(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】マリネ液
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20220615BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20220615BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20220615BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20220615BHJP
A23B 4/20 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
A23D9/00
A23D9/00 506
A23L27/00 D
A23L27/20 D
A23L13/00 Z
A23B4/20 Z
(21)【出願番号】P 2019543093
(86)(22)【出願日】2018-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2018053688
(87)【国際公開番号】W WO2018149880
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-01-14
(32)【優先日】2017-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518269740
【氏名又は名称】ブンゲ ロダース クロックラーン ビー.ヴィ.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】デ リマ, クリストファー マーク
(72)【発明者】
【氏名】マー, チュン
(72)【発明者】
【氏名】セロン, カリン アリシア
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-530703(JP,A)
【文献】特表2009-525735(JP,A)
【文献】特表2005-507028(JP,A)
【文献】国際公開第2003/037095(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0302460(US,A1)
【文献】米国特許第04482576(US,A)
【文献】特開2001-299278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00-9/06
A23L 27/00-27/40
A23L 13/00-17/00
A23B 4/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マリネ液における使用のための脂肪組成物であって、
45重量%を超えるオレイン酸、
10重量%~35重量%のステアリン酸、および
1重量%~10重量%のパルミチン酸であって、
前記酸類の百分率が、前記脂肪組成物中のグリセリド中のアシル基として結合した酸類を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づいている、オレイン酸、ステアリン酸、およびパルチミン酸と、
前記組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、5重量%を超える、P
2Stトリグリセリド、PSt
2トリグリセリド、およびStStStトリグリセリドの組み合わせ
を含み、(StOSt+POSt)トリグリセリド:(StStSt+PStSt)トリグリセリドの重量比が3未満であり、Pがパルミチン酸であり、Oがオレイン酸であり、Stがステアリン酸である
、脂肪組成物。
【請求項2】
50重量%~75重量%のオレイン酸を含む、請求項1に記載の脂肪組成物。
【請求項3】
15重量%~35重量%のステアリン酸を含む、請求項1または請求項2に記載の脂肪組成物。
【請求項4】
4重量%~10重量%のパルミチン酸を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項5】
7重量%~25重量%のP
2Stトリグリセリド、PSt
2トリグリセリド、およびStStStトリグリセリドの組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項6】
0.5~2の範囲の(StOSt+POSt)トリグリセリド:(StStSt+PStSt)トリグリセリドの重量比を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項7】
2重量%を超えるPSt
2含有量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項8】
エステル交換シアオレインを含むかまたはそれからなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項9】
エステル交換高ステアリン高オレインヒマワリ油、高ステアリン高オレインヒマワリ油のエステル交換ステアリン分画を含むかまたはそれからなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項10】
10~40のN0値および5~20のN35値を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項11】
脂肪を30~50℃の温度で化学的にエステル交換することを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の脂肪組成物
の製造
方法。
【請求項12】
前記脂肪が、シアオレイン、または高ステアリン高オレインヒマワリ油のステアリン分画である、請求項11に記載の
方法。
【請求項13】
(i)50重量%~99重量%のマリネ油配合物であって、5重量%~30重量%の請求項1~10のいずれか一項に記載の脂肪組成物および70重量%~95重量%の、ナタネ油、キャノーラ油、ヒマワリ油、オリーブ油、ダイズ油、ベニバナ油、ゴマ油、ラッカセイ油、ヤシ油、パーム油およびそれらの混合物から選択される液体油を含むマリネ油配合物;および
(ii)1重量%~50重量%のハーブ、スパイス、塩および野菜から選択される1つ以上のさらなる材料
を含む、マリネ液。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の脂肪組成物のマリネ液における使用。
【請求項15】
請求項13に記載のマリネ液を調理用食
品と接触させること、およ
びマリネ食品を調理することを含む、食品の製造方法。
【請求項16】
前記調理用食品が生肉である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪組成物、脂肪組成物を含むマリネ液、およびその製造方法に関する。
【0002】
シア油(バター)は、シアの木から得た脂肪である。バターは、ある場合は分画されてステアリン分画(シアステアリン)およびオレイン分画(シアオレイン)を形成する。シア製品は、化粧品および食品産業で使用される。シア油は、ステアリン酸およびオレイン酸が比較的豊富である。
【0003】
マリネ液は材料の混合物であり、その中に、肉、魚、または他の食品を調理前に浸漬して、味付けおよび/または柔らかくする。典型的には、マリネ液は、油、ワイン、スパイス、野菜、または類似の材料を含む。マリネ液は、通常冷蔵食品に適用され、マリネする工程は、通常、約5℃の冷蔵庫温度で数時間行われる。
【0004】
マリネ液は、例えば、米国特許出願公開第2016/302460号に記載されている。
【0005】
脂肪および油は、食品の重要な成分であり、食感、口当たりおよび風味の属性に関与し得る。例えば、固形脂肪プロファイルは、風味の放出および構造のような特性に作用することができる。
【0006】
脂肪および油はグリセリドを含む。グリセリドは、グリセロール骨格にそれぞれ結合した1、2、または3個の脂肪酸アシル基を有するモノ-、ジ-またはトリ-、グリセリドの形態であり得る。トリグリセリドは、食用脂肪および油中の主な種類のグリセリドである。
【0007】
脂肪および油は、グリセリド分子中の脂肪酸アシル残基をランダム化するエステル交換工程を受ける場合がある。これは、脂肪および油の物理的性質を変えることができる。通常、脂肪酸アシル基の完全なランダム化を達成するためにエステル交換が実施される。
【0008】
米国特許第4482576号は、食用油の直接的エステル交換を記載している。この工程は、油の一部が固相になるように低温条件下で実施される。これは、脂肪酸残基の完全なランダム化を有しないが、ランダム化時の液相および固体油相の組成に応じて部分的にランダム化された脂肪酸分布を有する生成物をもたらす。
【0009】
改善されたマリネ液、特に、マリネ液が、冷蔵庫から取り出したときに食品に適用され、冷蔵庫の温度で再び適用され、なおかつより高い室温で食品から流れ落ちることのない十分な流動性を有するように、冷蔵温度および室温の両方で良好な粘稠度および/または粘度を有するマリネ液が、依然として必要とされている。
【0010】
本発明により、
45重量%を超えるオレイン酸、
10重量%~35重量%のステアリン酸、および
1重量%~10重量%のパルミチン酸であって、
該酸の百分率が、脂肪組成物中のグリセリド中のアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づいている、オレイン酸、ステアリン酸、およびパルチミン酸と、
組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて5重量%を超える、P2Stトリグリセリド、PSt2トリグリセリド、およびStStStトリグリセリドの組み合わせであって、(StOSt+POSt)トリグリセリド:(StStSt+PStSt)トリグリセリドの重量比が3未満であり、Pがパルミチン酸であり、Oがオレイン酸であり、Stがステアリン酸である、組み合わせと、を含む、脂肪組成物が提供される。
【0011】
本発明の脂肪組成物は、マリネ液のための脂肪として特に有用であることが見出された。例えば、脂肪組成物は、一般的に1つ以上の液体油との配合物でマリネ液に良好なレオロジー特性を与え、マリネ液が冷蔵温度で適用されるが、概してより高温で粘稠度を保持することを可能にする。
【0012】
また、本発明の脂肪組成物を製造する工程が本明細書で提供され、本工程は、30~50℃の温度で脂肪を化学的にエステル交換することを含む。
【0013】
本発明でさらに提供されるマリネ液は、本発明の脂肪組成物を、好ましくは1重量%~99重量%の量で、かつ任意でハーブ、スパイス、および野菜から選択される1つ以上の材料を含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、マリネ液における本発明の脂肪組成物の使用を提供する。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、本発明のマリネ液を調理用食品、好ましくは生肉と接触させること、およびマリネ食品を調理することを含む、食品の製造方法を提供する。
【0016】
用語「脂肪」は、脂肪酸アシル基を含有するグリセリド油脂を指し、いずれの特定の融点も意味しない。用語「油」は、「脂肪」と同義語として使用される。脂肪は主にトリグリセリドを含む。
【0017】
本明細書で特定されるトリグリセリドの量は、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいている重量パーセントである。表記トリグリセリドXYZは、グリセリドの1、2、および3位のいずれかに脂肪酸アシル基X、YおよびZを有するトリグリセリドを表す。表記A2Bは、AABとABAとの両方を含み、AB2は、ABBとBABとの両方を含む。トリグリセリド含有量は、例えばGC(ISO 23275)によって決定され得る。
【0018】
本明細書で使用される、用語「脂肪酸」は、8~24個の炭素原子を有する直鎖の飽和または不飽和(モノ-不飽和およびポリ-不飽和を含む)カルボン酸を指す。n個の炭素原子およびx個の二重結合を有する脂肪酸は、Cn:xと表され得る。例えば、パルミチン酸はC16:0と表されてもよく、オレイン酸はC18:1と表されてもよい。本明細書で言及される組成物中の脂肪酸のパーセンテージは、当該技術分野における慣習的な専門用語と同様に、グリセリド中に存在するトリ-、ジ-、およびモノ-、グリセリド中のアシル基を含み、C8~C24脂肪酸の総重量に基づいている。脂肪酸プロファイル(すなわち、組成)は、例えば、ISO 15304に従ったガスクロマトグラフィーを用いた脂肪酸メチルエステル分析(FAME)によって決定され得る。
【0019】
本発明の脂肪組成物は、C8~C24脂肪酸の総重量を基準とし、45重量%を超えるオレイン酸を含む。好ましくは、脂肪組成物は、50重量%~75重量%、例えば、50重量%~70重量%または51重量~60重量%のオレイン酸を含む。
【0020】
本発明の脂肪組成物は、10重量%~35重量%のステアリン酸を含む。好ましくは、脂肪組成物は、15重量%~35重量%のステアリン酸、例えば、25重量%~30重量%のステアリン酸を含む。
【0021】
本発明の脂肪組成物は、1重量%~10重量%のパルミチン酸、好ましくは4重量%~10重量%のパルミチン酸を含む。
【0022】
本発明の脂肪組成物のリノール酸(C18:2)含有量は、好ましくは2重量%~10重量%である。
【0023】
本発明の脂肪組成物は、好ましくは10重量%未満の総C20~C24脂肪酸、より好ましくは8重量%未満、例えば、5重量%未満を含む。追加的に、または、代替的に、本発明の脂肪組成物は、1重量%未満のC8~C14脂肪酸を含み得る。
【0024】
したがって、本発明の脂肪組成物に好ましい脂肪酸組成物は、C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、
50重量%~75重量%のオレイン酸と、
15重量%~35重量%のステアリン酸と、
4重量%~10重量%のパルミチン酸と、
2重量%~10重量%のリノール酸(C18:2)と、
好ましくは、5%未満の総C20~C24脂肪酸および/または1重量%未満の総C8~C14脂肪酸と、を含む。
【0025】
本発明の脂肪組成物は、組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて5重量%を超える、P2Stトリグリセリド、PSt2トリグリセリド、およびStStStトリグリセリドの組み合わせを含み、(StOSt+POSt)トリグリセリド:(StStSt+PStSt)トリグリセリドの重量比は3未満である。
【0026】
好ましくは、脂肪組成物は、7重量%を超える、より好ましくは7重量%~25重量%、例えば10重量%~20重量%の、P2Stトリグリセリド、PSt2トリグリセリド、およびStStStトリグリセリドの組み合わせを含む。
【0027】
(StOSt+POSt)トリグリセリド:(StStSt+PStSt)トリグリセリドの重量比は、好ましくは0.5~2の範囲である。
【0028】
好ましくは、脂肪組成物は、2重量%を超える、より好ましくは2重量%~8重量%のPSt2含有量を有する。
【0029】
本発明の脂肪組成物のPPP含有量は、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満である。
【0030】
脂肪組成物のPOP含有量は、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、例えば2重量%未満である。
【0031】
好ましくは、脂肪組成物は、20重量%未満、例えば5重量%~15重量%のStOSt含有量を有する。
【0032】
脂肪組成物のOOO含有量は、好ましくは10重量%~45重量%である。
【0033】
したがって、本発明の脂肪組成物の好ましいトリグリセリド組成物は、
7重量%~25重量%のP2Stトリグリセリド、PSt2トリグリセリド、およびStStStトリグリセリドの組み合わせと、
2重量%~8重量%のPSt2と、
0.5重量%未満のPPPと、
5重量%未満のPOPと、
5重量%~15重量%のStOStと、を含み、
(StOSt+POSt)トリグリセリド:(StStSt+PStSt)トリグリセリドの重量比は、0.5~2の範囲内である。
【0034】
したがって、本発明の最も好ましい脂肪組成物は、C8~C24の脂肪酸総重量に基づいて、
50重量%~75重量%のオレイン酸と、
15重量%~35重量%のステアリン酸と、
4重量%~10重量%のパルミチン酸と、
2重量%~10重量%のリノール酸(C18:2)と、
総C20~C24脂肪酸の5%未満と、を含み、
脂肪組成物のトリグリセリド組成物は、
7重量%~25重量%のP2Stトリグリセリド、PSt2トリグリセリド、およびStStStトリグリセリドの組み合わせと、
2重量%~8重量%のPSt2と、
0.5重量%未満のPPPと、
5重量%未満のPOPと、
5重量%~15重量%のStOStと、を含み、
(StOSt+POSt)トリグリセリド:(StStSt+PStSt)トリグリセリドの重量比は、0.5~2の範囲内である。
【0035】
本発明の脂肪組成物は、典型的には水素化されていない。脂肪組成物は、通常植物性脂肪から得られる。
【0036】
本発明の脂肪組成物は、好ましくは追加のトランス脂肪酸を含まない。典型的には、脂肪組成物は、1重量%未満のトランス脂肪酸含有量を有する。
【0037】
本発明の脂肪組成物は、本明細書で定義される脂肪酸およびトリグリセリド組成物の要件を満たす、天然もしくは合成脂肪、天然もしくは合成脂肪の分画、またはそれらの混合物から製造され得る。本発明の好ましい組成物は、エステル交換シアオレインから本質的になるか、またはそれからなることを含む。あるいは、脂肪組成物は、高ステアリン高オレインヒマワリ油のエステル交換ステアリン分画、またはエステル交換高ステアリン高オレインヒマワリ油から本質的になるか、またはそれからなることを含み得る。脂肪組成物もまた、エステル交換シアオレインと、高ステアリン高オレインヒマワリ油のエステル交換ステアリン分画またはエステル交換高ステアリン高オレインヒマワリ油との混合物を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなってもよい。
【0038】
本発明の脂肪組成物は、好ましくは、10~40、より好ましくは15~40のN0値、および5~20のN35によって定義される固形脂肪含量を有する。組成物もまた、好ましくは5~25、より好ましくは10~25のN20を有する。N10もまた、好ましくは5~25、より好ましくは10~25である。N40は、好ましくは3~20、より好ましくは5~20である。N値(固形脂肪含有量(SFC))は、IUPAC2.150a法に従ってNMR分光法を用いて決定された。
【0039】
本発明の脂肪組成物は、好ましくは、脂肪を30~50℃の温度で化学的にエステル交換することを含む工程によって製造される。このようにして直接的エステル交換を行うと、脂肪酸がトリグリセリド全体でランダムに分布しなくなる。好ましくは、エステル交換は化学的に、より好ましくは触媒としてナトリウムメトキシドを用いて実施される。エステル交換は、好ましくは少なくとも200時間、例えば200~400時間実施される。
【0040】
本発明の方法においてエステル交換される脂肪は、好ましくは高ステアリン高オレインヒマワリ油のシアオレインまたはステアリン分画である。必要な脂肪酸組成物を有するシアオレインは、乾式分画または溶媒分画のような従来の方法によるシア油(バター)の分画によって製造することができる。同様に、高ステアリン高オレインヒマワリ油を乾式分画または溶媒分画によって分画して、本発明による脂肪組成物に必要な脂肪酸組成を有するステアリン分画を得ることができる。
【0041】
したがって、本発明の脂肪組成物を製造するための本発明の好ましい方法は、好ましくは高ステアリン高オレインヒマワリ油のシアオレインまたはステアリン分画を、ナトリウムメトキシドの存在下、30~50℃の温度で少なくとも200時間、脂肪を化学的にエステル交換することを含む。
【0042】
本発明の脂肪組成物は、好ましくはマリネ液に使用される。したがって、本発明はまた、1重量~99重量%、好ましくは5重量%~30重量%の本発明の脂肪組成物を含むマリネ液を提供する。
【0043】
マリネ液の粘稠度を改善するための本発明の脂肪組成物の使用も本発明により提供されるの。粘稠度は、例えばBostwick Consistometer(CSC Scientific Company,Inc)を用いて比較することができる。
【0044】
好ましくは、マリネ液中の脂肪は、本発明の脂肪組成物と1つ以上の液体油(すなわち、20℃で完全に液体である油)との組み合わせを含むかまたはそれからなる。そのような組み合わせは、本明細書ではマリネ油配合物とも言及される。適切な食用液体油としては、例えば、ナタネ油、キャノーラ油、ヒマワリ油、オリーブ油、ダイズ油、ベニバナ油、ゴマ油、ラッカセイ油、ヤシ油、パーム油およびそれらの混合物が挙げられる。マリネ油配合物は、好ましくは70重量%~95重量%、より好ましくは80重量%~90重量%の量の液体油を含む。マリネ油配合物は、好ましくは5重量%~30重量%、より好ましくは10重量%~20重量%の量の本発明の脂肪組成物を含む。
【0045】
本発明の脂肪組成物を含むマリネ液は、好ましくは50重量%~99重量%の量のマリネ油配合物、ならびに好ましくはハーブ、スパイス、塩、および野菜から選択される1重量~50重量%のうちの1つ以上のさらなる材料を含む。マリネ液は、好ましくは最大20重量%の野菜(例えば、ニンニク、タマネギ、ピーマン(トウガラシ属))および/または最大15重量%のスパイス(例えば、チリ、パプリカ、ペッパー(コショウ科))を含む。マリネ液は、好ましくは1重量%~10重量%、例えば2重量%~6重量%の量の塩を含む。
【0046】
本発明による好ましいマリネ液は、
5重量%~50重量%の本発明の脂肪組成物と、
50重量%~95重量%の1つ以上の液体油と、
最大20重量%の野菜(例えば、ニンニク、タマネギ、ピーマン(トウガラシ属))と、
最大15重量%のスパイス(例:チリ、ペッパー(コショウ科))と、
1重量%~10重量%の塩、例えば2重量%~6重量%の塩と、を含む。
【0047】
本発明のマリネ液は、本発明の脂肪組成物と、1つ以上の液体油を、ハーブ、スパイス、および野菜から選択される1つ以上の材料と混合することを含む工程によって製造される。好ましくは、マリネ液は、例えば瓶または広口瓶に包装される。
【0048】
食品を調製する方法は、本発明のマリネ液を調理用食品、好ましくは生肉と接触させること、およびマリネ食品を調理することを含む。本発明のマリネ液を用いてマリネするのに適した食品には、例えば、チキン、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、牛肉、子牛肉、豚肉、子羊肉、魚、および豆腐が含まれる。
【0049】
本明細書における明白な先行公開文献の列挙または考察は、その文献が当該技術分野状態の一部であるかまたは共通の一般知識であることを認めるものとして必ずしも解釈されるべきではない。
【0050】
本発明の所与の態様、実施形態、特徴、またはパラメータについての優先度および選択肢は、別段文脈が示さない限り、本発明の全ての他の態様、実施形態、特徴、およびパラメータについてのあらゆる全ての優先度および選択肢と組み合わせて開示されているものとみなされるべきである。
【0051】
以下の非限定的な実施例は本発明を説明するものであり、その範囲を決して限定するものではない。実施例において、および本明細書を通して、他に示されない限り、全ての百分率、割合、および比率は重量による。
【実施例】
【0052】
実施例1
5キログラムのシアオレインを90℃~110℃でナトリウムメトキシドと混合し、続いて37℃~44℃で少なくとも200時間反応させることによって化学的にエステル交換した。生成物の分析結果を、表1に示す。
【0053】
実施例2
乾式分画により高ステアリン高オレインヒマワリ油から得られた5キログラムのステアリン分画を、90℃~110℃でナトリウムメトキシドと混合し、続いて37℃~44℃で少なくとも200時間反応させることによって化学的にエステル交換した。生成物の分析結果を、表1に示す。
【0054】
実施例1および2の生成物は、脂肪配合物中の結晶化剤/構造化剤として水素化油および水素化脂肪を置き換えるための官能基を含む。機能性は、約90℃~約110℃の温度で標準的エステル交換によって製造された生成物よりも優れている。
【0055】
標準的な方法でエステル交換した、シアオレインと高ステアリン高オレインヒマワリ油のステアリン分画とを比較した、種々の脂肪組成物の物理的特性および分析データを以下の表で付与する。
*ナトリウムメトキシド存在下で、約90℃~約110℃の温度での標準的エステル交換反応
上の表中、
Cx:yは、x個の炭素原子およびy個の二重結合を有する脂肪酸を表し;
Cはシス脂肪酸を表し、Tはトランス脂肪酸を表し;GC-FAMEによって決定されたレベル;
M、O、P、St、LおよびAはそれぞれ、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸およびアラキジン酸を表し;
トリグリセリド組成MPPなどは、GC(ISO 23275)によって決定され、異なる位置に同じ脂肪酸を有するトリグリセリドを含み(例えば、MPPはMPPおよびPMPを含む);
SUMSOSは、総SOSを表し(Sはステアリン酸またはパルミチン酸であり、Oはオレイン酸である)、
US-Nxは、安定化されていない脂肪をNMRでx℃で決定した固形脂肪含有量である。
【0056】
【0057】
実施例3
実施例1および実施例2で調製されたマリネ油配合物と比較して、エステル交換シアオレインおよびエステル交換高ステアリン高オレインヒマワリ油ステアリンで調製したマリネ油配合物の特性を評価するために、以下の4つのマリネ油配合物を調製した。油配合物を、75℃に加熱し、掻き取り式表面熱交換器およびピン-ローターに通した。生成物の粘度を、配合物の出口温度(8℃~10℃)を制御することによって制御した。得られた部分的に結晶化した配合物を収集し、室温(約20℃)で24時間放置した。
【0058】
実施例4
4℃および20℃で貯蔵したマリネ油配合物の粘稠度を、Bostwick Consistometerを用いて二重に比較した。結果を、30秒で移動した距離(cm)として報告した。4℃と20℃とでスコアの差を計算し、結果を、以下の表に付与する。
【0059】
実施例1および実施例2の脂肪を含有するマリネ油配合物(マリネ油配合物AおよびB)の機能性は、標準的エステル交換によって製造された脂肪(マリネ油配合物CおよびD)よりも良好に機能した。マリネ油配合物Bおよびマリネ油配合物Aの両方とも、油系マリネ液において首尾よく使用することができた。
【0060】
実施例5
4℃および20℃で貯蔵したマリネ油配合物の濃度を、6人の資格のある審査員が0(水)~10(ピーナッツバター)の尺度で目視評価した。評価を2回繰り返し、平均を計算した。4℃と20℃とでスコアの差を計算した。実施例1および実施例2の脂肪を含有するマリネ油配合物(マリネ油配合物AおよびB)の機能性は、標準的エステル交換によって製造された生成物(マリネ油配合物CおよびD)よりも良好に機能した。
【0061】
実施例6
異なる2種類のマリネ液を、マリネ油配合物を使用して調製した。配合物を、以下の表に示す。