IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリパス コーポレーションの特許一覧

特許7089511HIF1-αアンチセンスオリゴヌクレオチド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】HIF1-αアンチセンスオリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/02 20060101AFI20220615BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220615BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20220615BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220615BHJP
【FI】
C07K7/02 ZNA
A61K38/10
A61K38/16
A61K48/00
A61P35/00
C07K14/00
C12N15/113 Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019519272
(86)(22)【出願日】2017-10-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 IB2017001385
(87)【国際公開番号】W WO2018069764
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-15
(31)【優先権主張番号】62/406,577
(32)【優先日】2016-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519043383
【氏名又は名称】オリパス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュン,シン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ダラム
(72)【発明者】
【氏名】チョー,ボンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ヒュンシク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,カンウォン
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0101858(US,A1)
【文献】特表2011-518770(JP,A)
【文献】特表2008-520747(JP,A)
【文献】Zhanna Zhilina et al.,Antigen Effects of Peptide Nucleic Acids on HIF-1α Expression,Understanding Biology Using Peptides, Proceedings of the 19th American Peptide Symposium,2006年,pp.363-364
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
によって表されるペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、10と26との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAと完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有してヒトHIF-1αプレmRNAと部分的に相補的であり、
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、デューテリド、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH2-C(=O)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、アミノ[-NH2]、置換若しくは非置換のアルキルアミノ、置換若しくは非置換のアリールアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、核酸塩基部分に共有結合した置換又は非置換アミノ基を有する非天然核酸塩基から選択される、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、10と26との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAと完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有してヒトHIF-1αプレmRNAと部分的に相補的であり、
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、デューテリド、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド、ホルミル、アミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、アミノ[-NH2]、置換若しくは非置換のアルキルアミノ、置換若しくは非置換のアリールアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも3つは、独立して、式II、式III、又は式IV:
【化2】
によって表される非天然核酸塩基から選択され、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、ヒドリド、ヒドロキシ、並びに置換若しくは非置換のアルキルオキシ基から選択され; 及び
L1、L2及びL3は、塩基性アミノ基を、核酸塩基対合特性を担う部分に接続する式V:
【化3】
によって表される共有結合リンカーであり;
Q1及びQmは、置換又は非置換のメチレン(-CH2-)基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、…、及びQm-1は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素(-O-)、硫黄(-S-)、並びに置換若しくは非置換のアミノ基[-N(H)-、又は-N(置換基)-]から選択され; 及び
mは、1と16との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項3】
請求項2に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と23との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAと完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有してヒトHIF-1αプレmRNAと部分的に相補的であり、
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、アミノ、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、並びにヒドリド基から選択され;
Q1及びQmは、置換又は非置換のメチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、…、及びQm-1は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素(-O-)、並びにアミノ基[-N(H)-]から選択され; 及び
mは、1と11との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項4】
請求項2に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と21との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAと完全に相補的であり、
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、アミノ、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、並びにヒドリド基から選択され;
Q1及びQmは、メチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、…、及びQm-1は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、並びに酸素基から選択され; 及び
mは、1と9との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項5】
請求項2に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、12と19との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAと完全に相補的であり、
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、アミノ、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、並びにヒドリド基から選択され;
Q1及びQmは、メチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、…、及びQm-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と9との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項6】
請求項2に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、12と19との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも11マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAと完全に相補的であり、
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、アミノ、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、ヒドリド基であり;
Q1及びQmは、メチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、…、及びQm-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と8との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項7】
請求項2に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、12と19との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも12マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAと完全に相補的であり、
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド基を表し;
Xは、ヒドリド基であり;
Yは、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、アミノ、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、ヒドリド基であり;
L1は、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-CH2-O-(CH2)2-、-CH2-O-(CH2)3-、-CH2-O-(CH2)4-、-CH2-O-(CH2)5-、-CH2-O-(CH2)6-、又は-CH2-O-(CH2)7-を表し、右端は、塩基性アミノ基に直接結合しており; 及び
L2及びL3は、独立して、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-(CH2)3-O-(CH2)2-、-(CH2)2-O-(CH2)3-、-(CH2)2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-(CH2)6-、-(CH2)7-、及び-(CH2)8-から選択され、右端は、塩基性アミノ基に直接結合している、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項8】
以下:
に提供されるペプチド核酸誘導体の群から選択される、請求項1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
A、G、T、及びCは、それぞれ、アデニン、グアニン、チミン、及びシトシンの天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、及びG(pOq)は、それぞれ、式VI、式VII、式VIII、式IX、及び式X:
【化4】
によって表される非天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
p及びqは、整数であり; 及び
N末端置換基及びC末端置換基の略語は、以下に具体的に記載される通りであり: 「Fmoc-」は、「[(9-フルオレニル)メチルオキシ]カルボニル-」基の略語であり; 「Fethoc-」は、「[2-(9-フルオレニル)エチル-1-オキシ]カルボニル」基の略語であり; 「Ac-」は、「アセチル-」基の略語であり; 「ベンゾイル-」は、「ベンゼンカルボニル-」基の略語であり; 「Piv-」は、「ピバロイル-」基の略語であり; 「n-プロピル-」は、「1-(n-プロピル)-」基の略語であり; 「H-」は、「ヒドリド-」基の略語であり; 「p-トルエンスルホニル」は、「(4-メチルベンゼン)-1-スルホニル-」基の略語であり; 「-Lys-」は、アミノ酸残基「リジン」の略語であり; 「-Val-」は、アミノ酸残基「バリン」の略語であり; 「-Leu-」は、アミノ酸残基「ロイシン」の略語であり; 「-Arg-」は、アミノ酸残基「アルギニン」の略語であり; 「-Gly-」は、アミノ酸残基「グリシン」の略語であり; 「[N-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」は、「[N-1-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」基の略語であり; 「ベンジル-」は、「1-(フェニル)メチル-」基の略語であり; 「フェニル-」は、「フェニル-」基の略語であり; 「Me-」は、「メチル-」基の略語であり; 「-HEX-」は、「6-アミノ-1-ヘキサノイル-」基の略語であり、「FAM-」は、「5又は6-フルオレセイン-カルボニル-(異性体混合物)」基の略語であり; 「N-Ph-N-Me-」は、「フェニル及びメチルが同じ窒素に結合している」ことを示す略語であり、及び「-NH2」は、非置換の「-アミノ」基の略語である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項9】
以下:
に提供される化合物の群から選択される、請求項に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項10】
式I:
【化5】
によって表されるペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAの一部である20マーRNA配列[(5'→3')UGUUAAGUAGGAUAAGUUCU]と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAと完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有してヒトHIF-1αプレmRNAと部分的に相補的であり、
nは、10と26との間の整数であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
Zは、ヒドリド、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも3つは、独立して、相当する核酸塩基対合特性を担う部分に共有結合した置換又は非置換アミノ基を有する非天然核酸塩基から選択される、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項11】
請求項10に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、10と26との間の整数であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
Zは、ヒドリド、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも3つは、独立して、式II、式III、又は式IV:
【化6】
によって表される非天然核酸塩基から選択され、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、ヒドリド、ヒドロキシ、並びに置換若しくは非置換のアルキルオキシ基から選択され; 及び
L1、L2及びL3は、塩基性アミノ基を、核酸塩基対合特性を担う部分に接続する式V:
【化7】
によって表される共有結合リンカーであり;
Q1及びQmは、置換又は非置換のメチレン(-CH2-)基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、…、及びQm-1は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素(-O-)、硫黄(-S-)、並びに置換若しくは非置換のアミノ基[-N(H)-、又は-N(置換基)-]から選択され; 及び
mは、1と16との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項12】
請求項11に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と21との間の整数であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、並びに置換若しくは非置換のアシル基から選択され;
Zは、ヒドロキシ、又は置換若しくは非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、並びにヒドリド基から選択され;
Q1及びQmは、置換又は非置換のメチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、…、及びQm-1は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素、並びにアミノ基から選択され; 及び
mは、1と11との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項13】
請求項11に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と19との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAと完全に相補的であり、
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアシル基から選択され;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、並びにヒドリド基から選択され;
Q1及びQmは、メチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、…、及びQm-1は、独立して、メチレン、酸素、及びアミノ基から選択され; 及び
mは、1と9との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項14】
請求項13に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と19との間の整数であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアシル基から選択され;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R3、及びR5は、ヒドリド基であり、並びにR2、R4、及びR6は、独立して、ヒドリド、又は置換若しくは非置換のアルキル基を表し;
Q1及びQmは、メチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、…、及びQm-1は、独立して、メチレン、酸素基から選択され; 及び
mは、1と9との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項15】
請求項13に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と19との間の整数であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアシル基から選択され;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及び非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、ヒドリド基であり;
Q1及びQmは、メチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、…、及びQm-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と8との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項16】
請求項13に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と17との間の整数であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、ヒドリド基であり;
Xは、ヒドリド基であり;
Yは、置換又は非置換のアシル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及び非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、ヒドリド基であり;
L1は、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-CH2-O-(CH2)2-、又は-CH2-O-(CH2)3-を表し、右端は、塩基性アミノ基に直接結合しており; 及び
L2及びL3は、独立して、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-(CH2)3-O-(CH2)2-、-(CH2)2-O-(CH2)3-、-(CH2)2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-(CH2)6-、-(CH2)7-、及び-(CH2)8-から選択され、右端は、塩基性アミノ基に直接結合している、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項17】
以下:
に提供されるペプチド核酸誘導体の群から選択される、請求項10に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
A、G、T、及びCは、それぞれ、アデニン、グアニン、チミン、及びシトシンの天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、及びG(pOq)は、それぞれ、式VI、式VII、式VIII、式IX、及び式X:
【化8】
によって表される非天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
p及びqは、整数であり; 及び
N末端置換基及びC末端置換基の略語は、以下に具体的に記載される通りであり: 「Fmoc-」は、「[(9-フルオレニル)メチルオキシ]カルボニル-」基の略語であり; 「Fethoc-」は、「[2-(9-フルオレニル)エチル-1-オキシ]カルボニル」基の略語であり; 「Ac-」は、「アセチル-」基の略語であり; 「ベンゾイル-」は、「ベンゼンカルボニル-」基の略語であり; 「Piv-」は、「ピバロイル-」基の略語であり; 「-Lys-」は、アミノ酸残基「リジン」の略語であり; 「-Val-」は、アミノ酸残基「バリン」の略語であり; 「-Gly-」は、アミノ酸残基「グリシン」の略語であり; 「ベンジル-」は、「1-(フェニル)メチル-」基の略語であり; 「フェニル-」は、「フェニル-」基の略語であり; 「Me-」は、「メチル-」基の略語であり; 「-HEX-」は、「6-アミノ-1-ヘキサノイル-」基の略語である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項18】
以下:
に提供される化合物の群から選択される、請求項17に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載のペプチド核酸誘導体又はその薬学的に許容可能な塩を含む、HIF-1α発現を伴う徴候又は症状を治療するための組成物。
【請求項20】
請求項1~18のいずれか一項に記載のペプチド核酸誘導体又はその薬学的に許容可能な塩を含む、固形腫瘍を治療するための組成物。
【請求項21】
HIF-1α発現を伴う徴候又は症状を治療するための医薬の製造における、請求項1~18のいずれか一項に記載のペプチド核酸誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項22】
固形腫瘍を治療するための医薬の製造における、請求項1~18のいずれか一項に記載のペプチド核酸誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年10月11日に出願された米国仮出願第62/406,577号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に対する優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
低酸素誘導因子1-α(HIF-1α)は、哺乳動物細胞において低酸素(酸素欠乏)条件下で誘導される[Proc. Natl. Acad. Sci. USA vol 92(12), 5510-5514 (1995)]。HIF-1αは、細胞において及び全身的に酸素恒常性の調節において重要な役割を果たす[Ann. Rev. Cell. Dev. Biol. vol 15, 551-578 (1999)]。HIF-1αは、エリスロポエチン(EPO)、血管内皮増殖因子(VEGF)、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、グルコーストランスポーター(GLUT)などを含む、60を超える遺伝子産物の転写を誘導することが知られている[Trends Mol. Med. vol 8, S62-67 (2002); Nature Rev. Cancer vol 3, 721-732 (2003); J. Biol. Chem. vol 276, 9519-9525 (2001)]。したがって、HIF-1αは、低酸素に応答してオンになるマスタースイッチと見なし得る。
【0003】
HIF-1αは、多様な生理学的又は病理学的状況に関与していることが知られている。例えば、HIF-1αは、血管形成の周知因子であるVEGFを誘導する。HIF-1αは、EPO発現を介して赤血球生成を促進する。HIF-1αは、細胞増殖及び生存に関与する遺伝子の転写を誘導する[Exp. Mol. Med. vol 36(1), 1-12 (2004)]。
【0004】
HIF-1αは、HIF-1α(又はHIF1A)遺伝子によってコードされており、ヘテロ二量体転写因子HIF-1のサブユニットである。酸素正常状態(正常酸素レベル)下では、HIF-1αタンパク質レベルは、プロリルヒドロキシラーゼ2(PHD2)によるプロリル残基での水酸化を通じて調節される[EMBO J. vol 22(16), 4082-4090 (2003)]。HIF-1αの水酸化生成物は、フォンヒッペル-リンドウ(VHL)腫瘍抑制タンパク質によって認識される。VHLへのHIF-1αの結合は、HIF-1αを、ユビキチン化及びしたがってプロテアソーム分解にしむける。低酸素条件下では、PHD2は不活性化され、HIF-1αのプロテアソーム分解は抑制され、結果として、HIF-1αレベルは増加する[Endocrine-Related Cancer vol 13, S61-S75 (2006)]。
【0005】
腫瘍におけるHIF-1α発現: 低酸素は、腫瘍微小環境の特徴である。腫瘍が増殖するにつれて、腫瘍塊の一部は、血管新生が不十分になり、腫瘍内に低酸素微小環境を生じる。腫瘍内低酸素は、化学療法抵抗性の増加及び転移の素因をもたらし得る、がん細胞における適応変化を誘導する。低酸素環境に対するこれらの適応反応の背後にある1つのメカニズムは、がん細胞におけるHIF-1αタンパク質のレベルの増加である。
【0006】
文献によると、HIF-1αは、原発性及び転移性腫瘍において過剰発現されることが見出されている。ヒトのがんにおけるHIF-1αの発現レベルは、腫瘍内血管形成及び死亡率と相関した[Cancer Res. vol 61, 2911-2916 (2001); Clin. Cancer Res. vol 7, 1661-1668 (2001); Cancer Res. vol 60, 4693-4696 (2000); Am. J. Pathol. vol 157, 411-421 (2000); Cancer Res. vol 59, 5830-5835 (1999)]。
【0007】
高いHIF-1αレベルを有する乳がん(T1/T2)患者は、より短い無病生存(DFS)期間及びより短い無遠位転移生存(DMFS)を示す傾向があり、腫瘍内HIF-1αレベルが、高リスク乳がん患者における優れた予後マーカーであることを示唆する[Breast Cancer Res. vol 6(3), R191-R198 (2004)]。HCT116ヒト結腸がん腫細胞における低酸素又はHIF-1α過剰発現は、マトリゲル(Matrigel)への結腸がん腫細胞の浸潤を刺激した。転移浸潤は、HIF-1α siRNAによって阻害された[Cancer Res. vol 63, 1138-1143 (2003)]。HIF-1α阻害剤は、腫瘍転移を阻害するのに有用であろう。
【0008】
HIF-1αの小分子阻害剤: HIF-1αは、転写因子である。HIF-1αの機能的活性又は発現を阻害する小分子がある。そのような小分子阻害剤は、HIF-1αの機能的活性又はレベルに間接的に影響を及ぼす。以下のように、そのようなHIF-1α阻害剤の豊富な例がある[Endocrine-Related Cancer vol 13, S61-S75 (2006); Oncotarget vol 7(7), 8172-8183 (2016)]。
【0009】
微小管阻害剤タキソール、トポイソメラーゼI阻害剤トポテカン、及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤FK228は、未知のメカニズムによってHIF-1αタンパク質発現を阻害する。トポイソメラーゼII阻害剤アントラサイクリンは、HIF-1α mRNAレベルを低減することによって、HIF-1αを阻害する。HSP90阻害剤ゲルダナマイシンは、HIF-1αタンパク質を不安定化するか、又はDNAへのHIF-1αの結合を阻害する。P300 CH1阻害剤ケトミンは、HIF-1トランス活性化活性を阻害する。プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブは、未同定メカニズムを通じてHIF-1α活性を阻害する。PI3K阻害剤ワートマニン、mTOR阻害剤ラパマイシン、COX-2阻害剤セレコキシブ、チロシンキナーゼ阻害剤ゲニステイン、及びerbB2モノクローナル抗体トラスツズマブ(ハーセプチン)は、HIF-1α mRNAの翻訳を遮断する。しかし、そのような阻害剤は、HIF-1α経路と選択的に反応せず、したがって、HIF-1α阻害によるそれらの治療上の寄与を評価することは困難であろう。
【0010】
リボソームタンパク質合成: タンパク質は、2-デオキシリボース核酸(DNA)によってコードされる。DNAは、転写されて、核においてプレmRNA(プレメッセンジャーリボ核酸)を産生する。プレmRNAのイントロンは、酵素的にスプライスアウトされ、mRNA(メッセンジャーリボ核酸)を生じ、次いで、これがサイトゾル区画に移動する。サイトゾルでは、リボソームと呼ばれる翻訳機構の複合体が、mRNAに結合し、mRNAに沿ってコードされた遺伝情報をスキャンしながらタンパク質合成を行う[Biochemistry vol 41, 4503-4510 (2002); Cancer Res. vol 48, 2659-2668 (1988)]。
【0011】
アンチセンスオリゴヌクレオチド: 配列特異的様式で(すなわち、相補的に)RNAに結合するオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)と呼ばれる。ASOは、mRNA又はプレmRNAに強く結合し得る。
【0012】
mRNAに強く結合するASOは、サイトゾルにおけるmRNAに沿ったリボソームによるタンパク質合成を阻害し得る。その標的タンパク質のリボソームタンパク質合成を阻害するために、ASOは、サイトゾル内に存在する必要がある。
【0013】
プレmRNAに強く結合するASOが、プレmRNAのスプライシングプロセスに干渉するためには、ASOは、核に存在してスプライシングプロセスを変える必要がある。
【0014】
非天然オリゴヌクレオチド: DNA又はRNAオリゴヌクレオチドは、内因性ヌクレアーゼによる分解を受けやすく、それらの治療的有用性を制限する。今日まで、多くの種類の非天然(すなわち、天然には存在しない)オリゴヌクレオチドが、開発され、集中的に研究されている[Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. vol 33, 533-540 (2006)]。それらの多くは、DNA及びRNAと比較して、長期の代謝安定性を示す。以下に提供されるのは、少数の代表的な非天然オリゴヌクレオチドの化学構造である。そのようなオリゴヌクレオチドは、DNA又はRNAがするように、相補的核酸に予想通りに結合する。
【0015】
【化1】
【0016】
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド: ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(PTO)は、モノマーあたり、骨格のホスフェートの酸素原子の1つが、硫黄原子で置換されているDNA類似体である。そのような小さな構造変化は、PTOを、ヌクレアーゼによる分解に対して抵抗性にした[Ann. Rev. Biochem. vol 54, 367-402 (1985)]。
【0017】
PTOとDNAとの間の骨格の構造的類似性を反映して、それらは両方とも、ほとんどの哺乳動物細胞種において細胞膜にあまり浸透しない。しかし、DNAのためのトランスポーター(複数可)を豊富に発現しているいくつかの種類の細胞については、DNA及びPTOは、良好な細胞浸透を示す。全身投与されたPTOは、肝臓及び腎臓に容易に分布することが知られている[Nucleic Acids Res. vol 25, 3290-3296 (1997)]。インビトロでのPTOの細胞浸透を改善するために、リポフェクションが広く使用されている。しかし、リポフェクションは、細胞膜を物理的に変化させ、細胞毒性を引き起こし、したがって、慢性的治療的使用に対して理想的ではないであろう。
【0018】
過去30年にわたって、アンチセンスPTO及びPTOの変異体は、がん、免疫学的障害、代謝性疾患などを治療するために臨床的に評価されている[Biochemistry vol 41, 4503-4510 (2002); Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. vol 33, 533-540 (2006)]。そのようなアンチセンス薬物候補のほとんどは、部分的にはPTOの乏しい細胞浸透のために、首尾よく開発されていない。乏しい細胞浸透を克服するために、治療活性のためにはPTOを高用量で投与する必要がある。しかし、PTOは、用量制限毒性、例えば、凝固時間の増加、補体活性化、尿細管性腎症、クッパー細胞活性化、及び免疫刺激、例えば、脾腫、リンパ過形成、単核細胞浸潤を誘導することが知られている[Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. vol 33, 533-540 (2006)]。
【0019】
多くのアンチセンスPTOは、肝臓又は腎臓からの大幅な寄与を有する疾患に対して臨床活性を示すことが見出されている。ミポメルセンは、LDLコレステロール輸送に関与するタンパク質であるアポB-100の合成を阻害するPTO類似体である。ミポメルセンは、おそらく肝臓へのその優先的な分布により、アテローム性動脈硬化症患者の特定の集団において治療活性を示した[Circulation vol 118(7), 743-753 (2008)]。ISIS-113715は、タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP1B)の合成を阻害するPTOアンチセンス類似体であり、II型糖尿病患者において治療活性を示すことが見出された[Curr. Opin. Mol. Ther. vol 6, 331-336 (2004)]。
【0020】
ロックド核酸: ロックド核酸(LNA)では、RNAの骨格リボース環は、RNA又はDNAに対する結合親和性を増加させるように構造的に拘束されている。したがって、LNAは、高親和性のDNA又はRNA類似体と見なしてもよい[Biochemistry vol 45, 7347-7355 (2006)]。
【0021】
ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド: ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)では、DNAの骨格ホスフェート及び2-デオキシリボースは、それぞれ、ホスホアミデート及びモルホリンに置き換えられている[Appl. Microbiol. Biotechnol. vol 71, 575-586 (2006)]。DNA骨格は負に帯電しているが、PMO骨格は帯電していない。したがって、PMOとmRNAとの間の結合は、骨格間の静電反発力がなく、DNAとmRNAとの間の結合よりも強い傾向がある。PMOはDNAと構造的に非常に異なるので、PMOは、DNA又はRNAを認識する肝臓トランスポーター(複数可)によって認識されないであろう。しかし、PMOは細胞膜を容易には浸透しない。
【0022】
ペプチド核酸: ペプチド核酸(PNA)は、単位骨格としてN-(2-アミノエチル)グリシンを有するポリペプチドであり、Nielsen博士及び同僚らによって発見された[Science vol 254, 1497-1500 (1991)]。PNAの化学構造及び略書した専門語を、以下に提供する図面で説明する。DNA及びRNAと同様に、PNAもまた相補的核酸に選択的に結合する[Nature (London) vol 365, 566-568 (1992)]。相補的核酸への結合において、PNAのN末端は、DNA又はRNAの「5'末端」と同等であると見なされ、PNAのC末端は、DNA又はRNAの「3'末端」と同等であると見なされる。
【0023】
【化2】
【0024】
PMOと同様に、PNA骨格は帯電していない。したがって、PNAとRNAとの間の結合は、DNAとRNAとの間の結合よりも強い傾向がある。PNAは化学構造においてDNAと著しく異なるので、PNAは、DNAを認識する肝臓トランスポーター(複数可)によって認識されず、DNA又はPTOの組織分布プロファイルとは異なる組織分布プロファイルを示すであろう。それにもかかわらず、PNAも哺乳動物細胞膜にあまり浸透しない(Adv. Drug Delivery Rev. vol 55, 267-280, 2003)。
【0025】
PNAの膜透過性を改善するための修飾核酸塩基: 共有結合したカチオン性脂質又はその同等物を有する修飾核酸塩基を導入することによって、PNAは、哺乳動物細胞膜に対して高度に透過性にされた。そのような修飾核酸塩基の化学構造は以下に提供されている。シトシン、アデニン、及びグアニンのそのような修飾核酸塩基は、それぞれ、グアニン、チミン、及びシトシンと予想通りに、相補的にハイブリダイズすることが見出された[PCT Appl. No. PCT/KR2009/001256; EP2268607; US8680253]。
【0026】
そのような修飾核酸塩基のPNAへの組み込みは、リポフェクションの状況を真似る。リポフェクションの間、オリゴヌクレオチド分子は、リポフェクタミンなどのカチオン性脂質分子で包まれ又はカチオン性脂質分子と混ぜられ、そのようなリポフェクタミン/オリゴヌクレオチド複合体は、裸のオリゴヌクレオチド分子と比較して、かなり容易に膜を浸透する。
【0027】
【化3】
【0028】
良好な膜透過性に加えて、それらのPNA誘導体は、相補的核酸に対して極めて強力な親和性を有することが見出された。例えば、4~5個の修飾核酸塩基を11~13マーのPNA誘導体に導入すると、相補的DNAとの二重鎖形成において、20℃以上のTm増加が容易にもたらされた。そのようなPNA誘導体は、一塩基ミスマッチに対して非常に敏感である。一塩基ミスマッチは、修飾塩基の種類及びPNA配列に応じて、11~22℃のTm低下をもたらした。
【0029】
HIF-1α ASO: HIF-1αの小分子阻害剤とは対照的に、HIF-1α mRNAを相補的に標的とするASOは、配列特異的様式でHIF-1αタンパク質のリボソーム合成を選択的に阻害し得る。
【0030】
数個の25マーのモルホリノ(PMO)HIF-1α ASOが、ツメガエル(Xenopus)において人工的に構築されたヒトHIF-1α mRNAの翻訳を阻害する、それらの能力について評価された。40ngの各モルホリノASOが、ツメガエル胚に微量注入され、HIF-1α発現を阻害することが見出された[J. Biol. Chem. vol 283(17), 11841-11849 (2008)]。
【0031】
RX-0047は、強力なHIF-1α PTO ASOである。RX-0047は、様々な細胞株におけるそのHIF-1α阻害活性について評価された。MDA-MB-231、PC3、及びA549などの細胞へリポフェクションすると、RX-0047は、1.9~4nMのインビトロIC50で、HIF-1αタンパク質の発現を阻害した。また、RX-0047は、配列特異的様式でUMRC2細胞におけるHIF-1α mRNAの発現を阻害した。30mg/KgのRX-0047の腹腔内注射は、マウスにおけるA549細胞の肺転移を阻害した。また、30mg/KgのRX-0047は、ヌードマウスにおける異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害した[J. Cell. Biochem. vol 104, 985-994 (2008)]。
【0032】
EZN-2968は、ヒトHIF-1α mRNAのコード領域を相補的に標的とするロックド核酸(LNA)誘導体である。EZN-2968は、RNAse HによるHIF-1α mRNAの切断を誘導し、その結果として、インビボ及び細胞におけるHIF-1αタンパク質の発現を阻害する。腫瘍増殖(DU145異種移植)は、週に2回、50mg/KgでEZN-2968を腹腔内に受けたヌードマウスにおいて有意に阻害された[Mol. Cancer Ther. vol 7(11), 3598-3608 (2008)]。
【0033】
EZN-2968は、難治性進行性固形腫瘍を有する少数のがん患者において評価された。EZN-2968は、週に1回、18mg/Kgで静脈内注入により投与された。臨床試験はスポンサーによって時期尚早に終了されたが、HIF-1α mRNAレベルは、腫瘍生検によって評価された6人の患者のうち4人において減少した[Cancer Chemother. Pharmacol. vol 73(2), 343-348 (2014)]。
【0034】
EZN-2968は、ヒトがん患者において評価されたHIF-1α ASOの非常にまれな例である。他のオリゴヌクレオチド治療薬と同様に、EZN-2968の治療用量は、その限られた細胞透過性のために、依然として高いと考えられる。DNA又はRNA骨格を有するオリゴヌクレオチド治療薬の用量制限毒性を克服するため、HIF-1αを標的とするオリゴヌクレオチド治療薬の細胞透過性を改善することが強く必要とされている。
【0035】
低分子干渉RNA(siRNA): 低分子干渉RNA(siRNA)は、20~25塩基対の二本鎖RNAを指す[Microbiol. Mol. Biol. Rev. vol 67(4), 657-685 (2003)]。siRNAのアンチセンス鎖は、なんらかの方法でタンパク質と相互作用して、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を形成する。次いで、RISCは、siRNAのアンチセンス鎖に相補的なmRNAの特定の部分に結合する。RISCと複合体を形成したmRNAは、切断を受ける。したがって、siRNAは、その標的mRNAの切断を触媒的に誘導し、その結果として、mRNAによるタンパク質発現を阻害する。RISCは、その標的mRNA内の完全相補的配列に常に結合するわけではなく、これは、siRNA療法のオフターゲット効果に関する懸念を提起する。DNA又はRNA骨格を有するオリゴヌクレオチドの他のクラスと同様に、siRNAは、乏しい細胞透過性を有し、したがって、適切に製剤化又は化学的に修飾されて良好な膜透過性を示さない限り、乏しいインビトロ又はインビボ治療活性を示す傾向がある。
【0036】
HIF-1α siRNA: 細胞におけるHIF-1α発現を下方制御するHIF-1α siRNAの豊富な例がある。しかし、インビトロ阻害活性は、siRNA分子が細胞内に効果的に送達された場合に通常観察された。例えば、HIF-1α siRNAは、100nMでHCT116細胞にリポフェクションによってトランスフェクトされ、低酸素下でHIF-1α mRNA及びHIF-1αタンパク質の顕著な減少を誘導することが見出された。siRNAはまた、VEGF、TGF-αなどのHIF-1標的タンパク質又はmRNAの発現レベルの変化を誘導した[Cancer Res. vol 63, 1138-1143 (2003)]。
【0037】
U251MG及びU343MG神経膠腫細胞は、リポフェクションによって75nMのHIF-1α siRNAをトランスフェクトされた。低酸素又は正常酸素にかかわらず、HIF-1α発現は、HIF-1α siRNAで処理した細胞において有意に減少した[BMC Cancer 10:605 (2010)]。
【0038】
ヒトHIF-1α mRNAを標的とするsiRNAのカチオン性ミセルナノ粒子は、PC3異種移植片を有するマウスにおいて腫瘍増殖を著しく阻害した。また、HIF-1α siRNAのナノ粒子の、ドキソルビシンとの同時処理は、PC3異種移植モデルにおいて追加的抗腫瘍活性を誘導した[Mol. Pharmaceutics vol 9(10), 2863-2874 (2012)]。
【0039】
HIF-1α siRNAのナノ粒子及びRGD標的化多機能脂質ECOは、HT-29結腸がん異種移植片を有するマウスにおいて抗腫瘍活性及び抗血管形成活性について評価された。製剤化されたHIF-1α siRNAは、2mg/Kgで3日毎に3週間、静脈内投与され、腫瘍増殖を50%阻害することが見出された。MRI評価は、腫瘍における血管分布の有意な減少、及び腫瘍内血流の70%の減少を示唆した。HIF-1α発現、並びにまた、VEGF、GLUT-1、及びCA9(炭酸脱水酵素9)などの関連タンパク質における有意な低減があった[Mol. Pharmaceutics vol 13(7), 2497-2506 (2016)]。
【0040】
プレmRNAのスプライシング: DNAは、転写されて、核においてプレmRNA(プレメッセンジャーリボ核酸)を産生する。次いで、図13に示される図に概略的に要約されるように、プレmRNAは、「スプライシング」と総称される一連の複雑な反応によるイントロンの削除後に、mRNAにプロセシングされる[Ann. Rev. Biochem. 72(1), 291-336 (2003); Nature Rev. Mol. Cell Biol. 6(5), 386-398 (2005); Nature Rev. Mol. Cell Biol. 15(2), 108-121 (2014)]。
【0041】
スプライシングは、プレmRNAとスプライシングアダプター因子との間の「スプライスソームE複合体」(すなわち、初期スプライスソーム複合体)を形成することによって開始される。「スプライスソームE複合体」では、U1は、エクソンNとイントロンNの接合部に結合し、U2AF35は、イントロンNとエクソン(N+1)の接合部に結合する。したがって、エクソン/イントロン又はイントロン/エクソンの接合部は、初期スプライスソーム複合体の形成にとって重要である。「スプライスソームE複合体」は、U2とさらに複合体化して、「スプライスソームA複合体」に進化する。「スプライスソームA複合体」は、近隣のエクソンを隣接させるために、イントロンを削除又はスプライスアウトする一連の複雑な反応を受ける。
【0042】
スプライシングのアンチセンス阻害: 核において、ASOは、プレmRNA内の特定の位置に強く結合し、プレmRNAのmRNAへのスプライシングプロセスに干渉し、標的エクソンを欠くmRNA(単数又は複数)を産生し得る。そのようなmRNAは、「スプライスバリアント」と呼ばれ、全長mRNAによってコードされるタンパク質とは異なる構造のタンパク質をコードする。
【0043】
原則として、スプライシングは、「スプライスソームE複合体」の形成を阻害することによって中断し得る。ASOが(5'→3')エクソン-イントロンの接合部、すなわち、「5'スプライス部位」に強く結合する場合、ASOは、プレmRNAとU1因子との間の複合体形成、及びしたがって「スプライスソームE複合体」の形成を遮断する。同様に、ASOが(5'→3')イントロン-エクソンの接合部、すなわち、「3'スプライス部位」に強く結合する場合、「スプライスソームE複合体」は形成できない。
【0044】
HIF-1αプレmRNAのアンチセンスエクソンスキッピング: 今日までに、HIF-1αプレmRNAのスプライシングプロセスを阻害し、エクソンスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチドの報告事例はない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0045】
概要
本発明は、式I:
【0046】
【化4】
によって表されるペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、10と26との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAの一部である20マーRNA配列[(5'→3')UGUUAAGUAGGAUAAGUUCU]と、好ましくはヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、デューテリド(deuterido)、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH2-C(=O)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のスルホニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、ヒドリド、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、置換若しくは非置換のアルキルアミノ、置換若しくは非置換のアリールアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも3つ(好ましくは少なくとも4つ)は、独立して、核酸塩基部分に共有結合した置換又は非置換アミノ基を有する非天然核酸塩基から選択される、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0047】
いくつかの実施形態では、S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表す。
【0048】
いくつかの実施形態では、X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表す。他の実施形態では、X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH2-C(=O)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表す。
【0049】
いくつかの実施形態では、Zは、ヒドリド、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表す。他の実施形態では、Zは、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、アミノ、置換若しくは非置換のアルキルアミノ、又は置換若しくは非置換のアリールアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表す。
【0050】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、標的HIF-1αプレmRNA配列と完全に相補的である。他の実施形態では、式Iの化合物は、標的HIF-1αプレmRNA配列と部分的に相補的であり、例えば、標的HIF-1αプレmRNA配列と1つ又は2つのミスマッチを有する。
【0051】
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAの選択的スプライシングを誘導し、「エクソン2」を欠くHIF-1α mRNAスプライスバリアント(複数可)を生じ、固形腫瘍、又はHIF-1α活性を伴う症状を治療するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1A-B】図1A. 分取(preparatory)HPLC精製前の「ASO1」のC18逆相HPLCクロマトグラム。図1B. 分取HPLC精製後の「ASO1」のC18逆相HPLCクロマトグラム。
図2】C18-RP分取HPLCによる精製後の「ASO1」のESI-TOF質量スペクトル。
図3A-C】図3A. 0(陰性対照)、10、100、又は1,000zMの「ASO2」で処理したHeLa細胞におけるHIF-1αネステッドRT-PCR産物の電気泳動データ。図3B. PCRバンドの予測サイズ。図3C. エクソン2のスキッピングに割り当てられたPCR産物バンドのサンガー配列決定データ。
図4A-B】図4A. 0zM(陰性対照)、10zM、100zM、1aM、又は10aMの「ASO2」で24時間処理したHeLa細胞におけるHIF-1αウエスタンブロットデータ。図4B. 0zM(陰性対照)、10zM、100zM、1aM、又は10aMの「ASO2」で24時間処理したHeLa細胞における、β-アクチンに対して標準化したHIF-1α発現レベル。
図5A-B】図5A. 0(陰性対照)、10、100、又は1,000zMの「ASO2」で処理したHeLa細胞におけるSYBR GreenによるネステッドqPCR(標準誤差によるエラーバー)。図5B. 0(陰性対照)、10、100、又は1,000zMの「ASO2」で処理したHeLa細胞におけるTaqManプローブによるネステッドqPCR(標準誤差によるエラーバー)。
図6A-C】図6A. 0(陰性対照)、10、100、又は1,000zMの「ASO6」で処理したHeLa細胞におけるHIF-1αネステッドRT-PCR産物の電気泳動データ。図6B. 0zM(陰性対照)、10zM、100zM、又は1aMの「ASO6」で24時間処理したHeLa細胞におけるHIF-1αウエスタンブロットデータ。図6C. 0zM(陰性対照)、10zM、100zM、又は1aMの「ASO6」で24時間処理したHeLa細胞における、β-アクチンに対して標準化したHIF-1α発現レベル(標準誤差によるエラーバー)。
図7A-B】図7A. 0(陰性対照)、10、100、又は1,000zMの「ASO6」で処理したHeLa細胞におけるSYBR GreenによるネステッドqPCRデータ(標準誤差によるエラーバー)。図7B. 0(陰性対照)、10、100、又は1,000zMの「ASO6」で処理したHeLa細胞におけるTaqManプローブによるネステッドqPCRデータ(標準誤差によるエラーバー)。
図8A-B】図8A. 0zM(陰性対照)、100zM、300zM、1aM、3aM、10aM、30aM、100aM、又は300aMの「ASO1」で72時間処理したHeLa細胞におけるHIF-1αウエスタンブロットデータ。図8B. 0zM(陰性対照)、100zM、300zM、1aM、3aM、10aM、30aM、100aM、又は300aMの「ASO1」で72時間処理したHeLa細胞における、β-アクチンに対して標準化したHIF-1α発現レベル(陰性対照についてのみN=4; 標準誤差によるエラーバー)。
図9A-C】図9A. 0(陰性対照)、100、1,000、又は3,000pmole/Kgの「ASO1」を皮下に受けたヌードマウスにおけるU251腫瘍増殖(標準誤差によるエラーバー)。図9B. 各ASO用量群からの代表的な腫瘍内HIF-1α IHC画像。図9C. 陰性対照群に対して標準化した各用量群の平均HIF-1α発現レベル(群あたりN=5; 標準誤差によるエラーバー)。
図10A-D】図10A. 0(陰性対照)、30、100、又は300pmole/Kgの「ASO6」で週3回皮下処理したヌードマウスにおけるA431腫瘍増殖。図10B. 25日目における平均腫瘍重量(標準誤差によるエラーバー)。図10C. 0(陰性対照)、1、10、又は100pmole/Kgの「ASO6」で週2回皮下処理したヌードマウスにおけるPC3腫瘍増殖。図10D. 28日目における平均腫瘍重量(標準誤差によるエラーバー)。
図11A-B】図11A. 0(陰性対照)、0.1、1.0、又は10pmole/Kgの等量の「ASO6」及び「ASO11」で週2回皮下処理したヌードマウスにおけるU-251MG腫瘍増殖(標準誤差によるエラーバー)。図11B. 92日目における平均U-251MG腫瘍重量。
図12A-D】図12A. 陰性対照及び1.0pmole/Kg用量群からの代表的な腫瘍内HIF-1α IHC画像。図12B. 陰性対照群に対して標準化した1.0pmole/Kg用量群の平均HIF-1α発現レベル(群あたりN=4; 標準誤差によるエラーバー)。図12C. 陰性対照及び1.0pmole/Kg用量群からの代表的な腫瘍内VEGF-A IHC画像。図12D. 陰性対照群に対して標準化した1.0pmole/Kg用量群の平均VEGF-A発現レベル(群あたりN=4; 標準誤差によるエラーバー)。
図13】プレmRNAは、「スプライシング」と総称される一連の複雑な反応によるイントロンの削除後に、mRNAにプロセシングされる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
詳細な説明
本発明は、式I:
【0054】
【化5】
によって表されるペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、10と26との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAの一部である20マーRNA配列[(5'→3')UGUUAAGUAGGAUAAGUUCU]と、好ましくはヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、デューテリド、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH2-C(=O)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のスルホニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、ヒドリド、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、置換若しくは非置換のアルキルアミノ、置換若しくは非置換のアリールアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも3つ(好ましくは少なくとも4つ)は、独立して、核酸塩基部分に共有結合した置換又は非置換アミノ基を有する非天然核酸塩基から選択される、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態では、S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表す。
【0056】
いくつかの実施形態では、X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表す。他の実施形態では、X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH2-C(=O)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表す。
【0057】
いくつかの実施形態では、Zは、ヒドリド、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表す。他の実施形態では、Zは、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、アミノ、置換若しくは非置換のアルキルアミノ、又は置換若しくは非置換のアリールアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表す。
【0058】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、標的HIF-1αプレmRNA配列と完全に相補的である。他の実施形態では、式Iの化合物は、標的HIF-1αプレmRNA配列と部分的に相補的であり、例えば、標的HIF-1αプレmRNA配列と1つ又は2つのミスマッチを有する。
【0059】
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAの選択的スプライシングを誘導し、「エクソン2」を欠くHIF-1α mRNAスプライスバリアント(複数可)を生じ、固形腫瘍、又はHIF-1α活性を伴う症状を治療するのに有用である。
【0060】
「nは10と26との間の整数である」という記載は、文字通り、nが11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、及び25の整数の群から選択可能な整数であることを表す。
【0061】
式Iの化合物は、ヒトHIF-1α遺伝子(NCBI参照配列: NG_029606.1)からアクセスされるヒトHIF-1αプレmRNAの「エクソン2」の3'スプライス部位に強く結合する。エクソン及びイントロンの番号付けは、報告されたHIF-1α mRNA転写物に応じて変わり得るが、「イントロン1」由来の10マー及び「エクソン2」由来の10マーからなる20マーのHIF-1αプレmRNA配列は、[(5'→3')UGUUAAGUAGGAUAAGUUCU]と読む。20マーのプレmRNA配列の提供は、ヒトHIF-1αプレmRNA内の標的3'スプライス部位を明白に特定しようとするものである。
【0062】
あるいは、20マーのプレmRNA配列は、[(5'→3')uguuaaguag┃GAUAAGUUCU]と表してもよく、イントロン及びエクソンの配列は、それぞれ「小」文字及び「大」文字で表され、イントロンとエクソンの間の接合部は「┃」で示される。したがって、本発明において式Iの化合物を記載するために採用された[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーのプレmRNA配列は、代わりに、[(5'→3')uaaguag┃GAUAAGU]と表してもよい。
【0063】
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA内の「エクソン2」の標的3'スプライス部位に強く結合し、化合物の標的スプライス部位を含む「スプライスソーム初期複合体」の形成に干渉する。前記化合物は標的スプライス部位を含む「スプライスソーム初期複合体」の形成を立体的に阻害するので、HIF-1α「エクソン2」は、スプライスアウト又は削除されて、「エクソン2」を欠くHIF-1α mRNAスプライスバリアント(単数又は複数)を生じる。結果として、本発明の化合物は、HIF-1α「エクソン2」のスキッピングを誘導すると言われる。得られたHIF-1α mRNAスプライスバリアント(複数可)は、全長HIF-1αタンパク質によって発現されるHIF-1α機能活性を欠くHIF-1αバリアントタンパク質(複数可)をコードする。
【0064】
式Iの化合物は、先行技術[PCT/KR2009/001256]に例示されているように、相補的DNAに強く結合する。式IのPNA誘導体と、その全長相補的DNA又はRNAとの間の二重鎖は、水性緩衝液中で確実に測定するには高すぎるTm値を示す。緩衝溶液は、Tm測定中に沸騰してなくなる傾向がある。式IのPNA化合物は、より短い長さ、例えば10マーの相補的DNAとの高いTm値を依然としてもたらす。高い結合親和性のために、本発明のPNA誘導体は、「エクソン2」の3'スプライス部位と10マーほどの小さい相補的重複であっても、細胞においてHIF-1α「エクソン2」のスキッピングを強力に誘導する。
【0065】
前記化合物は、完全な相補性を有する標的HIF-1αプレmRNA配列に対して非常に強い親和性を有する。式Iの化合物が標的HIF-1αプレmRNA配列と1つ又は2つのミスマッチを有する場合でさえも、PNA化合物は、依然として標的プレmRNA配列に強く結合することができ、スプライシングプロセスを中断する。前記化合物と、標的HIF-1αプレmRNA配列との間の親和性が、ミスマッチ(複数可)にもかかわらず、十分に強いためである。式Iの14マーのPNA誘導体は、例えば、[(5'→3')aaguag┃GAUAAGUU]の14マーのHIF-1αプレmRNA配列と12マーのみの相補的重複を有する場合でも、標的プレmRNA14マー配列との2つのミスマッチにもかかわらず、14マー化合物は、依然として、HIF-1α「エクソン2」のスキッピングを誘導することができる。それにもかかわらず、他のプレmRNAとのオフターゲットエンゲージメントを回避するために、標的プレmRNA配列と多すぎるミスマッチを有することは望ましくないであろう。
【0066】
式IのPNA誘導体において有用な天然又は非天然核酸塩基の化学構造は、以下に例示される。
【0067】
【化6】
【0068】
【化7】
【0069】
【化8】
【0070】
本発明の天然(慣習的に「天然に存在する」と表現される)又は非天然(慣習的に「天然に存在しない」と表現される)核酸塩基は、上に提供される核酸塩基を含むが、これらに限定されない。そのような天然又は非天然核酸塩基の提供は、式Iの化合物について許容可能な核酸塩基の多様性を説明しようとするものであり、したがって、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。当業者は、式IのPNA化合物内の特定の位置について、天然又は非天然核酸塩基の変形が可能である(そのような変形が、本発明の標的プレmRNA配列との相補性の条件を満たす限り)ことを容易に理解し得る。
【0071】
式IのPNA誘導体を記載するために採用された置換基は、本明細書に例示される。置換又は非置換のアルキル基の例が、以下に提供される。
【0072】
【化9】
【0073】
置換若しくは非置換のアルキルアシル、並びに置換若しくは非置換のアリールアシル基が、以下に例示される。
【0074】
【化10】
【0075】
置換若しくは非置換のアルキルアミノ、置換若しくは非置換のアリールアミノ、置換若しくは非置換のアリール、並びに置換若しくは非置換のアルキルスルホニル若しくはアリールスルホニル基の例が、以下に示される。
【0076】
【化11】
【0077】
置換又は非置換のアルキルオキシカルボニル又はアリールオキシカルボニル、置換又は非置換のアルキルアミノカルボニル又はアリールアミノカルボニル基の例が、以下に提供される。
【0078】
【化12】
【0079】
置換若しくは非置換のアルキルアミノチオカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノチオカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルオキシチオカルボニル、並びに置換若しくは非置換のアリールオキシチオカルボニル基の例が、以下に提供される。
【0080】
【化13】
【0081】
そのような例示的置換基の提供は、式Iの化合物について許容可能な置換基の多様性を説明しようとするものであり、したがって、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。当業者は、PNAオリゴヌクレオチド配列が、N末端又はC末端における置換基を超えて、標的プレmRNA配列への前記PNAオリゴヌクレオチドの配列特異的結合についての最重要寄与因子であることを容易に理解し得る。
【0082】
式IのPNA化合物は、良好な細胞透過性を有し、先行技術[PCT/KR2009/001256]において例示されているように、「裸の」オリゴヌクレオチドとして処理された場合、細胞内に容易に送達されることができる。したがって、本発明の化合物は、「裸の」オリゴヌクレオチドとして前記化合物で処理した細胞において、HIF-1αプレmRNAにおける「エクソン2」のスキッピングを誘導して、HIF-1α「エクソン2」を欠くHIF-1α mRNAスプライスバリアント(複数可)を生じる。「裸の」オリゴヌクレオチドとしての式Iの化合物で処理した細胞は、前記PNA化合物処理のない細胞よりも、低いレベルの全長HIF-1α mRNA及びタンパク質を発現する。同様に、式Iの化合物は、「裸のオリゴヌクレオチド」として全身投与時に、固形腫瘍組織におけるHIF-1α発現を阻害する。したがって、前記化合物は、固形腫瘍、又は過剰なHIF-1α発現を伴う障害を治療するのに有用である。
【0083】
式Iの化合物は、意図される治療的又は生物学的活性のために、標的組織への全身送達を増加させるための侵襲的製剤を必要としない。通常、式Iの化合物は、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)又は生理食塩水に溶解され、標的組織において所望の治療的(すなわち、抗腫瘍)又は生物学的活性を誘発するために全身投与される。
【0084】
式IのPNA誘導体は、薬学的に許容可能な酸又は塩基と組み合わせて使用してもよく、又はこれらと共に製剤化してもよく、薬学的に許容可能な酸又は塩基としては、限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、メタンスルホン酸、クエン酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0085】
式IのPNA化合物又はその薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能なアジュバントと組み合わせて対象に投与することができ、薬学的に許容可能なアジュバントとしては、限定されないが、クエン酸、塩酸、酒石酸、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、重炭酸ナトリウム、蒸留水、防腐剤(複数可)などが挙げられる。
【0086】
本発明の化合物は、1fmole/Kgから1nmole/Kg超の範囲の治療的に有効な用量で対象に全身投与することができ、この用量は、投与スケジュール、対象の症状又は状況などに応じて変わるであろう。
【0087】
本発明の化合物は、1aMから1nM超の範囲の治療的に有効な濃度で対象に局所投与することができ、この濃度は、投与スケジュール、対象の症状又は状況などに応じて変わるであろう。
【0088】
特定の実施形態では、本発明は、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、10と26との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的HIF-1αプレmRNA配列と完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有して標的HIF-1αプレmRNA配列と部分的に相補的であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、デューテリド、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH2-C(=O)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、アミノ[-NH2]、置換若しくは非置換のアルキルアミノ、置換若しくは非置換のアリールアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、核酸塩基部分に共有結合した置換又は非置換アミノ基を有する非天然核酸塩基から選択される、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0089】
好ましいのは、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、10と26との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的HIF-1αプレmRNA配列と完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有して標的HIF-1αプレmRNA配列と部分的に相補的であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、デューテリド、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド、ホルミル、アミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、アミノ[-NH2]、置換若しくは非置換のアルキルアミノ、置換若しくは非置換のアリールアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも3つは、独立して、式II、式III、又は式IV:
【0090】
【化14】
によって表される非天然核酸塩基から選択され、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、ヒドリド、ヒドロキシ、並びに置換若しくは非置換のアルキルオキシ基から選択され; 及び
L1、L2及びL3は、塩基性アミノ基を、核酸塩基対合特性を担う部分に接続する式V:
【0091】
【化15】
によって表される共有結合リンカーであり;
Q1及びQmは、置換又は非置換のメチレン(-CH2-)基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素(-O-)、硫黄(-S-)、並びに置換若しくは非置換のアミノ基[-N(H)-、又は-N(置換基)-]から選択され; 及び
mは、1と16との間の整数である、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0092】
興味深いのは、式IのPNAオリゴマー、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、11と23との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的HIF-1αプレmRNA配列と完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有して標的HIF-1αプレmRNA配列と部分的に相補的であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、アミノ、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、並びにヒドリド基から選択され;
Q1及びQmは、置換又は非置換のメチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素(-O-)、並びにアミノ基[-N(H)-]から選択され; 及び
mは、1と11との間の整数である、
PNAオリゴマー、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0093】
特に興味深いのは、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、11と21との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的HIF-1αプレmRNA配列と完全に相補的であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、アミノ、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、並びにヒドリド基から選択され;
Q1及びQmは、メチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、並びに酸素基から選択され; 及び
mは、1と9との間の整数である、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0094】
関心が高いのは、式IのPNAオリゴマー、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、12と19との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的HIF-1αプレmRNA配列と完全に相補的であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、アミノ、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、並びにヒドリド基から選択され;
Q1及びQmは、メチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と9との間の整数である、
PNAオリゴマー、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0095】
より関心が高いのは、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、12と19との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも11マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的HIF-1αプレmRNA配列と完全に相補的であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、アミノ、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、ヒドリド基であり;
Q1及びQmは、メチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と8との間の整数である、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0096】
最も関心が高いのは、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、12と19との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも12マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的HIF-1αプレmRNA配列と完全に相補的であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド基を表し;
Xは、ヒドリド基であり;
Yは、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、アミノ、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、ヒドリド基であり;
L1は、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-CH2-O-(CH2)2-、-CH2-O-(CH2)3-、-CH2-O-(CH2)4-、-CH2-O-(CH2)5-、-CH2-O-(CH2)6-、又は-CH2-O-(CH2)7-を表し、右端は、塩基性アミノ基に直接結合しており; 及び
L2及びL3は、独立して、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-(CH2)3-O-(CH2)2-、-(CH2)2-O-(CH2)3-、-(CH2)2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-(CH2)6-、-(CH2)7-、及び-(CH2)8-から選択され、右端は、塩基性アミノ基に直接結合している、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0097】
具体的に興味深いのは、以下:
【0098】
【0099】
【0100】
に提供される化合物の群から選択される、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
A、G、T、及びCは、それぞれ、アデニン、グアニン、チミン、及びシトシンの天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、及びG(pOq)は、それぞれ、式VI、式VII、式VIII、式IX、及び式X
【0101】
【化16】
によって表される非天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
p及びqは、整数であり; 及び
N末端置換基及びC末端置換基の略語は、以下に具体的に記載される通りであり: 「Fmoc-」は、「[(9-フルオレニル)メチルオキシ]カルボニル-」基の略語であり; 「Fethoc-」は、「[2-(9-フルオレニル)エチル-1-オキシ]カルボニル」基の略語であり; 「Ac-」は、「アセチル-」基の略語であり; 「ベンゾイル-」は、「ベンゼンカルボニル-」基の略語であり; 「Piv-」は、「ピバロイル-」基の略語であり; 「n-プロピル-」は、「1-(n-プロピル)-」基の略語であり; 「H-」は、「ヒドリド-」基の略語であり; 「p-トルエンスルホニル」は、「(4-メチルベンゼン)-1-スルホニル-」基の略語であり; 「-Lys-」は、アミノ酸残基「リジン」の略語であり; 「-Val-」は、アミノ酸残基「バリン」の略語であり; 「-Leu-」は、アミノ酸残基「ロイシン」の略語であり; 「-Arg-」は、アミノ酸残基「アルギニン」の略語であり; 「-Gly-」は、アミノ酸残基「グリシン」の略語であり; 「[N-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」は、「[N-1-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」基の略語であり; 「ベンジル-」は、「1-(フェニル)メチル-」基の略語であり; 「フェニル-」は、「フェニル-」基の略語であり; 「Me-」は、「メチル-」基の略語であり; 「-HEX-」は、「6-アミノ-1-ヘキサノイル-」基の略語であり、「FAM-」は、「5又は6-フルオレセイン-カルボニル-(異性体混合物)」基の略語であり、及び「-NH2」は、非置換の「-アミノ」基の略語である、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0102】
特定の実施形態では、本発明は、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAの一部である20マーRNA配列[(5'→3')UGUUAAGUAGGAUAAGUUCU]と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
nは、10と26との間の整数であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
Zは、ヒドリド、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも3つは、独立して、相当する核酸塩基対合特性を担う部分に共有結合した置換又は非置換アミノ基を有する非天然核酸塩基から選択される、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0103】
特定の実施形態では、本発明は、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAの一部である20マーRNA配列[(5'→3')UGUUAAGUAGGAUAAGUUCU]と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
nは、10と26との間の整数であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
Zは、ヒドリド、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも3つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、ヒドリド、ヒドロキシ、並びに置換若しくは非置換のアルキルオキシ基から選択され; 及び
L1、L2及びL3は、塩基性アミノ基を、核酸塩基対合特性を担う部分に接続する式Vによって表される共有結合リンカーであり;
Q1及びQmは、置換又は非置換のメチレン(-CH2-)基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素(-O-)、硫黄(-S-)、並びに置換若しくは非置換のアミノ基[-N(H)-、又は-N(置換基)-]から選択され; 及び
mは、1と16との間の整数である、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0104】
特定の実施形態では、本発明は、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAの一部である20マーRNA配列[(5'→3')UGUUAAGUAGGAUAAGUUCU]と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
nは、11と21との間の整数であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、並びに置換若しくは非置換のアシル基から選択され;
Zは、ヒドロキシ、又は置換若しくは非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、並びにヒドリド基から選択され;
Q1及びQmは、置換又は非置換のメチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素、並びにアミノ基から選択され; 及び
mは、1と11との間の整数である、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0105】
特定の実施形態では、本発明は、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAの一部である20マーRNA配列[(5'→3')UGUUAAGUAGGAUAAGUUCU]と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
nは、11と19との間の整数であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアシル基から選択され;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し; 及び
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、並びにヒドリド基から選択され;
Q1及びQmは、メチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、メチレン、酸素、及びアミノ基から選択され; 及び
mは、1と9との間の整数である、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0106】
特定の実施形態では、本発明は、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAの一部である20マーRNA配列[(5'→3')UGUUAAGUAGGAUAAGUUCU]と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
nは、11と19との間の整数であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアシル基から選択され;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R3、及びR5は、ヒドリド基であり、並びにR2、R4、及びR6は、独立して、ヒドリド、又は置換若しくは非置換のアルキル基を表し;
Q1及びQmは、メチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、メチレン、酸素基から選択され; 及び
mは、1と9との間の整数である、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0107】
特定の実施形態では、本発明は、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAの一部である20マーRNA配列[(5'→3')UGUUAAGUAGGAUAAGUUCU]と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
nは、11と19との間の整数であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアシル基から選択され;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及び非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、ヒドリド基であり;
Q1及びQmは、メチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と8との間の整数である、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0108】
特定の実施形態では、本発明は、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAの一部である20マーRNA配列[(5'→3')UGUUAAGUAGGAUAAGUUCU]と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
nは、11と17との間の整数であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、ヒドリド基であり;
Xは、ヒドリド基であり;
Yは、置換又は非置換のアシル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及び非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、ヒドリド基であり;
L1は、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-CH2-O-(CH2)2-、又は-CH2-O-(CH2)3-を表し、右端は、塩基性アミノ基に直接結合しており; 及び
L2及びL3は、独立して、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-(CH2)3-O-(CH2)2-、-(CH2)2-O-(CH2)3-、-(CH2)2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-(CH2)6-、-(CH2)7-、及び-(CH2)8-から選択され、右端は、塩基性アミノ基に直接結合している、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0109】
特定の実施形態では、本発明は、以下:
【0110】
【0111】
に提供される化合物の群から選択される、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
A、G、T、及びCは、それぞれ、アデニン、グアニン、チミン、及びシトシンの天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、及びG(pOq)は、それぞれ、式VI、式VII、式VIII、式IX、及び式Xによって表される非天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
p及びqは、整数であり; 及び
N末端置換基及びC末端置換基の略語は、以下に具体的に記載される通りであり: 「Fmoc-」は、「[(9-フルオレニル)メチルオキシ]カルボニル-」基の略語であり; 「Fethoc-」は、「[2-(9-フルオレニル)エチル-1-オキシ]カルボニル」基の略語であり; 「Ac-」は、「アセチル-」基の略語であり; 「ベンゾイル-」は、「ベンゼンカルボニル-」基の略語であり; 「Piv-」は、「ピバロイル-」基の略語であり; 「n-プロピル-」は、「1-(n-プロピル)-」基の略語であり; 「-Lys-」は、アミノ酸残基「リジン」の略語であり; 「-Val-」は、アミノ酸残基「バリン」の略語であり; 「-Leu-」は、アミノ酸残基「ロイシン」の略語であり; 「-Arg-」は、アミノ酸残基「アルギニン」の略語であり; 「-Gly-」は、アミノ酸残基「グリシン」の略語であり; 「ベンジル-」は、「1-(フェニル)メチル-」基の略語であり; 「フェニル-」は、「フェニル-」基の略語であり; 「Me-」は、「メチル-」基の略語である、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0112】
A、G、T、C、C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、及びG(pOq)と略書されるPNAモノマーの化学構造は、まとめて以下に提供される。先行技術[PCT/KR2009/001256]で論じられているように、C(pOq)は、「グアニン」に対するその好ましいハイブリダイゼーションのために、「シトシン」に対応する修飾PNAモノマーと見なされる。A(p)及びA(pOq)は、「チミン」に対するそれらの強い親和性のために、「アデニン」として作用する修飾PNAモノマーと見なされる。同様に、G(p)及びG(pOq)は、「シトシン」とのそれらの生産的な塩基対合のために、「グアニン」と同等の修飾PNAモノマーであると考えられる。
【0113】
【化17】
【0114】
本発明における式IのPNA誘導体のN末端又はC末端を多様化するために使用される置換基についての様々な略語の化学構造が、以下に提供される。
【0115】
【化18】
【0116】
PNA誘導体の略語を例示するために、「(N→C)Fethoc-GA(5)A-C(1O2)TT-A(5)TC-CTA(5)-C(1O2)T-NH2」と略書される14マーのPNA誘導体の化学構造が、以下に提供される。
【0117】
【化19】
【0118】
別の例示として、「(N→C)Fmoc-Val-CTC(1O2)-A(5)TC-CTA(6)-C(1O3)TT-AA(2O2)C-NH2」と略書される15マーのPNA誘導体の化学構造が、以下に提供される。
【0119】
【化20】
【0120】
「(N→C)Fethoc-CA(5)G-AA(5)C-TTA(5)-TCC(1O2)-TA(5)-NH2」と略書される14マーPNA誘導体は、プレmRNAへの相補的結合について「(5'→3')CAG-AAC-TTA-TCC-TA」のDNA配列と同等である。この14マーPNAは、ヒトHIF-1αプレmRNA中のイントロン1とエクソン2の接合部にまたがる[(5'→3')guuguuguuaaguag┃GAUAAGUUCUGAACG]の30マープレmRNA配列と14マーの相補的重複を有し、相補的塩基対合には、
【0121】
において「太字」及び「下線付き」の印を付ける。
【0122】
「(N→C)Fethoc-CTC(1O2)-A(6)TC-CTA(6)-C(1O2)TT-AA(6)C-NH2」と略書される15マーPNA誘導体は、プレmRNAへの相補的結合について「(5'→3')CAA-TTC-ATC-CTA-CTC」のDNA配列と同等である。この15マーPNAは、[(5'→3')guuguuguuaaguag┃GAUAAGUUCUGAACG]の30マーヒトHIF-1αプレmRNA配列と15マーの相補的重複を有し、相補的塩基対合には、
【0123】
において「太字」及び「下線付き」の印を付ける。
【0124】
「(N→C)Piv-Lys-AA(6)C-TTA(6)-TCC(1O2)-TA(6)C-TTA(5)-Val-NH2」の15マーPNA配列は、プレmRNAへの相補的結合について「(5'→3')ATT-CAT-CCT-ATT-CAA」のDNA配列と同等である。この15マーPNAは、[(5'→3')guuguuguuaaguag┃GAUAAGUU-CUGAACG]の30マーヒトHIF-1αプレmRNA配列と15マーの相補的重複を有し、相補的塩基対合には、
【0125】
において「太字」及び「下線付き」の印を付ける。
【0126】
「(N→C)Fethoc-A(6)GA-A(6)CT-CA(6)T-CC(1O2)T-A(6)CT-TA(6)-NH2」と略書される17マーPNA誘導体は、プレmRNAへの相補的結合について「(5'→3')AGA-ACT-CAT-CCT-ACT-TA」のDNA配列と同等である。17マーPNAは、[(5'→3')guuguuguuaaguag┃GAUAAGUUCUGAACG]の30マーのヒトHIF-1αプレmRNA配列に対して16マーの相補的重複及び単一のミスマッチを有する。
【0127】
におけるように、相補的塩基対合には、「太字」及び「下線付き」の印を付け、単一のミスマッチには、引用符記号(" ")で印を付ける。単一のミスマッチにもかかわらず、この17マーPNAは、式Iの化合物についての構造的要件を満たす。したがって、この17マーPNA誘導体は、式Iの化合物に属する。
【0128】
いくつかの実施形態では、本発明は、以下:
【0129】
【0130】
に記載される具体的な化合物の群から選択される、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明は、以下:
【0132】
【0133】
に記載される具体的な化合物の群から選択される、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0134】
発明の詳細な説明
PNAオリゴマーを調製するための一般手順
PNAオリゴマーは、わずかであるが適切な改変を加えた先行技術[US6,133,444; WO96/40685]に開示された方法に従って、Fmoc化学に基づく固相ペプチド合成(SPPS)によって合成した。この研究で使用した固体支持体は、PCAS BioMatrix Inc. (Quebec, Canada)から購入したH-Rink Amide-ChemMatrixであった。修飾核酸塩基を有するFmoc-PNAモノマーは、先行技術[PCT/KR 2009/001256]に記載されているように、又はわずかな改変を加えて合成した。修飾核酸塩基を有するそのようなFmoc-PNAモノマー、及び天然に存在する核酸塩基を有するFmoc-PNAモノマーを使用して、本発明のPNA誘導体を合成した。PNAオリゴマーをC18逆相HPLC(0.1%TFAを含む水/アセトニトリル又は水/メタノール)によって精製し、質量分析法によって特徴付けた。
【0135】
スキーム1は、本発明のSPPSにおいて採用されている典型的なモノマー伸長サイクルを例示しており、手順の詳細は以下に提供される。しかし、当業者にとって、自動ペプチド合成機又は手動ペプチド合成機上でSPPS反応を効果的に実行するために、わずかな変形が明らかに可能である。スキーム1の各反応工程は、以下のように簡単に提供される。
【0136】
【0137】
[H-Rink-ChemMatrix樹脂の活性化] 1.5mLの20%ピペリジン/DMF中の0.01mmol(約20mg樹脂)のChemMatrix樹脂を、20分間、ライブラチューブ(libra tube)中でボルテックスし、脱Fmoc溶液をろ過して除いた。樹脂を、連続して、1.5mLの塩化メチレン(MC)、1.5mLのジメチルホルムアミド(DMF)、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、及び1.5mLのMCでそれぞれ30秒間洗浄した。固体支持体上に得られた遊離アミンを、Fmoc-PNAモノマー又はFmoc-保護アミノ酸誘導体のいずれかとのカップリングに供した。
【0138】
[脱Fmoc] 樹脂を、1.5mLの20%ピペリジン/DMF中で7分間ボルテックスし、脱Fmoc溶液をろ過して除いた。樹脂を、連続して、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、及び1.5mLのMCでそれぞれ30秒間洗浄した。固体支持体上に得られた遊離アミンを、直ちにFmoc-PNAモノマーとのカップリングに供した。
【0139】
[Fmoc-PNAモノマーとのカップリング] 固体支持体上の遊離アミンを、Fmoc-PNAモノマーと以下のようにカップリングさせた。0.04mmolのPNAモノマー、0.05mmolのHBTU、及び10mmolのDIEAを、1mLの無水DMF中で2分間インキュベートし、遊離アミンを有する樹脂に添加した。樹脂溶液を1時間ボルテックスし、反応媒体をろ過して除いた。次いで、樹脂を、連続して、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、及び1.5mLのMCでそれぞれ30秒間洗浄した。本発明において使用される修飾核酸塩基を有するFmoc-PNAモノマーの化学構造は、以下に提供される。以下に提供される修飾核酸塩基を有するFmoc-PNAモノマーは、例と見なされるべきであり、したがって、本発明の範囲を限定すると見なされるべきではない。当業者は、式IのPNA誘導体を合成するためのFmoc-PNAモノマーにおけるいくつかの変形を容易に理解し得る。
【0140】
【化21】
【0141】
[キャッピング] カップリング反応後、1.5mLのキャッピング溶液(DMF中、5%無水酢酸及び6%2,6-ルチジン)中で5分間振盪することによって、未反応遊離アミンをキャッピングした。次いで、キャッピング溶液を、ろ過して除き、連続して、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、及び1.5mLのMCでそれぞれ30秒間洗浄した。
【0142】
[N末端における「Fethoc-」基の導入] 塩基性カップリング条件下で樹脂上の遊離アミンを「Fethoc-OSu」と反応させることによって、「Fethoc-」基をN末端に導入した。「Fethoc-OSu」[CAS番号179337-69-0、C20H17NO5、MW 351.36]の化学構造は、以下のように提供される。
【0143】
【化22】
【0144】
[樹脂からの切断] 1.5mLの切断溶液(トリフルオロ酢酸中、2.5%トリ-イソプロピルシラン及び2.5%水)中で3時間振盪することによって、樹脂に結合したPNAオリゴマーを樹脂から切断した。樹脂をろ過して除き、ろ液を減圧下で濃縮した。残渣をジエチルエーテルで粉砕し、逆相HPLCによる精製のために、得られた沈殿物をろ過によって回収した。
【0145】
[HPLC分析及び精製] 樹脂から切断した後、PNA誘導体の粗生成物を、0.1%TFAを含有する水/アセトニトリル又は水/メタノール(勾配法)を溶出するC18逆相HPLCによって精製した。図7A及び図7Bは、それぞれ、HPLC精製の前及び後の「ASO1」の例示的HPLCクロマトグラムである。「ASO1」のオリゴマー配列は、表1に提供される通りである。
【0146】
式IのPNA誘導体の合成例
本発明のPNA誘導体は、上に提供された合成手順に従って又はわずかな改変を加えて調製した。表1は、本発明のHIF-1α ASOの例を、質量分析法による構造的特徴付けデータと共に提供する。表1におけるHIF-1α ASOの提供は、式IのPNA誘導体を例示しようとするものであり、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0147】
【表1】
【0148】
図1Aは、ASO1の粗生成物を用いて得られたHPLCクロマトグラムである。粗生成物を、C18-RP分取HPLCによって精製した。図1Bは、ASO1の精製された生成物についてのHPLCクロマトグラムである。ASO1の純度は、分取HPLC精製によって著しく改善した。図2は、ASO1の精製された生成物を用いて得られたESI-TOF質量スペクトルを提供する。ASO1についての分析データの提供は、本発明において式IのPNA誘導体がいかに精製及び同定されたかを説明しようとするものであり、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0149】
10マーの相補的DNAに対するPNAの結合親和性
表1におけるPNA誘導体を、N末端又はC末端のいずれかを相補的に標的とする10マーのDNAに対するそれらの結合親和性について評価した。結合親和性を、PNAと、10マーの相補的DNAとの間の二重鎖についてのTm値によって評価した。表1におけるPNA誘導体と、完全に相補的なDNAとの間の二重鎖は、水性緩衝溶液中で確実に測定するには高すぎるTm値を示す。緩衝溶液は、Tm測定中に沸騰してなくなる傾向があるからである。Tm値は、以下のように又はわずかな改変を加えてUV/Vis分光計で測定した。
【0150】
15mLのポリプロピレンファルコンチューブ中の4mLの水性緩衝液(pH7.16、10mMのリン酸ナトリウム、100mMのNaCl)中の4μMのPNAオリゴマー及び4μMの相補的10マーDNAの混合溶液を、90℃で1分間インキュベートし、数分間かけてゆっくりと周囲温度に冷却した。次いで、溶液を気密キャップを備えた3mLの石英UVキュベットに移し、先行技術[PCT/KR2009/001256]に記載されているUV/可視分光光度計又はわずかな改変を加えて、260nmでTm測定に供した。Tm測定のための10マーの相補的DNAは、Bioneer(www.bioneer.com, Dajeon, Republic of Korea)から購入し、さらに精製することなく使用した。
【0151】
式IのPNA誘導体の観察されたTm値は、それらの低G/C含量の割に、10マーのDNAへの相補的結合に関して高く、表2に提供される。例えば、「ASO8」は、
【0152】
において「太字」及び「下線付き」として印を付けたPNA内のN末端10マーを標的とする10マーの相補的DNAとの二重鎖について、73.0℃のTm値を示した。それに対し、「ASO8」は、
【0153】
において「太字」及び「下線付き」として印を付けたPNA内のC末端10マーを標的とする10マーの相補的DNAとの二重鎖について、61.0℃のTmを示した。
【0154】
【表2】
【実施例
【0155】
式IのPNA誘導体の生物学的活性の実施例
式IのPNA誘導体を、HeLa細胞におけるインビトロアンチセンス活性について、及び腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける抗腫瘍活性について評価した。これらの生物学的実施例は、式IのPNA誘導体の生物学的プロファイルを説明するための例として提供され、したがって、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0156】
実施例1. 「ASO2」によって誘導されるエクソンスキッピング
表1に特定される「ASO2」は、ヒトHIF-1αプレmRNA中のエクソン2の3'スプライス部位に相補的に結合する14マーのASOであり、相補的重複には、
【0157】
の30マーのプレmRNA配列において「太字」及び「下線付き」の印を付ける。「ASO2」は、イントロン1と5マーの重複、及びエクソン2と9マーの重複を有する。
【0158】
「ASO2」を、HeLa細胞においてヒトHIF-1α mRNAのエクソン2のスキッピングを誘導するその能力について、ネステッドRT-PCRによって評価した。用いた手順は以下に提供される通りである。
【0159】
[細胞培養及びASO処理] HeLa細胞(カタログ番号CCL-2, ATCC)を、10%FBS、1%ストレプトマイシン/ペニシリン、1%L-グルタミン、及び1%ピルビン酸ナトリウムを補充した5mLのEMEM培地を含有する60mm培養皿中で、5%CO2下、37℃で継代培養した。細胞を、0(すなわち、陰性対照)、10、100、又は1,000zMの「ASO2」で処理した。
【0160】
[RNA抽出] 5時間後、「Universal RNA Extraction Kit」(カタログ番号9767, Takara)を用いて、製造業者の説明書に従って、全RNAを抽出した。
【0161】
[ワンステップRT-PCRによるcDNA合成] 以下のサイクル条件: 50℃で30分、及び94℃で2分、続いて、94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で1分の15サイクルに従って、エクソン特異的プライマーのセット[エクソン1_フォワード: (5'→3')CTTGCCTTTCCTTCTCTTCT; エクソン8_リバース: (5'→3')AACCCAGACA-TATCCACC]に対する、Platinum(登録商標)Taqポリメラーゼを用いたSuper Script(登録商標)ワンステップRT-PCRキット(カタログ番号10928-042, Invitrogen)を用いた25μLの逆転写反応に、200ngのRNA鋳型を供した。
【0162】
[ネステッドPCR] 以下のサイクル条件: 95℃で5分、続いて、95℃で30秒、50℃で40秒、及び72℃で50秒の39サイクルに従って、エクソン特異的プライマーのセット[エクソン1n_フォワード: (5'→3')TGAAGACA-TCGCGGGGAC; エクソン5n_リバース: (5'→3')TTTTTCACAAGGCCATTTCT]に対する、20μLのネステッドPCR反応(カタログ番号K2612, Bioneer)に、1μLのcDNAを供した。
【0163】
[エクソンスキッピングの同定] PCR産物を、サイズマーカーカクテルと共に2%アガロースゲル上で電気泳動分離に供した。標的サイズのバンドを回収し、サンガー配列決定(Sanger Sequencing)によって分析した。観察されたPCRバンドは、図3Aで印を付けるように、全長mRNA(すなわち、エクソンスキッピングなし)、及びエクソン2を欠くスプライスバリアントに対応した。ASOで処理した細胞は、エクソン2のスキッピングに割り当てることができるサイズの強いPCRバンドを生じた。ASO処理なしの細胞(すなわち、陰性対照)も、エクソン2のスキッピングに対応するPCR産物を生じ、エクソン2が、ある程度、自発的に削除されることを示唆する。しかし、エクソンスキッピングバンドの強度は、ASO処理なしの細胞におけるよりも、ASOで処理した細胞においてはるかに強かった。したがって、「ASO2」は、HeLa細胞においてエクソン2のスキッピングを促進した。エクソンスキッピングバンドについての配列決定データは、図3Cに提供され、エクソン1とエクソン3の接合部についてのmRNA配列を明示する。
【0164】
実施例2. 「ASO2」によるHeLa細胞におけるHIF-1αタンパク質発現の阻害
「ASO2」を、以下に記載するように、HeLa細胞におけるHIF-1αタンパク質の発現を阻害するその能力について評価した。
【0165】
[細胞培養及びASO処理] 60mm培養において5mLの培地中で増殖させたHeLa細胞を、0zM(陰性対照)、10zM、100zM、1aM、又は10aMの「ASO2」で処理した。
【0166】
[CoCl2処理及び細胞溶解] ASO処理の24時間後、ASO処理なしのものを除く培養皿を、プロリルヒドロキシラーゼ(PHD)の活性を抑制するために、200μMのCoCl2で3時間処理した。次いで、細胞を、1mLの冷PBSで2回洗浄し、1%SDS及び1×プロテイナーゼ阻害剤カクテル(cOmplete Mini, Roche)を補充した200μLの1×RIPA緩衝液(カタログ番号9806, Cell Signaling Tech)を用いて氷上で溶解に供した。次いで、溶解物を、1.5mLのe-チューブに集め、100μLの5×サンプル緩衝液と混合し、100℃で5分間煮沸した。溶解物を、8%SDS-PAGEゲル上で電気泳動分離に供し、0.45μmのPVDFメンブレンに転写した。メンブレンを、抗HIF-1α抗体(カタログ番号610958, BD Biosciences)及び抗β-アクチン抗体(カタログ番号sc4778, Santa Cruz)でプローブした。
【0167】
[HIF-1αタンパク質発現の阻害] 図4Aは、「ASO2」で処理したHeLa細胞を用いて得られたHIF-1αウエスタンブロットデータを提供する。CoCl2処理なしの細胞の溶解物で検出されたHIF-1αバンドはなかった。CoCl2処理した細胞の溶解物は、HIF-1αについて強いバンドを示し、CoCl2によるPHD活性の顕著な抑制を示す。
【0168】
図4Bは、濃度測定による個々のβ-アクチンバンド強度に対する個々のHIF-1αバンド強度を提供する。「ASO2」濃度が10aMまで増加するにつれて、HIF-1α発現は徐々に減少した。観察された減少は、10aMの「ASO2」で約75%であった。
【0169】
実施例3. 「ASO2」で処理したHeLa細胞におけるHIF-1α mRNAに対するSYBR GreenによるqPCR
「ASO2」を、以下に記載するように、HeLa細胞における全長HIF-1α mRNAの発現を阻害するその能力についてネステッドqPCRによって評価した。
【0170】
[細胞培養及びASO処理] 60mm培養において5mLの培地中で増殖させたHeLa細胞を、0(陰性対照)、10、100、又は1,000zMの「ASO2」で処理した(各ASO濃度あたり2つの培養皿)。
【0171】
[RNA抽出] ASO処理の3時間後、「MiniBEST Universal RNA Extraction Kit」(カタログ番号9767, Takara)によって、製造業者の説明書に従って、全RNAを抽出した。
【0172】
[ワンステップRT-PCRによるcDNA合成] 以下のサイクル条件: 50℃で30分、及び94℃で2分、続いて、94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で1分の15サイクルに従って、エクソン特異的プライマーのセット[エクソン1_フォワード: (5'→3')CTTGCCTTTCCTTCTCTTCT; エクソン8_リバース: (5'→3')AACCCAGACA-TATCCACC]に対する、platinum(登録商標)Taqポリメラーゼを用いたSuper Script(登録商標)ワンステップRT-PCRキット(カタログ番号10928-042, Invitrogen)を用いた25μLの逆転写反応に、200ngのRNA鋳型を供した。
【0173】
[ネステッドqPCR] 以下のエクソン特異的プライマーのセット: [エクソン2n_フォワード(5'→3')CTTGCTCATCAGTTGCCACTTC; エクソン2n_リバース(5'→3')AAGTTTCCTCACACGCAAAT-AG; エクソン3n_フォワード(5'→3')GAAAGCACAGATGAATTGC; エクソン3n_リバース(5'→3')TCATGTCACCATCATCTGT; エクソン4n_フォワード(5'→3')CTAACTGGA-CACAGTGTGTTTG; エクソン4n_リバース(5'→3')TCTGTGTGTAAGCATTTCTCTC; エクソン5n_フォワード(5'→3')GCC-TTGTGAAAAAGGGTAAAG; エクソン5n_リバース(5'→3')CCATGTTGCAGACTTTATGT]に対する、20μLのリアルタイムPCR反応に、100倍に希釈した1μLのcDNAを供した。以下のサイクル条件: 95℃で3分、続いて、95℃で5秒及び60℃で30秒の40サイクルに従って、PCR反応を、SYBR Green(Takara, Japan)でプローブした。
【0174】
[HIF-1α mRNAエクソンレベルにおける変化] ASO処理サンプルの個々のエクソンレベルを、ASO処理なしの各個々のエクソンレベルに対して標準化した。各エクソンについての相対的エクソンレベルを、図5Aに提供する。全ての個々のエクソンレベルは、10zM及び100zMの「ASO2」で処理した細胞において、それぞれ60~80%及び50~70%有意に減少した。しかし、1,000zM(すなわち、1aM)の「ASO2」で処理した細胞で得られた個々のエクソンレベルは、ASO処理なしの細胞で得られたものと変わらなかった。ASO濃度が1,000zMまで増加するにつれて、エクソンレベルが陰性対照のレベルに戻った理由は、依然として不明である。それにもかかわらず、qPCRデータの用量反応パターンは、「実施例1」の図3Aにおけるエクソンスキッピングの用量反応パターンに類似する。
【0175】
実施例4. 「ASO2」で処理したHeLa細胞におけるHIF-1α mRNAに対するTaqManプローブによるqPCR
「ASO2」を、別段記載がない限り「実施例3」に記載するように、HeLa細胞における全長HIF-1α mRNAの発現を阻害するその能力についてネステッドqPCRによって評価した。
【0176】
[ワンステップRT-PCRによるcDNA合成] 以下のサイクル条件: 50℃で30分、及び94℃で2分、続いて、94℃で30秒、51℃で40秒、及び72℃で50秒の20サイクルに従って、エクソン特異的プライマーのセット[エクソン1_フォワード: (5'→3')CGCGAACGACAAGAAAAA; エクソン8_リバース: (5'→3')CTGTGGTGAC-TTGTCCTTT]に対する、platinum(登録商標)Taqポリメラーゼを用いたSuper Script(登録商標)ワンステップRT-PCRキット(カタログ番号10928-042, Invitrogen)を用いた25μLの逆転写反応に、200ngのRNA鋳型を供した。
【0177】
[ネステッドqPCR] 以下のサイクル条件: 95℃で3分、続いて、95℃で10秒及び60℃で30秒の40サイクルに従って、ヒトHIF-1αエクソン1とエクソン2の接合部を検出するように設計されたTaqManプローブ(Hs00936371_m1, Thermo Fisher)を用いた20μLのリアルタイムPCR反応に、100倍に希釈した1μLのcDNAを供した。
【0178】
[全長HIF-1α mRNAレベルにおける変化] ASO処理サンプルの全長mRNAレベルを、ASO処理なしのmRNAレベルに対して標準化した。観察された相対的mRNAレベルを、図5Bに提供する。全長HIF-1α mRNAレベルは、100zM及び1,000zMの「ASO2」で処理した細胞において、それぞれ65%及び55%有意に減少した。しかし、全長mRNAレベルは、10zMの「ASO2」で処理した細胞において変化しないままであった。
【0179】
実施例5. 「ASO6」によって誘導されるエクソンスキッピング
表1に特定される「ASO6」は、ヒトHIF-1αプレmRNA中のエクソン2の3'スプライス部位に相補的に結合する17マーのASOであり、相補的塩基対合には、
【0180】
において「太字」及び「下線付き」の印を付ける。「ASO6」は、イントロン1と7マーの相補的重複、及びエクソン2と10マーの相補的重複を有する。
【0181】
「ASO6」を、別段記載がない限り「実施例1」に記載される手順に従って、HeLa細胞においてヒトHIF-1α mRNAのエクソン2のスキッピングを誘導するその能力について、ネステッドRT-PCRによって評価した。
【0182】
PCR産物を2%アガロース上で電気泳動分離に供し、電気泳動結果を図6Aに提供する。エクソン2のスキッピングは、「ASO6」の全ての処理濃度で頑健であった。「ASO6」は、「ASO2」よりも効果的にエクソン2のスキッピングを誘導した。全長HIF-1α mRNAのPCRバンドは、「ASO6」の全ての試験濃度でほぼ完全に消失した[図6Aを参照]。それに対し、10~1,000zMの「ASO2」で処理した細胞のRNA抽出物中に残存する有意なレベルの全長HIF-1α mRNAが存在した[図3Aを参照]。
【0183】
実施例6. 「ASO6」によるHeLa細胞におけるHIF-1αタンパク質発現の阻害
「ASO6」を、別段記載がない限り「実施例2」に記載の手順に従って、HeLa細胞においてHIF-1αタンパク質の発現を阻害するその能力について評価した。
【0184】
図6Bは、0(陰性対照)、10、100、又は1,000zMの「ASO6」で処理したHeLa細胞で得られたウエスタンブロットデータである。HIF-1αタンパク質の発現は、処理濃度において約45~55%減少した(図6C)。
【0185】
実施例7. 「ASO6」で処理したHeLa細胞におけるHIF-1α mRNAに対するSYBR GreenによるqPCR
「ASO6」を、別段記載がない限り「実施例4」における手順に従って、ネステッドqPCRによってHeLa細胞においてHIF-1α mRNAにおける変化を誘導するその能力について評価した。
【0186】
[ワンステップRT-PCRによるcDNA合成] 以下のサイクル条件: 50℃で30分、及び94℃で2分、続いて、94℃で30秒、51℃で40秒、及び72℃で50秒の15サイクルに従って、エクソン特異的プライマーのセット[エクソン1_フォワード: (5'→3')CGCGAACGACAAGAAAAA; エクソン8_リバース: (5'→3')CTGTGGTGAC-TTGTCCTTT]に対する、platinum(登録商標)Taqポリメラーゼを用いたSuper Script(登録商標)ワンステップRT-PCRキット(カタログ番号10928-042, Invitrogen)を用いた25μLの逆転写反応に、200ngのRNA鋳型を供した。
【0187】
[HIF-1α mRNAエクソンレベルにおける変化] ASO処理なしの個々のエクソンレベルに対して標準化した個々のエクソンレベルを、図7Aに提供する。エクソンレベルは、10、100、及び1,000zMの「ASO6」で処理した細胞において、それぞれ35%、約30%、及び約45%有意に減少した。
【0188】
実施例8. 「ASO6」で処理したHeLa細胞におけるHIF-1α mRNAに対するTaqManプローブによるqPCR
【0189】
「ASO6」を、別段記載がない限り「実施例7」に記載するように、HeLa細胞における全長HIF-1α mRNAの発現を阻害するその能力についてネステッドqPCRによって評価した。
【0190】
[全長HIF-1α mRNAレベルにおける変化] ASO処理サンプルの全長mRNAレベルを、ASO処理なしのmRNAレベルに対して標準化した。観察された相対的mRNAレベルを、図7Bに提供する。全長HIF-1α mRNAレベルは、100zM及び1,000zM(1aM)の「ASO6」で処理した細胞において、それぞれ約60%及び80%有意に減少した。しかし、全長mRNAレベルは、10zMの「ASO6」で処理した細胞において変化しないままであった。
【0191】
実施例9. 「ASO1」によるHeLa細胞におけるHIF-1αタンパク質発現の阻害
表1に特定される「ASO1」は、ヒトHIF-1αプレmRNA中のエクソン2の3'スプライス部位に相補的に結合する14マーのASOであり、相補的塩基対合には、
【0192】
において「太字」及び「下線付き」の印を付ける。「ASO1」は、イントロン1と3マーの相補的重複、及びエクソン2と11マーの相補的重複を有する。
【0193】
「ASO1」を、別段記載がない限り「実施例2」に記載の手順に従って、HeLa細胞においてHIF-1α発現を下方制御するその能力について評価した。この実施例では、200μMのCoCl2と共に3時間インキュベートすることによってPHDの活性を阻害する前に、HeLa細胞を、0zM(陰性対照)、100zM、300zM、1aM、3aM、10aM、30aM、100aM、又は300aMの「ASO1」で72時間処理した。陰性対照、すなわち、0zMの「ASO1」の4つの培養皿があった。
【0194】
図8Aは、HeLa細胞溶解物を用いて得られたHIF-1αウエスタンブロットデータを提供する。HIF-1αタンパク質レベルは、「ASO1」で処理した細胞の全ての溶解物より、陰性対照の溶解物においてかなり高かった。
【0195】
図8Bは、濃度測定による個々のβ-アクチンバンド強度に対する個々のHIF-1αバンド強度を提供する。HeLa細胞におけるHIF-1α発現は、0.1~300aMの「ASO1」との72時間のインキュベーションによって40~80%減少した。
【0196】
実施例10. 「ASO1」によるヌードマウスにおけるU-251異種移植片の腫瘍増殖の阻害
「ASO1」を、以下に記載するように、U-251異種移植片を有するヌードマウスにおける腫瘍増殖を阻害するその能力について評価した。
【0197】
[U-251異種移植片の導入] U-251ヒト膠芽腫細胞を、10%FBS、1%ストレプトマイシン-ペニシリン、1%L-グルタミン、及び1%ピルビン酸ナトリウムを補充したDMEM中で、5%CO2下で、37℃で増殖させた。14日目に、6週齢の雄性のヌードマウス(Charles River, Japan)に、右肩甲骨上領域に動物あたり5×105個のU-251細胞を皮下接種した。動物は、飼料及び水道水を自由に摂取できるようにした。
【0198】
[群分け及びASO処理] 0日目に、動物を、陰性対照(ASO処理なし)、100pmole/Kgの「ASO1」、1,000pmole/Kgの「ASO1」、及び3,000pmole/Kgの「ASO1」の4つの群に無作為に割り当てた。群あたり動物7匹、平均腫瘍体積50mm3。ASO処理群は、0日目から21日目まで、週に3回、5mL/KgでPBSに溶解した「ASO1」を皮下に受けた。
【0199】
[腫瘍増殖の阻害] 腫瘍体積を、週に3回測定した。腫瘍増殖は、21日目にASO処理群において約35~45%有意に阻害された[図9Aを参照]。
【0200】
[腫瘍塊のHIF-1α IHC] 22日目に動物を屠殺し、HIF-1α IHC(免疫組織化学)による腫瘍塊におけるHIF-1αタンパク質発現の評価のために、腫瘍塊を摘出した。IHCのための組織サンプルを、パラフィンブロックによって調製した。スライド上の組織を、連続して、1:100希釈のウサギ抗ヒトHIF-1α抗体(カタログ番号SC-10790, Santa Cruz)、1:200希釈の抗ウサギIgG(カタログ番号BA-1100, Vector)、及び最後に1:200希釈のDylight 594-ストレプトアビジン(カタログ番号SA-5594, Vector)で免疫標識した。HIF-1α IHC画像は、Olympus蛍光顕微鏡で撮影した。核をDAPIで染色した。
【0201】
図9Bは、各群からの代表的なセットのHIF-1α IHC画像を提供する。陰性対照群におけるHIF-1α発現は顕著であるが、一方、処理群における発現は最小であった。各IHC画像を、ImageJプログラムを用いた濃度測定によってHIF-1α発現について点数付けした。図9Cは、陰性対照群に対して標準化した各用量群の平均HIF-1α発現レベルを提供する(群あたりN=5)。腫瘍内HIF-1α発現は、全てのASO処理群で約40~50%有意に(スチューデントのt検定による)減少した。
【0202】
実施例11. 「ASO6」によるヌードマウスにおけるA431異種移植片の腫瘍増殖の阻害
「ASO6」を、以下に記載するように、ヌードマウスにおけるA431異種移植片の腫瘍増殖を阻害するその能力について評価した。
【0203】
[A431異種移植片の導入] A431ヒト類表皮がん腫細胞(カタログ番号CRL1555, ATCC)を、10%FBS、1%ストレプトマイシン/ペニシリン、1%L-グルタミン、及び1%ピルビン酸ナトリウムを補充したDMEM中で、5%CO2下で、37℃で増殖させた。10日目に、6週齢の雄性のヌードマウス(Charles River, Japan)に、左脚に動物あたり5×105個のA431細胞を皮下接種した。動物は、飼料及び水道水を自由に摂取できるようにした。
【0204】
[群分け及びASO処理] 0日目に、動物を、陰性対照(ASO処理なし)、30pmole/Kgの「ASO6」、100pmole/Kgの「ASO6」、及び300pmole/Kgの「ASO6」の4つの群に無作為に割り当てた。群あたり動物8匹、平均腫瘍体積108mm3。ASO処理群は、0日目から25日目まで、週に3回、2mL/KgでPBSに溶解した「ASO6」を皮下に受けた。
【0205】
[腫瘍増殖の阻害] 腫瘍体積を、週に3回測定した。「ASO6」を繰り返し投与するにつれ、統計的有意性はないが、腫瘍増殖は、用量依存的様式で阻害された[図10Aを参照]。腫瘍増殖は、300pmole/Kg群において約20%阻害された。25日目に、動物を腫瘍摘出のために屠殺した。25日目(屠殺時)の平均腫瘍質量は、ASO用量が増加するにつれて、減少する傾向があった[図10Bを参照]。腫瘍質量は、300pmole/KgのASO処理群では、有意性なく約20%減少した。
【0206】
実施例12. 「ASO6」によるヌードマウスにおけるPC3異種移植片の腫瘍増殖の阻害
「ASO6」を、以下に記載するように、ヌードマウスにおけるPC3異種移植片の腫瘍増殖を阻害するその能力について評価した。
【0207】
[PC3異種移植片の導入] PC3ヒト前立腺がん腫細胞(カタログ番号CRL1435, ATCC)を、10%FBS、1%ストレプトマイシン-ペニシリン、1%L-グルタミン、及び1%ピルビン酸ナトリウムを補充したF-12K培地中で、5%CO2下で、37℃で増殖させた。7日目に、6週齢の雄性のヌードマウス(Harlan Laboratories, Italy)に、左脚に動物あたり3×106個のPC3細胞を皮下接種した。動物は、飼料及び水道水を自由に摂取できるようにした。
【0208】
[群分け及びASO処理] 0日目に、動物を、陰性対照(ASO処理なし)、1pmole/Kgの「ASO6」、10pmole/Kgの「ASO6」、及び100pmole/Kgの「ASO6」の4つの群に無作為に割り当てた。群あたり動物9匹、平均腫瘍体積約88mm3。処理群は、0日目から28日目まで、週に2回、2mL/KgでPBSに溶解した「ASO6」を皮下に受けた。
【0209】
[腫瘍増殖の阻害] 腫瘍体積を、週に3回測定した。腫瘍増殖は、19~26日目の間に10pmole/Kg群において約25~30%有意に阻害された[図10Cを参照]。28日目に、動物を腫瘍摘出のために屠殺した。10pmole/Kg群の平均腫瘍質量は、陰性対照群の質量より21%小さかったが、有意性はなかった[図10Dを参照]。
【0210】
用量が10から100pmole/Kgまで増加するにつれて、抗腫瘍活性は消失した。上昇したHIF-1α発現が、トランスジェニックマウスにおいてリンパ球の生存を延長させることが示唆された[PLOS One vol 8(4), e57833 (April 2013)]ことを考慮すると、100pmole/Kg群における抗腫瘍活性の観察された減少は、高用量群においてHIF-1α活性をノックダウンし過ぎることによる先天性免疫の減少に起因するであろう。
【0211】
実施例13. 「ASO6」及び「ASO11」によるヌードマウスにおけるU-251 MG異種移植片の腫瘍増殖の阻害
「ASO6」は、ヒトHIF-1αプレmRNAと完全に相補的あるが、マウスHIF-1αプレmRNAエクソン2と単一のミスマッチを有する。「ASO11」は、ヒトHIF-1αプレmRNAにおいて「ASO6」が標的とする同じ領域でマウスプレmRNAを相補的に標的とするように設計された17マーASOである。「ASO11」は、マウスHIF-1αプレmRNAにおけるイントロン1及びエクソン2と、それぞれ7マー及び10マーの相補的重複を有する。
【0212】
ヒト起源の異種移植片及びマウスにおけるHIF-1α発現を阻害することによる、ヌードマウスにおけるU-251 MG異種移植片に対する抗腫瘍活性を評価するために、「ASO6」及び「ASO11」を等量組み合わせた。
【0213】
[U-251 MG異種移植片の導入] U-251 MGヒト膠芽腫星細胞腫細胞(カタログ番号09063001, Sigma)を、10%FBS、1%ストレプトマイシン-ペニシリン、1%L-グルタミン、及び1%ピルビン酸ナトリウムを補充したMEM中で、5%CO2下で、37℃で増殖させた。30日目に、5週齢の雄性のヌードマウス(Harlan Laboratories, Italy)に、各動物の右肩甲骨上領域にマトリゲルを用いて製剤化した3×106個のU-251 MG細胞を皮下接種した。動物は、飼料及び水道水を自由に摂取できるようにした。
【0214】
[群分け及びASO処理] 0日目に、動物を、陰性対照(ASO処理なし)、0.1pmole/Kgの「ASO6」と0.1pmole/Kgの「ASO11」、1pmole/Kgの「ASO6」と1pmole/Kgの「ASO11」、及び10pmole/Kgの「ASO6」と1pmole/Kgの「ASO11」の4つの群に無作為に割り当てた。群あたり動物9匹、平均腫瘍体積約75mm3。処理群は、0日目から91日目まで、週に2回、2mL/KgでPBSに溶解した「ASO6」及び「ASO11」を皮下に受けた。
【0215】
[臓器/組織分析のための最終屠殺] 動物を92日目に屠殺して、腫瘍、全血、肝臓、肺、脾臓、心臓、及び腎臓を含む組織サンプルを摘出した。組織サンプルを、IHC及び生物学的分析に供した。
【0216】
[腫瘍増殖の阻害] 投与後最初の2週間は週に2回、その後は週に1回、腫瘍体積を測定した。ASO処理群では、腫瘍増殖阻害の明らかな及び有意な傾向があった。しかし、1.0pmole/Kg処理群は、腫瘍増殖の最も強い阻害を示した。91日目に、腫瘍増殖は、0.1、1.0、及び10pmole/KgのASO処理群について、それぞれ、66%、83%、及び56%有意に(ANOVAによる)阻害された[図11Aを参照]。
【0217】
図11Bは、92日目における群ごとの平均腫瘍重量を提供する。ASO処理群では腫瘍重量が47~71%減少したが、1.0pmole/Kg用量群は、71%の最大減少を示した。陰性対照と1pmole/Kg群との間の差は、スチューデントのt検定によって有意であった。
【0218】
上昇したHIF-1α発現が、トランスジェニックマウスにおいてリンパ球の生存を延長させることが示唆された[PLOS One vol 8(4), e57833 (April 2013)]ことを考慮すると、10pmole/Kg群における、1.0pmole/Kg群におけるよりも弱い抗腫瘍活性は、もしかすると、10pmole/Kg群においてHIF-1α活性をノックダウンし過ぎることによる先天性免疫の減少を反映するかもしれない。
【0219】
[平均体重及び臓器重量] 体重に有意な変化はなかったが、10pmole/Kg群は、13週目に最小の平均体重、すなわち、陰性対照群で39.6gに対して10pmole/Kg群で38.0gを示した。
【0220】
10pmole/Kg処理群は、陰性対照群よりも、脾臓を除いてより小さい臓器重量を示す傾向があった。心臓及び腎臓の重量は、陰性対照群よりも10pmole/Kg群において有意に小さかった。心臓について(0.23±0.01)g対(0.20±0.01)g、腎臓について(0.60±0.02)g対(0.56±0.02)g。
【0221】
脾臓の重量は、陰性対照群よりも10pmole/Kg群において大きかった。陰性対照群について(0.27±0.03)gに対して、10pmole/Kg群について(0.33±0.13)g。
【0222】
体重を用いた上記の知見に基づいて、10pmole/Kgの処理は、より低用量での処理又は陰性対照よりも、動物の成長又は発達に影響を与えたと考えられる。HIF-1αがVEGF及びEPO(エリスロポエチン)の発現を誘導することを考慮すると、HIF-1αの慢性全身阻害による脾臓重量の著しい増加を想像することは驚くべきことではないであろう。したがって、HIF-1α発現は、10pmole/Kg群において、1.0pmole/Kg群より阻害されている可能性がある。
【0223】
[血清VEGF-Aレベル] 血清VEGF-Aレベルは、マウスVEGF-A ELISAキット(カタログ番号NMV00, R&D Systems, USA)を用いて決定した。興味深いことに、血清VEGF-Aレベルは、有意性はなかったが、ASO処理群においてより高い傾向があった。観察された血清VEGF-Aレベルは、陰性対照群、0.1pmole/Kg、1pmole/Kg、及び10pmole/KgのASO処理群について、それぞれ、(47.0±2.5)pg/mL、(48.7±3.1)pg/mL、(51.0±5.6)pg/mL、及び(50.0±2.7)pg/mLであった。観察された血清VEGF-Aレベルは、インビトロHIF-1α生物学に基づく通常の予測とは反対に思われる。しかし、制御された臨床試験では、一過性低酸素は、血清VEGF-Aレベルの有意な減少を誘導し、VEGF生理学の複雑さを示唆する[Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. vol 290, E434-439 (2006)]。
【0224】
[腫瘍塊のHIF-1α IHC] 陰性対照及び1.0pmole/Kg処理群の腫瘍サンプルを、HIF-1α IHCのためにパラフィンブロックによって調製した(群あたりN=4)。スライド上の組織を、最初に1:100希釈のウサギ抗HIF-1α抗体(カタログ番号ab51608, Abcam)で、次いで、1:250希釈の抗ウサギIgG(カタログ番号A21207, Invitrogen)で免疫標識した。HIF-1α IHC画像は、Zeissスライドスキャナーで撮影した。核をDAPIで染色した。
【0225】
図12Aは、各群からの代表的なセットのHIF-1α IHC画像を提供する。各IHC画像を、ImageJプログラムを用いた濃度測定によってHIF-1α発現について点数付けした。図12Bは、陰性対照群に対して標準化した1pmole/Kg群の平均HIF-1α発現レベルを提供する(群あたりN=4)。腫瘍内HIF-1α発現は、1.0pmole/KgのASO処理群で42%有意に(スチューデントのt検定による)減少した。
【0226】
[腫瘍塊のVEGF-A IHC] 陰性対照及び1.0pmole/Kg処理群の腫瘍サンプルを、VEGF-A IHCのためにパラフィンブロックによって調製した(群あたりN=4)。スライド上の組織を、最初に1:100希釈のウサギ抗VEGF-A抗体(カタログ番号ab46154, Abcam)で、次いで、1:250希釈の抗ウサギIgG(カタログ番号A21207, Invitrogen)で免疫標識した。VEGF-A IHC画像は、Zeissスライドスキャナーで撮影した。核をDAPIで染色した。
【0227】
図12Cは、各群からのVEGF-A IHC画像の代表的なセットを提供する。各IHC画像を、ImageJプログラムを用いた濃度測定によってVEGF-A発現について点数付けした。図12Dは、陰性対照群に対して標準化した1pmole/Kg群の平均VEGF-Aレベルを提供する。腫瘍内VEGF-A発現は、1.0pmole/KgのASO処理群において13%わずかに減少した。
(付記)
(付記1)
式I:
【化23】
によって表されるペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、10と26との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
S 1 、S 2 、…、S n-1 、S n 、T 1 、T 2 、…、T n-1 、及びT n は、独立して、デューテリド、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH 2 -C(=O)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、アミノ[-NH 2 ]、置換若しくは非置換のアルキルアミノ、置換若しくは非置換のアリールアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n の少なくとも4つは、独立して、核酸塩基部分に共有結合した置換又は非置換アミノ基を有する非天然核酸塩基から選択される、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
(付記2)
付記1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、10と26との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
S 1 、S 2 、…、S n-1 、S n 、T 1 、T 2 、…、T n-1 、及びT n は、独立して、デューテリド、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド、ホルミル、アミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、アミノ[-NH 2 ]、置換若しくは非置換のアルキルアミノ、置換若しくは非置換のアリールアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n の少なくとも3つは、独立して、式II、式III、又は式IV:
【化24】
によって表される非天然核酸塩基から選択され、
R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 及びR 6 は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、ヒドリド、ヒドロキシ、並びに置換若しくは非置換のアルキルオキシ基から選択され; 及び
L 1 、L 2 及びL 3 は、塩基性アミノ基を、核酸塩基対合特性を担う部分に接続する式V:
【化25】
によって表される共有結合リンカーであり;
Q 1 及びQ m は、置換又は非置換のメチレン(-CH 2 -)基であり、及びQ m は、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q 2 、Q 3 、…、及びQ m-1 は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素(-O-)、硫黄(-S-)、並びに置換若しくは非置換のアミノ基[-N(H)-、又は-N(置換基)-]から選択され; 及び
mは、1と16との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記3)
付記1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と23との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
S 1 、S 2 、…、S n-1 、S n 、T 1 、T 2 、…、T n-1 、及びT n は、独立して、ヒドリド基を表し; X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、アミノ、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノ基を表し;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n の少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 及びR 6 は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、並びにヒドリド基から選択され;
Q 1 及びQ m は、置換又は非置換のメチレン基であり、及びQ m は、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q 2 、Q 3 、…、及びQ m-1 は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素(-O-)、並びにアミノ基[-N(H)-]から選択され; 及び
mは、1と11との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記4)
付記1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と21との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
S 1 、S 2 、…、S n-1 、S n 、T 1 、T 2 、…、T n-1 、及びT n は、独立して、ヒドリド基を表し; X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、アミノ、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノ基を表し;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n の少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 及びR 6 は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、並びにヒドリド基から選択され;
Q 1 及びQ m は、メチレン基であり、及びQ m は、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q 2 、Q 3 、…、及びQ m-1 は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、並びに酸素基から選択され; 及び
mは、1と9との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記5)
付記1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、12と19との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
S 1 、S 2 、…、S n-1 、S n 、T 1 、T 2 、…、T n-1 、及びT n は、独立して、ヒドリド基を表し; X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、アミノ、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノ基を表し;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n の少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 及びR 6 は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、並びにヒドリド基から選択され;
Q 1 及びQ m は、メチレン基であり、及びQ m は、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q 2 、Q 3 、…、及びQ m-1 は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と9との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記6)
付記1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、12と19との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも11マーの相補的重複を有し;
S 1 、S 2 、…、S n-1 、S n 、T 1 、T 2 、…、T n-1 、及びT n は、独立して、ヒドリド基を表し; X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、アミノ、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノ基を表し;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n の少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 及びR 6 は、ヒドリド基であり;
Q 1 及びQ m は、メチレン基であり、及びQ m は、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q 2 、Q 3 、…、及びQ m-1 は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と8との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記7)
付記1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、12と19との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNA中の[(5'→3')UAAGUAGGAUAAGU]の14マーRNA配列と少なくとも12マーの相補的重複を有し;
S 1 、S 2 、…、S n-1 、S n 、T 1 、T 2 、…、T n-1 、及びT n は、独立して、ヒドリド基を表し; Xは、ヒドリド基であり;
Yは、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、アミノ、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノ基を表し;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n の少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 及びR 6 は、ヒドリド基であり;
L 1 は、-(CH 2 ) 2 -O-(CH 2 ) 2 -、-CH 2 -O-(CH 2 ) 2 -、-CH 2 -O-(CH 2 ) 3 -、-CH 2 -O-(CH 2 ) 4 -、-CH 2 -O-(CH 2 ) 5 -、-CH 2 -O-(CH 2 ) 6 -、又は-CH 2 -O-(CH 2 ) 7 -を表し、右端は、塩基性アミノ基に直接結合しており; 及び
L 2 及びL 3 は、独立して、-(CH 2 ) 2 -O-(CH 2 ) 2 -、-(CH 2 ) 3 -O-(CH 2 ) 2 -、-(CH 2 ) 2 -O-(CH 2 ) 3 -、-(CH 2 ) 2 -、-(CH 2 ) 3 -、-(CH 2 ) 4 -、-(CH 2 ) 5 -、-(CH 2 ) 6 -、-(CH 2 ) 7 -、及び-(CH 2 ) 8 -から選択され、右端は、塩基性アミノ基に直接結合している、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記8)
式Iの化合物が、標的HIF-1αプレmRNA配列と完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有して標的HIF-1αプレmRNA配列と部分的に相補的である、付記1~7のいずれか一項に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記9)
式Iの化合物が、標的HIF-1αプレmRNA配列と完全に相補的である、付記8に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記10)
以下:
に提供されるペプチド核酸誘導体の群から選択される、付記1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
A、G、T、及びCは、それぞれ、アデニン、グアニン、チミン、及びシトシンの天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、及びG(pOq)は、それぞれ、式VI、式VII、式VIII、式IX、及び式X
【化26】
によって表される非天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
p及びqは、整数であり; 及び
N末端置換基及びC末端置換基の略語は、以下に具体的に記載される通りであり: 「Fmoc-」は、「[(9-フルオレニル)メチルオキシ]カルボニル-」基の略語であり; 「Fethoc-」は、「[2-(9-フルオレニル)エチル-1-オキシ]カルボニル」基の略語であり; 「Ac-」は、「アセチル-」基の略語であり; 「ベンゾイル-」は、「ベンゼンカルボニル-」基の略語であり; 「Piv-」は、「ピバロイル-」基の略語であり; 「n-プロピル-」は、「1-(n-プロピル)-」基の略語であり; 「H-」は、「ヒドリド-」基の略語であり; 「p-トルエンスルホニル」は、「(4-メチルベンゼン)-1-スルホニル-」基の略語であり; 「-Lys-」は、アミノ酸残基「リジン」の略語であり; 「-Val-」は、アミノ酸残基「バリン」の略語であり; 「-Leu-」は、アミノ酸残基「ロイシン」の略語であり; 「-Arg-」は、アミノ酸残基「アルギニン」の略語であり; 「-Gly-」は、アミノ酸残基「グリシン」の略語であり; 「[N-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」は、「[N-1-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」基の略語であり; 「ベンジル-」は、「1-(フェニル)メチル-」基の略語であり; 「フェニル-」は、「フェニル-」基の略語であり; 「Me-」は、「メチル-」基の略語であり; 「-HEX-」は、「6-アミノ-1-ヘキサノイル-」基の略語であり、「FAM-」は、「5又は6-フルオレセイン-カルボニル-(異性体混合物)」基の略語であり、及び「-NH 2 」は、非置換の「-アミノ」基の略語である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
(付記11)
以下:
に提供される化合物の群から選択される、付記1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
(付記12)
式Iによって表されるペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、 式Iの化合物は、ヒトHIF-1αプレmRNAの一部である20マーRNA配列[(5'→3')UGUUAAGUAGGAUAAGUUCU]と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
nは、10と26との間の整数であり;
S 1 、S 2 、…、S n-1 、S n 、T 1 、T 2 、…、T n-1 、及びT n は、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
Zは、ヒドリド、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ基を表し;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n の少なくとも3つは、独立して、相当する核酸塩基対合特性を担う部分に共有結合した置換又は非置換アミノ基を有する非天然核酸塩基から選択される、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
(付記13)
付記12に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、10と26との間の整数であり;
S 1 、S 2 、…、S n-1 、S n 、T 1 、T 2 、…、T n-1 、及びT n は、独立して、ヒドリド基を表し; X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
Zは、ヒドリド、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ基を表し;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n の少なくとも3つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され、
R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 及びR 6 は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、ヒドリド、ヒドロキシ、並びに置換若しくは非置換のアルキルオキシ基から選択され; 及び
L 1 、L 2 及びL 3 は、塩基性アミノ基を、核酸塩基対合特性を担う部分に接続する式Vによって表される共有結合リンカーであり;
Q 1 及びQ m は、置換又は非置換のメチレン(-CH 2 -)基であり、及びQ m は、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q 2 、Q 3 、…、及びQ m-1 は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素(-O-)、硫黄(-S-)、並びに置換若しくは非置換のアミノ基[-N(H)-、又は-N(置換基)-]から選択され; 及び
mは、1と16との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記14)
付記12に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と21との間の整数であり;
S 1 、S 2 、…、S n-1 、S n 、T 1 、T 2 、…、T n-1 、及びT n は、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、並びに置換若しくは非置換のアシル基から選択され;
Zは、ヒドロキシ、又は置換若しくは非置換のアミノ基を表し;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n の少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 及びR 6 は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、並びにヒドリド基から選択され;
Q 1 及びQ m は、置換又は非置換のメチレン基であり、及びQ m は、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q 2 、Q 3 、…、及びQ m-1 は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素、並びにアミノ基から選択され; 及び
mは、1と11との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記15)
付記12に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と19との間の整数であり;
S 1 、S 2 、…、S n-1 、S n 、T 1 、T 2 、…、T n-1 、及びT n は、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアシル基から選択され; Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し; 及び
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n の少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 及びR 6 は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、並びにヒドリド基から選択され;
Q 1 及びQ m は、メチレン基であり、及びQ m は、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q 2 、Q 3 、…、及びQ m-1 は、独立して、メチレン、酸素、及びアミノ基から選択され; 及び
mは、1と9との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記16)
付記12に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と19との間の整数であり;
S 1 、S 2 、…、S n-1 、S n 、T 1 、T 2 、…、T n-1 、及びT n は、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアシル基から選択され; Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n の少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R 1 、R 3 、及びR 5 は、ヒドリド基であり、並びにR 2 、R 4 、及びR 6 は、独立して、ヒドリド、又は置換若しくは非置換のアルキル基を表し;
Q 1 及びQ m は、メチレン基であり、及びQ m は、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q 2 、Q 3 、…、及びQ m-1 は、独立して、メチレン、酸素基から選択され; 及び
mは、1と9との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記17)
付記12に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と19との間の整数であり;
S 1 、S 2 、…、S n-1 、S n 、T 1 、T 2 、…、T n-1 、及びT n は、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアシル基から選択され; Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及び非天然核酸塩基から選択され;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n の少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 及びR 6 は、ヒドリド基であり;
Q 1 及びQ m は、メチレン基であり、及びQ m は、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q 2 、Q 3 、…、及びQ m-1 は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と8との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記18)
付記12に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と17との間の整数であり;
S 1 、S 2 、…、S n-1 、S n 、T 1 、T 2 、…、T n-1 、及びT n は、ヒドリド基であり;
Xは、ヒドリド基であり;
Yは、置換又は非置換のアシル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及び非天然核酸塩基から選択され;
B 1 、B 2 、…、B n-1 、及びB n の少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 及びR 6 は、ヒドリド基であり;
L 1 は、-(CH 2 ) 2 -O-(CH 2 ) 2 -、-CH 2 -O-(CH 2 ) 2 -、又は-CH 2 -O-(CH 2 ) 3 -を表し、右端は、塩基性アミノ基に直接結合しており; 及び
L 2 及びL 3 は、独立して、-(CH 2 ) 2 -O-(CH 2 ) 2 -、-(CH 2 ) 3 -O-(CH 2 ) 2 -、-(CH 2 ) 2 -O-(CH 2 ) 3 -、-(CH 2 ) 2 -、-(CH 2 ) 3 -、-(CH 2 ) 4 -、-(CH 2 ) 5 -、-(CH 2 ) 6 -、-(CH 2 ) 7 -、及び-(CH 2 ) 8 -から選択され、右端は、塩基性アミノ基に直接結合している、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記19)
以下:
に提供されるペプチド核酸誘導体の群から選択される、付記12に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
A、G、T、及びCは、それぞれ、アデニン、グアニン、チミン、及びシトシンの天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、及びG(pOq)は、それぞれ、式VI、式VII、式VIII、式IX、及び式Xによって表される非天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
p及びqは、整数であり; 及び
N末端置換基及びC末端置換基の略語は、以下に具体的に記載される通りであり: 「Fmoc-」は、「[(9-フルオレニル)メチルオキシ]カルボニル-」基の略語であり; 「Fethoc-」は、「[2-(9-フルオレニル)エチル-1-オキシ]カルボニル」基の略語であり; 「Ac-」は、「アセチル-」基の略語であり; 「ベンゾイル-」は、「ベンゼンカルボニル-」基の略語であり; 「Piv-」は、「ピバロイル-」基の略語であり; 「n-プロピル-」は、「1-(n-プロピル)-」基の略語であり; 「-Lys-」は、アミノ酸残基「リジン」の略語であり; 「-Val-」は、アミノ酸残基「バリン」の略語であり; 「-Leu-」は、アミノ酸残基「ロイシン」の略語であり; 「-Arg-」は、アミノ酸残基「アルギニン」の略語であり; 「-Gly-」は、アミノ酸残基「グリシン」の略語であり; 「ベンジル-」は、「1-(フェニル)メチル-」基の略語であり; 「フェニル-」は、「フェニル-」基の略語であり; 「Me-」は、「メチル-」基の略語である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
(付記20)
以下:
に提供される化合物の群から選択される、付記12に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
(付記21)
付記1~20のいずれか一項に記載のペプチド核酸誘導体を投与することによって、HIF-1α発現を伴う徴候又は症状を治療する方法。
(付記22)
付記1~20のいずれか一項に記載のペプチド核酸誘導体を投与することによって、固形腫瘍を治療する方法。
図1A-B】
図2
図3A-C】
図4A-B】
図5A-B】
図6A-C】
図7A-B】
図8A-B】
図9A-C】
図10A-D】
図11A-B】
図12A-D】
図13
【配列表】
0007089511000001.app