(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】PD-1軸阻害剤への応答を予測すること
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20220615BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220615BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20220615BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20220615BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220615BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20220615BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220615BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20220615BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220615BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220615BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220615BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220615BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z ZNA
G01N33/53 D
G01N33/50 P
G01N33/574 D
C12Q1/686 Z
C12Q1/6837 Z
A61K45/00
A61K45/06
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 111
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2019515638
(86)(22)【出願日】2017-09-25
(86)【国際出願番号】 EP2017074150
(87)【国際公開番号】W WO2018055145
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-02
(32)【優先日】2016-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】メユ, マウドレア
(72)【発明者】
【氏名】ローラー, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】シュイ, ウェイ
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/049641(WO,A1)
【文献】がん免疫療法のメカニズム解明と臨床への展開 がんと免疫,1版,株式会社南山堂,2015年,p.80、156~161、164
【文献】薬剤学,2014年,74(3),p.171
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
G01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単剤療法として抗PD-
L1抗体の有効量を含む療法に応答性である
、非小細胞肺がん及び腎細胞がんからなる群から選択されるがん
の患者を同定するインビトロの方法であって、がん患者から得た腫瘍組織試料において樹状細胞(DC)の存在度を判定することを含
み、DCの存在度が、XCR1、IRF8、BATF3及びFLT3からなる遺伝子の発現レベルによって特徴付けられ、前記遺伝子の発現レベルを参照レベルと比較することを更に含み、発現レベルの増加が、前記療法への応答性を示す、方法。
【請求項2】
発現レベルが、mRNA発現によって試料中で検出される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
発現レベルが
、qPCR、RT-qPCR、多重qPCR又はRT-qPCR、RNA-seq、マイクロアレイ解析
、SAGE、MassARRAY技術及びFISH、及びその組合せからなる群から選択される方法を使用して検出される、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項4】
抗PD-L1抗体が、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv及び(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である、請求項
1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
抗PD-L1抗体が、YW243.55.S70、MPDL3280A、MDX-1105及びMEDI4736からなる群から選択される、請求項
1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
腫瘍組織試料が、
抗PD-
L1抗体による療法の前に患者から得られ
た試料である、請求項1から
5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
非小細胞肺がん及び腎細胞がんからなる群から選択されるがん
の患者の治療における使用のための
抗PD-
L1抗体を含む薬学的組成物であって、患者は、請求項1から
6の何れか一項に記載の方法により、
単剤療法として抗PD-
L1抗体の有効量を含む療法に応答性であると判定される、薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗PD-L1抗体などのPD-1軸阻害剤に対するがん患者の応答を予測するためのバイオマーカーに関する。本明細書では、腫瘍組織試料中の樹状細胞(DC)の存在度を判定することによってPD-1軸阻害剤に応答性であるがん患者を同定する方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
DC及びマクロファージを含む骨髄細胞は、エフェクター細胞を教育し、生成するために、ナイーブT細胞の初回刺激を通して適応免疫応答を開始することにおいて重要である。専門の抗原提示細胞(APC)であるDCは、全てのリンパ系器官並びにほとんど全ての非リンパ系器官に生活する骨髄由来細胞である。末梢において病原体を感知した成熟DCは、高レベルのMHC(クラスI及びII)並びに共刺激分子を発現し、二次リンパ系器官に移動し、ナイーブT細胞を刺激して適応免疫を誘導することができる。
【0003】
他方では、多くの骨髄細胞サブセットは腫瘍微小環境に浸潤することができ、活性化状態によっては、それらは免疫抑制又は直接的殺腫瘍活性を通した腫瘍回避機構を提供する。様々なマーカーはDCの状態及びマクロファージ活性化を反映することができ、活性化受容体の1つの例はCD40タンパク質である。CD40受容体にアゴナイズする抗体は、腫瘍へのT細胞浸潤を誘導するためにDCを活性化することによって、及び腫瘍を死滅させるためにマクロファージを極性化することによって、前臨床と臨床の両方の場面において抗腫瘍作用を示した(Beatty等, 2011, Science, 331: 1612-6)。逆に、骨髄由来のサプレッサー細胞(MDSC)は、ヒトメラノーマで示されるように、いくつかの固形癌において免疫抑制応答を促進することによって腫瘍微小環境において負の役割を演ずることが確認された(Gorgun等, 2013, Blood, 121: 2975-87)。したがって、免疫抑制性環境がどのように発達して持続するかに関するより包括的な理解が、フルパワーの新しい免疫療法の成功を導くために決定的である。
【0004】
PD-1は、細胞死を経ているT細胞ハイブリドーマにおいて上方制御される遺伝子として1992年に発見された、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーである(Ishida等, 1992, EMBO J, 11: 3887-95)。PD-1は、活性化されたT、B及び骨髄細胞で主に見出される。PD-1の重要な負の調節機能は、Pdcd1-/-マウスの自己免疫傾向の表現型によって1999年に明らかにされた(Nishimura等, 1999, Immunity, 11: 141-51)。1999年に、PD-1の最初のリガンドPD-L1(B7-H1)が同定され(Dong等, 1999, Nat Med, 5: 1365-9)、続いて2001年にPD-L2(B7-DC)が同定された(Latchman等, 2001, Nat Immunol, 2: 261-8)。別の共刺激分子であるCD80(B7-1)は、同様にPD-L1と特異的に相互作用する(Butte等, 2007, Immunity, 27: 111-22)。PD-1は、受容体係合の後にリン酸化され、Src相同性2ドメイン含有チロシンホスファターゼ2を動員する、2つの免疫受容体チロシンに基づくモチーフを含有する。PD-1:PD-L1経路は、IL-2の生成を低減することによってT細胞増殖を阻害し、細胞周期に入ることができるT細胞の数並びにそれらの以降の分裂速度を制限する。PD-L1発現の上方制御はいくつかのヒト腫瘍型において記載されたが、それは、T細胞の上でPD-1と相互作用するPD-L1を乗っ取り、エフェクター機能を抑制する。これらの知見は、固形腫瘍の治療において成功したPD-1遮断の臨床適用につながった(Sharma等, 2015, Cell, 161: 205-14)。それにもかかわらず、これまでは、マイナーなサブセット(<30%)の患者だけが、未知の機構によりそのような療法の恩恵を受ける(Zou等, 2016, Sci Transl Med, 8: 328rv4)。
【0005】
したがって、PD-1へのPD-L1の結合を阻害する抗PD-L1抗体などのPD-1軸阻害剤による療法に対して、どの患者が特に良好に応答するか判定するための方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
リンパ球におけるPD-1の役割の集中研究にもかかわらず、骨髄細胞、特にDCの上でのPD-1/PD-L1経路の分子調節、及び腫瘍免疫の調節におけるこの経路遮断の意義を解くための研究はほとんどされていない。活性化シグナルによっては、DCのある特定の部分母集団は、T細胞寛容性を確立、維持することによって免疫応答を抑制することができる(Dhodapkar等, 2001, J Exp Med, 193: 233-8;Steinman等, 2003, Annu Rev Immunol, 21: 685-711;Jonuleit等, 2001., Trends Immunol, 22: 394-400)。免疫抑制DCは、腫瘍微小環境において見出された(Scarlett等, 2012., J Exp Med, 209: 495-506)。興味深いことに、腫瘍浸潤性DCは、卵巣がんの進行の過程でPD-1陽性になり(Krempski等, 2011., J Immunol, 186: 6905-13)、PD-1が核内因子-カッパB依存性活性化をブロックし、DCを免疫抑制性にした可能性があるようである(Karyampudi等, 2016, Cancer Res, 76: 239-50)。初期の研究は、ヒトDCの上でPD-L1をインビトロでブロッキングすることが、T細胞免疫を強化したことを示した(Brown等, 2003, J Immunol, 170: 1257-66)。PD-1は、マウスのDCをインビボで負調節することが示唆された(Krempski等. 2011;Park等, 2014, J Leukoc Biol, 95: 621-9;Yao等, 2009, Blood, 113: 5811-8)。PD-L1がCD80及びPD-1の両方に結合し(Keir等, 2008, Annu Rev Immunol, 26: 677-704)、これらの3つの全ての受容体/リガンドをDCが同時に発現するならば、PD-1/PD-L1が制御された形で調節され、したがってこの経路を標的にする免疫療法が、DC機能及び/又は下流T細胞系統発達に影響する他の骨髄細胞サブセットをモジュレートすることによる、まだ正当に評価されていない作用機序を有する可能性があると本発明者らは仮定した。
【0007】
本明細書において、DCが強化された抗腫瘍免疫を可能にするPD-L1遮断の一次標的であるという証拠が提示される。ヒトDCがPD-1とPD-L1の両方を発現し、PD-1はDCによる活性化の後に負調節されることが示される。更に、PD-L1遮断はDCを直接的に活性化し、ヒトのインビトロの場面と担がんマウスの両方においてT細胞を活性化する、強化された能力をそれらに取得させる。腫瘍が確立されているマウスにおけるDCの除去は、PD-L1遮断治療への応答障害を示し、PD-L1遮断媒介抗腫瘍免疫へのDCの直接的な寄与を示唆した。更に、抗PD-L1抗体アテゾリズマブによる治療を受けた、腎細胞癌を有する患者からのベースラインの腫瘍生検の分析は、DCの発達及び機能に関係したより高い遺伝子発現を有する患者が、より低い発現を有する者と比較してかなりの生存利点を有することを示した。したがって、PD-L1遮断は抗腫瘍免疫を強化するためにDCを直接的に標的にすることをデータは裏付ける。腫瘍組織における機能的DCの存在度は、PD-L1遮断治療などのPD-1軸阻害剤による療法に応答したより優れた臨床転帰の予測因子である。
【0008】
本明細書において、DCの成熟の後にPD-1発現が下方制御されることが更に実証される。しかし、PD-L1発現が増加し、それはDCの表面でのCD80へのPD-L1の結合につながり、CD80を隔離し、T細胞への共刺激のためのCD28へのCD80の結合を阻止する。PD-L1抗体の投与はCD80の隔離を軽減し、CD80/CD28相互作用を通して抗がんT細胞の更なる共刺激を可能にする。これは、PD-L1/PD-1経路がどのように腫瘍においてDCを生物学的に阻害するかの最初の実証であり、抗がんT細胞の初回刺激及び活性化における免疫チェックポイントとして機能する。
【0009】
したがって、本明細書において、がん患者におけるPD-1軸阻害剤への臨床応答を予測する方法、及びPD-1軸阻害剤に応答する可能性があるがん患者の治療における使用のためのPD1軸阻害剤を含む薬学的組成物が提供される。
【0010】
以下の番号付けされた段落(パラグラフ)は、本発明の一部の実施態様を規定する。
1. PD-1軸阻害剤の有効量を含む療法に応答性であるがん患者を同定するインビトロの方法であって、がん患者から得た腫瘍組織試料において樹状細胞(DC)の存在度を判定することを含む方法。
2. DCの存在度が、XCR1、IRF8、BATF3及びFLT3からなる群から選択される一又は複数の遺伝子の発現レベルによって特徴付けられる、段落1の方法。
3. 一又は複数の遺伝子の発現レベルを参照レベルと比較するステップを更に含み、発現レベルの増加は、PD-1軸阻害剤を含む療法への応答を示す、段落2の方法。
4. 発現レベルが、タンパク質発現によって試料中で検出される、段落2又は3の方法。
5. 発現レベルが、mRNA発現によって試料中で検出される、段落2又は3の方法。
6. 発現レベルが、FACS、ウェスタンブロット、ELISA、免疫沈降、免疫組織化学、免疫蛍光法、放射線免疫検定法、免疫検出方法、質量分析、HPLC、qPCR、RT-qPCR、多重qPCR又はRT-qPCR、RNA-seq、マイクロアレイ解析、ナノストリング、SAGE、MassARRAY技術及びFISH、及びその組合せからなる群から選択される方法を使用して検出される、段落2から5の何れか一つの方法。
7. がんが、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、膵がん、胃癌、膀胱がん、食道がん、中皮腫、メラノーマ、頭頚部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、膠芽腫、子宮頸がん、胸腺癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉腫、メルケル細胞がん及び他の血液悪性腫瘍からなる群から選択される、段落1から6の何れか一つに記載の方法。
8. 療法が単剤療法としてPD-1軸阻害剤を含む、段落1から7の何れか一つの方法。
9. 療法が、細胞傷害性剤、化学療法剤、増殖阻害剤、放射線療法剤及び抗血管新生剤、及びその組合せからなる群から選択される第2の薬剤の有効量を更に含む、段落1から7の何れか一つに記載の方法。
10. PD-1軸阻害剤がPD-1結合性アンタゴニストである、段落1から9の何れか一つの方法。
11. PD-1結合性アンタゴニストがPD-L1へのPD-1の結合を阻害する、段落10の方法。
12. PD-1結合性アンタゴニストが抗PD-1抗体である、段落10又は11の方法。
13. PD-1軸阻害剤がPD-L1結合性アンタゴニストである、段落1から9の何れか一つの方法。
14. PD-L1結合性アンタゴニストがPD-1へのPD-L1の結合を阻害する、段落13の方法。
15. PD-L1結合性アンタゴニストが抗PD-L1抗体である、段落13又は14の方法。
16. 抗PD-L1抗体が、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv及び(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である、段落15の方法。
17. 抗PD-L1抗体が、YW243.55.S70、MPDL3280A、MDX-1105及びMEDI4736からなる群から選択される、段落15又は16の方法。
18. 腫瘍組織試料が、PD-1軸阻害剤による療法の前に患者から得られる試料である、段落1から17の何れか一つの方法。
19. がん患者の治療における使用のためのPD-1軸阻害剤を含む薬学的組成物であって、患者は、段落1から18の何れか一つの方法によるPD-1軸阻害剤の有効量を含む療法に応答性であると判定される、薬学的組成物。
【0011】
一部の実施態様では、本発明は、PD-1軸阻害剤の有効量を含む療法によってがん患者がより適切に治療されるかどうか判定する方法であって、がん患者から得た腫瘍組織試料においてDCの存在度を判定することを含む方法に関する。
【0012】
一部の実施態様では、本発明は、がん患者においてPD-1軸阻害剤の有効量を含む療法の治療効果を向上させる方法であって、がん患者から得た腫瘍組織試料においてDCの存在度を判定することを含む方法に関する。
【0013】
一部の実施態様では、本発明は、がん患者を治療する方法に関する。本方法は、PD-1軸阻害剤の有効量を含む療法をがん患者に投与することを含み、患者から得た腫瘍組織試料においてDCの存在度を判定することを含む。
【0014】
これら及び他の実施態様は、下の詳細な記載において更に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ヒトDCの上でのPD-1及びPD-L1発現の免疫染色を示す図である。インビトロで生成されたDCはPD-1とPD-L1の両方を発現し(
図1A)、PD-1及びPD-L1の発現プロファイルは負に相関している(
図1B)。
【
図2】DCの成熟の後にPD-1は下方制御され、PD-L1は上方制御されることを示す図である(
図2A及び2B)。
【
図3】未成熟のDC(iDC)、成熟したDC(mDC)及び免疫寛容原性DC(tDC)の免疫染色の結果(
図3A)並びに異なるDCと共培養したT細胞におけるT細胞増殖のフローサイトメトリー測定(
図3B)を示す図である。これらの図は、PD-1の発現プロファイルがT細胞刺激能力と負に相関することを示す。
【
図4】抗PD-L1抗体とプレインキュベートしたDCが強化されたT細胞刺激能力を獲得し(
図4A)、IFN-γ生成の増加が付随した(
図4B)ことを示す図である。
【
図5A】PD-L1抗体を受けた担がんマウスが、ビヒクル群と比較して脾臓及び流入領域リンパ節(DLN)においてDCの頻度の増加を示すことを示している。
【
図5B-C】PD-L1抗体を受けた担がんマウスが、ビヒクル群と比較して脾臓及び流入領域リンパ節(DLN)においてDCの頻度の増加を示すこと(B)、及びDC(CD11c+細胞をゲーティング)は活性化/成熟のマーカーCD86のより高い発現を示したこと(C)を示している。
【
図6】
図6AはCD11c-DTRマウスを使用したインビボ研究の実験計画を示し、ここで、CD11c
+DCは抗PD-L1抗体の治療の前のジフテリア毒素(DT)の投与によって減少させることができる。
図6Bは、抗PD-L1抗体媒介腫瘍増殖阻害が、DTによってDCを減少させたマウスにおいて損なわれることを示す。
【
図7】腎細胞癌の患者における、アテゾリズマブへの臨床応答を要約する表である。
【
図8】RCC患者における、カプランマイアー生存曲線を示す図である。DC発達に関連した遺伝子の発現は、PD-1軸阻害剤アテゾリズマブによる生存利点と相関する。
【
図9】DCに関連した遺伝子のリスト及びカプランマイアー生存曲線に対する相関応答を要約する表である。
【
図10】遺伝子:IRF8、FLT3、BATF3及びXCR1を含む累積DC遺伝子シグネチャーの発現に基づくカプランマイアー生存曲線を示す図である。より高いDCシグネチャースコアは、RCC患者においてPD-1軸阻害剤アテゾリズマブへの臨床上の有益性と相関する。
【
図11】DCに関連した遺伝子シグネチャーが、アテゾリズマブで治療したNSCLC患者における生存と相関することを示す図である。
【
図12】DCに関連した遺伝子シグネチャーが、アテゾリズマブで治療したNSCLCを有するPD-L1
+患者における生存と相関することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
用語「PD-1軸阻害剤」は、PD-1シグナル伝達軸でのシグナル伝達からもたらされるT細胞機能不全を取り除き、結果としてT細胞機能、例えば増殖、サイトカイン生成、標的細胞殺滅を回復又は増強するために、その結合パートナーの一又は複数とのPD-1軸結合パートナーの相互作用を阻害する分子である。本明細書で用いるように、PD-1軸阻害剤には、PD-1結合性アンタゴニスト及びPD-L1結合性アンタゴニストが含まれる。
【0017】
用語「PD-1結合性アンタゴニスト」は、PD-L1、PD-L2などのその結合パートナーの一又は複数とのPD-1の相互作用からもたらされるシグナル伝達を低下、ブロック、阻害、抑止するか又はそれに干渉する分子である。一部の実施態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD-1の結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、PD-L1及び/又はPD-L2へのPD-1の結合を阻害する。例えば、PD-1結合性アンタゴニストには、PD-L1及び/又はPD-L2とのPD-1の相互作用からもたらされるシグナル伝達を低下、ブロック、阻害、抑止するか又はそれに干渉する、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド及び他の分子が含まれる。一実施態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、機能不全のT細胞をより非機能不全でないようにするために、例えば抗原認識に対するエフェクター応答を強化するように、Tリンパ球の上で発現される細胞表面タンパク質により若しくはそれを通して媒介される負の共刺激シグナル、PD-1を通して媒介されるシグナル伝達を低減する。一部の実施態様では、PD-1結合性アンタゴニストは抗PD-1抗体である。具体的な態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、本明細書に記載されるMDX-1106である。別の具体的な態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、本明細書に記載されるMerck3745である。
【0018】
用語「PD-L1結合性アンタゴニスト」は、PD-1、B7-1などのその結合パートナーの一又は複数とのPD-L1の相互作用からもたらされるシグナル伝達を低下、ブロック、阻害、抑止するか又はそれに干渉する分子である。一部の実施態様では、PD-L1結合性アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD-L1の結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-L1結合性アンタゴニストは、PD-1及び/又はB7-1へのPD-L1の結合を阻害する。一部の実施態様では、PD-L1結合性アンタゴニストには、PD-1及びB7-1などのその結合パートナーの一又は複数とのPD-L1の相互作用からもたらされるシグナル伝達を低減、ブロック、阻害、抑止又は干渉する、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド及び他の分子が含まれる。一実施態様では、PD-L1結合性アンタゴニストは、機能不全のT細胞をより機能不全でないようにするために、例えば抗原認識に対するエフェクター応答を強化するように、Tリンパ球の上で発現される細胞表面タンパク質により若しくはそれを通して媒介される負の共刺激シグナル、PD-L1を通して媒介されるシグナル伝達を低減する。一部の実施態様では、PD-L1結合性アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるYW243.55.S70である。別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMDX-1105である。更に別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMPDL3280Aである。
【0019】
本明細書において、用語「抗体」は最も広い意味で用いられ、様々な抗体構造物、例えば限定されずにモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば二重特異的抗体)、及び、それらが所望の抗原結合活性を示す限り抗体断片を包含する。
【0020】
用語「抗PD-L1抗体」及び「PD-L1に結合する抗体」は、PD-L1を標的にすることにおいて診断及び/又は治療用の薬剤として抗体が有益であるのに十分な親和性でPD-L1に結合することが可能な抗体を指す。一実施態様では、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)で測定したときの、無関係な非PD-L1タンパク質への抗PD-L1抗体の結合の程度は、PD-L1への抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施態様では、抗PD-L1抗体は、異なる種からのPD-L1の間で保存されるPD-L1のエピトープに結合する。
【0021】
「ブロッキング」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物活性を阻害又は低減するものである。好ましいブロッキング抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物活性を実質的又は完全に阻害する。
【0022】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、限定されずにFv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);及び抗体断片から形成される多重特異的抗体が含まれる。
【0023】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいてその抗原への参照抗体の結合を50%以上ブロックする抗体を指し、反対に、参照抗体は競合アッセイにおいてその抗原へのその抗体の結合を50%以上ブロックする。例示的な競合アッセイは本明細書で提供される。
【0024】
用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部は特定の供給源又は種に由来するが、重鎖及び/又は軽鎖の残部は異なる供給源又は種に由来する抗体を指す。
【0025】
本明細書において、用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「完全な抗体」は互換的に使用され、天然の抗体構造に実質的に類似した構造を有するか、本明細書に規定されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
【0026】
本明細書で用いられる用語「モノクローナル抗体」は、可能な変異体抗体、例えば天然に存在する突然変異を含有するか、モノクローナル抗体調製物の生成の間に生じる、一般に少量存在する変異体を除いて、実質的に均一な抗体の集団、すなわち集団を構成する個々の抗体が同一であり及び/又は同じエピトープに結合する集団から得られる抗体を指す。異なる決定因子(エピトープ)に対する異なる抗体を一般的に含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定因子に向けられる。したがって、修飾子「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られるという抗体の性格を示し、いかなる特定の方法による抗体の生成を必要とするものと解釈するべきでない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、様々な技術、例えば限定されずにハイブリドーマ方法、組換えDNA方法、ファージディスプレイ方法及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法によって作製することができ、そのような方法及びモノクローナル抗体を作製するための他の例示的な方法は本明細書に記載されている。
【0027】
「ヒト抗体」は、ヒト若しくはヒト細胞によって生成されるか、又はヒト抗体レパートリー若しくは他のヒト抗体をコードする配列を利用するヒト以外の供給源に由来する抗体のそれに対応するアミノ酸配列を有するものである。ヒト抗体のこの定義は、ヒト以外の抗原に結合する残基を含むヒト化抗体を特異的に排除する。
【0028】
「ヒト化」抗体は、ヒト以外のHVRからのアミノ酸残基及びヒトFRからのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、及び一般的に2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、そこにおいて、HVR(例えばCDR)の全て又は実質的に全てはヒト以外の抗体のそれらに対応し、FRの全て又は実質的に全てはヒト抗体のそれらに対応する。ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を任意選択的に含むことができる。抗体、例えばヒト以外の抗体の「ヒト化形」は、ヒト化を経た抗体を指す。
【0029】
用語「検出」には、直接的及び間接的な検出を含む、任意の検出手段が含まれる。
【0030】
本明細書で用いられる用語「バイオマーカー」は、試料中で検出することができる指標、例えば、予測的、診断的及び/又は予後診断的指標を指す。バイオマーカーは、ある特定の分子的、病理的、組織学的及び/又は臨床的特性によって特徴付けられる特定のサブタイプの疾患又は障害(例えば、がん)の指標の役割をすることができる。一部の実施態様では、バイオマーカーは遺伝子である。バイオマーカーには、限定されずに、ポリヌクレオチド(例えば、DNA及び/又はRNA)、ポリヌクレオチドコピー数の変化(例えば、DNAコピー数)、ポリペプチド、ポリペプチド及びポリヌクレオチドの修飾(例えば翻訳後修飾)、炭水化物、及び/又は糖脂質をベースとした分子マーカーが含まれる。
【0031】
本明細書において用語「バイオマーカーシグネチャー」、「シグネチャー」、「バイオマーカー発現シグネチャー」又は「発現シグネチャー」は互換的に使用され、その発現が指標である、例えば予測的、診断的及び/又は予後診断的指標であるバイオマーカーの1つ又は組合せを指す。バイオマーカーシグネチャーは、ある特定の分子的、病理的、組織学的及び/又は臨床的特性によって特徴付けられる特定のサブタイプの疾患又は障害(例えば、がん)の指標の役割をすることができる。一部の実施態様では、バイオマーカーシグネチャーは、「遺伝子シグネチャー」である。用語「遺伝子シグネチャー」は「遺伝子発現シグネチャー」と互換的に使用され、その発現が指標である、例えば予測的、診断的及び/又は予後診断的指標であるポリヌクレオチドの1つ又は組合せを指す。一部の実施態様では、バイオマーカーシグネチャーは、「タンパク質シグネチャー」である。用語「タンパク質シグネチャー」は「タンパク質発現シグネチャー」と互換的に使用され、その発現が指標である、例えば予測的、診断的及び/又は予後診断的指標であるポリペプチドの1つ又は組合せを指す。
【0032】
個体への臨床有益性の増加に関連したバイオマーカーの「量」又は「レベル」は、生物学的試料中で検出可能なレベルである。これらは、当業技術者に公知であり、本明細書に開示されてもいる方法によって測定することができる。評価されるバイオマーカーの発現レベル又は量は、治療への応答を判定するために使用することができる。
【0033】
用語「発現のレベル」又は「発現レベル」は一般に互換的に使用され、生物学的試料中のバイオマーカーの量を一般に指す。「発現」は、情報(例えば、遺伝子によってコードされた及び/又は後成的な)が、細胞中に存在して作動する構造に変換される過程を一般に指す。したがって、本明細書で用いるように、「発現」は、ポリヌクレオチドへの転写、ポリペプチドへの翻訳、又はポリヌクレオチド及び/若しくはポリペプチドの修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)でさえも指すことができる。それらが選択的スプライシング若しくは分解された転写産物によって、又はポリペプチドの例えばタンパク質分解による翻訳後プロセシングから生成される転写産物を起源とするかどうかにかかわらず、転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたポリペプチド又はポリヌクレオチド及び/若しくはポリペプチドの修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)の断片も発現されたとみなすものとする。「発現遺伝子」には、mRNAとしてポリヌクレオチドに転写され、次にポリペプチドに翻訳されるもの、及びRNAに転写されるが、ポリペプチドに翻訳されないもの(例えば、転移及びリボソームRNA)も含まれる。
【0034】
本明細書では、用語「参照レベル」は、既定値を指す。当業者が認めるように、参照レベルは、例えば特異性及び/又は感度に関する必要条件を満たすように前もって決められ、設定される。これらの必要条件は、例えば規制本体によって異なることができる。例えば、アッセイの感度又は特異性は、それぞれある特定の限界、例えば80%、90%又は95%に設定しなければならないものであってもよい。これらの必要条件は、正又は負の予測値によって規定することもできる。それにもかかわらず、本発明で与えられる教示に基づき、それらの必要条件を満たす参照レベルに到達することが常に可能になる。一実施態様では、参照レベルは、健康な個体において決定される。一実施態様では、参照値は、患者が属する疾病において前もって決められている。ある特定の実施態様では、参照レベルは、例えば、調査する疾病における値の全体的分布の25%から75%の間の任意の百分率に設定することができる。他の実施態様では、参照レベルは、例えば、調査する疾病における値の全体的分布から決定される、中央値、三分位値又は四分位値に設定することができる。一実施態様では、参照レベルは、調査する疾病における値の全体的分布から決定される中央値に設定される。
【0035】
ある特定の実施態様では、用語「増加」、「増加した」又は「より上の」は、参照レベルより上のレベルを指す。
【0036】
本明細書で用いるように、「増幅」は、所望の配列の複数のコピーを生成する過程を一般に指す。「複数のコピー」とは、少なくとも2コピー数を意味する。「コピー」は、必ずしも鋳型配列との完全な配列相補性又は同一性を意味するとは限らない。例えば、コピーは、ヌクレオチドアナログ、例えばデオキシイノシン、意図的な配列改変(鋳型とハイブリダイゼーションが可能であるが相補的でない配列を含むプライマーを通して導入された配列改変など)、及び/又は増幅の間に起こる配列の誤りを含むことができる。
【0037】
用語「多重PCR」は、単一の反応で1を超えるDNA配列を増幅するために複数のプライマーセットを使用して、単一の供給源(例えば、個体)から得られる核酸で実行される単一のPCR反応を指す。
【0038】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者が容易に判定でき、一般に、プローブ長、洗浄温度及び塩濃度に依存する実験的計算である。一般に、より長いプローブは適切なアニーリングのためにより高い温度を必要とするが、より短いプローブはより低い温度を必要とする。ハイブリダイゼーションは、それらの融点より下の環境に相補鎖が存在するときにリアニールする、変性DNAの能力に一般に依存する。プローブとハイブリダイゼーションが可能な配列の間の所望の相同性の程度がより高いほど、使用することができる相対温度はより高い。結果として、より高い相対温度は反応条件をよりストリンジェントにする傾向があり、より低い温度はよりそうでないということである。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーの追加の詳細及び説明については、Ausubel等、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley Interscience Publishers、(1995)を参照する。
【0039】
本明細書に規定される「ストリンジェントな条件」又は「高ストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄のために低いイオン強度及び高い温度、例えば50℃で0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを用いるもの;(2)ハイブリダイゼーションの間に変性剤、例えばホルムアミド、例えば50(v/v)%ホルムアミドを、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含むpH6.5の50mMリン酸ナトリウムバッファーと42℃で用いるもの;又は(3)42℃での50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MNaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理サーモン精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS及び10%硫酸デキストランを用いる溶液中での一晩のハイブリダイゼーションと、42℃での0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中での10分間の洗浄と、続く55℃でのEDTAを含有する0.1×SSCからなる10分間の高ストリンジェンシー洗浄によって識別することができる。
【0040】
「中程度ストリンジェント条件」は、Sambrook等、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、New York:Cold Spring Harbor Press、1989、によって記載される通りに識別することができ、上記のものよりストリンジェントでない洗浄液及びハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度及びSDS%)の使用を含む。中程度ストリンジェント条件の例は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン及び20mg/mlの変性した剪断サーモン精子DNAを含む溶液中での37℃で一晩のインキュベーションと、続く約37-50℃の1×SSC中でのフィルターの洗浄である。当業者は、プローブ長などの因子に適合するために、必要に応じて温度、イオン強度などを調整する方法を認める。
【0041】
本明細書で用いられる「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」の技術は、1987年7月28日に公布された米国特許第4683195号に記載されている通り、核酸、RNA及び/又はDNAの微量の特異的断片が増幅される手順を一般に指す。一般に、オリゴヌクレオチドプライマーが設計できるように、対象領域の末端又はそれ以上からの配列情報を入手する必要性がある。これらのプライマーは、増幅される鋳型の反対側の鎖に配列が同一であるか類似している。2つのプライマーの5’末端のヌクレオチドは、増幅する材料の末端と一致することができる。PCRは、全ゲノムDNAから特異的RNA配列、特異的DNA配列を、及び全細胞性RNA、バクテリオファージ又はプラスミド配列などから転写されたcDNAを増幅するために使用することができる。一般に、Mullis等、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.,51:263(1987);Erlich編、PCR Technology、(Stockton Press、NY、1989)を参照。本明細書で用いるように、PCRは、プライマーとして公知の核酸(DNA又はRNA)の使用を含む、核酸試験試料を増幅するための核酸ポリメラーゼ反応方法の唯一でないが1つの例であると考えられ、核酸の特異的断片を増幅若しくは生成するために、又は特定の核酸に相補的である核酸の特異的断片を増幅若しくは生成するために核酸ポリメラーゼを利用する。
【0042】
「定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応」又は「qRT-PCR」は、PCR生成物の量がPCR反応の各段階で測定されるPCRの形を指す。この技術は、Cronin等、Am.J.Pathol.164(1):35-42(2004);及びMa等、Cancer Cell 5:607-616(2004)を含む様々な刊行物に記載されている。
【0043】
用語「マイクロアレイ」は、基質上のハイブリダイゼーションが可能なアレイ要素、好ましくはポリヌクレオチドプローブの順序づけられた配置を指す。
【0044】
単数形又は複数形で使用されるとき、用語「ポリヌクレオチド」は任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを一般に指し、それらは非修飾のRNA若しくはDNA又は修飾されたRNA若しくはDNAであってもよい。したがって例えば、本明細書に規定されるポリヌクレオチドには、限定されずに、一本鎖及び二本鎖のDNA、一本鎖及び二本鎖の領域を含むDNA、一本鎖及び二本鎖のRNA、並びに一本鎖及び二本鎖の領域を含むRNA、一本鎖であるかより一般的には二本鎖であってもよい、又は一本鎖及び二本鎖の領域を含むことができるDNA及びRNAを含むハイブリッド分子が含まれる。更に、本明細書で用いられる用語「ポリヌクレオチド」は、RNA若しくはDNA又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖の領域を指す。そのような領域中の鎖は、同じ分子又は異なる分子からであってもよい。領域は分子の一又は複数の全てを含むことができるが、より一般的には分子のいくつかの領域だけを含むことができる。三重螺旋領域の分子の1つは、しばしばオリゴヌクレオチドである。用語「ポリヌクレオチド」には、具体的にはcDNAが含まれる。本用語には、一又は複数の修飾塩基を含有するDNA(cDNAを含む)及びRNAが含まれる。したがって、安定性のために又は他の理由のために修飾された骨格を有するDNA又はRNAは、本明細書においてその用語が意図される「ポリヌクレオチド」である。更に、異常な塩基、例えばイノシン又は修飾塩基、例えばトリチウム化された塩基を含むDNA又はRNAは、本明細書に規定される用語「ポリヌクレオチド」の中に含まれる。一般に、用語「ポリヌクレオチド」は、非修飾のポリヌクレオチドの全ての化学的、酵素的及び/又は代謝的修飾形に加えて、ウイルス並びに単純及び複雑な細胞を含む細胞の特性を示すDNA及びRNAの化学形態を包含する。
【0045】
用語「オリゴヌクレオチド」は、比較的短いポリヌクレオチド、例えば限定されずに一本鎖のデオキシリボヌクレオチド、一本鎖又は二本鎖のリボヌクレオチド、RNA:DNAハイブリッド及び二本鎖のDNAを指す。オリゴヌクレオチド、例えば一本鎖DNAプローブオリゴヌクレオチドは、化学的方法によって、例えば市販されている自動オリゴヌクレオチド合成装置を用いてしばしば合成される。しかし、オリゴヌクレオチドは、インビトロ組換えDNA媒介技術を含む様々な他の方法によって、並びに細胞及び生物体でのDNAの発現によって作製することができる。
【0046】
本明細書において用語「診断」は、分子的若しくは病的な状態、疾患又は状況(例えば、がん)の同定又は分類を指すために使用される。例えば、「診断」は特定の型のがんの同定を指すことができる。「診断」は、例えば組織病理学的基準による、又は分子的特徴によるがんの特定のサブタイプの分類を指すこともできる(例えば、バイオマーカー(例えば、特定の遺伝子又は前記遺伝子によってコードされるタンパク質)の1つ又は組合せの発現によって特徴付けられるサブタイプ)。
【0047】
本明細書で用いる用語「試料」は、例えば物理的、生化学的、化学的及び/又は生理的特徴に基づいて特徴付ける及び/又は同定する細胞性及び/又は他の分子実体を含有する関心の対象及び/又は個体から得られるかそれに由来する組成物を指す。例えば、語句「疾患試料」及びその変形は、特徴付ける細胞性の及び/又は分子的実体を含有することが予想されるか公知である関心の対象から得られる任意の試料を指す。試料には、限定されずに、一次若しくは培養された細胞又は細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、小胞液、精液、羊水、ミルク、全血、血液由来細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物及び組織培養培地、組織抽出物、例えばホモジナイズされた組織、腫瘍組織、細胞抽出物、及びその組合せが含まれる。
【0048】
「組織試料」又は「細胞試料」は、対象又は個体の組織から得られた類似の細胞の集合を意味する。組織又は細胞試料の供給源は、新鮮な凍結及び/又は保存された器官、組織試料、生検及び/又は吸引液からの固体組織;血液又は血漿などの任意の血液成分;体液、例えば脳脊髄液、羊水、腹水又は間質液;対象の妊娠又は発達期間中の任意の時期からの細胞であってもよい。組織試料は、一次若しくは培養された細胞又は細胞株であってもよい。任意選択的に、組織又は細胞試料は、疾患組織/器官から得られる。組織試料は、防腐剤、抗凝固薬、バッファー、固定剤、栄養素、抗生物質などの天然において組織と本来混合していない化合物を含有することができる。
【0049】
本明細書で用いるように、「参照試料」、「参照細胞」、「参照組織」、「コントロール試料」、「コントロール細胞」又は「コントロール組織」は、比較目的のために使用される試料、細胞、組織、標準又はレベルを指す。一実施態様では、参照試料、参照細胞、参照組織、コントロール試料、コントロール細胞又はコントロール組織は、同じ対象又は個体の身体の健康な及び/又は非疾患性部分(例えば、組織又は細胞)から得られる。例えば、病気に罹っている細胞又は組織に隣接している健康な及び/又は非疾患性細胞又は組織(例えば、腫瘍に隣接した細胞又は組織)。別の実施態様では、参照試料は同じ対象又は個体の身体の未治療の組織及び/又は細胞から得られる。更に別の実施態様では、参照試料、参照細胞、参照組織、コントロール試料、コントロール細胞又はコントロール組織は、当該対象又は個体ではない個体の身体の健康な及び/又は非疾患性部分(例えば、組織又は細胞)から得られる。更に別の実施態様では、参照試料、参照細胞、参照組織、コントロール試料、コントロール細胞又はコントロール組織は、当該対象又は個体ではない個体の身体の未治療の組織及び/又は細胞から得られる。
【0050】
本明細書の目的のために、組織試料の「切片」は、組織試料の単一の部分又は断片、例えば組織試料から切り取られた組織又は細胞の薄切片を意味する。組織試料の同じ切片を形態学的及び分子的レベルで分析することができるか、又はポリペプチド及びポリヌクレオチドの両方に関して分析することができるものと理解される場合には、組織試料の複数の切片をとり、分析にかけることができるものと理解される。
【0051】
「相関する」又は「相関している」は、どんな形であれ、第1の分析又はプロトコールの成績及び/又は結果を、第2の分析又はプロトコールの成績及び/又は結果と比較することを意味する。例えば、第1の分析若しくはプロトコールの結果を第2のプロトコールの実行で使用することができ、及び/又は、第2の分析若しくはプロトコールを実施するべきであるかどうか判定するために第1の分析若しくはプロトコールの結果を使用することができる。ポリペプチドの分析又はプロトコールの実施態様に関して、特定の治療レジメンを実施するべきであるかどうか判定するために、ポリペプチド発現の分析又はプロトコールの結果を使用することができる。ポリヌクレオチドの分析又はプロトコールの実施態様に関して、特定の治療レジメンを実施するべきであるかどうか判定するために、ポリヌクレオチド発現の分析又はプロトコールの結果を使用することができる。
【0052】
「個体の応答」又は「応答」は、個体への有益性を示す任意のエンドポイント、例えば限定されずに、(1)減速及び完全な停止を含む疾患進行(例えば、がん進行)のある程度の阻害;(2)腫瘍サイズの縮小;(3)隣接した末梢器官及び/又は組織へのがん細胞浸潤の阻害(すなわち、低減、減速又は完全な阻止);(4)転移の阻害(すなわち、低減、減速又は完全な阻止);(5)疾患又は障害(例えば、がん)に伴う一又は複数の症状のある程度の軽減;(6)全生存期間及び無増悪生存期間を含む生存期間の長さの増加又は延長;及び/又は(7)治療後の所与の時点での死亡率の低下を使用して評価することができる。
【0053】
医薬による治療に対する患者の「有効応答」又は患者の「応答性」及び類似の言い回しは、がんなどの疾患又は障害の危険があるかそれを患っている患者に付与される臨床的又は治療的な有益性を指す。一実施態様では、そのような有益性には、以下の任意の一又は複数が含まれる:生存期間(全生存期間及び無増悪生存期間を含む)を延長すること;客観的な応答(完全寛解又は部分寛解を含む)をもたらすこと;又はがんの徴候若しくは症状を改善すること。一実施態様では、バイオマーカーの存在は、バイオマーカーが存在しない患者と比較して、医薬による治療に応答する可能性がより高い患者を同定するために使用される。別の実施態様では、バイオマーカーの存在は、患者が、バイオマーカーが存在しない患者と比較して医薬による治療が有益である可能性の増加を有することを決定するために使用される。
【0054】
「生存」は患者が生き続けていることを指し、全生存並びに無増悪生存を含む。
【0055】
「全生存」は、患者が、診断又は治療の時期から規定の期間、例えば1年、5年などの間、生き続けていることを指す。
【0056】
「無増悪生存」は、患者が、がんが進行しないか更に悪化せずに生き続けていることを指す。
【0057】
「生存を延長すること」は、未治療の患者と比較して(すなわち、医薬で治療されていない患者と比較して)、又は指定されたレベルでバイオマーカーを発現しない患者と比較して、及び/又は承認された抗腫瘍剤で治療された患者と比較して、治療された患者で全生存又は無増悪生存期間を増加させることを意味する。客観的な応答は、完全寛解(CR)又は部分寛解(PR)を含む測定可能な応答を指す。
【0058】
完全寛解又は「CR」は、治療に応答してのがんの全ての徴候の消失を意図する。これは、がんが治癒したことを必ずしも意味しない。
【0059】
部分寛解又は「PR」は、治療に応答しての、身体における一又は複数の腫瘍若しくは病変のサイズの縮小、又はがんの範囲の減少を指す。
【0060】
薬剤の「有効量」は、必要な投薬量及び期間で、所望の治療的又は予防的結果を達成するのに有効な量を指す。
【0061】
「治療的有効量」は、哺乳動物で疾患又は障害を治療又は予防するための治療剤の量を指す。がんの場合、治療剤の治療的有効量は、がん細胞の数を低減すること;原発腫瘍のサイズを低減すること;末梢器官へのがん細胞の浸潤を阻害すること(すなわち、ある程度遅らせること、好ましくは停止すること);腫瘍転移を阻害すること(すなわち、ある程度遅らせること、好ましくは停止すること);腫瘍増殖をある程度阻害すること;及び/又は障害に関連する症状の一又は複数をある程度軽減することができる。薬物が増殖を阻止することができ、及び/又は既存のがん細胞を死滅させることができる限り、それは細胞増殖抑制性及び/又は細胞傷害性であってもよい。がん療法については、インビボ有効性は、例えば、生存期間、疾患進行までの時間(TTP)、奏効率(RR)、応答期間、及び/又は生活の質を評価することによって測定することができる。
【0062】
用語「がん」及び「がん性」は、無秩序な細胞増殖を一般に特徴とする哺乳動物の生理的状態を指すか記載する。良性及び悪性のがんがこの定義に含まれる。「初期のがん」又は「初期の腫瘍」は、侵襲的でも転移性でもないか、ステージ0、I又はIIのがんと分類されるがんを意味する。がんの例には、限定されずに、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリン産生腫瘍及び島細胞がんを含む)、中皮腫、シュワン細胞腫(聴神経腫を含む)、髄膜腫、腺癌、メラノーマ及び白血病又はリンパ悪性腫瘍が含まれる。そのようながんのより詳細な例には、扁平細胞がん(例えば上皮扁平細胞がん)、肺がん、例えば小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌、腹膜のがん、肝細胞がん、胃腸がんを含む胃又は腹部のがん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、肝がん、乳がん(転移性乳がんを含む)、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜又は子宮の癌腫、唾液腺癌、腎又は腎性のがん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝癌、肛門癌、陰茎癌、メルケル細胞がん、菌状息肉腫、精巣がん、食道がん、胆管の腫瘍、並びに頭頚部がん及び血液学的悪性腫瘍が含まれる。一部の実施態様では、がんは、局所的に再発性又は転移性の疾患(局所的に再発性の疾患は治療意図の切除に適合しない)を有する乳房の任意の組織学的に確認された三重陰性(ER-、PR-、HER2-)腺癌を含む、三重陰性転移性乳がんである。
【0063】
用語「薬学的製剤」は、そこに含まれる有効成分の生物活性を有効にするような形であり、製剤が投与される対象に容認できないほど毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。
【0064】
「薬学的に許容される担体」は、薬学的製剤中の、有効成分以外の対象に無毒である成分を指す。薬学的に許容される担体には、バッファー、賦形剤、安定剤又は防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書で用いるように、「治療」(及び「治療する」又は「治療すること」などの文法上のその変形)は、治療する個体の自然経過を変化させる企てにおける臨床介入を指し、予防のために、又は臨床病理の過程で実施することができる。治療の望ましい効果には、疾患の発生又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的帰結の減少、転移を予防すること、疾患進行の速度を低下させること、病態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれるがこれらに限定されない。一部の実施態様では、疾患の発達を遅らせるか疾患の進行を減速するために、抗体が使用される。
【0066】
用語「抗がん療法」は、がんの治療で有益な療法を指す。抗がん治療剤の例には、限定されずに、例えば化学療法剤、増殖阻害剤、細胞傷害性剤、放射線療法で使用する薬剤、抗血管形成剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、及びがんを治療する他の薬剤、抗CD20抗体、血小板由来増殖因子阻害剤(例えば、Gleevec(商標)(イマチニブメシレート))、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的PDGFR-ベータ、BlyS、APRIL、BCMA受容体(一又は複数)、TRAIL/Apo2の一又は複数に結合するアンタゴニスト(例えば、中和抗体)、並びに他の生物活性及び有機化学薬剤などが含まれる。その組合せも本発明に含まれる。
【0067】
本明細書で用いられる用語「細胞傷害性剤」は、細胞の機能を阻害若しくは阻止し、及び/又は細胞の破壊を引き起こす物質を指す。本用語には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、例えばメトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤、酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素、抗生物質、並びに毒素、例えばその断片及び/又はその変異体を含む細菌、真菌、植物又は動物起源の小分子毒素又は酵素活性毒素、並びに下に開示される様々な抗腫瘍剤又は抗がん剤が含まれるものとする。他の細胞傷害性剤は、下に記載される。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0068】
「化学療法剤」は、がんの治療で有益な化合物を指す。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ及びウレドパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロメラミンを含むエチレンイミン及びメチラメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトセシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトセシン、スコポレクチン及び9-アミノカンプトセシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロルエタミン、酸化メクロルエタミン塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムスチンなどのニトロソウレア;エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマ11及びカリケアマイシンオメガ11(例えば、Nicolaou等、Angew.Chem Intl.Ed.Engl.、33:183-186(1994)を参照);CDP323、経口アルファ-4インテグリン阻害剤;ジネミシンAを含むジネミシン;エスペラマイシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注入(DOXIL(登録商標)を含む)、リポソームドキソルビシンTLC D-99(MYOCET(登録商標))、ペグ化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標))及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗薬;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクシウリジンなどのピリミジンアナログ;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎;フロリン酸などの葉酸補充液;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシン及びアンサマイトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモル;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標))及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロランブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン(例えば、ELOXATIN(登録商標))及びカルボプラチンなどの白金剤;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標))及びビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))を含む、チューブリン重合が微小管を形成することを阻止するビンカ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))を含む、レチノイン酸などのレチノイド;クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))又はリセドロネート(ACTONEL(登録商標))などのビスホスホネート;トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖と関係づけられるシグナル伝達経路で遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC-アルファ、Raf、H-Ras及び上皮増殖因子受容体(EGF-R);THERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子療法ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン)などのワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ;Bayer);SU-11248(スニチニブ、SUTENT(登録商標)、Pfizer);ペリホシン、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ又はエトリコキシブ)、プロテオゾーム阻害剤(例えば、PS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI-779;チピファルニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標))などのBcl-2阻害剤;ピキサントロン;EGFR阻害剤(下の定義を参照する);チロシンキナーゼ阻害剤(下の定義を参照する);ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標))などのセリンスレオニンキナーゼ阻害剤;ロナファルニブ(SCH 6636、SARASAR(商標))などのファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤;並びに上記の何れかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体;並びに上記の2つ以上の組合せ、例えばCHOP、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾロンの併用療法の略記号;及びFOLFOX、オキサリプラチン(ELOXATIN(商標)と5-FU及びロイコボリンとを組み合わせた治療レジメンの略記号が含まれる。
【0069】
本明細書に規定される化学療法剤には、がんの増殖を促進することができるホルモンの効果を調節、低減、ブロック又は阻害する働きをする「抗ホルモン剤」又は「内分泌治療薬」が含まれる。化学療法剤はそれら自体、限定されずに以下を含むホルモンであってもよい:アゴニスト/アンタゴニストプロファイルが混合した抗エストロゲン、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標))、4-ヒドロキシタモキシフェン、トレミフェン(FARESTON(登録商標))、イドキシフェン、ドロロキシフェン、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、トリオキシフェン、ケオキシフェン及びSERM3などの選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM);アゴニスト特性のない純粋な抗エストロゲン、例えばフルベストラント(FASLODEX(登録商標))及びEM800(このような薬剤はエストロゲン受容体(ER)二量体化をブロックすること、DNA結合を阻害すること、ER代謝回転を増加させること及び/又はERレベルを抑制することができる);アロマターゼ阻害剤、例えばホルメスタン及びエクセメスタン(AROMASIN(登録商標))などのステロイド性アロマターゼ阻害剤、並びに非ステロイド性アロマターゼ阻害剤、例えばアナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))及びアミノグルテチミド、及び他のアロマターゼ阻害剤、例えばボロゾール(RIVISOR(登録商標))、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、ファドロゾール及び4(5)-イミダゾール;ロイプロリド(LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標))、ゴセレリン、ブセレリン及びトリプテレリンを含む黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト;性ステロイド、例えば酢酸メゲストロール及び酢酸メドロキシプロゲステロンなどのプロゲスチン、ジエチルスチルベストロール及びプレマリンなどのエストロゲン、並びにフルオキシメステロン、全てのトランスレチノイン酸及びフェンレチニドなどのアンドロゲン/レチノイド;オナプリストン;抗プロゲステロン;エストロゲン受容体下方調節因子(ERD);フルタミド、ニルタミド及びビカルタミドなどの抗アンドロゲン;並びに上記の何れかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体;並びに前述の2つ以上の組合せ。
【0070】
本明細書で使用されるとき、「増殖阻害剤」は、細胞(例えば、インビトロ又はインビボにおいてその増殖がPD-L1発現に依存する細胞)の増殖を阻害する化合物又は組成物を指す。増殖阻害剤の例には、細胞周期の進行(S期以外の場所で)をブロックする薬剤、例えばG1停止及びM期停止を誘導する薬剤が含まれる。古典的なM期ブロッカーには、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド及びブレオマイシンが含まれる。G1を停止する薬剤、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロルエタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル及びara-Cは、S期停止にも波及する。更なる情報は、Murakami等によるThe Molecular Basis of Cancer、Mendelsohn及びIsrael編、Chapter 1、表題「Cell cycle regulation、oncogenes、and antineoplastic drugs」(WB Saunders:Philadelphia、1995)、特にp13に見出すことができる。タキサン(パクリタキセル及びドセタキセル)は、両方ともイチイに由来する抗がん薬である。欧州イチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer))は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成アナログである。パクリタキセル及びドセタキセルはチューブリン二量体からの微小管の組立てを促進し、脱重合を阻止することによって微小管を安定させ、それは細胞での有糸分裂の阻害をもたらす。
【0071】
「放射線療法」は、正常に機能するその能力を制限するように、又は細胞を全滅させるように細胞への十分な傷害を誘導するための、誘導されたガンマ線又はβ線の使用を意味する。治療の投薬量及び持続期間を判定するために、当技術分野で公知である多くの方法があることが理解される。一般的な治療は1回投与で与えられ、一般的な投薬量は1日につき10から200単位(グレイ)である。
【0072】
「個体」又は「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物には、限定されずに、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)が含まれる。ある特定の実施態様では、個体又は対象はヒトである。
【0073】
本明細書において用語「同時に」は、投与の少なくとも一部が時間的に重複する、2個以上の治療剤の投与を指すために使用される。したがって、同時投与は、一又は複数の薬剤の投与が一又は複数の他の薬剤の投与を中止した後にも継続する投与レジメンを含む。
【0074】
「低減又は阻害する」は、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はそれ以上の全体の減少を引き起こす能力を意味する。低減又は阻害するは、治療されている障害の症状、転移の存在若しくはサイズ、又は原発腫瘍のサイズを指すことができる。
【0075】
単数形「a」、「an」及び「the」は、特に明記しない限り複数形を含むと理解される。
【0076】
樹状細胞マーカー
本発明では、がん患者から得られる腫瘍組織試料におけるDC(すなわち、腫瘍浸潤性DC)、より好ましくは交差提示能力を有する機能的DCの存在度は、PD-1軸阻害剤への応答を予測させることが見出された。DCの存在度は、交差提示特性を有するDCの発達、活性化又は成熟に関連したマーカーの発現レベルを検出することによって判定することができる。これらのマーカーには、XCR1、IRF8、BATF3、FLT3が含まれる。これらのマーカーは、個々のマーカーとして別々に、又は、2つ以上のマーカーの群において、マーカーの累積発現として、すなわち累積DC遺伝子スコア(DCスコア)として検討することができる。2つ以上のマーカーの発現レベルは、DCスコアを得るために、任意の適当な最新の数学的方法によって組み合わせることができる。一実施態様では、DCスコアは、XCR1、IRF8、BATF3及びFLT3からなる遺伝子の発現レベルに基づいて得ることができる。
【0077】
一実施態様では、本発明のバイオマーカーは、抗PD-L1抗体アテゾリズマブなどのPD-1軸阻害剤に対する腎細胞癌患者の応答を予測するために使用される。別の実施態様では、本発明のバイオマーカーは、抗PD-L1抗体アテゾリズマブなどのPD-1軸阻害剤に対する非小細胞肺がん(NSCLC)患者の応答を予測するために使用される。本発明の実施態様により、本発明の予測値は、PD-L1陽性の患者及び扁平上皮NSCLC患者においてより高い。したがって、一実施態様では、本発明のバイオマーカーは、抗PD-L1抗体アテゾリズマブなどのPD-1軸阻害剤に対する、PD-L1陽性の患者、より具体的にはPD-L1陽性のNSCLC患者の応答を予測するために使用される。別の実施態様では、本発明のバイオマーカーは、抗PD-L1抗体アテゾリズマブなどのPD-1軸阻害剤に対する扁平上皮NSCLC患者の応答を予測するために使用される。
【0078】
本発明における使用のための例示的なPD-1軸阻害剤
例として、PD-1軸阻害剤には、PD-1結合性アンタゴニスト及びPD-L1結合性アンタゴニストが含まれる。「PD-1」の代替の名称には、CD279及びSLEB2が含まれる。「PD-L1」の代替の名称には、B7-H1、B7-4、CD274及びB7-Hが含まれる。一部の実施態様では、PD-1及びPD-L1は、ヒトPD-1及びPD-L1である。
【0079】
一部の実施態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、そのリガンド結合パートナーへのPD-1の結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-1リガンド結合パートナーは、PD-L1及び/又はPDL2である。別の実施態様では、PDL1結合性アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD-L1の結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-L1結合パートナーは、PD-1及び/又はB7-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合性断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質又はオリゴペプチドであってよい。
【0080】
一部の実施態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体)である。一部の実施態様では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ及びペムブロリズマブからなる群から選択される。一部の実施態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したPD-L1又はPD-L2の細胞外又はPD-1結合性部分を含むイムノアドヘシン)である。一部の実施態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、AMP-224である。MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558及びOPDIVO(登録商標)としても知られるニボルマブは、国際公開第2006/121168号に記載される抗PD-1抗体である。MK-3475、Merck3475、ラムブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)及びSCH-900475としても知られるペムブロリズマブは、国際公開第2009/114335号に記載される抗PD-1抗体である。B7-DCIgとしても知られるAMP-224は、国際公開第2010/027827号及び国際公開第2011/066342号に記載されるPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0081】
一部の実施態様では、PD-L1結合性アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。一部の実施態様では、抗PDL1結合性アンタゴニストは、YW243.55.S70、MPDL3280A、MDX-1105及びMEDI4736からなる群から選択される。BMS-936559としても知られるMDX-1105は、国際公開第2007/005874号に記載される抗PDL1抗体である。抗体YW243.55.S70は、国際公開第2010/077634A1号に記載される抗PDL1である。MEDI4736は、国際公開第2011/066389号及び米国特許出願公開第2013/034559号に記載される抗PDL1抗体である。
【0082】
本発明の方法に有益な抗PD-L1抗体の例及びその作製方法は、PCT特許出願国際公開第2010/077634A1号及び米国特許第8217149号に記載され、その各々は、その全体が示されているかのように出典明示により本明細書に援用される。
【0083】
一部の実施態様では、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブである(CASレジストリ番号:1422185-06-5)。MPDL3280Aとしても知られるアテゾリズマブ(Genentech)は、抗PD-L1抗体である。
【0084】
アテゾリズマブは、以下を含む:
(a)それぞれGFTFSDSWIH(配列番号1)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号2)及びRHWPGGFDY(配列番号3)のHVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3配列、並びに
(b)それぞれRASQDVSTAVA(配列番号4)、SASFLYS(配列番号5)及びQQYLYHPAT(配列番号6)のHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3配列。
【0085】
アテゾリズマブは、重鎖及び軽鎖配列を含み、ここで:
(a)重鎖可変領域配列は、アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)を含み、
(b)軽鎖可変領域配列は、アミノ酸配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号8)
を含む。
【0086】
アテゾリズマブは、重鎖及び軽鎖配列を含み、ここで:
(a)重鎖は、アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号9)を含み、
(b)軽鎖は、アミノ酸配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号10)
を含む。
【0087】
一部の実施態様では、PD-1軸結合性アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。一部の実施態様では、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1の間及び/又はPD-L1とB7-1の間の結合を阻害することが可能である。一部の実施態様では、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。一部の実施態様では、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv及び(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。一部の実施態様では、抗PDL1抗体は、ヒト化抗体である。一部の実施態様では、抗PDL1抗体は、ヒト抗体である。
【0088】
抗体又はその抗原結合性断片は、当技術分野で公知の方法を使用して、例えば、発現に適する形である、前記抗PD-L1、抗PD-1又は抗PD-L2抗体又は抗原結合性断片の何れかをコードする核酸を含有する宿主細胞を、そのような抗体又は断片を生成するのに適する条件下で培養すること、及びその抗体又は断片を回収することを含む方法によって作製することができる。
【0089】
本明細書の実施態様の何れでも、単離される抗PDL1抗体は、ヒトPDL1、例えばUniProtKB/Swiss Prot受託番号Q9NZQ7.1に示されるヒトPDL1、又はその変異体に結合することができる。
【0090】
更なる実施態様では、本発明は、本明細書で提供される抗PD-L1、抗PD-1又は抗PD-L2抗体又はその抗原結合性断片、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。一部の実施態様では、個体に投与される抗PD-L1、抗PD-1又は抗PD-L2抗体又はその抗原結合性断片は、一又は複数の薬学的に許容される担体を含む組成物である。
【0091】
一部の実施態様では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体は、約60mg/mLの量の抗体、約20mMの濃度のヒスチジンアセテート、約120mMの濃度のスクロース及び0.04%(w/v)の濃度のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含む製剤の中にあり、製剤は約5.8のpHを有する。一部の実施態様では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体は、約125mg/mLの量の抗体、約20mMの濃度のヒスチジンアセテート、約240mMの濃度のスクロース及び0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含む製剤の中にあり、製剤は約5.5のpHを有する。
【0092】
本発明における使用のためのアッセイ
一部の実施態様では、バイオマーカーは、FACS、ウェスタンブロット、ELISA、免疫沈降、免疫組織化学法、免疫蛍光法、放射線免疫検定法、免疫検出方法、質量分析、qPCR、RT-qPCR、多重qPCR又はRT-qPCR、RNA-seq、マイクロアレイ解析、ナノストリング、SAGE、MassARRAY技術及びFISH、及びその組合せからなる群から選択される方法を使用して試料中に検出される。一部の実施態様では、バイオマーカーは、タンパク質発現によって試料中に検出される。一部の実施態様では、タンパク質発現は、免疫組織化学法(IHC)によって判定される。
【0093】
一部の実施態様では、バイオマーカーは、mRNA発現によって試料中に検出される。一部の実施態様では、mRNA発現は、qPCR、rtPCR、RNA-seq、多重qPCR若しくはRT-qPCR、マイクロアレイ解析、ナノストリング、SAGE、MassARRAY技術又はFISHを使用して判定される。
【0094】
一部の実施態様では、試料は腫瘍組織試料である。一部の実施態様では、腫瘍組織試料は、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質性細胞又はその任意の組合せを含む。
【0095】
一部の実施態様では、試料はPD-L1軸阻害剤による治療の前に得られる。一部の実施態様では、組織試料は、ホルマリン固定及びパラフィン包埋され、新鮮なままで又は凍結されて保管される。
【0096】
試料中の様々なバイオマーカーの存在及び/又は発現のレベル/量はいくつかの方法によって分析することができ、その多くは当技術分野で公知であり、熟練者に理解され、例えば、限定されずに、免疫組織化学法(「IHC」)、ウェスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化セルソーティング(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、定量的な血液ベースのアッセイ(例えば血清ELISA)、生化学的酵素活性アッセイ、in situハイブリダイゼーション、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノム配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)、例えば定量的リアルタイムPCR(「qRT-PCR」)及び他の増幅型検出方法、例えば分枝DNA、SISBA、TMAなど、RNA-Seq、FISH、マイクロアレイ解析、遺伝子発現プロファイリング、及び/又は遺伝子発現の連続分析(「SAGE」)、並びにタンパク質、遺伝子及び/又は組織アレイ分析によって実施することができる多種多様なアッセイの何れか1つが含まれる。生成物がそうである遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価するための一般的なプロトコールは、例えばAusubel等編、1995、Current Protocols In Molecular Biology、ユニット2(ノーザンブロッティング)、4(サザンブロッティング)、15(イムノブロッティング)及び18(PCR分析)に見出される。Rules Based Medicine又はMeso Scale Discovery(「MSD」)から入手できるものなどの、多重化されたイムノアッセイを使用することもできる。
【0097】
一実施態様では、試料は臨床試料である。別の実施態様では、試料は診断アッセイで使用される。一部の実施態様では、試料は、原発腫瘍又は転移腫瘍から得られる。腫瘍組織の代表的断片を得るために、組織生検がしばしば使用される。
【0098】
ある特定の実施態様では、参照試料、参照組織、コントロール試料、又はコントロール組織は、検査試料を得るときと異なる一又は複数の時点で得られる、同じ対象又は個体からの単一の試料又は組み合わせた多重試料である。ある特定の実施態様では、参照試料、参照組織、コントロール試料、又はコントロール組織は、対象又は個体でない一又は複数の健康な個体からの組み合わせた多重試料である。ある特定の実施態様では、参照試料、参照組織、コントロール試料又はコントロール組織は、対象又は個体でない疾患又は障害(例えば、がん)を有する1人又は複数人の個体からの組み合わせた多重試料である。
【0099】
一部の実施態様では、試料は腫瘍組織試料(例えば、生検組織)である。一部の実施態様では、組織試料は肺組織である。一部の実施態様では、組織試料は腎臓組織である。一部の実施態様では、組織試料は皮膚組織である。一部の実施態様では、組織試料はすい臓組織である。一部の実施態様では、組織試料は胃組織である。一部の実施態様では、組織試料は膀胱組織である。一部の実施態様では、組織試料は食道組織である。一部の実施態様では、組織試料は中皮組織である。一部の実施態様では、組織試料は乳房組織である。一部の実施態様では、組織試料は甲状腺組織である。一部の実施態様では、組織試料は結腸直腸組織である。一部の実施態様では、組織試料は頭頚部組織である。一部の実施態様では、組織試料は骨肉腫組織である。一部の実施態様では、組織試料は前立腺組織である。一部の実施態様では、組織試料は、卵巣組織、HCC(肝臓)、血液細胞、リンパ節、骨/骨髄である。
【0100】
治療方法
個体においてがんを治療する方法であって、個体からの腫瘍組織試料中のDCの存在度を判定すること、及びPD-1軸阻害剤の有効量を個体に投与することを含む方法が提供される。
【0101】
一部の実施態様では、DCの発達に関連するバイオマーカーの発現の増加は、個体をPD-L1軸阻害剤で治療するときに、個体は臨床有益性が増加する可能性がより高いことを示す。一部の実施態様では、臨床有益性の増加は、以下の一又は複数の相対的な増加を含む:全生存(OS)、無増悪生存(PFS)、完全寛解(CR)、部分寛解(PR)及びその組合せ。
【0102】
本明細書で記載したPD-1軸阻害剤を、療法において単独で又は他の薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、本明細書で記載したPD-1軸阻害剤を、少なくとも1つの追加の治療剤とともに共投与することができる。ある特定の実施態様では、追加の治療剤は、化学療法剤である。
【0103】
上記で注目したかかる併用療法は、併用投与(ここで2つ以上の治療剤が同じ又は別々の製剤に含まれる)、及びアンタゴニストの投与が、追加の治療剤及び/又はアジュバントの投与前に、これと同時に、及び/又はこの後で起こり得る別々の投与を包含する。本明細書で記載したPD-1軸阻害剤を、放射線療法と組み合わせて使用することもできる。
【0104】
本明細書で記載したPD-1軸阻害剤(例えば、抗体、結合性ポリペプチド、及び/又は小分子)(及び任意の追加の治療剤)を、非経口、肺内、及び鼻腔内、並びに局所的治療に望ましい場合に病巣内投与を含めた、任意の適した手段によって投与することができる。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与を含む。投薬は、投与が短期的又は慢性的であるかどうかに部分的に依存して、任意の適した経路による、例えば、静脈内又は皮下注射等の注射によることができる。単一の又は様々な時点にわたる複数の投与、ボーラス投与、及びパルスインフュージョンを含むが、これらに限定されない様々な投薬スケジュールが、本明細書で企図される。
【0105】
本明細書で記載したPD-1軸阻害剤(例えば、抗体、結合性ポリペプチド、及び/又は小分子)を、医学行動規範と一致した様式で、製剤化し、投薬し、投与することができる。これに関連した考慮に関する因子は、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳類、個々の患者の臨床的状態、障害の原因、薬剤の送達の部位、投与の方法、投与のスケジューリング、及び医療施術者に既知の他の因子を含む。PD-1軸阻害剤は、問題の障害を予防する又は治療するために現在使用されている一又は複数の薬剤とともに製剤化されている必要はないが、任意選択的にこれらの薬剤とともに製剤化されている。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するPD-1軸阻害剤の量、障害又は治療の型、及び上記で議論した他の因子に依存する。これらは、本明細書で記載したのと同じ用量及び投与経路、若しくは本明細書で記載した用量の約1から99%で、又は適切であると経験的に/臨床的に判定される任意の用量で及び任意の経路によって一般的に使用される。
【0106】
疾患の予防又は治療に関して、本明細書で記載したPD-1軸阻害剤の適切な用量(単独で又は一若しくは複数の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合)は、治療される疾患の型、疾患の重症度及び過程、PD-1軸阻害剤が予防的目的で投与されるのか治療的目的で投与されるのか、以前の療法、患者の病歴及びPD-1軸阻害剤に対する応答、及び主治医の裁量に依存することになる。PD-1軸阻害剤は、単回で、又は一連の治療にわたって、患者に適切に投与される。1つの典型的な1日の用量は、上記の因子に依存して、約1μg/kgから100mg/kg以上にわたる。数日以上にわたる反復投与に関して、状態に依存して、治療は、疾患症状の望ましい抑圧が生じるまで一般的に持続される。かかる用量を、断続的、例えば、週1回又は3週間に1回(例えば、患者が、PD-1軸阻害剤の約2回から約12回、又は例えば、約6回の用量を受けるように)投与することができる。初回のより高い負荷用量、その後の一又は複数のより低い用量を投与することができる。例示的投薬計画は、投与することを含む。しかしながら、他の用量計画が有用であり得る。この療法の進行は、従来の技法及びアッセイによって容易に監視することができる。
【0107】
いくつかの実施態様では、PD-1軸阻害剤(例えば、抗PD-L1抗体)を、約0.3-30mg/kgの用量で投与する。いくつかの実施態様では、PD-L1軸結合性アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)を、約0.3mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、又は30mg/kgの何れかの用量で投与する。いくつかの実施態様では、PD-1軸阻害剤(例えば、抗PD-L1抗体)を、21日サイクルで約2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、15mg/kg、又は30mg/kgの何れかの用量で投与する。上記の製剤又は治療的方法の何れかを、PD-1軸阻害剤の代わりに又はこれに加えて、イムノコンジュゲートを使用して実行することができることが理解されよう。
【0108】
本明細書に記載のPD-1軸阻害剤の薬学的製剤を、凍結乾燥製剤又は水溶液の形で、望ましい程度の純度を有するかかる抗体を一又は複数の任意選択の薬学的に許容される担体と混合することによって調製する(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。いくつかの実施態様では、PD-1軸阻害剤は、結合性小分子、抗体、結合性ポリペプチド、及び/又はポリヌクレオチドである。薬学的に許容される担体は、一般的に、用いる用量及び濃度でレシピエントに無毒であり、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含めた抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンザルコニウムクロライド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含めた他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖類;ナトリウム等の造塩対イオン;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含むがこれらに限定されない。本明細書の例示的な薬学的に許容される担体は、可溶型中性の活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標),Baxter International,Inc.)等のヒト可溶型PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質等の間質薬物分散剤を更に含む。rHuPH20を含めた、いくつかの例示的sHASEGP及び使用の方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号及び第2006/0104968号に記載されている。一実施態様では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼ等の一又は複数の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わされる。
【0109】
例示的凍結乾燥製剤は、米国特許第6267958号に記載されている。水性抗体製剤は、米国特許第6171586号及び国際公開第2006/044908号に記載されているものを含み、後者の製剤は、ヒスチジン-アセテートバッファーを含む。
【0110】
本明細書の製剤は、治療される特定の徴候に関して必要に応じて、1つを超える活性成分、好ましくは互いに悪影響しない相補的な活性を有するものも含有することができる。かかる活性成分は、意図された目的に効果的である量で、組合せで適切に存在する。
【0111】
活性成分を、例えばコアセルベーション技法によって又は界面重合によって調製された、マイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中に又はマクロエマルション中に封入することができる。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0112】
徐放調製物を調製することができる。徐放調製物の適した例は、PD-L1軸結合性アンタゴニストを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、このマトリックスは、造形品、例えば、フィルム、又はマイクロカプセルの形である。
【0113】
インビボ投与に使用される製剤は、一般的に無菌である。無菌状態は、例えば、滅菌濾過膜を通した濾過によって、容易に達成することができる。
【0114】
診断用のキット、アッセイ及び製造品
本明細書では、疾患又は障害を有する個体からの試料中のバイオマーカーの存在を判定するための一又は複数の試薬を含む診断キットが提供される。
【0115】
本明細書では、PD-L1軸阻害剤を受けるための、疾患又は障害を有する個体を同定するアッセイであって、個体からの腫瘍組織試料中のDCの存在度を判定し、DCの存在度に基づいてPD-1軸阻害剤を推奨することを含むアッセイも提供される。
【0116】
本明細書では、薬学的に許容される担体中のPD-L1軸阻害剤(例えば、抗PD-L1抗体)と、PD-L1軸阻害剤(例えば、抗PD-L1抗体)が、DCの存在度又はDCの発達に関連するバイオマーカーの発現レベルに基づいて疾患又は障害を有する患者を治療するためのものであることを示す添付文書とが一緒に包装されている製造品も提供される。治療方法には、本明細書に開示される治療方法の何れも含まれる。PD-1軸阻害剤(例えば、抗PD-L1抗体)を含む薬学的組成物と、薬学的組成物が、DCの存在度又はDCの発達に関連するバイオマーカーの発現レベルに基づいて疾患又は障害を有する患者を治療するためのものであることを示す添付文書とを包装の中に組み合わせることを含む、製造品を製造するための方法が更に提供される。
【0117】
製造品は、容器、及び容器上に又は容器と結合したラベル又は添付文書を含む。適した容器は、例えば、ビン、バイアル、シリンジ等を含む。容器は、ガラス又はプラスチック等のいろいろな材料から形成されていてよい。容器は、活性薬剤としてがん医薬を含む組成物を保持又は含有し、滅菌アクセスポートを有することができる(例えば容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有するバイアルとすることができる)。
【0118】
製造品は、静菌性の注射用水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液及びデキストローズ溶液等の薬学的に許容される希釈剤バッファーを含む第2の容器を更に含むことができる。製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含めた、商業及びユーザー観点から望ましい他の材料を更に含むことができる。
【0119】
本発明の製造品は、例えば添付文書の形である、組成物が本明細書のバイオマーカー(一又は複数)の発現レベルに基づいてがんを治療するのに使用されることを示す情報も含む。挿入物又はラベルは、紙又は磁気的に記録された媒体(例えば、フロッピーディスク)若しくはCD-ROM等の電子媒体上等の、任意の形をとることができる。ラベル又は挿入物は、キット又は製造品における薬学的組成物及び投与形態に関する他の情報も含むことができる。
【0120】
本発明は、以下の非限定的な図面及び実施例を参照して更に記載される。
【実施例】
【0121】
実施例1:ヒトDC上でPD-1及びPD-L1は負に相関する
ヒトDC上でのPD-1及びそのリガンドの潜在的な調節に対処するために、古典的方法を使用して単球由来のDCを生成した。簡潔には、Ficoll-Paque(商標)Plus(GE Healthcare、#17-1440-03)密度勾配を使用して、健康なヒトドナーからのバフィーコート(Blutspende、Schlieren)から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。PBMCのリングを収集し、遠心分離(763gで5分;600gで5分)によってPBSで2回洗浄した。無菌水により1×希釈した10mLのBD Pharm Lyse(商標)(BD Biosciences、#555899)を使用して溶解を実行し、室温で1.5分間インキュベートした。リン酸緩衝食塩水1×(PBS;live technologies(商標)によるGibco(登録商標)、#20012-019)による2回の洗浄を遠心分離(135gで8分)によって実行した。細胞の数及び品質は、セルカウンター(Beckman coulter)を使用して評価した。独立した実験ごとに、別個の無関係のドナーを使用した。製造業者の説明書に従って、MAC緩衝液(1450mLのAutomacs(商標)リンス液、Miltenyi#130-091-222;及び75mLのMACS BSA保存溶液、Miltenyi#130-091-376)の中のヒト単球濃縮キット(StemCell、#19059)を使用した負の選択によって、単球を新鮮なPBMCから単離した。純度はセルカウンター(Beckman coulter)を使用してチェックし、単球は通常>95%の純度であった。
【0122】
単球は、37℃の2mLの培地(RPMI1640(1×)Glutamax;10%熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン、全てGibco(登録商標)から)に1.5×106細胞/ウェルで6ウェルプレートに播種し、2時間(37℃、環境5%CO2)インキュベートした。2時間のインキュベーションの後、プラスチック接着によって更なる1回の選択を行った;培地を除去し、10μg/mLの組換えヒトインターロイキン-4及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を追加した新鮮な培地(IL-4及びGM-CSF;R&D Systems、#204-IL;#215-GM)の2mL/ウェルを加えた。5%CO2の環境中の37℃で、プレートをインキュベートした。2日目に、100μg/mL(10×)の組換えヒトIL-4及びGM-CSFを追加した37℃の200μL/ウェルの培地を加えた。4日目に、30μg/mL(3×)の組換えヒトIL-4及びGM-CSFを追加した37℃の1mLの培地を加えた。5日間の培養の後、インビトロの単球由来のDCは、完全に分化している。細胞は、抗PD-1-PE-Cy7及び抗PD-L1-APC抗体(BioLegend;#329917、#329707)で次に染色し、フローサイトメトリー(BD)によって測定した。
【0123】
ヒトDCがPD-1とPD-L1の両方を発現し(
図1A)、PD-1及びPD-L1の発現プロファイルは負に相関する(R
2=0.907)ことが観察された(
図1B)。リポ多糖のLPS(LPS、10ng/mL Sigma-Aldrich、#L4516)によるDCの成熟の後、PD-1は下方制御され、PD-L1は上方制御され(
図2)、それは、PD-1がDCの上の機能的に負の調節因子であると仮定することを促した。これを試験するために、我々は、IL-4及びGM-CSFに加えて0.39μg/mLの最終濃度のデキサメタゾン(Sigma、#D2915)を加えることによって、免疫寛容原性DC(tDC、T細胞増殖の刺激に障害があるサブセット)をプロトコール(van Kooten等, 2011, Methods Mol Biol, 677: 149-59)に従って生成した。一対一の比較のために、未成熟なDC(iDC)、成熟したDC(mDC)及びtDCを、同じドナーの単球から並行して生成した。PD-1、PD-L1、PD-L2及びCD80の発現のために、細胞を染色した。他のDCと比較して、tDCは最も高いレベルのPD-1を示したが、最も低いレベルのPD-L1を示した(
図3A)。PD-L2及びCD80発現は、PD-L1発現と同じパターンを有する(
図3A)。
【0124】
PD-1発現とT細胞刺激のそれらの機能性の相関を確認するために、凍結PBMC(インビトロで生成された単球由来のDCと異なるドナーに由来する)から単離した同種異系の全T細胞との共培養によって、混合リンパ球の反応を実行した。製造業者の説明書に従って、Pan T細胞単離キットヒト(Miltenyi Biotec、#130-096-535)を使用した負の選択によって、T細胞の単離を実行した。全T細胞は、通常>95%の純度であった。PBSに1×10
7細胞/mLでT細胞を再懸濁した。光から保護した10
7個のT細胞あたり、PBSに5nMの1mLのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE増殖色素、eBioscience、#65-0850-84)を加え、37℃の熱浴槽の中で7分間インキュベートした。10mLの冷RPMIを加え、遠心分離(475gで6分)による洗浄の後、トリパンブルー着色希釈1~2の後に自動セルカウンターCountess(商標)を使用してCFSE染色T細胞の細胞数を判定した。150kのT細胞を含有する37℃の100μL/ウェルの培地を96ウェルプレートに播種し、5%CO
2の環境の中の37℃でインキュベートした。以下のT細胞:DC比;1:30、1:150及び1:750で、100μL/ウェルのDC(又は、活性化mDC)をCFSE染色T細胞に加えた。各条件のために、2反復又は3反復のウェルを調製した。5%CO
2の環境中の37℃で、共培養をインキュベートした。5日後にプレートを遠心分離し(600gで7分)、上清をマイナス80℃で保存し、フローサイトメトリーによるT細胞増殖分析(CFSE希釈)のために染色した。
図3Bに提示されるデータは、PD-1
-mDCはT細胞増殖を刺激することができるが、PD-1
+tDCはT細胞を活性化することができなかったことを示す。したがって、PD-1の発現プロファイルは、それらのT細胞刺激能力と負に相関する。
【0125】
我々は、DCに及ぼすPD-1阻害の直接的作用を次に研究した。抗PD-1 mAb又は抗PD-L1 mAbで処置したiDCは、CD80、CD86、CD83及びCD40などの共刺激分子の上方制御に導いた。PD-L1の抗体をブロッキングすることが、強化されたT細胞刺激能力を獲得するようにDCを直接的に活性化するかどうか次に試験した。PD-L1抗体(10μg/mL、Rocheで自家製造される、#7569)のブロッキングを用いて又は用いずに、又は、一部の場合には、10μg/mLのアイソタイプコントロール抗体(Rocheで自家製造される;#4852)によりiDCを一晩18時間前活性化し、混合リンパ球反応における同種異系T細胞との更なる5日間の共培養の前に十分に洗浄した。ELISA(R&D Systems、#DY285)によるIFN-γの測定のために上清を収集し、フローサイトメトリーによる増殖の測定のためにT細胞を収集した。PD-L1抗体とプレインキュベートしたDCが強化されたT細胞刺激能力を獲得し(
図4A)、活性化されたT細胞によるIFN-γ生成の増加が付随した(
図4B)ことが観察された。このことは、PD-L1/PD-1遮断に基づくがん療法が、T細胞の初回刺激及び/又は再刺激を潜在的に促進するようにDCを直接的に標的にすることができることを示す。
【0126】
PD-L1は、CD80とPD-1の両方に結合する。しかし、PD-L1/B7.1相互作用は、CD80/CD28相互作用より3倍高い親和性を有する。PD-L1/PD-1及びPD-L1/CD80の間の複雑な相互作用を理解するために、DCの表面でのそれらの局在化を調査するために共焦画像化を使用した。PD-1+iDCは低レベルのCD80を発現したが、それはPD-1と共存しない。対照的に、PD-1-mDCは、PD-L1及びCD80のより高い発現を獲得した。興味深いことに、CD80は今ではPD-L1と共存し、mDCにおけるPD-L1の発現がCD80に結合して隔離したことを示唆した。したがって、これらの分子がどの程度までDC-T細胞免疫シナプスの形成に関与しているかについて疑問に思った。CD28及びPD-1の両方は、DCとT細胞の交点で免疫シナプスに分極された。このことは、PD-1及びCD28がTCRシグナル伝達の間、免疫シナプスの中に参加していることを示唆する。このことは、PD-1シグナル伝達がT細胞の上でCD28の脱リン酸につながるとの近年の知見と一貫している。しかし、mDCの上のPD-L1とCD80の両方は、シナプスの中でPD-1及び/又はCD28とほとんど相互作用を有していなかった。これも、CD80/CD28相互作用に対してPD-L1/CD80相互作用のより高い結合親和性による可能性がある。
【0127】
mDC由来のCD80とT細胞関連のCD28の間の強力な相互作用の欠如は、PD-L1ブロッキング抗体によるPD-L1/CD80相互作用の破壊がCD80の放出を促進し、それをCD28に利用可能にし、T細胞の共刺激に導くことができるかどうかについて、更に疑うことを促した。実際、抗PD-L1 mAbとmDCをプレインキュベートすることは、DCとT細胞の接触面でCD80とCD28の強力な相互作用を可能にした。対照的に、CD80へのPD-L1の結合に干渉しない抗PD-1 mAbは、CD80分極に対する影響を示さなかった。これらのデータは、抗PD-L1mAbがT細胞を活性化するDCの能力に対して2つの異なる作用を及ぼすことができることを強く裏付ける:1)成熟を促進するために、PD-1+iDCの上でPD-L1媒介PD-1シグナル伝達をブロックすること;2)共刺激のために、成熟DCの上でB7.1からPD-L1を解離し、B7.1を遊離させてCD28に結合させること。
【0128】
実施例2:PD-L1遮断に応答するための、担がんマウスにおけるDCの必要条件
上記のインビトロの知見の生理学的関連性を確認するために、インビボ動物モデルにおいて抗PD-L1活性を試験した。C57BL/6J雌マウスの同所性腫瘍モデルを先ず設立し、ここで、PanC02-H7(MTA下のUniversity of Texas M.D.Anderson Cancer Centerから元々得られたマウス膵臓癌細胞)(1×10
5細胞)を膵臓に注射した。7日後に、抗PD-L1抗体(10mg/kg、マウスIgG1、クローン6E11、Genentech)を静脈内(i.v.)投与し、処置の3日後にマウスを収集した。脾臓及び流入領域リンパ節におけるCD11c+F4/80-DCを分析し、抗PD-L1抗体を受けたマウスがビヒクル群と比較してDC頻度の増加を示すことを見出した(
図5A-B)。更に、DC(CD11c
+細胞をゲーティング)は、活性化/成熟のマーカーであるCD86のより高い発現(
図5C)を示した。これらのデータは、抗PD-L1抗体がインビボでDCを直接的に活性化することを示唆する。
【0129】
抗腫瘍免疫の媒介における、PD-L1遮断によるDCの寄与を更に研究するために、Jackson研究所からCD11c-DTRマウスを得た(B6.FVB-Tg(Itgax-DTR/EGFP)57Lan/J、カタログ番号004509)。CD11c-DTRマウスは、cd11cプロモーターの下で発現される高親和性ヒトジフテリア毒素(DT)受容体についてトランスジェニックであるBALB/cマウスであり(Jung等, 2002, Immunity, 17: 211-20)、したがって、DCはDTの投与によって効果的に減少させることができる。試験0日目に、マウスに、RPMI培地中の0.2×10
6個のMC38細胞(ATCCから得られた結腸直腸がん細胞系)を皮下に(s.c.)注射した。6日目に腫瘍が触知可能であるとき、マウスを100ngのDT(Sigma-Aldrich)で処置したか、無処置にした。7日後に、抗PD-L1抗体(10mg/kg、マウスIgG1、クローン6E11、Genentech)をマウスに与え、その後週ごとの注射が続いた(
図6A)。DT処置単独は、これらのマウスにおいて腫瘍増殖に影響を与えなかった(
図6B)。抗PD-L1抗体処置は腫瘍増殖を遅延させ、8/10のマウスで腫瘍を根絶させたが、DCを除去したマウスにおいては、研究の終わりに5/9のマウスだけが無腫瘍だったので、抗PD-L1抗体の有効性はかなり損なわれた(
図6B)。我々のデータは、PD-L1抗体がその最大の抗腫瘍効果を達成するために、DCが必要であるとの概念を支持する。
【0130】
実施例3:DC遺伝子転写物は、アテゾリズマブで治療した腎細胞癌患者における臨床上の有益性を予測する
豊富なDCを有する患者は、治療を受けた患者において有益な効果につながるPD-L1遮断に応答することができると仮定した。フェーズI臨床治験(NCT01375842)において、アテゾリズマブを受けた腎細胞癌を有する56人の患者を分析した(http://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01375842?term=NCT01375842&rank=1)。この研究は、治験薬を提供したRocheグループのメンバー、Genentech Inc.が後援した。プロトコール及びその改正は、関連する施設内審査委員会又は倫理委員会の承認を得ており、全ての参加者は書面によるインフォームドコンセントを提供した。この研究は、ヘルシンキ宣言及び医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonization)の臨床試験実施基準のためのガイドライン(Guidelines for Good Clinical Practice)に従って実行した。合計56人の患者を分析した。「治験責任医師による最良確定総合効果(Best Confirmed Overall Response by the Investigator)」に基づき、6人の応答体(CR=1;PR=5)及び47人の不応答体(PD=21;SD=26)並びに既知情報のない3人の患者を観察した(
図7)。
【0131】
RNA配列決定(RNA-Seq)によって実行される遺伝子発現プロファイリングのために、ベースラインの腫瘍標本をアーカイブし、とった。文献(Merad, ann rev immunol 2013)に基づいて、XCR1、IRF8、BATF3及びFLT3からなる遺伝子のリストが選択され、それらは、交差提示特化によるヒト樹状細胞発達と関連している。全コホートにわたる選択された各遺伝子のlog2 RPKM発現値を、より高い発現のもの(+)及びより低い/無発現のもの(-)のために中間発現レベルで分けた。自家製のRスクリプトを使用して、2つの規定のサブグループをカプランマイアー生存曲線に対してプロットした。
図8は、あらゆる単一の遺伝子発現パターンが生存利点と相関することを示す。より高い発現とより低い/無発現の患者の間の中間生存は、少なくとも15.6カ月以上離れていた(
図9)。
【0132】
ヒト樹状細胞発達に関連付けられているいくつかの遺伝子は生存利点と関連していたので、これらのマーカー遺伝子の累積発現を反映する累積DC遺伝子スコア(DCスコア)を規定することによって、ヒトDCの発達及び機能に関与する複数の遺伝子の影響を調査した。各遺伝子の発現は、zスコアによって先ず標準化され、
式中、μ及びσはコホート全体で、又は選択されたサブグループの中で推定される。標準化工程の後、これらの標準化されたzスコア値は、各患者の中の遺伝子全体で平均される。RCCコホートは、患者の性別並びに最初の診断時のステージに関して補正した。そのような分析に基づいて、より高いDCスコアを有する患者は中間生存に到達することなく優れた生存利点を示したが、より低い/無発現群は約18カ月の中間生存を有したことが観察された(HR=0.38及びp=0.03)(
図10)。
【0133】
実施例4:DC遺伝子転写物は、アテゾリズマブで治療したNSCLC患者における臨床上の有益性を予測する
実施例3から更に、我々は、以前に治療され、その後アテゾリズマブ又はドセタキセルを受けた193人の非小細胞肺がん(NSCLC)患者をフェーズII臨床治験POPLARにおいて分析した。この研究は、ClinicalTrials.gov、番号NCT01903993に登録されている。POPLARは多施設ランダム化非盲検フェーズII治験であり、欧州及び北アメリカの13カ国にわたる61の大学医療センター及びコミュニティ腫瘍診療所で実行される。研究は、臨床試験実施基準のためのガイドライン及びヘルシンキ宣言に完全に従って実行した。プロトコール(及び改変)承認は、各地域の独立した倫理委員会から得られた(Fehrenbacher L,等, Lancet 2016)。扁平上皮又は非扁平上皮NSCLC患者の中で、96人はドセタキセルを受け、92人はアテゾリズマブを受け、残りの5人は無処置であった(表1)。
【0134】
RNA配列決定(RNA-Seq)によって実行される遺伝子発現プロファイリングのために、ベースラインの腫瘍標本をアーカイブし、とった。文献(Merad M.等, Ann. Rev. Immunol. 2013)に基づいて、XCR1、IRF8、BATF3及びFLT3からなる遺伝子のリストが選択され、それらは、交差提示特化によるヒト樹状細胞の表現型及び発達と関連している。全コホートにわたる選択された各遺伝子の正規化された読取り数は、より高い発現のもの(+)及びより低い/無発現のもの(-)のために中間発現レベルで分けた。自家製のRスクリプトを使用して、2つの規定のサブグループをカプランマイアー生存曲線に対してプロットした。更に、正と負の遺伝子発現に基づいて分けた2つの患者群の間でハザード比(HR)を計算するために、コックス回帰分析を使用した。
【0135】
これらのマーカー遺伝子の累積発現を反映する累積DC遺伝子スコア(DCスコア)を規定することによって、ヒトDCの発達及び機能に関与する複数の遺伝子(XCR1、BATF3、FLT3及びIRF8)の影響も調査した。各遺伝子の発現は、zスコアによって先ず標準化する:
式中、μ及びσはコホート全体で、又は選択されたサブグループの中で推定される。標準化工程の後、これらの標準化されたzスコア値は、各患者の中の遺伝子全体で平均される。コホートは、患者の喫煙状態、ECOG及び性別に関して補正した。その後、カプランマイアー生存曲線に対してスコアをプロットした。
【0136】
結果
XCR1遺伝子発現パターンは、アテゾリズマブの生存利点と相関する。より高い発現とより低い/無発現の患者の間の中間の全生存(OS)は約7カ月離れており(mOS=8.6対15.5カ月)、全てはコックス回帰分析により0.6(p=0.077)の統計的に有意なハザード比(HR)であった。対照的に、ドセタキセルを受けた患者ではXCR1発現と生存の相関がない。
【0137】
遺伝子:XCR1、IRF8、FLT3及びBATF3を含む累積DC遺伝子シグネチャーの発現に基づくカプランマイアー生存曲線に示す通り、DCに関連した遺伝子シグネチャーは、アテゾリズマブで治療した患者における生存と相関する(
図11)。より高いDCシグネチャースコアは、NSCLC患者においてPD-1軸阻害剤アテゾリズマブへの臨床上の有益性と相関する(HR=0.54、p=0.04)。より高い発現とより低い/無発現の患者の間の中間OSは、7.9カ月離れていた(8.5対16.4)。
【0138】
PD-L1陽性患者における累積DC遺伝子スコアの発現に基づくカプランマイアー生存曲線に示す通り、DCに関連した遺伝子シグネチャーは、アテゾリズマブで治療したPD-L1
+患者における生存と相関する(
図12)。XCR1、IRF8、FLT3及びBATF3が、累積DC遺伝子スコアに含まれる。PD-L1発現は、VENTANA SP142 PD-L1免疫組織化学アッセイ(Ventana Medical Systems、Tucson、AZ、USA)により、腫瘍細胞及び腫瘍浸潤性免疫細胞で前向きに調査した(Fehrenbacher L等, Lancet 2016)。PD-L1の発現は全体の腫瘍細胞の百分率として、PD-L1を発現する腫瘍浸潤性免疫細胞は腫瘍面積の百分率として評価した(腫瘍細胞はPD-L1発現腫瘍細胞の百分率として評価した:TC3≧50%、TC2≧5%及び<50%、TC1≧1%及び<5%、並びにTC0<1%;腫瘍浸潤性免疫細胞は、腫瘍面積の百分率として評価した:IC3≧50%、IC2≧5%及び<50%、IC1≧1%及び<5%、並びにIC0<1%)。我々は、PD-L1+患者をTC3、TC2、IC3及びIC2に分類して考慮した。DCシグネチャースコアとPD-1軸阻害剤アテゾリズマブへの臨床上の有益性の強力な相関が、PD-L1
+患者で観察された(HR=0.25、p=0.03)。より高いDC遺伝子スコアを有する患者における中間OSは到達しなかったが、より低い/無発現の患者は8.4カ月の中央値OSを有する。対照的に、ドセタキセルを受けたPD-L1
+患者ではDC遺伝子発現と生存の相関がない。
【配列表】