(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】ジカルボン酸含有混合物の分離及び精製方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/47 20060101AFI20220615BHJP
C07C 59/285 20060101ALI20220615BHJP
C07C 59/105 20060101ALI20220615BHJP
B01D 15/36 20060101ALI20220615BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220615BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
C07C51/47
C07C59/285
C07C59/105
B01D15/36
B01J20/26 G
B01J20/26 L
(21)【出願番号】P 2019570563
(86)(22)【出願日】2018-06-20
(86)【国際出願番号】 US2018038418
(87)【国際公開番号】W WO2018236950
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-04-22
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507303309
【氏名又は名称】アーチャー-ダニエルズ-ミッドランド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アンクラム,パム
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,ウィリアム クリス
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】ソーパー,ジョン ジー.
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-519532(JP,A)
【文献】特開2002-020355(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0090346(US,A1)
【文献】特開2001-172240(JP,A)
【文献】MARRUBINI et al.,Column comparison and method development for the analysis of short-chain carboxylic acids by zwitterionic hydrophilic interaction liquid chromatography with UV detection,JOURNAL OF SEPARATION SCIENCE,2013年,vol. 36, 1,PP.3493-3502
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のカルボン酸を、その他のカルボン酸中にこのカルボン酸を含む混合物から分離する方法であって:
前記対象のカルボン酸を、前記混合物の全カルボン酸含有量を基準として、少なくとも35重量%含むカルボン酸含有混合物を提供すること;及び、
前記対象のカルボン酸が、前記その他のカルボン酸と比較して、前記カルボン酸含有混合物から優先的に溶出するように、両性樹脂で構成され
、溶離剤としての水を使用するクロマトグラフィーカラムにより前記カルボン酸含有混合物の抽出を行うこと、
を含み、
前記対象のカルボン酸が、グルカル酸又はグルコン酸であり、
前記両性樹脂が、ポリマー主鎖上に、
カルボキシル基及び第4級アンモニウム基の両方を有することを特徴とする表面を有する、方法。
【請求項2】
グルカル酸及びグルコン酸の両方を含み、これらの少なくとも1つが、前記混合物の全カルボン酸含有量を基準として、35重量%を超えて存在する混合物からグルカル酸及びグルコン酸を分離するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グルカル酸又はグルコン酸が、前記混合物の全カルボン酸含有量を基準として、前記混合物中に50重量%以上の濃度で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
グルカル酸又はグルコン酸が、前記混合物の全カルボン酸含有量を基準として、前記混合物中に60重量%以上の濃度で存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
グルカル酸又はグルコン酸が、前記混合物の全カルボン酸含有量を基準として、前記混合物中に70重量%以上の濃度で存在する、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示は、有機化合物のクロマトグラフィー分離に関する。特に、本発明は、少なくとも部分的にはクロマトグラフィー手段によってジカルボン酸含有混合物から精製されたジカルボン酸を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 種々の経路上(on-path)及び経路外(off-path)のカルボン酸を含む粗混合物を生成するためのジカルボン酸の調製方法は周知である。別のプロセスからの種々の廃棄物流も、商業的に関心が持たれるジカルボン酸を含む場合がある。
【0003】
[0003] これらの粗混合物及び廃棄物流を精製する方法が必要とされており、十分純粋なジカルボン酸生成物を粗混合物から製造可能にするため、又はさらなる使用若しくは精製のためのジカルボン酸含有廃棄物流の有用な分画を提供するために開発が行われている。
【0004】
[0004] 最近の商業的関心が高いジカルボン酸の1つはグルカル酸である。Diamondらの米国特許第9,776,945号には、有機酸(例えば、酢酸又はギ酸)、塩基(例えば、重炭酸ナトリウム又は四ホウ酸ナトリウム)、及び強酸(例えば、硫酸又は塩酸)などの特定の溶離剤を用いたアニオン交換クロマトグラフィーを一般に使用するジカルボン酸の回収方法が記載されているが、水以外のこのような溶離剤の使用は、試薬のコストが上昇し、廃棄若しくはさらなる除去及び再利用のコストが必要となるため、望ましくないことが示されている。特に、対応する酸を精製するための水性糖溶液の酸化方法、例えば、Boussieらの米国特許第8,669,397号に記載のようなグルカル酸を得るためのグルコースの酸化方法、又は米国特許第8,785,683号に記載されるようなキシラル酸を得るためのキシロースの酸化方法を考慮して、Diamondらは例えば、分離ゾーン中の分離媒体をBoussieらの反応生成物に接触させること、中間体がラフィネート中に含まれる、経路上の別の中間体からグルカル酸への反応生成物(特に、Boussieらの方法においてグルカル酸と同等の量で形成されるグルコン酸)中のグルカル酸若しくはその塩の少なくとも一部を分離すること、ラフィネートを分離ゾーンから除去すること、及び溶離剤を含む水を用いて分離媒体からグルカル酸若しくはその塩を溶出させることを提案している。
【0005】
[0005] 好ましい分離媒体の1つは、擬似移動床中に使用される弱塩基性アニオン交換クロマトグラフィー樹脂、特にグルカレート型のアニオン交換クロマトグラフィー樹脂を含むと記載されている。これらの樹脂と弱塩基及び強塩基官能基との組合せも有用であると記載されている。グルコン酸及び経路上の他の中間体からグルカル酸を分離する方法の特定の例が実施例2に示されており、これは1.4eq/Lの交換容量及び0.3mmのビーズサイズを有するLanxess Lewatit MDS 4368スチレン/ジビニルベンゼン架橋マクロポーラスアニオン交換樹脂(75~80%の弱塩基官及び25~20%の強塩基官能基を有するとして特徴付けられる)を使用する擬似移動床システムを含んでいる。遊離塩基及びヒドロキシル型の樹脂は、使用前に1Mのグルカル酸溶液に曝露することによってグルカレート型に変換された。グルカル酸含有量の増加は、供給材料中の47.9モルパーセントから、抽出物中の90.1モルパーセントまで可能であり、97質量パーセントの未変換のグルコース及び経路上の中間体がラフィネート中に濃縮され、さらなるグルカル酸を精製するためにBoussieらの酸化方法に再循環させることが可能であると記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006] 本開示には、ジカルボン酸生成物を、そのようなジカルボン酸を含有する混合物から分離する方法が記載される。この方法は:混合物のカルボン酸含有量の少なくとも35%が対象のジカルボン酸生成物であるジカルボン酸含有混合物を提供することと;ジカルボン酸含有混合物からジカルボン酸生成物が優先的に溶出するように、両性樹脂で構成されるクロマトグラフィーカラムにより上記ジカルボン酸含有混合物の抽出を行うこととを含む。ある実施形態では、対象のジカルボン酸生成物は、グルカル酸又はグルコン酸のいずれか又は両方とさらに別のカルボン酸との混合物からのグルカル酸又はグルコン酸生成物であってよい。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0007] 本明細書において使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に他のことを示すのでなければ、複数への言及を含んでいる。本明細書において使用される場合、用語「含む」(comprising)、及びその派生語は、記載の特徴、要素、成分、群、整数、及び/又はステップの存在を明示するが、記載されない他の特徴、要素、成分、群、整数、及び/又はステップの存在を排除しない制約のない用語であることが単に意図される。この解釈は、用語「含む」(including)、「有する」(having)、及びそれらの派生語等の同様の意味を有する単語にも適用される。本明細書において使用される場合、用語「からなる」(consisting)及びその派生語は、記載の特徴、要素、成分、群、整数、及び/又はステップの存在を明示するが、記載されない他の特徴、要素、成分、群、整数、及び/又はステップの存在は排除する排他的な用語であることが意図される。本明細書において使用される場合、用語「から本質的になる」は、記載の特徴、要素、成分、群、整数、及び/又はステップ、並びに記載の特徴、要素、成分、群、整数、及び/又はステップの基本的及び新規特徴に実質的に影響を与えないものの存在を明示することが意図される。本明細書において使用される場合、「実質的に」、「約」及び「おおよその」などの程度の用語は、特定の属性を数値的に記述するために使用される有効桁数によって従来理解されている精度にかかわらず、記載の値から+又は-5パーセントを意味する。
【0008】
[0008] 程度の用語を伴わずに本発明に関連する特定のパラメータの量を定めるために特定の数値が使用され、それらの特定の数値がある数値範囲の明確な一部ではない場合、本明細書において提供されるそのような特定の数値のそれぞれは、問題のパラメータの広い、中間、及び狭い値の範囲の文字通り支持するものと解釈されるべきことを理解されたい。広い範囲は、その数値に、2桁の有効数字で丸められたその数値の60パーセントを足したもの及び引いたものとされる。中間範囲は、その数値に、2桁の有効数字で丸められたその数値の30パーセントを足したもの及び引いたものとされ、狭い範囲は、その数値に、この場合も2桁の有効数字まで丸められたその数値の15パーセントを足したもの及び引いたものとされる。さらに、これらの広い、中間、及び狭い数値範囲は、特定の値だけではなく、これらの特定の値の間の差にも適用されるべきである。例えば、本明細書に、第1のストリームの110kPaの第1の圧力、及び第2のストリームの48kPaの第2の圧力(62kPaの差)が記載される場合、これら2つのストリームの間の圧力差の広い、中間、及び狭い範囲は、それぞれ25~99kPa、43~81kPa、及び53~71kPaとなる。
【0009】
[0009] 本明細書の記述において、本発明に関連するあるパラメータの量を定めるために数値範囲が使用される場合、これらの範囲は、その範囲の小さい方の値のみが列挙されるクレームの限定、及びその範囲の大きい方の値のみが列挙されるクレームの限定を文字通り支持するものと解釈されるべきことを同様に理解されたい。
【0010】
[0010] 他に示されなければ、この項又は別の項に記載のあらゆる定義又は実施形態は、当業者の理解により適切となる本明細書に記載の主題のすべての実施形態及び態様に適用可能となることが意図される。
【0011】
[0011] 両性樹脂は、ポリスチレンマトリックスに結合した正及び負の両方の官能基を含む。これらの種類の樹脂は、典型的には電解質と非電解質との分離、又は2つの異なる電解質(例えば、糖/塩、グリセリン/塩、苛性材料/塩、塩/塩)の分離に使用される。対象の材料又は化合物の正のカチオン及び負のアニオンは、両性樹脂の対応する部分に選択的に結合する。
【0012】
[0012] 本発明の状況では、ポリスチレンマトリックスに結合した弱酸性の正の官能基及び強塩基性の負の官能基の両方を含む両性樹脂は、例えば、限定するものではないが、Boussieらの米国特許第8,669,397号に記載のような製造方法によって生成されるものなどの、グルカル酸と、一般に他のカルボン酸、特に別のジカルボン酸との混合物からグルカル酸を回収するために特に適していることがと分かっている。一実施形態では、このような樹脂は擬似移動床クロマトグラフィーに使用される。
【0013】
[0013] D-グルカル酸(糖酸とも呼ばれる)は、市販されており、酸化剤として硝酸を用いたグルコースの非選択的化学酸化によって生成されるが、グルカル酸が混合物の全カルボン酸含有量の少なくとも35パーセントである本発明の範囲内のグルカル酸含有混合物を生成するための他の方法も提案されており、それらが好ましい。説明的に、明確にするため、本発明による「グルカル酸含有混合物」は、グルカル酸及び他のカルボン酸自体を含むことができ、又は混合物のグルカル酸塩含有量が混合物の全カルボン酸塩含有量の少なくとも35パーセントであるグルカル酸及び他のカルボン酸の塩を含むことができる。
【0014】
[0014] Boussieらに付与された米国特許第8,669,397号と関連しているように、米国特許第2,472,168号には、酸素及び塩基の存在下で白金触媒を用いてグルコースからグルカル酸を調製する方法が示されている。酸素及び塩基の存在下で白金触媒を用いたグルカル酸の調製のさらなる同様の例は、Journal of Catalysis, vol. 67, pp. 1-13 and 14-20 (1981)にある。Boussieらが参照している別の従来の酸化方法としては、米国特許第6,049,004号(ジアルキルエーテルによる溶媒抽出を使用してグルカル酸を結晶化させ、続いて硝酸酸化を行い、中和の必要性を回避する);米国特許第5,599,977号(穏やかに温度を上昇させるために反応生成物中にガスを注入して硝酸酸化を行い、続いて中和を行う);米国特許第6,498,269号(オキソアンモニウム触媒/ハロゲン化物共触媒系の使用);J. Chem. Technol. Biotechnol., vol. 76, pp.186-190 (2001)(酸化性媒体中で五酸化バナジウム触媒及び硝酸を使用する充填床中での糖蜜の酸化によるD-グルカル酸);J. Agr. Food Chem., vol. 1, pp. 779-783 (1953);J. Carbohydrate Chem., vol. 21, pp. 65-77 (2002)(元素塩素又は臭素を最終酸化剤として使用するD-グルコースからD-グルカル酸への4-AcNH-TEMPO触媒酸化);Carbohydrate Res., vol. 337, pp. 1059-1063 (2002)(漂白剤を使用するグルコースからグルカル酸へのTEMPO媒介酸化)に記載の方法が挙げられる。しかし、Boussieらによって、これらの方法は、多くの問題の中で特に、プロセス歩留まりの制限、及びさらなる反応成分が必要なことによって生じる種々の経済的な欠点があると特徴付けられている。
【0015】
[0015] これらの従来公開された酸化方法の背景に対して、Boussieらの米国特許第8,669,397号には、グルコースからグルカル酸を生成し、次にそのグルカル酸を水素化脱酸素によってアジピン酸に変換するための触媒方法が記載されている。Boussieらによると、典型的にはパラジウム及び白金の1つ以上を含む触媒の存在下、場合により、1つ以上の別のd-ブロック金属(例えば、Rh又はRu)の単独又は1つ以上の希土類金属との組合せの単独又は1つ以上の主族金属(例えば、Al、Ga、Tl、In、Sn、Pb、又はBi)との組合せの担体上又は担持されないものの存在下、添加した塩基の非存在下で、グルコースは、グルコースを酸素(空気、酸素に富む空気、又は反応に対して実質的に不活性な別の成分を有する酸素の形態)と反応させることによって高収率でグルカル酸に変換可能である。
【0016】
[0016] Boussieらの酸化方法から反応生成物のグルカル酸を別の成分から分離する方法は、既に上記にまとめたように、Diamondらの米国特許出願公開第2016/0090346号に記載されている。
【0017】
[0017] 本発明の目的では、Boussieらに記載の方法は、グルコースからグルカル酸を製造するために記載された別の酸化方法よりも好ましいが、本発明者らは、グルカル酸及びグルコン酸をこれらの酸の混合物中から分離するためのDiamondらの方法とは別の方法を提案する。
【0018】
[0018] 本発明者らの改善された分離ステップは、好ましくは擬似移動床システムにおいて、弱塩基性アニオン交換樹脂よりも両性樹脂によるクロマトグラフィー分離を含む。一般に非常に類似した性質のこれらのカルボン酸を分離するためのこのような樹脂の驚くべき有効性を示すために例を以下に提供する。
【0019】
[0019] しかしながら、本発明者らの概念によるBoussieらによって生成されるものなどの混合物中でグルコン酸からグルカル酸を分離するための好ましい方法の1つは、混合物のカルボン酸含有量の少なくとも35%(ある実施形態では、例えばカルボン酸含有量の40%~55%)がグルカル酸であるグルカル酸含有混合物を提供することと;混合物から所望のグルカル酸供給材料が優先的に溶出するように、両性樹脂で構成されるクロマトグラフィーカラムにより混合物の抽出を行うこととを含む。驚くべきことに、両性樹脂は、グルカレート:グルコネートの場合に少なくとも2:1~3:1の優先親和性比が得られ、Diamondらによって教示される弱塩基性アニオン交換樹脂よりも優れた分離ポテンシャルを示し、弱塩基性アニオン交換樹脂と比較して、経時でも同様に両性樹脂の改善された性能を有することを本発明者らは見出した。
【実施例】
【0020】
[0020] 実施例1及び比較例1
[0021] Boussieらによって生成されるような生成物からグルカル酸を回収できる方法を示すために、6.3重量%のグルコン酸塩、8.2重量%のグルカル酸塩、0.013%の塩化物、0.025%のサルフェート、及び2.7%の別の有機酸塩(乾燥固体使用量)を含む水性供給混合物を使用して一連のパルス試験を行った。特に、それぞれのパーセント値による水性供給混合物の種々のカルボン酸の分析結果は以下の通りであった:フマル酸、0.4;グリコール酸、1.6;ガラクツロン酸、7.7;2-ケト-グルコネート、0.4;5-ケト-グルコン酸、3.3;グルクロン酸、0.5;グルコン酸、35.7、グルカル酸、50.3(合計100.0)。
【0021】
[0022] Diamondらによって例示される特定のLanxess Lewatit MDS 4368スチレン/ジビニルベンゼン架橋マクロポーラスアニオン交換樹脂280mLを、比較のための2本のジャケット付きガラスカラム(25mm×600mm)中に充填し、気泡を除去した。両方のカラムを水浴に接続し、50℃に加熱した。カラムを約10床体積の脱イオン水で洗浄し、次に第1のカラム(カラム#1)は7床体積の水性供給混合物を用いてコンディショニングを行い、一方、第2のカラム(カラム#2)は400mlのDowex 88ナトリウム型マクロポーラス強酸カチオン交換樹脂に通して調製した7床体積の糖酸溶液を用いてコンディショニングを行った。樹脂が膨潤するため(約40パーセントの膨潤が観察された)、前処理中は両方のカラムはアップフローで運転した。前処理後、次にカラムを10床体積の脱イオン水で洗浄した。
【0022】
[0023] この方法でカラムのコンディショニングを行った後、カラムをダウンフロー操作用に構成した。カラム上部のバルブを開き、次に液面が樹脂床の最上部に到達したときに、20ミリリットルの水性供給混合物のパルスを導入した。液面が樹脂床の最上部まで再び引き上げられたときに、1~2ミリリットルのDI水を加え、カラム上部のバルブを閉じた。20ミリリットル/分のDI水の溶出流を開始し、後の分析のために、0.16床体積の間隔でそれぞれ約48mLの34の分画を収集した。
【0023】
[0024] 続いて、Exhibit A(その内容が本明細書に援用されると理解すべきである)に準拠してMitsubishiにより両性イオン交換樹脂と特徴付けられ、架橋ポリスチレン骨格に第4級アンモニウム基及びカルボキシル基が導入され、260μmの均一ビーズサイズを有し、劣化及び溶出に対して顕著な抵抗性を有する、280mLのMitsubishi DIAION AMP-03両性イオン交換樹脂をDI水中でスラリーにして、弱塩基性アニオン交換樹脂Lewatit MDS 4368の場合と同じ方法で同じ2本のジャケット付きガラスカラム中に充填した。第1のカラムは同じ水性供給混合物を用いてコンディショニング/前処理を行い、第2のカラムは脱イオン水でコンディショニング/前処理を行った。しかし、膨潤は考えられず、実際にまったく観察されなかったので、両性樹脂カラムの場合はダウンフロー構成で前処理を行った。前述のように脱イオン水で洗浄した後、MDS 4368樹脂を用いる場合と同じ方法で水性供給混合物を用いてパルス試験を行った。
【0024】
[0025] それぞれMDS 4368カラム及びAMP-03カラムの溶出から収集された分画の分析では、グルコン酸又はグルカル酸と、場合により、一方では他のすべての材料の分画との重なる部分の累積面積、他方では「その他のすべての材料」の中から特にそれぞれグルカル酸及びグルコン酸の分画との分画の重なる部分の累積面積を比較することによって、両性樹脂が、Diamondらによって提案される弱塩基性のアニオン交換樹脂よりも優れた性能が得られることが示されており、以下の表1が参照される。特に、Diamondらの主張する弱塩基性アニオン交換樹脂と比較すると、両性樹脂は、Boussieらに記載の種類の生成混合物からのグルカル酸の単離にはるかに効果的な樹脂であることが分かった。表1中、「OAGnF」は、グルコン酸分画と、「その他のすべての材料」との重なる部分の面積、及び「その他のすべての材料」の中から特にグルカル酸との重なる部分の面積を意味するとして理解され、これに対応して「OAGrF」は、グルカル酸分画と、「その他のすべての材料」との重なる部分の面積、及び「その他のすべての材料」の中から特にグルコン酸との重なる部分の面積を意味すると理解される。
【0025】
【0026】
[0026] 実施例2
[0027] 実施例1及び比較例1に使用したものと同じ水性供給混合物、したがって6.3重量%のグルコン酸塩、8.2重量%のグルカル酸塩、0.013%の塩化物、0.025%のサルフェート、及び2.7%の別の有機酸塩(乾燥固体使用量)を含む水性供給混合物を使用して一連のさらなるパルス試験を行った。特に、それぞれのパーセント値による水性供給混合物の種々のカルボン酸の分析結果は以下の通りであった:フマル酸、0.4;グリコール酸、1.6;ガラクツロン酸、7.7;2-ケト-グルコネート、0.4;5-ケト-グルコン酸、3.3;グルクロン酸、0.5;グルコン酸、35.7、グルカル酸、50.3(合計100.0)。
【0027】
[0028] ジビニルベンゼン架橋ゲルポリスチレンに第4級アンモニウム官能基及びカルボキシル官能基が導入され、Exhibit B(その内容が本明細書に援用されると見なされるべきである)においてより十分に特徴付けられる280mLのPurolite(登録商標)WCA100両性樹脂を、実施例1及び比較例1で行ったように、DI水でスラリーにして、2本のジャケット付きガラスカラム(25mm×600mm)中に充填し、気泡を除去した。両方のカラムを水浴に接続し、50℃に加熱した。カラムを約10床体積の脱イオン水で洗浄し、次に、AMP-03樹脂で行ったように、第1のカラム(カラム#1)は7床体積の水性供給混合物を用いてコンディショニングを行い、一方、第2のカラム(カラム#2)は7床体積の脱イオン水を用いてコンディショニングを行った。前処理後、次にカラムを10床体積の脱イオン水で洗浄した。
【0028】
[0029] この方法でカラムのコンディショニングを行った後、カラムをダウンフロー操作用に構成した。カラム上部のバルブを開き、次に液面が樹脂床の最上部に到達したときに、20ミリリットルの水性供給混合物のパルスを導入した。液面が樹脂床の最上部まで再び引き上げられたときに、1~2ミリリットルのDI水を加え、カラム上部のバルブを閉じた。20ミリリットル/分のDI水の溶出流を開始し、後の分析のために、0.16床体積の間隔でそれぞれ約48mLの34の分画を収集した。
【0029】
[0030] 分画の重なる部分の面積の分析によって、WCA100両性樹脂も同様に、Diamondらによって提案された弱塩基性アニオン交換樹脂よりも優れた性能が得られ、AMP-03樹脂と実質的に同等の性能が得られることが示された。
【0030】
[0031] 実施例3~5
[0032] 実施例1で使用したものと同じ装置及び方法を使用してパルス試験を行ったが、両性樹脂のみを使用し、水性グルカル酸含有供給材料を使用し、その中で、Boussieら(米国特許第8,669,397号)によって生成されるような生成混合物中に見られる量よりも多い量でクエン酸、リンゴ酸、及び乳酸を混合(spike)した。
【0031】
[0033] 特に、パルス試験のクエン酸、リンゴ酸、及び乳酸を混合(spike)した水性グルカル酸含有供給材料のそれぞれにおいて、それぞれのパーセント値による水性供給混合物の種々のカルボン酸の分析結果は以下の通りであった:
クエン酸を混合-0.6 グルコネート;0.0 ラクテート;0.04 グルコレート;0.09 2-ケト-グルコネート;0.20 ガラクツロネート/グルロネート;0.08 グルクロネート;0.19 5-ケト-グルコネート;69.8 グルカレート;0.0 マレエート;29.0 シトレート。
リンゴ酸を混合-0.6 グルコネート;0.0 ラクテート;0.05 グルコレート;0.10 2-ケト-グルコネート;0.22 ガラクツロネート/グルロネート;0.11 グルクロネート;0.20 5-ケト-グルコネート;67.4 グルカレート;31.3 マレエート;0.03 シトレート。
乳酸を混合-0.51 グルコネート;25.6 ラクテート;0.04 グルコレート;0.09 2-ケト-グルコネート;0.21 ガラクツロネート/グルロネート;0.09 グルクロネート;0.19 5-ケト-グルコネート;73.3 グルカレート;0.0 マレエート;0.03 シトレート。
【0032】
[0034] 試験結果から、これらのその他のカルボン酸のそれぞれからグルカル酸が効率的に分離され、(最も早いものから最も遅いものまで)グルコン酸、乳酸、グルカル酸、リンゴ酸、及び次にクエン酸の溶出順序が示される能力が確認された。化合物の構造及び溶出の順序に基づくと、AMP-03樹脂上への吸着機構は、これらの分子中に含まれる二重結合酸素に対する親和性であると思われる。グルコン酸及び乳酸の両方は1つの二重結合酸素を有し、そのためこの樹脂はそれらに対する親和性が低く、それらは最も早く溶出し、一方、グルカル酸及びリンゴ酸の両方は2つの二重結合酸素を有し、幾分遅くほぼ一緒に溶出し、クエン酸は3つの二重結合酸素を含み、試験をしたものの中で一番最後に溶出する。これらの結果に基づくと、アスコルビン酸及び酢酸は、グルカル酸よりも早く溶出し、グルカル酸からの分離も可能であり、一方、コハク酸及びシュウ酸はリンゴ酸及びグルカル酸と同様に溶出すると推測される。