(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】アプタマーのためのハイスループット細胞系スクリーニング
(51)【国際特許分類】
C12N 15/115 20100101AFI20220615BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20220615BHJP
C12Q 1/6811 20180101ALI20220615BHJP
C40B 40/06 20060101ALI20220615BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALN20220615BHJP
【FI】
C12N15/115 Z
C12Q1/02 ZNA
C12Q1/6811 Z
C40B40/06
C12Q1/6844 Z
(21)【出願番号】P 2019505401
(86)(22)【出願日】2017-08-03
(86)【国際出願番号】 IB2017001113
(87)【国際公開番号】W WO2018025085
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-31
(32)【優先日】2016-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518274098
【氏名又は名称】メイラジーティーエックス・ユーケー・ザ・セカンド・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シュエクイ・グオ
(72)【発明者】
【氏名】レイ・フェン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドリア・フォーブス
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0111411(US,A1)
【文献】特表2008-518630(JP,A)
【文献】特表2006-500933(JP,A)
【文献】Nuc. Acids Res., 2007, Vol.35, pp.4179-4185
【文献】Cell, 2004, Vol.119, pp.831-845
【文献】Science, 2010, Vol.330, pp.1251-1255
【文献】Nat. Biotechnol., 2013, Vol.31, pp.453-457
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
C40B 10/00;40/02;40/06-40/10;50/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核細胞にてリガンドと結合するアプタマーを選択する方法であって、以下のステップ:
(a)アプタマーのライブラリを提供することと、
(b)レポーター遺伝子の発現であって前記リガンドが介在する発現のためのポリヌクレオチドカセットに、前記アプタマーのライブラリのメンバーを導入してリボスイッチのライブラリを作り出すことと、
(c)真核細胞に前記リボスイッチのライブラリを導入することと、
(d)前記真核細胞をリガンドに接触させることと、
(e)前記レポーター遺伝子の発現を測定することとを含み、
前記ポリヌクレオチドカセットは、5’イントロン及び3’イントロンが隣接する選択的にスプライシングされるエキソンと、(i)前記3’イントロンの5’スプライス部位配列を含むステムを含むエフェクター領域及び(ii)アプタマーを含むリボスイッチとを含み、
前記選択的にスプライシングされるエキソンは、前記選択的にスプライシングされるエキソンが前記レポーター遺伝子のmRNAにスプライシングされる際、前記レポーター遺伝子とインフレームである終止コドンを含む、前記方法。
【請求項2】
以下のステップを含む、前記ポリヌクレオチドカセットに導入する前に前記アプタマーのライブラリをさらに小さなアプタマーライブラリに分割する、請求項1に記載の方法:
(a)無作為化アプタマーライブラリであって、前記ライブラリにおける前記アプタマーが複数の5’及び3’の定常領域と1以上の無作為化されたヌクレオチドとを含む、前記無作為化アプタマーライブラリを提供すること、
(b)鋳型としての前記無作為化アプタマーライブラリと、
各プライマーが複数のタグ配列の1つを含む前記5’及び3’の定常領域に相補的である第1のプライマーと第2のプライマーとを用いて2サイクルPCRを行うこと、
(c)前記2サイクルPCRの産物を単離すること、及び
(d
)5’及び3’の
タグ配列のサブセットに相補的であるプライマーを用いて2サイクルPCRの単離された産物のサブセットをPCRで増幅すること。
【請求項3】
前記リボスイッチのライブラリが、前記真核細胞に導入される前にリボスイッチの1以上のサブライブラリに分割され
る、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記リボスイッチのライブラリが、以下のステップを含んで、サブライブラリにさらに分割される、請求項3に記載の方法:
(a)前記リボスイッチライブラリを細菌に導入すること、
(b)細菌クローンを回収し、プラスミドDNAを抽出してリボスイッチのプラスミドサブライブラリを得、1以上の一次サブライブラリを生成すること。
【請求項5】
さらに、一次サブライブラリを細菌に導入し、細菌クローンを回収し、プラスミドDNAを単離することによってリボスイッチの一次プラスミドサブライブラリからリボスイッチの二次サブライブラリを生成することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
真核細胞にてアプタマーと結合するリガンドを選択する方法であって、
以下のステップ:
(a)リガンドのライブラリを提供することと、
(b)レポーター遺伝子の発現であって前記リガンドが介在する発現のためのポリヌクレオチドカセットを提供することと、
(c)前記真核細胞に前記ポリヌクレオチドカセットを導入することと、
(d)前記真核細胞の個々のグループをリガンドの前記ライブラリのメンバーに接触させることと、
(e)前記レポーター遺伝子の発現を測定することとを含み、
前記ポリヌクレオチドカセットは、5’イントロン及び3’イントロンが隣接する選択的にスプライシングされるエキソンと、(i)前記3’イントロンの5’スプライス部位配列を含むステムを含むエフェクター領域及び(ii)アプタマーを含むリボスイッチとを含み、
前記選択的にスプライシングされるエキソンは、前記選択的にスプライシングされるエキソンが前記レポーター遺伝子のmRNAにスプライシングされる際、前記レポーター遺伝子とインフレームである終止コドンを含む、前記方法。
【請求項7】
前記リガンドが
(a)小分子である、または
(b)代謝産物、核酸、ビタミン、補因子、脂質、単糖類及びセカンドメッセンジャーから成る群から選択される、真核細胞によって産生される分子である、
請求項1、3及び
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記真核細胞が哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞及び酵母細胞から成る群から選択される、請求項1、3及び
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記レポーター遺伝子が、
(a)蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ及び西洋ワサビペルオキシダーゼ、または
(b)サイトカイン、シグナル伝達分子、成長ホルモン、抗体、調節性RNA、治療用のタンパク質またはペプチド
から成る群から選択される、請求項1、3及び
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記レポーター遺伝子の前記発現が、前記リガンドが存在しない場合の前記レポーター遺伝子の発現レベルよりも、前記リガンドが特異的に前記アプタマーと結合する場合の方
が10倍を超えて高い、請求項1、3及び
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記5’及び3’イントロンが、
(a)ヒトβ-グロビン遺伝子のイントロン2に由来する、
(b)それぞれ独立し
て50
~300ヌクレオチドの長さである、または
(c)それぞれ独立し
て125
~240ヌクレオチドの長さである、
請求項1、3及び
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記エフェクター領域のステムが、
(a
)7~20塩基対の長さである、または
(b)8~11塩基対の長さである、
請求項1、3及び
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記選択的にスプライシングされるエキソンが、
(a)ヒトのジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子のエキソン2、変異体ヒトウィルムス腫瘍1のエキソン5、マウスのカルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼIIデルタのエキソン16及びSIRT1のエキソン6から成る群に由来する、
(b)ヒトDHFRに由来する修飾されたエ
キソン2である、
(c)合成のものである、または
(d)エキソンスプライスエンハンサーの配列を変えること、エキソンスプライスサイレンサーの配列を変えること、エキソンスプライスエンハンサーを付加すること、及びエキソンスプライスサイレンサーを付加することから成る群の1以上によって修飾されている、
請求項1、3及び
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
以下のステップを含む、無作為化アプタマーライブラリをさらに小さなアプタマーサブライブラリに分ける方法:
(a)無作為化アプタマーライブラリであって、前記ライブラリにおける前記アプタマーが複数の5’及び3’の定常領域と1以上の無作為化したヌクレオチドとを含む、前記無作為化アプタマーライブラリを提供すること、
(b)鋳型としての前記無作為化アプタマーライブラリと、
各プライマーが複数のタグ配列の1つを含む前記5’及び3’の定常領域に相補的である第1のプライマーと第2のプライマーとを用いて2サイクルPCRを行うこと、
(c)前記2サイクルPCRの産物を単離すること、及び
(d
)5’及び3’の
タブ配列のサブセットに相補的であるプライマーを用いて前記2サイクルPCRの前記単離された産物のサブセットをPCRで増幅するこ
と。
【請求項15】
前
記アプタマーライブラリが1以上の無作為化したヌクレオチドを有するアプタマーを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項16】
前記無作為化アプタマーライブラリ
が100,000を超えるアプタマーを含む、または、前記無作為化アプタマーライブラリ
が1,000,000を超えるアプタマーを含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
前記2サイクルPCRにおける第1のプライマーまたは第2のプライマーが、ビオチン、ジゴキシゲニン(DIG)、ブロモデオキシウリジン(BrdU)、蛍光色素分子、及びクリック化学で使用される化学基から成る群から選択される標識を含む、請求項2
または14に記載の方法。
【請求項18】
配列番号14~27の配
列を含む配列によってコードされるアプタマー。
【請求項19】
配列番号24の配列を含む配列によってコードされるアプタマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レポーター遺伝子の発現を調節するためのポリヌクレオチドカセットを用いて真核細胞にてリガンドと特異的に結合するアプタマーまたはアプタマーと特異的に結合するリガンドを特定するスクリーニング法を提供し、該ポリヌクレオチドカセットは5’イントロン-選択的エキソン-3’イントロンの背景でリボスイッチを含有する。リボスイッチは、アプタマーがリガンドと結合するとレポーター遺伝子の発現が生じるようにエフェクター領域とアプタマーとを含む。
【背景技術】
【0002】
スプライシングは、イントロン配列が新生プレメッセンジャーRNA(プレmRNA)から取り除かれ、エキソンが一緒に連結されてmRNAを形成する過程を指す。スプライス部位はエキソンとイントロンの間の接合部であり、イントロンの5’及び3’末端での異なるコンセンサス配列(すなわち、それぞれスプライスドナーとスプライスアクセプターの部位)によって定義される。選択的プレmRNAスプライシングまたは選択的スプライシングは複数のエキソンを含有するほとんどのヒト遺伝子にて存在する広範な過程である。それは、スプライソソームと呼ばれる大きな複数の成分の構造体によって実施され、スプライソソームは小型の核リボ核タンパク質(snRNP)と多様な補助タンパク質の集まりである。種々のシス調節配列を認識することによって、スプライソソームはエキソン/イントロンの境界を規定し、イントロン配列を取り除き、エキソンを最終的な翻訳可能なメッセージ(すなわち、mRNA)に一緒にスプライスする。選択的スプライシングの場合、ある特定のエキソンが含められ、または排除されて最終的なコーディングメッセージを変化させ、それによって得られる発現タンパク質を変えることができる。
【0003】
本発明は、選択的スプライシングのリガンド/アプタマーが介在する制御を利用して標的真核細胞の背景にて結合するアプタマー/リガンドのペアを特定する。本発明に先立って、試験管内スクリーニングを介して種々のリガンドに対してアプタマーが生成されているが、細胞にて有効であることが判明したものがほとんどなく、選択した生物にて機能するアプタマーをスクリーニングするシステムについてのニーズを強調している。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本発明は、以下のステップ:
(a)アプタマーのライブラリを提供することと、
(b)アプタマーのライブラリのメンバーを、レポーター遺伝子の発現であってリガンドが介在する発現のためのポリヌクレオチドカセットに導入してリボスイッチのライブラリを作り出すことと、
(c)リボスイッチのライブラリを真核細胞に導入することと、
(d)該真核細胞をリガンドに接触させることと、
(e)レポーター遺伝子の発現を測定することとを含む、真核細胞にてリガンドと結合するアプタマーを選択する方法を提供し、
その際、ポリヌクレオチドカセットは、5’イントロン及び3’イントロンが隣接する選択的にスプライシングされるエキソンと、(i)3’イントロンの5’スプライス部位を含むステムを含むエフェクター領域及び(ii)アプタマーを含むリボスイッチとを含み、該選択的にスプライシングされるエキソンは、該選択的にスプライシングされるエキソンがレポーター遺伝子のmRNAにスプライシングされる際、レポーター遺伝子とインフレームである終止コドンを含む。
【0005】
一実施形態では、アプタマーのライブラリは1以上の無作為化したヌクレオチドを有するアプタマーを含む。一実施形態では、アプタマーのライブラリは完全に無作為化した配列を有するアプタマーを含む。一実施形態では、アプタマーのライブラリは長さ約15~約200ヌクレオチドであるアプタマーを含む。一実施形態では、アプタマーのライブラリは長さ約30~約100ヌクレオチドの間であるアプタマーを含む。一実施形態では、アプタマーのライブラリは100,000を超えるアプタマーを含む。一実施形態では、アプタマーのライブラリは1,000,000を超えるアプタマーを含む。
【0006】
一実施形態では、リガンドは小分子である。一実施形態では、小分子リガンドは真核細胞に対して外来性である。別の実施形態では、リガンドは、たとえば、代謝産物、核酸、ビタミン、補因子、脂質、単糖類及びセカンドメッセンジャーを含む、真核細胞によって産生される分子である。
【0007】
一実施形態では、真核細胞は哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、及び酵母細胞から選択される。一実施形態では、真核細胞は、マウス、ヒト、ハエ(たとえば、Drosophila melanogaster)、魚類(たとえば、Danio rerio)または線虫(たとえば、Caenorhabditis elegans)に由来する。
【0008】
一実施形態では、レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ及び西洋ワサビペルオキシダーゼから成る群から選択される。一実施形態では、レポーター遺伝子はサイトカイン、シグナル伝達分子、成長ホルモン、抗体、調節性RNA、治療用タンパク質、またはペプチドである。一実施形態では、レポーター遺伝子の発現は、リガンドが存在しない場合のレポーター遺伝子の発現レベルよりもリガンドがアプタマーと特異的に結合する場合の方が約10倍を超えて高い。さらなる実施形態では、レポーター遺伝子の発現は、リガンドが存在しない場合のレポーター遺伝子の発現レベルよりもリガンドがアプタマーと特異的に結合する場合の方が約20、50、100、200、500、または1000倍を超えて高い。
【0009】
一実施形態では、5’及び3’イントロンはヒトβ-グロビン遺伝子のイントロン2に由来する。一実施形態では、5’イントロンは標的遺伝子とのインフレームで終止コドンを含む。一実施形態では、5’及び3’イントロンはそれぞれ独立して約50~約300ヌクレオチドの長さである。一実施形態では、5’及び3’イントロンはそれぞれ独立して約125~約240ヌクレオチドの長さである。一実施形態では、5’及び/または3’イントロンは修飾されて、イントロンスプライスエンハンサーの配列、イントロンスプライスエンハンサー、5’スプライス部位、3’スプライス部位、または分岐点配列を含んでいる、または変えている。
【0010】
一実施形態では、リボスイッチのエフェクター領域ステムは約7~約20塩基対の長さである。一実施形態では、エフェクター領域ステムは8~11塩基対の長さである。
【0011】
一実施形態では、選択的にスプライシングされるエキソンは、ヒトジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(DHFR)のエキソン2、ヒト変異型ウィルムス腫瘍1のエキソン5、マウスのカルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼIIデルタエキソン16、またはSIRT1のエキソン6に由来する。一実施形態では、選択的にスプライシングされるエキソンは修飾されたDHFRのエキソン2である。一実施形態では、選択的にスプライシングされるエキソンは、エキソンスプライシングサイレンサーの配列を変えること、エキソンスプライシングエンハンサーの配列を変えること、エキソンスプライシングエンハンサーを加えること、及びエキソンスプライスドナーを加えることから成る群の1以上において修飾されている。一実施形態では、選択的にスプライシングされるエキソンは合成である(すなわち、天然に存在するエキソンに由来しない)。
【0012】
一実施形態では、アプタマーのライブラリは、ポリヌクレオチドカセットに導入する前に、さらに小さなアプタマーのライブラリに分割され、以下のステップを含む:
(a)ライブラリにおけるアプタマーが複数の5’及び3’定常領域と1以上の無作為化ヌクレオチドとを含む無作為化アプタマーライブラリを提供すること、
(b)鋳型としての無作為化アプタマーライブラリと5’及び3’定常領域に対して相補的である第1のプライマーと第2のプライマーとを用いた2サイクルPCRを行うこと、
(c)2サイクルPCRの産物を単離すること、及び
(d)固有の5’及び3’定常領域のサブセットに対して相補的な複数のプライマーを用いて2サイクルPCRの単離された産物のサブセットをPCR増幅すること。
【0013】
一実施形態では、リボスイッチのライブラリは真核細胞に導入される前にリボスイッチの1以上のサブライブラリに分割される。一実施形態では、リボスイッチのライブラリをサブライブラリに分割する方法は、以下のステップを含む:
(a)遺伝子調節ポリヌクレオチドカセットを含むプラスミドにアプタマーのライブラリを導入してリボスイッチライブラリを作製すること、
(b)細菌(たとえば、E.coli)にリボスイッチライブラリを導入すること、及び
(c)細菌クローンを回収し(たとえば、細菌コロニーを摘み取ることによって)、プラスミドDNAを抽出してリボスイッチのプラスミドサブライブラリ(本明細書では一次サブライブラリと呼ぶ)を得ること。
【0014】
ある実施形態では、リボスイッチの二次サブライブラリは、一次サブライブラリを細菌に導入し、細菌クローンを回収し、プラスミドDNAを単離することによってリボスイッチの一次プラスミドサブライブラリから生成される。次いで一次または二次のサブライブラリを真核細胞に導入し、真核細胞をリガンドに接触させ、レポーター遺伝子の発現を測定して、真核細胞の背景にてライブラリにおける1以上のアプタマーがリガンドと結合するかどうかを判定する。
【0015】
一実施形態では、本発明は、アプタマーが上記方法によって選択される、標的リガンドと結合するアプタマーを含む。本発明の実施形態では、アプタマーは配列番号14~27の配列を含む。一実施形態では、アプタマー配列は配列番号24の配列を含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、以下のステップ:
(a)リガンドのライブラリを提供することと、
(b)レポーター遺伝子の発現であってリガンドが介在する発現のためのポリヌクレオチドカセットを提供することと、
(c)真核細胞にポリヌクレオチドカセットを導入することと、
(d)真核細胞の個々のグループをリガンドのライブラリのメンバーに接触させることと、
(e)レポーター遺伝子の発現を測定することとを含む、真核細胞にてアプタマーと結合するリガンドを選択する方法を提供し、
その際、ポリヌクレオチドカセットは、5’イントロン及び3’イントロンが隣接する選択的にスプライシングされるエキソンと、(i)3’イントロンの5’スプライス部位を含むステムを含むエフェクター領域及び(ii)アプタマーを含むリボスイッチとを含み、選択的にスプライシングされるエキソンは、選択的にスプライシングされるエキソンがレポーター遺伝子のmRNAにスプライシングされる際、レポーター遺伝子とのインフレームである終止コドンを含む。
【0017】
一実施形態では、リガンドは小分子である。一実施形態では、小分子リガンドは真核細胞に対して外来性である。別の実施形態では、リガンドは、たとえば、代謝産物、核酸、ビタミン、補因子、脂質、単糖類及びセカンドメッセンジャーを含む、真核細胞によって産生される分子である。
【0018】
一実施形態では、真核細胞は哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、及び酵母細胞から選択される。一実施形態では、真核細胞は、マウス、ヒト、ハエ(たとえば、Drosophila melanogaster)、魚類(たとえば、Danio rerio)または線虫(たとえば、Caenorhabditis elegans)に由来する。
【0019】
一実施形態では、レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ及び西洋ワサビペルオキシダーゼから成る群から選択される。一実施形態では、レポーター遺伝子はサイトカイン、シグナル伝達分子、成長ホルモン、抗体、調節性RNA、治療用タンパク質、またはペプチドである。一実施形態では、レポーター遺伝子の発現は、リガンドが存在しない場合のレポーター遺伝子の発現レベルよりもリガンドがアプタマーと特異的に結合する場合の方が約10倍を超えて高い。さらなる実施形態では、レポーター遺伝子の発現は、リガンドが存在しない場合のレポーター遺伝子の発現レベルよりもリガンドがアプタマーと特異的に結合する場合の方が約20、50、100、200、500、または1000倍を超えて高い。
【0020】
一実施形態では、5’及び3’イントロンはヒトβ-グロビン遺伝子のイントロン2に由来する。一実施形態では、5’イントロンは標的遺伝子とのインフレームで終止コドンを含む。一実施形態では、5’及び3’イントロンはそれぞれ独立して約50~約300ヌクレオチドの長さである。一実施形態では、5’及び3’イントロンはそれぞれ独立して約125~約240ヌクレオチドの長さである。一実施形態では、5’及び/または3’イントロンは修飾されて、イントロンスプライスエンハンサー、エキソンスプライスエンハンサーの配列、5’スプライス部位、3’スプライス部位、または分岐点配列を含んでいる、または変えている。
【0021】
一実施形態では、リボスイッチのエフェクター領域ステムは約7~約20塩基対の長さである。一実施形態では、エフェクター領域ステムは8~11塩基対の長さである。
【0022】
一実施形態では、選択的にスプライシングされるエキソンは、ヒトジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(DHFR)のエキソン2、ヒト変異型ウィルムス腫瘍1のエキソン5、マウスのカルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼIIデルタエキソン16、またはSIRT1のエキソン6に由来する。一実施形態では、選択的にスプライシングされるエキソンは修飾されたDHFRのエキソン2である。一実施形態では、選択的にスプライシングされるエキソンは、エキソンスプライシングサイレンサーの配列を変えること、エキソンスプライシングエンハンサーの配列を変えること、エキソンスプライシングエンハンサーを加えること、及びエキソンスプライスドナーを加えることから成る群の1以上において修飾されている。一実施形態では、選択的にスプライシングされるエキソンは合成である(すなわち、天然に存在するエキソンに由来しない)。
【0023】
一実施形態では、本発明は上記方法によって選択されるリガンドを含む。
【0024】
別の態様では、本発明は、以下のステップを含む、無作為化アプタマーライブラリをさらに小さなアプタマーのサブライブラリに分ける方法を提供する:
(a)ライブラリにおけるアプタマーが複数の5’及び3’定常領域と1以上の無作為化ヌクレオチドとを含む無作為化アプタマーライブラリを提供すること、
(b)鋳型としての無作為化アプタマーライブラリと5’及び3’定常領域に対して相補的である第1のプライマーと第2のプライマーとを用いて2サイクルPCRを行うこと、
(c)2サイクルPCRの産物を単離すること、及び
(d)固有の5’及び3’定常領域のサブセットに対して相補的なプライマーを用いて2サイクルPCRの単離された産物のサブセットをPCR増幅すること。
【0025】
一実施形態では、無作為化アプタマーライブラリは1以上の無作為化ヌクレオチドを有するアプタマーを含む。一実施形態では、無作為化アプタマーライブラリは約100,000を超えるアプタマーを含む。一実施形態では、無作為化アプタマーライブラリは約1,000,000を超えるアプタマーを含む。
【0026】
一実施形態では、2サイクルPCRにおける第1または第2のプライマーは、ビオチン、ジゴキシゲニン(DIG)、ブロモデオキシウリジン(BrdU)、蛍光色素分子、化学基、たとえば、チオール基、またはクリック化学で使用される化学基、たとえば、アジドから成る群から選択される標識を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1a】リボスイッチ構築物の模式図である。切り詰めたベータグロビンのイントロン配列をレポーター遺伝子のコーディング配列に挿入し、変異体の終止コドン含有DHFRエキソン2(mDHFR)を挿入したイントロンに配置し、従ってmDHFRエキソンの包含/排除によってレポーター遺伝子の発現が調節される3つのエキソン遺伝子の発現プラットフォームを形成した。U1結合部位に相補的な操作した配列と共にmDHFRエキソンのイントロンの下流(3’)にてU1結合部位を含むヘアピン/ステム構造を形成し、それはU1の結合を阻止し、それによって終止コドンを含有するmDHFRエキソンと標的遺伝子発現の排除をもたらす。アプタマー配列はU1結合部位とその相補的配列との間に移植され、アプタマー/リガンドの結合によってヘアピン形成の制御を可能とする。
【
図1b】様々なアプタマーに基づくリボスイッチを含有するポリヌクレオチドカセットによる構築物の用量反応を示す図である。グアニンリボスイッチは、グアニン処理だけでなくグアノシン処理にも応答することによってレポーター遺伝子の発現を誘導した。
【
図1c】xpt-G17リボスイッチがグアニン類似体による処理の際、ルシフェラーゼ活性を誘導することを示すグラフである。
【
図1d】xpt-G17リボスイッチがグアニン類似体による処理の際、ルシフェラーゼ活性を誘導することを示すグラフである。
【
図1e】化合物による処理の際のxpt-G17リボスイッチによるルシフェラーゼ活性の誘導倍率を示す図である。
【
図2】無作為化アプタマー配列を生成するための鋳型の模式図である。アプタマー配列(白棒)には定常領域(黒棒)が隣接し、それはBsaI部位を含有して遺伝子調節カセットへのアプタマーのクローニングを円滑にし、リボスイッチを生成する。
【
図3a】大きな無作為化アプタマーライブラリをさらに小さなサブライブラリに分ける方法の模式図。大きなアプタマーライブラリを分けるための2ステップ戦略の模式図である。第1のステップは、各アプタマーのオリゴヌクレオチド鋳型に配列タグの固有のペアを付加することである。第1のステップに続いて、タグ付き配列に特異的であるプライマーを用いて固有のタグ配列を持つ鋳型を増幅する。
【
図3b】大きな無作為化アプタマーライブラリをさらに小さなサブライブラリに分ける方法の模式図。鋳型にタグ配列を連結する3つのアプローチ:(I)プライマーの5’末端でタグ配列を含有するプライマーを用いたPCRを介して組み込まれるタグ配列;(II)T4RNAリガーゼによる一本鎖鋳型配列の一本鎖タグ配列とのライゲーションによって連結されるタグ配列;(III)T4RNAリガーゼによる二本鎖鋳型配列の二本鎖タグ配列とのライゲーションによって鋳型に連結されるタグ配列を示す図である。
【
図3c】大きな無作為化アプタマーライブラリをさらに小さなサブライブラリに分ける方法の模式図。2サイクルPCRの模式図である。サイクル1については、5’末端でタグ配列を含有する逆行プライマーJRのみ。第1のサイクルの後、新しく合成された鎖はその5’末端で配列タグを有する。サイクル2については、ビオチン標識した順行プライマーJFをPCR反応に加え、それは新しく合成された鎖のみを鋳型として使用することができる、従って5’及び3’末端双方でタグ配列を有し、5’末端でビオチン分子を有する鋳型を生成する。
【
図3d】大きな無作為化アプタマーライブラリをさらに小さなサブライブラリに分ける方法の模式図。タグ付きアプタマーライブラリの生成を示す図である。配列タグ及びビオチン分子で鋳型を標識した後、ストレプトアビジン・ビーズを用いて、オリゴの変性及びビーズの洗浄を介して反応成分の残りから標識され/タグ付けされた一本鎖鋳型を分離する。次いで、タグ付き配列に特異的であるプライマー(F及びRプライマー)の混合物を用いてタグ付き鋳型を増幅し、拡張し、従ってタグ配列に特異的なプライマーの単一ペアを用いたその後のPCRにすぐ使えるタグ付きアプタマーライブラリを生成し、元々のアプタマーライブラリのサブライブラリを生成する。
【
図3e】大きな無作為化アプタマーライブラリをさらに小さなサブライブラリに分ける方法の模式図。分割戦略を用いてアプタマーのサブライブラリをPCR増幅することを示す図である。2つの順行プライマー(JF1~2)及び8つの逆行プライマー(JR1~8)用い、1、2.3または4.6の鋳型コピー数でのPCRによってアプタマーライブラリ(10
6、実施例2で生成された)にタグ付けを行った。単離されたタグ付き鋳型をタグ特異的なプライマーF1~2及びR1~8の混合物によって拡張し、PCR産物をユニバーサルプライマー(左のパネル)、タグ特異的なプライマーF1及びR1の単一ペア(真ん中のパネル)、またはF3及びR1の無関係なプライマーの単一ペア(右のパネル)のいずれかによるPCRに供した。鋳型についてのブランク対照として水を使用した。
【
図4】リボスイッチライブラリのスクリーニングについての細胞系アッセイの感度試験を示す図である。構築物xpt-G17を構築物SR-mutと様々な分子比で混合し、混合した構築物DNAをHEK-293細胞に形質移入し、グアニンで処理した。グアニン処理をしないで得られたルシフェラーゼ活性で割ったグアニンによって誘導されたルシフェラーゼ活性としてルシフェラーゼ活性の誘導倍率を算出した。
【
図5a】リボスイッチを含有するプラスミドライブラリの構築の模式図である。ユニバーサルプライマーを用いて先ず、一本鎖アプタマーのオリゴをPCR増幅して一本鎖アプタマー鋳型を二本鎖に変換する。次いで二本鎖オリゴをBsaIで消化し、BsaI消化したベクターにライゲーションしてリボスイッチを伴った構築物を生成する。次いで電気的に適格なDH5a細胞にエレクトロポレーションによってプラスミドDNAを導入する。5×10
6個を超えるコロニーが回収され、当初のアプタマーライブラリ(10
6)の99%を超えるものを対象とする。
【
図5b】リボスイッチのプラスミドライブラリをサブライブラリに分ける模式図である。リボスイッチのプラスミドライブラリで化学的に適格なDH5a細胞を形質転換する。次いで形質転換した細菌を寒天プレートに播く。各個々の寒天プレートからある特定の数の細菌コロニーを回収し、個々のコロニーの回収物からプラスミドDNAを別々に抽出する。コロニーの各回収物から得られたプラスミドDNAはリボスイッチのサブライブラリを形成する。所望のサイズのサブライブラリが達成されるまで分割アプローチを繰り返すことができる。
【
図5c】次世代配列決定法によって決定されたリボスイッチの二次サブライブラリの固有の配列組成を示す図である。配列決定行程12を超える読み取りのあった配列が真の配列と見なされた。
【
図5d】同一の一次サブライブラリP1S_003から生成されている2つの二次サブライブラリ間での固有の配列組成の比較を示す図である。円グラフは、各サブライブラリにおける固有の配列の数及びリボスイッチの2つのライブラリ間で重複する配列の数を示す。
【
図5e】それぞれ、異なる一次サブライブラリP1S_003及びP1S_007から生成されている2つの二次サブライブラリ間での固有の配列組成の比較を示す図である。円グラフは、各サブライブラリにおける固有の配列の数及びリボスイッチの2つのライブラリ間で重複する配列の数を示す。
【
図6a】100の一次サブライブラリ(60k)のうち6に由来するプラスミドDNAを96穴プレートの形式で並べ、HEK-293細胞に形質移入した。グアニン処理をしないで得られたルシフェラーゼ活性で割ったグアニンによって誘導されたルシフェラーゼ活性としてルシフェラーゼ活性の誘導倍率を算出した。
【
図6b】100の二次サブライブラリ(600のサイズ)に由来するプラスミドDNAを96穴プレートの形式で並べ、HEK-293細胞に形質移入した。グアニン処理をしないで得られたルシフェラーゼ活性で割ったグアニンによって誘導されたルシフェラーゼ活性としてルシフェラーゼ活性の誘導倍率を算出した。
【
図6c】リガンドとしてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を用いたリボスイッチのサブライブラリのスクリーニング結果を示す図である。P2リボスイッチライブラリのサブライブラリを96穴形式で並べた。HEK-293細胞を96穴プレートに播き、リボスイッチライブラリのDNAで形質移入した。形質移入の4時間後、細胞を100μMのNAD+で処理した。NAD+処理の20時間後ルシフェラーゼ活性を測定した。NAD+処理しないで細胞から得られたルシフェラーゼ活性で割ったNAD+で処理した細胞から得られたルシフェラーゼ活性の比として誘導倍率を算出した。点プロットにおける各点は、示されるようなサブライブラリまたはG17構築物からの誘導倍率を表す。
【
図6d】リガンドとしてNAD+を用いたリボスイッチのスクリーニング結果を示す図である。各個々のリボスイッチ構築物を96穴形式に並べた。HEK-293細胞を96穴プレートに播き、リボスイッチ構築物で形質移入した。形質移入の4時間後、細胞を100μMのNAD+で処理した。NAD+処理の20時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。NAD+処理しないで細胞から得られたルシフェラーゼ活性で割ったNAD+で処理した細胞から得られたルシフェラーゼ活性の比として誘導倍率を算出した。点プロットにおける各点は、示されるようなリボスイッチ構築物またはG17構築物からの誘導倍率を表す。
【
図6e】新しいアプタマー配列を持つ構築物は、G17リボスイッチと比べてNAD+処理に対して用量依存的に高い反応を示すことを示す図である。G17または新しいアプタマー配列を持つ構築物#46でHEK-293細胞に形質移入した。形質移入の4時間後、細胞を様々な用量のNAD+で処理した。NAD+処理の20時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。
【
図6f】新しいアプタマー配列を持つ構築物は、G17リボスイッチと比べてNAD+処理に対して用量依存的に高い反応を示すことを示す図である。G17または新しいアプタマー配列を持つ構築物#46でHEK-293細胞に形質移入した。形質移入の4時間後、細胞を様々な用量のNAD+で処理した。NAD+処理の20時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。NAD+処理しないで細胞から得られたルシフェラーゼ活性で割ったNAD+で処理した細胞から得られたルシフェラーゼ活性の比として誘導倍率を算出した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
アプタマー/リガンドをスクリーニングする方法
本発明は、真核性の細胞、組織または生物の背景でリガンドに結合するアプタマー、及びアプタマーに結合するリガンドを特定するスクリーニング法を提供する。一態様では、本発明は、以下のステップを含む、真核細胞にてリガンドと結合するアプタマーを選択する方法を提供する:
(a)アプタマーのライブラリを提供すること、
(b)レポーター遺伝子の発現であってリガンドが介在する発現のためのポリヌクレオチドカセットにアプタマーのライブラリのメンバーを導入すること、
(c)真核細胞にアプタマーを含有するポリヌクレオチドカセットを導入すること、
(d)真核細胞をリガンドに接触させること、及び
(e)レポーター遺伝子の発現を測定すること。
【0029】
別の態様では、本発明は、以下のステップを含む、真核細胞にてアプタマーと結合するリガンドを選択する方法を提供する:
(a)リガンドのライブラリを提供すること、
(b)レポーター遺伝子の発現であってリガンドが介在する発現のためのポリヌクレオチドカセットを提供すること、
(c)真核細胞にポリヌクレオチドカセットを導入すること、
(d)真核細胞の個々の基をリガンドのライブラリのメンバーに接触させること、及び
(e)レポーター遺伝子の発現を測定すること。
【0030】
一実施形態では、本発明は、以下のステップを含む、細胞内分子に結合するアプタマーを特定する方法を提供する:
(a)アプタマーのライブラリを提供すること、
(b)レポーター遺伝子の発現であってリガンドが介在する発現のためのポリヌクレオチドカセットにアプタマーのライブラリのメンバーを導入すること、
(c)アプタマーを含有するポリヌクレオチドカセットを真核細胞に導入すること、及び
(d)レポーター遺伝子の発現を測定すること。
【0031】
本発明のスクリーニング法は、参照によって全体が本明細書に組み入れられるPCT/US2016/016234にて開示された遺伝子調節ポリヌクレオチドカセットを利用する。これらの遺伝子調節カセットは、5’イントロン-選択的エキソン-3’イントロンの背景でリボスイッチを含む。遺伝子調節カセットは、標的遺伝子(たとえば、レポーター遺伝子)のDNAに組み込まれると、得られるプレmRNAのアプタマー/リガンドが介在する選択的スプライシングによって標的遺伝子の発現を調節する能力を提供する組換えDNA構築物を指す。遺伝子調節カセットはさらに、アプタマーと結合するリガンドの存在を検知すること及び選択的エキソンへのスプライシングを変えることに一緒に関与するセンサー領域(たとえば、アプタマー)とエフェクター領域とを含有するリボスイッチを含む。これらのアプタマー主導のリボスイッチは、アプタマーと結合するリガンドによる処理に応答して2~2000倍の誘導で哺乳類の遺伝子発現の調節を提供する。この合成リボスイッチの無類の高いダイナミックレンジの調節を本発明の方法で使用して、細胞、組織及び生物における所望の種類のリガンドに対する新しいアプタマーならびに既知の及び新規のアプタマーに対する最適なリガンドについてのスクリーニングシステムを提供する。
【0032】
リボスイッチ
「リボスイッチ」という用語は本明細書で使用されるとき、RNAポリヌクレオチド(またはRNAポリヌクレオチドをコードするDNA)の調節性セグメントを指す。本発明の文脈でのリボスイッチは、リガンド(たとえば、小分子)の存在を検知すること及び選択的エキソンへのスプライシングを変えることに一緒に関与するセンサー領域(たとえば、アプタマー)とエフェクター領域とを含有する。一実施形態では、リボスイッチは、2以上の供給源に由来するポリヌクレオチドを利用する、組換え体である。「合成の」という用語はリボスイッチの文脈にて本明細書で使用されるとき、天然に存在しないリボスイッチを指す。一実施形態では、センサー領域及びエフェクター領域はポリヌクレオチドのリンカーによって連結される。一実施形態では、ポリヌクレオチドのリンカーはRNAステム(すなわち、二本鎖であるRNAポリヌクレオチドの領域)を形成する。
【0033】
本明細書に記載されているようなリボスイッチのライブラリは、レポーター遺伝子の発現であってリガンドが介在する発現のためのポリヌクレオチドカセットの背景で1以上のヌクレオチドが異なる複数のアプタマー配列を含む。従って、ライブラリにおける各アプタマーはセンサー領域と共に、本明細書に記載されているような5’イントロン-選択的エキソン-3’イントロンという状況下にある。
【0034】
エフェクター領域
一実施形態では、エフェクター領域は3’イントロンの5’スプライス部位(「5’ss」)配列(すなわち、選択的エキソンのすぐそばの3’であるイントロンスプライス部位配列)を含む。エフェクター領域は3’イントロンの5’ss配列と3’イントロンの5’ss配列に対して相補的な配列とを含む。アプタマーがそのリガンドと結合すると、エフェクター領域はステムを形成し、従って選択的エキソンの3’末端でのスプライスドナー部位へのスプライシングを妨げる。ある特定の条件下では(たとえば、アプタマーがそのリガンドに結合しない場合)、エフェクター領域は選択的エキソンの3’末端でのスプライスドナー部位へのアクセスを提供するという状況下にあり、標的遺伝子mRNAにおける選択的エキソンの包含につながる。
【0035】
エフェクター領域のステム部分は、リガンドがアプタマーと結合する際、選択的エキソンの選択的スプライシングを実質的に妨げるのに十分な長さ(及びGC含量)であるべきである一方で、リガンドが十分な量で存在しない場合スプライス部位へのアクセスも可能とすべきである。本発明の実施形態では、エフェクター領域のステム部分は3’イントロンの5’ss配列及びその相補的配列に加えてステム配列を含む。本発明の実施形態では、この追加のステム配列はアプタマーのステムに由来する配列を含む。ステム部分の長さ及び配列は、リガンドが存在しない場合、標的遺伝子の許容できるバックグラウンド発現を可能とし、且つリガンドが存在する場合、標的遺伝子の許容できる発現レベルを可能とするステムを特定するために、既知の技法を用いて修飾することができる。ステムが、たとえば、長すぎるのであれば、それはリガンドの存在下または非存在下で3’イントロンの5’ss配列へのアクセスを隠し得る。ステムが短すぎるのであれば、それは、3’イントロンの5’ss配列を隔離することができる安定なステムを形成し得ず、その場合、選択的エキソンはリガンドの存在下または非存在下で標的遺伝子のメッセージにスプライシングされるであろう。一実施形態では、エフェクター領域ステムの全長は約7塩基対~約20塩基対の間である。一部の実施形態では、ステムの長さは約8塩基対~約11塩基対の間である。一部の実施形態では、ステムの長さは8塩基対~11塩基対である。ステムの長さに加えて、ステムのGC塩基対の内容を変化させてステムの安定性を修正することができる。
【0036】
アプタマー/リガンド
「アプタマー」という用語は本明細書で使用されるとき、リガンドに特異的に結合するRNAポリヌクレオチド(またはRNAポリヌクレオチドをコードするDNA)またはリガンドへの特異的な結合(すなわち、予想されるアプタマー)を特定するためにスクリーニングされているRNAポリヌクレオチドを指す。アプタマーのライブラリは、ライブラリの他のメンバーとは少なくとも1つのヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を有する複数の予想されるアプタマーを含む予想されるアプタマーの集まりである。
【0037】
「リガンド」という用語は、アプタマーによって特異的に結合される分子、または1以上のアプタマーに結合する能力についてスクリーニングされている予想されるリガンドを指す。リガンドのライブラリはリガンド及び/または予想されるリガンドの集まりである。
【0038】
一実施形態では、リガンドは、たとえば、脂質、単糖類、セカンドメッセンジャー、補因子、金属イオン、他の天然の産物及び代謝産物、核酸、ならびに大半の治療薬を含む、低分子量(約1,000ダルトン未満)の分子である。一実施形態では、リガンドは2以上のヌクレオチド塩基を伴うポリヌクレオチドである。
【0039】
一実施形態では、リガンドは、8-アザグアニン、アデノシン5’一リン酸一水和物、アンフォテリシンB、アベルメクチンB1、アザチオプリン、酢酸クロルマジノン、メルカプトプリン、モリシジン塩酸塩、N6-メチルアデノシン、ナダイド、プロゲステロン、プロマジン塩酸塩、ピルビニウムパモ酸塩、スルファグアニジン、テストステロンプロピオン酸塩、チオグアノシン、チロキサポール及びボリノスタットから成る群から選択される。
【0040】
ある特定の実施形態では、本発明の方法を用いて、ポリヌクレオチドカセットにてアプタマーに結合して、それによってレポーター遺伝子の発現を生じる細胞内分子であるリガンド(すなわち、内在性リガンド)を特定する。たとえば、アプタマー/リガンドが介在する発現のためのポリヌクレオチドカセットを含有するレポーター遺伝子を伴った細胞を、たとえば、熱、増殖、形質転換または突然変異のような条件に曝露して、アプタマーに結合し、レポーター遺伝子の発現を引き起こすことができる細胞のシグナル伝達分子、代謝産物、ペプチド、脂質、イオン(たとえば、Ca2+)等での変化をもたらすことができる。従って、本発明の方法を用いて、たとえば、細胞のシグナル伝達、細胞の代謝または細胞内での突然変異における変化を含む細胞の状態での変化に応答して細胞内リガンドに結合するアプタマーを特定することができる。別の実施形態では、本発明を用いて、分化した細胞に存在する細胞内リガンドと結合するアプタマーを特定する。たとえば、本発明の方法を用いて、人工多能性幹細胞に存在するリガンドまたはリガンドと結合するアプタマーを特定してもよい。一実施形態では、本発明の方法を用いて、生体内での細胞分化、または生体内での細胞の生理的変化に対する応答をスクリーニングすることができる。
【0041】
アプタマーリガンドはまた、たとえば、発癌性形質転換のような特定の生理的な/病的な条件下で有意に増加する細胞内在性の成分であることもでき、それらには、たとえば、GTPまたはGDP、カルシウムのようなセカンドメッセンジャー分子;脂肪酸、または乳癌における13-HODEのような間違って代謝されている脂肪酸(参照によって本明細書に組み入れられるFlaherty,JT,et al.,Plos One,Vol.8,e63076,2013,);アミノ酸またはアミノ酸代謝産物;癌細胞または代謝性疾患の正常細胞にて普通高レベルを有する解糖経路における代謝産物;及び、たとえば、Rasまたは変異体Rasタンパク質、肺癌における変異体EGFR、多数の種類のがんにおけるインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)のような癌関連分子が挙げられてもよい。内在性のリガンドにはJP.,Wiebe(参照によって本明細書に組み入れられるEndocrine-Related Cancer,(2006),13:717-738)によって開示されたような乳癌におけるプロゲステロン代謝産物が挙げられる。内在性リガンドにはまた、Minton,DR及びNanus,DM(参照によって本明細書に組み入れられるNature Reviews,Urology,Vol.12,2005)によって開示されたような、たとえば、乳酸塩、グルタチオン、キヌレニンのような腎臓癌における重要な代謝酵素の突然変異から生じる高レベルでの代謝産物も挙げられる。
【0042】
リガンドへのアプタマーの結合の特異性は、無関係な分子についてのアプタマーの解離定数と比べたそのリガンドについてのアプタマーの相対的な解離定数(Kd)という点で定義することができる。従って、リガンドは無関係な物質よりも高い親和性でアプタマーに結合する分子である。通常、そのリガンドに関するアプタマーについてのKdは無関係な分子とのアプタマーのKdよりも少なくとも約10倍小さいであろう。他の実施形態では、Kdは少なくとも約20倍小さい、少なくとも約50倍小さい、少なくとも約100倍小さい、少なくとも約200倍小さいであろう。アプタマーは通常、約15~約200ヌクレオチドの間の長さであろう。さらに一般的には、アプタマーは約30~約100ヌクレオチドの間の長さであろう。
【0043】
リボスイッチの一部として組み込むことができ、本発明の方法によってスクリーニングすることができるアプタマーは、天然に存在するアプタマー、またはその修飾体、または指数関数的増加によるリガンドの系統的展開(SELEX)を介して新たに設計されるもしくは合成スクリーニングされるアプタマーであることができる。小分子リガンドと結合するアプタマーの例には、テオフィリン、ドーパミン、スルホローダミンB、及びセロビオースカナマイシンA、リビドマイシン、トブラマイシン、ネオマイシンB、ビオマイシン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、サイトカイン、細胞表面分子、及び代謝産物が挙げられるが、これらに限定されない。小分子を認識するアプタマーの概説については、たとえば、Famulok,Science,9:324-9(1999)ならびにMcKeague,M.及びDeRosa,M.C.J.Nuc.Aci.2012を参照のこと。別の実施形態では、アプタマーは相補的なポリヌクレオチドである。
【0044】
一実施形態では、アプタマーは試験管内で特定の小分子リガンドと結合するように予備スクリーニングされる。アプタマーを設計するためのそのような方法には、たとえば、SELEXが挙げられる。SELEXを用いて小分子を選択的に結合するアプタマーを設計する方法は、たとえば、参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第5,475,096号、同第5,270,163号及びAbdullah,Ozer,et al.Nuc.Aci.2014にて開示されている。SELEXプロセスの改変は、参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第5,580,737号及び同第5,567,588号に記載されている。
【0045】
アプタマーを特定するための以前の選択法には、無作為化されるまたは変異を起こさせる領域を含有する所望の長さのDNAまたはRNA分子の大きなプールを調製することが一般に関与する。たとえば、アプタマー選択のためのオリゴヌクレオチドのプールは、長さ約15~25ヌクレオチドであり、PCRプライマーの結合に有用である定義された配列の領域が隣接する20~100の無作為化ヌクレオチドの領域を含有し得る。オリゴヌクレオチドのプールは標準のPCR法、または選択された核酸配列を増幅できる他の手段を用いて増幅される。DNAプールは、RNAアプタマーが所望である場合、試験管内で転写されてRNA転写物のプールを生じてもよい。次いで、RNAまたはDNAオリゴヌクレオチドのプールは、所望のリガンドに特異的に結合するその能力に基づいた選択に供される。選択法には、たとえば、アフィニティクロマトグラフィが挙げられるが、別の分子に特異的に結合するその能力に基づいた核酸の選択を可能とするプロトコールが使用されてもよい。小分子と結合し、且つ細胞内で機能するアプタマーを特定するための選択法には細胞に基づくスクリーニング法が関与してもよい。アフィニティクロマトグラフィの場合、オリゴヌクレオチドをカラムにおける基質に、または磁気ビーズに固定化されている標的リガンドに接触させる。オリゴヌクレオチドは好ましくは、正常な生理的条件を模倣する塩濃度、温度及び他の条件の存在下でリガンド結合について選択される。リガンドに結合するプールにおけるオリゴヌクレオチドはカラムまたはビーズに保持され、非結合配列は洗い流される。次いで、リガンドと結合するオリゴヌクレオチドがPCRによって(普通、溶出後)(RNA転写物が利用された場合、逆転写の後)増幅される。選択過程は、選択手順の約3~10回の合計反復回数について選択した配列にて繰り返される。次いで、得られたオリゴヌクレオチドは標準の手順を用いて増幅され、クローニングされ、配列決定されて、標的リガンドと結合することができるオリゴヌクレオチドの配列を特定する。いったんアプタマー配列が特定されると、アプタマーは、突然変異を起こしたアプタマー配列を含むオリゴヌクレオチドのプールから出発する追加の回数の選択を行うことによってさらに最適化されてもよい。
【0046】
一実施形態では、本発明での使用のためのアプタマーまたはアプタマーライブラリは試験管内のアプタマーの選別で特定された1以上のアプタマーを含む。一実施形態では、試験管内のアプタマーの選別で特定されたアプタマーは、本発明の方法で使用するための予想されるアプタマーライブラリを作り出すように無作為化された1以上のヌクレオチドを有する。
【0047】
選択的エキソン
本発明の遺伝子調節ポリヌクレオチドカセットの一部である選択的エキソンは、プレmRNAに転写されることができ、標的遺伝子のmRNAに選択的にスプライシングされることができるポリヌクレオチド配列であることができる。本発明の遺伝子調節カセットの一部である選択的エキソンは、選択的エキソンが標的遺伝子のmRNAに含まれる場合、そのmRNAからの標的遺伝子の発現が妨げられるまたは低減されるように翻訳を抑制する少なくとも1つの配列を含有する。好ましい実施形態では、選択的エキソンがスプライシングによって標的遺伝子のmRNAに含まれる場合、選択的エキソンは、標的遺伝子とのインフレームである終止コドン(TGA、TAA、TAG)を含有する。ある実施形態では、選択的エキソンがスプライシングによって標的遺伝子のmRNAに組み込まれ、たとえば、mRNAの分解を招くマイクロRNA結合部位を含む場合、選択的エキソンは、終止コドンに加えて、または終止コドンの代替として、翻訳を低減するまたは実質的に妨げる他の配列を含む。一実施形態では、選択的エキソンは、mRNAの分解を生じるmiRNA結合配列を含む。一実施形態では、選択的エキソンは、ポリペプチド配列をコードし、その配列は、このポリペプチド配列を含有するタンパク質の安定性を低減する。一実施形態では、選択的エキソンは、このポリペプチド配列を含有するタンパク質を分解に向けるポリペプチド配列をコードする。
【0048】
選択的エキソンのスプライシングの基本レベルまたはバックグラウンドレベルは、エキソンスプライスエンハンサー(ESE)配列及びエキソンスプライスサプレッサー(ESS)配列を変えることによって及び/または選択的エキソンにESEもしくはESSの配列を導入することによって最適化することができる。選択的エキソンの配列に対するそのような変化は、部位特異的変異誘発を含むが、これらに限定されない当該技術で既知の方法を用いて達成することができる。或いは、所望の配列(たとえば、選択的エキソンの全部または一部を含む)のオリゴヌクレオチドは、商業的供給源から入手し、遺伝子調節カセットにクローニングすることができる。ESS及びESEの配列の特定は、たとえば、ESEfinder3.0(Cartegni,L.et al.ESEfinder:a web resource to identify exonic splicing enhancers.Nucleic Acid Research,2003,31(13):3568-3571)及び/または他の利用できる援助を含む当該技術で既知の方法を用いて達成することができる。
【0049】
一実施形態では、選択的エキソンは標的遺伝子に対して外来性であるが、選択的エキソンは標的遺伝子が発現されるであろう生物を起源とする配列に由来してもよい。一実施形態では、選択的エキソンは合成配列である。一実施形態では、選択的エキソンは天然に存在するエキソンである。別の実施形態では、選択的エキソンは既知のエキソンの全部または一部に由来する。この文脈で、「由来する」は、天然に存在するエキソンまたはその一部に実質的に相同であるが、種々の突然変異を含有して、たとえば、標的レポーター遺伝子配列とインフレームであろう終止コドンを導入してもよく、またはエキソンスプライスエンハンサーを導入するもしくは欠失してもよく、及び/またはエキソンスプライスサプレッサーを導入するもしくは欠失してもよい配列を含有する選択的エキソンを指す。一実施形態では、選択的エキソンは、ヒトのジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(DHFR)のエキソン2、ヒト変異体ウィルムス腫瘍1のエキソン5、マウスのカルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼIIデルタのエキソン16、またはSIRT1のエキソン6に由来する。
【0050】
5’及び3’のイントロン配列
選択的エキソンには5’及び3’のイントロン配列が隣接する。遺伝子調節カセットで使用することができる5’及び3’のイントロン配列は、アプタマーと結合するリガンドの存在または非存在に応じて、標的遺伝子からスプライシングで切り出され、標的遺伝子mRNAまたはmRNAに選択的エキソンを含む標的遺伝子を作り出す配列であることができる。5’及び3’のイントロンはそれぞれ、スプライシングが生じるのに必要な配列、すなわち、スプライスドナー、スプライスアクセプター及び分岐点配列を有する。一実施形態では、遺伝子調節カセットの5’及び3’のイントロン配列は1以上の天然に存在するイントロンまたはその一部に由来する。一実施形態では、5’及び3’のイントロン配列は切り詰めたヒトベータグロビンのイントロン2(IVS2Δ)に由来する。他の実施形態では、5’及び3’のイントロン配列は、SV40mRNAのイントロン(ClontechのpCMV-LacZベクターで使用された)、ヒトのトリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)のイントロン6(Nott Ajit,et al.RNA.2003,9:6070617)、またはヒトの第IX因子のイントロン(Sumiko Kurachi,et al.J.Bio.Chem.1995,270(10),5276)、標的遺伝子自体の内在性イントロン、または調節されたスプライシングに十分である要素(Thomas,A.Cooper,Methods,2005(37):331)を含有するゲノム断片もしくは合成イントロン(Yi Lai,et al.Hum.Gene Ther.2006:17(10):1036)に由来する。
【0051】
一実施形態では、本発明の選択的エキソン及びリボスイッチを標的遺伝子の内在性イントロンにあるように操作する。すなわち、そのイントロン(または実質的に類似のイントロン配列)が標的遺伝子のその位置で天然に存在する。この場合、選択的エキソンのすぐ上流のイントロン配列は5’イントロンまたは5’イントロン配列と呼ばれ、選択的エキソンのすぐ下流のイントロン配列は3’イントロンまたは3’イントロン配列と呼ばれる。この場合、内在性イントロンを修飾して、選択的エキソンの5’及び3’の末端に隣接するスプライスアクセプター配列及びスプライスドナー配列を含有する。
【0052】
本発明の遺伝子調節カセットにおけるスプライスドナー及びスプライスアクセプターの部位を強化するまたは弱化するように修飾することができる。すなわち、標準のクローニング法、部位特異的変異誘発等によってスプライスドナーまたはアクセプターについてのコンセンサスにさらに近づくようにスプライス部位を修飾することができる。スプライスコンセンサスにさらに類似するスプライス部位はスプライシングを促進する傾向があり、従って強化される。スプライスコンセンサスにあまり類似しないスプライス部位はスプライシングを妨害する傾向があり、従って弱化される。最も一般的なクラスのイントロン(U2)のスプライスドナーについてのコンセンサスはA/C A G || G T A/G A G T(ここで||はエキソン/イントロンの境界を表す)である。スプライスアクセプターについてのコンセンサスはC A G || G(ここで||はエキソン/イントロンの境界を表す)である。スプライスドナー及びアクセプターの部位での特定のヌクレオチドの頻度は当該技術に記載されている(たとえば、Zhang,M.Q.,Hum.Mol.Genet.1988.7(5):919-932を参照のこと)。5’及び3’スプライス部位の強度を調整して選択的エキソンのスプライシングを調節することができる。
【0053】
イントロンのスプライシングエンハンサー要素及び/またはイントロンのスプライシングサプレッサー要素を修飾すること、欠失させること及び/または付加すること、及び/または分岐部位配列を修飾することを含む、遺伝子調節カセットにおける5’及び3’イントロンに対する追加の修飾を行ってスプライシングを調節することができる。
【0054】
一実施形態では、5’イントロンはレポーター遺伝子とインフレームであろう終止コドンを含有するように修飾されている。5’及び3’のイントロン配列は、潜在スプライス部位を取り除くようにも修飾することができ、それは公的に利用できるソフトウエア(たとえば、Kapustin,Y.et al.Nucl.Acids Res.2011.1-8を参照のこと)によって特定することができる。たとえば、ウイルスの発現構築物についてのサイズ要件を満たすために5’及び3’のイントロン配列の長さを調整することができる。一実施形態では、5’及び3’のイントロン配列は独立して約50~約300ヌクレオチドの長さである。一実施形態では、5’及び3’のイントロン配列は独立して約125~約240ヌクレオチドの長さである。
【0055】
レポーター遺伝子
本発明のスクリーニング法は、標的の細胞、組織または生物で発現させることができる標的遺伝子(たとえば、レポーター遺伝子)の発現を調節するのに使用される遺伝子調節カセットを利用する。レポーター遺伝子は、その発現を使用して遺伝子調節カセットにおけるリガンドのアプタマーとの特異的な相互作用を検出することができる任意の遺伝子であることができる。一実施形態では、レポーター遺伝子は、たとえば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、オレンジ蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質または切替可能な蛍光タンパク質を含む蛍光タンパク質をコードする。別の実施形態では、レポーター遺伝子は、たとえば、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、または分泌型Gaussiaルシフェラーゼを含むルシフェラーゼ酵素をコードする。一実施形態では、レポーター遺伝子はβ-ガラクトシダーゼである。一実施形態では、レポーターは西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)である。一実施形態では、レポーター遺伝子は核タンパク質、トランスポーター、細胞膜タンパク質、細胞骨格タンパク質、受容体、成長ホルモン、サイトカイン、シグナル伝達分子、調節性RNA、抗体、及び治療用のタンパク質またはペプチドから成る群から選択される。
【0056】
発現構築物
本発明は、レポーター遺伝子をコードし、且つ本発明の遺伝子調節カセットを含有するポリヌクレオチドを標的細胞に導入するための組換えベクターの使用を企図する。多数の実施形態では、本発明の組換えDNA構築物には、宿主細胞におけるDNAの複製及びその細胞における適当なレベルでの標的遺伝子の発現を提供するDNAセグメントを含む追加のDNA要素が含まれる。当業者は、発現制御配列(プロモーター、エンハンサー等)が標的細胞にてレポーター遺伝子の発現を促進するその能力に基づいて選択されることを十分に理解する。「ベクター」は、試験管内または生体内のいずれかで宿主細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む組換えプラスミド、酵母人工染色体(YAC)、ミニ染色体、DNAミニサークルまたはウイルス(ウイルスに由来する配列を含む)を意味する。一実施形態では、組換えベクターはウイルスベクターまたは複数のウイルスベクターの組み合わせである。標的細胞におけるレポーター遺伝子のアプタマーが介在する発現についてのウイルスベクターは当該技術で既知であり、それには、アデノウイルス(AV)ベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルス及びレンチウイルスベクター、単純性ヘルペス1型(HSV1)ベクターが挙げられる。
【0057】
アプタマーのライブラリをサブライブラリに分割する方法
【0058】
本発明の別の態様は、大きなオリゴヌクレオチドライブラリを小さなサブライブラリに分割する方法及びアプタマーに基づく合成リボスイッチの細胞系アッセイでスクリーニング可能なプラスミドライブラリを作製するアプローチを提供する。本発明の一態様は、以下のステップを含む、オリゴヌクレオチドライブラリをさらに小さいサブライブラリに分ける方法を提供する:
(a)ライブラリにおけるオリゴヌクレオチドが複数の5’及び3’定常領域を含むオリゴヌクレオチドライブラリを提供すること、
(b)鋳型としてのオリゴヌクレオチドライブラリと、5’及び3’定常領域に相補的である第1のプライマーと第2のプライマーとを用いた2サイクルPCRを行うことと、
(c)2サイクルPCRの産物を単離すること、及び
(d)固有の5’及び3’定常領域のサブセットに相補的なプライマーを用いて2サイクルPCRの単離した産物のサブセットをPCRで増幅すること。
【0059】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドライブラリは1以上の無作為化したヌクレオチドを含有する無作為化アプタマーライブラリである。アプタマー配列には左及び右の定常領域が隣接し、それはその後のクローニングのための制限部位を含有する。
【0060】
一実施形態では、2サイクルPCRにおける第1または第2のプライマーは、ビオチン、ジゴキシゲニン(DIG)、ブロモデオキシウリジン(BrdU)、蛍光色素分子、化学基、たとえば、チオール基、またはクリック化学で使用される化学基、たとえば、アジドから成る群から選択される標識を含む。これらの分子はオリゴヌクレオチドに連結することができ、それらの相互作用する分子、たとえば、ビオチンのためのストレプトアビジンもしくはアビジンの修飾形態、DIGもしくはBrdUもしくは蛍光色素分子に対する抗体、またはジスルフィドを形成するための第2チオール基、アジドのためのアルキン基を固体表面に固定化して標識されたオリゴヌクレオチドの単離を促進することができる。
【0061】
いったんアプタマーライブラリがアプタマーのサブライブラリに分割されると、1以上のサブライブラリにおけるアプタマーが遺伝子調節ポリヌクレオチドカセットに導入されてリボスイッチライブラリを生成し、提供される方法によってリガンド結合についてスクリーニングされる。
【0062】
リボスイッチライブラリをサブライブラリに分割する方法
一態様では、本発明はリボスイッチのライブラリをサブライブラリに分割する方法を提供する。リボスイッチのライブラリは本明細書で使用されるとき、たとえば、本明細書及びPCT/US2016/016234に記載されているような、ライブラリの個々のメンバーがライブラリの他のメンバーとは異なるアプタマー配列を含む複数のアプタマーを含む遺伝子調節ポリヌクレオチドカセットを含むプラスミドライブラリである。実施形態では、リボスイッチのライブラリにおけるアプタマーは1以上の無作為化したヌクレオチドを含む。実施形態では、プラスミドリボスイッチライブラリは本明細書に記載されている方法によって作り出されるアプタマーのサブライブラリから生成された。
【0063】
リボスイッチライブラリをサブライブラリに分割する方法は、以下のステップを含む:
(a)本明細書に記載されている遺伝子調節ポリヌクレオチドカセットを含むプラスミドにアプタマーのライブラリを導入してリボスイッチライブラリを作製すること、
(b)リボスイッチライブラリを細菌(たとえば、E.coli)に導入すること、
(c)細菌クローンを回収し(たとえば、細菌コロニーを摘み取ることによって)、プラスミドDNAを抽出してリボスイッチのプラスミドサブライブラリ(本明細書では一次サブライブラリと呼ぶ)を得ること、
(d)任意で、一次サブライブラリを細菌に導入し、細菌クローンを回収し、プラスミドDNAを単離することによってリボスイッチの一次プラスミドサブライブラリからリボスイッチの二次サブライブラリを生成すること。
【0064】
プラスミドに配列を導入してライブラリを生成する方法は当該技術で既知であり、細菌にプラスミドを導入し、細菌クローンを回収する方法も同様である。プラスミドリボスイッチのライブラリのメンバーを含有する細菌クローンは、細菌をプレートに播き、個々のコロニーを摘み取ることによって回収されてもよい。これらのクローンからプールしたプラスミドがサブライブラリを形成する。回収された細菌クローンの数がリボスイッチのサブライブラリのサイズ(固有のメンバーの数)を決定し、複数のサブライブラリが生成されてもよい。1以上の一次サブライブラリをさらに分割して二次サブライブラリが作り出し、サブライブラリのサイズをさらに小さくすることができる。1以上のサブライブラリを真核細胞に導入し、対象とするリガンドに細胞を曝露し、遺伝子調節ポリヌクレオチドカセットからのレポーター遺伝子の発現を測定することによって本明細書に記載されている方法を用いてサブライブラリをスクリーニングする。リガンドに応答したレポーター遺伝子の発現の上昇は、ライブラリの1以上のメンバーがリボスイッチの状況下でリガンドに結合するアプタマーを含むことを示している。従って、スクリーニングすることができるサブライブラリのサイズはレポーター遺伝子の発現を測定するアッセイの感度によって決定されてもよい。本発明の実施形態では、サブライブラリは約50~約600の固有のメンバーを含む(が、一部のメンバーは他のサブライブラリで反復されてもよいが)。
【0065】
本明細書で開示されている本発明の原理における変形が当業者によってなされ得、そのような改変が本発明の範囲内に含まれるものであるように意図されることが理解され、期待されるべきである。本明細書で引用されている参考文献はすべてその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。以下の実施例は本発明をさらに説明しているが、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0066】
実施例1
スプライシングに基づく遺伝子調節リボスイッチを用いたアプタマー/リガンドについての哺乳類細胞系スクリーニング
手順
リボスイッチの構築
リボスイッチは、参照によって本明細書に組み入れられるPCT/US2016/016234(具体的には実施例3~6)に記載されているように構築した。切り詰めたヒトベータグロビンのイントロン配列を合成し、ホタルルシフェラーゼ遺伝子のコーディング配列に挿入した。変異体ヒトDHFRのエキソン2を合成し、ゴールデンゲートクローニング戦略を用いてこの切り詰めたベータグロビンのイントロン配列の真ん中に挿入した。独立して2つの異なるBsaI部位に相補的であり(IDT)、アニーリングし、BsaIで消化したmDHFR-Luci-アクセプターベクターにライゲーションされている5’末端で4ヌクレオチドのオーバーハングを持つオリゴヌクレオチド(「オリゴ」)としてxpt-G/A1、ydhl-G/A2、yxj3、add4、gdg6-G/A5(アプタマーについての引用は参照によって本明細書に組み入れられる)を含むアプタマーを合成した。
【0067】
形質移入
形質移入の前日に、3.5×104個のHEK-293細胞を96穴平底プレートに播いた。プラスミドDNA(500ng)を試験管または96穴U底プレートに加えた。これとは別に、TransIT-293試薬(Mirus;1.4μL)を50μLのOpti-mem I培地(Life Technologies)に加え、室温(RT)で5分間静置した。次いで、この希釈した形質移入試薬50μLをDNAに加え、混合し、RTで20分間インキュベートした。最終的にこの溶液7μLを96穴プレートの細胞のウェルに加えた。
【0068】
培養細胞のホタルルシフェラーゼアッセイ
培地交換の24時間後、プレートをインキュベータから取り出し、実験台にて数分間RTに対して平衡化し、次いで吸引した。Glo溶解緩衝液(Promega、100μL、RT)を加え、プレートをRTで少なくとも5分間維持した。次いで、ウェルの内容物を50μLの倍散剤によって混合し、各試料20μLを、Glo溶解緩衝液で10%に希釈したブライトglo試薬(Promega)20μLと混合した。96のウェルを不透明な白色の384穴プレートに配置した。RTでの5分間のインキュベートに続いて、500ミリ秒の読み取り時間でTecan機器を用いて発光を測定した。ルシフェラーゼ活性は平均の相対的な光単位(RLU)±SDとして表し、誘導倍率はグアニン処理をしないで得られたルシフェラーゼ活性で割ったグアニン処理によって得られたルシフェラーゼ活性として算出した。
【0069】
結果
レポーター遺伝子としてのルシフェラーゼで出発して、ヒトβ-グロビンのイントロンをホタルルシフェラーゼのコーディング配列の真ん中に挿入し、変異体終止コドンを含有するヒトDHFRのエキソン2をイントロン部分に挿入することによって遺伝子発現のプラットフォームを作り出した。レポーター遺伝子の発現は、従ってレポーター遺伝子とインフレームである終止コドンを含有するmDHFRエキソンの包含または排除によって、制御される。このシステムでは、U1結合部位及び挿入された相補的配列によって形成されたmRNAにおけるヘアピン構造がmDHFRエキソンの包含を阻止し、よって標的遺伝子の発現を可能にする(
図1a)。調節可能なヘアピン構造を形成するために、従って小分子によって制御可能な標的遺伝子の発現を行うために、我々は、合成アプタマー(テオフィリン)または天然のアプタマー(xpt-G/A、yxj、ydhl-A/G、add-A/Gアプタマー)またはハイブリッドアプタマーgdg6-G/Aを、U1結合部位とその相補的配列との間で、このスプライシングに基づく遺伝子調節プラットフォームに移植し、哺乳類細胞にて遺伝子発現を調節する合成リボスイッチを生成した。我々のスプライシングに基づく遺伝子調節カセットを用い、我々の合成リボスイッチ構築物に様々なアプタマーを挿入することによって、我々は哺乳類細胞の背景にてリガンドに対する様々な機能的な応答を明らかにした。グアニンアプタマーを持つリボスイッチは
図1bで示すようにグアニンと同様にグアノシンに応答する。xpt-グアニンリボスイッチであるxpt-G17(参照によって本明細書に組み入れられるPCT/US2016/016234で開示されている、たとえば、配列番号15を参照のこと)は、その天然のリガンド処理によってリガンドに応答してレポーター遺伝子発現の高いダイナミックレンジの誘導を生じた。
【0070】
天然のアプタマーに基づくリボスイッチは哺乳類細胞にて遺伝子発現を調節することにおいて高いダイナミックレンジを有するが、それら天然のアプタマーについてのリガンドの性質は生体内でのそれらの適用可能性を限定している。リボスイッチによる我々の高度にダイナミックな遺伝子調節のプラットフォームを利用して、我々は先ず、N2位にて異なる化学基を有するグアニン類似体のリストを選択してxpt-G17リボスイッチにおけるその活性を調べた。
図1cに示すように、500μMの濃度で幾つかのN2化合物はxpt-G17構築物を伴う細胞にてルシフェラーゼ活性を誘導し、
図1dに示すようにN2-フェノキシアセチルグアニンが最も強力だった(1303倍の誘導)。可能性があるリガンドとして使用するための化合物のリストを拡大するために、Prestwickライブラリ(1280の臨床的に認可された薬剤の収集)を100μMで使用して哺乳類細胞の背景で既知のアプタマーを活性化する最適なリガンドについてスクリーニングした。予備的な選別に由来する
図1eに示すように、グアニンリボスイッチxpt-G17はグアニンだけでなく、
図1eに示すように8-アザグアニン、ナダイド、N6-メチルアデノシン、テストステロンプロピオン酸塩、アデノシン5’一リン酸一水和物、アンフォテリシンB、チオグアニン、チロキサポール、プロゲステロン及びクロルマジノン酢酸塩、ならびに表1で列挙するいくつかの他の化合物にも応答した。興味深いことに、xpt-G17リボスイッチに対して活性を示したこれら化合物の一部はグアニンまたはグアノシンとは構造的に非常に異なる。他の8つのプリンリボスイッチによってPrestwickライブラリをさらにスクリーニングし、ルシフェラーゼ活性を誘導することにおいてリボスイッチを活性化することができるいくつかの化合物が得られた(表1)。これらの結果は、細胞環境にて既知のアプタマーについて可能性のある最適なリガンドを発見することにおけるリボスイッチシステムの重要な使用を実証しており、さらに、その中でリボスイッチが機能するように求められる細胞の背景にてアプタマーを生成することの重要性を強調している。
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【表1D】
【表1E】
【0071】
Prestwickライブラリ選別で使用されたリボスイッチについての配列には、大文字でのステム配列及び小文字でのアプタマー配列が以下で提供されている。
xpt-A8(配列番号1):
GTAATGTataatcgcgtggatatggcacgcaagtttctaccgggcaccgtaaatgtccgattACATTAC
add-G6(配列番号2):
GTAATGTGtataatcctaatgatatggtttgggagtttctaccaagagccttaaactcttgactaCACATTAC
add-A6(配列番号3):
GTAATGTGtataatcctaatgatatggtttgggagtttctaccaagagccttaaactcttgattaCACATTAC
gdg6-A8(配列番号4):
GTAATGTacagggtagcataatgggctactgaccccgccgggaaacctatttcccgattACATTAC
gdg6-G8(配列番号5):
GTAATGTacagggtagcataatgggctactgaccccgccgggaaacctatttcccgactACATTAC
Ydhl-G8(配列番号6):
GTAATGTataacctcaataatatggtttgagggtgtctaccaggaaccgtaaaatcctgactACATTAC
Ydhl-A6(配列番号7):
GTAATGTGtataacctcaataatatggtttgagggtgtctaccaggaaccgtaaaatcctgattaCACATTAC
yxj-A6(配列番号8):
GTAATGTGtatatgatcagtaatatggtctgattgtttctacctagtaaccgtaaaaaactagattaCACATTAC
【0072】
実施例2
アプタマーライブラリの設計及び合成
手順
アプタマーライブラリを生成するために、リガンド結合に関与する可能性があるような結晶構造6,7から特定されているアプタマーにおける位置でのヌクレオチドを無作為化した。アプタマーのリボスイッチへの構築を促進するために、IIs型制限酵素(たとえば、BsaI)の切断部位を持つ定常領域をアプタマー領域に隣接させた。無作為化した塩基を持つアプタマー配列を含有するこの153bpのウルトラマーオリゴヌクレオチドをIDTによって合成した:GACTTCGGTCTCATCCAGAGAATGAAAAAAAAATCTTCAGTAGAAGGTAATGTATANNNGCGTGGATATGGCACGCNNGNNNNCNCCGGGCACCGTAAATGTCCGACTACATTACGCACCATTCTAAAGAATAACAGTGAAGAGACCAGACGG(Nは無作為ヌクレオチドを表す)(配列番号9)。アプタマーライブラリにてさらなる配列多様性を生成するために、さらなる位置にて塩基を無作為化することができる。完全に無作為な配列を用いてアプタマーライブラリを生成することができる。
【0073】
結果
実施例1に記載されているように、我々は、小分子リガンドの処理に応答して哺乳類の遺伝子発現を調節する合成リボスイッチを成功裏に作成した。スプライシングに基づく遺伝子発現カセットにてxpt-Gグアニンアプタマーを含有するリボスイッチの1つであるxpt-G17。レポーター遺伝子としてルシフェラーゼを用いて、我々はグアニン処理に応答して高濃度のグアニンで2000に誘導倍率を伴う遺伝子調節の高いダイナミックレンジを達成した。アプタマー/リガンドが介在する選択的スプライシングの構築物による遺伝子調節活性のこの例を見ないダイナミックレンジは、哺乳類細胞における所望のリガンドに対するアプタマーについてスクリーニングする、または既知のアプタマーと結合し、活性化するリガンドについてスクリーニングするシステムを提供する。
【0074】
出発リボスイッチライブラリを作るプラットフォームとしてxpt-G17を選択した。オリゴヌクレオチド配列の構成は次のクローニングステップにて元々のxpt-Gグアニンアプタマーを置き換えるように設計した。結晶学解析に基づいてグアニン結合に重要であることが知られている位置でのxpt-Gグアニンアプタマーにおけるヌクレオチドを無作為化した。最初に、10の位置を無作為化し、それは1,048,576のアプタマー配列のライブラリを生成した。10を超える位置を無作為化すると、106配列より大きいライブラリを生成することができる。無作為化するのにxpt-Gグアニンアプタマーの骨格配列をここでは選択的に使用したが、類似のアプローチを用いて、他の既知のアプタマーを伴う、または既知のリガンドがない完全に無作為な配列さえ伴うアプタマーライブラリを生成することができる。我々はここではプラットフォームとしてxpt-G17を選択したが、様々なアプタマーを伴うリボスイッチ、またはスプライシング以外のメカニズムに基づくリボスイッチを出発プラットフォームとして使用して無作為化アプタマー配列を生成することができることも言及することが重要である。
【0075】
実施例3
大きな無作為化アプタマーライブラリをアプタマーの小さなサブライブラリに分けること
手順
オリゴヌクレオチド(オリゴ)
プライマーのJFまたはJRのセットは、合成されたアプタマーオリゴにおける定常領域に相補的な3’部分配列及び無作為な20量体オリゴ配列を含有する5’部分配列を有する。プライマーのFまたはRのセットは、JFまたはJRのプライマーにおける無作為20量体オリゴ配列に対して相補的である。プライマーはすべてIDTで合成される。JFプライマーは5’末端にてビオチンで標識された(IDT)。合成されたオリゴは、ストック溶液として100μMにDNA分解酵素及びRNA分解酵素を含まない水にて懸濁し、所望の濃度に希釈し、Nanodrop機器またはOliGreen法(ThermoFisher)を用いて定量した。
【0076】
2サイクルPCR増殖
ビオチン化オリゴ・タグを付加するために、10μLの反応体積にて製造元のプロトコールに従ってPfxプラチナPCRキットを用いて2サイクルPCR増幅を行った。PCR反応では所望のコピー数でオリゴ鋳型を使用した(アプタマーライブラリにてオリゴ配列当たり1~5コピー)。増幅の第1のサイクルについては逆行プライマーJRのみを含めた。増幅は、94℃で2分間、次いで94℃で10秒間、1分当たり0.5℃で66℃から52℃まで下降するタッチダウンプログラムによるアニーリングで実行した。次いでポリメラーゼ反応が68℃で20秒間あり、その後4℃までの冷却が続いた。次いで鋳型を含まないが、ビオチン化した順行プライマー(ビオチンJF)を含有するPCR混合物10μLを、同じPCRステップを用いた増幅の第2サイクルのために第1サイクルのPCR試験管に加えた。PCR産物はストレプトアビジン・ビーズとのインキュベートの準備ができた。
【0077】
ビオチン化オリゴヌクレオチド(オリゴ)の単離
2×結合及び洗浄緩衝液(BW緩衝液)を2MのNaClと共に1×TE緩衝液(Ambion)で作った。DynabeadsM-270ストレプトアビジン(ThermoFisher)(SAビーズ)を20μMの酵母tRNA溶液(Ambion)で室温にて10分間ブロックし、1×BW緩衝液で2回洗浄し、使用したビーズの最初の体積と同じ体積の2×BW緩衝液に再懸濁した。50μLのこれら処理したビーズを100μLの2×BW緩衝液及び30μLの水と一緒にPCR産物に加えた。製造元のプロトコールに従って、200μLのビオチン化したオリゴとSAビーズの混合物を室温で60分間インキュベートし、次いで95℃にて5分間、ビーズを変性させ、直ちに氷上で冷却し、1×BW緩衝液で1回、水で2回5分間洗浄した。洗浄溶液をできるだけ多く取り除き、洗浄したビーズはPCR反応の準備ができた。
【0078】
オリゴ配列のタグに特異的なPCR
ビオチン化したPCR産物を伴うビーズを、PfxプラチナPCRキットを用いて合計50μLのPCRミックスに加えた。プライマーはF及びRのセットプライマーの混合物である。PCRは94℃で2分間予備加熱し、94℃で15秒間、62℃で30秒間、68℃で20秒間、及び68℃で2分間の追加の伸長の28サイクルに供した。PCR産物を12℃に冷却し、PCRの2回目に備えた。2回目のPCR増幅については、1回目のPCRに由来するPCR産物1μLを鋳型として用い、F及びRのプライマーの単一ペアを使用して相補的配列でタグを付けた鋳型を増幅した。PCR反応は94℃で予備加熱し、94℃で15秒間、60℃で30秒間、68℃で20秒間、及び68℃で2分間の追加の伸長の25サイクルで増幅した。
【0079】
結果
指数関数的増加によるリガンドの系統的展開(SELEX)8,9を用いた試験管内の選択は、代謝産物、ビタミン補因子、金属イオン、タンパク質、及び全細胞さえも含む広範囲のリガンドに対する多数のアプタマーを生成するための普通1013~1014の配列を伴う大きなアプタマーライブラリをスクリーニングするのに広範に適用されているが10、そのような大きな無作為化アプタマーライブラリの細胞系スクリーニングの方法はまだ開発されていない。さらに、SELEXによって生成されたアプタマーのほとんどが細胞環境では有効ではないことが判明し、アプタマーを、それらが機能することが求められる細胞環境にてスクリーニングすることの重要性を強調している。選択したアプタマーが細胞内で機能するために、特定のアプタマーのそのリガンドへの結合は機能的な結果を有さなければならず、それは、試験管内の条件下でリガンド結合にのみ基づいてアプタマーを選択するSELEXを介しては調べることができない。アプタマーについての哺乳類細胞に基づく選別を開発する難題の1つは、リガンド処理に応答したアプタマーに基づくリボスイッチの遺伝子調節のダイナミックレンジが低いことである。この基本的な限界に加えて、哺乳類細胞における本質的な低い遺伝子導入効率が105配列より大きいスクリーニングライブラリに対して別の障壁を課している。しかしながら、我々は、リガンド処理の際、遺伝子発現の数千倍の誘導まで生成することができる合成リボスイッチを開発した。この高いダイナミックレンジの遺伝子調節はアプタマー/リガンドをスクリーニングするための細胞系システムの基礎を提供する。高い配列多様性を有する大きなアプタマーライブラリから真核細胞にてアプタマーを選択するために、本発明は、大きなアプタマーライブラリを、リボスイッチカセットにクローニングして哺乳類細胞系のアッセイを介してスクリーニング可能であるプラスミドライブラリを生成することができる小さなサブライブラリに分割する/分ける複数の戦略及びアプローチを提供する。
【0080】
大きなアプタマーライブラリを分ける戦略は、先ず、合成し、無作為化したアプタマーのオリゴ配列の5’末端及び3’末端の両方で固有の配列のペアを付加することである(実施例2に記載されているように)。この戦略の第2のステップでは、固有のオリゴ配列と連結した(それでタグ付けされた/標識された)アプタマー配列を、配列タグの各ペアに相補的であるプライマーの単一ペアを用いて増幅することができ、従ってアプタマーの様々なサブライブラリを生成することができる(
図3a)。タグ付け及びPCRのこの2ステッププロセスを繰り返して所望のサイズにライブラリを分けることができる。
【0081】
固有の配列のペアを鋳型に連結するために、我々は複数のアプローチを開発した(
図3b)。アプローチの1つは鋳型に固有の配列を組み込むためにPCRを使用することである(PCRアプローチ)。他のアプローチには、T4RNAリガーゼを用いて一本鎖鋳型に一本鎖配列タグをライゲーションすること、及び一本鎖オリゴヌクレオチド鋳型のPCR増幅によって生成される二本鎖鋳型に二本鎖配列タグをT4RNAリガーゼによってライゲーションすることが含まれる(ライゲーションアプローチ)。我々は2サイクルPCRのアプローチを開発し、調べており(
図3c)、固有の配列タグを付加することに対するライゲーションアプローチを調べているところである。
【0082】
PCRアプローチを用いて配列タグを連結し、アプタマーのタグ付きライブラリを生成するために、PCRプライマーのセットを1つ(JF及びJR)を設計した。プライマーのこのセットは、プライマーの5’部分及びプライマーの3’部分にタグ配列、合成されたアプタマーオリゴにおける定常領域に相補的である配列を含有する。高いコピー数の鋳型を用いた複数サイクルの従来のPCRによって生成される不均質性
11を回避するために、2サイクルPCRを開発して各サイクルにて鋳型の一方の末端で配列タグを連結した(
図3c)。この2サイクルPCRでは、無作為化したオリゴ鋳型のコピー数を最少に保って各鋳型が1を超えるペアのタグ配列と連結する機会を減らした。タグ付きの鋳型を単離し、精製するために、我々は、JFプライマーをビオチン分子で標識し、それにより磁気ストレプトアビジンのビーズを用いて反応成分の残りからビオチン化したタグ付き鋳型を分離することができる(
図3d)。鋳型のコピー数が少ないために、我々は、PCRのタグ付けで出発し、単離されたビオチン化タグ付き鋳型を、鋳型に連結したタグ配列に特異的であるプライマーのセット(J及びFプライマー)の混合物を用いたPCRによって増幅し、拡張して、末端で配列の固有のペアを有するアプタマーのライブラリ(無作為化アプタマーのタグ付きライブラリ)を生成した。次いでこのPCR産物がJ及びRプライマーの単一ペアによるPCRの鋳型として役立ち、各タグ付けされた鋳型を増幅し、従って元々のアプタマーライブラリのサブライブラリを生成する。
【0083】
2つのビオチン標識したJFプライマー(JF1及びJF2)及び8つの逆行JRプライマー(JR1~JR8)を用いた予備試験では、合計16の固有のペアの配列タグを生じた。当初の無作為化アプタマーライブラリのそれぞれ63%、90%または99%を表す1、2.3または4.6コピーでの鋳型によるPCRによってタグ付きライブラリを生成した後、様々なプライマーを用いてこの分割戦略を調べた。
図3eの左のパネルに示すように、ライブラリにてあらゆる鋳型を増幅する、アプタマーにおける定常領域に相補的なプライマー(ユニバーサルプライマー)によってタグ付き鋳型を増幅した。付加されたタグ配列(真ん中のパネル)に特異的であるが、タグ付けに含まれないプライマーのペア(F3及びR1)(右のパネル)に特異的ではないプライマーの単一ペア(F1及びR1)を用いた場合、ユニバーサルプライマーで増幅された産物に比べてはるかに少ない量でタグ付き鋳型が増幅され、これはライブラリの一部(1/16)のみが増幅されたことを示している。従って、元々のライブラリはさらに小さいサブライブラリに分けられた。
【0084】
実施例4
ライブラリのスクリーニングに対する細胞系アッセイの感度
手順
DNA構築物
xpt-G17リボスイッチを含有するプラスミドDNA構築物をDNA構築物SR-Mutにてこれら2つのDNA構築物の様々な比に希釈した。次いで、混合した構築物G17とSR-mutのプラスミドDNAをHEK-293細胞に形質移入した。形質移入及びルシフェラーゼアッセイを実施例1に記載されているように行った。
【0085】
結果
ライブラリのスクリーニングについての細胞系アッセイの感度は、最低1つの陽性のヒットが選別におけるライブラリの残りから突出するためにアプタマー・リボスイッチのプラスミドライブラリがどれほど複雑でそのサイズがどれほど大きくてもよいかを決定する。アッセイは選択されるレポーター遺伝子に応じてルシフェラーゼ活性、蛍光タンパク質の蛍光強度、または成長ホルモン/サイトカインの放出についてのものであることができ、遺伝要素は、一時的な形質移入またはウイルス、たとえば、AAV、アデノウイルス、レンチウイルス等の形質導入によって送達することができる。
【0086】
ここで、我々は、プラスミドDNAを送達するのに一時的な形質移入を選択し、陽性のリボスイッチ対照ベクターとしてxpt-G17構築物を用い、レポーター遺伝子としてホタルルシフェラーゼを使用した。これは哺乳類細胞におけるxpt-G17リボスイッチの開発の間に広範に調べられ、使用されてきたアッセイである。グアニンアプタマー配列がないことを除いてxpt-G17構築物と同じ遺伝要素を有する構築物SR-mutを陰性対照ベクターとして使用した。従ってそれはグアニン処理に応答して遺伝子発現を活性化しない。実際のリボスイッチライブラリはヌクレオチドの無作為化によって生成される大きな分子多様性に起因してさらに複雑であるが、これら2つの構築物を一緒に混合してプールしたライブラリの状況を模倣した。100%xpt-G17構築物DNAで形質移入した細胞は、未処理の細胞に比べると500μMのグアニンで処理した際、ルシフェラーゼ活性の2000倍の誘導を生じた。xpt-G17構築物DNAをSR-mut構築物DNAで希釈した場合、混合DNAで形質移入した細胞はルシフェラーゼ活性の低下した誘導倍率を示した。
図3で示すように、グアニン応答性xpt-G17構築物の非応答性陰性SR-mut構築物に対する比が低下すると、誘導倍率は低下したが、2000分子のうち陽性構築物が1つある場合、2.3倍の誘導をそれでも生成することができ、リガンド非応答性リボスイッチの混合物からリガンド応答性リボスイッチを1つ回収する可能性を示している。
【0087】
上述のもの以外のアッセイについては、アッセイの感度を調べて選別されるサブライブラリのプールのサイズを決定する手引きを提供すべきである。
【0088】
実施例5
プールしたアプタマーに基づくリボスイッチのプラスミドライブラリの構築及び大きなリボスイッチライブラリの小さなスクリーニング可能なサブライブラリへの分割
手順
リボスイッチのプールしたプラスミドライブラリの構築
二本鎖DNA断片を生成するためにプラチナPfxキット(Invitrogen)を用いて、無作為化した塩基を伴ったアプタマー配列(配列の設計及び組成については実施例2を参照のこと)を含有するウルトラマーオリゴをPCRで増幅し、生成したPCR産物を4%アガロースゲル上で泳動した。153bpサイズのDNAをゲル精製(Qiagen)し、BsaI酵素(NEB)で消化した。次いでT4DNAリガーゼ(Roche)を用いてベクターの挿入物に対する1:5の比で実施例1に記載されているようにBsaI消化したDNA断片をBsaI消化したアクセプターベクターにライゲーションした(mDHFR-Luci-アクセプター)。製造元の指示書(Invitrogen)に従って、エレクトロMAX DH5α-Eコンピテント細胞をライゲーション産物で形質転換し、寒天プレート上に播いた。細菌コロニーをプールし、回収し、DNAを抽出してリボスイッチのプラスミドライブラリ(P1)を得た。
【0089】
類似のアプローチを用いて、アプタマーにおける5つの位置でのヌクレオチド塩基が無作為化されて合計1024の異なるアプタマー配列を生成する(Nが無作為化の位置を意味する)さらに小さなプラスミドリボスイッチライブラリ(P2)を生成した:GACTTCGGTCTCATCCAGAGAATGAAAAAAAAATCTTCAGTAGAAGGTAATGTATANNNGCGTGGATATGGCACGCNNGTTTCTACCGGGCACCGTAAATGTCCGACTACATTACGCACCATTCTAAAGAATAACAGTGAAGAGACCAGACGG(配列番号10)。
【0090】
化学的に適格なDH5αの形質転換
227pgのプラスミドDNAを用いて50μLのコンピテント細胞を形質転換して1:10比のプラスミドDNAと細菌細胞を得た。振盪せずに37℃で30分間インキュベートした後、形質転換した細胞を寒天プレート上に播き、96形式のミニプレップキット(Qiagen)を用いてDNA抽出のためにコロニーをプールし、回収してリボスイッチのプールしたプラスミドサブライブラリを得た。
【0091】
次世代配列決定(NGS)
二次または三次のリボスイッチサブライブラリに由来するプラスミドDNAを鋳型として用い、以下のプライマーを用いて無作為化アプタマー配列を含有するPCRアンプリコンを生成した:DHFR_F:5’-GACTTCGGTCTCATCCAGAGAATGAAAAAAAAATCTTCAGTAGAAGGTAATG-3’(配列番号11);IVS_R:5’-CCGTCTGGTCTCTTCACTGTTATTCTTTAGAATGGTGCG-3’(配列番号12)。PCR産物を、Illumina MiSeq 2×150bpのペアエンドプラットフォームを用いたNGSに供して各試料についておよそ700Kの読み取りを生成し、固有の配列の特定及び相対的存在量の算出のためにその後のバイオインフォマティクス解析に供した(Genewizによって提供されているサービス)。配列決定の実行から12以上の読み取りを示した配列を真の配列と見なす。
【0092】
結果
細胞系アッセイによってアプタマーをスクリーニングするために、アプタマーライブラリをmDHFR-Luci-アクセプターベクターにクローニングすることによってリボスイッチのプラスミドライブラリを生成した(
図5a)。生成された構築物は構築物xpt-G17と同じ構成の遺伝要素を含有し、唯一の差異はアプタマー配列にあった。我々は、実施例2に記載されているように生成されたアプタマーライブラリから始め、それは10
6の固有の配列を含む無作為化アプタマーライブラリである。当初のアプタマーライブラリの99.9%を超える再現を保証するために、アプタマーライブラリにおける配列の数の7.5倍である合計7.5×10
6のコロニーを寒天プレートから回収した。回収したコロニーから抽出したプラスミドDNAは10
6の固有のリボスイッチから成るプラスミドライブラリ(P1)を形成する。
【0093】
開発された細胞系アッセイを用いてスクリーニングするのに十分小さいサブライブラリにプラスミドライブラリを分割するために、少数の形質転換した細菌コロニーをプールし、DNAを抽出してリボスイッチのプラスミドサブライブラリを作製することが関与する
図5bにて要点が示されるような戦略を利用した。プラスミドライブラリを分割するこの過程を数回行って必要なサイズのサブライブラリを得ることができ、その際、単一の陽性事象(すなわち、特異的なアプタマー/リガンドの結合がレポーター遺伝子の発現をもたらすこと)を、ライブラリをスクリーニングするために開発された細胞系アッセイの感度に基づいて検出することができ、それぞれ一次、二次または三次のサブライブラリを生成する。サブライブラリのサイズは、n(サブライブラリ)=m(倍率表現)
*N(当初のライブラリのサイズ)/d(分割倍率)として算出された。「分割倍率」は得るサブライブラリの総数を表し、所望のような任意の数であることができる。ここで、我々は計算の容易さのために分割倍率として100を選択した。1回目の分割については、6×10
6のコロニーが得られたが、それは、99%を超える再現を得るために当初のプラスミドライブラリのリボスイッチの数(10
6)の6倍である。2回目の分割については、一次サブライブラリの1倍の表現が選択された。10
6のリボスイッチを伴うプラスミドライブラリについて我々は、N=10
6、m=6、d=100である(P1)を作り、各個々のサブライブラリのサイズはn=6×10
4である。合計6×10
6の細菌コロニーを100の個々の試験管に回収し、各個々の試験管からDNAを抽出し、リボスイッチの一次プラスミドサブライブラリ(P1S_001~P1S_100)を生成した。同じ戦略を用い、例としてサブライブラリP1S_001で出発して一次サブライブラリをP1S_001_001~P1S_001_100と名付けられた100のさらに小さい二次サブライブラリに分割した。こうして、2回の分割を行うことによって、それぞれ600のリボスイッチを伴う二次プラスミドサブライブラリを生成した。3回目の分割過程によってリボスイッチのサブライブラリをさらに分割して三次プラスミドサブライブラリを生成することができる。
【0094】
同じアプローチを使用して1024の固有のアプタマー配列を含有するプラスミドリボスイッチライブラリP2を分割した。合計5000コロニーの100部分を回収することによって100の一次サブライブラリP2S_001~P2S_100を生成し、各サブライブラリはおよそ50のリボスイッチを含有した。
【0095】
上記で生成したリボスイッチライブラリの組成及び品質を判定するために、各サブライブラリにて600のリボスイッチ配列を推定上含有するリボスイッチの二次プラスミドサブライブラリに対して次世代配列決定(NGS)を行った。4つの二次サブライブラリを無作為に選択し、その際、二次サブライブラリのうち2つは一次サブライブラリP1S_003から生成され、残りの2つの二次サブライブラリはそれぞれP1S_007及びP1S_048から生成された。
図5cに示すように、二次サブライブラリのそれぞれはおよそ500または600の固有の配列を含有し、二次サブライブラリを生成するために回収されたコロニーの数に一致する。NGSデータのさらなる解析は、同じ一次サブライブラリ(P1S_003)から生成された2つの二次サブライブラリ(P1S_003_004とP1S_003_041)の間で39の配列が両方のライブラリに含有されていることを示している(
図5d)。異なる一次サブライブラリP1S_003及びP1S_007に由来した2つの二次サブライブラリP1S_003_004とP1S_007_021を比較すると、3つの配列のみが両方のサブライブラリによって共有されている(
図5e)。これらの結果は、上述の戦略を用いて、哺乳類細胞系のスクリーニングができる所望の数の固有の配列を持つプラスミドリボスイッチのサブライブラリが生成されたことを示している。
【0096】
実施例6
選択したリガンドに対する新しいアプタマーについての哺乳類細胞系スクリーニング
実施例5に記載されているように、各プールにて60Kのリボスイッチを含む100の一次プラスミドサブライブラリ(P1S_001~P1S_100)を構築し、同じ戦略を用いて一次サブライブラリP1S_001をさらに分割することによってそれぞれ600のリボスイッチから成る100の二次プラスミドサブライブラリ(P1S_001_001~P1S_001_100)を生成した。プールしたライブラリを96穴形式に並べてハイスルースクリーニングを促進することができる。一次サブライブラリP1S_001~006ならびにP1S_001のサブライブラリに対して、当初のアプタマー配列に対するものである、試験リガンドとしてのグアニンに対する、実施例1に記載されているようなルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて予備選別を行った。一次サブライブラリまたは二次サブライブラリに由来する構築物によって生成されたルシフェラーゼ活性の基本レベルはxpt-G17構築物のそれとは有意に異なった(データは示さず)。これは選択された位置で塩基を無作為化することによるアプタマー配列における変化が終止コドン含有エキソンの包含/排除に様々な程度で影響を及ぼし、従ってルシフェラーゼの基底発現に影響を与えることを示唆している。グアニン処理に続いて、60Kの一次サブライブラリP1S_005で形質移入した細胞は未処理の細胞に比べてルシフェラーゼ活性の1.8倍の誘導を生成したが(
図6a)、リガンドとしてグアニンを使用した場合、ルシフェラーゼの2倍を超える誘導は見いだされなかった。しかしながら、100の二次サブライブラリのうち7つはグアニン処理の際、ルシフェラーゼ活性の2倍を超える誘導を生じ、サブライブラリP1S_001_075は7.8倍の誘導を生成した(
図6b)。実施例4に記載されている感度アッセイでは、500のリガンド非応答分子の間でxpt-G17リボスイッチが1つあった場合、6.3倍の誘導が検出された。この感度試験に基づいて、サブライブラリP1S_001_075のこの予備スクリーニングからの結果(7.8倍)は600のうちでxpt-G17と機能的に同等であるリボスイッチが1つある、または誘導されたルシフェラーゼ活性の合計がxpt-G17のそれに匹敵する幾つかの弱いリボスイッチがあることを示唆している。
【0097】
機能的なアプタマーを含有するリボスイッチに対する本発明の哺乳類細胞系スクリーニングの適用可能性をさらに実証し、所望のリガンドに応答する改善された活性を持つ新しいアプタマーを見いだすために、プラスミドリボスイッチライブラリP2のサブライブラリをNAD+による96穴形式でスクリーニングした。xpt-グアニンアプタマーにおける無作為化された位置でのヌクレオチド塩基をリボスイッチ活性の調整に結び付け、調整ボックスと名付けた(Stoddard,et al.J.Mol.Biol.2013,May,27;425(10):1596-611)。従って、それらの位置でのヌクレオチドの変化はリガンド処理に応答してリボスイッチ活性を変化させている配列を生成する可能性がある。グアニンの性質及びその生体内での低い適用可能性に起因して、可能性のある新しいアプタマーのためのリガンドとしてNAD+を選択した。リガンドのこの選択は、親xpt-G17リボスイッチに対してPrestwick化合物ライブラリをスクリーニングすること及びNAD+がグアニンリボスイッチを調節することができ、100μM濃度にておよそ40倍の誘導を生成することを見いだしたことに由来する上記の結果に基づいた。NAD+に対する改善されたリボスイッチ活性を有するアプタマー配列を生成する試みにおいて、我々は、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼを用いてP2(アプタマーにて上述の5つの位置でヌクレオチドの変化を有する)のサブライブラリを生成し、スクリーニングした。
図6cに示すように、それぞれおよそ50のリボスイッチの複数のサブライブラリが100μMのNAD+の処理に応答してルシフェラーゼ発現の10倍を超える誘導を生じ、サブライブラリの1つ、P2S_002は37倍の誘導を生成したのに対して単一のxpt-G17リボスイッチ構築物は同じ濃度でのNAD+処理に応答して32倍の誘導を示した。
【0098】
これらのスクリーニング結果は、ルシフェラーゼ発現の10倍を超える誘導を生じたサブライブラリにおけるおよそ50のリボスイッチの間で、ライブラリにおけるリボスイッチがすべてNAD+処理に応答することを想定すると、最低10倍の誘導を生じることができるリボスイッチがあることを示している。G17によって生成された誘導倍率よりも高い37倍の誘導を生じたサブライブラリP2S_002では、G17よりもはるかに良好に機能する少なくとも1つのリボスイッチがある。これをさらに証明するために、サブライブラリP2S_002に由来する96の単一構築物をスクリーニングした。
図6dに示すように、複数の構築物が誘導を失ったまたはG17より少ない誘導を生じたが、いくつかの単一構築物がG17構築物よりも高い誘導倍率を生じており、これは調整ボックスにおけるヌクレオチドの変化が細胞におけるリガンド処理に応答したリボスイッチ活性に劇的に影響を与えることを示している。このアプローチを用いて、我々はいくつかの異なる調整ボックスの配列(表2に示すような)を特定し、それによってリボスイッチはNAD+処理の際にG17構築物より高いルシフェラーゼの誘導倍率を生じ、複数のアプタマー配列が100倍を超える誘導を生じた。
【表2】
【0099】
新しい構築物の1つである#46をさらに調べた。
図6e及び
図6fに示すように、新しい構築物#46は用量依存的にNAD+処理に応答し、G17構築物と比べると、誘導したレポーター遺伝子発現のレベル及び誘導倍率にて優れた改善を示した。新しい構築物はグアニン処理に応答した改善された遺伝子調節も有する(データは示さず)。
【0100】
従って、本発明は、比較的大きなリボスイッチライブラリを、哺乳類細胞系のアッセイを介してスクリーニング可能であるさらに小さいリボスイッチサブライブラリに分割することができるアプローチを提供する。さらに、リボスイッチライブラリから、哺乳類細胞にて改善されたリボスイッチ活性を有する新しい配列が見いだされた。
【0101】
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