(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】面取り加工方法及び面取り加工装置
(51)【国際特許分類】
B23F 19/10 20060101AFI20220615BHJP
【FI】
B23F19/10
(21)【出願番号】P 2020164985
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2020-10-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】新城 裕二
【合議体】
【審判長】見目 省二
【審判官】刈間 宏信
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-22925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0000072(US,A1)
【文献】特開2013-158883(JP,A)
【文献】特表2017-530016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内歯歯車の歯端面を面取りする面取り加工方法であって、
内歯歯車が歯車軸周りに回転し、刃部が、前記歯車軸に直角をなし回動軌跡に内歯歯車の歯端面を含む回動軸周りに回動し、当該刃部が前記内歯歯車の歯端面に接触して歯端面が面取りされ、
前記内歯歯車が歯車軸周りに一定の速度で連続的に回転し、前記刃部が回動軸周りに一定速度で連続的に回動して、前記歯端面が面取りされ、
前記内歯歯車が歯車軸周りに1回転するときに、前記刃部が回動軸周りに、歯数N÷刃部数A(Aは、回動軸周りの同一円周上にある刃部の数)で示される回数回動
し、
互いに同じ回動軸を有し、回動軸方向に並べて配置された複数の刃部を用いて歯端面が面取りされ、
歯溝の左右の歯端面が、前記回動軸方向に並べて配置された前記複数の刃部のうちの別々の刃部で面取りされる、面取り加工方法。
【請求項2】
回動軸周りの同一円周上に配置された複数の刃部を用いて歯端面が面取りされる、
請求項1に記載の面取り加工方法。
【請求項3】
前記刃部は、切削インサートであり、その切削インサートのコーナー刃、又は当該コーナー刃に連続する切れ刃の少なくともいずれかにより歯端面が面取りされる、
請求項1又は2に記載の面取り加工方法。
【請求項4】
内歯歯車の歯端面を面取りする面取り加工装置であって、
刃部と、
内歯歯車を歯車軸周りに回転させる回転部と、
刃部を、前記歯車軸に直角をなし回動軌跡に内歯歯車の歯端面を含めることができる回動軸周りに回動させる回動部と、
刃部を前記内歯歯車の歯端面に接触させる駆動部と、
前記内歯歯車を歯車軸周りに一定の速度で連続的に回転させ、前記刃部を回動軸周りに一定速度で連続的に回動させ、前記内歯歯車が歯車軸周りに1回転するときに、前記刃部が回動軸周りに、歯数N÷刃部数A(Aは、回動軸周りの同一円周上にある刃部の数)で示される回数回動するように回転部と回動部を制御する制御部と、を備え、
前記回動部は、互いに同じ回動軸を有し、回動軸方向に並べて配置された複数の刃部を有し、歯溝の左右の歯端面が、前記回動軸方向に並べて配置された前記複数の刃部のうちの別々の刃部で面取りされるように構成されている、面取り加工装置。
【請求項5】
前記回動部は、
前記刃部を保持し、前記回動軸周りに回転する回転体と、
前記回転体を保持し、前記回動軸となる軸体と、を有する、
請求項4に記載の面取り加工装置。
【請求項6】
前記回転体は、円盤形状を有し、
前記回転体は、外周に形成され刃部が取り付けられる切り欠き部と、中心に軸体が挿通する貫通孔とを有し、
前記切り欠き部は、第1の外縁部から回転体の中心に向かい、当該中心に達する前に略直角に曲がり、その後直線的に進んで第2の外縁部に到達する切り欠き端面を有する、
請求項5に記載の面取り加工装置。
【請求項7】
前記軸体は、複数の回転体を軸方向に並べて保持している、
請求項5又は6に記載の面取り加工装置。
【請求項8】
前記軸体には、隣り合う回転体の間隔を規定するスペーサが設けられている、
請求項7に記載の面取り加工装置。
【請求項9】
前記回転体は、回動軸周りの同一円周上に複数の刃部を保持している、
請求項4~8のいずれか一項に記載の面取り加工装置。
【請求項10】
前記刃部は、少なくともコーナー刃と、そのコーナー刃に連続する切れ刃を有する切削インサートである、
請求項4~9のいずれか一項に記載の面取り加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内歯歯車の歯端面を面取りする面取り加工方法及び面取り加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内歯歯車の歯溝の歯端面に残るバリなどを取り除くため、内歯歯車の歯端面を面取り加工することが行われている。
【0003】
かかる内歯歯車の歯端面の面取り加工は、従来より、面取り加工用の先細りの回転工具を用いて行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような内歯歯車の歯端面の面取り加工方法は、内歯歯車の歯溝毎に、先細りの回転工具を内歯歯車の内側から歯溝に挿入し歯溝の溝方向に移動させる必要があり、回転工具の動作工程が多く複雑になるため、内歯歯車の全ての歯溝の歯端面を面取りするのに時間がかかる。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、内歯歯車の歯端面の面取り加工に要する時間を短縮することができる面取り加工方法及び面取り加工装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る面取り加工方法は、内歯歯車の歯端面を面取りする面取り加工方法であって、内歯歯車が歯車軸周りに回転し、刃部が、歯車軸に直角をなし回動軌跡に内歯歯車の歯端面を含む回動軸周りに回動し、当該刃部が前記内歯歯車の歯端面に接触して歯端面が面取りされる。
【0008】
この態様によれば、内歯歯車の回転と刃部の回動により歯端面の面取りが行われるので、刃部の動作が単純になり、内歯歯車の歯端面の面取り加工に要する時間を短縮することができる
【0009】
上記態様において、内歯歯車が歯車軸周りに連続的に回転した状態で、歯端面が面取りされるようにしてもよい。
【0010】
上記態様において、内歯歯車が歯車軸周りに1回転するときに、刃部が回動軸周りに、歯数N÷刃部数A(Aは、回動軸周りの同一円周上にある刃部の数)で示される回数回動するようにしてもよい。
【0011】
上記態様において、互いに同じ回動軸を有し、回動軸方向に並べて配置された複数の刃部を用いて歯端面が面取りされるようにしてもよい。
【0012】
上記態様において、歯溝の左右の歯端面が別々の刃部で面取りされるようにしてもよい。
【0013】
上記態様において、回動軸周りの同一円周上に配置された複数の刃部を用いて歯端面が面取りされるようにしてもよい。
【0014】
上記態様において、刃部は、切削インサートであり、その切削インサートのコーナー刃、又は当該コーナー刃に連続する切れ刃の少なくともいずれかにより歯端面が面取りされるようにしてもよい。
【0015】
本発明の一態様に係る面取り加工装置は、内歯歯車の歯端面を面取りする面取り加工装置であって、刃部と、内歯歯車を歯車軸周りに回転させる回転部と、刃部を、歯車軸に直角をなし回動軌跡に内歯歯車の歯端面を含めることができる回動軸周りに回動させる回動部と、刃部を内歯歯車の歯端面に接触させる駆動部と、を備える。
【0016】
上記態様において、回動部は、刃部を保持し、回動軸周りに回転する回転体と、回転体を保持し、前記回動軸となる軸体と、を有するようにしてもよい。
【0017】
上記態様において、回転体は、円盤形状を有し、回転体は、外周に形成され刃部が取り付けられる切り欠き部と、中心に軸体が挿通する貫通孔とを有するようにしてもよい。
【0018】
上記態様において、軸体は、複数の回転体を軸方向に並べて保持しているようにしてもよい。
【0019】
上記態様において、軸体には、隣り合う回転体の間隔を規定するスペーサが設けられていてもよい。
【0020】
上記態様において、回転体は、回動軸周りの同一円周上に複数の刃部を保持していてもよい。
【0021】
上記態様において、面取り加工装置は、内歯歯車が歯車軸周りに1回転するときに、刃部が回動軸周りに、歯数N÷刃部数A(Aは、回動軸周りの同一円周上にある刃部の数)で示される回数回動するように回転部と回動部を制御する制御部を、さらに備えるようにしてもよい。
【0022】
上記態様において、刃部は、少なくともコーナー刃と、そのコーナー刃に連続する切れ刃を有する切削インサートであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】面取り加工装置の構成の概略を示す説明図である。
【
図2】面取り加工装置を上方から見た説明図である。
【
図6】
図2の面取り加工装置のX-X断面図である。
【
図7】刃部による面取り加工の様子を示す説明図である。
【
図9】回転体が一つの面取り加工装置の構成を示す説明図である。
【
図10】2つの刃部を有する回転体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態に係る面取り加工装置1の構成の概略を示す説明図である。
図2は、面取り加工装置1を上方から見た説明図である。なお、本明細書において、「上」、「下」は、
図1に示す面取り加工装置1の姿勢を基準とする。
【0026】
図1に示すように例えば面取り加工装置1は、刃部10と、内歯歯車20をその歯車軸B1周りに回転させる回転部11と、刃部10を、歯車軸B1に直角をなし回動軌跡に内歯歯車20の歯端面21を含むす回動軸B2周りに回動させる回動部12と、刃部10を内歯歯車20の歯端面21に接触させる駆動部13と、制御部14などを備えている。
【0027】
刃部10は、例えば切削インサートである。刃部10は、例えば
図3に示すように6面からなる直方体形状を有している。刃部10は、例えば方形の端面30と、端面30との間で交差稜線を形成する側面31と、端面30と側面31との間の交差稜線に形成された切れ刃部32を有している。切れ刃部32は、端面30の一つの角に形成されるコーナー刃40と、コーナー刃40に連続する第1の切れ刃41及び第2の切れ刃42を少なくとも有している。コーナー刃40は、例えば45°程度のコーナー角(第1の切れ刃41と第2の切れ刃42の間のコーナー刃40の内角)を有している。
【0028】
図1に示すように回転部11は、例えば円筒状の内歯歯車20を歯端面21を上にした状態で保持する保持部50と、保持部50を鉛直軸(歯車軸B1)周りに回転駆動する回転駆動部51を備えている。
【0029】
保持部50は、例えばチャックなどの機械的手段、吸着手段、磁力による接着手段等により内歯歯車20を保持することができる。
【0030】
回転駆動部51は、例えばモータにより保持部50を回転させることができる。
【0031】
回動部12は、刃部10を保持し回動軸B2周りに回転する2つの回転体60、61と、回転体60、61を保持し回動軸B2となる軸体としてのシャフト62と、シャフト62を回転駆動する回転駆動部63と、スペーサ64を有している。
【0032】
回転体60は、内歯歯車20の内側から見て歯溝22の右歯端面21の面取りを行う刃部10を保持するものであり、回転体61は、歯溝22の左歯端面21の面取りを行う刃部10を保持するものである。回転体60、61は、円盤形状を有している。回転体60、61は、例えば互いに同じ大きさで同じ外径を有している。回転体60、61は、例えば
図4に示すように外周に形成された切り欠き部70と、中心に形成された貫通孔71を有している。
【0033】
切り欠き部70は、回転体60、61を回動軸B2の軸方向から見て、例えば第1の外縁部80から中心Oに向かい、その後中心Oに達する前に略直角に曲がり、第1の外縁部80とは別の第2の外縁部81に到達するような切欠き端面90を有している。第1の外縁部80と中心Oを結ぶ回転体60、61の径方向の仮想線Cと、第2の外縁部81と中心Oを結ぶ回転体60、61の径方向の仮想線Dがなす内角α1は、例えば90°未満である。
【0034】
切欠き端面90は、回転体60、61の回動軸B2周りの回転方向Rに対し略垂直であり回転方向Rに向いた保持部91を有している。保持部91は、第1の外縁部80付近に位置する。保持部91には、刃部10がねじ等により保持される。なお、切り欠き部70は、切りくずポケットとしても機能する。
【0035】
例えば
図1、
図3及び
図4に示すように回転体60、61は、刃部10を、端面30が回転体60、61の回転方向Rに向いて露出するように保持している。また、回転体60、61は、
図1、
図3及び
図5に示すようにコーナー刃40が回転体60、61の径方向の外方に位置し、
図3乃至
図6に示すようにコーナー刃40が回転体60、61の第1の外縁部80(外縁)から外側に突出するように刃部10を保持している。
図5に示すように回動軸B2に垂直でコーナー刃40の頂点を通る垂直面Eと第1の切れ刃41とがなす角度α2と、垂直面Eと第2の切れ刃42とがなす角度α3とが、同じ角度の例えば45°程度となっている。すなわち、第1の切れ刃41及び第2の切れ刃42は、垂直面Eに対して傾斜している。
【0036】
図1に示すようにシャフト62は、回転体60、61の貫通孔71に挿通され、回転体60、61を回動軸B2の方向に並べて保持している。シャフト62は、自身が回転し、回転体60、61を回転させることで各回転体60、61の刃部10を回動軸B2周りに回動させることができる。シャフト62は、自身が内歯歯車20の歯端面21に近づくことで刃部10の回動軌跡に内歯歯車20の歯端面21を含めることができる。
【0037】
回転駆動部63は、例えばモータによりシャフト62を回転させることができる。
【0038】
スペーサ64は、例えば円筒形状を有し、シャフト62の回転体60と回転体61の間に取り付けられている。スペーサ64の両端面は回転体60、61に当接しており、これにより、回転体60、61の間の距離が所定の距離に保たれている。
【0039】
駆動部13は、例えばシリンダであり、回転部11の保持部50を歯車軸B1方向に上下動させることができる。これにより駆動部13は、内歯歯車20の歯端面21と、回転体60、61(刃部10)との距離を調整し、刃部10を歯端面21に接触させたり離したりすることができる。なお、駆動部13は、内歯歯車20の歯端面21と刃部10を互いに進退するように相対的に移動させるものであればよく、刃部10側を移動させるものであったり、内歯歯車20の歯端面21と刃部10の両方を移動させるものであってもよい。
【0040】
制御部14は、例えばコンピュータであり、CPUがメモリに格納された所定のプログラムを実行することにより、回転部11の回転駆動部51や回動部12の回転駆動部63、駆動部13の動作を制御することができる。
【0041】
例えば制御部14は、内歯歯車20が歯車軸B1周りに1回転するときに、刃部10が回動軸B2周りに、歯数N÷刃部数A(Aは、回動軸B2周りの同一円周上にある刃部数)で示される回数回動するように、回転部11の回転数と回動部12の回動数を制御する制御機能を有している。本実施の形態では、各回転体60、61の刃部10が1つ(A=1)であるので、内歯歯車20の回転と刃部10の回動の比は、1対Nとなる。
【0042】
次に、面取り加工装置1を用いた面取り加工方法について説明する。先ず、
図1に示すように内歯歯車20が歯端面21を上にした状態で回転部11の保持部50に保持される。また、刃部10が取り付けられている回転体60、61がシャフト62に固定される。回転体60、61同士の間隔は、スペーサ64により調整される。
【0043】
そして、内歯歯車20は、回転駆動部51により歯車軸B1周りに回転し、回転体60、61は、回転駆動部63によるシャフト62の回転により、回動軸B2周りに回転する。これにより、各回転体60、61に取り付けている刃部10が回動軸B2周りに回動する。このときの刃部10の回動方向は、前方回動、後方回動のどちらでもよいが、例えば前方回動とする。なお、前方回動とは、端面30が向いている方向に向けた回動であり、後方回動とは、前方回動の逆方向の回動である。
【0044】
次に、駆動部13により、保持部50に保持された内歯歯車20が各回転体60、61の刃部10に近づけられ、刃部10の回動軌跡が内歯歯車20の歯端面21に 到達する。これにより、各回転体60、61の刃部10が内歯歯車20の歯端面21に接触して歯端面21を面取りする。このとき、内歯歯車20は、歯車軸B1周りに一定の速度で連続的に回転し、刃部10は、回動軸B2周りに一定の速度で連続的に回動する。内歯歯車20が歯車軸B1周りに1回転するときに、刃部10が回転軸B2周りにN回転する。つまり、内歯歯車20が歯溝22の1ピッチ分回転する間に、刃部10が1回回動し、一つの歯溝22の歯端面21が面取りされる。
【0045】
回転体60の刃部10は、内歯歯車20を内側から見て、歯溝22の右歯端面21の面取りを行い、回転体61の刃部10は、歯溝22の左歯端面21の面取りを行う。
【0046】
図7に示すように刃部10は、歯端面21の外周側(歯溝22の歯底側)に接触し、次第に歯端面21の内周側(歯溝22の歯先側)に接触していき、内歯歯車20の内側に貫ける。これにより、
図8に示すように一つの歯溝22の歯端面21が面取りされる。なお、面取りが行われる際には、歯端面21に一定の幅の面取りが行われるように各種諸元が適宜選択されている。例えば内歯歯車20の種類や歯形(歯数、圧力角等)に応じて、回転体60、61の外径、刃部10の切れ刃40、41、42のサイズ、刃部10の歯端面21に対する切込み量、刃部10のコーナー刃40の曲率半径などが適宜選択される。
【0047】
内歯歯車20が歯車軸B1周りを1回転する間に、刃部10がN回回動し、内歯歯車20の全周の歯端面21が面取りされる。なお、内歯歯車20の歯端面21の面取りは、内歯歯車20を1回転させる間にすべて行ってもよいし、複数回転させる間に行ってもよい。その後、駆動部13により内歯歯車20の歯端面21が刃部10から離され、内歯歯車20と回転体60、61の回転がそれぞれ停止される。こうして、内歯歯車20の歯端面21の面取りが終了する。
【0048】
本実施の形態によれば、内歯歯車20が歯車軸B1周りに回転しながら、刃部10が回動軸B2周りに回転し、当該刃部10が内歯歯車20の歯端面21に接触して歯端面21が面取りされるので、刃部10の動作が単純となり、内歯歯車20の歯端面21の面取り加工に要する時間を短縮することができる。また、小径のエンドミルでなく、大径のカッタ(回転体60)でも加工できるため、切削速度が高く、また切込みを大きくすることが可能となり、この結果、加工時間を短縮することができる。
【0049】
また、内歯歯車20が連続的に回転した状態で、歯端面21が面取りされるので、内歯歯車20の回転が止まることなく、歯端面21の面取り加工時間を短縮することができる。
【0050】
内歯歯車20が歯車軸B1周りに1回転するときに、刃部10が回動軸B2周りに、歯数N÷刃部数A(Aは、回動軸B2周りの同一円周上にある刃部の数(本実施の形態ではA=1))で示される回数回動するので、歯端面21の面取り加工時間を効率的に短縮することができる。
【0051】
互いに同じ回動軸B2を有し、回動軸B2方向に並べて配置された2つの刃部10を用いて歯端面21が面取りされるので、歯端面21の面取り加工時間を短時間で行うことができる。
【0052】
歯溝22の左右の歯端面21が別々の刃部10で面取りされるので、歯溝22の左右の各歯端面21の面取りが安定的に適切に行われる。
【0053】
刃部10は、切削インサートであり、その切削インサートのコーナー刃40と、当該コーナー刃40に連続する切れ刃41、42により歯端面21が面取りされるので、歯端面21の面取りが好適に行われ、面取りの形状も安定する。
【0054】
上記実施の形態において、2つの回転体60、61を用いて内歯歯車20の歯端面21の面取りを行っていたが、2つに限られず、3つ以上の回転体を用いて内歯歯車20の歯端面21の面取りを行ってもよい。
【0055】
また、
図9に示すように一つの回転体60を用いて内歯歯車20の歯端面21の面取りを行ってもよい。かかる場合、例えば初め、回転体60の刃部10は、内歯歯車20を内側から見て、歯溝22の左右の一方の歯端面21の面取りを行い、次に、歯溝22の左右の他方の歯端面21の面取りを行うようにしてもよい。
【0056】
以上の実施の形態において、各回転体60、61に一つの刃部10が設けられていたが、回動軸B2周りの同一円周上に複数の刃部10が設けられていてもよい。例えば
図10に示すように各回転体60、61に、それぞれ2つの刃部10が設けられていてもよい。2つの刃部10は、各回転体60、61を回動軸B2方向から見て、中心Oに対する点対称となるように設けられている。かかる場合、回転体60、61の1回の回転で、刃部10による2回の面取りを行うことができるので、内歯歯車20の回転と刃部10の回動の比は、1対2N(Nは歯数)(刃部数A=2)とする。すなわち、内歯歯車20が歯溝22の2ピッチ分回転する間に、刃部10が1回転し、2つの歯溝22の歯端面21が面取りされる。こうすることにより、歯端面21の面取り加工時間をさらに短縮することができる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0058】
例えば上記実施の形態における刃部10、回転部11、回動部12及び駆動部13等の構成はこれに限られない。また、回動部11の回転体60、61の形状や構成は別のものであってもよい。回転体60、61とシャフト62は一体成型されたものであってもよい。
図4の回転体60、61が右回りの回転方向Rに回転することで、刃部10が内歯歯車20の歯端面21の径方向の外側から内側に向かって面取りするものであったが、回転体60、61が、
図4の回転体60、61を左右反転した構成を有し左回りの回転方向に回転することで、刃部10が内歯歯車20の歯端面21の径方向の内側から外側に向かって面取りするものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、内歯歯車の歯端面の面取り加工に要する時間を短縮することができる面取り加工方法及び面取り加工装置を提供する際に有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 面取り加工装置
10 刃部
11 回転部
12 回動部
13 駆動部
20 内歯歯車
21 溝端面
B1 歯車軸
B2 回動軸