(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】プロバイオティクス組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20220615BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220615BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220615BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220615BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20220615BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220615BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220615BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220615BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P37/06
A61P1/00
A61P43/00 121
A23L33/135
A61K9/48
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/19
(21)【出願番号】P 2019538207
(86)(22)【出願日】2018-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2018050789
(87)【国際公開番号】W WO2018130667
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2021-01-12
(32)【優先日】2017-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【微生物の受託番号】DSMZ DSM13434
【微生物の受託番号】DSMZ DSM15312
(73)【特許権者】
【識別番号】509243300
【氏名又は名称】プロビ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】アガート ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ラゾウ アーレン,イリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ラーション,ラーズ ニクラス
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-511471(JP,A)
【文献】国際公開第2007/108764(WO,A2)
【文献】特表2009-511470(JP,A)
【文献】国際公開第2013/192163(WO,A1)
【文献】Int J Food Sci Nutr,2014年,Vol. 65, No. 8,pp. 953-959
【文献】Appl Microbiol Biotechnol,2013年,Vol. 97,pp. 3129-3140
【文献】Clinical Microbiology Reviews,2014年,Vol. 27, No. 3,pp. 482-489
【文献】Clinical and Developmental Immunology,2012年,Vol. 2012, Article ID 654143,pp. 1-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/747
A23L 33/135
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロバイオティクスLactobacillus plantarum株と、少なくとも1つのプロバイオティクスLactobacillus paracasei8700:2(DSM13434)株との組み合わせ
を含有する組成物であって、対象におけるセリアック病自己免疫(CDA)の予防及び/若しくは治療又はセリアック病(CD)の予防及び/若しくは治療に使用するための組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプロバイオティクスLactobacillus plantarum株が、Lactobacillus plantarum HEAL9(DSM15312)である、請求項1に記載の
組成物。
【請求項3】
前記プロバイオティクス株が、1日当たり1×10
6~1×10
12CFUの量で投与される、請求項1または2に記載の
組成物。
【請求項4】
賦形剤または担体を
含有する請求項1~3のいずれかに記載
の組成物。
【請求項5】
前記担体が、食品および/または微量栄養素である、請求項4に記載
の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、経口投与用のカプセル、錠剤、または粉末として提供される、請求項
1~5のいずれかに記載
の組成物。
【請求項7】
凍結乾燥調製物の形態の、請求項1~6のいずれかに記載の
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリアック病自己免疫(CDA)、またはセリアック病(CD)の対象における予防および/または治療に使用するための、少なくとも1つのプロバイオティクスLactobacillus種株に関する。
【0002】
本発明はまた、かかる使用のための組成物、ならびに有効量の当該プロバイオティクス株を対象に投与することを含む、CDAおよび/またはCDを予防および/または治療する方法を提供する。
【0003】
概論
セリアック病(CD)は、小腸の腸粘膜に影響を与える慢性的な免疫介在性疾患である。これは、小麦、ライ麦、および大麦に見られる主要な貯蔵タンパク質、グルテンに対する不耐性によって引き起こされる(Schuppan D,et al.Gastroenterology.2009;137(6):1912-33)。セリアック病の基本的な症状および臨床徴候としては、腹部の不快感、膨満、および下痢、それに続く栄養失調の徴候(例えば、体重減少、貧血、および骨粗鬆症)が挙げられる。しかしながら、患者の大部分は症状がなく、スクリーニングを通じて診断される(Ludvigsson JF,et al.Journal of Internal Medicine.2011;269(6):560-71)。現在、治療は生涯にわたるグルテン除去食(GFD)からなる。
【0004】
CDの病態生理学は完全には理解されていないが、T-細胞駆動型であると提唱されている。小腸でのグルテンタンパク質の消化の後得られるグリアジンペプチドは、何らかの形で上皮性関門を通過し、MHC-II構造上の抗原提示細胞によって提示され、粘膜固有層でのグリアジン特異的CD4+T-ヘルパー(TH)1細胞およびCD8+細胞傷害性T(TC)細胞の活性化を可能にする。これはいくつかのサイトカイン、特にIFN-γ、TNF-α、およびIL-21の上方制御をもたらし、前者の2つは筋線維芽細胞の活性化を通して典型的な粘膜リモデリングおよび絨毛萎縮を引き起こすが、後者はCD4+細胞の活性の維持に関与すると思われる(Schuppan D,et al.,前出)。過去10年間で、グリアジンによる先天性免疫系の同時の直接刺激は、疾患の発症におけるさらなる重要な因子であることが示されてきた。これは現在、樹状細胞およびマクロファージにおけるIL-15シグナル伝達の上方制御に起因し、上皮内リンパ球(IEL)の活性化を通じて粘膜損傷を引き起こす(Londei M,et al.,Molecular Immunology.2005;42(8):913-8)。
【0005】
CDの世界的な罹患率はおおよそ1%と推定されているが、民族や地理的な位置間で大きく異なる。とりわけスウェーデンは、1.5~3%の推定罹患率を有し、最も罹患率の高い国とランク付けされている(Ludvigsson JF,et al.,前出)。どのプロセスがグリアジン構造に対するこの機能不全反応の誘発を助長するのか、またなぜ疾患罹患率が集団間で異なるのかは、未だ完全には決定されていない。ほとんどすべてのセリアック病患者がDR3-DQ2および/またはDR4-DQ8ハプロタイプの保有者であるという事実によって証明されるように、CDには明らかな遺伝的要素がある(Sollid LM,et al.The Journal of Experimental Medicine.1989;169(1):345-50)。加えて、多数の他の影響の少ない遺伝子も疾患の危険性に影響を及ぼすことが見出されており、それらのほとんどは適応免疫応答の活性化に関連している(Hunt KA,et al.,Nature Genetics.2008;40(4):395-402)。CDはこれらの遺伝的危険性の特色を他のいくつかの自己免疫不全、最も重要なことには1型糖尿病(T1D)と共有し、これはHLA-DQB1およびHLA-DRB1遺伝子座ならびにいくつかの非HLA遺伝子座においてその主要な感受性遺伝子を共有している(Smyth DJ,et al.,New England Journal of Medicine.2008;359(26):2767-77)。それにもかかわらず、これらのハプロタイプを保有する少量の少数だけがこの疾患を発症するので、遺伝学だけではCDを説明することはできない。過去数十年の間に多くの国で観察されている急速に増加する発生率もまた、何らかの形で病因に寄与している環境要因を指している。重要な調査分野としては、乳児の授乳習慣、母乳の授乳、(および腸内細菌叢の変動または乱れが挙げられる(De Palma G,et al.,Advance:Bifidobacteria and Gram-negative bacteria differentially influence immune responses in the proinflammatory milieu of celiac disease.Journal of Leukocyte Biology.2010;87(5):765-78)。
【0006】
腸生検は以前はCDの診断のための黄金律とみなされていたが、その高い診断感度と特異性のために臨床的に現在最も一般的な組織トランスグルタミナーゼ自己抗体(tTGA)のうちのいくつかの血清学的マーカーが発見されている(van der Windt DA,et al.,Diagnostic testing for celiac disease among patients with abdominal symptoms:a systematic review.Jama.2010;303(17):1738-46)。さらに、2012年に欧州小児消化器肝臓栄養学会(European Society for Paediatric Gastroenterology,Hepatology and Nutrition)(ESPGHAN)からの改訂されたガイドライン(Husby S,et al.,ESPGHAN guidelines for the diagnosis of coeliac disease.Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition.2012;54(1):136-60))は、適切なさらなる試験が続く場合、顕著に高いtTGAレベルによって、診断を確認するための生検の必要性を排除することができることを示唆している。大部分のCD患者において、tTGAレベルはGFDの導入後に減少する。
【0007】
小児ではまた、かかる減少によって腸粘膜が組織学的に改善されることが高く予想され、(Bannister EG,et al.,American Journal of Gastroenterology.2014;109(9):1478-83)、tTGAが二元的な診断ツールとしてのみならず、疾患活動性および食事療法遵守度用のマーカーとしても使用することができることを示している。しかしながら、これは持続的に高いtTGAレベルを有することが見出された、いわゆるCD自己免疫(CDA)、またはより一般的には正常な腸生検の特色で確認される場合、潜在的CDと称される無症候性患者をどのように管理するのかという問題をもたらす。これらの小児は、CDを発症する危険性が高く(Liu E,et al.,The New England Journal of Medicine.2014;371(1):42-9)、GFD以外にその危険性を低減または排除するために現在利用可能な治療法の選択肢はない。
【背景技術】
【0008】
以前の研究では、活性型CDを有する患者の微生物叢は、健康な対照および無症状の患者と比較して、より高い程度のグラム陰性病原体で構成されていることが示されている(Nadal I,et al.,Imbalance in the composition of the duodenal microbiota of children with coeliac disease.Journal of Medical Microbiology.2007;56(Pt12):1669-74)。したがって、後の研究では、かかる微生物叢がグリアジンに応答してより高い程度の炎症反応を増強し(De Palma G,et al.,Advance:Bifidobacteria and Gram-negative bacteria differentially influence immune responses in the proinflammatory milieu of celiac disease.Journal of Leukocyte Biology.2010;87(5):765-78)、逆にある種のBifidobacterium株がグリアジンの消化に影響を及ぼしそれらの免疫学的潜在能力を低減する(Laparra JM,et al.,Bifidobacteria inhibit the inflammatory response induced by gliadins in intestinal epithelial cells via modifications of toxic peptide generation during digestion.Journal of Cellular Biochemistry.2010;109(4):801-7)ことを示唆している。
【0009】
最近発表されたいくつかの研究では、すでに臨床的に明らかにされているCDとの関連で、特定のBifidobacterium株を投与する効果が調べられている。Olivaresら(Olivares M,et al.,The British Journal of Nutrition.2014;112(1):30-40)は、最近CDと診断された36人の小児を、3ヵ月間、GFDに加えてBifidobacterium longum CECT7347またはプラセボを毎日消費させることによって無作為に治療した。GFDの導入によって免疫学的パラメータにおけるプロバイオティクス効果は理解が困難であり、この研究ではtTGAレベルは調べられなかったが、プラセボと比較して治療グループの成熟T細胞の合計レベルに顕著な減少が見られた。加えて、プロバイオティクス治療を受けたグループの小児たちが、対照と比較してより高い身長パーセンテージ増加を達成したことを示した。
【0010】
また、Smecuolら、Journal of Clinical Gastroenterology.2013;47(2):139-47)は、現在GFDを行っていない成人CD患者22人をBifidobacterium infantisまたはプラセボで3週間毎日治療し、腸管透過性、免疫学的パラメータ、および症状の変化を評価した。プロバイオティクス治療を受けたグループの参加者は、対照と比較して胃腸症状の改善を報告した。しかしながら、B.longum CECT7347とは異なり、B.infantis(NLS)は、炎症マーカー、ならびに腸内細菌叢および宿主関連防御機構に影響を与えなかった。
【0011】
特定のBifidobacterium株を用いた上記の研究は両方とも、CDにおけるそれらのBifidobacterium株のいくつかの有益な役割を示唆しているが、それらはまたさらなる研究の必要性を強調している。
【0012】
したがって、CDAおよびCDの顕著な調査にもかかわらず、現在利用可能なCDの唯一の治療法は、グルテン除去食(GFD)である。したがって、セリアック病自己免疫(CDA)を予防および/もしくは治療するための、またはセリアック病(CD)を予防および/もしくは治療するための組成物および方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
本発明によれば、セリアック病自己免疫(CDA)の予防および/もしくは治療のために、またはセリアック病(CD)の予防および/もしくは治療のために対象へ使用するための少なくとも1つのプロバイオティクスLactobacillus種株が提供される。
【0014】
「予防および/または治療のための使用」によって、CDAまたはCDに関連する予防、遅延、重症度の低減、および/または1つ以上の症状の除去、および/または他のマーカーの対象への効果を生じる使用を意味する。
【0015】
プロバイオティクスLactobacillus株
Lactobacillus種の好ましいプロバイオティクス株は、L.paracasei、L.plantarum、L.acidophilus、L.rhamnosus、L.casei、L.reuteri、L.brevis、L.crispatus、L.bulgaricus、L.fermentum、L.salivarius、L.johnsonii、およびL.lactisから選択される。
【0016】
好ましくは、少なくとも1つのプロバイオティクスLactobacillus種株は、Lactobacillus paracaseiおよび/またはLactobacillus plantarumである。
【0017】
Lactobacillus株寄託
本発明に従って使用するためのLactobacillliの好ましい株は、以下のように、Probi AB(Solvegatan41,Lund22370,Sweden)によってブダペスト条約の下で寄託されている。
【表1】
【0018】
好ましくは、L.paracasei株は、L.paracasei8700:2(DSM13434)L.paracasei02:A(DSM13432)のうちの1つ以上から選択される。
【0019】
好ましくは、L.plantarum株は、L.plantarum HEAL9(DSM15312)、L.plantarum HEAL19(DSM15313)、L.plantarum HEAL99(DSM15316)、L.plantarum299v(DSM9843)、および/またはL.plantarum299(DSM6595)のうちの1つ以上から選択される。
【0020】
有利には、本発明は、セリアック病自己免疫(CDA)の予防および/もしくは治療のために、またはセリアック病(CD)の予防および/もしくは予防のために、対象に使用するための少なくとも1つのプロバイオティクスL.paracasei株と少なくとも1つのL.plantarum株との組み合わせを提供する。
【0021】
最も好ましくは、組み合わせは、L.paracasei8700:2(DSM13434)とL.plantarum HEAL9(DSM15312)とである。
【0022】
組成物は特定のプロバイオティクス株またはLactobacillli株を含み得るが、好ましくはそれらは別の有効量の任意の他のLactobacilliのプロバイオティクス株または他の微生物を含まない特定の株からなる。
【0023】
組成物および製剤
本発明のプロバイオティクス株は、好ましくは凍結乾燥されている。
【0024】
本発明のプロバイオティクス株は、固体または液体製剤として好適な担体、希釈剤または賦形剤と一緒に提供することができ、これは一実施形態では医薬製剤であり得る。
【0025】
好適な液体担体の例としては、水および他の水性溶媒が挙げられる。
【0026】
好適な固体担体の例としては、マルトデキストリン、イヌリン、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、または他の植物デンプン、微結晶セルロース(MCC)、および糖アルコールが挙げられる。
【0027】
組成物は、乾式発酵または非発酵組成物であってもよい。乾燥非発酵組成物の場合、発酵は、対象による組成物の摂取後に胃腸管で行われる。
【0028】
使用において、本発明のプロバイオティクス株(複数可)は、対象に投与する前に液体または固体の担体と混合してもよい。例えば、対象は、接種前に株(複数可)を水もしくは他の何らかの水性溶媒、または飲み物からなる担体と混合してもよい。同様に、プロバイオティクス株は、1つ以上の食品からなる担体と混合してもよい。好ましい食品は、ヨーグルト、フルーツジュースなどの発酵または非発酵乳製品;飲料、スープ、大豆製品などの植物系食品、ドライフードバー、離乳食、乳児用栄養食、乳児用製剤、出生時からの母乳代替品などのグルテン除去製品である。
【0029】
乳児または幼児用調製乳は、本発明のプロバイオティクスLactobacilli株(複数可)にとって特に好ましい担体である。すぐに供給可能な液体形態として幼児に供給する前に水と混合するために、乾燥粉末形態であってもよい。これは通常牛乳から作られ、ホエーおよびカゼインタンパク質を含有する。
【0030】
本発明のプロバイオティクス株(複数可)はまた、既知の栄養補助食品の1つ以上の成分、例えばビタミンおよびミネラルなどの微量栄養素と一緒に組成物中で提供されてもよい。
【0031】
セリアック病の基本的な症状および臨床徴候としては、腹部の不快感、膨満、および下痢、それに続く栄養失調の徴候(例えば、体重減少、貧血、および骨粗鬆症)が挙げられる。栄養失調に関連する危険性を考慮すると、セリアック病と新たに診断された小児はビタミンD、亜鉛、および鉄が欠乏していることが発表されている(Erdem et al.,Vitamin and mineral deficiency in children newly diagnosed with celiac disease.Turk J Med Sci.2015;45(4):833-6 2015)。同様に、新たにセリアック病と診断された成人および未治療のCD患者もまた、ビタミンB6およびB12、ビタミンD、葉酸、亜鉛、マグネシウム、および鉄の基準値を下回る値を有することが見出された(Wierdsma et al.,Vitamin and mineral deficiencies are highly prevalent in newly diagnosed celiac disease patients.Nutrients.2013 Sep 30;5(10):3975-92.doi:10.3390/nu5103975,Caruso et al.,Appropriate nutrient supplementation in celiac disease 2013 Ann Med.2013 Dec;45(8):522-31.doi:10.3109/07853890.2013.849383.Review,Schosler et al.,Symptoms and findings in adult-onset celiac disease in a historical Danish patient cohort Scandinavian Journal of Gastroenterology Vol.51,ISS.3,2016)。ほとんどの場合、ひとたびCDまたはCDAと診断されて食事からグルテンを除去すると、腸の「健康な」組織構造が回復し、ビタミンおよびミネラルの状態の正常化に至る。しかしながら、グルテン除去食に順応することによって粘膜炎症を解決することは、ミネラル欠乏の緩和には必ずしも十分ではない(Caruso et al、2013前出)。したがって、CD/CDAと診断された、またはCD/CDAを発症する危険性のある人々に、ビタミンおよび/またはミネラルの補給と一緒に本発明によるプロバイオティクスLactobacilliを使用してもよい。好ましくは、ビタミン(複数可)および/またはミネラル(複数可)は、ビタミンA、B6、B12、D:および/またはミネラル:鉄、亜鉛、マグネシウムのうちの1つ以上から選択される。
【0032】
好ましくは、本発明のプロバイオティクス株(複数可)組成物は、カプセルもしくは錠剤、または経口投与用の粉末の形態で提供される。スティックパックは、食品業界および医薬品分野で使用されている一般的なタイプの単回分/単回用量包装である(www.selo.com/packaging-machines/stick-packs/を参照)。それらは消費者が使用するのに非常に便利であり、所定量の本発明のプロバイオティクス組成物を収容することによって、確実に正しい用量が摂取され、本発明に従った所望の予防的および/または治療的効果を達成する。
【0033】
好ましくは、使用時に本発明のプロバイオティクス株(複数可)は、1日1×106~1×1014コロニー形成単位(CFU)、好ましくは1×109~1×1011CFU、および最も好ましくは1×1010CFUの量で対象に投与される。1日のCFUの量は、好ましくは単回用量または単回投与で投与される。
【0034】
治療対象
好ましくは、対象はヒトである。有利には、ヒト対象は小児である。好ましくは、小児は、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1歳未満である。有利には、本発明の組成物は、出生時から、特に離乳時から、すなわち、幼児への母乳での授乳を完全にやめる時点から投与するためのものである。
【0035】
危険性のある対象の同定
好ましくは、対象は、1つ以上のCDの症状がないが、CDを発症する危険性が高い。
【0036】
理想的には、対象は、1つ以上の血清学的、免疫学的、および/または遺伝的危険因子の存在によってCDの危険性が高いと同定されている。
【0037】
血清学的、免疫学的、および/または遺伝的危険因子の存在を検出するための様々な方法が当業者に周知であるが、便宜上特に適切な方法の例が、本明細書に提供されている。
【0038】
CDAおよび/またはCD関連マーカー
●血清型分類
○DQ2陽性
○DQ8陽性
●遺伝子試験
○DQ2.5シスハプロタイプ(DQA1*05/DQB1*02)
○DQ2.2シスハプロタイプ(DQA1*02:01/DQB1*02:02)
○DQ2.5トランスハプロタイプ、例えばDQ7.5シスハプロタイプ(DQA1*05:05/DQB1*03:01)を含むDQ2.2シスハプロタイプ(DQA1*02:01/DQB1*02:02)
○DQ8シスハプロタイプ(DQA1*03/DQB1*03:02)
○DQA1*05:01アレル
○DQA1*05:05アレル
○DQB1*03:02アレル
【0039】
セリアック病を発症する高い危険性は、免疫学的血清型分類および/または遺伝子分析によって決定することができる。免疫学的血清型分類は、DQ2血清型マーカーおよび/またはDQ8血清型マーカーの存在を同定するために使用される。ゲノムDNAの遺伝子分析は、配列特異的プライマーを使用する配列特異的PCR(PCR-SSP)または遺伝子配列決定によって実施することができる。配列特異的PCR方法としては、配列特異的プライマーを用いるPCR(PCR-SSP)(Sacchetti L,et al.,Rapid Identification of HLA DQA1*0501,DQB1*0201,and DRB1*04 Alleles in Celiac Disease by a PCR-Based Methodology.ClinChem.1997 Nov;43(11):2204-6.)、配列特異的プライマーおよびTaqManプローブを用いる定量的リアルタイムPCR(qPCR)(Reinton et al.,A one-step real-time PCR assay for detection of DQA1*05,DQB1*02 and DQB1*0302 to aid diagnosis of celiac disease.J Immunol Methods.2006 Oct 20;316(1-2):125-32.Epub 2006 Sep 18)、配列特異的プライマーを用いるqPCRおよび融解曲線分析(Selleski et al.,Simplifying celiac disease predisposing HLA-DQ alleles determination by the real time PCR method.Arq Gastroenterol.2015 Apr-Jun;52(2):143-6.doi:10.1590/S0004-28032015000200013.)、PCR増幅とそれに続く配列特異的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーション遺伝子が挙げられる配列決定方法としては、連鎖停止ジデオキシヌクレオチドを用いるサンガー配列決定、パイロシーケンシング、合成による配列決定(イルミナ配列決定)、ライゲーションによる配列決定(SOLiD配列決定)、ナノ細孔配列決定(MinION)、Ion Torrent半導体配列決定、および単一分子リアルタイム配列決定(Pacific Biosciences)が挙げられる。
【0040】
DQ2またはDQ8血清型に対応する遺伝子マーカーとしては、DQ2.5シスハプロタイプ(DQA1*05/DQB1*02)、DQ2.2シスハプロタイプ(DQA1*02:01/DQB1*02:02)、DQ2.5トランスハプロタイプ、例えばDQ7.5シスハプロタイプ(DQA1*05:05/DQB1*03:01)を含むDQ2.2シスハプロタイプ(DQA1*02:01/DQB1*02:02)、DQ8シスハプロタイプ(DQA1*03/DQB1*03:02)、DQA1*05:01対立遺伝子、DQA1*05:05対立遺伝子、DQB1*03:02対立遺伝子が挙げられる。
【0041】
CDAおよび/またはCDの免疫学的マーカーとしては、放射性リガンド結合アッセイによることを含む組織トランスグルタミナーゼ抗体レベル(Agardh et al.,Using radioligand-binding assays to measure tissue transglutaminase autoantibodies in young children.Acta paediatrica(Oslo,Norway:1992).2004;93(8):1046-51、Agardh et al.,Prediction of silent celiac disease at diagnosis of childhood type1 diabetes by tissue transglutaminase autoantibodies and HLA.Pediatric diabetes.2001;2(2):58-65.)、合計血清IgAの欠乏がない場合を含む、IgA子宮内膜抗体(EMA)レベル、脱アミノ化グリアジンペプチド(DGP IgAおよびIgG)レベルが挙げられる。
【0042】
好ましくは、1つ以上の危険因子(複数可)は、HLA-DQ2および/またはHLA-DQ8である。
【0043】
好ましくは、1つ以上の免疫学的危険因子は持続的な組織トランスグルタミナーゼ(tTGA)陽性、すなわちtTGA陽性試験で2回以上連続した場合である。
【0044】
tTG陽性は、本明細書に記載されるように、tTG自己抗体、好ましくはIgA-tTGAおよび/またはIgG-tTGAの存在によって示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】プラセボグループと比較したL.paracasei+L.plantarum株治療グループの平均tTGA-IgAレベルの経時変化を示す。
【
図2】プラセボと比較したL.paracasei+L.plantarum治療グループの平均tTGA-IgGレベルの経時変化を示す。
【実施例】
【0046】
以下の材料、方法および実施例は、本発明の態様を具体化する。
【0047】
材料および方法
遺伝血清学的および免疫学的危険因子によってCDの高い危険性を有する対象の研究集団同定
参加者は、CiPiSとスウェーデンのTEDDY研究参加者から募集した。TEDDY研究プロトコルは、他で完全に記載されている(The Environmental Determinants of Diabetes in the Young(TEDDY)study:study design.Pediatric Diabetes.2007;8(5):286-98)。端的には、2004年から2010年の間のこれらのセンターの新生児を、HLA遺伝子型分類し、以下の遺伝子型:DR3-DQ2/DR4-DQ8、DR4-DQ8/DR4-DQ8、DR4-DQ8/DR8、DR3-DQ2/DR3-DQ2、DR4-DQ8/DR4b、DR4-DQ8/DR1、DR4-DQ8/DR13、DR4-DQ8/DR9、またはDR3-DQ2/DR9のうちの1つを保有していれば適格であるとみなした。スウェーデンのセンターでは、合計48,140人の小児たちをスクリーニングし、そのうち3,723人がHLA適格であることを見出した。これらのうち、合計2,525件の事例で両親または主な保護者が、研究参加に対する書面によるインフォームドコンセントを提供した。TEDDYプロトコル内では、血液サンプルを6か月ごとに採取し、2歳からtTGAのために小児を毎年スクリーニングする。tTGA陽性を示したら、以前の血液サンプルを遡及的に分析して、セロコンバージョン時間を決定する。2つの連続した血液サンプルで陽性と試験された参加者を、持続的にtTGA陽性とみなし、CDAの対象とする。すべての決定的な結果は、Southmead Hospital(Bristol,United Kingdom)の欧州参照検査室で実施された検査室分析に基づく。CDに関するさらなる評価は、TEDDYプロトコルの範囲外である。スウェーデンでは、tTGAレベル、症状の程度、および栄養失調の兆候に応じて、ケースバイケースで腸生検の実施を決定する。
【0048】
CiPiS研究では、2000年から2004年の間にSkaneで生まれた小児たちを、臍帯血のHLA遺伝子型分類および母方要因に関するアンケートを使用してスクリーニングした。DQ2および/またはDQ8を保有する小児は、HLA危険性があるとみなした。危険性のある合計6202人の小児、ならびに対照としてHLA危険性のない7654人の小児を招待した。tTGAスクリーニングは、3歳の1620/6206人(26.1%)のHLA危険性のあるグループの参加者および対照の1815/7654人(23.7%)、ならびに9歳の1910/5870人(32.5%)のHLA危険性のある参加者および2176人中7072人(30.6%)の対照に実施した。tTGA陽性であると試験された場合、参加者を少なくとも3か月後に再試験して持続的なtTGA陽性であることを確認し、それに基づき腸生検のために地元の小児科医院に紹介した。2012年3月から2015年8月の間、参加者をこれら2つのコホートに継続的に招待した。包含基準は以下のとおりであった。
●2つの連続したサンプルでのtTGA陽性、Bristol tTGAアッセイを使用して<30U/ml。
●セリアック病の診断なし。
●TEDDYプロトコル(GADA、IAA、IA-2A、ZnT8A)でスクリーニングされて、すべての糖尿病関連自己抗体が陰性。
●長距離プロトコルを通じたTEDDY研究に参加していない。
【0049】
T1D関連自己抗体に陽性の小児は、膵島自己免疫の元来の病歴への影響を最小限にするために本研究から除外した。しかしながら、T1D関連自己抗体は、CD発症の高い危険性のための血清学的マーカーを構成し、したがって本発明の使用および方法に従った予防的および/または治療的処置のための好ましい対象を同定するために使用することができる。
【0050】
研究デザイン
参加基準に合致する小児を最初の面談に招待し、次いで経過観察来診をおよそ3か月および6か月後に予定した。参加者は、無作為な1:1の比率で治療グループまたは対照グループであった。最初の面談および最初の経過観察来診時に、各グループにはそれぞれLactobacilliまたはプラセボを含有する粉末製剤を提供し、冷たい液体100ml中に溶解した後または果物/食品と混合した後で、毎日1回食事と共に粉末を合計6か月間摂取することにより製品を毎日消費し、プロバイオティクスを含有する任意の他の食料品の消費を停止し、サシェを冷蔵保存(2~8℃)するように指示した。両親にはまた、粉末を熱い飲み物や熱い食品に添加しないように指示した。毎回の来診時に、10mlの静脈血および便サンプルを採取した。治療グループまたは対照グループへの割り当ては、参加者、臨床医、および研究室職員には知らせなかった。
【0051】
組織トランスグルタミナーゼ自己抗体分析-CD発症の免疫学的危険因子
放射性リガンド結合アッセイ(RBA)を使用して、以前記載されたようにtTGAを評価した((Agardh D,et al.,Pediatric Diabetes.2001;2(2):58-65)(Agardh D et al.,Using radioligand-binding assays to measure tissue transglutaminase autoantibodies in young children.Acta paediatrica(Oslo,Norway:1992).2004;93(8):1046-51)。端的には、ヒト組織トランスグルタミナーゼ(tTG)は、35S-メチオニン(Perkin Elmer(Waltham,MA,USA))の存在下でTNT SP6 Coupled Reticulocyte Lysate System(Promega(Madison,WI,USA))を使用するcDNAのインビトロ転写および翻訳によって合成した。IgG-tTGAとIgA-tTGAの両方を分析した。IgG-tTGA分析のために、35S-tTGを希釈し、ヒト血清に添加し、4℃で一晩インキュベートした。プロテインAセファロース(PAS)(Invitrogen、Thermo Fisher Scientific(Carlsbad,CA,USA))を使用して、血清中のIgGを結合させることによって遊離および抗体結合35S-tTGを分離した。PASおよび免疫沈降させた35S-tTG-血清を96ウェルMultiScreenHTS DVフィルタープレート(Merck Life Science(Darmstadt,Germany))に添加し、プレートシェーカー上でインキュベートし、続いて洗浄した。OptiPhase Supermixシンチレーションカクテル(Perkin Elmer)を添加し、MicroBeta Counter TriLux(Perkin Elmer)で反応性を測定した。PASの代わりにヤギ抗ヒトIgAアガロース(Merck Life Science)を使用したことを除いて、IgA-tTGA分析を同様に実施した。TGAのレベルは、それぞれおよそ2、4、8、16、31、63、125、250、500、および1000U/mLのIgA-tTGAおよびIgG-tTGAを含有する標準曲線から計算したU/mLとして表した。IgG-tTGおよびIgA-のtTGの正の値のカットオフレベルは、>4.0U/mLで設定し、これは398人の成人献血者の99パーセンタイルに相当する(Agardh D,et al.,Acta paediatrica.2004;93(8):1046-51)。選択的なIgA欠乏が疑われるとき、元来の研究の一部として参加者の合計IgAレベルを試験したが、しかしながら、参加者の間でそのような状態は検出されなかった。
【0052】
Lactobacilli培養調製および治療製品の組成
lactobacilli培養物はProbi AB(Lund,Sweden)によって調製された。活性製品は、各株がそれぞれ等しく組み合わせられた1×1010CFUを含有する粉末形態で、マルトデキストリン(Glucidex IT-19(Roquette、France)を含むL.plantarum HEAL9(DSM15312)と組み合わせた、凍結乾燥したL.paracasei8700:2(DSM13434)からなる。2つの試験製品(プロバイオティクスおよびプラセボ)の外観および味が同一であるように、プラセボは、色および味を調整するための粉末マルトデキストリンおよび酵母ペプトン(HYP-A、BioSpringer(France))からなる。参加者には、製品を冷蔵庫に保管し、毎朝1グラムの製品のサシェを消費するように指示した。製品の有効性に関連するのは、濃度ではなく、Lactobacillusの合計CFU(すなわち、組成物の単位質量または体積当たりのLactobacillusの質量または数)であることが理解されるであろう。
【0053】
フローサイトメトリー分析
単核細胞(PBMC)の分離
実施例1のコホートからの末梢血単核細胞(PBMC)を、親水性多糖(BD Vac(登録商標)CPT(商標)細胞調製管NC FICOLL(商標)4mL、カタログ番号362760 Becton Dickinson(NJ,USA))を使用する密度勾配遠心分離(1800G)によって全血から分離した。細胞は、血液サンプル採取後2~24時間以内に分離した。吸引された間期単核層を、L-グルタミンを含むRPMI-1640培地(GIBCO番号21875034、Thermo Fisher Scientific(Gothenburg,Sweden))で3回洗浄した。細胞をRPMI-1640中で1~4×106/mLのリンパ球の最終濃度までAbbott CELL_DYN Rubyで計数した(すなわち、1mL当たり1~4×106リンパ球があるように、PBMC懸濁液の体積を調整した)。
【0054】
免疫染色プロトコル
概要
計数後、PBMCを表面および細胞内構造に指向されたモノクローナル抗体で染色した。モノクローナル抗体(表2)を4つの蛍光色素、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリスリン(PE)、ペリジニンクロロフィルタンパク質(PerCP)、およびアロフィコシアニン(APC)で予め標識した。染色した細胞を、4色のFACSCalibur(登録商標)機器(BD Biosciences(CA,USA))を使用してレーザービームを通過させることによって分析した。FACSCalibur(登録商標)は細胞集団を定義し、サイズ、粒度、および蛍光強度の特徴的な特色によって細胞を計数する。光検出器は、光信号を増幅し電気データ信号に変換する。データを取得し、CellQuestPro(登録商標)ソフトウェア(BD Biosciences)で分析した。
【表2】
【表3】
【表4】
【0055】
ブロッキング
PBMCを2本の管に分けた:管AにはRPMI中約2~4×106リンパ球/mlでPBMCをブロッキングし、管BにはブロッキングなしでPBMCを染色し、RPMIの添加によって約1~2×106リンパ球/mlに希釈した。管A中のPBMCを、正常なヒトIgG(1/34希釈)と共に遮光して2~8℃で15分間インキュベートすることによってブロックした。
【0056】
直接染色(管1~12)
上記の表の管1~12に従った抗体混合物をFACS管(BD Falcon、VWRカタログ番号352052)中に調製した。管AからのブロックしたPBMCを管9~11に添加し、管BからのブロックしていないPBMCを管1~8および12に添加した。FACS管1~12を穏やかにボルテックスし、遮光して2~8℃で30分間インキュベートした。染色したPBMCを、2mlの冷たいリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4、Gibcoカタログ番号10010-015、Fisher Scientific(Gothenburg,Sweden))を添加し、穏やかにボルテックスし、遠心分離し(10分間、400×g)、上清を捨てすることによって洗浄した。染色したPBMCを、200μlの冷たいPBS-1%ホルムアルデヒド溶液(3部のPBS、pH7.4、Gibcoカタログ番号10010-015に対して1部の4%ホルムアルデヒド溶液(Apoteketカタログ番号34 24 36)に再懸濁し、遮光しで2℃~8℃で一晩インキュベートすることによって固定した。
【0057】
ヒト制御性T細胞染色キット(管13~14)を用いた染色
FACS管13(上記表を参照)を、管Bからの100μlのブロックしていないPBMCで調製した。FACS管14(上記表を参照)を、20μlのCD4FITC/CD25APCカクテル、および管Aからの100μlのブロックしたPBMCを用いて表面染色用に調製し、穏やかにボルテックスし、次いで遮光して2~8℃で30分間インキュベートした。2mlの冷たいPBSを添加し、穏やかにボルテックスし、遠心分離し(5分間、400×g)、上清を捨てることによって、管13および14中のPBMCを洗浄した。管13および14中のPBMCを1mlの固定/透過溶液(1部の固定/透過4X濃縮液および3部の固定/透過希釈液)に再懸濁し、遮光して2~8℃で一晩インキュベートすることによって固定した。
【0058】
遠心分離(10分間、400×g)して上清を捨て、2mlの1X透過緩衝液(1部の10X透過緩衝液および9部の蒸留水)に再懸濁し、穏やかにボルテックスし、先程の4つのステップを再び繰り返し、最後に再び遠心分離する(10分、400×g)ことによって固定PBMC(管13および14)を洗浄および透過した。管14中の透過したPBMCを、遮光して2~8℃で15分間インキュベートすることによって2μlの正常なラット血清でブロックした。20μlのラットIgG2aアイソタイプ対照PEを管13に、20μlの抗ヒトFoxP3PEを管14に添加し、続いて遮光して2~8℃で30分間インキュベートすることによって、細胞内染色を実施した。染色したPBMCを2mlのPBSで洗浄し、穏やかにボルテックスし、遠心分離し(10分間、400×g)、フローサイトメトリー分析の前に200μlのPBS中に細胞を再懸濁する前に上清を捨てた。
【0059】
フローサイトメトリー分析
Becton Dickinson FACSCalibur(登録商標)は、光学系内の単一の粒子または細胞の6つの異なるパラメータを検出することができる。この機器は、光散乱および蛍光強度をデジタルパルスに変換する。前方散乱(FSC)はサイズの尺度を提供し、側面散乱(SSC)は細胞質の粒度の尺度を提供する。この機器は、4色蛍光検出器を有する:青色(488nm)レーザーがFL1、FL2、およびFL3を検出し、追加の赤色ダイオードレーザー(635nm)がFL4を検出する。
【0060】
機器の定期的なシステム清浄の後、3色のCaliBRITE Beads(BD番号340486)およびCaliBRITE APC Beads(BD番号340487)を用いる較正チェック、ならびに光電子増倍管(PMT)電圧を設定し、検出器(FL1、FL2、FL3、およびFL4)の蛍光補正を調整および最適化するためのAutoCOMPTMソフトウェアを実施した。CaliBRITEビーズは正確なサイズのもので、未染色および染色された白血球を模した正確な量の蛍光色素で標識されている。AutoCOMP(商標)ソフトウェアはCalibFileを生成する。すべてのモノクローナル抗体をCalib File機器設定で予備滴定した。CellQuest Proソフトウェアを使用してBD FACSCaliburを実行した。上記の表に従って、各管について、3000~10000個の取得、採取、およびゲートされたリンパ球を測定した。
【0061】
アイソタイプが合致する対照抗体(IgG2/IgG1/CD4アイソタイプ(FITC、PE、およびPerCP-Cy5.5)、およびIgG1アイソタイプ(APC)(BD biosciences(CA USA))を使用して、ドットプロット四分円を設定し、混入している非リンパ球を差し引くことを通じてリンパ球集団のパーセントを計算した。リンパ球を同定し、側方散乱(細胞質粒度)およびFL1パラメータ(FITC陽性強度)CD3+T-細胞を表示するドットプロットにゲートした。次いで、リンパ球の多色バックゲートをFSCおよびSSCドットプロットに示した。領域をこれらの同定されたリンパ球の周囲に設定した(リンパ球ゲート)。対象の染色されたモノクローナル抗体の異なる2つのパラメータの組み合わせ(FL1、FL2、FL3、およびFL4)を用いてリンパ球ゲートから新しいドットプロットを表示し、次いで特徴的なサブセットを同定した。四分円を、アイソタイプ対照、陰性集団からの2つのパラメータのドットプロットに設定した。サブセットは、リンパ球ゲート内の四分円集団のパーセンテージとして報告する。リンパ球ゲート中の染色されていない陰性細胞を差し引いた。本明細書で使用される用語「白血球」とは、PBMC(すなわち、単離された細胞の合計集団)を意味する。
【0062】
具体的には、T細胞のサブグループ、CD4+(Th)、またはCD8+(Tc)細胞をリンパ球ゲートからゲートした。これらのゲートから、ナイーブ細胞を、CD3+CD4/CD8+CD45RA+CD45RO-として、記憶細胞を、CD3+CD4/CD8+CD45RA-CD45RO+としてゲートした。活性化および分化されたエフェクター細胞および記憶細胞を、CD3+CD4/8+CD62L+、CD4+CD25+CD45RA+CD45RO+、CD4+CD25+CCR4+CD45RO、CD4+CD25+CCR4+CD62L+、CD8+CD45RA+CCR9+β7+、CD3+CD4+/CD8+β7+CCR9+、CD4+CD38+β7+CD62-としてゲートした。B細胞をCD3-CD19+リンパ球と定義した。リンパ球ゲートから、CD4+細胞をゲートし、続いてCD25+細胞をゲートした。次いでこの集団のFoxP3+細胞の発現について調べた。CD4+CD25+ゲートから、最も高いCD25発現を有するパーセント、CD4+CD25高を決定した。次いでCD4+CD25高リンパ球集団の、FoxP3の発現についてさらに調べた。NK細胞をリンパ球ゲートからゲートした。このゲートから、NK細胞をCD3-CD16+/CD56+細胞としてゲートした。
【0063】
リンパ球アッセイ領域は>70%のリンパ球を含有した。CD3+T-細胞のアッセイ内分析は、3%の共分散を示し、CD3+T細胞のアッセイ間分析は5%の共分散を示した。
【0064】
統計的分析
研究結果は、6か月後のtTG自己抗体の血清レベルの変化(量が不十分なために1人の小児を除外した)、ならびにB細胞、NK細胞、および制御性T細胞の亜集団の末梢血免疫応答の変化として評価した、セリアック病自己免疫である。二値変数のグループ間の比較は、Fisherの正確確率検定によって行った。連続的および順序付けたカテゴリーのデータにおけるグループ間の比較は、Wilcoxonの順位和検定によって行い、例えば、Wilcoxonの順位和検定を使用して、0、3、および6か月でプロバイオティクス治療グループとプラセボグループとの間のtTGAレベルを比較した。各グループ内でのtTGAレベルの経時変化を比較するために、連続変数でのWilcoxonの符号付き順位検定を使用した。IgA-tTGAおよびIgG-tTGAのレベルを別々のデータセットとして分析した。同様に、フローサイトメトリーによって分析されたパラメータについて、ベースラインから3か月および6か月で測定した変化に関して、Wilcoxonの順位和検定をプロバイオティクス治療グループとプラセボとの間の比較に適用した。Wilcoxonの符号付き順位検定を使用して、各グループ内の3か月および6か月でのベースラインからの差を測定した。t-検定を使用してグループ間のHLA分布を比較した。
【0065】
欠損データは帰属しなかった、すなわち分析は観察された症例についてのものである。脱退者の影響を避け、治療の比較を臨床試験の指示に完全に従った小児たちに限定するために、治療意志分析およびプロトコルごとの分析を実施した。報告されているすべてのp-値は両側であり、多重度に調整しなかった(すなわち、公称)。<0.05のp-値を統計的に顕著であるとみなした。統計的分析は、StatXactバージョン10.1(Cytel(Cambridge,MA,USA))で実施した。
【0066】
結果-L.paracaseiおよびL.plantarum株を用いる治療は、セリアック病自己免疫(CDA)におけるtTGA自己抗体を低減する。
合計118人の小児が選択基準を満たし、研究に参加するよう招待された。これらのうち、90人(1人はCiPiS研究から、残りの89人はTEDDY研究から)の小児とその保護者が研究参加に同意した。これらのうち12人(13%)が、最初の来診後研究を辞退した。tTGA分析を実施するには血液サンプルの量が不十分なため、1人の小児を除外した。プロバイオティクス治療グループで40人(52%)、プラセボグループで37人(48%)の合計77人(87%)の小児を最終的なデータセットにそれぞれ含んだ。これらのグループのベースライン特徴を表3に、HLA分布を表3Aに示す。研究期間の平均値および中央値は、それぞれ188日および190日であった(Q1:176.5日、Q3:203日、分布153~237日)。
【表5】
1Wilcoxonの順位和検定、両側;
2Fisherの正確確率検定、両側
【表6】
【表7】
1Wilcoxonの順位和検定、両側
【0067】
3か月後、tTG-IgGのレベルは、ベースラインレベル(それぞれp=0.046およびp=0.034)と比較して、プロバイオティクスグループで平均29.4±513U/mL減少し、プラセボグループで平均6.3±48U/mL増加したが、3か月後にはグループ間でIgA-tTGレベルの顕著な差は観察されなかった。6か月後、ベースラインと比較して、プロバイオティクスグループでは、IgA-tTG(平均減少107.0±855U/mL、p=0.013)およびIgG-tTG(平均減少84.7±748U/mL、p=0.062)の両方でレベルが減少した一方で、プラセボグループでは反対のことが当てはまり、IgA-tTG(平均増加25.0±161SDU/mL、p=0.043)およびIgG-tTG(平均増加56.2±349U/mL、p=0.008)の両方でのレベルの増加を示した。
【0068】
結果-L.paracasei株およびL.plantarum株を用いた治療は、ナチュラルキラーT細胞の割合を減少させ、ナチュラルキラー細胞の割合の増加を打ち消し、細胞傷害性T細胞におけるCD62L発現を低減する。
両方の研究グループにおいて、フローサイトメトリー分析を使用して、ベースライン時および各経過観察来診時の白血球集団のサイズおよび活性化状態の変化を調べた。
【0069】
表5は、2回目の経過観察来診時までに、CD3+CD56+細胞として同定されたナチュラルキラーT(NK-T)細胞のパーセンテージが、Lactobacillus治療で減少し、この低減が、治療グループ内(p=0.0297)および治療グループとプラセボグループとの間で(p=0.0079)統計的に顕著であったことを示す。表6は、6か月目の来診時までに、CD3-CD56+として同定されたナチュラルキラー(NK)細胞のパーセンテージが、プロバイオティクスグループと比較して、プラセボグループでは統計的に顕著に増加したことを示す(p=0.0381)。
【0070】
表7は、最初の経過観察来診(3か月目)においてのみ、プラセボグループで平均1.74%(p=0.017)増加した細胞傷害性T細胞(CD3+CD8+)の数を示す。表7Aは、2回目の経過観察来診(6か月目)までにプラセボグループでは平均5.55%(p=0.039)減少したゲートされたTH細胞(CD3+CD4+)の割合を示す一方で、プロバイオティクスグループでは顕著な変化は観察されなかった。
【0071】
表7に加えて、表8および9のCD3+CD8+細胞の表面上のCD62Lの発現は、2回目の経過観察来診時のプラセボと比較して、プロバイオティクス治療では、より多くのCD62L低細胞傷害性T細胞(p=0.0815)およびより少ないCD62L高細胞傷害性T細胞(p=0.0729)への統計的傾向を示す。CD62Lは、リンパ球の内皮細胞との相互作用に関与する細胞接着分子L-セレクチンであり、二次リンパ組織への侵入を助ける。細胞表面上のCD62Lの存在はナイーブ状態(CD62L高)を示す一方で、細胞が活性化されるとそれらは表面からCD62Lを放出する(CD62L低)。表9Aはまた、2回目の経過観察来診時にプラセボグループにおいてより少ないCD3+CD8+CD62L低細胞(平均0.86%減少、p=0.014)を示す一方で、プロバイオティクスグループでは顕著な変化は観察されなかった。
【0072】
表7Aに加えて、表9Bは、プラセボグループにおけるCD3+CD4+CD62L
低細胞の減少傾向(平均5.55%の減少、p=0.039)を示す一方で、プロバイオティクスグループでは顕著な変化は観察されなかった。
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【0073】
結果-L.paracasei株およびL.plantarum株を用いた治療は、Tヘルパー細胞(CD4+CD25+細胞)の活性化の増加およびCD4+CD25+FoxP3+細胞の増加を予防する。
さらなるフローサイトメトリー分析は、CD3+CD4+として同定されたTヘルパー細胞に焦点を合わせ、CD4+Tヘルパー細胞の亜集団は2つの研究グループ間で異なった。
【0074】
表10は、2回目の経過観察来診時(6か月目)のナイーブTH細胞(CD4+CD45RA+CD45RO-)の集団が、プラセボグループにおいて平均4.73%(p=0.002)減少したことを示す。表10はまた、Lactobacillus治療が、プラセボと比較してナイーブT細胞マーカーCD45RA+/RO-を含む細胞の割合におけるこの減少を予防したことを示す(V1-V0ではp=0.0532、V2-V0ではp=0.0217)。逆に、表11は、記憶TH細胞の集団(CD4+CD45RA-CD45RO+)が2回目の経過観察来診(6か月目)までにプラセボグループにおいて、平均3.07%(p=0.003)増加したことを示す。表11はまた、Lactobacillus治療は、プラセボと比較して記憶T細胞マーカーCD45RA-/RO+を含む細胞の割合におけるこの増加を予防したことを示す(V1-V0ではp=0.0650、V2-V0ではp=0.0198)。
【0075】
表10Aは、2回目の経過観察来診時(6か月目)のプラセボグループで、平均2.17%(p=0.030)減少したナイーブTC細胞(CD8+CD45RA+CD45RO-)集団を示す一方で、プロバイオティクスグループでは顕著な変化は観察されなかった。
【0076】
Lactobacillus治療はまた、プラセボと比較して記憶(CD45RO+)T-ヘルパー細胞のパーセンテージの増加を予防し(表12~15)、CCR4を発現する記憶TH細胞(CD4+CD45RO+CCR4+)の割合の増加を予防した(プラセボグループは平均7.63%の増加、p=0.003、比較p=0.0110、表15A)。
【0077】
2回目の経過観察来診時の傾向では、Lactobacillus治療は、CD38細胞外酵素および糖タンパク質細胞接着分子を発現するがL-セレクチン(CD62L)を発現しないCD4+CD38+CD62L-Tヘルパー細胞の減少を予防する(表16、p=0.0753)。治療はまた、2回目の経過観察来診時に観察されたCD4+CCR9+β7+Tヘルパー細胞の減少を予防する(表17、p=0.0382)。T細胞の表面上の(腸ホーミング受容体α4β7由来の)β7の発現は、腸ホーミング細胞の特徴とみなされる。
【0078】
表18は、2回目の経過観察来診時までに、Lactobacillus治療が活性化Tヘルパー細胞の割合の増加を予防したことを示し、活性化はCD25、すなわちインターロイキン-2受容体アルファ鎖によって同定される。表18Aは、2回目の経過観察来診時(6か月目)までに、プラセボグループではナイーブCD4+CD25+CD45RA+細胞のパーセンテージが平均5.72%(p=0.0179)減少した一方で、プロバイオティクスグループでは顕著な変化は観察されなかったことを示す。
【0079】
表19はさらに、2回目の経過観察来診時までに、Lactobacillus治療が、高いCD25陽性(CD25高)を有するCD4+細胞として同定されたT制御性細胞の割合の増加を予防したことを示す。
【0080】
表20は、2回目の経過観察来診時までに、プラセボグループのCD4+CD25+FoxP3+細胞のパーセンテージの増加の傾向(0.32%の平均増加、p=0.0521)、およびプラセボと比較して全体的なプロバイオティクス治療の顕著な効果を示す(p=0.0275)。
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【0081】
考察
この研究における重要性のうちの主な発見は、セリアック病自己免疫が継続している小児の通常の食事にLactobacillus株を使用することによって、tTG自己抗体レベルの増加が遅延されることであった(
図1および2)。これは、以前には一度も観察されたことがない早期活性型セリアック病自己免疫に対するプロバイオティクスサプリメントの抑制効果の信頼できる証拠を提示している。過去グルテン除去食のみが、tTG自己抗体のレベルを効率的に低減することが示されてきた(Agardh D,et al.,Acta paediatrica.2004;93(8):1046-51)。セリアック病自己免疫に対するLactobacillusの効果は、T細胞の制御に関与する末梢血免疫応答の一貫した変化によってさらに裏付けられたが、これはプラセボグループの小児においてのみ観察された。興味深いことに、プラセボグループで見出されたほとんどのリンパ球サブセットの違いは、活性型セリアック病患者に見出されるものと類似していた。
【0082】
治療グループでは変化のないままであったが、プラセボグループのCD4+CD25+Foxp3+T-細胞の増加は、活性化CD4+細胞に対する2つのLactobacillus株の下方制御効果によって説明することができた。プラセボグループのCD3+CD4+細胞に観察された低減は、腸粘膜内のグルテン感受性リンパ球の区画化に続発すると考慮され得る。さらに、CD45RAを発現するナイーブTH細胞は低減され、一方CD45ROを発現するエフェクターおよび記憶TH細胞のパーセンテージはプラセボグループでより高く、これは治療していないセリアック病患者に以前から観察されており、グルテンによって活性化された循環するCD45+αβTcR+およびγδTcR+リンパ球の高いパーセンテージによって説明されてきた(Kerttula TO,et al.,Clin Exp Immunol.1998;111(3):536-40)。この説明は、プラセボグループでCCR4も発現しているCD45RO+細胞のパーセンテージの増加の発見によってさらに強化され、プライムされた制御性T-細胞の再循環を示唆している。CCR4は、炎症の観点からT-細胞を動員するための重要なケモカイン受容体であり、分化した制御性T細胞上で高度に発現される(Iellem A,et al.,Eur J Immunol.2003;33(6):1488-96)。プラセボグループのCD4+CD25高CD45RO+CCR4+細胞およびCD4+CD25+Foxp3+細胞の増加は、以前に記載されたように継続している腸の炎症および食事に含まれるグルテン抗原に対する免疫応答を消炎しようとしていることを示す(Frisullo G,et al.,Human Immunol.2009;70(6):430-5;Tiittanen M,et al.,Clin Exp Immunol.2008;152(3):498-507)。
【0083】
特に関連性のある3番目の発見は、プロバイオティクスを受けている小児では観察されなかった進行中のセリアック病自己免疫を有するプラセボグループでの、NK細胞の末梢血の経時変化であった。活性型セリアック病では、NK細胞およびNK-T細胞の集団が、組織および末梢血の両方において減少することが見出されている(Dunne MR,et al.,PLoS ONE.2013;8(10):e76008)。これは、NK細胞がプロバイオティクスグループで増加したが、プラセボグループでは増加しなかったことを見出した、この研究の発見と一致している。これはさらに、セリアック病におけるNK細胞の重要性、およびプロバイオティクスサプリメントが末梢血での自己免疫応答の低減として反映されるNK細胞に対する直接的または間接的な刺激効果を有し得ることを裏付けている。
【0084】
結論
要約すると、グループ間で免疫プロファイルを比較することによって、我々は、tTG自己抗体のレベルの減少として反映される、セリアック病自己免疫に対する明確な抑制効果を同定することができた。この観察は、プラセボを受けた継続しているセリアック病自己免疫を有する小児において特に見られる、自己免疫制御に関与するTリンパ球、およびNK細胞の割合の末梢血の変化の一貫した変化によってさらに強化された。この新規の発見は、ヒト自己免疫疾患におけるプロバイオティクス細菌を用いる潜在的な新しい分野の治療的介入を提供する。
【0085】
我々は、GFDの影響を受けずにCD病理に関連する免疫学的変化を研究することを選択した。GFDを用いる治療は、CD患者のtTGAなどのいくつかの免疫学的マーカーに急速な変化を引き起こす。(Midhagen G,et al.,Journal of Internal Medicine.2004;256(6):519-24)、および(Agardh D,et al.,Clinical and Experimental Immunology.2006;144(1):67-75)。結果として、顕著に高いtTGAレベルが腸生検なしにCDの診断をするのに十分な証拠であり得ると述べている現在の診断ガイドラインに従って、研究参加のために<30U/mlの低いカットオフ限界を利用した(Husby S,et al.,Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition.2012;54(1):136-60したがって、継続している自己免疫の初期の兆候として低い初期tTGAレベルを有する参加者のうちの大多数が研究に参加するという事実が予想され、我々の集団の固有の要素である。
【0086】
IgA-tTGAおよびIgG-tTGAレベルの両方がCDの有効な診断試験であるが、現在の臨床勧告は、より高い特異性および臨床的関連性のため、正常な合計IgAレベルを有する小児へのIgA-tTGAの使用を支持している(Husby S,et al.,前出)。
【0087】
この研究では、プロバイオティクスLactobacilli治療グループのIgA-tTGAレベルの変化は、プラセボグループよりも顕著に低減された。実際、これは、招待から来診0までに高いレベルまで進行していた2人の小児の、Lactobacilliで治療を受けた3か月および6か月後のIgA-tTGAレベルが顕著に低減したことによって表され、プロバイオティクスがCD自己免疫を用いて一部の小児に影響を及ぼし得たことを示している(データは示さず)。
【0088】
この臨床研究で使用された例示的なプロバイオティクスLactobacilli、Lactobacillus plantarum HEAL9およびLactobacillus paracasei8700:2は、グルテンを含有する食事をとっている小児のCD自己免疫に対する抑制効果を示した。これは、Lactobacillus株が「HLA危険性のある」個体においてCDの自己免疫を予防および/または遅延させることができることを示しており、CDにおけるプロバイオティクスLactobacilliの予防的適用の可能性を示唆している。
【0089】
我々の知る限りでは、これは、プロバイオティクスLactobacilli種がCDの遺伝的危険性がある小児における継続しているCD自己免疫の発症を遅延させ得るかまたは予防し得ることを評価し示す最初の介入研究である。これは、本発明のプロバイオティクスLactobacillus株がCDAからCDへの進行を遅延および/または予防するために使用することができることを示している。