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特許7089556HAPSのサービスリンクにおけるアンテナ取付プレートからの反射波干渉抑制
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】HAPSのサービスリンクにおけるアンテナ取付プレートからの反射波干渉抑制
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/52 20060101AFI20220615BHJP
   H01Q 3/26 20060101ALI20220615BHJP
   H01Q 17/00 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
H01Q1/52
H01Q3/26 Z
H01Q17/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020115954
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022013417
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2022-03-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318002806
【氏名又は名称】HAPSモバイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】須藤 渉一
(72)【発明者】
【氏名】星野 兼次
(72)【発明者】
【氏名】林 合祐
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-036070(JP,A)
【文献】特表2008-523708(JP,A)
【文献】特開平11-088042(JP,A)
【文献】特開2009-232213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/52
H01Q 17/00
H01Q 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置と無線通信する空中滞在型の通信中継装置であって、
前記端末装置と間のサービスリンクの無線通信を行うセルを形成する複数のアンテナ素子を有するアンテナと、
前記アンテナが取り付けられたアンテナ取付部材と、を備え、
前記アンテナ取付部材の外部に露出した外側表面に、電波吸収体の層又は前記サービスリンクの周波数の電波を選択的に遮蔽する周波数選択性電磁遮蔽部材の層を有することを特徴とする通信中継装置。
【請求項2】
請求項1の通信中継装置において、
前記複数のアンテナ素子はそれぞれ、前記アンテナ素子のアンテナ主面に垂直なアンテナ指向ビームの方向が水平方向よりも下向きになるように傾斜させてアンテナ本体支持部に支持されている、ことを特徴とする通信中継装置
【請求項3】
求項2の通信中継装置において、
前記複数のアンテナ素子はそれぞれ、前記アンテナ素子の下端部、中央部又は上端部が前記アンテナ本体支持部の外周面に支持され、その支持位置を中心にして回動して傾斜している、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかの通信中継装置において、
前記複数のアンテナ素子はそれぞれ、前記アンテナ素子のアンテナ主面に垂直なアンテナ指向ビームを細くする無給電素子を有する、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項5】
端末装置と無線通信する空中滞在型の通信中継装置であって、
前記端末装置と間のサービスリンクの無線通信を行うセルを形成する複数のアンテナ素子を有するアンテナと、
前記アンテナが取り付けられたアンテナ取付部材と、を備え、
前記複数のアンテナ素子はそれぞれ、前記アンテナ素子のアンテナ主面に垂直なアンテナ指向ビームを細くする無給電素子を有する、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかの通信中継装置において、
前記アンテナの前記複数のアンテナ素子それぞれを介して送受信される複数の送受信信号の位相及び振幅を制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、
前記通信中継装置に予め設定した基準方向の向きを基準にして、前記セルのフットプリントの位置を固定するように前記通信中継装置から前記セルの中心に向かうアンテナ指向ビームの目標ビーム幅、目標水平角度及び目標垂直角度を決定し、
前記複数のアンテナ素子それぞれの直接波のビームパターンと前記アンテナ取付部材による反射波のビームパターンとを合成した合成ビームパターンに基づいて、前記目標ビーム幅、前記目標水平角度及び前記目標垂直角度を有するアンテナ指向ビームを形成するように前記アンテナの前記複数のアンテナ素子それぞれを介して送受信される複数の送受信信号の位相及び振幅を制御する、
ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項7】
端末装置と無線通信する空中滞在型の通信中継装置であって、
前記端末装置と間のサービスリンクの無線通信を行うセルを形成する複数のアンテナ素子を有するアンテナと、
前記アンテナが取り付けられたアンテナ取付部材と、
前記アンテナの前記複数のアンテナ素子それぞれを介して送受信される複数の送受信信号の位相及び振幅を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記通信中継装置に予め設定した基準方向の向きを基準にして、前記セルのフットプリントの位置を固定するように前記通信中継装置から前記セルの中心に向かうアンテナ指向ビームの目標ビーム幅、目標水平角度及び目標垂直角度を決定し、
前記複数のアンテナ素子それぞれの直接波のビームパターンと前記アンテナ取付部材による反射波のビームパターンとを合成した合成ビームパターンに基づいて、前記目標ビーム幅、前記目標水平角度及び前記目標垂直角度を有するアンテナ指向ビームを形成するように前記アンテナの前記複数のアンテナ素子それぞれを介して送受信される複数の送受信信号の位相及び振幅を制御する、
ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項8】
請求項又はの通信中継装置において、
前記複数のアンテナ素子それぞれの直接波のビームパターンと前記アンテナ取付部材による反射波のビームパターンとを合成した合成ビームパターンに基づいて、前記目標ビーム幅、前記目標水平角度及び前記目標垂直角度を有するアンテナ指向ビームを形成するように、前記複数のアンテナ素子に対する複数の送受信信号それぞれに適用するウェイトを計算し、
前記複数のウェイトに基づいて、前記複数の送受信信号の位相及び振幅の制御を行うことを特徴とする通信中継装置。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれかの通信中継装置において、
前記アンテナは、円柱周面形状又は多角柱周面形状の本体の外周面に沿って複数のアンテナ素子を分布させるように配置したシリンダー型のアンテナであることを特徴とする通信中継装置。
【請求項10】
請求項の通信中継装置において、
前記シリンダー型のアンテナは、前記円柱周面形状又は多角柱周面形状の本体の外周面の周方向に複数のアンテナ素子を並べたサーキュラー型のアレイアンテナを、前記本体の中心軸に平行な方向に複数組並べて構成したことを特徴とする通信中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元化ネットワークの構築に適したHAPS等の通信中継装置のサービスリンクにおけるリピータや基地局装置等の中継通信局のアンテナ取付プレートからの反射波干渉抑制の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空中に浮揚して滞在可能な高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」ともいう。)等の通信中継装置が知られている。この通信中継装置における通信回線は、その通信中継装置と移動通信網側のゲートウェイ(GW)局との間のフィーダリンクと、通信中継装置と端末装置との間のサービスリンクとで構成される。
【0003】
特許文献1には、端末装置と間のサービスリンクの無線通信を行うセルを形成する複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと、通信中継装置の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報を取得する情報取得部と、情報取得部で取得した通信中継装置の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、セルのフットプリントの位置を固定するように、アレイアンテナの複数のアンテナ素子それぞれを介して送受信される複数の送受信信号の位相及び振幅を制御する制御部と、を備える空中滞在型の通信中継装置が開示されている。この通信中継装置によれば、装置の小型化を図るともにサービスエリアを構成する複数のセルのフットプリントの移動を抑制してフットプリントを固定することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-036070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記アレイアンテナなどのサービスリンクのアンテナを備える空中滞在型の通信中継装置では、アンテナから放射された電波の一部がアンテナ取付部材で反射するおそれがある。このような反射が発生すると、通信中継装置から離れているセルのフットプリント上の端末装置においては、通信中継装置からの直接波と反射波との重ね合わせが発生し、セルのフットプリントにおける通信品質が低下し、セルのフットプリントを安定に固定することが難しい、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る通信中継装置は、端末装置と無線通信する空中滞在型の通信中継装置である。この通信中継装置は、前記端末装置と間のサービスリンクの無線通信を行うセルを形成する複数のアンテナ素子を有するアンテナと、前記アンテナが取り付けられたアンテナ取付部材と、を備え、前記アンテナ取付部材の外部に露出した外側表面に、電波吸収体の層又は前記サービスリンクの周波数の電波を選択的に遮蔽する周波数選択性電磁遮蔽部材の層を有する。
【0007】
前記通信中継装置において、前記複数のアンテナ素子はそれぞれ、前記アンテナ素子のアンテナ主面に垂直なアンテナ指向ビームの方向が水平方向よりも下向きになるように傾斜させてアンテナ本体支持部に支持してもよい。
【0008】
本発明の他の態様に係る通信中継装置は、端末装置と無線通信する空中滞在型の通信中継装置である。この通信中継装置は、前記端末装置と間のサービスリンクの無線通信を行うセルを形成する複数のアンテナ素子を有するアンテナと、前記アンテナが取り付けられたアンテナ取付部材と、を備え、前記複数のアンテナ素子はそれぞれ、前記アンテナ素子のアンテナ主面に垂直なアンテナ指向ビームの方向が水平方向よりも下向きになるように傾斜させてアンテナ本体支持部に支持されている。
【0009】
前記通信中継装置において、前記複数のアンテナ素子はそれぞれ、前記アンテナ素子の下端部、中央部又は上端部が前記アンテナ本体支持部の外周面に支持され、その支持位置を中心にして回動して傾斜していてもよい。
【0010】
前記通信中継装置において、前記複数のアンテナ素子はそれぞれ、前記アンテナ素子のアンテナ主面に垂直なアンテナ指向ビームを細くする無給電素子を有してもよい。
【0011】
本発明の更に他の態様に係る通信中継装置は、端末装置と無線通信する空中滞在型の通信中継装置である。この通信中継装置は、前記端末装置と間のサービスリンクの無線通信を行うセルを形成する複数のアンテナ素子を有するアンテナと、前記アンテナが取り付けられたアンテナ取付部材と、を備え、前記複数のアンテナ素子はそれぞれ、前記アンテナ素子のアンテナ主面に垂直な主ビームを細くする無給電素子を有する。
【0012】
前記通信中継装置において、前記アレイアンテナの前記複数のアンテナ素子それぞれを介して送受信される複数の送受信信号の位相及び振幅を制御する制御部を更に備え、前記制御部は、前記通信中継装置に予め設定した基準方向の向きを基準にして、前記セルのフットプリントの位置を固定するように前記通信中継装置から前記セルの中心に向かうアンテナ指向ビームの目標ビーム幅、目標水平角度及び目標垂直角度を決定し、前記複数のアンテナ素子それぞれの直接波のビームパターンと前記アンテナ取付部材による反射波のビームパターンとを合成した合成ビームパターンに基づいて、前記目標ビーム幅、前記目標水平角度及び前記目標垂直角度を有するアンテナ指向ビームを形成するように前記アレイアンテナの前記複数のアンテナ素子それぞれを介して送受信される複数の送受信信号の位相及び振幅を制御してもよい。
【0013】
本発明の更に他の態様に係る通信中継装置は、端末装置と無線通信する空中滞在型の通信中継装置である。この通信中継装置は、前記端末装置と間のサービスリンクの無線通信を行うセルを形成する複数のアンテナ素子を有するアンテナと、前記アンテナが取り付けられたアンテナ取付部材と、前記アレイアンテナの前記複数のアンテナ素子それぞれを介して送受信される複数の送受信信号の位相及び振幅を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記通信中継装置に予め設定した基準方向の向きを基準にして、前記セルのフットプリントの位置を固定するように前記通信中継装置から前記セルの中心に向かうアンテナ指向ビームの目標ビーム幅、目標水平角度及び目標垂直角度を決定し、前記複数のアンテナ素子それぞれの直接波のビームパターンと前記アンテナ取付部材による反射波のビームパターンとを合成した合成ビームパターンに基づいて、前記目標ビーム幅、前記目標水平角度及び前記目標垂直角度を有するアンテナ指向ビームを形成するように前記アレイアンテナの前記複数のアンテナ素子それぞれを介して送受信される複数の送受信信号の位相及び振幅を制御する。
【0014】
前記通信中継装置において、前記複数のアンテナ素子それぞれの直接波のビームパターンと前記アンテナ取付部材による反射波のビームパターンとを合成した合成ビームパターンに基づいて、前記目標ビーム幅、前記目標水平角度及び前記目標垂直角度を有するアンテナ指向ビームを形成するように、前記複数のアンテナ素子に対する複数の送受信信号それぞれに適用するウェイトを計算し、前記複数のウェイトに基づいて、前記複数の送受信信号の位相及び振幅の制御を行ってもよい。
【0015】
前記通信中継装置において、前記アンテナは、円柱周面形状又は多角柱周面形状の本体の外周面に沿って複数のアンテナ素子を分布させるように配置したシリンダー型のアンテナであってもよい。前記シリンダー型のアンテナは、前記円柱周面形状又は多角柱周面形状の本体の外周面の周方向に複数のアンテナ素子を並べたサーキュラー型のアレイアンテナを、前記本体の中心軸に平行な方向に複数組並べて構成してもよい。また、前記アンテナは、平面上に複数のアンテナ素子が配列した一又は複数の平面型のアンテナであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、空中滞在型の通信中継装置のサービスリンクのアンテナが取り付けられたアンテナ取付部材での反射による指向性パターンの変動を抑え、セルのフットプリントを安定に固定することができ、その結果、通信品質の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る3次元化ネットワークを実現する通信システムの全体構成の一例を示す概略構成図。
図2】実施形態に係る通信システムに用いられるHAPSの一例を示す斜視図。
図3】実施形態に係る通信システムに用いられるHAPSの他の例を示す側面図。
図4】実施形態に係るHAPSのサービスリンク用アンテナの搭載部分の構成の一例を示す断面図。
図5】実施形態に係るHAPSのサービスリンク用アンテナの構成の一例を示す断面図。
図6】サービスリンク用アンテナの直接波と反射波との関係の一例を示す説明図。
図7】サービスリンク用アンテナで形成されるセルによるフットプリントの一例を示す説明図。
図8】サービスリンク用アンテナの指向性特性における反射波の影響の一例を示すグラフ。
図9】サービスリンク用アンテナの指向性における天頂角θ及び方位角φの定義を示す座標系の説明図。
図10】(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るHAPSのアンテナ取付部材及びサービスリンク用アンテナの構成の一例を示す底面図及び側方断面図。
図11】実施形態に係るHAPSのアンテナ取付部材の表面に電波吸収体の層を設けた場合のサービスリンク用アンテナの指向性特性の一例を示すグラフ。
図12】参考比較例に係るアンテナ取付部材の表面に電波吸収体の層を設けない場合のサービスリンク用アンテナの指向性特性の一例を示すグラフ。
図13】(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、実施形態に係るHAPSのサービスリンク用アンテナの他の構成例を示す縦断面図。
図14】(a)は、実施形態に係るHAPSにおけるアンテナ素子が傾斜したサービスリンク用アンテナの構成の一例を示す縦断面図。(b)は、同サービスリンク用アンテナの指向性特性の一例を示すグラフ。
図15】(a)は、参考例に係るアンテナ素子が傾斜していないサービスリンク用アンテナの構成の一例を示す縦断面図。(b)は、同サービスリンク用アンテナの指向性特性の一例を示すグラフ。
図16】(a)は、実施形態に係るHAPSにおける無給電素子を有するサービスリンク用アンテナのビームの一例を示す説明図。(b)は、参考例に係る無給電素子を有していないサービスリンク用アンテナのビームの一例を示す説明図。
図17】(a)は、実施形態に係るHAPSにおける傾斜したアンテナ素子を有するサービスリンク用アンテナと電波吸収体の層を有するアンテナ取付部材とを組み合わせた構成の一例を示す断面図。(b)は、実施形態に係るHAPSにおける傾斜したアンテナ素子及び無給電素子を有するサービスリンク用アンテナと電波吸収体の層を有するアンテナ取付部材とを組み合わせた構成の一例を示す断面図。
図18】実施形態に係るHAPSにおけるデジタルビームフォーミング(DBF)制御の一例を示すフローチャート。
図19】実施形態に係るHAPSにおけるデジタルビームフォーミング(DBF)制御の制御系の構成の一例を示す説明図。
図20】実施形態に係るHAPSにおけるアンテナ取付部材による反射を考慮して決定したウェイトを用いてサービスリンク用アンテナに供給する信号の振幅及び位相を制御したときの指向性特性の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムにおけるHAPS10のセル構成の一例を示す説明図である。本実施形態に係る通信システムは、多数の端末装置への同時接続や低遅延化などに対応する第5世代又はその後の世代の移動通信の3次元化ネットワークの実現に適する。また、本明細書に開示する通信システム、無線中継局、基地局、リピーター及び端末装置に適用可能な移動通信の標準規格は、第5世代の移動通信の標準規格、及び、第5世代以降の次々世代の移動通信の標準規格を含む。
【0019】
図1に示すように、通信システムは、複数の空中浮揚型の通信中継装置(無線中継装置)としての高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」、「成層圏プラットフォーム」ともいう。)10を備えている。HAPS10は、所定高度の空域に位置して、所定高度のセル形成目標空域に3次元セル(3次元エリア)を形成する。HAPS10は、自律制御又は外部から制御により地面又は海面から100[km]以下の高高度の空域(浮揚空域)に浮遊あるいは飛行して位置するように制御される浮揚体としてのソーラープレーンに、中継通信局110が搭載されたものである。
【0020】
HAPS10の位置する空域は、例えば、地上(又は海や湖などの水上)の高度が11[km]以上及び50[km]以下の成層圏の空域である。この空域は、気象条件が比較的安定している高度15[km]以上25[km]以下の空域であってもよく、特に高度がほぼ20[km]の空域であってもよい。
【0021】
本実施形態の通信システムにおける1又は2以上のHAPSで3次元セルを形成する目標の空域であるセル形成目標空域は、HAPS10が位置する空域と従来のマクロセル基地局等の基地局(例えばLTEのeNodeB)がカバーする地面近傍のセル形成領域との間に位置する、所定高度範囲(例えば、50[m]以上1000[m]以下の高度範囲)の空域である。
【0022】
なお、本実施形態の3次元セルが形成されるセル形成目標空域は、海、川又は湖の上空であってもよい。また、HAPS10で形成する3次元セルは、地上又は海上に位置する端末装置61との間でも通信できるよう地面又は海面に達するように形成してもよい。
【0023】
HAPS10の中継通信局110はそれぞれ、サービスリンク用アンテナ(以下「SLアンテナ」という。)により、移動局である端末装置61と無線通信するための複数のアンテナ指向ビーム(以下、省略して「ビーム」ともいう。)を地面に向けて形成する。端末装置61は、遠隔操縦可能な小型のヘリコプター等の航空機であるドローンに組み込まれた通信端末モジュールでもよいし、飛行機の中でユーザが使用するユーザ装置であってもよい。セル形成目標空域においてビームが通過する領域が3次元セルである。セル形成目標空域において互いに隣り合う複数のビームは部分的に重なってもよい。
【0024】
HAPS10の中継通信局110はそれぞれ、例えば、地上(又は海上)側のコアネットワークに接続された中継局としてのゲートウェイ局(「フィーダ局」ともいう。)70と無線通信する基地局、又は、地上(又は海上)側の基地局に接続された中継局としてのフィーダ局(リピータ親機)70と無線通信するリピータ子機である。
【0025】
なお、中継通信局110は、eNodeB、gNodeBなどの機能を有する基地局であってもよい。この場合、基地局としての中継通信局110のバックホール回線がフィーダリンクに設定される。
【0026】
HAPS10の中継通信局110は、フィーダリンク用アンテナ(以下「FLアンテナ」という。)により無線通信可能な地上又は海上に設置されたフィーダ局70を介して、移動通信網80のコアネットワークに接続されている。HAPS10とフィーダ局70との間のフィーダリンクの通信は、マイクロ波又はミリ波などの電波による無線通信で行ってもよいし、レーザ光などを用いた光通信で行ってもよい。
【0027】
HAPS10はそれぞれ、内部に組み込まれたコンピュータ等で構成された制御部が制御プログラムを実行することにより、自身の浮揚移動(飛行)や中継通信局110での処理を自律制御してもよい。例えば、HAPS10はそれぞれ、自身の現在位置情報(例えばGPS位置情報)、予め記憶した位置制御情報(例えば、飛行スケジュール情報)、周辺に位置する他のHAPSの位置情報などを取得し、それらの情報に基づいて浮揚移動(飛行)や中継通信局110での処理を自律制御してもよい。
【0028】
また、HAPS10それぞれの浮揚移動(飛行)や中継通信局110での処理は、移動通信網の通信センター等に設けられた管理装置としての管理装置(「遠隔制御装置」ともいう。)によって制御できるようにしてもよい。管理装置は、例えば、PCなどのコンピュータ装置やサーバ等で構成することができる。この場合、HAPS10は、管理装置からの制御情報を受信したり管理装置に監視情報などの各種情報を送信したりできるように制御用通信端末装置(例えば、移動通信モジュール)が組み込まれ、管理装置から識別できるように端末識別情報(例えば、IPアドレス、電話番号など)が割り当てられるようにしてもよい。制御用通信端末装置の識別には通信インターフェースのMACアドレスを用いてもよい。
【0029】
また、HAPS10はそれぞれ、自身又は周辺のHAPSの浮揚移動(飛行)や中継通信局110での処理に関する情報、HAPS10の状態に関する情報や各種センサなどで取得した観測データなどの監視情報を、管理装置等の所定の送信先に送信するようにしてもよい。制御情報は、HAPS10の目標飛行ルート情報を含んでもよい。監視情報は、HAPS10の現在位置、飛行ルート履歴情報、対気速度、対地速度及び推進方向、HAPS10の周辺の気流の風速及び風向、並びに、HAPS10の周辺の気圧及び気温の少なくとも一つの情報を含んでもよい。
【0030】
中継通信局110と端末装置61との無線通信の上りリンク及び下りリンクの複信方式は、特定の方式に限定されず、例えば、時分割複信(Time Division Duplex:TDD)方式でもよいし、周波数分割複信(Frequency Division Duplex:FDD)方式でもよい。また、中継通信局21と端末装置61との無線通信のアクセス方式は、特定の方式に限定されず、例えば、FDMA(Frequency Division Multiple Access)方式、TDMA(Time Division Multiple Access)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、又は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)であってもよい。また、前記無線通信には、ダイバーシティ・コーディング、送信ビームフォーミング、空間分割多重化(SDM:Spatial Division Multiplexing)等の機能を有し、送受信両方で複数のアンテナを同時に利用することにより、単位周波数当たりの伝送容量を増やすことができるMIMO(多入力多出力:Multi-Input and Multi-Output)技術を用いてもよい。また、前記MIMO技術は、1つの基地局が1つの端末装置と同一時刻・同一周波数で複数の信号を送信するSU-MIMO(Single-User MIMO)技術でもよいし、1つの基地局が複数の異なる端末装置に同一時刻・同一周波数で信号を送信又は複数の異なる基地局が1つの端末装置に同一時刻・同一周波数で信号を送信するMU-MIMO(Multi-User MIMO)技術であってもよい。
【0031】
また、HAPS10とフィーダ局としてのゲートウェイ局(以下「GW局」と略す。)70を介した地上の基地局との間のリンクを「フィーダリンク」といい、HAPS10と端末装置61の間のリンクを「サービスリンク」という。特に、HAPS10とGW局70との間の区間を「フィーダリンクの無線区間」という。また、GW局70からHAPS10を経由して端末装置61に向かう通信のダウンリンクを「フォワードリンク」といい、端末装置61からHAPS10を経由してGW局70に向かう通信のアップリンクを「リバースリンク」ともいう。
【0032】
なお、図1の例において、HAPS10の高度が約20kmの成層圏に位置し、HAPS10が複数のセル100C(1)~100C(7)を形成し、その複数セル(7セル)構成のセル100C(1)~100C(7)のフットプリント100F(1)~100F(7)からなるサービスエリア10Aの直径は100~200kmであるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
図2は、実施形態の通信システムに用いられるHAPS10の一例を示す斜視図である。
図2のHAPS10は、ソーラープレーンタイプのHAPSであり、長手方向の両端部側が上方に沿った主翼部101と、主翼部101の短手方向の一端縁部にバス動力系の推進装置としての複数のモータ駆動のプロペラ103とを備える。主翼部101の上面には、太陽光発電機能を有する太陽光発電部としての太陽光発電パネル(以下「ソーラーパネル」という。)102が設けられている。また、主翼部101の下面の長手方向の2箇所には、板状の連結部104を介して、ミッション機器が収容される複数の機器収容部としてのポッド105が連結されている。各ポッド105の内部には、ミッション機器としての中継通信局110と、バッテリー106とが収容されている。また、各ポッド105の下面側には離発着時に使用される車輪107が設けられている。ソーラーパネル102で発電された電力はバッテリー106に蓄電され、バッテリー106から供給される電力により、プロペラ103のモータが回転駆動され、中継通信局110による無線中継処理が実行される。
【0034】
中継通信局110は、無線中継処理を主に行う本体装置と、端末装置61との間の無線通信に用いられるSLアンテナと、フィーダ局70との間の無線通信に用いられるFLアンテナとを有する。
【0035】
ソーラープレーンタイプのHAPS10は、例えば所定の目標飛行ルートに基づいて円形状に旋回飛行を行ったり「D」の字飛行を行ったり「8」の字飛行を行ったりすることにより揚力で浮揚し、所定の高度で水平方向の所定の範囲に滞在するように浮揚することができる。なお、ソーラープレーンタイプのHAPS10は、プロペラ103が回転駆動されていないときは、グライダーのように飛ぶこともできる。例えば、昼間などのソーラーパネル102の発電によってバッテリー106の電力が余っているときに高い位置に上昇し、夜間などのソーラーパネル102で発電できないときにバッテリー106からモータへの給電を停止してグライダーのように飛ぶことができる。
【0036】
図3は、実施形態の通信システムに用いられるHAPS20の他の例を示す斜視図である。
図3のHAPS20は、無人飛行船タイプのHAPSであり、ペイロードが大きいため大容量のバッテリーを搭載することができる。HAPS20は、浮力で浮揚するためのヘリウムガス等の気体が充填された飛行船本体201と、バス動力系の推進装置としてのモータ駆動のプロペラ202と、ミッション機器が収容される機器収容部203とを備える。機器収容部203の内部には、中継通信局210とバッテリー204とが収容されている。バッテリー204から供給される電力により、プロペラ202のモータが回転駆動され、中継通信局210による無線中継処理が実行される。飛行船本体201の上面に、太陽光発電機能を有するソーラーパネルを設け、ソーラーパネルで発電された電力をバッテリー204に蓄電するようにしてもよい。
【0037】
中継通信局210は、無線中継処理を主に行う本体装置と、端末装置61との間の無線通信に用いられるSLアンテナと、フィーダ局70との間の無線通信に用いられるFLアンテナとを有する。
【0038】
なお、以下の実施形態の説明では、端末装置61と無線通信する通信中継装置が、ソーラープレーンタイプのHAPS10の場合について図示して説明するが、通信中継装置は無人飛行船タイプのHAPS20であってもよい。また、以下の実施形態は、HAPS10,20以外の他の空中浮揚型の通信中継装置にも同様に適用できる。
【0039】
図4は、実施形態に係るHAPS10のSLアンテナ130が搭載されている部分の構成の一例を断面図である。図4において、SLアンテナ130は、前述のポッド105の外壁である樹脂製のフェアリンク105aの内部に収容され、ポッド105の内部空間を区画するように設けられたプレート状のアンテナ取付部材108の下面に取り付けられている。アンテナ取付部材108の上面には、中継通信局110の本体装置120が取り付けられている。アンテナ取付部材108は、例えば、高い強度が得られるとともに軽量化を図ることができるカーボン繊維強化樹脂で形成されている。
【0040】
図5は、実施形態に係るHAPS10のSLアンテナ130の構成の一例を示す断面図である。図5において、SLアンテナ130は、円柱周面形状又は多角柱周面形状のアンテナ本体支持部131の外周面に沿って複数のアンテナ素子132を分布させるように配置した、フットプリントの固定制御に適するシリンダー型のアレイアンテナである。特に本実施形態のSLアンテナ130は、円柱周面形状又は多角柱周面形状のアンテナ本体支持部131の外周面の周方向に複数のアンテナ素子を並べたサーキュラー型のアレイアンテナを、アンテナ本体支持部131の中心軸に平行な方向に複数組並べた構成を有する。すなわち、SLアンテナ130は、水平方向にはどの方向から見てもアンテナの形状が変わらないようにアンテナ素子132が円形に配置(サーキュラーアレイ)され、垂直方向には縦方向のビーム方向制御に対応するためアンテナ素子132が線形配置されている。アンテナ素子132は、例えば、アンテナ主面の中心からずれた所定の2箇所に給電ポイントを有する直線偏波の電波を効率的に送受信可能な平面アンテナ(パッチアンテナ)である。なお、SLアンテナ130の最下部に、HAPS10の真下方向にセルを作る平面アレイアンテナ等のアンテナを設けてもよい。
【0041】
上記構成のHAPS10において、SLアンテナ130が取り付けられたアンテナ取付部材108が導電性を有するカーボン繊維強化樹脂で形成されているため、図6に示すようにSLアンテナ130のアンテナ素子132から放射された電波のビームの一部がアンテナ取付部材108の表面108aで反射するおそれがある。このアンテナ取付部材108による反射が発生すると、HAPS10から離れている地上のセルのフットプリント100F(図1及び図7参照)上の端末装置61が位置している遠方では、HAPS10からの直接波と反射波との重ね合わせが発生する。
【0042】
なお、SLアンテナ130は、平面上に複数のアンテナ素子が配列した一又は複数の平面型のアンテナであってもよい。
【0043】
図8は、SLアンテナ130の指向性特性(ビームパターン)における反射波の影響の一例を示すコンピュータシミュレーションの結果のグラフである。図9は、SLアンテナ130の指向性における天頂角(「垂直角度」ともいう。)θ及び方位角(「水平角」又は「ステアリング角」ともいう。)φの定義を示す座標系の説明図である。図9のx,y,z座標系において、SLアンテナ130のアンテナ素子132の中央部が原点に位置し、z軸のプラス方向(天頂方向)を基準にしたビームBmの方向の角度(図中下向きの角度がプラス)が天頂角θ[deg.]である。また、ビームBmをx-y面に投影したビーム投影方向Bm’を基準にしたビームBmの方向の角度(図中上向きの角度がプラス)が仰角θ’[deg.](=90[deg.]-θ)である。また、x-y面(水平面)においてx軸のプラス方向を基準にした上記ビーム投影方向Bm’の方向の角度(図中左回転方向の角度がプラス)が方位角φ(「水平偏角」ともいう。)[deg.]である。図示の例では、+x軸の方向の方位角φが0[deg.]であり、+y軸の方向の方位角φが90[deg.]である。
【0044】
図8は、コンピュータシミュレーションを用いて、図9で定義される天頂角θが-90[deg.](地上に向かう鉛直方向)~+90[deg.](天頂に向かう鉛直方向)の範囲でSLアンテナ130から十分離れた遠方におけるSLアンテナ130の利得[dBi]を計算した結果を示している。図中の曲線C101は、アンテナ取付部材108の表面108aでの反射を考慮した指向性特性のパターンであり、曲線C102は、反射がない場合の指向性特性の理想パターンである。図8中のD101で囲んだ領域での指向性特性に示すように、地上に向かう天頂角θの範囲において、SLアンテナ130から十分離れた地上などの遠方では直接波と反射波との重ね合わせが発生するため、アンテナ利得C101が大きく変動してビームが乱れる。その結果、セルのフットプリント100Fにおいて十分な品質の通信ができないことに加え、HAPS10の移動や姿勢変化が起こるとセルのフットプリント100Fも固定できない(変動する)。
【0045】
そこで、本実施形態のHAPS10では、以下に説明するように、アンテナ取付部材108による反射の影響を抑制してセルのフットプリント100Fにおける通信品質の低下を抑制するとともに、セルのフットプリント100Fを安定に固定するための各種の反射対策の構成を備えている。
【0046】
〔反射対策の構成例1〕
図10(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るHAPS10のアンテナ取付部材108及びSLアンテナ130の構成の一例を示す底面図及び側方断面図である。本構成例では、アンテナ取付部材108のSLアンテナ130側の表面に、表面に多数の突起を有するシート状の電波吸収体109を貼り付けることにより電波吸収体109の層を形成している。このようにアンテナ取付部材108の表面に電波吸収体109の層を設けることにより、SLアンテナ130から放射された電波がアンテナ取付部材108で反射されるのを防止することができる。これにより、アンテナ取付部材108での反射による指向性パターンの変動を抑え、セルのフットプリントを安定に固定することができ、その結果、通信品質の劣化を防止することができる。
【0047】
図11は、実施形態に係るHAPS10のアンテナ取付部材108の表面に電波吸収体109の層を設けた場合のSLアンテナ130の指向性特性の一例を示すグラフである。図12は、参考比較例に係るアンテナ取付部材108の表面に電波吸収体の層を設けない場合のSLアンテナの指向性特性の一例を示すグラフである。図11及び図12はそれぞれ、有限長のアンテナ取付部材による反射を考慮したリニアアレイアンテナを想定して行ったコンピュータシミュレーションによる計算結果を示し、図中の横軸の天頂角θのプラス側が水平方向から下を向いた方向(地上を向いた方向)を示している。図11の計算では、電波吸収体109による電波の吸収を20[dB]とした。電波吸収体109の層を設けた場合は、図11の曲線C201に示すように、反射のない場合の破線で示した曲線C202とほぼ同様なビームパターンが得られた。一方、電波吸収体109の層を設けない場合は、図12の曲線C301に示すように、反射のない場合の破線で示した曲線C302から大きくずれて変動するビームパターンになる。
【0048】
なお、電波吸収体109は、アンテナ取付部材108のSLアンテナ130が取り付けられて表面の全面に貼り付けてもよいし、アンテナ取付部材108の表面の一部(例えば、SLアンテナ130から放射された電波が反射しやすい部分)に部分的に貼り付けてもよい。また、電波吸収体109の代わりに、特定の周波数の電波を選択的に遮蔽する周波数選択性電磁遮蔽部材(FSS)を貼り付けてもよい。この場合、サービスリンクの送信(ダウンリンク)の周波数及びサービスリンクの受信(アップリンク)の周波数のそれぞれに応じて別々の種類の周波数選択性電磁遮蔽部材(FSS)を用意し、別々に貼り付けることもできる。
【0049】
〔反射対策の構成例2〕
図13(a)、図13(b)及び図13(c)はそれぞれ、実施形態に係るHAPS10のSLアンテナ130の他の構成例を示す縦断面図である。本構成例では、SLアンテナ130の複数のアンテナ素子132がそれぞれ、各アンテナ素子(平面アンテナ)132のアンテナ主面に垂直なビームBmの方向が水平方向よりも下向きになるように所定角度ψだけ傾斜させてアンテナ本体支持部131に支持されている。このように各アンテナ素子132を傾斜させることにより、SLアンテナ130から放射された電波がアンテナ取付部材108で反射されるのを防止できる。これにより、アンテナ取付部材108での反射による指向性パターンの変動を抑え、セルのフットプリントを安定に固定することができ、その結果、通信品質の劣化を防止することができる。
【0050】
アンテナ素子(平面アンテナ)132の傾斜角度ψは、例えば、最上部のアンテナ素子132とアンテナ取付部材108の表面との距離やビーム幅などに応じて設定させる。例えば、最上部のアンテナ素子132の鉛直方向中心とアンテナ取付部材108の表面との距離が5~10[cm]の場合、アンテナ素子(平面アンテナ)132の傾斜角度ψは10[deg.]~30[deg.]に設定し、より好ましくは20[deg.]に設定してもよい。
【0051】
図13(a)の構成例では、アンテナ素子132の下端部132aがアンテナ本体支持部131の外周面に支持され、その支持位置を中心にして本体外側に回動させて傾斜させている。この構成例では、アンテナ素子132のビームがアンテナ本体支持部131に干渉しにくいので、アンテナ本体支持部131の外周面の部分にビーム通過を確保するための逃げ部分を形成する必要がない。
【0052】
図13(b)の構成例では、アンテナ素子132の中央部132bがアンテナ本体支持部131の外周面に支持され、その支持位置を中心にして回動させて傾斜させている。
【0053】
図13(c)の構成例では、アンテナ素子132の上端部132cがアンテナ本体支持部131の外周面に支持され、その支持位置を中心にして本体内側に回動させて傾斜させている。この構成例では、アンテナ素子132のアンテナ本体支持部131の外周面から突出する部分が少ないため、SLアンテナ130の小型化ができる。
【0054】
図14(a)は、実施形態に係るHAPS10におけるアンテナ素子132が傾斜したSLアンテナ130の構成の一例を示す縦断面図である。図14(b)は、図14(a)のSLアンテナ130のアンテナ素子132の傾斜の効果の一例を示す指向性特性(ビームパターン)の一例を示すコンピュータシミュレーションの結果のグラフである。図14中のD401で囲んだ領域での指向性特性に示すように、地上に向かう天頂角θの範囲において、4種類の方位角φのいずれについてもアンテナ利得C401の変動が小さくビームが安定している。
【0055】
一方、図15(a)及び図15(b)に示すアンテナ素子132が傾斜していない場合の参考比較例では、図15中のD501で囲んだ領域での指向性特性に示すように、地上に向かう天頂角θの範囲において、4種類の方位角φのいずれについてもアンテナ利得C401が大きく変動し、ビームが乱れている。
【0056】
〔反射対策の構成例3〕
図16(a)は、実施形態に係るHAPS10における無給電素子133を有するSLアンテナ130のビームの一例を示す説明図である。図16(a)において、SLアンテナ130の傾斜している複数のアンテナ素子132それぞれの前方の所定距離に導電性の無給電素子133が配置されている。無給電素子133は、例えばアンテナ本体支持部131に連結された支持フレーム又は支持アームにより支持されている。図示の例では、2個の無給電素子133が配置されているが、無給電素子133の個数は1個でもよいし、3個以上であってもよい。
【0057】
SLアンテナ130の複数のアンテナ素子132のそれぞれの前方に無給電素子133を配置することにより、各アンテナ素子132のビームの幅が、図16(b)の無給電素子133を配置していない参考例の構成よりも狭くなる。従って、SLアンテナ130から放射された電波がアンテナ取付部材108で反射されるのを防止することができる。これにより、アンテナ取付部材108での反射による指向性パターンの変動を抑え、セルのフットプリントを安定に固定することができ、その結果、通信品質の劣化を防止することができる。
【0058】
なお、上記構成例2(アンテナ素子の傾斜)、構成例3(無給電素子の配置)又はそれらの両方は、上記構成例1(アンテナ取付部材108の表面に設けた電波吸収体109の層)と組み合わせてもよい。
【0059】
例えば、図17(a)に示すように、アンテナ取付部材108の表面に電波吸収体109の層を設けるとともに、SLアンテナ130の複数のアンテナ素子132のそれぞれを傾斜させてもよい。
【0060】
また、図17(b)に示すように、アンテナ取付部材108の表面に電波吸収体109の層を設けるとともに、SLアンテナ130の傾斜させた複数のアンテナ素子132の前方に無給電素子133を配置してもよい。
【0061】
〔反射対策の構成例4〕
本構成例では、アンテナ取付部材108の表面による反射がある場合でも図1のフットプリント100F(1)~100F(7)を固定できるように、当該反射を考慮して、SLアンテナ130の各アンテナ素子132に対して送受信される信号についてデジタル信号の振幅及び位相を制御するデジタルビームフォーミング(DBF)制御(以下、「フットプリント固定制御」ともいう。)を行っている。
【0062】
上記DBF制御は、アンテナ取付部材108の表面による反射を考慮するとともに、HAPS20の位置及び姿勢(例えば、所定方位に対する)の少なくとも一方の情報に基づいて行ってもよい。
【0063】
HAPS10自身の位置及び姿勢の情報は、そのHAPS10に組み込んだGPS受信装置、ジャイロセンサ、加速度センサ、慣性センサなどの出力に基づいて取得してもよい。例えば、HAPS10自身の位置及び姿勢の情報は、HAPS20に組み込んだGNSS(Global Navigation Satellite System)システムと慣性測定ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)とを組み合わせたGNSS慣性航法システム(GNSS/INS)の出力に基づいて取得してもよい。
【0064】
HAPS10の姿勢変化は、例えば、次のようなロール角θr、ピッチ角θp及びヨー角θyの変化で定義してもよい。ロール角θrは、HAPS10の前後方向(前方の進行方向)に沿ったロール軸Yを中心とした回転角度である。ピッチ角θpは、HAPS10の左右方向に沿ったピッチ軸Xを中心とした回転角度である。ヨー角θyは、HAPS10の上下方向に沿ったヨー軸Zを中心とした回転角度である。本実施形態のHAPS10の機体は上空において三次元的な動き(例えば経度、緯度及び高度の変化、並びに、ロール軸、ピッチ軸及びヨー軸を中心にした回転)を示すので、例えばロール角θr、ピッチ角θp及びヨー角θyを考慮して三次元的な動きに対応するようにDBF制御を適用してもよい。特に、本実施形態のDBF制御は、HAPS10のヨーイング(機体の上下方向の軸を中心とした回転運動)によるフットプリントの固定に効果を有する。
【0065】
図18は、実施形態に係るHAPS10におけるデジタルビームフォーミング(DBF)制御の一例を示すフローチャートである。なお、図18の制御例では、説明を簡略化するため、アンテナ素子132の中心を通る垂直面における任意の天頂角θの方向にアンテナ素子132から放射される送信信号について説明する。
【0066】
図18の制御例では、まず、アンテナ取付部材108による反射を考慮して各アンテナ素子132のビームの複素振幅行列(合成ビームパターン)を決定する(S101)。例えば、アンテナ素子132の中心を通る垂直面における任意の天頂角θの方向にアンテナ素子132から放射される送信信号の直接波の複素振幅行列の要素(直接ビームパターン)をr・exp(iθ)とすると、アンテナ素子132から放射された送信信号がアンテナ取付部材108で反射されて天頂角θ及び方位角φの方向に向かう反射波は位相がθ’’変化し、振幅もrからr’’に変化するので、その反射波の複素振幅行列の要素(反射ビームパターン)はr’’・exp{i(θ+θ’’)}で表される。遠方の地上では直接波と反射波が合成されて到達されるので、その合成された送信信号の複素振幅行列の要素(合成ビームパターン)はr・exp(iθ)+r’’・exp{i(θ+θ’’)}で表される。この合成パターンの信号r・exp(iθ)+r’’・exp{i(θ+θ’’)}が一つのアンテナ素子132から送信されると仮定し、合成された送信信号の複素振幅行列の要素(合成パターン)r・exp(iθ)+r’’・exp{i(θ+θ’’)}を用いて、各アンテナ素子132のビームの補正後の複素振幅行列(合成ビームパターン)として決定する。
【0067】
次に、地上でセル間干渉が発生しないように、SLアンテナ130の垂直方向に並んでいる複数のアンテナ素子132からなるリニアアレイアンテナで形成する目標セル(位置及びサイズ)を設定する(S102)。
【0068】
次に、HAPS10の位置情報及び姿勢情報に基づいて、HAPS10に予め設定した基準方向の向きを基準にして、目標セルのフットプリントの位置を固定するようにHAPS10から目標セルの中心に向かうビームの目標ビーム幅、目標水平角度及び目標垂直角度を決定する(S103)。
【0069】
次に、上記目標セルに向かうビームの目標ビーム幅、目標水平角度及び目標垂直角度に基づき、上記SLアンテナ130におけるリニアアレイアンテナを構成する複数のアンテナ素子132の合成パターンr・exp(iθ)+r’’・exp{i(θ+θ’’)}を用いた行列演算(逆行列演算)により、複数のアンテナ素子132に適用する複数のウェイトを計算する(S104)。
【0070】
次に、前記複数のウェイトに基づいて、複数のアンテナ素子132から送信する送信信号の位相及び振幅を制御するDBF制御を行う(S105)。例えば、SLアンテナ130の全体の構造を数式化し、SLアンテナ130の全体の複数のアンテナ素子132について、前記複数のウェイトにより、複数のアンテナ素子132から送信する送信信号の位相及び振幅を制御する。
【0071】
図19は、実施形態に係るHAPS10におけるアンテナ取付部材108による反射を考慮して決定したウェイトを用いてSLアンテナに供給する信号の振幅及び位相を制御したときの指向性特性の一例を示すグラフである。図19は、コンピュータシミュレーションを用いて、上記DBF制御を行ったときのSLアンテナ130から十分離れた遠方におけるSLアンテナ130の利得[dBi]を計算した結果を示している。図中の曲線C601は、上記DBF制御を行った場合の指向性特性のパターンであり、曲線C602は、上記DBF制御を行わない場合の指向性特性のパターンである。本構成例のDBF制御を行うことにより、図19中のD601,D602で囲んだ目標セルから外れた領域で上記反射に起因した不要電波の放射レベルを、DBF制御を行なわない場合よりも低く抑えることができる。
【0072】
本構成例のDBF制御を行うことにより、SLアンテナ130から放射された電波がアンテナ取付部材108で反射された反射波の影響を抑えることができる。従って、アンテナ取付部材108での反射による指向性パターンの変動を抑え、セルのフットプリントを安定に固定することができ、その結果、通信品質の劣化を防止することができる。
【0073】
なお、上記DBF制御において、SLアンテナ130のビームの方位角(ステアリング角)φについても複数のアンテナ素子132から送信する送信信号の位相及び振幅を制御してもよい。例えば、SLアンテナ130の周方向に並んでいる複数のアンテナ素子132からなるサーキュラーアレイアンテナについて、複数のアンテナ素子132に適用する複数のウェイトを更に計算し、その複数のウェイトを更に適用して複数のアンテナ素子132から送信する送信信号の位相及び振幅を制御してもよい。
【0074】
また、上記DBF制御において、SLアンテナ130のアンテナ素子132のウェイトは複素数形式(振幅と位相)で表示されるため、そのウェイトを毎回逆行列から計算していては計算量が多く、電力の消費も激しい。そこで、予め複数の天頂角θ及び方位角(ステアリング角)φについて上記逆行列を用いてウェイトを正確に計算し、そのウェイトと天頂角θ及び方位角(ステアリング角)φとの関係を近似した近似式を作成し、その近似式の情報をメモリ等の記憶部に保持させておいてもよい。そして、HAPS10の機体の位置及び姿勢(向きを含む)をGNSS/INS等の情報取得手段で検知し、その検知結果の値に基づいて、サービスリンクのビーム(3次元セル)を形成する方向の目標の方位角であるステアリング角(指向性ビームを形成する角度)φを決定し、その目標ステアリング角φを元に上記予め作成して保持しておいた近似式からウェイトの振幅及び位相の値を計算してもよい。このように記憶部に保持した近似式を用いてウェイトの振幅及び位相の値を計算することにより、計算量削減による電力消費の低減を図ることができる。
【0075】
図20は、実施形態に係るHAPS10におけるデジタルビームフォーミング(DBF)制御の制御系の構成の一例を示す説明図である。図20の例は、シリンダー型のSLアンテナ130のN個のアンテナ素子132からなるリニアアレイアンテナで一つのセル(#0)を形成する例である。なお、図20では、図示を簡略化するため、ダウンリンク及びアップリンクについてはダウンリンクのみ記載している。また、図20では、水平偏波及び垂直偏波の一方の偏波(片偏波)のみ記載しているが、他方の偏波の信号について送受信する場合は同様なDBF制御部が追加して設けられる。
【0076】
DBF制御部500は、ウェイト計算部501とウェイト演算部502とを備える。ウェイト計算部501は、GNSS/INSで取得したHAPS10の位置及び姿勢のデータと、目標のセルの位置情報とに基づいて、SLアンテナ130を構成するリニアアレイアンテナの複数のアンテナ素子132(0~N-1)で送信される送信信号(デジタルのベースバンド信号)に適用する前述のウェイト(振幅及び位相のベクトルデータ)を計算する。
【0077】
ウェイト演算部502は、ウェイト計算部501で計算したウェイトをデジタル送信信号に適用することにより、複数のアンテナ素子132(0~N-1)に対応する複数のデジタル送信信号(0~N-1)を生成する。ウェイト演算部502から出力された複数のデジタル送信信号(0~N-1)はそれぞれ、DAコンバータ(DAC)510でアナログ信号に変換され、周波数変換器511で所定の送信周波数fcに変換され、電力増幅器(PA)512で所定の電力まで増幅された後、対応するアンテナ素子132(0~N-1)に供給される。
【0078】
以上のDBF制御により、リニアアレイアンテナから目標の位置に向けてアンテナ指向ビームを形成し、フットプリントを固定した状態でセル内に在圏する端末装置に送信信号を送信することができる。
【0079】
なお、図20において、サービスエリアの位置を基準にしたHAPS10の予測移動経路における互いに異なる複数組の機体の位置及び姿勢(傾き角度及び向き)に応じたウェイトを予め計算してメモリ等の記憶部514に保存しておいてもよい。ウェイト計算部501は、GNSS/INSデータから計算した機体の姿勢及び位置に基づいて記憶部514を参照し、計算した機体の姿勢及び位置に対応するウェイトを読み込み、ウェイト演算部502での送信信号の演算に用いる。この場合、逐次ウェイト計算が不要であることから計算量及び消費電力を大幅に減らすことができる。
【0080】
また、上記構成例4におけるDBF制御は、HAPS10が自立的に判断して行ってもよいし、遠隔制御装置やサーバ等の外部装置からの制御指令によって行ってもよい。また、上記DBF制御は所定の時間間隔で定期的に行ってもよいし、HAPS10の移動距離又は姿勢変化が所定よりも大きくなったときに行ってもよい。
【0081】
なお、本構成例4に係るDBF制御は、前述の構成例1(アンテナ取付部材108の表面に設けた電波吸収体109の層)、上記構成例2(アンテナ素子の傾斜)、構成例3(無給電素子の配置)、又は、それらの構成例のいずれか二つ又は三つを組み合わせた構成と組み合わせてもよい。例えば、前述の図10図13図16又は図17のSLアンテナ130の各アンテナ素子についてウェイトを計算し、そのウェイトを用いて複数のアンテナ素子132から送信する送信信号の位相及び振幅を制御してもよい。
【0082】
以上、本実施形態によれば、HAPS10のサービスリンクのSLアンテナ130が取り付けられたアンテナ取付部材108での反射による指向性パターンの変動を抑え、セルのフットプリントを安定に固定することができ、その結果、通信品質の劣化を防止することができる。
【0083】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにHAPS10,20等の通信中継装置の中継通信局、フィーダ局、ゲートウェイ局、管理装置、遠隔制御装置、サーバ、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、基地局及び基地局装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0084】
ハードウェア実装については、実体(例えば、中継通信局、フィーダ局、ゲートウェイ局、基地局、基地局装置、中継通信局装置、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0085】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0086】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0087】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0088】
10 HAPS(ソーラープレーンタイプ)
10A サービスエリア
20 HAPS(飛行船タイプ)
61 端末装置
70 ゲートウェイ局(GW局)
80 移動通信網
100A セル
100C,100C(1)~100C(7) 3次元セル
100F,100F(1)~100F(7) フットプリント
110,210 中継通信局
130 サービスリンク用アンテナ(SLアンテナ)
131 アンテナ本体支持部
132 アンテナ素子
132a 下端部
132b 中央部
132c 上端部
133 無給電素子
500 DBF制御部
501 ウェイト計算部
502 ウェイト演算部
510 DAコンバータ(DAC)
511 周波数変換器
512 電力増幅器(PA)
514 記憶部
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