の遮断(ブロック)がCD8 T細胞の疲弊からの回復に関連していることの所見は、疲弊CD8 T細胞により発現されたPD-1分子を標的とする介入戦略を開発するための理論的根拠を提供している。近年の試験は、進行性がん関連疾患を有する患者における、アンタゴニスト活性を有するPD-1抗体の使用による極めて前途有望な結果を示している。試験は、進行性黒色腫、非小細胞性肺がん及び腎がんの患者において、18~40%の範囲の実質的な応答率を示している。これらの試験において、抗PD-1抗体は、単独で又は抗CTL-A4抗体と組み合わせて使用された。これらの初期の試験の後、血液腫瘍も含む様々な腫瘍の患者において、現在の試験が行なわれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本技術分野において、PD-1を標的とするための追加の試薬及びそれを使用する方法に対する要求がある。本開示は、PD-1及びそれを発現する細胞及び/又は組織を標的とするのに使用できる試薬及び方法を提供することによって、それらの要求に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、プログラム細胞死1(PD-1)(例えば、ヒトPD-1)に対して特異性を有する結合剤、並びに、例えば、感染症(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による)、がん及び/又は自己免疫状態及び/又は神経変性状態を治療、予防及び/又は改善するためにそれを使用する方法に関する。PD-1と相互作用する結合剤を同定するための機能的アッセイも提供される。PD-1とPD-L1との相互作用をブロックする第1結合剤、及びPD-1とPD-L1との相互作用をブロックしない第2結合剤のような、結合剤の組合せも提供され、それらはT細胞を疲弊から救済するために相乗的に作用する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】PD-1/PD-L1相互作用の阻害に関する抗体濃度反応曲線(A~C)。
図2】残基33~149からのPD-1タンパク質のエクトドメインの構造表示。PD-L1又はPD-L2のいずれかとの相互作用に関与するアミノ酸は、残基番号と共に紫の円で示す構造上の位置にある(残基番号は配列番号275に対応する(図3H))。
図3A】PD-1エクトドメインのアミノ酸配列である。アミノ酸置換の標的となる残基を、31の突然変異(M1~M31)のそれぞれについて示す。紫の文字で記載した残基は、PD-1/PD-L1相互作用に関係するアミノ酸に該当し、緑の文字で示すアスパラギン残基はN-結合型グリコシル化の候補となる位置である。
図3B】改変PD-1ポリペプチドである。
図3C】改変PD-1ポリペプチドである。
図3D】改変PD-1ポリペプチドである。
図3E】改変PD-1ポリペプチドである。
図3F】改変PD-1ポリペプチドである。
図3G】改変PD-1ポリペプチドである。
図3H】ヒトPD-1のアミノ酸配列(配列番号275)である。
図3I】サルPD-1のアミノ酸配列である。
図4】一過性トランスフェクトされたHeLa細胞の表面で発現された改変PD-1タンパク質M13、M14及びM23、並びに野生型(WT)対照(配列番号275)に対する、ブロッキング及び非ブロッキング抗PD-1抗体の結合。
図5】一過性トランスフェクトされたHeLa細胞の表面で発現された改変PD-1タンパク質M13、M23及びM4、並びに野生型(WT)対照(配列番号275)に対する、ブロッキング及び非ブロッキング抗PD-1抗体の結合。
図6】一過性トランスフェクトされたHeLa細胞の表面で発現された改変PD-1タンパク質M31、M5及びM18、並びに野生型(WT)対照(配列番号275)に対する、ブロッキング及び非ブロッキング抗PD-1抗体の結合。
図7】一過性トランスフェクトされたHeLa細胞の表面で発現された改変PD-1タンパク質M1、M9、M13、M17、M18、M23、及びM28、並びに野生型(WT)対照(配列番号275)に対する、ブロッキング及び非ブロッキング抗PD-1抗体の結合。
図8】一過性トランスフェクトされたHeLa細胞の表面で発現された改変PD-1タンパク質M17、M30及びM26、並びに野生型(WT)対照(配列番号275)に対する、ブロッキング及び非ブロッキング抗PD-1抗体の結合。
図9】PD-1上の異なるエピトープに結合する2つのアンタゴニスト抗PD-1抗体(PD-1/PD-L1相互作用に一方はブロッキング性でもう一方は非ブロッキング性)の組合せは、いずれかの抗体単独で達成される程度を超えて、HIV特異的CD8 T細胞の機能的疲弊の救済を増強し及びその増殖を高める。
図10】個々のアンタゴニスト抗PD-1抗体、並びにPD-1上の異なるエピトープに結合する2つのアンタゴニスト抗PD-1抗体の組合せは、混合リンパ球反応アッセイにおいて、PD-1メモリーCD4 T細胞の増殖(a)及びIFNγ産生(b)を高める。
図11-1】PD-1の進化的に保存されたパッチP1(a)及びP2(b)の構造表示。
図11-2】異なる種由来のPD-1エクトドメインのアミノ酸配列の整列(c)。
図12】活性化CD4T細胞上の細胞表面PD-1に対する抗体競合結合試験。
図13】部位特異的突然変異誘発及び抗体競合結合の結果の両方の組合せを用いた、PD-1構造に対する抗体結合部位のエピトープマッピング(a及びb)。
図14】抗PD-1抗体単独又はIgG対照抗体と対比した、抗PD-1 ADCで処理した際の、ウイルス血症HIV感染ドナー由来のPD-1高CD4 T細胞における細胞死(Aqua染色(a))又はアポトーシス(Annexin(アネキシン)V染色(b))の選択的増加。
図15】抗PD-1抗体薬物コンジュゲート(ADC)処理は、複数の異なるウイルス血症HIV感染ドナー由来のPD-1高CD4T細胞におけるアポトーシス(Annexin V染色(a))及び/又は細胞死(Aqua染色(b))の増加をもたらす。抗PD-1抗体単独又はIgG1対照抗体のいずれかで処理した対照サンプルでは、低い細胞死/アポトーシスが観察される。
図16】慢性感染HIVドナー由来のPD-1陽性感染CD4 T細胞の抗PD-1抗体薬物コンジュゲート(ADC)媒介死滅の評価。抗体処理の5日後、細胞を定量的ウイルスアウトグロースアッセイで用いて、様々な処理サンプルでの感染性細胞の数をモニターした。
図17】137F2(PD-1/PD-L1相互作用の)ブロッキング抗PD-1抗体由来の重鎖及び軽鎖可変CDRループを含むヒト化抗体パネル(A35795、A35796、A35797、137F2キメラ)、及び135C12(PD-1/PD-L1相互作用の)非ブロッキング抗PD-1抗体由来の重鎖及び軽鎖可変CDRループを含むヒト化抗体パネル(A35774、A35783、A35789、A346443、135C H2L2、135C H1cL1c、135C H1cL1b、135C12キメラ)の機能活性は、機能的疲弊回復アッセイでのHIVペプチド特異的CD8 T細胞増殖の回復においてMK3475と同等のアンタゴニスト活性を示す
図18】PD-1上の異なるエピトープに結合する2つのアンタゴニスト抗PD-1抗体(PD-1/PD-L1相互作用に一方はブロッキング性(MK3475又はA35795)でもう一方は非ブロッキング性(A35774))の組合せは、いずれかの抗体単独で達成される程度を超えて、HIV特異的CD8 T細胞の機能的疲弊の救済を増強し及びその増殖を高める。
図19】PD-1上の異なるエピトープに結合する2つのアンタゴニスト抗PD-1抗体(PD-1/PD-L1相互作用に一方はブロッキング性(MK3475)でもう一方は非ブロッキング性(135C H1cL1b又は135C H1cL1c))の組合せは、いずれか一方の抗体単独で達成される程度を超えて、HIV特異的CD8 T細胞の機能的疲弊の救済を増強し及びその増殖を高める。
図20】TCRアクチベータ及びPD-L1タンパク質を発現する一過性トランスフェクトされた293T細胞株でのJurkat PD-1 NFATレポーター細胞株の刺激。A.MK3475及びA35774。B.MK3475及び135C H1cL1c。
図21】ブロッキング抗PD-1抗体、非ブロッキング抗PD-1抗体、又はブロッキング及び非ブロッキング抗PD-1抗体の組合せのいずれかを、慢性感染HIVドナー由来のメモリーT細胞と共にインキュベートした際の細胞表面PD-1のインターナリゼーション(内在化)。メモリーCD4T細胞(a、c及びe)及びメモリーCD8T細胞(b、d及びf)におけるPD-1の細胞表面レベルを抗体処理後の様々な時間に測定した。
図22】PD-1の高い基底レベルを有するメモリーT細胞を保有する慢性感染HIVドナー由来のPBMCを、ブロッキング抗PD-1抗体(MK3475)、非ブロッキング抗PD-1抗体(A35774)、又はブロッキング及び非ブロッキング抗PD-1抗体の組合せ(A35774及びMK3475)のいずれかと共にインキュベートし、その後、PD-L1の存在下又は非存在下においてTCRアクチベータ細胞で24時間刺激した。PD-L1を発現するTCRアクチベータ細胞での刺激において、ブロッキング及び非ブロッキング抗PD-1抗体の組合せでの処理は、細胞培地中のIFN-γレベル(A)及びPD-1CD8 T細胞に関連する細胞内IFN-γレベル(B)を高める。
図23】hPD-1/Fab A35774複合タンパク質の結晶。A.ヒトPD-1タンパク質と相互作用するA35774の重鎖及び軽鎖CDRループ。B.ヒトPD-L1(PDB 4ZQK)を用いたhPD-1/Fab A35774構造のモデリングは、非ブロッキング抗PD-1抗体が、PD-L1と比べてPD-1上の別個のオーバーラップしないエピトープに結合することを確認する。
図24】ヒト化IgG4非ブロッキング抗PD-1抗体(135C H1cL1c)、ブロッキング抗PD-1抗体キイトルーダ(登録商標)(Keytruda(登録商標))(MK3475)、又は135C H1cL1c+キイトルーダの組合せの治療有効性を評価するために、PD-1 HuGEMMマウスにおいてIn vivo有効性試験を実施した。(A)MC38細胞の平均腫瘍体積を、様々な抗体処置と対比して、ビヒクル対照マウスについて示す。(B)ビヒクル単独対照に対する、抗体処置した場合の腫瘍増殖の平均パーセント阻害。(C)移植したMC38腫瘍の完全寛解を示した、各抗PD-1処置群におけるマウスの割合(%)。
図25A】137F2可変重(V)鎖。
図25B】137F2可変軽(V)鎖。
図25C】135C可変重(V)鎖。
図25D】135C可変軽(V)鎖。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、in vitro及び/又はin vivoで、細胞表面上のプログラム細胞死1(PD-1)タンパク質(例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第5,698,520号明細書(Honjo,et al.)の配列番号1、図1A図1B)(例えば、ヒトPD-1)に結合する結合剤に関する。その結合剤は、単離PD-1ポリペプチド(例えば、ヒトPD-1)及び/又はその断片及び/又は誘導体にも、典型的にはin vitroで、結合することができる。さらに、PD-1を発現する細胞の存在に関連する1つ又は複数の疾患を診断、治療、予防及び/又は改善するために、そのような結合剤を使用する方法も提供する。例えば、結合剤は、PD-1のエピトープと反応できる及び/又はPD-1のエピトープに結合できる抗体(例えば、モノクローナル抗体)であってよい。本明細書に記載される「結合剤」は、例えば、PD-1のアゴニスト又はアンタゴニストを含んでいてよい。アゴニスト結合剤は、典型的には、T細胞機能及び/又はPD-1の発現を回復させることのできない結合剤である。アゴニストPD-1結合剤は、PD-1発現細胞が疾患の進行に関与する、自己免疫疾患等を治療するのに有用となり得る。対照的に、アンタゴニスト結合剤は、T細胞機能を回復させ及び/又はPD-1の表面発現を低減させることができる結合剤である。例えば、PD-1アンタゴニスト結合剤は、HIV感染症及び様々な腫瘍において生じることが知られている機能的疲弊から、PD-1発現T細胞の機能を回復させることができるであろう。T細胞機能の回復は、例えば、そのような細胞の増殖、サイトカイン産生、細胞傷害活性又はその他の特徴を測定することによって特定することができる。本明細書に記載される結合剤の別の用途は、複製可能なHIV(例えば、潜伏及び/又は複製状態にある)を含むHIV感染CD4 T細胞集団の選択的標的化及び排除である。そのようなPD-1を発現するPD-1発現細胞は、複製可能なHIVのための主要細胞リザバーとして機能することが知られている。これらのCD4 T細胞集団を排除するための1つの可能なメカニズムは、本明細書に記載される結合剤(例えば、単一及び/又は二重特異性PD-1抗体)を使用する抗体依存性細胞傷害(ADCC)である。一部の実施形態では、PD-1発現に起因する機能的疲弊からの抗原特異的CD8 T細胞の救済(例えば、増殖、サイトカイン産生及び/又は細胞傷害活性の回復又は改善)をそれらの細胞において誘導するために、例えば、異なる特異性(例えば、異なるエピトープを認識する)を有する1つ又は複数のPD-1アンタゴニスト結合剤を組み合わせてよい。一部の実施形態では、本明細書に記載される結合剤を、PD-1発現細胞の選択的排除及び/又は抑制のために提供してもよい。一部の実施形態では、本明細書に記載されるPD-1アゴニスト又はアンタゴニスト結合剤は、例えば、感染性疾患(例えば、HIV)、がん、及び/又は特に自己免疫状態を治療するためにPD-1発現細胞を抑制及び/又は排除するために使用してよい。その他の実施形態、使用などについては下記に記載する。
【0012】
結合剤は、例えば、表1に示すアミノ酸配列の任意の1つ又は複数(及び/又はそれらの1つ又は複数の断片及び/又は誘導体)を含みうる、例えばモノクローナル抗体などの抗体であってよい。本開示はさらに、PD-1を発現する細胞を単離する、同定する及び/又は標的とするためのそのようなモノクローナル抗体の使用を提供する。ある実施形態では、これらのモノクローナル抗体は、細胞表面に発現されたPD-1に対して反応性であってよい。用語「抗体」は、未精製形態又は部分精製形態(例えば、ハイブリドーマ上清、腹水、ポリクローナル抗血清)、或いは精製形態にある、全抗体又は断片化抗体を意味し得る。抗体は、例えば、マウス(例えば、マウスハイブリドーマ細胞によって生成される)を含む任意の好適な起源又は形態であってよく、或いは、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体などとして発現させてもよい。例えば、抗体は、完全に又は部分的にヒト(例えば、IgG(IgG1、IgG2、IgG2a、Ig2b、IgG3、IgG4)、IgM、IgA(IgA1及びIgA2)、IgD及びIgE)、イヌ(例えば、IgGA、IgGB、IgGC、IgGD)、ニワトリ(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、IgY)、ヤギ(例えば、IgG)、マウス(例えば、IgG、IgD、IgE、IgG、IgM)及び/又はブタ(例えば、IgG、IgD、IgE、IgG、IgM)、ラット(例えば、IgG、IgD、IgE、IgG、IgM)抗体に由来するものであってよい。様々なタイプの抗体を調製、利用及び保存する方法は当業者に周知であり、本発明を実施するのに好適であろう(例えば、Harlow, et al. Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988; Harlow, et al. Using Antibodies: A Laboratory Manual, Portable Protocol No. 1, 1998; Kohler and Milstein, Nature, 256:495 (1975)); Jones et al. Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann et al. Nature, 332:323-329 (1988); Presta (Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992); Verhoeyen et al. (Science, 239:1534-1536 (1988); Hoogenboom et al., J. Mol. Biol., 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991); Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); Boerner et al., J. Immunol., 147(1):86-95 (1991); Marks et al., Bio/Technology 10, 779-783 (1992); Lonberg et al., Nature 368 856-859 (1994); Morrison, Nature 368 812-13 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996); Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995);並びに米国特許第4,816,567号明細書;同第5,545,807号明細書;同第5,545,806号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;同第5,661,016号明細書;及び同第9,090,994号明細書を参照)。ある用途では、抗体は、ハイブリドーマ上清又は腹水中に含まれていてよく、そのまま直接又は標準技術を用いた濃縮後のいずれで使用してもよい。他の用途では、抗体は、例えば、塩析による分画及びイオン交換クロマトグラフィ、或いはアガロースビーズなどの固体支持体に共有結合したプロテインA、プロテインG、プロテインA/G及び/又はプロテインL、及び/又は他のリガンドを用いたアフィニティークロマトグラフィーを使用して、さらに精製してよい。抗体は、冷凍製剤(例えば、-20C又は-70C)、凍結乾燥形態を含む任意の好適な形態で、又は通常の冷蔵条件(例えば、4℃)下で保存してよい。例えば、液体形態で保存される場合、例えばトリス緩衝生理食塩水(TBS)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの好適なバッファーを利用するのが好ましい。一部の実施形態では、結合剤は、非毒性の非経口的に摂取可能な希釈剤又は溶剤中の懸濁液のような、注射用製剤として調製することができる。利用できる好適なビヒクル及び溶剤として、特に、水、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液、TBS及び/又はPBSが挙げられる。そのような製剤は、in vitro又はin vivoで使用するのに好適であり、当技術分野で知られているように調製することができ、正確な製剤は特定の用途に依存するであろう。
【0013】
しかしながら、本明細書に記載される結合剤は、決して抗体に限定されない。例えば、結合剤は、別のものと類似の結合特性を示す任意の化合物(例えば、模倣物)であってよい。例えば、代表的な結合剤は、PD-1に結合する、及び/又はそれに対する特異性を有する結合剤(モノクローナル抗体)と競合できる結合剤であってよい。一部の実施形態では、模倣物は、比較される結合剤(例えば、モノクローナル抗体)と、結合アッセイにおいて実質的に同一の親和性を示し得る。特定の結合剤の親和性は、限定はされないが、実施例において記載するような活性化CD4 T細胞での内因性細胞表面PD-1のFACS染色などの、任意の好適なアッセイによって測定することができる。1つの結合剤が、別の結合剤と測定値(例えば、ナノモル親和性での見かけの結合定数)が相互に約1~20、1~5、5~10、10~15、15~20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、又は250%のいずれかの範囲内にある場合は、別の結合剤と「実質的に同一の親和性」を有すると言うことができる。典型的な模倣物として、例えば、PD-1に特異的に結合する有機化合物、又はアフィボディ(Nygren,et al.FEBS J.275(11):2668-76(2008))、アフィリン(Ebersbach,et al.J.Mol.Biol.372(1):172-85(2007))、アフィチン(Krehenbrink,et al.J.Mol.Biol.383(5):1058-68(2008))、アンチカリン(Skerra,A.FEBS J.275(11):2677-83(2008))、アビマー(Silverman,et al.Nat.Biotechnol.23(12):1556-61(2005))、DARPin(Stumpp,et al.Drug Discov.Today 13(15-16):695-701(2008))、フィノマー(Grabulovski,et al.J.Biol.Chem.282(5):3196-3204(2007))、Kunitzドメインペプチド(Nixon,et al.Curr.Opin.Drug Discov.Devel.9(2):261-8(2006))及び/又はモノボディ(Koide,et al.Methods Mol.Biol.352:95-109(2007))などが挙げられる。他の模倣物として、例えば、抗体の誘導体、例えば、Fab、Fab2、Fab’一本鎖抗体、Fv,単一ドメイン抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、多価抗体、キメラ抗体、イヌ-ヒトキメラ抗体、イヌ-マウスキメラ抗体、イヌFcを含む抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、イヌ化、CDRグラフト化抗体、サメ抗体、ナノボディ、ラクダ抗体、マイクロボディ及び/又はイントラボディ又はそれらの誘導体が挙げられる。当業者に理解されるように、その他の結合剤もこの中で提供される。
【0014】
PD-1に対する特異性を有する(例えば、結合する)結合剤を作製するために、当業者に知られている任意の方法を使用してよい。例えば、モノクローナル抗体を作製及び単離するために、マウスなどの動物に1つ又は複数のPD-1タンパク質(例えば、PD-1 Fc融合タンパク質及び/又はPD-1 Hisタグタンパク質)を投与することができる。次に、抗PD-1ハイブリドーマ細胞株を作製するために、活性化ヒトTリンパ球で発現されたPD-1に対して(例えば、フローサイトメトリー及び/又は顕微鏡によって特定されるような)血清反応性を示す動物を選択する。これを、複数回ラウンドにわたり繰り返してよい。例えば、第1ラウンドの結合剤選択のための一次基準は:i)フローサイトメトリーによる活性化ヒトTリンパ球上のPD-1の染色レベル;(ii)既存の抗PD-1抗体と比較したCDR VH及びVL配列の多様性;及び(iii)PD-L1と又はPD-1上の異なるエピトープに結合する数種の市販されている抗PD-1抗体結合の1つと事前結合させたPD-1コンジュゲートLuminexビーズを用いた競合結合試験によって実施されるエピトープマッピング;を含んでいてよいが、それらに限定されない。典型的な第1又は第2ラウンドの選択は、例えば、親和性結合(抗PD-1抗体の刺激能力と相関しない可能性があるため一次基準ではない)、及び/又は結合剤をアゴニスト又はアンタゴニストとして同定するための機能的特性解析も含んでいてよい。
【0015】
本明細書の実施例1に記載するように、例えば、機能的疲弊回復アッセイ(Exhaustion Functional recovery assay)(EFRA)を使用できる。このアッセイでは、T細胞などの免疫細胞を疲弊から救済する能力について試験結合剤をアッセイすることができる。これは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のようなウイルスに由来する試験ペプチドなどの抗原の存在下において、そのような細胞に増殖を回復させる結合剤の能力を測定することによって特定できる。増殖は、例えば試験ペプチド単独のような対照、又は例えばMK-3475(ペンブロリズマブ)のような陽性対照である抗PD-1抗体と比較して、CFSEアッセイにおいて測定される。一部の実施形態では、その比較が、ペプチド単独対照又はアイソタイプ対照マウスIgG1抗体と共にペプチドを使用した場合と比較して、有意差(例えば、<0.001のP値)を示す場合に、結合剤は増殖を回復させると特定される。このアッセイを用いて、PD-1への結合について他の結合剤(例えば、PD-L1又はPD-L2)と競合する及び/又は免疫細胞の機能的回復をもたらす結合剤(例えば抗体)を同定することができる。実施例1は、Luminex(登録商標)に基づくアッセイを使用してこの中に記載されている(例えば、表3に列挙した)抗体をエピトープマッピングする2つの方法も記載する。1つの生化学的アッセイでは、PD-1 Fc融合タンパク質をビーズに結合させ、表3に記載されている抗PD-1抗体と2つの異なる市販の抗PD-1抗体の内の1つとの間で、競合結合試験を実施する。実施例1は、PD-1上の別個のエピトープに結合するモノクローナル抗体の4つのクラス:クラス1(PD-1とPD-L1との相互作用をブロックする第1モノクローナル抗体と競合的)、クラス2(PD-1に結合するがPD-1とPD-L1との相互作用をブロックしない第2モノクローナル抗体と競合的)、クラス3(第1及び第2モノクローナル抗体の両方と競合的)及びクラス4(第1及び第2抗体のいずれとも非競合的)を記載する。別個のアッセイにおいて、組換えPD-1タンパク質に対する結合についての競合を、表3に列挙する抗PD-1抗体とビオチン化PD-L1組換えタンパク質について評価した。EFRAにおいて増殖を誘導した抗体は、PD-1上の異なるエピトープに結合するとして提案された4つの結合クラスの全てから同定された。さらに、EFRAは、PD-1/PD-L1相互作用にブロッキング性又は非ブロッキング性のいずれかでありかつHIV特異的CD8 T細胞に対する増殖機能を特異的に回復させた抗PD-1抗体の同定を可能にした。
【0016】
結合剤の組合せも同定することができる。一部の実施形態では、1つ又は複数の結合剤のみを使用して他の物質を使用しないで得られた結果と比較して統計的有意差をもたらす組合せを同定することができる。一部の実施形態では、免疫細胞機能を回復させる相乗的又は協働的能力を示す組合せを同定できる。一部の実施形態では、組合せは、PD-1とPD-L1との相互作用をブロックする第1結合剤を、PD-1とPD-L1との相互作用をブロックしない第2結合剤とともに含んでいてよい。第1及び第2結合剤は、例えば2種以上の異なるモノクローナル抗体又はそれらの誘導体などの異なる構成要素であっても、或いは、例えば二重機能性抗体(複数の結合特異性を有する単一抗体又はその誘導体)のような同一構成要素上に見いだされてもよい。例えば、典型的な二重機能性抗体は、PD-1とPD-L1との相互作用をブロックする第1結合領域、及びPD-1とPD-L1との相互作用をブロックしない第2結合領域を含んでいてよい。さらに、複数のタイプの各結合剤を提供する組合せも企図されている。例えば、組合せは、PD-1とPD-L1との相互作用をブロックしない1つ又は複数の結合剤とともに、PD-1とPD-L1との相互作用をブロックする複数のタイプの結合剤を含んでいてよい。一部の実施形態では、組合せは、PD-1とPD-L1との相互作用をブロックしない複数の結合剤とともに、PD-1とPD-L1との相互作用をブロックする1つ又は複数の結合剤を含んでいてよい。一部の実施形態では、組合せは、PD-1とPD-L1との相互作用をブロックする複数の結合剤を、PD-1とPD-L1との相互作用をブロックしない複数の結合剤とともに含んでいてもよい。本明細書に記載されているそのような組合せは、CTLA-4などに対する抗体のような、免疫細胞機能に影響し得る1又は複数の他の作用物質と組み合わせてもよい。当業者は、多数のそのような組合せが本明細書に記載される用途に好適となり得ることを認識できるであろう。
【0017】
結合剤が抗体である場合、その可変領域及び/又は相補性決定領域(「CDR」)に対応するヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列に関して、抗体を同定することができる。可変領域/CDR配列は、1つ又は複数の他の可変領域/CDRアミノ酸配列と組み合わせて使用できる。可変領域/CDRアミノ酸配列は、代りに及び/又はさらに、抗体分子の1つ又は複数のタイプの定常領域ポリペプチドに隣接させることができる。例えば、表1A及び1Bに示したCDRアミノ酸配列は、同一又は異なる種(例えば、ヒト、ヤギ、ラット、ヒツジ、ニワトリ)の任意の抗体分子の及び/又はそのCDRアミノ酸配列が由来する抗体サブタイプの、定常領域に隣接又は結合していてよい。例えば、例示的な結合剤は、列挙されているハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体、又はそれに由来する、又はそれに関連するものでよく、及び/又は表3及び11~13に示されているのとほぼ同一の親和性及び/又は増殖効果を有する、及び/又は同じ結合クラスを有するものでよく、及び/又は配列番号1~190のアミノ酸配列及び/又は表1A及び1Bに示すアミノ酸配列のいずれか1つ又は複数を有していてもよい。結合剤は、それぞれが1つ又は複数の定常領域及び/又は可変領域を含む抗体重鎖及び/又は軽鎖を含んでいてよい。可変領域は、典型的には、抗体の結合特異性を決定できる1つ又は複数のCDRを含んでいる。モノクローナル抗体は、そのような可変領域の(例えば、そのようなヌクレオチド配列によってコードされ得る)アミノ酸配列の解析によって同定することができる。例えば、PD-1に結合する結合剤の重鎖CDRの典型的なアミノ酸配列は、配列番号1~190からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列及び/又は表1A及び/又は1Bに示す任意の他の配列を含む1つ又は複数を含んでいてよい。本明細書に記載されるアミノ酸配列のいずれか及び/又はそれらの任意の断片及び/又は誘導体を、標準技術を使用して、任意の順序及び/又は組合せで任意の他の可変領域及び/又はCDRと結合させてハイブリッド及び/又は融合結合剤を形成する、及び/又は他の重鎖及び/又は軽鎖可変領域内に挿入してもよい。本開示のPD-1(例えば、ヒトPD-1)結合剤内に見られるCDRの典型的な組合せ(例えば、重鎖及び/又は軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列の組合せ)として、例えば、表1A及び/又は1Bに示す実施形態が挙げられる。
【0018】
【表1A】
【0019】
【表1B】
【0020】
好ましい実施形態では、各クローンの重鎖CDRを、それらのそれぞれの軽鎖CDRと組み合わせて結合剤とする。一部の実施形態では、結合剤は、下記に示す重鎖CDR及び軽鎖CDRを含んでいてよい:
122F10(配列番号1、24、47、70、93、及び116);
139D6 (配列番号2、25、48、71、94、及び117);
135D1 (配列番号3、26、49、72、95、及び118);
134D2 (配列番号4、27、50、73、96、及び119);
121G1 (配列番号5、28、51、74、97、及び120);
136B5 (配列番号6、29、52、75、98、及び121);
127C2 (配列番号7、30、53、76、99、及び122);
137F2 (配列番号8、31、54、77、100、及び123);
138H5 (配列番号9、32、55、78、101、及び124);
140A1 (配列番号10、33、56、79、102、及び125);
135H12(配列番号11、34、57、80、103、及び126);
131D11(配列番号12、35、58、81、104、及び127);
132F7 (配列番号13、36、59、82、105、及び128);
126E4 (配列番号14、37、60、83、106、及び129);
135G1 (配列番号15、38、61、84、107、及び130);
136E10(配列番号16、39、62、85、108、及び131);
135C12(配列番号17、40、63、86、109、及び132);
136F4 (配列番号18、41、64、87、110、及び133);
136B4 (配列番号19、42、65、88、111、及び134);
135E10(配列番号20、43、66、89、112、及び135);
140G5 (配列番号21、44、67、90、113、及び136);
122H2 (配列番号22、45、68、91、114、及び137);又は
139F11(配列番号23、46、69、92、115、及び138)。

この中に記載されているCDRの1つ又は複数を含む例示的な重鎖及び軽鎖可変領域は、限定はされないが、ヒト化重鎖及び/又は軽鎖可変領域を含んでいてよい。例えば、137F2重鎖CDR(配列番号8、31及び54)を含む例示的なヒト化「137F2」可変重鎖配列として、下記のものが挙げられる:

QMQLVQSGPEVKKPGTSVKVSCKASGFTFTNYWIGWVRQAPGQALEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTTVTVSS(A35790-VH(配列番号139));

QMQLVQSGPEVKKPGTSVKVSCKASGFTFTNYWIGWVRQAPGQALEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTTVTVSS(A35796-VH(配列番号140));

QMQLVQSGPEVKKPGTSVKVSCKASGFTFTNYWIGWVRQAPGQALEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTTVTVSS(A35793-VH(配列番号141));

QMQLVQSGPEVKKPGTSVKVSCKASGFTFTNYWIGWVRQAPGQALEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTTVTVSS(A35818-VH(配列番号142));

QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYWIGWVRQAPGQGLEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTTVTVSS(A35795-VH(配列番号143));

EVQLVQSGAEVKKHGESLKISCKGSGYSFTNYWIGWVRQATGQGLEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTTVTVSS(A35797-VH(配列番号144));

QMQLVQSGAEVKKTGSSVKVSCKASGYTFTNYWIGWVRQMPGKGLEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTTVTVSS(A35799-VH(配列番号145));

QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTNYWIGWVRQAPGKGLEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTTVTVSS(A35805-VH(配列番号146));

QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYWIGWVRQAPGQGLEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTLVTVSS(137F VH1(配列番号147));

QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKAAGYTFTNYWIGWVRQAPGQGLEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTMTADTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTLVTVSS(137F VH2(配列番号148));

QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYWIGWVRQAPGQGLEWIGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTMTADTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTLVTVSS(137F VH1b(配列番号149));及び/又は、

QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYWIGWIRQAPGQGLEWIGDIYPGGGYTNYNEKFKGRATLTADTSTSTVYMEVSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTLVTVSS(137F VH1c(配列番号150))。

137F2軽鎖CDR(配列番号77、100及び123)を含む例示的なヒト化「137F2」可変軽鎖配列として、下記のものが挙げられる:

DVVMTQSPAFLSVTPGEKVTITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(A35790-VL(配列番号151));

DVVMTQSPAFLSVTPGEKVTITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(A35796-VL(配列番号152));

DVVMTQSPAFLSVTPGEKVTITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLEAEDAATYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(A35793-VL(配列番号153));

DVVMTQSPAFLSVTPGEKVTITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQAPRLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLEAEDAATYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(A35818-VL(配列番号154));

DVVMTQSPAFLSVTPGEKVTITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQAPRLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(A35795-VL(配列番号155));

DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(A35797-VL(配列番号156));

DVVMTQSPAFLSVTPGEKVTITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(A35799-VL(配列番号157));

DVVMTQSPAFLSVTPGEKVTITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLEAEDAATYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(A35805-VL(配列番号158));

DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSYTLRTFGQGTKLEIK(137F VL1(配列番号159));

DIVMTQSPDSLAVSLGERATITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIFWASTRESGVPDRFLGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSYTLRTFGQGTKLEIK(137F VL2(配列番号160));


DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSYTLRTFGQGTKLEIK(137F VL1b(配列番号161));

DIVMTQSPDSLAVSLGERATITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIFWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSYTLRTFGQGTKLEIK(137F VL1c(配列番号162));及び/又は、

DIVMTQSPDSLAVSLGERATMTCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIFWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSVQAEDVAVYYCKQSYTLRTFGQGTKLEIK(137F VL1d(配列番号163))。

35C12重鎖CDR(配列番号17、40及び63)を含む例示的なヒト化「135C12」可変重鎖配列として下記のものが挙げられる:

EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTNFYIHWVRQAPGQRLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTTVTVSS(A35775-VH(配列番号164));

EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTNFYIHWVRQARGQRLEWIGSIYPNYGDTAYNQKFKDRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTTVTVSS(A35783-VH(配列番号165));

EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTNFYIHWVRQAPGQRLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTTVTVSS(A35774-VH(配列番号166);

EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTNFYIHWVRQARGQRLEWIGSIYPNYGDTAYNQKFKDRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTTVTVSS(A36443-VH(配列番号167));

EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTNFYIHWVRQAPGKGLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTTVTVSS(A35777-VH(配列番号168));

EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTNFYIHWVRQMPGKGLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTTVTVSS(A35789-VH(配列番号169));

EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTNFYIHWVRQMPGKGLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTTVTVSS(A36448-VH(配列番号170));

EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTNFYIHWVRQMPGKGLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTTVTVSS(A36437-VH(配列番号171));

QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNFYIHWVRQAPGQGLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTLVTVSS(135C VH1(配列番号172));

QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNFYIHWVRQAPGQGLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRVTMTVDKSTSTVYMELRSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTLVTVSS(135C VH2(配列番号173));

QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNFYIHWVKQAHGQGLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRVTMTVDKSTSTVYMELRSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTLVTVSS(135C VH3(配列番号174));

QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNFYIHWVRQAPGQGLEWIGSIYPNYGDTAYNQKFKDRVTMTVDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTLVTVSS(135C VH1b(配列番号175));

QVQLVQSGAEVKKPGASVKMSCKASGYTFTNFYIHWVRQAPGQGLEWIGSIYPNYGDTAYNQKFKDRATLTVDTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTLVTVSS(135C VH1c(配列番号176));及び/又は、

QVQLVQSGAEVKKPGASVKMSCKASGYTFTNFYIHWVRQAPGQGLEWIGSIYPNYGDTAYNQKFKDRATLTVDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTLVTVSS(135C VH1d(配列番号177))。

135C12軽鎖CDR(配列番号86、109及び132)を含む例示的なヒト化「135C12」可変軽鎖配列として下記のものが挙げられる:

DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGQAPRLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(A35775-VL(配列番号178));

DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGKTPKLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(A35783-VL(配列番号179));

DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGKAPKLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(A35774-VL(配列番号180));

DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGQAPRLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISRLEPEDFAVYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(A36443-VL(配列番号181));

DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGQAPRLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(A35777-VL(配列番号182));

DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGQAPRLLIYHTSSLHSGIPARFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(A35789-VL(配列番号183));

DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGKTPKLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(A36448-VL(配列番号184));

DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGQAPRLLIYHTSSLHSGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFAVYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(A36437-VL(配列番号185));

DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGKAPKLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(135C VL1(配列番号186));

DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGKAVKLLIYHTSSLHSGVPLRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(135C VL2(配列番号187));

DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKSDGAVKLLIYHTSSLHSGVPLRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(135C VL3(配列番号188));

DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGKAPKLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(135C VL1b(配列番号189));及び/又は、

DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGKAVKLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLELK(135C VL1c(配列番号190))。

これらのアミノ酸配列をコードする例示的な核酸配列、及び/又はそれを特定する方法もこの中に記載されている(例えば、配列番号191~243)。上記の或いはこの中に記載されている適合するヒト化可変配列の任意のものを互いに組み合わせて、PD-1に結合する抗体のような結合剤を提供してもよい。例えば、ある実施形態では、配列番号143及び155を組み合わせて結合剤にしてよく(例えばモノクローナル抗体(mAb)A35795のように);配列番号166及び180を組み合わせて結合剤にしてよく(例えばmAb A35774のように);配列番号196及び189を組み合わせて結合剤にしてよく(例えばmAb 135C H1cL1bのように);配列番号196及び190を組み合わせて結合剤にしてよい(例えばmAb 135C H1cL1cのように)。さらに、表2に示すように、可変重鎖及び軽鎖が結合剤内に存在して(例えば結合して)もよい:
【0021】
【表2】
【0022】
「ブロッキング」抗体は、限定はされないが、例えばLuminex生化学的PD-1/PD-L1相互作用アッセイ(図1)などの任意の適したアッセイにより特定される、細胞表面上のPD-1への結合に関してPD-L1と競合するものである。ブロッキング抗PD-1抗体を用いて実施するエピトープマッピング試験は、PD-1/PD-L1相互作用とオーバーラップするPD-1の領域を位置づける。「非ブロッキング」抗体は、限定はされないが、例えばLuminex生化学的PD-1/PD-L1相互作用アッセイ(図1)などの適したアッセイにおいてPD-1への結合に関してPD-L1と部分的にしか競合しない又は全く競合しないものである。エピトープマッピング試験及び/又はヒトPD-1/Fab共結晶化試験は、非ブロッキング抗体が、PD-1/PD-L1相互作用とオーバーラップする部位ではPD-1と結合しないことを確認する。ある実施形態では、結合剤は、例えば、二重特異性抗体中にそのような配列の対を2組以上含んでいてよい(例えば、配列番号143及び155、並びに配列番号166及び180を組み合わせて結合剤又は結合剤の組合せにしてよい)。他の組合せも、当業者に確認されるように、有用となりうる。
【0023】
表1A及び/又は1BのCDRを含む結合剤、又はこの中に記載されている(例えば、配列番号139~190を含む及び/又は表2に示されている)結合剤は、下記の特徴を示し得る:
【0024】
【表3】
【0025】
実施例で説明するように、エピトープマッピング試験は、「P1」及び「P2」と指定される、この中に記載されている結合剤が結合しうるPD-1上の少なくとも2つの保存されたパッチ(線形及び/又は立体構造エピトープを含む)を示した(例えば、図11a及び11bを参照)。P1パッチは、進化的に保存されており、PD-1とPD-L1/PD-L2リガンドとの間の相互作用に関与するPD-1の中心領域に相当し、図2及び図11aにおいて紫の円に該当する。第2の「パッチ」P2も進化的に保存されており、P1パッチと同様の表面領域であるが異なるアミノ酸配列を占める(図11b)。P2は、PD-1における既に同定された構造的又は機能的役割を有していない。例えば135C12(配列番号17、40、63、86、109、及び132)、139D6(配列番号2、25、48、71、94、及び117)、135D1(配列番号3、26、49、72、95、及び118)、及び136B4(配列番号19、42、65、88、111、及び134)のアミノ酸配列を含む抗PD-1抗体などの、この中に記載されているPD-1結合剤は、P2パッチとオーバーラップするエピトープに結合し、それによってPD-1のこの新たに同定された機能的領域の機能的重要性の直接の証拠を提供する。実施例は、図3に示される改変PD-1ポリペプチド及び配列番号244~274を用いて実施したエピトープマッピング試験を記載する。これらの試験は、最も高い「機能的能力」又は「アンタゴニスト活性」を有する非ブロッキング抗体が、M4アミノ酸置換の領域(セリン38をアラニンへ、プロリン39をアラニンへ、及びロイシン41をアラニンへ(図3;配列番号247))、及び/又はM17アミノ酸置換の領域(アスパラギン102をアラニンへ、及びアルギニン104をアラニンへ(図3;配列番号260))、及び/又はM18アミノ酸置換の領域(アスパラギン酸105をアラニンへ(図3;配列番号261))、及び/又はM26アミノ酸置換の領域(アルギニン138をアラニンへ、及びグルタミン酸141をアラニンへ(図3;配列番号269))、及び/又はM31アミノ酸置換の領域(ロイシン41をアラニンへ、及びバリン43をロイシンへ(図3;配列番号274))とオーバーラップするPD-1の「パッチ」に結合することを示した。この「パッチ」はこの中で「P2」と称される。これらの試験は、P2が、そのような非ブロッキング抗体が結合する少なくとも1つのエピトープ(線形エピトープ、立体構造エピトープ、又はそれらの組合せを含む)を含むことを実証する。この領域がPD-1の機能活性に従来の関わりを持たないことを考えると、P2への結合が、PD-1へのアンタゴニスト活性が発揮されうるPD-1上の新規部位での新規な作用メカニズムを示すことをここで提案する。PD-1のP2領域と相互作用できる他の抗体、抗体断片、又は他のタンパク質結合剤も、PD-1/PD-L1相互作用の遮断を介して作用する抗PD-1抗体とは区別されかつそれに相補的な態様で、PD-1アンタゴニストとして作用し得ることをさらに提案する。この中に記載されている結合剤は、例えば、今はまだ同定されていないリガンドと相互作用する;PD-1の多量体化を干渉する、誘導する及び/又は増強する;及び/又は、P2と相互作用する(例えば結合する)ことにより、PD-1に関連する細胞内シグナル伝達を変化させる;ものであってよい。従って、P2と相互作用する(例えば結合する)この中に記載されている結合剤は、これらのメカニズム又はまだ同定されるべき任意の他のメカニズムを介してPD-1アンタゴニスト機能を提供しうる。
【0026】
従って、本開示は、細胞内又は細胞上のPD-1のこのP2パッチと相互作用させることによりPD-1の機能に影響を及ぼす方法を提供する。PD-1のP2パッチ内のアミノ酸残基は、トレオニン36、フェニルアラニン37、セリン38、プロリン39、ロイシン41、バリン43、アラニン50、トレオニン51、フェニルアラニン52、トレオニン53、システイン54、セリン55、アスパラギン102、アルギニン104、アスパラギン酸(アスパラギン酸塩)105、フェニルアラニン106、ヒスチジン107、メチオニン108、アルギニン138及びグルタミン酸(グルタミン酸塩)141を含んでいてよく、ここでアミノ酸の番号付けは配列番号275に対応する。ある実施形態では、P2パッチのアミノ酸残基は、トレオニン36、フェニルアラニン37、アラニン50、トレオニン51、フェニルアラニン52、トレオニン53、システイン54、セリン55、アスパラギン酸(アスパラギン酸塩)105、フェニルアラニン106、ヒスチジン107及びメチオニン108を含んでいてよく、ここでアミノ酸の番号付けは配列番号275に対応する。ある実施形態では、P2パッチのアミノ酸残基は、アミノ酸残基 セリン38、プロリン39、ロイシン41、バリン43、アスパラギン102、アルギニン104、及び/又はアスパラギン酸(アスパラギン酸塩)105を含んでいてよい。従って、ある実施形態では、方法は、アミノ酸 トレオニン36、フェニルアラニン37、セリン38、プロリン39、ロイシン41、バリン43、アラニン50、トレオニン51、フェニルアラニン52、トレオニン53、システイン54、セリン55、アスパラギン102、アルギニン104、アスパラギン酸(アスパラギン酸塩)105、フェニルアラニン106、ヒスチジン107、及び/又はメチオニン108と相互作用させることを含んでいてよく、ここでアミノ酸の番号付けは配列番号275に対応する。ある実施形態において、その方法は、アミノ酸 トレオニン36、フェニルアラニン37、アラニン50、トレオニン51、フェニルアラニン52、トレオニン53、システイン54、セリン55、アスパラギン酸(アスパラギン酸塩)105、フェニルアラニン106、ヒスチジン107及び/又はメチオニン108と相互作用させることを含んでいてよい。ある実施形態では、その方法は、アミノ酸 セリン38、プロリン39、ロイシン41、バリン43、アスパラギン102、アルギニン104、及び/又はアスパラギン酸(アスパラギン酸塩)105と相互作用させることを含んでいてよい。ある実施形態では、その方法は、P2パッチ(例えば、上記のアミノ酸残基を含むPD-1の部分)内の及び/又はP2パッチとオーバーラップする任意のアミノ酸と相互作用させることを含む。そのような方法のある実施形態において、その方法は、配列番号275のセリン38、プロリン39、及び/又はロイシン41に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基(M4;図3;配列番号247);及び/又は配列番号275に関連してアスパラギン102及び/又はアルギニン104に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基(M17;図3;配列番号260);及び/又は配列番号204に関連してアスパラギン酸(アスパラギン酸塩)105に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基(M18;図3;配列番号261);及び/又はアルギニン138及び/又はグルタミン酸(グルタミン酸塩)141に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基(M26;図3;配列番号269)及び/又はロイシン41及び/又はバリン43に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基(M31;図3;配列番号274)と相互作用させることを含む。ある実施形態において、相互作用は、そのようなアミノ酸残基の任意の1つ又は複数を改変(例えば、置換、欠失)することにより低減及び/又は排除されうる。ある実施形態において、その方法は、PD-1の機能に拮抗的に(antagonistically)影響を及ぼすことを含む。ある実施形態において、その方法は、PD-1結合剤を用いてPD-1と相互作用させることを含む。ある実施形態において、PD-1結合剤は、例えば、配列番号275のロイシン41及び/又はバリン43(M4)に対応するアミノ酸残基の1つ又は複数;及び/又は配列番号275に関連してアスパラギン102及び/又はアルギニン104(M17)に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基;を含む領域(例えばエピトープ)に特異性を有する。ある実施形態において、相互作用は、PD-1(配列番号275)に結合する能力を有するがPD-1 M4(配列番号247)には結合しない結合剤によって生じうる、及び/又はPD-1(配列番号275)に結合する能力を有するがPD-1 M17(配列番号260)には結合しない結合剤によって生じうる。ある実施形態において、その方法は、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2との相互作用に関与する部位(例えばP1パッチ)及びP2で、PD-1と相互作用させることを含んでいてよい。表現「配列番号275の」アミノ酸「に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基」は、配列番号275(図3H)で見られるのと同様の位置にある、別のバージョンのPD-1におけるアミノ酸を称する。しかしながら、当業者は、配列番号275(図3H)以外のPD-1ポリペプチドにおけるあるアミノ酸が、ポリペプチド内のその文脈によって、配列番号275(図3H)における特定のアミノ酸に「対応する」として特定され得ることを理解するであろう。例えば、サルのPD-1(配列番号276(図3I))は、配列番号275と同様に位置41にロイシンを含む。しかし、別のPD-1の番号付けは、その特定のPD-1において「対応する」ロイシンが例えば位置40又は43に見られうるように、例えば1つ又は複数の付加、欠失及び/又は置換のせいで、異なっていてよい。しかしながら、そのロイシンは、(例えば、配列番号275(図3H)と同様にそれはアミノ酸PAとLVで囲まれるといった)配列番号275(図3H)内のその文脈に関連してロイシン41に「対応する」ことが当業者に理解されるであろう。ある実施形態において、結合剤は、PD-1(配列番号275)のアミノ酸F37、P39、A40、L41、V43、L138、R139、及びR143;及び/又はPD-1(配列番号275)のアミノ酸P34、S137、及びR139に結合する能力を有する(例えばA35774は、V CDRループに関してF37、P39、A40、L41、V43、L138、R139及びR143、またV CDRループに関してP34、E136、S137及びR139を含む)。当業者に理解されるように、そのような方法及びアミノ酸(例えば別のものに「対応する」もの)の他の実施形態もこの中で企図されている。
【0027】
結合親和性は、当業者が利用できる任意の技術によって特定できる。表3に示す結合親和性データは、フィトヘマグルチニン(PHA)を用いて3~6日間にわたり刺激したCD4 T細胞上の内因性細胞表面PD-1のフローサイトメトリー染色によって評価した。結合クラスも、当業者が利用できる任意の技術によって特定できる。表3に提示した結合クラスデータは、Luminexアッセイ競合結合試験によって特定した。表3において、結合クラス1のモノクローナル抗体は、EH12.2H7クローン市販抗体(BioLegend社、San Diego,CAから入手可能(例えば、製品番号329905))と競合的であると特定された抗体である;クラス2の抗体は、J116クローン市販抗体(Affymetrix eBioscience社、San Diego,CAから入手可能(例えば、製品番号16-9989-80))と競合的であると特定された抗体である;クラス3の抗体は、EH12.2H7抗体及びJ116抗体の両方と競合的であると特定された抗体である;及びクラス4のモノクローナル抗体クローン抗体は、EH12.2H7抗体及びJ116抗体の両方の存在下でPD-1に結合すると特定された抗体である。
【0028】
増殖効果は、当業者が利用できる任意の技術によって特定できる。例えば、上述し、及び実施例1で使用したEFRAシステムを使用できる。そのようなアッセイを使用して、表3に示す増殖効果データを特定した。簡単に説明すると、慢性HIV感染した対象から末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、その細胞を抗PD-1抗体の存在下及び非存在下においてHIV特異的ペプチドで刺激する、カルボキシフルオレセインスクシニミジルエステル(CFSE)アッセイである。対照抗PD1抗体(Merck社の抗体MK-3475、ペムブロリズマブ又はキイトルーダ(登録商標)とも称される(米国特許第8、354、509号明細書、及び同第8、900、587号明細書に記載され、Merck&CO.から入手可能);及び/又はRASKGVSTSGYSYLH(配列番号287)、LASYLES(配列番号288)、QHSRDLPLT(配列番号289)、NYYMY(配列番号290)、GINPSNGGTNFNEKFKN(配列番号291)、及び/又はRDYRFDMGFDY(配列番号292)を含む))についても陽性対照として試験した。6日間のインキュベーション後、HIV特異的CD8 T細胞の増殖を、ペプチド単独対照と比較して抗PD-1処理サンプルにおいて評価し、対照を超えるパーセンテージとして結果を表わした(増殖効果)。
【0029】
一部の実施形態では、例えば抗体などのPD-1結合剤を同定及び特性付けるために使用される技術を、そのような結合剤を同定及び特性解析するためのシステムを提供するために組み合わせることができる。例えば、1つ又は複数のモノクローナル抗体のような1つ又は複数の候補結合剤を、免疫原性ペプチドの存在下での増殖等によって測定されるような、免疫細胞に対して機能を回復させる候補結合剤の能力を特定するために、EFRA又は類似のアッセイによってアッセイすることができる。一部の実施形態では、このタイプのアッセイは、さらに検討すべき候補結合剤が免疫細胞機能を回復させることができることを保証するための最初のスクリーンとして使用できる。一部の実施形態では、これらのタイプのアッセイの後に、例えば活性化末梢血単核細胞(PBMC)などの免疫細胞に対する結合親和性を特定するアッセイを実施することができる。一部の実施形態では、このアッセイは、例えばFACS(fluorescence activated cell sorting)などの技術を使用してよい。一部の実施形態では、このアッセイは、非特異的結合の有無及び/又は抗PD1抗体(例えば、Merck社の抗体MK-3475)などの公知の結合剤を使用する競合結合試験を含んでいてよい。これらのアッセイに続き、例えば上記の表1A及び/又は1Bに提供するような候補結合剤のCDRのシーケシングを行ってよい。この中に記載されているEFRA、親和性特定、エピトープマッピング試験、及びCDR同定法は、一緒に、それらを用いて候補結合剤を同定できるシステムを提供する。
【0030】
表1A及び/又は1Bのアミノ酸配列のいずれか、及び/又は配列番号139~190のいずれか(及び/又は任意のそれらの1つ又は複数の断片及び/又は誘導体)はさらに、当業者が所望する任意の他のアミノ酸によって置換してよい。例えば、当業者は、特定のアミノ酸を下記の表4に示す他のアミノ酸で置き換えることによって保存的置換を行うことができる。選択される特定のアミノ酸置換は、選択される部位の位置に依存し得る。そのような保存的アミノ酸置換は、その位置でのアミノ酸残基のサイズ、極性、電荷、疎水性又は親水性への効果がほとんど又は全くないように、及び特に、PD-1結合の低減を生じさせないように、天然アミノ酸残基の非天然残基による置換を含んでいてよい。
【0031】
【表4】
【0032】
従って、この中に記載されている結合剤のアミノ酸配列中の、保存的又は非保存的なアミノ酸置換も企図されている。例えば、この中に記載されているヒト化可変重(V)鎖及び軽(V)鎖のアミノ酸配列(例えば、配列番号139~190)に対応するアミノ酸置換を行ってよい。例示的な非保存的及び保存的置換(表4を用いて同じものを説明できる)を、下記の表5~8(図25A~Dも参照)に示す:
【0033】
【表5】
【0034】
【表6】
【0035】
【表7】
【0036】
【表8】
【0037】
一部の実施形態では、本開示は、PD-1及び少なくとも1つの他の第2の抗原(例えば、細胞表面タンパク質)に単一結合剤が結合できるように、複数の特異性を有する結合剤を提供する。一部の実施形態では、第2の抗原は、感染性因子に感染した細胞によって発現される抗原であってよい。例えば、典型的な第2の抗原は、HIV Env抗原であってよい。そのような結合剤は、第2の抗原に結合できる及び/又は感染性因子を中和するように機能することができる。ある実施形態では、例えばPD-1及びHIV抗原(例えばEnv及び/又は他の抗原など)に対する二重特異性を有する二重特異性結合剤である。HIV免疫原は、この中に記載されたサブタイプ又は任意の他のサブタイプのいずれに由来するものであってもよい。一部の実施形態では、そのような結合剤は:PD-1アゴニスト/Env結合;PD-1アゴニストPD-1/Env結合及び中和;PD-1アンタゴニスト/Env結合;及び/又はPD-1アンタゴニスト/PD-1/Env結合及び中和を含み得る。様々なサブタイプの有病率を考えると、HIV-1サブタイプB及び/又はC由来の抗原を選択するのが好ましい場合がある。また、単一組成物中に、複数のHIVサブタイプ(例えば、HIV-1サブタイプB及びC、HIV-2サブタイプA及びB、又はHIV-1及びHIV-2サブタイプの組合せ)由来の抗原に特異性を有する結合剤を含めるのが望ましい場合もある。がんなどの疾患を治療するために、複数のPD-1特異性(例えば、2つの異なるエピトープに特異的な二重特異性PD-1a/PD1bアンタゴニストPD-1抗体)及び/又はPD-1及び1つ以上の腫瘍抗原(例えば、がん精巣(CT)抗原(すなわち、MAGE、NY-ESO-1);メラノサイト分化抗原(すなわち、Melan A/MART-1、チロシナーゼ、gp100);突然変異抗原(すなわち、MUM-1、p53、CDK-4);過剰発現「自己」抗原(すなわち、HER-2/neu、p53);及び/又はウイルス抗原(すなわち、HPV、EBV))の両方に対する特異性を有する結合剤を得ることが有益となり得る。結合剤(例えば、モノクローナル抗体)は一般的に、上述したように作製することができる。そのような結合剤の特異性を、当業者に広く利用可能な技術を使用して、単一結合剤に再結合させてよい。一部の実施形態では、効果的な複数の特異性を有する試薬を提供するために、複数の単一特異性結合剤を組み合わせて使用する(例えば、投与する)してもよい。
【0038】
一部の実施形態では、PD-1(及び/又は複数の特異性を有する結合剤の場合には別の抗原)を発現する細胞集団の機能を標的化及び阻害する、及び/又はその細胞集団を排除するために、本明細書に記載される結合剤を活性薬剤にコンジュゲートさせてもよい。例えば、複製可能なHIVを含むCD4 T細胞集団を、結合剤/薬物コンジュゲート(例えば、抗体-薬物コンジュゲート(ADC))を用いて、標的化及び排除することができる。単一及び/又は二重特異性候補結合剤は、1つ又は複数のタイプの薬物(例えば、DNAを損傷させる薬物、微小管を標的とする薬物)とコンジュゲートさせてよい。また、本明細書に記載される結合剤及び/又はそれらの誘導体は、in vitro及び/又はin vivoでの使用のために、機能的薬剤に隣接及び/又はコンジュゲートさせてもよい。例えば、結合剤を、細胞毒性薬又は毒素のような機能的成分、及び/又は例えばジフテリアA鎖、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン、クロチン、フェノマイシン、エノマイシンのようなそれらの活性断片に、隣接及び/又はコンジュゲートさせてよい。好適な機能的成分は、放射化学薬品を含んでいてよい。抗体のような結合剤は、当技術分野における標準技術を使用して、1又は複数の機能的薬剤に隣接及び/又はコンジュゲートさせることができる。
【0039】
一部の実施形態では、結合剤は、例えば抗感染剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬)などの他の薬剤と共に投与することができる。例えば、本明細書に記載される結合剤は、モノクローナル抗体及び/又は他の試薬、例えばニボルマブ(MDX-1106、BMS-936558(Topalian,et al.N.Eng.J.Med.2012;366(26):2443-2454)、MDX-1106、ONO-4538としても知られている、Bristol-Myers Squibb社から入手できる完全ヒトIgG4モノクローナル抗体)、ペンブロリズマブ(MK-3475及びSCH 900475としても知られている、Merck社から入手できるヒト化IgG4モノクローナル抗体)、ピジリズマブ(CureTech社から入手できるヒト化IgG1モノクローナル抗体)、AMP-224(GlaxoSmithKline/Amplimmune社から入手できるB7-DC/IgG1融合タンパク質)、及び/又は米国特許第8,354,509B2号明細書(Carven,et al.)、米国特許第8,008,449号明細書(Korman,et al.)、国際公開第2012/135408A1号(Manoj,et al.)、米国特許出願公開第2010/026617号明細書(Carven,et al.)、国際公開第2011/110621A1号(Tyson,et al.)、米国特許第7,488,802B2号明細書(Collins,et al.)、国際公開第2010/029435A1号(Simon,et al.)、国際公開第2010/089411A2号(Olive,D.)、国際公開第2012/145493A1号(Langermann,et al.)、国際公開第2013/0435569A1号(Rolland,et al.)、国際公開第2011/159877A2号(Kuchroo,et al.)、米国特許第7,563,869B2号明細書(Ono Pharm.)、米国特許第7,858,746B2号明細書(Honjo,et al.)、米国特許第8,728,474B2号明細書(Ono Pharm.)、及び/又は米国特許第9,067,999号明細書(Ono Pharm.)のいずれかに記載された抗体又は他の試薬又は方法と組み合わせることができ、上記のそれぞれは参照により本開示に全体として組み込まれる。好ましい実施形態によると、PD-1結合剤の任意のものを他の結合剤に融合させて、二重特異性結合分子、特に二重特異性抗体を形成してもよい。そのような二重特異性分子は、PD1結合剤を、別のPD1結合剤と、或いはチェックポイント阻害因子又は調節因子(特に、CTLA-4、LAG3、TIM3、CD137、4-1BB、OX40、CD27、GITR(グルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子)、CD40、KIR、IDOIL-2、IL-21及びCSF-1R(コロニー刺激因子1受容体))を標的とする別の結合剤と、有利に連結する。当業者に理解されるように、他の組合せ及び/又は二重特異性結合分子もこの中で企図されている。
【0040】
上述のように、本明細書に記載されるPD-1結合剤(例えば、PD-1アンタゴニスト)を、HIVによる感染症の症状を治療及び/又は予防及び/又は改善するために使用することができる。当技術分野でよく知られているように、HIV単離体は、現在では別個の遺伝子サブタイプに分類される。HIV-1は、少なくとも10のサブタイプ(A1、A2、A3、A4、B、C、D、E、F1、F2、G、H、J及びK)を含むことが知られている(Taylor et al,NEJM,359(18):1965-1966(2008))。HIV-2は、少なくとも5つのサブタイプ(A、B、C、D及びE)を含むことが知られている。サブタイプBは、世界中の男性同性愛者及び静注薬物使用者におけるHIV流行と関連付けられてきた。大半のHIV-1免疫原、検査室適応単離体、試薬及びマッピングされたエピトープは、サブタイプBに属する。新規HIV感染症の発生率が高いサハラ以南のアフリカ、インド及び中国領域では、HIV-1サブタイプBはほんのわずかな感染の割合しか占めておらず、サブタイプHIV-1Cが最も一般的な感染サブタイプであると思われる。これらのタイプの単離体はいずれも、本明細書に記載される結合剤を使用して対処できるであろう。1つ又は複数の結合剤を、例えば、プロテアーゼ阻害剤、HIV侵入阻害剤、逆転写酵素阻害剤及び/又は抗レトロウイルスヌクレオシドアナログのような、HIVを予防、治療及び/又は改善するのに使用できる1又は複数の薬剤と一緒に又は共に投与してもよい。好適な化合物として、例えば、Agenerase(アンプレナビル)、Combivir(Retrovir/Epivir)、Crixivan(インジナビル)、Emtriva(エムトリシタビン)、Epivir(3tc/ラミブジン)、Epzicom、Fortovase/Invirase(サキナビル)、Fuzeon(エンフビルチド)、Hivid(ddc/ザルシタビン)、Kaletra(ロピナビル)、Lexiva(ホスアンプレナビル)、Norvir(リトナビル)、Rescriptor(デラビルジン)、Retrovir/AZT(ジドブジン)、Reyatax(アタザナビル、BMS-232632)、Sustiva(エファビレンツ)、Trizivir(アバカビル/ジドブジン/ラミブジン)、Truvada(エムトリシタビン/テノホビルDF)、Videx(ddI/ジダノシン)、Videx EC(ddI、ジダノシン)、Viracept(ネビラビン)、Viread(テノホビルジソプロキシルフマレート)、Zerit(d4T/スタブジン)及びZiagen(アバカビル)が挙げられる。その他の好適な薬剤は当業者に知られており、本明細書に記載する用途に好適となり得る。そのような薬剤は、本明細書に記載される結合剤の投与及び/又は方法の使用の前、間又は後のいずれに使用してもよい。
【0041】
上述のように、本明細書に記載されるPD-1結合剤(例えば、PD-1アンタゴニスト)は、がんの症状を治療及び/又は予防及び/又は改善するために使用することができる。例示的ながんとして、例えば、乳がん、血液がん、大腸がん、胃がん、結腸がん、骨格組織がん、皮膚がん(例えば、黒色腫)、脳腫瘍、肺がん、膀胱がん、腎臓がん、卵巣がん及び/又は肝臓がんなどが挙げられる。さらに、本明細書に記載されるPD-1結合剤は、好ましくはPD-1/PD-L1相互作用に非ブロッキング性である抗体であり、特に、限定はされないが、135C12、139D6、136B4及び135D1などの、この中で結合クラス2と称されるものが、単独で、或いはそれらを互いに及び/又は他のPD-1抗体と組み合わせて、様々なタイプの悪性腫瘍、特に、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫)、腎臓がん(例えば、明細胞がん)、膀胱がん、前立腺がん(例えば、去勢抵抗性前立腺がん)、膵臓がん、乳がん、結腸がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん)、食道がん、頭頚部の扁平上皮がん、メルケル細胞がん、肝臓がん、卵巣がん、子宮頸がん、甲状腺がん、膠芽細胞腫、神経膠腫、白血病、リンパ腫、肉腫、及び他の新生物性悪性腫瘍などの治療に有用である。上記の好ましいPD-1結合剤は、例えばホジキン病、例えば濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫などの非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫(MM)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、及び骨髄異形成症候群などの血液悪性腫瘍の治療に特に力が注がれている。この中に記載されている結合剤は、当業者に理解されるように、他のタイプのがんを治療するのにも使用してよい。
【0042】
一部の実施形態において、1つ又は複数のPD-1結合剤は、例えば、アルキル化剤(例えば、任意のナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、テトラジン、アジリジン、シスプラチン及び/又はそれらの誘導体)、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート、ペメトレキセド、フルオロピリミジン及び/又はそれらの誘導体)、抗微小管薬(例えば、ビンカアルキロイド、タキサン、ポドフィロトキシン及び/又はそれらの誘導体)、トポイソメラーゼI及び/又はII阻害剤(例えば、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ドキソルビシン、ミトキサントロン、テニポシド、ノボビオシン、メルバロン、アクラルビシン及び/又はそれらの誘導体)及び/又は細胞障害性抗生物質(例えば、任意のアントラサイクリン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、プリカマイシン及びマイトマイシン及び/又はそれらの誘導体)などの、がんを予防、治療及び/又は改善するのに使用される1又は複数の薬剤と組み合わせてもよく、及び/又はそれらと一緒に又は共に投与してもよい。さらに又は代りに、1つ又は複数の結合剤を、例えばニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ及び/又はその他の類似の薬剤及び/又はそれらの誘導体などの、がんを治療する、予防する及び/又は改善するのに当業者が入手できる1つ又は複数の他の結合剤と組み合わせてもよい。1つ又は複数のPD-1結合剤を単独で、或いはPD-1、PDL-1及び/又は他の免疫チェックポイントエフェクターを標的とする他の結合剤と組み合わせて使用してもよい。これらを、他の抗腫瘍剤又は免疫原性剤(例えば、弱毒化がん細胞、腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチド、及び糖分子など)、例えば腫瘍由来抗原又は核酸でパルスされた樹状細胞のような抗原提示細胞、免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IFNa2、GM-CSF)、及び/又は免疫刺激性サイトカイン(例えば限定はされないが、GM-CSFなど)をコードする遺伝子でトランスフェクトした細胞);標準的がん治療(例えば、化学療法、放射線治療、又は外科手術);或いはVEGF、EGFR、Her2/neu、VEGF受容体、他の成長因子受容体に対する他の薬剤;と組み合わせて使用してもよい。好ましい実施形態によると、1つ又は複数のPD-1結合剤を、ワクチン剤及び/又は、特に、CTLA-4、LAG3、TIM3、CD137、4-1BB、OX40、CD27、GITR(グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子)、CD40、KIR、IDOIL-2、IL-21及び/又はCSF-1R(コロニー刺激因子1受容体)に作用する免疫チェックポイント調節剤と組み合わせて、治療組成物及び/又は逐次治療投与のためのキットを形成する。その他の好適な薬剤は当業者に知られており、本明細書に記載する用途に好適となり得る。そのような薬剤は、本明細書に記載される結合剤の投与及び/又は方法の使用の前、間又は後のいずれでも使用できる。
【0043】
上述したように、本明細書に記載されるPD-1結合剤(例えば、PD-1アゴニスト)は、自己免疫の症状を治療及び/又は予防及び/又は改善するために使用できる。典型的な自己免疫状態には、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、関節リウマチ、糸球体腎炎、及び多発性硬化症などの、PD-1が自己寛容を維持することに関係し及び/又は炎症性T細胞(例えば、自己反応性又は自己抗原特異的T細胞)を伴う任意の状態が含まれうる。そのようなPD-1結合剤は、例えば抗CTLA-4薬剤(例えば、イピリムマブ)などの他の薬剤と組み合わせてもよい。1つ又は複数の結合剤を、例えば、グルココルチコイド剤、細胞増殖抑制剤(例えば、アルキル化剤、代謝拮抗物質、メトトレキセート、アザチオプリン、メルカプトプリン、細胞障害性抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミトラマイシン)、抗体(例えば、Atgam、Thymoglobuline、Simulect、Zenapax)、イムノフィリン(例えば、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス)に作用する薬剤、インターフェロン、オピオイド剤、TNF結合剤(例えば、Remicade、Enbrel、Humira)、ミコフェノレート、フィンゴリモド、ミリオシン及び/又はそれらの誘導体のような、例えば自己免疫を予防、治療及び/又は改善するために使用できる1又は複数の薬剤と組み合わせる、及び/又は一緒に又は共に投与してもよい。その他の好適な薬剤は当業者に知られており、本明細書に記載する用途に好適となり得る。そのような薬剤は、本明細書に記載される結合剤の投与及び/又は方法の使用の前、間又は後のいずれでも使用できる。
【0044】
一部の実施形態では、結合剤を、1つ又は複数の検出可能な標識に隣接及び/又はコンジュゲートさせてよい。例えば、好適な検出可能な標識として、例えば、フルオロセイン(例えば、Dylight、Cy3、Cy5、FITC、HiLyte Fluor 555、HiLyte Fluor 647;5-カルボキシ-2,7-ジクロロフルオレセイン;5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM);5-HAT(ヒドロキシトリプタミン);5-ヒドロキシトリプタミン(HAT);6-JOE;6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM);FITC;6-カルボキシ-1,4-ジクロロ-2’,7’-ジクロロフルオレセイン(TET);6-カルボキシ-1,4-ジクロロ-2’,4’,5’,7’-テトラクロロフルオレセイン(HEX);6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE);Alexa fluor(例えば、350、405、430、488、500、514、532、546、555、568、594、610、633、635、647、660、680、700、750);BODIPY蛍光体(例えば、492/515、493/503、500/510、505/515、530/550、542/563、558/568、564/570、576/589、581/591、630/650-X、650/665-X、665/676、FL、FL ATP、FI-セラミド、R6G SE、TMR、TMR-Xコンジュゲート、TMR-X、SE、TR、TR ATP、TR-X SE))、ローダミン(例えば、110、123、B、B 200、BB、BG、B extra、5-カルボキシテトラメチルローダミン(5-TAMRA)、5 GLD、6-カルボキシローダミン6G、リサミン、リサミンローダミンB、ファリシジン、ファロイジン、レッド、Rhod-2、ROX(6-カルボキシ-X-ローダミン)、5-ROX(カルボキシ-X-ローダミン)、スルホローダミンB can C、スルホローダミンG Extra、TAMRA(6-カルボキシテトラメチルローダミン)、テトラメチルローダミン(TRITC)、WT)、テキサスレッド及び/又はテキサスレッド-Xなどが挙げられる。当技術分野で知られている他の検出可能な標識も使用に好適となり得る。例えば抗体などの結合剤は、当技術分野における標準技術を使用して1又は複数の検出可能な標識に隣接及び/又はコンジュゲートさせることができる。
【0045】
ある実施形態では、本明細書に記載される1つ又は複数の結合剤をコードする核酸分子を、下記でより詳細に検討するように、1又は複数の発現ベクター内に挿入してよい。そのような実施形態では、結合剤は、アミノ酸配列に対応するヌクレオチドによってコードされ得る。様々なアミノ酸(AA)をコードするヌクレオチド(コドン)の特定の組合せは、当業者によって使用される様々な参考文献に記載されているように当技術分野においてよく知られている(例えば、Lewin,B.Genes V,Oxford University Press,1994)。前記結合剤のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列は、例えば、表9を参照して確認することができる。核酸変異体は、結合剤をコードするヌクレオチドの任意の組合せを使用してよい。
【0046】
【表9】
【0047】
当業者は、特定のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を、表9(及び、一部の実施形態では、表5~8)に示すアミノ酸配列及び情報から容易に導き出せることを理解できる。例えば、アミノ酸配列DDFLH(配列番号1)及び表9に示す情報から、このアミノ酸配列が、ヌクレオチド配列GAT GAT TTT TTA CAT(配列番号191)によってコードされ得ることを推定することができる。当業者は、配列番号2~190のいずれかをコードするヌクレオチド配列も同じやり方で推定することができ、そのようなヌクレオチド配列が本明細書で企図されていることを理解することができる。また、結合剤が抗体である場合、所定の調製物(例えば、ヒト化抗体)を作製するために、その可変領域をコードするヌクレオチド配列を、発現ベクター中にクローン化されたそれを発現するファージ及び/又はハイブリドーマ細胞から単離することができる。配列番号139~190の可変領域配列をコードする例示の核酸配列を表10に示す。
【0048】
【表10-1】
【0049】
【表10-2】
【0050】
【表10-3】
【0051】
【表10-4】
【0052】
【表10-5】
【0053】
【表10-6】
【0054】
【表10-7】
【0055】
当業者に理解されるように、上記で用いた配列は、例えば、コドン最適化又は当業界で利用できる他の技術により、使用のために改変してよい。そのような調製物を作製する方法は、この中に記載され及び/又は当業者によく知られ及び利用可能である。
【0056】
関心のある可変領域(例えば、CDR)のアミノ酸配列を特定するために、PD-1抗原/免疫原で免疫したマウス由来のハイブリドーマ細胞を、本明細書に記載される機能的アッセイ及び当業者が容易に利用可能なクローニング技術を使用して選択する。例えば、選択されたハイブリドーマの重鎖及び軽鎖可変領域をコードする核酸を単離及びシーケンシングするために、製造業者のプロトコルにしたがってTRIzol試薬を使用して新鮮なハイブリドーマ細胞から全RNAを抽出する。cDNAは、標準技術を使用してRNAからアイソタイプ特異的アンチセンスプライマー又はユニバーサルプライマーを用いて(例えば、PrimeScript(商標)1st Strand cDNA合成キットの技術的マニュアルにしたがって)合成することができる。次に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施して、選択されたハイブリドーマによって産生される抗体の(重鎖及び軽鎖)可変領域をコードする核酸を増幅することができ、次いでそれを標準クローニングベクター内に別個にクローン化してシーケンシングすることができる。次に、コロニーPCRスクリーニングを実施して、正しいサイズのインサートを有するクローンを同定することができる。好ましくは、正しいサイズのインサートを有する少なくとも5個の単一コロニーを、各抗体可変領域に関してシーケンシングする。次に、抗PD-1抗体の発現及び精製のために標準プロトコルを使用することができる。例えば、ハイブリドーマクローンを、無血清培地中で増殖させ、細胞培養ブロスを遠心し、さらに濾過してよい。次に、抗体を含有する濾過上清を親和性カラム(例えば、プロテインAカラム)に装填し、洗浄し、さらに適切なバッファー(例えば、Pierce IgG溶出バッファー)を用いて溶出させてよい。溶出分画をプールし、PBS(pH7.2)中にバッファー交換してもよい。次に、分子量、収率及び純度に関して、標準プロトコルを使用して、SDS-PAGE及びウェスタンブロットによって精製抗体を解析することができる。次に、タンパク質凝集体の存在が少ない高抗体純度(通常、>90%)を確実にするために、生物物理学的特性解析のための適当なカラム(例えば、TSK GEL-G3000 SWXLカラム(Tosoh))においてサイズ排除クロマトグラフィHPLCを実施してよい。これらの手法を、選択された細胞及び他の起源由来の配列番号1~190をコードする核酸を単離及びシーケンシングするのに使用した。これらの技術、その変形及び/又は他の技術も、当業者に理解できるようにこれらの目的に使用することができる。
【0057】
1つ又は複数のPD-1結合剤をコードする核酸分子は、ウイルス及び/又は非ウイルスベクター内に含まれていてよい。1つの実施形態では、DNAベクターが、1つ又は複数のPD-1結合剤をコードする核酸を患者に送達するために利用される。そうする場合に、そのようなメカニズムの効率を改善するために様々な戦略を利用でき、例えば、自己複製ウイルスレプリコン(Caley,et al.1999.Vaccine,17:3124-2135;Dubensky,et al.2000.Mol.Med.6:723-732;Leitner,et al.2000.Cancer Res.60:51-55)、コドン最適化(Liu,et al.2000.Mol.Ther.,1:497-500;Dubensky,supra;Huang,et al.2001.J.Virol.75:4947-4951)、in vivoエレクトロポレーション(Widera,et al.2000.J.Immunol.164:4635-3640)、共刺激性分子、サイトカイン及び/又はケモカインをコードする核酸分子の組込み(Xiang,et al.1995.Immunity,2:129-135;Kim,et al.1998.Eur.J.Immunol.,28:1089-1103;Iwasaki,et al.1997.J.Immunol.158:4591-3601;Sheerlinck,et al.2001.Vaccine,19:2647-2656)、例えばCpGなどの刺激性モチーフの組込み(Gurunathan,supra;Leitner,supra)、エンドサイトーシス又はユビキチンプロセッシング経路をターゲティングするための配列(Thomson,et al.1998.J.Virol.72:2246-2252;Velders,et al.2001.J.Immunol.166:5366-5373)、プライム-ブーストレジメン(Gurunathan,supra;Sullivan,et al.2000.Nature,408:605-609;Hanke,et al.1998.Vaccine,16:439-445;Amara,et al.2001.Science,292:69-74)、プロテアソーム感受性開裂部位の使用、並びに例えばサルモネラ(Salmonella)などの粘膜送達ベクターの使用(Darji,et al.1997.Cell,91:765-775;Woo,et al.2001.Vaccine,19:2945-2954)などが挙げられる。他の方法は当技術分野において知られており、それらの一部について下記に記載する。宿主に核酸を導入するのにうまく利用されてきた様々なウイルスベクターとして、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス及びポックスウイルスなどが挙げられる。当業者に広く利用可能な標準的な組換え技術を使用してベクターを構築することができる。そのような技術は、例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrook,et al.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Press)、Gene Expression Technology(Methods in Enzymology,Vol.185,edited by D.Goeddel,1991.Academic Press,San Diego,CA)及びPCR Protocols:A Guide to Methods及びApplications(Innis,et al.1990.Academic Press,San Diego,ca)などの一般的な分子生物学参考文献の中に見ることができる。「非ウイルス」プラスミドベクターも、所定の実施形態において好適となり得る。好ましいプラスミドベクターは、細菌、昆虫及び/又は哺乳動物宿主細胞と適合し得る。そのようなベクターとして、例えば、PCR-ii、PCR3及びpcDNA3.1(Invitrogen,San Diego,CA)、pBSii(Stratagene,La Jolla,CA)、pet15(Novagen,Madison,WI)、pGEX(Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ)、pEGFp-n2(Clontech,Palo Alto,CA)、pETl(Bluebacii,Invitrogen)、pDSR-α(国際公開第90/14363号)及びpFASTBACdual(Gibco-BRL,Grand island,NY)並びにBluescript(登録商標)プラスミド誘導体(高コピー数COLe1ベースのファージミド、Stratagene Cloning Systems,La Jolla,CA)、TAQ増幅PCR産物をクローニングするために設計されたPCRクローニングプラスミド(例えば、TOPO(商標)TA cloning(登録商標)キット、PCR2.1(登録商標)プラスミド誘導体、Invitrogen,Carlsbad,CA)などが挙げられる。細菌ベクターも使用できる。そのようなベクターとして、例えば、シゲラ(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、カルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette Guerin:BCG)及びストレプトコッカス(Streptococcus)(例えば、国際公開第88/6626号;国際公開第90/0594号;国際公開第91/13157号;国際公開第92/1796号及び国際公開第92/21376号を参照されたい)などが挙げられる。多数の他の非ウイルスプラスミド発現ベクター及び発現系が当技術分野において知られており、使用できる。例えば、DNA-リガンド複合体、アデノウイルス-リガンド-DNA複合体、DNAの直接注入、CaPO沈降、遺伝子銃技術、エレクトロポレーション及びコロイド分散系などの、他の送達技術も差し支えない。コロイド分散系には、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ及び水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル及びリポソームを含む脂質ベース系が含まれる。好ましいコロイド系は、in vitro及びin vivoでの送達ビヒクルとして有用な人工膜小胞であるリポソームである。RNA、DNA及び無傷ビリオンを水性内部にカプセル封入し、生物活性形態にある細胞に送達することができる(Fraley,R.,et al.,1981,Trends Biochem.Sci.,6:77)。リポソームの組成は通常、ステロイド、特にコレステロールと組み合わせた、リン脂質、特に高相転移温度リン脂質の組合せである。その他のリン脂質又は他の脂質も使用できる。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度及び二価カチオンの存在に依存する。リポソーム作製において有用な脂質の例には、ホスファチジル化合物、例えばホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド及びガングリオシドなどが含まれる。特に有用なものは、脂質部分が、14~18個の炭素原子、特に16~18個の炭素原子を有し、かつ飽和している、ジアシルホスファチジルグリセロールである。例示的なリン脂質として、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン及びジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。
【0058】
ベクターを含む培養細胞も提供される。培養細胞は、ベクターでトランスフェクトされた培養細胞又はその細胞の子孫であり、その細胞は免疫原性ポリペプチドを発現する。好適な細胞株は当業者に知られており、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)を通して市販で入手可能である。トランスフェクトされた細胞を、免疫原性ポリペプチドを生成する方法において使用できる。その方法は、任意選択的に発現配列の制御下において、免疫原性ポリペプチドの発現を可能にする条件下でベクターを含む細胞を培養することを含む。免疫原性ポリペプチドは、標準のタンパク質精製法を使用して細胞又は培養培地から単離することができる。
【0059】
当業者は、本明細書に記載される結合剤(例えば、抗体)を使用して、それに結合するタンパク質を含有する生物学的サンプルを同定するための多数の好適な技術を有する。例えば、免疫沈降法又は他の捕捉タイプのアッセイを使用し、抗体を利用してPD-1を単離することができる。この周知技術は、固体支持体又はクロマトグラフィ材料(例えば、プロテインA、プロテインG及び/又はプロテインL)に抗体を付着させることによって実施される。次に、結合した抗体を、PD-1を含有する又は含有すると考えられる溶液(例えば、HIV感染T細胞溶解物)中に導入する。それにより、PD-1は抗体に結合し、PD-1が抗体に結合したままである条件下で非結合物質を洗い流す。次に、結合タンパク質を抗体から分離し、所望の解析を行う。抗体を使用してタンパク質を単離する類似の方法は、当技術分野において周知である。結合剤(例えば、抗体)は、生物学的サンプル中のPD-1を検出するためにも利用できる。例えば、フローサイトメトリー解析、ELISA、免疫ブロッティング(例えば、ウェスタンブロット)、in situ検出、免疫細胞化学及び/又は免疫組織化学などのアッセイにおいて、抗体を使用できる。そのようなアッセイを実施する方法は、当技術分野においてよく知られている。
【0060】
本明細書に記載される結合剤は、患者における疾患状態の存在を特定する、予後を予測する、或いは化学療法薬又は他の治療計画の有効性を特定するためにも使用できる。本明細書に記載するように又は当技術分野で知られているように実施される、発現プロファイルアッセイを用いて、PD-1の発現の相対レベルを特定することができる。次に、その発現レベルを基準(例えば、対照)レベルと相関させて、特定疾患が患者の体内に存在するか否か、患者の予後、又は特定の治療計画が有効であるか否かを特定することができる。例えば、患者が特定の抗感染症治療計画により治療されている場合、患者の組織(例えば、末梢血、乳腺組織生検)におけるPD-1の発現レベルの増加又は減少は、その治療計画が宿主内の感染性因子の量を悪化させる又は改善することを表すことができる。発現の増加又は減少は、治療計画が所望の効果を有する又は有さないこと、従って、別の治療法が選択され得ることを表すことができる。
【0061】
さらに、例えば、新規薬物候補を試験するための薬物スクリーニングアッセイにおける試薬として、本明細書に記載される結合剤を使用することも可能である。その試薬を使用して、細胞株、或いは患者の細胞又は組織における免疫原性標的の発現に対する、候補薬剤の効果を確認することができる。有用な化合物の迅速な同定を可能にし、及び候補薬剤を用いた治療の有効性をモニターするために、発現プロファイリング技術を高スループットスクリーニング技術と組み合わせてもよい(例えば、Zlokarnik,et al.,Science 279,84-8(1998))。候補薬剤は、化学的化合物、核酸、タンパク質、抗体、又はそれらの誘導体であってよく、天然のもの又は合成由来のもののいずれであってもよい。このように同定された候補薬剤は、例えば、患者に投与するための医薬組成物として、又は他のスクリーニングアッセイにおいて使用するために利用することができる。
【0062】
一部の実施形態では、結合剤は精製形態にある。「精製」結合剤(例えば、抗体)は、(例えば、モノクローナル抗体の場合、ハイブリドーマ上清又は腹水調製物の一部として)最初に一緒に含まれるタンパク質及び/又は他の成分の少なくとも約50%から分離されたものであってよい。精製結合剤(例えば、抗体)は、最初に一緒に含まれるタンパク質及び/又は他の成分の少なくとも約50%、60%、75%、90%又は95%から分離されたものであってよい。
【0063】
本明細書に記載されるポリペプチド及び核酸は、宿主に投与する前に1つ又は複数の医薬上許容される担体と組み合わせてよい。医薬上許容される担体は、生物学的又は他の点で望ましくない物質ではなく、例えば、その物質は、いずれの望ましくない生物学的影響も生じることなく、又はそれが含まれる医薬組成物の他の成分のいずれとも有害に相互作用することなく、対象に投与することができる。担体は必然的に、当業者に周知であるように、有効成分の分解を最小限に抑え、及び対象における有害副作用を最小限に抑えるように選択されるであろう。好適な医薬担体及びそれらの調製物は、例えば、Remington’s:The Science及びPractice of Pharmacy,21st Edition,David B.Troy,ed.,Lippicott Williams&Wilkins(2005)に記載されている。典型的には、調製物を等張にするために調製物中で適切な量の医薬上許容される塩が使用される。医薬上許容される担体の例には、無菌水、食塩液、リンゲル液及びデキストロース溶液のような緩衝液が含まれるがそれらに限定されない。溶液のpHは、一般に約5~8又は約7~約7.5である。その他の担体には、例えばポリペプチド又はそれらの断片を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスのような、徐放性製剤が含まれる。マトリックスは、成形品、例えば、フィルム、リポソーム又は微粒子の形態にあってよい。所定の担体が、例えば、投与経路及び投与される組成物の濃度に依存して、より好ましいものとなり得ることは当業者に明白であろう。担体は、ヒト又は他の対象にポリペプチド及び/又はその断片を投与するのに好適なものである。医薬組成物は、免疫原性ポリペプチドに加えて、担体、増粘剤、希釈剤、保存料、界面活性剤、アジュバント、免疫刺激剤も含んでいてよい。医薬組成物は、抗菌剤、抗炎症剤及び麻酔剤などの1又は複数の有効成分も含んでいてよい。医薬組成物は、従来の医薬上許容される担体、アジュバント及びビヒクルを含有する単位用量調製物において、経口的に、非経口的に、吸入スプレーにより、経直腸により、結節内に又は局所的に投与することができる。本明細書で使用する用語「医薬上許容される担体」又は「生理学上許容される担体」は、医薬組成物として核酸、ポリペプチド又はペプチドの送達を達成又は増強するのに好適な1又は複数の調製物材料を意味する。「医薬組成物」は、治療有効量の核酸又はポリペプチドを含む組成物である。用語「有効量」及び「治療有効量」は、それぞれ所望の治療効果(例えば、T細胞機能を回復させる)を観察するために使用される結合剤、核酸などの量を意味する。
【0064】
少なくとも1以上の有効用量の本明細書に記載される1つ又は複数の結合剤(及び/又はその誘導体)を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物宿主において1つ又は複数の疾患状態(例えば、HIV又はがん)を治療する方法も提供される。一部の実施形態では、結合剤は、配列番号1~190及び/又は表1A及び1Bに示す1つ又は複数を含むモノクローナル抗体、或いはその断片又は誘導体である。例えば、ある好ましい実施形態において、結合剤、又は組合せ中の結合剤の少なくとも1つは、配列番号143及び155(例えば、抗体A35795のように)、配列番号166及び180(例えば抗体A35774のように)、配列番号176及び189(例えば抗体135C H1cL1bのように)、及び/又は配列番号176及び190(例えば抗体135C H1cL1cのように)、及び/又はその保存的又は非保存的置換変異体を含んでいてよい。好ましくは、そのような結合剤のCDR領域(すなわち配列番号1~138)は置換されていない。その1つ又は複数の結合剤は、約0.1~約50mg/kg、約1~約30mg/kg、又は約5~約30mg/kg(例えば、約0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35又は40mg/kgのいずれか)の用量で投与することができる。個々の結合剤それぞれの量は同じであっても異なっていてもよい。ある実施形態では、1つ又は複数の結合剤は、約10mg/kgで1回又は複数回、哺乳動物に(例えば、皮内、静脈内、経口、経直腸で)投与することができる。複数回投与される場合、用量は各投与でほぼ同一の量又は異なる量の結合剤を含んでいてよい。投与は、同一又は異なる間隔を空けて時間的に分離してよい。例えば、投与は、約6、12、24、36、48、60、72、84又は96時間、1週間、2週間、3週間、1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間、5カ月間、6カ月間、7カ月間、8カ月間、9カ月間、10カ月間、11カ月間、12カ月間、1.5年間、2年間、3年間、4年間、5年間、或いはこれらの期間の任意のものの前、後及び/又は間の期間により、分離することができる。一部の実施形態では、結合剤は、例えば他の薬剤(例えば、抗感染剤及び/又は化学療法薬)と共に投与することができる。そのような他の薬剤は、結合剤とほぼ同時に、又は異なる時点及び/又は頻度で投与することができる。当業者が容易に特定できるように、そのような方法の他の実施形態も適切となり得る。
【0065】
本明細書に記載される結合剤(例えば抗体など)を使用する際に当業者を助けるために、それをキットの形態で提供してもよい。そのよう結合剤(例えば抗体など)、及び任意選択的にその抗体を使用してPD-1を発現する細胞を検出するのに必要な他の成分を含むキットを提供する。キットの結合剤(例えば抗体など)は、冷凍、凍結乾燥などの任意の好適な形態で、或いはTBS又はPBSのような医薬上許容されるバッファー中に、提供してよい。キットは、例えば、バッファー(例えば、TBS、PBS)、ブロッキング剤(脱脂粉乳、正常血清、Tween-20界面活性剤、BSA、又はカゼインを含む溶液)、及び/又は検出試薬(例えば、ヤギ抗マウスIgGビオチン、ストレプトアビジン-HRPコンジュゲート、アロフィコシアニン、B-フィコエリトリン、R-フィコエリトリン、ペルオキシダーゼ、検出可能な標識及びその他の標識及び/又は染色キット(例えば、ABC染色キット、Pierce))などの、in vitro又はin vivoで抗体を利用するのに必要とされる他の試薬も含んでいてよい。キットは、例えばフローサイトメトリー解析、ELISA、免疫ブロッティング(例えば、ウェスタンブロット)、in situ検出、免疫細胞化学、免疫組織化学などの、上述した一般的に利用されるアッセイにおいて抗体を使用するための他の試薬及び/又は取扱説明書も含んでいてよい。1つの実施形態では、キットは、精製形態で結合剤を提供する。また別の実施形態では、結合剤をビオチン化形態で、単独で又はアビジンコンジュゲート検出試薬(例えば、抗体)と共に、提供してよい。また別の実施形態では、キットは、PD-1を直接検出するのに使用できる1又は複数の検出可能な標識を有する結合剤を含む。これらの系のいずれかを使用するのに必要とされるバッファーなどは、当技術分野において周知であり、及び/又は最終使用者によって準備するか、又はキットの構成成分として提供してもよい。キットは、陽性対照及び陰性対照タンパク質及び/又は組織サンプルを含む、固体支持体も含んでいてよい。例えば、スポッティング又はウェスタンブロットタイプのアッセイを実施するためのキットは、SDS-PAGEで使用するための対照細胞又は組織溶解物、或いは、実験サンプルのための追加のスペースと共に事前に固定された対照サンプルを含有するナイロン膜又は他の膜を含んでいてよい。スライド上の細胞におけるPD-1を可視化するためのキットは、実験サンプルのための追加のスペースと共に対照細胞又は組織サンプルを含有するフォーマット済みスライドを含んでいてよい。当業者には理解されるように、キットの他の実施形態も本明細書において企図されている。
【0066】
そこで、本開示は、PD-1に作動的又は拮抗的に結合する結合剤を提供する。一部の実施形態では、結合剤は、配列番号1~190からなる群より選択される及び/又は表1A及び1Bに示される少なくとも1つのアミノ酸配列を含むポリペプチドである。一部の実施形態では、結合剤は、(例えば、表1A及び/又は1Bに示されるような)配列番号1~138及び/又は配列番号139~190の1又は複数の組合せを含むポリペプチドである。一部の実施形態では、結合剤は抗体である。一部の実施形態では、結合剤は、配列番号1~23からなる群より選択される重鎖CDR1アミノ酸配列を含む抗体などのポリペプチドである。一部の実施形態では、結合剤は、配列番号24~46からなる群より選択される重鎖CDR2アミノ酸配列を含む抗体などのポリペプチドである。一部の実施形態では、結合剤は、配列番号47~69からなる群より選択される重鎖CDR3アミノ酸配列を含む抗体などのポリペプチドである。一部の実施形態では、結合剤は、配列番号70~92からなる群より選択される軽鎖CDR1アミノ酸配列を含む抗体などのポリペプチドである。一部の実施形態では、結合剤は、配列番号93~115からなる群より選択される重鎖CDR2アミノ酸配列を含む抗体などのポリペプチドである。一部の実施形態では、結合剤は、配列番号116~138からなる群より選択される重鎖CDR3アミノ酸配列を含む抗体などのポリペプチドである。ある実施形態において、結合剤は、配列番号164~190の1つ又は複数、及び/又はその保存的又は非保存的置換誘導体を含む抗体などのポリペプチドである。ある実施形態において、結合剤は、配列番号139~150の内の1つ又は複数、及び配列番号151~163の内の1つ又は複数を含む抗体などのポリペプチドである。ある実施形態において、結合剤は、配列番号164~177の内の1つ又は複数、及び配列番号178~190の内の1つ又は複数を含む抗体などのポリペプチドである。例えば、ある好ましい実施形態において、結合剤又は組合せ中の結合剤の少なくとも1つは、配列番号143及び155(例えば抗体A35795のように)、配列番号166及び180(例えば抗体A35774のように)、配列番号176及び189(例えば抗体135C H1cL1bのように)、及び/又は配列番号176及び190(例えば抗体135C H1cL1cのように)、及び/又はその保存的又は非保存的置換誘導体(例えば、表5~8に示すような)を含む抗体であってよい。ある実施形態では、結合剤は、表1A及び/又は1Bに示すCDRの組合せを含み、及び/又は表3及び/又は表11~13の任意の1つ又は複数に記載する特性を有する。
【0067】
一部の実施形態では、結合剤は、ヒト抗体、ヒトIgG、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG2a、ヒトIgG2b、ヒトIgG3、ヒトIgG4、ヒトIgM、ヒトIgA、ヒトIgA1、ヒトIgA2、ヒトIgD、ヒトIgE、イヌ抗体、イヌIgGA、イヌIgGB、イヌIgGC、イヌIgGD、ニワトリ抗体、ニワトリIgA、ニワトリIgD、ニワトリIgE、ニワトリIgG、ニワトリIgM、ニワトリIgY、ヤギ抗体、ヤギIgG、マウス抗体、マウスIgG、ブタ抗体及び/又はラット抗体及び/又はそれらの誘導体に由来する、又は(例えば、配列又は起源によって)それらに関連する。一部の実施形態では、誘導体は、例えば、Fab、Fab2、Fab’一本鎖抗体、Fv、一本鎖(例えばscF)、VHH/V、単一特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、多重特異性抗体、多価抗体、キメラ抗体、イヌ-ヒトキメラ抗体、イヌ-マウスキメラ抗体、イヌFcを含む抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、イヌ化抗体、CDRグラフト化抗体、サメ抗体、ナノボディ及び/又はラクダ抗体からなる群より選択することができる。そのような抗体、断片などは、そのための広く利用可能な技術の任意のものを用いて作製することができる。例えば、ヒト化抗体は、米国特許第9,090,994号明細書(Zhang et al.)に記載されている手順を用いて、及び/又は広く利用可能なきっと及び/又はシステム(例えば、GenScript(登録商標)などの民間企業(例えば、FASEBAシステム)から入手可能なものなど)を用いて作製することができる。ある実施形態において、結合剤は、配列番号139~190の(又はそのようなアミノ酸をコードする核酸配列によってコードされる)アミノ酸配列の1つ又は複数、及び/又はその誘導体又は変異体(例えば、その保存的置換誘導体又は変異体)を含むヒト化抗体であってよい。当業者に理解されるように他の実施形態も企図されている。
【0068】
ある実施形態において、結合剤は、配列番号139~150の内の少なくとも1つ、及び配列番号151~163の内の少なくとも1つ、及び/又はその誘導体又は変異体(例えば、その保存的置換誘導体又は変異体)を含むヒト化抗体であってよい。ある実施形態において、結合剤は、表12に示される、ヒト化抗体A35796(配列番号140及び152を含む)、ヒト化抗体A35793(配列番号141及び153を含む)、ヒト化抗体A35818(配列番号142及び154を含む)、ヒト化抗体A35795(配列番号143及び155を含む)、ヒト化抗体A35797(配列番号144及び156を含む)、ヒト化抗体A35799(配列番号145及び157を含む)、ヒト化抗体A35805(配列番号146及び158を含む);ヒト化抗体137F VH1/VL1(配列番号147及び159を含む)、ヒト化抗体137F VH2/VL2(配列番号148及び160を含む)、ヒト化抗体137F VH1b/VL1b(配列番号149及び161を含む)、ヒト化抗体137F VH1c/VL1c(配列番号150及び162を含む)、又はヒト化抗体137F VH1b/VL1d(配列番号149及び163を含む)によって示される、ヒト及びサルのPD-1に対する結合親和性(ka(M-1/s-1)、kd(s-1)、及びKD(M))とほぼ同一の結合親和性(すなわち、その約250%、約200%、約150%、約100%、約75%、約50%、約25%、約20%、約15%、又は約10%のいずれかの範囲内にある;及び/又は最低でも10nMの親和性(KD10-8M))を示す。ある実施形態において、137F VL1dを任意の他の137F可変重鎖と組み合わせて(又は対にして)よい。
【0069】
他の実施形態において、結合剤は、配列番号164~177の内の少なくとも1つ、及び配列番号178~190の内の少なくとも1つ、及び/又はその誘導体又は変異体(例えば、その保存的置換誘導体又は変異体)を含むヒト化抗体であってよい。ある実施形態では、結合剤は、表13に示される、ヒト化抗体A35775(配列番号164及び178を含む)、ヒト化抗体A35783(配列番号165及び179を含む)、ヒト化抗体A35774(配列番号166及び180を含む)、ヒト化抗体A36443(配列番号167及び181を含む)、ヒト化抗体A35777(配列番号168及び182を含む)、ヒト化抗体A35789(配列番号169及び18を含む)、ヒト化抗体A36448(配列番号170及び184を含む)、又はヒト化抗体A36437(配列番号171及び185を含む);ヒト化抗体135C VH1/VL1(配列番号172及び186を含む)、ヒト化抗体135C VH2/VL2(配列番号173及び187を含む)、ヒト化抗体135C VH3/VL3(配列番号174及び188を含む)、ヒト化抗体135C VH1b/VL1b(配列番号175及び189を含む)、ヒト化抗体135C VH1c/VL1b(配列番号176及び189を含む)、ヒト化抗体135C VH1c/VL1c(配列番号176及び190を含む)、又はヒト化抗体135C VH1d/VL1c(配列番号177及び190を含む)のヒト及びサルのPD-1に対する結合親和性(ka(M-1/s-1)、kd(s-1)、及びK(M))とほぼ同一の結合親和性(すなわち、それらの約25%、約20%、約15%、又は約10%のいずれかの範囲内にある;及び/又は最低でも10nMの親和性(K10-8M))を示す。
【0070】
一部の実施形態では、結合剤は少なくとも第1及び第2の特異性を有し、第1の特異性はPD-1に対するものであり、第2の特異性は異なる抗原(例えば、HIVなどの感染性因子の抗原(例えばEnv)及び/又は腫瘍抗原)に対するものである。一部の実施形態では、結合剤及び/又はその誘導体は、それに固定可能に付着させた検出可能な標識を含んでいてよい。一部の実施形態では、結合剤及び/又はその誘導体は、それに固定可能に付着させたエフェクター部分(例えば、細胞毒性薬、毒素、ジフテリアA鎖、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン、クロチン、フェノマイシン、エノマイシン及び放射化学薬品)を含む。一部の実施形態では、1つ又は複数の結合剤をコードするポリヌクレオチド(例えば、発現ベクターとして)も提供する。そのようなポリヌクレオチドのポリペプチド産物を含む及び/又は発現する宿主細胞も提供する。一部の実施形態では、少なくとも1つの結合剤又は誘導体;少なくとも1つの単離ポリヌクレオチド;少なくとも1つの発現ベクター;及び/又は少なくとも1つの宿主細胞;又はそれらの組合せ;並びに医薬上許容される担体を含む組成物も提供する。
【0071】
本開示はさらに、細胞上のPD-1を検出する方法であって、試験生物学的サンプルを本明細書に記載される結合剤又は誘導体と接触させる工程、及びその生物学的サンプル又はその成分に結合した結合剤を検出する工程を有してなる方法も提供する。そのような方法は、in vivo法又はin vitro法であってよい。一部の実施形態では、その方法は、試験生物学的サンプル又はその成分に結合した量を対照生物学的サンプル又はその成分に結合した量と比較する工程を含み、対照生物学的サンプル又はその成分に結合した量と比較した、試験生物学的サンプル又はその成分に結合した量の増加は、試験生物学的サンプル(例えば、哺乳動物血液)におけるPD-1を発現する細胞の存在を示す。一部の実施形態では、機能的疲弊回復アッセイ(EFRA)により候補結合剤をアッセイし;PD-1に対する候補結合剤の親和性を特定し;さらに候補結合剤のCDRのヌクレオチド配列を特定することにより、PD-1抗体結合剤を同定するためのシステムを提供する。
【0072】
一部の実施形態では、細胞内又は細胞上でのPD-1の発現を検出するためのキットであって、結合剤又はその誘導体、及び使用説明書を含むキットを提供する。一部の実施形態では、結合剤及び/又はその誘導体は凍結乾燥形態にある。
【0073】
一部の実施形態では、本開示は、哺乳動物において、感染性疾患、がん及び/又は自己免疫を治療、予防及び/又は改善する方法であって、結合剤又はその誘導体を含む医薬組成物の少なくとも1有効用量を哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、感染性疾患は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)である。一部の実施形態では、感染性疾患及び/又はがんを治療するために使用される結合剤及び/又はその誘導体は、PD-1アンタゴニストである。一部の実施形態では、自己免疫状態を治療するために使用される結合剤及び/又はその誘導体は、PD-1アゴニストである。一部の実施形態では、複数用量が動物に投与される。一部の実施形態では、結合剤及び/又はその誘導体は、約0.1~約50mg/kg、約1~約30mg/kg、又は約5~約30mg/kg(例えば、約0.1、約0.2、約0.25、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約35、又は約40mg/kgのいずれか)の投与量で投与することができる。
【0074】
本開示は、さらにPD-1結合剤の組合せも提供する。一部の実施形態では、組合せは、PD-1とPD-L1との相互作用をブロックする第1結合剤、及びPD-1とPD-L1との相互作用をブロックしない第2結合剤を含む。例示的な組合せとして、例えば、ブロッキング抗PD-1抗体の1つ又は複数と、例えば、135C12(配列番号17、40、63、86、109、及び132)、139D6(配列番号2、25、48、71、94、及び117)、135D1(配列番号3、26、49、72、95、及び118)、及び/又は136B4(配列番号19、42、65、88、111、及び134)のアミノ酸配列を含むものの任意の1つ又は複数のような、この中に記載されている非ブロッキング結合剤の1つ又は複数と、を含んでいてよい。例示的な実施形態は、ブロッキング抗体MK3475(ペムブロリズマブ)、又は配列番号8、31、54、77、100、及び123(137F2)のアミノ酸配列を含むブロッキング結合剤と、配列番号17、40、63、86、109、及び132(135C12)のアミノ酸配列を含む非ブロッキングPD-1結合剤との組合せを含む。図9A及びBに示すように、これらの例示的な組合せの両方が、いずれか一方の抗体単独で達成されるよりもさらに、HIV-特異的CD8T細胞の機能的疲弊の救済を増強し及びその増殖を高める。ブロッキング抗体MK3475又は137F2と組み合わせて有用となりうる他の例示的な非ブロッキング抗体は、非ブロッキングP2パッチ特異的(M4(図3A、B))結合剤135D1(配列番号3、26、49、72、95、及び118を含む)、及び/又は結合剤139D6(配列番号2、25、48、71、94、及び117を含む)、及び/又は非ブロッキングP2パッチ特異的(M17(図3A、E))結合剤136B4(配列番号19、42、65、88、111、及び134を含む)である。他の組合せも当業者に特定されるように適切となりうる。
【0075】
そのような組合せを、本明細書に記載される又は当業者が確認できる任意の用途のために使用できる。例えば、そのような組合せを、本明細書に記載される哺乳動物における感染性疾患、がん及び/又は自己免疫を治療、予防及び/又は改善する方法において使用してよい。ある実施形態では、対象において炎症を治療する方法であって、少なくとも2つのアンタゴニストPD-1結合剤の組合せを投与することを含み、前記結合剤のそれぞれがPD-1上の異なるエピトープに対する特異性を有し、前記結合剤の少なくとも1つはPD-1とPD-L1との相互作用にブロッキング性であり、及び前記結合剤の少なくとも1つはPD-1とPD-L1との相互作用に非ブロッキング性である方法も提供する。本開示はまた、対象において慢性神経変性状態を治療する方法であって、少なくとも2つのアンタゴニストPD-1結合剤の組合せを投与することを含み、前記結合剤のそれぞれがPD-1上の異なるエピトープに対する特異性を有し、前記結合剤の少なくとも1つはPD-1とPD-L1との相互作用にブロッキング性であり、及び前記結合剤の少なくとも1つはPD-1とPD-L1との相互作用に非ブロッキング性である方法も提供する。ある実施形態において、慢性神経変性状態はアルツハイマー病である。本開示はまた、例えばがんの治療におけるような、in vivoで、例えばヒト腫瘍細胞などの腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、少なくとも2つのアンタゴニストPD-1結合剤の組合せを投与することを含み、前記結合剤のそれぞれがPD-1上の異なるエピトープに対する特異性を有し、前記結合剤の少なくとも第1結合剤がPD-1とPD-L1との相互作用にブロッキング性であり、及び前記結合剤の少なくとも第2結合剤がPD-1とPD-L1との相互作用に非ブロッキング性である方法も提供する。ある実施形態において、前記組合せは、例えば、RASKGVSTSGYSYLH(配列番号287)、LASYLES(配列番号288)、QHSRDLPLT(配列番号289)、NYYMY(配列番号290)、GINPSNGGTNFNEKFKN(配列番号291)、及び/又はRDYRFDMGFDY(配列番号292)の内の少なくとも1つを含む抗体;MK3475;及び/又はキイトルーダなどの、ブロッキング結合剤を含んでいてよい。ある実施形態において、例えば抗体などの非ブロッキング結合剤は、配列番号17、40、63、86、109及び132の内の少なくとも1つ、又は配列番号164~190の内の任意の1つ又は複数(例えば配列番号176及び190)、及び/又は少なくとも1つのアミノ酸置換を有するその誘導体を含んでいてよい。ある実施形態において、哺乳動物に複数回投与され、それらの投与は、約1週間、約2週間、約3週間、或いは望ましくは約1ヶ月又はそれ以上の間隔をあけて行ってよい。
【0076】
本開示は、細胞において結合剤を発現させ、さらにその細胞又はその細胞の培養上清から結合剤を単離することにより、本明細書に記載される結合剤を製造する方法も提供する。一部の実施形態では、その方法は、そのような結合剤をコードする核酸を発現させる工程をさらに含んでいてよい。一部の実施形態では、そのような方法は、単離後に結合剤を1又は複数の医薬上許容される賦形剤と組み合わせる工程をさらに含んでいてよい。
【0077】
本開示によって、例えばPD-1とPD-L1との相互作用をブロックする第1結合剤、及びPD-1とPD-L1との相互作用をブロックしない第2結合剤などの、結合剤の組合せを製造する方法も提供される。一部の実施形態では、第2結合剤はPD-1に結合する。一部の実施形態では、第1及び/又は第2結合剤は、例えばモノクローナル抗体、或いはその断片又は誘導体のような抗体である。一部の実施形態では、第2結合剤は、配列番号17、40、63、86、109、及び132(例えば135C12);配列番号2、25、48、71、94及び117(例えば139D6);配列番号3、26、49、72、95、及び118(例えば135D1);及び/又は配列番号19、42、65、88、111、及び134(例えば136B4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、これらの方法は、医薬上許容される賦形剤の添加をさらに含んでいてよい。
【0078】
用語「約」、「ほぼ」などは、数値又は範囲のリストに先行する場合は、リスト又は範囲内の各個別値の直前にその用語が置かれているかのように、そのリスト又は範囲内の各個別値に独立して言及する。これらの用語は、それが言及する数値がその数値と正確に同一、それに近い、又はそれに類似することを意味する。
【0079】
本明細書で使用する「対象」又は「宿主」は、個体であることが意味される。対象は、例えばネコ及びイヌ、家畜類(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ及びヤギ)などの家畜化された動物、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)及びトリ類を含んでいてよい。1つの態様では、対象は、例えば霊長類又はヒトなどの哺乳動物である。
【0080】
「任意選択的」又は「任意選択的に」は、続いて記載した事象又は状況が発生しても発生しなくてもよく、その記述が事象又は状況が発生する場合及びそれが発生しない場合を含むことを意味する。例えば、語句の「任意選択的に組成物が組合せを含み得る」は、その記述が組合せと組合せの非存在(すなわち、組合せの個々のメンバー)の両方を含むように、その組成物が、異なる分子の組合せを含んでも又は組合せを含まなくてもよいことを意味する。
【0081】
本明細書では、「範囲」は、約1つの特定値から、及び/又は約別の特定値までとして表示することができる。そのような範囲が表示される場合、別の態様は、その一方の特定値から、及び/又はその他方の特定値までを含む。同様に、数値が近似値として表示される場合は、先行詞「約」又は「ほぼ」の使用によって、その特定値が別の態様を形成すると理解されるであろう。さらに、範囲のそれぞれの終点は、他の終点に関連して、及び他の終点から独立しての両方で有意であることが理解されるであろう。範囲(例えば、90~100%)は、各数値が個別に列挙されているかのように範囲自体、並びにその範囲内の各独立値を含むことが意図されている。
【0082】
用語「組み合わせる(combined)」、「組み合わせて(in combination)」又は「共に(in conjunction)」は、一緒に投与される薬剤の物理的組合せ、或いは、特定疾患を治療、予防及び/又は改善するための治療計画における2つ以上の薬剤の使用(例えば、物理的及び/又は時間において別個に投与される)を意味することができる。
【0083】
「治療する」、「予防する」及び/又は「改善する」の用語が、所定の状態のための所定の治療(例えば、がん又はHIVによる感染を予防する)と関連して使用される場合、治療された患者が臨床的に観察可能なレベルのその状態を全く発生しない、又は彼/彼女が治療を受けなかった場合よりも、ゆっくり及び/又は少ない程度までしかその症状を発生しないことを伝えることが意図されている。これらの用語は、患者が全くその状態の態様を経験しない状況のみに限定されるものではない。例えば、「治療」は、状態の所定の発現を生じると予測される刺激物への患者の曝露中に与えられ、それが与えられなかった場合に予測されるよりも少ない及び/又はより軽度の症状をその患者が経験する場合に、その状態を予防したと言われるであろう。例えば、治療は、患者が感染の軽度の明らかな症状しか示さない状態をもたらすことによって、感染を「予防する」ことができる;これは、感染微生物による細胞の侵入があってはならないことを意味するものではない。
【0084】
同様に、特定の治療による所定の状態の予防、治療及び/又は改善と関連して本明細書に使用される「低減させる」、「低減させること」及び/又は「低減」は、典型的には、治療(例えば、1つ又は複数のPD-1結合剤の投与)の非存在下において感染症を発生する対照又は基底レベルと比較して、よりゆっくり、又はより少ない程度に感染症を対象が発生することを意味する。感染症のリスクの低減は、患者が、感染の軽度の明らかな症状又は感染の遅延された症状のみを示すことを生じさせ得る;これは、感染微生物による細胞の侵入があってはならないことを意味するものではない。
【0085】
本開示の中で言及したすべての参考文献は、その全体が参照によりここに組み込まれる。下記の実施例では、所定の実施形態についてさらに記載する。これらの実施形態は、例示としてのみ提供され、決して特許請求項の範囲を限定することを意図していない。
【実施例
【0086】
実施例1
PD-1結合剤の作製及び特性解析
4種のマウス系統(マウス計16匹)を、2種のPD-1タンパク質、すなわちヒトPD-1 Fc融合タンパク質及びヒトPD-1モノマータンパク質で免疫した。活性化ヒトTリンパ球上に発現されたPD-1に対して血清反応性を示すマウスを、抗PD-1ハイブリドーマ細胞株を作製するために選択した。組換えPD-1タンパク質に結合する抗体を作製するために、計240のPD-1ハイブリドーマ細胞株を選択した。第1ラウンドの抗体選択のための一次基準は:i)フローサイトメトリーによる活性化ヒトTリンパ球上のPD-1の染色;ii)既存の抗PD-1抗体と比較したCDR VH及びVL配列の多様性;及び(iii)PD-1上の異なるエピトープに結合する2つの市販の抗PD-1抗体と共にPD-1コンジュゲートLuminexビーズを用いる競合結合試験によって実施されるエピトープマッピングであった。次に、第2ラウンドの選択を:iv)親和性結合アッセイ(抗PD-1抗体の刺激能力とは相関しないので一次基準ではない);v)PD-1に結合し、かつLuminex生化学的アッセイにおいてPD-L1の結合にブロッキング性又は非ブロッキング性のいずれかである抗PD-1抗体の評価;及びvi)アゴニスト(T細胞を機能的疲弊から回復させることができない)又はアンタゴニスト(T細胞を機能的疲弊から回復させることができる)としての抗体の機能的特性解析;によって実施した。これらの試験では、抗体を試験して、HIV特異的疲弊CD8 T細胞において増殖を救済する能力に基づき差別化した。
【0087】
個々の細胞培養ハイブリドーマ細胞クローンからの抗体上清の一次スクリーニングにおいて、HIV特異的CD8 T細胞の増殖に対する抗PD-1抗体の機能的効果を評価するためにEFRAアッセイを実施した。抗体クローンE8-3、C2-3、E1-3、F3-3、H8-3、C10-2、G2-1、G3-2、H2-1及びH4-2は、PD-1アンタゴニストとして作用して増殖を刺激することが見いだされたが、抗体クローンC8-1及びG10-2は、作動性(アゴニスト)で、PD-1の負の調節作用を促進する。ペプチド対照(Pep 8)によって誘導された増殖のレベルは、1%よりわずかに下であり、Merck MK-3475抗PD1抗体により誘導された増殖は2%よりわずかに上である。これらのプロセスによって同定された関心抗体は、第2ラウンドのサブクローニングを受け、その結果得られたハイブリドーマクローンを、表3に示す抗体の産生及び精製のために使用した。サブクローンがPD-1に対する親和性を保持していることを確認するために、精製抗PD-1を用いて結合アッセイを実施した。抗PD-1抗体の細胞表面PD-1への濃度反応結合を、活性化CD4 T細胞上で評価した。
【0088】
EFRAは、機能的疲弊からT細胞を回復させる結合剤の選択を提供するが、その選択はPD-1とその生物学的リガンド(例えば、PD-L1又はPD-L2)との相互作用を妨害しない結合剤に必ずしも限定されない。EFRAの実施形態は、PD-1に結合するそのような結合剤(抗体)を同定するためであった。PD-1に結合する抗体のエピトープマッピングを、2つの別個の生化学的アッセイを用いて実施した。1つのアッセイでは、PD-1 Fc融合タンパク質標識ビーズに対する競合結合を、2種の市販の抗PD-1抗体(クローンEH12.2H7及びJ116)の内の1つと、列挙した(表3にも記載した)抗PD-1抗体との間で評価した。別個のエピトープに結合する4つのクラスのモノクローナル抗体をこのアッセイに基づき同定した。それらは:クラス1(PD-1とPD-L1との相互作用をブロックする市販モノクローナル抗体クローンEH12.2H7と競合的)、クラス2(PD-1に結合するがPD-1とPD-L1との相互作用を有効にはブロックしない市販モノクローナル抗体クローンJ116と競合的)、クラス3(市販モノクローナル抗体EH12.2H7及びJ116の両方と競合的)及びクラス4(市販抗体EH12.2H7及びJ116のどちらとも非競合的)である。抗体を4つの結合クラスの内の1つに入れ、細胞表面PD-1に対するこれら抗体の相対的結合を、対照抗PD-1抗体に対する平均蛍光強度(MFI)によって表わした。これらの結果は、堅固な結合抗体が4つ全ての結合クラスから同定されたことを示した。第2のLuminex結合アッセイを使用して、抗PD-1抗体が、PD-1とPD-L1との間の相互作用をブロックするか否かを直接的に評価した。このアッセイは、PD-1 Fc融合タンパク質被覆ビーズを用いて実施し、PD-1 Fc融合タンパク質被覆ビーズを表3からの抗PD-1抗体と共にインキュベートし、その後にPD-1/抗体複合体を様々な濃度のビオチン化PD-L1とインキュベーションした。結合曲線を、競合抗PD-1抗体の非存在下でのPD-L1の結合と比較した。表3からのある抗PD-1抗体(図1Aに示されている抗体137F2)は、PD-1とPD-L1との間の相互作用を完全にブロックできることが分かった。PD-1/PD-L1相互作用の非ブロッキング抗体として表3に列挙した抗体は、PD-1に対するPD-L1の結合親和性のシフトをもたらすが、PD-L1の濃度が上昇した場合に相互作用をブロックしない(図1B及びCにそれぞれ示されている抗体135C12及び136B4)。1つの解釈において、これらの抗体はPD-1/PD-L1相互作用と非競合的であるか或いは部分的に競合的であるかのいずれかである。これら抗体の一部は、対照と比較して増殖の統計的に有意な増加をもたらすことも示された。クラス1の抗体(PD-1とPD-L1との相互作用をブロックする市販モノクローナル抗体EH12.2H7と競合的、又はPD-1/PD-L1相互作用アッセイにおいてブロックする)は、概して、改善された増殖回復をもたらすことが特定された。複数回のEFRA実験からのデータを組み合わせ、及び共通コンパレーターとしてのMK-3475を使用して、表2に記載した選択抗体は、ベンチマークMK-3475抗体と比較して、同等又は統計的に改善された活性(p<0.007)を示した。
【0089】
実施例2
抗体の組合せ
異なるPD-1エピトープに結合する抗体の組合せが、機能的疲弊回復アッセイにおいて、HIVペプチド特異的CD8 T細胞増殖の回復を増強することが見いだされた。抗体タイプ間の相乗作用も観察された。例えば、クラス1(MK-3475)及びクラス2(139D6)の抗体が同時にPD-1に結合できることが特定された。MK-3475について観察された最高の刺激は、HIVペプチドに対して一貫して約200%であるが、各5μg/mlでのMK-3475及び139D6モノクローナル抗体の組合せは、HIVペプチド対照単独に対して288%にHIV特異的CD8 T細胞増殖を増加させ、又はMK-3475又は139D6添加単独に対して144%に増殖を増加させ、相乗作用を示した。増殖におけるこの相乗的増加は、数回の実験による試験において0.007の統計的有意なp値をもって観察された。比較として、MK-3475又は139D6いずれか単独の10μg/mlの添加は、EFRAにおける増殖増加を生じさせなかった。従って、PD-1とPD-L1との相互作用をブロックする第1結合剤及びPD-1とPD-L1との相互作用をブロックしない第2結合剤のような、結合剤の組合せは、T細胞を疲弊から救済するために相乗的に作用すると特定された。
【0090】
実施例3
抗PD-1抗体のエピトープマッピング
予備的エピトープマッピング評価は、市販の抗PD-1抗体(EH12.2H3及びJ116)と、この特許で規定される新たに同定された抗PD-1抗体との間での生化学的競合結合アッセイ試験に基づくものであった。この手順は、上記の2つの市販の抗体のいずれかと競合的に又は非競合的にPD-1に結合することに基づき、抗体を4つの結合クラスの内の1つに分類することを可能にした。PD-1上のエピトープに結合する抗体を特定するより正確な方法は、溶媒露出残基での慎重なアミノ酸置換を有する異なるPD-1タンパク質との抗体の相互作用をモニターすることである。これらの残基が抗PD-1抗体の堅固な結合に重要である場合、置換はPD-1タンパク質への結合を低減させる。これらの試験は、CMVプロモータの制御下において哺乳動物発現ベクターpReceiver-M67内にコードされたPD-1遺伝子の部位特異的突然変異誘発により行われた。PD-1タンパク質のための公開された構造データ3RRQ PDBを用いて、溶媒露出残基に1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を有する31の異なるPD-1クローンを設計した。PD-1とPD-L1/L2との間の相互作用に関与する残基を、ヒトPD-1とPD-L2との複合体の公開結晶構造に基づき特定し(Lazar-Molnar、PNAS、2008、p10483-10488)、さらに図2に示すPD-1構造に番号を記載した球体としてマッピングした(番号付けはヒトPD-1(図2H、配列番号275)のアミノ酸残基に対応する)。置換は、PD-1/PD-L1相互作用に関係する残基(M10、M11、M12、M14、M23、M24、M25で表される)において、或いはPD-L1相互作用に直接は関係しないPD-1タンパク質の反対側の又は隣接する表面にある残基(M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M13、M15、M16、M17、M18、M19、M20、M21、M22、M26、M27、M28、M29、M30、M31で表される)において選択され、図3で規定されている。次に、PD-1をコードするDNAベクターを用い、Lipofectamine 2000トランスフェクション試薬を用いてHeLa細胞を一過性トランスフェクトした。細胞を37℃で36~48時間、採用培養インキュベータ中でインキュベートして、PD-1タンパク質を細胞表面発現させ、次いで細胞を再懸濁させ、0.3~2μg/mlの間の表3から選択される所定の抗PD-1抗体と共に30分間インキュベートした。洗浄工程の後、細胞をPE標識抗マウスIgG二次抗体で染色し、その後フローサイトメトリーで解析した。各実験において、野生型PD-1タンパク質を抗体結合の陽性対照として用い、さらにPD-1上の異なるエピトープに結合するいくつかの抗体(PD-1/PD-L1相互作用にブロッキング性であるか又は非ブロッキング性であるかによって、或いは市販のPD-1クローンを用いた競合結合試験から特定された)を並行して評価して異なるアミノ酸置換を有するPD-1タンパク質の相対的発現レベルをモニターした。表3からの試験した全ての抗PD-1抗体が、野生型PD-1でトランスフェクトしたHeLa細胞に特異的に結合したが、空のベクター対照でトランスフェクトした細胞には結合しなかった。PD-1/PD-L1相互作用にブロッキング性であるか又は非ブロッキング性である抗PD-1抗体を用いて染色したときに、全ての突然変異PD-1タンパク質が、野生型に近いレベルで発現したか、或いは非トランスフェクト対照と比較して平均蛍光強度において有意なシフトをもたらした。次に、表3からの抗体の選択セットを、トランスフェクトしたHeLa細胞の細胞表面で発現される野生型又は突然変異体のPD-1タンパク質のいずれかに結合する能力に関して体系的に試験した。これらの結果を、様々な抗PD-1抗体クローンのそれぞれに関して結合を失効させる又は低減させる突然変異を表示して、表11に要約する。図4~8に表すフローサイトメトリーヒストグラムは、指示された突然変異PD-1構築物でトランスフェクトしたHeLa細胞に効率的に又は低減された親和性で結合する様々な抗体の例を提供する。予測されるように、生化学的アッセイでPD-1/PD-L1相互作用にブロッキング性であることが示された抗体(MK-3475、137F2、140G5、及び139F11)は、その相互作用部位とオーバーラップするPD-1上のエピトープに結合した。生化学的PD-1/PD-L1相互作用試験と一致して、PD-1/PD-L1相互作用に非ブロッキング性である抗体(136B4、135C12、136E10)は、PD-1/PD-L1相互作用に関係するアミノ酸残基から遠位の別個のエピトープに結合した。図8において、136B4及び122F10抗体に関して、M17 PD-1タンパク質への結合に有意なシフトが観察されたが、135C12抗体に関してはM26 PD-1タンパクに対して結合のわずかなシフトが観察された。これらの違いは、136B4と135C12が、別個のファミリーに属するCDRループを有し、図13に表すように両方がP2パッチとオーバーラップするPD-1上の異なるエピトープに結合することをはっきり示す。
【0091】
【表11】
【0092】
実施例4
PD-1の新規なアンタゴニスト作用に関係する非ブロッキング抗体エピトープ
多様なPD-1上のエピトープに結合する抗体を、機能的疲弊回復アッセイにおいてそのアンタゴニスト活性について評価した。これらの試験は、アンタゴニスト抗体が、PD-1/PD-L1相互作用にブロッキング性又は非ブロッキング性のいずれかとなりうることを示した。抗PD-1抗体の機能活性に起因する作用形態がPD-1の遮断(ブロック)によるものであることを考慮すれば、これらの結果は、非ブロッキングアンタゴニスト抗体によって阻害されているPD-1の新規な機能を暗示する。この主張は、ブロッキング抗PD-1抗体と非ブロッキング抗PD-1抗体との組み合わせが、in vitro機能的疲弊回復アッセイにおいてアンタゴニスト活性を増強させたこことにより支持される。この増強された機能活性は、単独で投与した場合にいずれか一方の抗体で達成されうる誘導レベルを超えるものであり、ブロッキング(すなわち、競合的な)抗PD-1抗体(MK3475又は137F2)の、非ブロッキング(すなわち、生化学的PD-1/PD-L1相互作用アッセイにおいて非競合的又は部分的に競合的である)抗PD-1抗体135C12(図9A)又は139D6(図9B)との様々な組合せを用いて実証された。それらの機能活性の更なる証拠として、混合リンパ球反応アッセイ(MLR)において、抗PD-1抗体を、単独で、或いはPD-1/PD-L1ブロッキング及び非ブロッキングアンタゴニスト抗体を組み合わせて試験した。MLRアッセイは、1人の健康ドナー由来の単球を、第2の健康ドナー由来のPD-1メモリーCD4 T細胞と混合することを含む。磁気ビーズを用いたCD14ポジティブセレクションにより末梢血単核細胞(PBMC)から単球を単離した。第2のドナー由来のPBMCは、まず磁気ビーズを用いてCD45RA発現細胞を枯渇させ、次にCD4陽性T細胞のポジティブセレクションのために異なる磁気ビーズセットを用いた。次に、生存PD-1細胞集団に基づきソートするために、これらのメモリーCD4 T細胞(CD4CD45RA)を、AquaLive/Dead染色キット、並びに127C2抗PD-1抗体クローン(アンタゴニスト活性を有しておらず、かつPD-1への結合に関してMK3475、137F2又は135C12と競合しないことが示されている)及び二次抗マウスPE抗体を用いて染色した。2人の異なるドナー由来の単球とCD4T細胞を、1:2又は1:5の比率で混合した後、細胞を未処理のままにするか、或いは1μg/mlの図10に示される抗PD-1抗体で処理した。細胞培養インキュベータ中での5日間のインキュベート後、細胞培養上清の一部を採取し、ELISAで分泌IFNγを分析した。細胞培養液にトリチウム標識チミジン(H-TdR)を添加し、細胞をさらに18時間インキュベートした。H-TdR取込みを細胞増殖の指標として用いた。この第2の独立したin vitroアッセイは、我々の抗PD-1抗体の機能活性を確認した。図10aにおいて、CD4T細胞の2倍まで高められた増殖が、抗PD-1抗体の個々又は組合せにより誘導された。図10bにおいて、個々で試験したときに全ての抗PD-1抗体についてIFNγ産生の強い増加が観察され、137F2が最も高い誘導レベルをもたらした。ブロッキング抗PD-1抗体と非ブロッキング抗PD-1抗体の組合せ(MK3475及び135C12、又は137F2及び135C12のいずれか)において、PD-1メモリーCD4 T細胞の増殖の増加及びIFNγ産生の増加の傾向が観察された。CD4T細胞からのIFNγ産生の増加が、PD-1免疫チェックポイント遮断療法で治療した際のアルツハイマー病のマウスモデルにおける病状の軽減及び記憶の改善に関連する(BaruchK、NatureMed、2015)ことを考えれば、この中に概要を説明した抗PD-1抗体又は抗PD-1抗体の組合せでの治療は、同等の又は向上した治療的利益を有することが予測される。下記にて説明するように、エピトープマッピングは、最も高い能力を有する非ブロッキング抗体は全て、PD-1の類似のパッチ(この中で「P2パッチ」と称される)に結合することを示し、そのP2パッチは、M4アミノ酸置換(セリン38をアラニンへ、プロリン39をアラニンへ、及びロイシン41をアラニンへ)(図3;配列番号142))の領域、及び/又はM17アミノ酸置換(アスパラギン102をアラニンへ及びアルギニン104をロイシンへ)(図3;配列番号155)の領域、及び/又はM18アミノ酸置換(アスパラギン酸塩105をアラニンへ)(図3;配列番号156)の領域、及び/又はM31アミノ酸置換(ロイシン41をアラニンへ及びバリン43をロイシンへ)(図3;配列番号206)の領域と、オーバーラップする。
【0093】
抗PD-1抗体のアンタゴニスト活性に関係するPD-1の領域をさらに調べるために、異なる種からの溶媒露出変異アミノ酸残基をヒトPD-1構造にマッピングした。3RRQ PDBに基づくこの構造表示は、図11aにおいてPD-L1/L2と相互作用するPD-1の面を、また図11bにおいてPD-1の反対側を示す。サルとヒトのPD-1間で異なる残基を赤の円で示し、齧歯類(マウス及びラット)のPD-1で見られる他の変異残基を緑の円で表し、イヌのPD-1からの追加の変異残基をオレンジで示す。残基46、58、74及び116は、N-結合型グリコシル化の部位に関係があるとされ、青緑色の円で印している。ヒト、サル、ウマ、イヌ、マウス及びラットのPD-1エクトドメインアミノ酸配列の整列を図11cに示し、ヒトPD-1との対応する相同性はそれぞれ、96.6%、79.9%、73.2%、62.4%及び66.4%である。PD-1のこれらの異種間の変異残基を構造上に示すことにより、図11a及び11bにおいてP1及びP2として指定されるPD-1上の2つの保存されたパッチがあることが明らかとなる。P1パッチは、PD-1とPD-L1/PD-L2リガンドとの間の相互作用に関連する中心領域に該当する(図2において球で印す残基を、図11aのものと比較する)。進化中にPD-1に蓄積する変異残基はPD-L1/L2リガンドとの相互作用をなお維持する必要があるため、このP1パッチの異種間の保存が予想される。PD-1/PD-L1相互作用に関係する残基の選択置換は、マウスの変異(例えば残基64及び68)で観察され、PD-1とそのPD-L1/L2リガンドとの共進化に起因し得るが;P1内のコアの相互作用領域は保存されたままである。進化的に保存されたP2パッチは、P1パッチに類似する表面領域を占めるが、この領域は、構造的にも機能的にもPD-1に関して既に同定されている役割は有していない。P2パッチが調べた種の中で進化的に保存されていることは、PD-1がP2部位を保存する必要に迫られていたことを示す。この保存は、PD-1エクトドメインが調べた4つの種において62.4%~79.9%しか保存されていないことを考えると、より一層に重要である。ヒトPD-1と比較したこれらの4つの種にわたる全ての変異残基を考慮すると、さらに低い52.3%の配列保存となる(図11c、青の矢印は、図11a及び11bに描かれている構造領域を表す)。この機能的な圧力が、P2パッチが、まだ同定されていないリガンドのための相互作用部位として働くことに起因するのか、高次の複合体形成のための部位として働くことに起因するのか、又はPD-1関連シグナル伝達イベントに関連することに起因するのかは、まだ不明である。しかしながら、P2パッチとオーバーラップする結合エピトープを有する、135C12、139D6、135D1及び136B4などのこの中に記載されている抗PD-1抗体は、この領域の機能的重要性の直接の証拠を提供する。
【0094】
この領域がPD-1の機能活性における既存の関与を持たないことを考えると、図11bに示されるPD-1上のP2パッチとオーバーラップする結合を有する135C12により代表される抗体が、PD-1上でアンタゴニスト活性を発揮する新規なメカニズム及び部位を説明することをここに提案する。PD-1のこのP2パッチ領域と相互作用できる他の抗体、抗体断片、又は他のタンパク質結合剤はまた、図9、10及び17-20に実証されるように、PD-1/PD-L1相互作用の遮断を介して作用する抗PD-1抗体とは区別されかつそれに相補的な態様でPD-1のアンタゴニストとして作用することもさらに提案する。PD-1におけるP2パッチ領域の重要性のさらなる例として、136B4抗体は、同様にP2パッチとオーバーラップする抗体135C12、139D6及び135D1と比較して、PD-1上の別個のエピトープに結合する。136B4は、P2パッチの縁(edge)に位置するM17及びM18 PD-1突然変異(M17:アスパラギン102をアラニンへ及びアルギニン104をアラニンへ、M18:アスパラギン酸105をアラニンへ)との結合で、強く低減された親和性を示す。135C12、139D6及び135D1抗体と共に、136B4は、全ての試験した非ブロッキング抗体の中で最も高い機能活性を示した。
【0095】
実施例5
抗体競合結合試験
表3に列挙する選択抗体の結合エピトープをさらに特徴付けるために、細胞表面PD-1への結合に関して一連の抗体競合試験を実施した。Maxpar(登録商標)抗体ラべリングキット(Fluidigm)を用いて、PD-1上の別個のエピトープに結合する抗体(MK3475、137F2、135C12及び134D2)に化学的にコンジュゲートさせた。この手順において、システイン残基を金属キレートポリマーと結合させるために抗体のジスルフィド結合を部分的に還元する。次に、これらの金属同位体修飾抗体を用いて、表面PD-1の発現レベルを見るために細胞を標識し、マスサイトメトリーにより解析を実施した。PD-1の高発現レベルを有するCD4 T細胞を作製するために、健康なドナー由来の末梢血単核細胞をPHA及びIL-2で刺激し、さらに5日間インキュベートした。細胞染色後、ゲーティングを実施して生存CD3/CD4細胞を選択し、さらにマスサイトメトリーにより各サンプルについてPD-1の細胞表面レベルを評価した。抗体競合アッセイにおいて、2x10細胞のサンプルを、15μg/mlの図12に示す指示された競合抗体の1つと共に4℃で40分間インキュベートした。次に、金属同位体で標識した染色抗PD-1抗体(MK3475、137F2、135C12、又は134D2)を<1μg/mlで細胞に添加し、さらに20分間インキュベートし、その後洗浄して非結合抗体を除去し、さらに細胞表面PD-1のレベルについて解析した。マウスIgG1アイソタイプ対照抗体を陰性対照として及び参照(基準)として用いて、抗PD-1競合抗体クローンと共にインキュベートしたサンプルに関するPD-1陽性細胞の割合(%)を計算した。
【0096】
PD-1/PD-L1相互作用にブロッキング性であるクラス1抗PD-1抗体は全て、PD-1高細胞をMK3475又は137F2のいずれかで染色した実験において競合的であった(IgG1対照に対して≦29%のPD-1陽性細胞の染色をもって図12に示されるように)。いくつかのこれらの抗体のエピトープマッピングが、同一であるか又はオーバーラップする結合部位を有することを考えると、これらの結果は予測される。クラス1抗体は、134D2抗体とも競合的であるか又は部分的に競合的であった(IgG1対照に対して30~59%の染色をもって図12に示されるように)。134D2は、PD-1/PD-L1相互作用にブロッキング性ではあるが、主にM15突然変異とオーバーラップするがM17突然変異とも程度は低いがオーバーラップするエピトープに結合する。クラス1抗体は、135C12抗体とは非競合的であることが見いだされ(IgG1対照に対して≧60%のPD-1陽性細胞の染色(標識抗体の結合)をもって図12に示されるように)、これらの抗体がPD-1上の別個の部位に結合することを示すエピトープ結合試験を裏付けた。
【0097】
競合相手としてクラス2抗体を用いると、MK3475及び137F2の標識抗体は両方とも、IgG1対照と比較して結合のわずかな減少で又は全く減少しないで結合する。1つの例外は、標識137F2のPD-1結合をブロックした135D1抗体である。135D1のエピトープがM4突然変異の近くであることを考えると、M23突然変異領域における137F2抗体結合に多少の立体障害がありそうに思われる。135C12及び139D6クローンは、M4突然変異をコードするPD-1への結合においてシフトを有するが、それらは137F2の結合と競合しないことを考えると、これらのクラス2抗体の結合はP2パッチ領域のより中心にある。135C12抗体はまた、全てがP2パッチの縁に見られるM17、M18、M26、M28、及びM31突然変異において小さなシフトを有していた。競合相手として用いた全てのクラス2抗体は、標識135C12の結合をブロックし、それらがPD-1上のオーバーラップするエピトープに結合していることを確認した。ほとんどのクラス2競合抗体はPD-1への結合に関して標識134D2と競合しない。136B4抗体は、134D2の結合をブロックする、クラス2抗体の例外である。これらの結果は、PD-1への134D2の結合が、M17突然変異によって部分的に妨害されるが、主にM13及びM15突然変異によって妨害される実施例3におけるエピトープ結合試験と一致する。136B4抗体の結合は、P2パッチの縁又はP2パッチ内にあるM17及びM18突然変異によってのみ妨害される。
【0098】
クラス3抗体は、MK3475及び137F2と競合的又は部分的に競合的であり(図12に示されるように、IgG1対照に対して30~59%の染色として規定される)、かつ135C12とは非競合的にPD-1に結合する。135E10クラス3抗体は標識134D2と競合的であるが、140A1クラス3抗体は標識134D2と非競合的である。エピトープマッピングは、140A1が、134D2の結合エピトープ(主にM15で軽度にM17)とは異なるM13突然変異の領域で結合することを示す。
【0099】
クラス4抗体に関する機能的データの評価において、134D2及び136B5のみが、機能的疲弊回復アッセイにおいてHIV特異的CD8 T細胞の増殖の増加につながる有意なアンタゴニスト活性を有する(図12に示されるように>150%の高められた増殖)。これらの抗体も、生化学的アッセイにおいてPD-1とPD-L1との相互作用をブロックし、従って、おそらくPD-1/PD-L1遮断を介してアンタゴニストとして機能する。過剰な136B5は、標識134D2でのPD-1細胞の染色をブロックするため、これらの抗体は類似の又はオーバーラップするエピトープでPD-1に結合する(図12)。残りのクラス4抗体を用いた競合結合データは、それら抗体がPD-1上の多様な部位に結合すること、及びこの結合が全般的に135C12抗体とオーバーラップしないことを示す。122F10抗体は、136B4と類似の又はオーバーラップするエピトープに結合する例外である。なぜなら、これら2つの抗体は抗体競合試験で類似の結合プロファイルを有し(図12)、その両方がM17突然変異PD-1構築物への低減された結合を有する(表11)。
【0100】
PD-1の溶媒露出残基でのアミノ酸置換により実施したエピトープマッピング試験(実施例3)及び抗体競合試験(図12)からの情報を組み合わせて、様々な抗PD-1抗体クローンが結合するPD-1上の領域の一貫性のある構造マップを図13a及び13bに示す。これらの結合エピトープは、表11において、ほとんどのクローンに関して異なる色の円形のパッチで示されている。図13aは、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L2相互作用に関連する残基の大部分を有するPD-1の面を示す。例外は、フレキシブルループ領域において、図13aの左側に見られる残基89及び90である。クローン137F2、139F11、140A1、140G5及びMK3475などの、PD-1/PD-L1相互作用と競合的である最初の抗体セットは全て、PD-1のこの面に結合する。機能的アッセイで最も高いアンタゴニスト活性を有すると同定された2つの抗体(表11)は両方とも、図11a及び13aに示され、PD-1の残基124~126に集中する、P1パッチの中心に結合することに注目されたい。この発見は、137F2と139F11が、顕著に異なる重鎖及び軽鎖CDR配列を有し、かつ本明細書で検討されている抗体クローン全ての配列の整列に基づき別個のファミリーに属するという事実により固められる。抗体クローン134D2と136B5は、生化学的アッセイにおいてPD-1/PD-L1相互作用と競合的であることが示されたが、それらは、M13、M15及びM17突然変異とオーバーラップする、図13bに示すPD-1の領域に結合する。このマッピングされたエピトープに基づくと、これらの抗体は、残基89及び90を含むPD-1上のループ領域の一部であるPD-1の残基85及び86の近くに結合する。残基89及び90は、PD-L1との相互作用に関連する(図2a)ため、このループ領域への結合は、PD-L1への結合を阻害するPD-1における構造的変化を誘導しうる。これらの結果と一致して、抗体競合試験は、競合クラス1抗体の添加が、標識134D2抗体の結合を顕著に低減させることを示す(図12)。
【0101】
表3に列挙するD-1/PD-L1相互作用に非ブロッキング性である抗体は全て、PD-1/PD-L1相互作用に関連する残基から離れたエピトープに結合する。強い機能活性(機能的回復アッセイにおいて>150%に高められたCD8 T細胞増殖、図12)を有する抗体は全て、図13bに示されているP2パッチとオーバーラップするエピトープにおいて結合する。135C12(全ての試験突然変異体)、139D6(選択された試験突然変異体)、及び135D1(選択された試験突然変異体)抗体クローンは、関連する重鎖及び軽鎖CDR配列を有し、かつM4、M18及びM31突然変異とオーバーラップする部位に結合する。136B4抗体クローンは、別個のCDR配列を有し、M17及びM18突然変異PD-1を用いた際に結合親和性に大きなシフトが見られ、それがP2パッチの縁にある別個のエピトープに結合することを示す。135C12抗体は、136B4クローと競合的に結合するが、134D2又は136E10クローンのいずれとも競合しない。これらの抗体競合結合試験は、P2パッチとオーバーラップするエピトープへの135C12、139D6135C1、及び136B4の結合をさらに支持する。136E10抗体の結合エピトープは、この抗体のPD-1への結合を完全に失効させるM1突然変異に限定される。
【0102】
実施例6
抗体薬物コンジュゲートによる標的細胞殺滅
この中で検討するように、抗体などの結合剤(例えば表3)を、PD-1発現細胞の標的殺滅(targeted killing)を実施するために毒素とコンジュゲートさせてよい。この戦略の治療的利益の例として、大部分がPD-1陽性であるHIV感染CD4T細胞の標的排除が挙げられる。これらの試験を実施するために、2つの異なる抗PD-1抗体(140G5及び136B5)を、抗体のジスルフィド結合の部分的還元後の利用可能なシステイン基を介してPEG4-vc-PAB-PNU-159682(以下、PNUと称する)と化学的にコンジュゲートさせた。抗体薬物コンジュゲート(ADC)を、疎水性相互作用クロマトグラフィ及びサイズ排除クロマトグラフィによりプロファイルし、両方のサンプルが>95%のPNUコンジュゲート抗体を含むことが分かった。ADC殺滅アッセイにおいて、HIV-1ウイルスに慢性感染した患者のPBMCからCD4T細胞を単離した。そのCD4T細胞を、アイソタイプ対照抗体、140G5 mAb、140G5-PNU mAbコンジュゲート、136B5 mAb、又は136B5-PNU mAbコンジュゲートと共にインキュベートした。抗体濃度は全て10μg/mlであり、細胞は、5%COの細胞培養インキュベータ中、37℃で5日間インキュベートした。5日目に、細胞生存性のためのAqua染色及びアポトーシスを受けている細胞を同定するためのAnnexin V染色に加えて、CD4及びPD-1の細胞表面レベルをモニターするために、抗体を用いてフローサイトメトリー解析用に細胞を染色した。図14に示すように、様々な抗体又はADCで処理した全てのサンプルが、PD-1の低~中レベルの発現を有するCD4T細胞において、同等のAqua陽性(図14a)又はAnnexin V陽性(図14b)レベルを有する。しかしながら、高レベルのPD-1を有する細胞集団では、抗PD-1 ADC(図14a及び14bにおける140G5-PNU及び136B5-PNU)で処理したサンプルにおいて、Annexin V陽性細胞及びAqua陽性細胞の量の有意な増加がある。
【0103】
抗PD-1 ADCの潜在的な治療的利益のさらなる証拠を提供するために、様々な抗体又はADC(アイソタイプ対照抗体、140G5 mAb、140G5-PNU mAbコンジュゲート、136B5 mAb、又は136B5-PNU mAbコンジュゲート)で5日間処理したCD4T細胞を、定量的ウイルスアウトグロースアッセイを用いてHIV感染細胞の頻度に関して評価した。このアッセイにおいて、抗体又はADCで処理したHIV感染患者由来の細胞を、未刺激のままにするか、又は抗CD3/抗CD28抗体で刺激し、その後、同種のCD8-枯渇PBMCの存在下において、様々な希釈率で培養した。各サンプルからの様々な希釈率のCD4T細胞を用いて試験することにより、抗体又はADCでの5日間の処理の後に、複製可能なウイルスを含む細胞の頻度を評価することができる。CD4T細胞及び同種CD8-枯渇PBMCの14日間のインキュベートの後、複製可能なウイルスを含む細胞の頻度を特定するために、p24 ELISAにおいて、及びHIV RNAの存在に関して試験した。図14に示すPD-1高細胞の特異的枯渇に従い、Annexin V陽性又はAqua陽性であるPD-1高細胞の割合(%)の増加が認められ、それぞれアポトーシス及び細胞死を受けている細胞の増加を示す(図15a及び15b)。図16に示すウイルスアウトグロースアッセイにおいて、5日間、IgG1アイソタイプ対照抗体、抗PD-1抗体(136B5又は140G5)で処理された、或いは処理しないままに置かれた、HIV感染ドナー由来のCD4T細胞のサンプルは全て、同様の複製可能なウイルスを含む細胞の頻度を有する(16~28のHIV-1 RNA陽性細胞/ml(RUPM))。しかしながら、抗PD-1 ADC(140G5-PNU mAbコンジュゲート、136B5 mAb、又は136B5-PNU mAbコンジュゲート)で処理したサンプルでは、感染性ウイルスを産生できる細胞の4~5倍の減少に一致する感染細胞の頻度の顕著な減少がある。これらの結果は、5日間の抗PD-1 ADC処理に関連するRUPMの10倍までの減少をもって、いくつかの別の実験で再現されている。従って、これらの試験は、抗PD-1 ADCが、HIV-1陽性患者から感染細胞を枯渇させるための有効な治療法となりうるという考えのin vitroでの原理証明を提供する。
【0104】
実施例
マウス抗PD-1抗体のヒト化
マウス抗体のものに最も類似する重鎖及び軽鎖フレームワークをみつけるために、選択抗PD-1クローンのマウスIgG1抗体配列を、ヒト免疫グロブリン生殖細胞系V遺伝子データベースに対して比較した。これらのフレームワーク配列を用いて、コンビナトリアルライブラリーを設計し、それを用いて、ヒト化すべき抗体の重鎖及び軽鎖CDRループを組み込んだファージディスプレイライブラリーを構築した。次に、ファージライブラリーを、F融合構築物において、組換えヒトPD-1に対するパンニング実験で用いた。ファージELISAを用いて、組換えPD-1に結合するヒト化抗PD-1アウトプットファージを評価した。陽性クローンからのFab断片DNAを、FASEBA(fast screening for expression,biophysical-properties and affinity)ライブラリーに導入し、Fabタンパク質断片の生成に用いた。これらのFab断片を、発現レベル、タンパク質の安定性/生物物理学的特性、及びBiacore試験によって特定されるような組換えヒトF-PD-1タンパク質に対する親和性に関して評価した。表3の137F2及び135C12マウス抗体クローンをこのやり方でヒト化し、所望の発現、安定性及び親和性特性を有するクローンに関して得られたVH及びVL配列を以下に示す。ヒト及びサルF-PD-1タンパク質に対する137F2及び135C12ヒト化FabクローンのBiacore親和性測定の結果を表12及び13にそれぞれ示す。これらの例示的なヒト化抗体の可変領域アミノ酸配列(指示されているように重鎖及び軽鎖)を以下に示す。
【0105】
A.ヒト化137F2重鎖配列
1.マウスVH参照配列
QVQLQQPGAELVRPGTSVKMSCKAAGYTFTNYWIGWIKQRPGHGLEWIGDIYPGGGYTNYNEKFKGKATLTADTSSSTAYMQVSSLTSEDTGIYYCARGYDFVLDRWGQGTSVTVSS(配列番号277)

2.A35790-VH
QMQLVQSGPEVKKPGTSVKVSCKASGFTFTNYWIGWVRQAPGQALEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTTVTVSS(配列番号139)

3.A35796-VH
QMQLVQSGPEVKKPGTSVKVSCKASGFTFTNYWIGWVRQAPGQALEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTTVTVSS(配列番号140)

4.A35793-VH
QMQLVQSGPEVKKPGTSVKVSCKASGFTFTNYWIGWVRQAPGQALEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTTVTVSS(配列番号141)

5.A35818-VH
QMQLVQSGPEVKKPGTSVKVSCKASGFTFTNYWIGWVRQAPGQALEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTTVTVSS(配列番号142)

6.A35795-VH
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYWIGWVRQAPGQGLEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTTVTVSS(配列番号143)

7.A35797-VH
EVQLVQSGAEVKKHGESLKISCKGSGYSFTNYWIGWVRQATGQGLEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTTVTVSS(配列番号144)

8.A35799-VH
QMQLVQSGAEVKKTGSSVKVSCKASGYTFTNYWIGWVRQMPGKGLEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTTVTVSS(配列番号145)

9.A35805-VH
QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTNYWIGWVRQAPGKGLEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTTVTVSS(配列番号146)

10.137F VH1
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYWIGWVRQAPGQGLEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTLVTVSS(配列番号147)

11.137F VH2
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKAAGYTFTNYWIGWVRQAPGQGLEWMGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTMTADTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTLVTVSS(配列番号148)

12.137F VH1b
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYWIGWVRQAPGQGLEWIGDIYPGGGYTNYNEKFKGRVTMTADTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTLVTVSS(配列番号149)

13.137F VH1c
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYWIGWIRQAPGQGLEWIGDIYPGGGYTNYNEKFKGRATLTADTSTSTVYMEVSSLRSEDTAVYYCARGYDFVLDRWGQGTLVTVSS(配列番号150)

B.ヒト化137F2軽鎖配列
1.マウスVL参照配列
DIVMSQSPSSLAVSTGEKVTMTCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIFWASTRESGVPDRFLGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(配列番号278)

2.A35790-VL
DVVMTQSPAFLSVTPGEKVTITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(配列番号151)

3.A35796-VL
DVVMTQSPAFLSVTPGEKVTITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(配列番号152)

4.A35793-VL
DVVMTQSPAFLSVTPGEKVTITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLEAEDAATYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(配列番号153)

5.A35818-VL
DVVMTQSPAFLSVTPGEKVTITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQAPRLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLEAEDAATYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(配列番号154)

6.A35795-VL
DVVMTQSPAFLSVTPGEKVTITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQAPRLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(配列番号155)

7.A35797-VL
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(配列番号156)

8.A35799-VL
DVVMTQSPAFLSVTPGEKVTITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(配列番号157)

9.A35805-VL
DVVMTQSPAFLSVTPGEKVTITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLEAEDAATYYCKQSYTLRTFGGGTKLEIK(配列番号158)

10.137F VL1
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSYTLRTFGQGTKLEIK(配列番号159)

11.137F VL2
DIVMTQSPDSLAVSLGERATITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIFWASTRESGVPDRFLGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSYTLRTFGQGTKLEIK(配列番号160)

12.137F VL1b
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSYTLRTFGQGTKLEIK(配列番号161)

13.137F VL1c
DIVMTQSPDSLAVSLGERATITCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIFWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSYTLRTFGQGTKLEIK(配列番号162)

14.137F VL1d
DIVMTQSPDSLAVSLGERATMTCKSSQSLFNSETQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIFWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSVQAEDVAVYYCKQSYTLRTFGQGTKLEIK(配列番号163)

C.ヒト化135C12重鎖配列
1.マウスVH参照配列
EVQLHQSGPELLKPGASVRMSCKASGYTFTNFYIHWVKQSHGKSIEWIGSIYPNYGDTAYNQKFKDKATLTVDKSSSTAYMALRSLTSEDSAVYYCARGYSYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号279)

2.A35775-VH
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTNFYIHWVRQAPGQRLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTTVTVSS(配列番号164)

3.A35783-VH
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTNFYIHWVRQARGQRLEWIGSIYPNYGDTAYNQKFKDRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTTVTVSS(配列番号165)

4.A35774-VH
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTNFYIHWVRQAPGQRLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTTVTVSS(配列番号166)

5.A36443-VH
EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTNFYIHWVRQARGQRLEWIGSIYPNYGDTAYNQKFKDRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTTVTVSS(配列番号167)

6.A35777-VH
EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTNFYIHWVRQAPGKGLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTTVTVSS(配列番号168)

7.A35789-VH
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTNFYIHWVRQMPGKGLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTTVTVSS(配列番号169)

8.A36448-VH
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTNFYIHWVRQMPGKGLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTTVTVSS(配列番号170)

9.A36437-VH
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTNFYIHWVRQMPGKGLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTTVTVSS(配列番号171)

10.135C VH1
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNFYIHWVRQAPGQGLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号172)

11.135C VH2
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNFYIHWVRQAPGQGLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRVTMTVDKSTSTVYMELRSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号173)

12.135C VH3
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNFYIHWVKQAHGQGLEWMGSIYPNYGDTAYNQKFKDRVTMTVDKSTSTVYMELRSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号174)

13.135C VH1b
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNFYIHWVRQAPGQGLEWIGSIYPNYGDTAYNQKFKDRVTMTVDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号175)

14.135C VH1c
QVQLVQSGAEVKKPGASVKMSCKASGYTFTNFYIHWVRQAPGQGLEWIGSIYPNYGDTAYNQKFKDRATLTVDTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号176)

15.135C VH1d
QVQLVQSGAEVKKPGASVKMSCKASGYTFTNFYIHWVRQAPGQGLEWIGSIYPNYGDTAYNQKFKDRATLTVDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYSYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号177)

D.ヒト化135C12軽鎖配列
1.マウスVL参照配列
NIVMTQSPKSMSMSVGERVTLTCKASENVVTYVSWYQQKPEQSPKLLIYGASNRYTGVPDRFTGSGSATDFTLTISSVQAEDLADYHCGQGYSYPYTFGGGTKLEIK(配列番号280)

2.A35775-VL
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGQAPRLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(配列番号178)

3.A35783-VL
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGKTPKLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(配列番号179)

4.35774-VL
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGKAPKLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(配列番号180)

5.A36443-VL
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGQAPRLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISRLEPEDFAVYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(配列番号181)

6.A35777-VL
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGQAPRLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(配列番号182)

7.A35789-VL
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGQAPRLLIYHTSSLHSGIPARFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(配列番号183)

8.A36448-VL
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGKTPKLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(配列番号184)

9.A36437-VL
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGQAPRLLIYHTSSLHSGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFAVYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(配列番号185)

10.135C VL1
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGKAPKLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(配列番号186)

11.135C VL2
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGKAVKLLIYHTSSLHSGVPLRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(配列番号187)

12.135C VL3
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKSDGAVKLLIYHTSSLHSGVPLRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(配列番号188)

13.135C VL1b
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGKAPKLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLEIK(配列番号189)

14.135C VL1c
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQGISGDLNWYQQKPGKAVKLLIYHTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQYYSKDLLTFGGGTKLELK(配列番号190)。

指示されているヒト化抗体のBiacore結合親和性測定の結果を下記の表12及び13に示す。
【0106】
【表12】
【0107】
【表13】
【0108】
実施例8
抗PD1抗体及びその組合せを用いたT細胞の刺激
HIV特異的CD8T細胞の増殖をもたらす、慢性感染HIVドナー由来のPBMCの抗原特異的刺激の結果を図17~19に示す。ウイルス血症ドナーにおけるCD8T細胞の疲弊状態により、抗PD-1抗体の添加は、ほぼ200%まで抗原特異的増殖を高める(p値<0.0001)。
【0109】
マウスブロッキング抗PD-1抗体137F2及びマウス非ブロッキング抗PD-1抗体135C12由来のCDRをコードするヒト化抗PD-1抗体を、CFSE機能的疲弊アッセイにおいて、抗原特異的CD8 T細胞における機能的疲弊を救済するそれらの能力に関して評価した。ヒト抗体フレームワーク領域中に変形物を有する、137F2及び135C12クローンのいくつかのヒト化抗体を複数のアッセイで試験し、全てが、MK3475、並びに137F2及び135C12のマウス/ヒトキメラ抗体(マウス由来のV及びV部分、及びIgG4のヒト定常領域)と比較して、CD8T細胞増殖を促進することに関して同様の活性を示した。ウイルス血症ドナーにおけるCD8 T細胞の疲弊状態により、抗PD-1抗体の添加は、ほぼ200%まで抗原特異的増殖を高める(p値<0.0001)(図17)。マウスブロッキング抗PD-1抗体(すなわち、PD-1/PD-L1相互作用をブロックする)137F2由来のCDRをコードするヒト化抗PD-1抗体(すなわち、ヒト化抗体A35795(配列番号143及び155を含む)、A35796(配列番号140及び152を含む)及びA35797(配列番号144及び156を含む)、並びにマウス-ヒトキメラ137F2(配列番号8、31、54、77、100、及び123を含む))、並びにマウス非ブロッキング抗PD-1抗体135C12由来のCDRをコードするヒト化抗PD-1抗体(すなわち、ヒト化抗体A35774(配列番号166及び180を含む)、A35783(配列番号165及び179を含む)、A35789(配列番号169及び183を含む)、A36443(配列番号167及び181を含む)、135C H2L2(配列番号173及び187を含む)、135C H1cL1c(配列番号176及び190を含む)、135C H1cL1b(配列番号176及び189を含む)、並びにマウス-ヒトキメラ135C12(配列番号17、40、63、86、109及び132を含む))を、CFSE機能的疲弊アッセイにおいて抗原特異的CD8T細胞における機能的疲弊を救済するそれらの能力に関して評価した。ヒト抗体フレームワーク領域中に変形物を有する、137F2(ブロッキング)及び135C12(非ブロッキング)クローンのいくつかのヒト化抗体を複数のアッセイで試験した。全てが、MK3475、並びに137F2及び135C12のマウス/ヒトキメラ抗体と比較して、CD8T細胞増殖を促進することに関して同様の活性を示した。
【0110】
図18は、PD-1/PD-L1相互作用をブロックする抗体(MK3475又はA35795)と非ブロッキング抗PD-1抗体(A35774)との組合せの結果が、いずれかの抗体単独と比較して、統計的に有意な(p値<0.0001)増殖の増加をもたらしたことを示す。図18に示すデータは、MK3475とA35774との組合せに関して3回の実験の平均、A35795とA35774との組み合わせに関しては4回の実験の平均である。
【0111】
図19は、PD-1/PD-L1相互作用をブロックする抗体(MK3475)と、非ブロッキング抗PD-1抗体(135C H1cL1c(配列番号176及び190を含む)又は135C H1cL1b(配列番号176及び189を含む))との他の組合せの効果を示す。この中に示すように、ブロッキング抗体MK3475と非ブロッキング抗PD-1抗体(135C H1cL1c又は135C H1cL1b)との組合せは、いずれかの抗体単独と比較して、増殖の統計的に有意な増加(示されているように、p値=0.018又はp値<0.0001)をもたらす。図19に示すデータは、各組合せに関して2回の実験の平均である。
【0112】
実施例9
ブロッキング抗PD-1抗体と非ブロッキング抗PD-1抗体との組合せ処理でのJurkatPD-1レポーター細胞の活性化
これらの実験では、JurkatPD-1NFATレポーター細胞株を、TCRアクチベータ及びPD-L1タンパク質を共発現する一過性トランスフェクト293T細胞株で刺激した。抗PD-1抗体の非存在下では、PD-L1/PD-1相互作用がJurkat細胞の刺激を抑制し、NFATの活性化の低減及びより低いレベルのルシフェラーゼ産生をもたらす。ブロッキング抗PD-1抗体(例えば、MK3475)の添加により、増強されたNFAT活性化、より多くのルシフェラーゼ産生、及びルシフェラーゼ基質の添加により生成される化学発光の量の増加をもたらした。大過剰のPD-1及びPD-L1を用いるこれらの極端なアッセイ条件下において、非ブロッキング抗PD-1抗体(図20AにおけるA35774及び図20Bにおける135C H1cL1cにより代表される)は、ブロッキング抗PD-1抗体と比較して低減された活性を有する。しかしながら、ブロッキング抗PD-1抗体と非ブロッキング抗PD-1抗体との組合せは、T細胞活性化を、MK3475単独で達成されるよりも高いレベルにさらに高める。ブロッキング抗PD-1抗体及び非ブロッキング抗PD-1抗体を用いたこのNFAT活性化の増強は、各試験抗体の低濃度及び高濃度の両方で見られる。示されたデータは、ブロッキング抗体MK3475+非ブロッキングA35774(図20A)又はブロッキング抗体MK3475+非ブロッキング抗体135C H1cL1c(図20B)のいずれかの組合せに関して示された、NFAT活性化の統計的に有意な増加を有する3回の繰返し実験の平均である。
【0113】
実施例10
抗PD-1抗体処理での細胞表面PD-1のインターナリゼーション
PD-1の高い基底レベルを有するメモリーT細胞を持つ慢性感染HIVドナー由来のPBMCを、ブロッキング抗PD-1抗体、非ブロッキング抗PD-1抗体、又はブロッキング抗PD-1抗体と非ブロッキング抗PD-1抗体との組合せのいずれかと共にインキュベートして、PD-1インターナリゼーションに対する効果を特定した(図21)。48時間~72時間にわたり、フローサイトメトリーによりメモリーCD4T細胞(図21a、c、及びe)並びにCD8T細胞(図21b、d、及びf)においてPD-1の細胞表面レベルをモニターして、抗PD-1抗体が細胞表面PD-1インターナリゼーションを誘導するか否かを特定した。A35795(配列番号143及び155を含む)及びA35774(配列番号166及び180を含む)(図21a、b);MK3475及びA35774(配列番号166及び180を含む)(図21c、d);並びに、A35795(配列番号143及び155を含む)及び135C H1cL1c(配列番号176及び190を含む)(図21、e、f)の抗体の組合せを用いた3つの別個の実験を示す。全ての場合に、ブロッキング抗PD-1抗体(A35795又はMK3475により代表される)と、非ブロッキング抗PD-1抗体(A35774(配列番号166及び180を含む)又は135C H1cL1c(配列番号176及び190)を含む)との組合せは、PD-1受容体のより迅速及び/又はより著しいインターナリゼーションを誘導することが観察された。各実験において、PBMCを、ヒトIgG4アイソタイプ対照抗体と共にインキュベートし、それは細胞培養インキュベーションを通してPD-1の高いレベルを維持した未処理T細胞用の参照としての役割を果たした。PD-1の細胞表面発現の低減は、PD-1/PD-L1相互作用を介したT細胞の負の調節を制限できるため、メカニズム的に、PD-1のインターナリゼーションは、抗PD-1抗体(ブロッキング及び非ブロッキング抗体の単独又は組合せのいずれか)のアンタゴニスト機能活性に寄与しうる。
【0114】
実施例11
抗PD-1抗体処理後のIFN-γ産生
PD-1の高い基底レベルを有するメモリーT細胞を持つ慢性感染HIVドナー由来のPBMCを、ブロッキング抗PD-1抗体、非ブロッキング抗PD-1抗体、又はブロッキング抗PD-1抗体と非ブロッキング抗PD-1抗体との組合せのいずれかと共にインキュベートした。次に、PBMC/抗体混合物を、抗CD3 TCRアクチベータを発現する又は抗CD3 TCRアクチベータ及びPD-L1を共発現するように一過性トランスフェクトされた293T細胞の上に積層した。PD-L1の存在下又は非存在下におけるTCRアクチベータ発現細胞での24時間の刺激の後、上清を採取し、ELISAでIFN-γ産生を分析した。抗CD3 TCRアクチベータ発現細胞で刺激した場合、抗体処理サンプルの全てにおいて同様のレベルのIFN-γが検出された(図22A)。対照的に、抗CD3 TCRアクチベータ及びPD-L1を共発現する細胞で刺激した場合、IgG4アイソタイプ対照で処理したサンプルではより低いレベルのIFN-γが検出され、抗PD-1抗体で処理したサンプルではIFN-γ産生が増強された。ブロッキング抗PD-1抗体(MK3475)及び非ブロッキング抗PD-1抗体(A35774)の両方で処理したサンプルにおいて最も高いレベルのサイトカイン産生が認められた(*p<0.05)。
【0115】
別の実験において、PD-1の高い基底レベルを有するメモリーT細胞を持つ慢性感染HIVドナー由来のPBMCを、非ブロッキング抗PD-1抗体(A35774)、ブロッキング抗PD-1抗体(MK3475)、又はブロッキング抗PD-1抗体と非ブロッキング抗PD-1抗体との組合せ(MK3475及びA35774)のいずれかと共にインキュベートした(図22B)。次に、PBMC/抗体混合物を、抗CD3 TCRアクチベータ及びPD-L1タンパク質を共発現するように一過性トランスフェクトされた293T細胞の上に積層した。GolgiPlug(商標)タンパク輸送阻害剤を添加し、細胞を約18時間インキュベートして、細胞内にサイトカインを蓄積させた。フローサイトメトリーにより、各抗体処理条件に関してIFN-γ産生細胞の割合(%)を評価した(図22B)。IFN-γの産生は、抗PD-1処理を受けたPD-1陽性細胞で増加し、ブロッキング抗体(MK3475)と非ブロッキング(A35774)抗体との組合せは、サイトカイン産生の更なる増加をもたらした(PD-1CD8 T細胞についてデータを示す)。
【0116】
実施例12
結晶構造解析
組換え発現された精製ヒトPD-1タンパク質(受容体エクトドメインの残基33~150(「hPD1」))を、ヒト化A35774抗体のFab断片と共にインキュベートし、複合体をサイズ排除クロマトグラフィにより精製した。hPD-1/Fab A35774(配列番号166及び180を含む)複合体に関してタンパク質結晶を作製し、X線結晶構造解析によりその構造を解明した。図23Aの共結晶構造は、hPD-1と相互作用するA35774(配列番号166及び180を含み、CDRは配列番号17、40、63、86、109、及び132により表される)の重鎖及び軽鎖CDRループを示す。そのデータは、A35774のためのPD-1上の結合エピトープとして機能する主要な残基が、V CDRループに関してF37、P39、A40、L41、V43、L138、R139及びR143、並びにV CDRループに関してP34、E136、S137及びR139を含むことを示す。これらの構造試験は、実施例3及び5で説明したように、A35774と同じ重鎖及び軽鎖CDRを持つマウス135C12抗体を用いて実施したエピトープマッピングと一致する。アミノ酸置換をコードするPD-1を用いたそれらの抗体結合実験において、135C12抗体と、PD-1突然変異体M4(置換S36A/P37A/L41Aを含む)、M26(置換R139A/E141Aを有する);及びPD-1突然変異体M31(置換L141A/V143Lを有する)との間で結合のシフトが認められた。135C12の結合親和性に小さなシフトをもたらした他のPD-1突然変異(M17、M18及びM28にある)は、PD-1上のA35774 Fabの結合部位に極めて近接しており、これらのアミノ酸置換は、これら試験において抗体結合親和性を低減させたPD-1の局所的構造変化を導入しうる。共結晶構造解析、エピトープマッピング、及び抗体競合結合試験は総合して、P2パッチ領域とオーバーラップする抗体結合が、PD-1/PD-L1遮断を介して作用する抗体とは区別されるアンタゴニスト機能活性を持つことができることの確証を提供する。A35774により代表される抗体がPD-1とPD-L1との間の相互作用をブロックしないことの追加の証拠を図23Bに提供する。図23Bでは、我々のhPD-1/FabA35774共結晶構造と、PD-1のPD-L1との共結晶構造4ZQKとの間でモデルが作製された。このモデルは、ヒトPD-1に対するA35774Fab及びPD-L1タンパク質のオーバーラップしない結合を示す(図23B)。
【0117】
実施例13
In vivo有効性試験
キイトルーダ(MK3475)と比較して、非ブロッキング抗PD-1抗体135C H1cL1c(配列番号176及び190を含む)の治療的有効性を評価するために、PD-1 HuGEMMマウスにおいてin vivo有効性試験を行い、それぞれ10mg/kgで隔週(bi-weekly)投与した(図24)。追加の治療的処置は、135C H1cL1c及びキイトルーダを各5mg/kgで隔週共投与することを含む。HuGEMMマウスは、受容体エクトドメインの大部分がヒトPD-1タンパク質(ヒトPD-1配列の残基26~146)をコードするヒト/マウスキメラPD-1タンパク質を発現するように遺伝子操作された。in vivo試験の前に、フローサイトメトリー試験により、135C H1cL1c及びキイトルーダ抗PD-1抗体が、刺激されたT細胞の表面でHuGEMMヒト/マウスキメラPD-1に特異的に結合したことを確認した。その試験のための調製において、腫瘍発生のために大腸腺がん由来のMC38細胞を多数のPD-1HuGEMMマウスに皮下接種した。腫瘍が約95mm±50の体積に達したときに、合計40匹のマウスを、84mmの平均腫瘍サイズを有する4つの群に無作為化し、試験0日目に投与(ビヒクル、135C H1cL1c、キイトルーダ及び135C H1cL1c+キイトルーダ)を開始した。治療的抗PD-1抗体を隔週投与し、腫瘍サイズ及びマウスの体重を1週間に2回測定した。未処置PBSバッファービヒクル対照マウスと対比して腫瘍増殖阻害をモニターし、効果をキイトルーダと比較した。非ブロッキング抗PD-1抗体135C H1cL1cは、キイトルーダに匹敵するレベルで腫瘍増殖の低減を誘導した。135C H1cL1cとキイトルーダとの共投与も、10mg/kgでのキイトルーダ単独投与と少なくとも同程度の効果である細胞増殖の低減を誘導した。しかしながら、試験中の全ての処理後時点において、135C H1cL1cとキイトルーダとの組合せで処置されたマウスは、キイトルーダ陽性対照と比較して、応答の向上及びより小さな平均腫瘍体積の傾向を示した。重要なこととして、135C H1cL1cとキイトルーダとの組合せは、(統計解析のためにペアワイズウィルコクソン検定を用いて)試験の4日目(p値=0.0676、統計的限界近く)、7日目(p値=0.0266)、11日目(p値=0.0067)、14日目(p値=0.0037)、及び17日目(p値=0.0021)に、ビヒクル対照と比較して腫瘍体積の統計的に有意な減少を示した。対照的に、キイトルーダ単独の投与は、11日目(p値=0.0205)、14日目(p値=0.0145)、17日目(p値=0.0145)に、ビヒクル対照と比較して腫瘍体積の統計的に有意な低減を示しただけである。135C H1cL1c単独の投与は、試験の11日目(p値=0.0266)、14日目(p値=0.0062)、及び17日目(p値=0.0044)に、ビヒクル対照と比較して腫瘍体積の統計的に有意な低減を示した(図24A)。ビヒクル対照と比較したMC38腫瘍体積の平均阻害パーセンテージ(%)に関するデータの解釈も、単独で投与されたキイトルーダ又は135C H1cL1cと比較して、135C H1cL1cとキイトルーダとの組合せの抗腫瘍活性の向上の強い傾向を示す(図24B)。このプロファイルは、ブロッキング(例えば、キイトルーダ又はMK3475)抗PD-1抗体と非ブロッキング(135C H1cL1c)抗PD-1抗体との組合せが、T細胞機能活性(例えば、増殖(実施例2及び8)、並びにサイトカイン産生(実施例11))の増強を引き起こすことのin vitroの証拠を支持する。更なる所見は、抗体の同じ総量を各試験群に投与した(キイトルーダ:10mg/kg、並びに135C H1cL1cと及びキイトルーダ:各5mg/kg)にもかかわらず、キイトルーダ単独と比較して、H1cL1cとキイトルーダとの組合せがかなり早い時点(試験の4又は7日目)で抗腫瘍効果を発揮し始めることである。最後に、in vivo腫瘍モデルデータを、抗体治療中にM38腫瘍の完全寛解を経験したマウスの割合(%)(図24C)に関して説明する。135C H1cL1cとキイトルーダの組合せで見られた腫瘍阻害(%)の向上と一致して、この試験群(135C H1cL1cとキイトルーダとの組合せ)は、移植腫瘍の完全寛解を有したマウスの2倍増加を示した(キイトルーダ又は135C H1cL1cのいずれかをそれぞれ/単独で投与した群での2匹のマウスに対して、135C H1cL1cとキイトルーダとの組合せにおける4匹のマウス)。合わせて、このin vivoデータは、P2パッチとオーバーラップするPD-1のエピトープに対する、PD-1/PD-L1相互作用に非ブロッキング性である結合が、腫瘍特異的免疫応答を活性化し、それがPD-1/PD-L1遮断を介して作用する抗PD-1抗体とは区別されかつそれと共働的であることを確認する。
【0118】
所定の実施形態を好ましい実施形態に関して記載しているが、変形及び修飾が当業者に考え付くことを理解されたい。従って、添付の特許請求の範囲は、請求項の範囲に入る全てのそのような等価の変形をカバーすることが意図されている。
【0119】
参考文献
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図1
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図23(B)】
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【配列表】
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