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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】ブランクのセンタリング及び選択加熱
(51)【国際特許分類】
   B21D 24/00 20060101AFI20220615BHJP
   B21D 22/20 20060101ALI20220615BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20220615BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
B21D24/00 M
B21D22/20 Z
B21D22/20 H
C21D9/00 A
C21D1/18 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018557089
(86)(22)【出願日】2017-08-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2017070015
(87)【国際公開番号】W WO2018029169
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】16382394.1
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517098527
【氏名又は名称】オートテック・エンジニアリング・ソシエダッド・リミターダ
【氏名又は名称原語表記】Autotech Engineering, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル・ロペス・ラヘ
(72)【発明者】
【氏名】ジョルディ・カスティーリャ・モレノ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・メリノ・フェルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・シュトラウベ
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0320968(US,A1)
【文献】特開2014-147963(JP,A)
【文献】特表2014-522911(JP,A)
【文献】特開2015-094025(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0158256(US,A1)
【文献】特表平07-508860(JP,A)
【文献】特表2001-506543(JP,A)
【文献】特開2006-110549(JP,A)
【文献】特開2015-016508(JP,A)
【文献】特許第5987420(JP,B2)
【文献】特開2014-11296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 24/00
B21D 22/20
C21D 9/00
C21D 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱スタンピングラインにおいて、加熱炉から作り出されたブランクをセンタリングするセンタリングシステムであって、前記センタリングシステムは、
センタリングテーブルと、
前記センタリングテーブルに配置された状態で、前記ブランクの1以上の選択された領域を加熱する加熱システムを備え、
前記加熱システムは、基礎部と、複数の加熱要素と、を備え、
前記複数の加熱要素は、前記基礎部にブランクが搬送される第1の方向と前記第1の方向と垂直な第2の方向に配置され、
前記センタリングテーブルが、前記ブランクを正しく設置し中心に揃えるために動く複数のセンタリングピンを備える、センタリングシステム。
【請求項2】
さらに、前記基礎部を前記センタリングシステムに連結するための支持構造体を備える、請求項1に記載のセンタリングシステム。
【請求項3】
さらに床に前記基礎部を固定するためまたは天井からまたは壁から前記基礎部をつるすための支持構造体を備える、請求項1に記載のセンタリングシステム。
【請求項4】
前記加熱要素は、赤外線ヒータまたは誘導加熱器または抵抗ヒータまたはそれらの組み合わせである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセンタリングシステム。
【請求項5】
前記加熱要素は、レーザヒータ、好ましくはダイオードレーザヒータである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセンタリングシステム。
【請求項6】
加熱システムは、さらに加熱要素によって加熱された、少なくとも1つの接触要素を備え、前記少なくとも1つの接触要素は、前記ブランクと直接接触する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセンタリングシステム。
【請求項7】
前記ブランクに直接接触する前記少なくとも1つの接触要素の温度は、850から1000℃の範囲である、請求項6に記載のセンタリングシステム。
【請求項8】
前記加熱要素は、選択的にスイッチがオンにされるように構成されている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のセンタリングシステム。
【請求項9】
前記加熱要素は、実質的に前記ブランクの前記選択された領域のみが加熱されるような方法で、前記センタリングテーブルに対して配置される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のセンタリングシステム。
【請求項10】
加熱のために選択されない前記ブランクの1以上の領域を冷却するための冷却システムを備える、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のセンタリングシステム。
【請求項11】
硬い領域と軟らかい領域を有する鋼部品を製造する方法であって、
前記軟らかい領域は、前記硬い領域よりも機械的強度が低く、
前記方法は、
加熱炉において、鋼ブランクを加熱するステップと、
加熱炉から下流に配置されたセンタリンテーブルに前記加熱ブランクをセンタリングするステップと、
前記ブランクがセンタリングテーブルにある状態で、前記加熱ブランクの1以上の選択された領域を加熱するステップであって、前記選択された領域は、前記硬い領域を形成するべき前記ブランクの領域であるステップと、
プレス工具に前記ブランクを移動するステップと、
前記プレス工具で前記ブランクを熱間成形するステップと、
前記硬い領域を形成するべき前記ブランクの前記選択された領域を焼き入れするステップと、を備え、
前記選択された領域は、ブランクが搬送される第1の方向と前記第1の方向と垂直な第2の方向に配置され、
前記センタリングテーブルが、前記ブランクを正しく設置し中心に揃えるために動く複数のセンタリングピンを備える、方法。
【請求項12】
前記加熱炉において、前記ブランクを加熱するステップは、前記ブランクの前記鋼のAc3温度より高く、前記ブランクを加熱するステップを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ブランクの前記選択された領域を加熱するステップは、前記加熱炉の加熱温度より高く前記選択された領域を加熱するステップを備える、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記ブランクが前記センタリングテーブルにある状態で、前記ブランクの1以上の選択された領域を加熱するステップは、さらに加熱するために選択されていない前記ブランクの1以上の領域を冷却するための冷却システムを備える、請求項11乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ブランクは、15秒以下、好ましくは10秒以下の期間、前記センタリングテーブルに残る、請求項11乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
加熱するために選択されていない前記ブランクの前記領域は、前記ブランクが前記プレス工具に移動されたとき、450℃から700℃の範囲の温度を有する、請求項11乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記プレス成形工具において、前記ブランクの温度は、250℃以下、好ましくは、200℃以下に減らされる、請求項11乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブランクのためのセンタリングシステム、特に加熱システムを含むセンタリングシステムに関連する。本開示は、さらにブランクの熱間成形を含む鋼部品を製造する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
自動車工業において、軽い材料または部品の開発と実施は、軽い自動車を製造するための基準を満足するためにさらに重要になっている。重量減少のための要求は、特に、CO排出の減少のゴールへ動かされる。さらに、占有者の安全に関する懸念の高まりはまた、衝突の間の自動車の完全性とエネルギ吸収を改善する、材料の選択につながる。
【0003】
ホットスタンピングは、例えば、高強度、部品の減らされた厚さ、及び軽さなど、特徴を含むことができる特定の特性を有する熱間成形された構造部品を製造することができるプロセスである。
【0004】
ホットスタンピング生産ラインシステムにおいて、加熱炉システムは、例えば、オーステナイト化温度より高く、特にAc3より高くなど、あらかじめ決められた温度に鋼ブランクを加熱し、熱間成形されるブランクを軟らかくする。ブランクは加熱炉を出るので、ブランクは、ブランクをプレスするように構成された、プレス工具に正しく移動されるために正しく配置される必要がある。
【0005】
加熱炉の出口領域からプレス工具への移動は、コンベヤ及び/または移動システムによってなされることができる。そのようなコンベヤシステムは、通常、プレス工具に移動される前に、加熱ブランクを正しく置くために、センタリングテーブルとしても知られる、センタリングシステムを備える。
【0006】
そのような生産ラインのコンベヤシステムは、加熱炉へ及び加熱炉を通って、ブランクを運ぶように構成される。加熱炉及びコンベヤシステムは、ブランクが、加熱炉を出る前に、所望の温度で、所望の期間(例えば3-5分)の間加熱されるように、構成される。加熱炉を通った部品の輸送は、例えばローラコンベヤ上で起こる。
【0007】
センタリングの後、ブランクは、ブランクを最終製品の形状へ変形するプレスシステムへ移動される。プレスステップの後、例えば、穴の較正または穴開けなどの後操作が実施されることができる。
【0008】
通常、自動車工業において、高強度鋼または超高強度鋼(Ultra High Strength Steel(UHSS))ブランクは、構造骨格の部品を製造するために使われる。この意味において、例えば乗用車などの自動車の構造骨格は、例えばバンパ、ピラー(Aピラー、Bピラー、Cピラー)、側面衝突ビーム、ロッカパネル、及びショックアブソーバなどを含む。
【0009】
UHSSは、重量単位あたりの最適化された最大強度と、有利な成形特性を示すことができる。UHSSは、少なくとも1000MPa、好ましくは約1500MPaまたは2000MPaまたはそれ以上までの極限引張強度を有することができる。
【0010】
鋼ブランクは、プレスの際またはプレス後にブランクを冷却することによって、高引張強度を備える適切な微細構造を得ることができる。基礎の鋼材料の組成によって、ブランクは、高引張強度を達成するために、焼き入れ、すなわち高温から低温へ急速に冷却される必要があるかもしれない。
【0011】
自動車工業で使用される鋼の実施例は、22MnB5鋼である。22MnB5の組成は、重量%で以下にまとめられる。(残りは鉄(Fe)及び不純物)
【0012】
【表1】
【0013】
いくつかの22MnB5鋼は、同様の化学組成を有するものが市販されている。しかしながら、22MnB5鋼の構成要素のそれぞれの正確な量は、ある製造者と別の製造者でわずかに変わることがある。他の実施例において、22MnB5は、約0.23%C、0.22%Si、及び0.16%Crを含むことができる。材料は、さらに異なる割合でMn、Al、Ti、B、N、Niを含むことができる。
【0014】
Arcelor Mittal社から市販されている、Usibor(登録商標)1500Pは、仕立てられた、及びパッチワークのブランクで使われる市販された鋼の実施例である。仕立てられた(溶接された)ブランク及びパッチワークブランクは、例えばホットスタンピングなどの変形プロセスの前のさまざまな厚さで異なる材料のブランクを提供する。この意味において、その代わりに補強材は、変形プロセスの後に、構成要素に加えられる。
【0015】
Usibor(登録商標)1500Pは、フェライト-パーライト相で供給される。同一パターンで分配された微細粒子構造である。機械特性は、この構造に関連する。加熱、ホットスタンピングプロセス、及びそれに続く焼き入れの後、マルテンサイト微細構造は作り出される。結果として、最大強度と降伏強度は著しく増加する。
【0016】
Usiborの組成は、重量%で以下にまとめられる。(残りは鉄(Fe)及び不純物である)
【0017】
【表2】
【0018】
これらの組成のいずれかのスチール(一般に22MnB5スチール、及び特にUsibor)は、腐食及び酸化ダメージを避けるためにコーティングが供給されることができる。このコーティングは、例えばアルミニウム-シリコン(AlSi)コーティングまたは主に亜鉛または亜鉛合金を含むコーティングであることができる。
【0019】
これらのプロセス及び材料によって得られた部品強度の増加は、薄いゲージ材料が使われることを許容し、自動車用途のための従来のコールドスタンプの軟鋼部品を超えて重量を節約することをもたらす。
【0020】
例えばBピラーなどの部品のキー領域の延性とエネルギ吸収を改善するために、同じ部品の中に軟らかい領域を導入することが知られる。これらの軟らかい領域(softer regions)または軟らかい領域(soft zones)は、全体として必要とされる高強度を維持しつつ、局所的な延性を改善する。それらが非常に高い強度を備える領域(硬い領域)と増加した延性を備える領域(軟らかい領域)を備えるように、いくつかの構造部品の微細構造と機械特性を局所的に仕立てることによって、衝突の間、それらの構造の完全性を維持し、それらの全体の重量を減らす一方でそれらの全体のエネルギ吸収を改善することができるかもしれない。
【0021】
本明細書で、「硬い領域」は、主としてマルテンサイト構造、及び例えば1.100MPa以上、特に約1.400MPa以上の高極限引張強度を有する部品の領域として理解されるべきである。
【0022】
「軟らかい領域」は、鋼が硬い領域ほどマルテンサイト構造でなく、例えば約1.050MPa以下の低極限引張強度を有する部品の領域として理解されるべきである。軟らかい領域の微細構造は、等級によるが、例えば、ベイナイト及びマルテンサイト、ベイナイト、マルテンサイトとフェライト、またはフェライトとパーライトの組み合わせであってもよい。
【0023】
自動車の構造部品の異なる延性領域を作り出す既知の方法は、相補的な上部と下部のユニットの複数の組を備える、例えば、加熱炉またはプレス工具といった工具を提供することを含み、ユニットのそれぞれは、分離要素(鋼のブロック)を有する。それぞれの分離要素の組は、ブランクの異なる領域で異なる加熱/冷却率を有するために、異なる温度で機能するように設計され、それによって最終製品に異なる機械特性をもたらす。
【0024】
しかしながら、そのような金型要素は、容易に新しい形態に変更できない、すなわちそれらは軟らかい領域の設計や配置が変化したならば、よい適応性を有しない。さらに、金型の例えばセンサ及びヒータの適応は、高価であるかもしれない。
【0025】
異なる延性領域を作り出す他の既知の方法は、ブランクに熱間成形及び焼き入れした後、例えば、レーザまたは誘導加熱器でブランクを加熱することに基づく。しかしながら、これらの方法は、コストの増加と、製造プロセスにさらなる時間消費をさせる、さらなるプロセスステップを加える。
【0026】
結論として、前述の問題のいくつかを少なくとも部分的に解く、異なる微細構造(すなわち、硬い領域及び軟らかい領域)を備える部品に領域を作り出すための方法と工具が必要である。
【発明の概要】
【0027】
第1の態様において、ホットスタンピングラインで加熱炉から作り出されたブランクをセンタリングするセンタリングシステムが提供される。センタリングシステムは、センタリングテーブルと、センタリングテーブルに配置された状態でブランクの1以上の選択された領域を加熱する加熱システムを備える。
【0028】
加熱システムは、基礎部と前記基礎部に配置された、例えば、赤外線ヒータ、誘導加熱器、レーザヒータ、好ましくはダイオードレーザヒータまたは抵抗ヒータなどの、複数の加熱要素を備えることができる。センタリングシステムはセンタリングテーブルへ基礎部を連結するために使われることができる、支持構造体をさらに備えることができる。いくつかの実施例において、支持構造体は、床に基礎部を固定するため、または天井からまたは例えば加熱炉壁など壁から基礎部をつるすために配置できる。
【0029】
本発明のさらなる態様において、加熱システムの基礎部は、直接接触を通して、少なくとも1つの接触要素からブランクへ熱を移動する目的で、加熱要素によって加熱された少なくとも1つの接触要素(例えば、プレート)を備え、好ましくは、ブランクに直接接触する少なくとも1つの接触要素の温度は、850から1000℃の範囲である。
【0030】
本発明のさらなる態様において、加熱要素は、選択的にスイッチをオンにされるように構成されている。
【0031】
本発明の別の態様において、加熱要素は、実質的にブランクの選択された領域のみが加熱されるような方法で、センタリングテーブルに対して配置される。
【0032】
またさらなる態様において、本発明のセンタリングシステムは、さらに加熱のために選択されていないブランクの1以上の領域を冷却するための冷却システムを備える。
【0033】
さらなる態様において、硬い領域と軟らかい領域を有する鋼部品を製造する方法が提供される。ここで、軟らかい領域は、硬い領域よりも機械的強度が低い。方法は、加熱炉において、鋼ブランクを加熱するステップと、加熱炉から下流に配置されたセンタリンテーブル上に加熱ブランクをセンタリングするステップと、ブランクがセンタリングテーブルにある状態で、加熱ブランクの1以上の選択された領域を加熱するステップを備える。ここで、選択された領域は、硬い領域を形成するべきブランクの領域である。その後、熱間成形されるプレス工具にブランクを移動する。選択された領域は、結果として、マルテンサイト微細構造を得るために焼き入れされることができる。
【0034】
加熱システムを備えるセンタリングテーブルの使用により、新しいプロセスステップが、実質的にプロセス時間を増加せずに、複雑なプレス工具を必要とせずに、熱間成形プロセスラインに加えられることができる。ブランクが加熱炉からでる時にそれらをセンタリングするために必要とされる時間は、選択的にブランクのいくつかの領域を冷却する一方で、他の領域が同じ程度で冷却することが許容されないために使われる。冷たい領域は、軟らかい領域につながる一方で、熱い領域は、最終部品に硬い領域につながるであろう。これは、熱い領域が焼き入れされるであろうためである。それらは、高い温度(例えば700℃以上)からプレス工具から取り外される低い温度(例えば、300℃以下)に急速に冷却される。熱い領域のための冷却率は、マルテンサイトが形成されるように、臨界冷却率よりも高くできる。いくつかの実施例において、冷却率は、40℃/sまたは50℃/s以上にできる。いくつかの実施例において、臨界冷却率はおおよそ25-30℃/sにできる。本発明の方法のさらなる態様において、プレス成形工具のブランクの温度は、250℃以下、好ましくは200℃以下に減らされる。
【0035】
冷却し始めるブランクの領域のために、マルテンサイトは、(プレス工具の外側の冷却より早く冷却することができる)プレス工具の冷却が低温で始まるため、少なく形成される。軟らかい領域は、例えば、ベイナイト及びマルテンサイト、ベイナイト、マルテンサイトとフェライト、またはフェライトとパーライトなどを備える微細構造を有することができる。冷却し始めた領域の急速な冷却率は、例えば25℃/s以下にできる。
【0036】
異なる機械特性を備える領域、すなわち、軟らかい領域及び硬い領域は、ブランクが実質的に平坦であるとき作り出されるので、軟らかい領域の設計の高い制御と柔軟性を得られる。
【0037】
連続製造プロセスにおいて、1つのブランクをセンタリングするために使われる時間は、プレス工具で前のブランクを焼き入れするために使われる時間と一致できる。本明細書で記載された方法とシステムは、選択的に加熱するためのこの期間をうまく利用する。サイクル時間は、それゆえ、硬い及び軟らかい領域を形成するステップを組み込むために増加する必要がない。
【0038】
いくつかの実施例において、最終加熱は、センタリングテーブルで起きることができるので、ブランクが加熱炉で維持される時間を短くできる。
【0039】
さらなる態様において、本発明の方法は、ブランクの鋼のAc3温度より高く加熱炉でブランクを加熱するステップを備える。センタリングシステムにおいて、ブランクの選択された領域は、加熱炉の加熱温度より高く加熱されることが好ましい。
【0040】
他の態様において、本発明の方法は、ブランクがセンタリングテーブルにある状態で、ブランクの1以上の選択された領域を加熱するステップを備え、さらに加熱するために選択されないブランクの1以上の領域を冷却するための冷却システムを備え、好ましくは、加熱されるために選択されない、前記ブランクの1以上の領域は、ブランクがプレス工具へ移動されたとき、450℃から700℃の範囲の温度を有する。
【0041】
さらなる態様において、本発明の方法において、ブランクは、15秒以下、好ましくは10秒以下の期間センタリングテーブルに残る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本開示の限定しない実施例は、添付された図を参照して、次に記載されるであろう。
【0043】
図1】概略的に実施例によって熱間成形生産ラインの側面図を描く。
図2a】概略的に実施例による異なるブランク領域の温度変化を描く。
図2b】概略的に実施例による異なるブランク領域の温度変化を描く。
図3a】概略的にBピラーブランクと実施例による加熱装置を描く。
図3b】概略的に実施例による加熱装置を描く。
図4】概略的にとりわけ異なる延性、引張強度及び硬度に通じる異なる微細構造を備える領域を有するブランクを製造する方法の実施例を描く。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、熱間成形生産ライン200のブランク220を示す。ブランク220を、例えば複数のコンベヤローラまたはコンベヤベルトを備える、コンベヤシステム230によって加熱炉210を通って運ぶことができ、コンベヤの速度は、モータによって制御されることができる。ブランク220は、続くプロセスでブランク220を準備するように、加熱炉で、例えばオーステナイト化温度より高いあらかじめ決められた温度へ加熱されることができる。ブランクの材料により、加熱炉210の温度、ブランクが加熱炉に残らなければならない時間は、変わることができる。いくつかの実施例において、ブランクは、5から10分でAc3温度より高く加熱される。
【0045】
加熱ブランク220は、ブランク220が到着したときに開き、ブランク220が加熱炉210を離れたときに再び閉じるように構成された、ドア(図示せず)を通って、加熱炉210を出ることができる。ブランク220を、続くプロセスのために正しく設置されるための、例えばセンタリングテーブルなどのセンタリングシステム240へ、例えばコンベヤベルトまたはローラコンベヤなどのコンベヤシステム230によって運ぶことができる。
【0046】
センタリングテーブル240は、ブランクを正しく設置し中心に揃えるために受動的または能動的に動かすことができる複数のセンタリングピン(図示せず)を備えることができる。センタリングの後、ブランクは、例えばロボットによって、持ち上げられ、センタリングシステムから下流に配置されたプレス工具250へ移動されることができる。
【0047】
ブランク220がセンタリングテーブル240にある状態で、プレス工具で続いて異なる延性領域、すなわち硬い領域と軟らかい領域を作り出すことができる、選択加熱を受けることができる。硬い領域である選択された領域を、加熱炉210を出た後、ブランクが加熱される温度、すなわち加熱炉温度(T)に維持するために選択的に加熱できる。いくつかの代わりの実施例において、硬い領域になるべきブランクの領域の温度は、加熱炉温度より高くさらに上げることができる。
【0048】
センタリングテーブル240と共に配置された加熱システム100は、基礎部110に配置された加熱要素121、122を備えることができる。さらに支持構造体130を、床に加熱システム100の基礎部110を固定するために使うことができる。
【0049】
他の実施例において、加熱システム100は、センタリングテーブル240に固定され、天井からまたは例えば加熱炉壁など壁からつるされことができる。
【0050】
いくつかの実施例において、加熱要素121、122は、赤外線ヒータにできる。他の実施例において、誘導加熱器、レーザヒータまたは抵抗ヒータを使うことができる。
【0051】
いくつかの特定の領域を加熱することにより、熱散逸を補償し、それゆえブランク220が加熱炉で加熱される温度、すなわち加熱炉温度(T)が維持できる。それどころか、室温、すなわち非加熱領域にさらされた領域は、次第にそれらの温度が減る。さらにいくつかの実施例において、冷却空気を、非加熱領域の冷却率を増加するために、吹き付けることができる。非類似冷却率によって、異なる機械特性を備える領域を達成できる。これは、さらに図2a及び2bに概略的に記載される。
【0052】
図2aは、硬い領域となるべき領域の温度がどのように実施例によって変化するかを示す。水平軸は、時間(t)を表す一方で、垂直軸は、温度(T)を表す。最初に硬い領域となるべき領域は、ブランクが加熱炉を出る温度、すなわち加熱炉温度(T)であり、例えば約900℃にできる。加熱炉温度(T)は、ブランクがtで焼き入れされるまで、維持される。維持された加熱炉温度の結果、ブランクが焼き入れされるとき、急速な温度変化が起きる。実施例において、急速な温度変化は、Ms温度より高くから、Mf温度より低くまで起きてもよい。
【0053】
高温勾配により、例えばマルテンサイトなどの高引張強度を有する微細構造の形成が可能である。言い換えれば、高温勾配を備える領域は、硬い領域になるであろう。
【0054】
図2bは、軟らかい、すなわち低引張強度及び硬い領域より延性がある、領域となるべき領域の温度が実施例によってどのように変化するかを表す。再び、水平軸は時間(t)を表し、垂直軸は温度(T)を表す。t=0において、軟らかい領域となるべき領域は、加熱炉温度(T)である。しかしながら、領域は、室温、すなわち加熱されていない、に曝されるので、ブランクがtにおいてさらに急速に冷却されるまで、温度はゆっくり減少する。
【0055】
軟らかくなるべき領域は、例えばプレス工具における水チャネルによって、急速に冷却されるとき、温度勾配は、他の領域、すなわち硬い領域よりわずかに低くできる。さらに、この急速冷却が始まる温度は、他の(硬い)領域より低い。そのような減少した温度勾配と特に急速冷却のための低い開始温度は、例えばフェライト-パーライトなどの低引張強度を備える微細構造を作り出すことができる。その結果として、軟らかい領域は、作り出される。
【0056】
特定の実施例において、急速冷却が始まるときの軟らかい領域の温度は、Msより低くできる。
【0057】
図1の記載を続けて、選択的加熱の後、ブランク220を、コンベヤシステム230からブランク220を持ち上げることができ、それをプレス工具250上に設置できる、例えば工業移動ロボットなど、移動システム(図示せず)によって、プレス工具250に移動できる。移動ロボットは、つかむための複数の握るユニットを備え、コンベヤ手段230からブランク220を持ち上げることができる。
【0058】
いくつかの実施例において、複数のブランクを、単一のまたは平行な熱間成形生産ラインで同時に処理できる。そのような場合において、単一の移動ロボットは、握るユニットのいくつかのグループを備え、それぞれのグループは、ブランクを持ち上げるように構成され、すなわち単一の移動ロボットは、同時に1より多いブランクを持ち上げることができる。
【0059】
複数のブランクが処理される他の実施例において、複数の移動ロボットを、提供することができる。そのような実施例において、それぞれの移動ロボットは、単一のブランクを持ち上げるように構成されることができる。
【0060】
工業移動ロボットは、工業自動用途で使用するための場所に固定されたまたは移動可能であることができる、3またはそれより多い軸でプログラム可能である、自動的に制御され、(再)プログラム可能で、任意の多目的ロボットである(ISO8373として国際標準化機構によって定義されるような)。
【0061】
センタリングされ、設置された後、ブランク220を、それゆえ成形及び焼き入れのためにプレス工具250に移動できる。
【0062】
プレス工具250は、熱間成形プロセスと同時にブランク220を焼き入れするために、例えば水供給または他の適切な手段などの冷却手段を設けることができる。本明細書で開示されるシステムと方法の態様は、プレス工具での冷却が、局所的に適用される必要がないことである。冷却と焼き入れを、全てのブランクで均一に行うことができる。通常、チャネルは、冷水または他の液体が案内されるプレス工具の金型に提供される。これは、ブランクが焼き入れまたは急速に冷却されるように、プレス工具の接触表面を冷却する。
【0063】
プレス工具の上部及び下部金型は、通常複数の金型ブロックを備える。冷却チャネルは、軟らかい及び硬い領域のための所望の温度を得るために、金型ブロックのいくつかまたは全てに提供されることができる。
【0064】
図3aは、ブランク220を示し、この実施例において、Bピラーになるために形成されるべきブランクは、工業移動ロボットの握るユニット310によって運ばれる。この実施例において、加熱システム100は、長方形の基礎部110に配置された96個の個別加熱要素121、122を備える。しかしながら、加熱要素121、122の数、大きさ及び形状は、例えばブランクの大きさまたは所望のブランク形態によって変わることができる。したがって、加熱システム100の基礎部110は、例えばブランクの大きさによって決定されることができる、任意の適切な大きさ及び形状にできる。
【0065】
この実施例において、加熱要素121、122は、ブランクの局所的な加熱領域のために選択的にオンおよびオフでき、それによって、加熱パターンが作り出される。
【0066】
パターンは、あらかじめ決められた方法で加熱要素121、122を配置することによって形成されることができ(図3b参照)、または図3aで示されるように、いくつかの加熱要素121を選択的にスイッチオフしつつ、スイッチオンされた残った加熱要素122を維持することによって作り出されることができる。スイッチオンされた加熱要素122は、ブランクの領域が十分に高温で、特にAc3より高く、残ることを保証する。いくつかの実施例において、ブランクの加熱された領域の温度は、700℃~1000℃、特に750℃~930℃、任意に750℃から850℃にできる。いくつかの実施例において、スイッチオンされた加熱要素122は、加熱炉温度(T)よりさらに高くブランク220を加熱できる。
【0067】
この描かれた実施例において、あらかじめ定義されたパターンは、軟らかい領域となるべきB-ピラー中央ビームの2つの領域311、すなわち上部領域及び下部領域を除いて全てのブランクを実質的に加熱する。
【0068】
焼き入れした後、加熱領域は、高温勾配によって、硬い領域に変換されるであろう。したがって、残った非加熱領域311は、軟らかい領域に変化されるであろう。結果として、上部の軟らかい領域が下部の軟らかい領域より狭い2個の軟らかい領域のB-ピラーが作り出されるであろう。
【0069】
さらなる実施例において、冷却チャネルは、例えば硬くされるべきブランクの領域のみに提供されることができる。その場合において、硬い領域になるべき領域が、焼き入れされる一方で、軟らかい領域311になるべき領域は、冷却されるであろう。
【0070】
図3bは、加熱システム100を示し、加熱要素320は、あらかじめ決められた加熱パターンを作り出すために、基礎部110に配置される。この実施例において、図3aの実施例におけるように、パターンは、2つの軟らかい領域を備える中央Bピラーを得るように構成されることができる。図3aで示される配置に反して、図3bにおいて、全ての加熱要素320は、同時にオンし、ブランクのあらかじめ決められた領域を選択的に加熱する。
【0071】
図4は、実施例によりブランクを製造するための方法を示す。最初に、ブランクを、ブランクを軟らかくするために、例えばオーステナイト化温度など、あらかじめ決められた温度に加熱炉で加熱する410ことができる。加熱ブランクを、そのブランクを正しく設置し、センタリングする420ことができるセンタリングテーブルに、コンベヤベルトまたはローラベルトまたは移動ロボットと共に移動できる。
【0072】
センタリングテーブルは、ブランクの特定の領域、すなわち硬くなるべき領域を選択的に加熱する430ことができる加熱システムを備えることができる。選択的加熱430は、例えば、誘導加熱器、または赤外線ヒータ、またはレーザヒータ、または抵抗ヒータにできる加熱要素によって実行されることができる。
【0073】
実施例によると、いくつかのブランクの領域、すなわち硬くなるべきブランクの領域を選択的に加熱する430ために、パターンによるそれらの加熱要素のみがスイッチオンされることができる。
【0074】
その後(ほとんど)最終形状を得るために熱変形される440、プレス工具にブランクを、移動できる。例えば、冷水を供給することによって、プレス工具においてブランクを全体にまたは部分的に焼き入れ450を行うこともできる。任意に、ブランクは、さらに例えば切断、トリミング、及び/または例えば溶接を使ったさらなる部品への接合など後プロセスステップを受けることができる。
【0075】
多くの実施例が本明細書で開示されているのみであるが他の代替、変形、使用及び/またはその均等物が可能である。さらに、記載された実施例の全ての可能な組み合わせもまた対象である。それゆえ、本開示の範囲は、特定の実施例に限定されないが、続く請求項の公平な読み方によってのみ決定されるべきである。図面に関連した符号は、請求項の括弧に置かれるならば、それらは単に請求項の理解度を増すことに努めるためであり、請求項の範囲を限定するように解釈されるべきでない。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4