(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】金属磁性粉末コアからなる一体式チップインダクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 41/04 20060101AFI20220615BHJP
H01F 1/22 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
H01F41/04 B
H01F1/22
(21)【出願番号】P 2020203027
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】202011114582.8
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520482308
【氏名又は名称】湖南▲創▼一▲電▼子科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CYGE Electronic Technology (Hunan) Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Taihe Industrial Park, Loudi Economic Development Zone, Hunan Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】100178434
【氏名又は名称】李 じゅん
(72)【発明者】
【氏名】▲蘇▼ 立良
【審査官】橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-052946(JP,A)
【文献】特開2015-002228(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111128526(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/04
H01F 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空芯コイルの巻き付けと、プレス成形と、一次面取りと、熱圧硬化と、二次面取りと、一次ナノ絶縁コーティングと、一次研磨と、電極銅めっきと、二次ナノ絶縁コーティングと、二次研磨と、電気めっきによる電極の金属化と、テスト及びパッケージングとのステップを
含み、
前記空芯コイルの巻き付けは、その巻き付け方法はエナメル線の絶縁ラッカー膜に引っかき傷およびぶれ傷が付けなく、対応する特性要件を満たすように、巻線治具への多軸による整然とした並列巻きを採用するステップであり、
前記プレス成形は、空芯コイルを含む巻線治具を成形機の金型中に入れ、次にコイルを金型キャビティ内の定点にインプラントし、ミクロンレベルの軟磁性金属粉末を金型キャビティ内に注入し、空芯コイルが金属粉末で完全に包まれてからプレス成形することであり、成型密度は3g/cm
3
以上であるステップであり、
前記一次面取りは、プレス成形された製品を、製品重量に応じて一定の割合で面取り媒体と混合した後、面取り装置に入れ、面取り作業を完成させるステップであり、
前記熱圧硬化は、製品を整然にレイアウトして熱圧装置のキャビティ内に入れ、熱圧装置のキャビティの温度を150℃以上に制御し、0.5トン以上の圧力で10分間以上の保圧を行い、熱圧硬化作業を完成させるステップであり、
前記二次面取りは、熱圧硬化後の製品を、製品の重量に応じて一定の割合で面取り媒体と混合した後、面取り装置に入れ、二次面取り作業を完成させるステップであり、
前記一次ナノ絶縁コーティングは、ポリイミド系ナノ材料を使用して製品の表面に対して絶縁コーティング処理を行うことであり、絶縁層の厚さは5μm以上であり、絶縁層を硬化させるために、製品をコーティング後に150℃以上で1時間以上ベーキングするステップであり、
前記一次研磨は、製品を治具内に整然に配列し、高精度の研磨機を使用して製品に対して研磨作業を行うことであり、製品の片側研磨量は5μm以上であり、製品両端の導電線の銅界面と製品底部の2つの電極表面を露出するステップであり、
前記二次ナノ絶縁コーティングは、ポリイミド系ナノ材料を使用して製品の表面に対して絶縁コーティング処理を行い、絶縁層の厚さは5μm以上であり、絶縁層を硬化させるために、製品をコーティング後に150℃以上で1時間以上ベーキングするステップであり、
前記二次研磨は、製品を治具内に整然に配列し、高精度の研磨機を使用して製品について研磨作業を行い、製品の片側研磨量は5μm以上であり、製品底部の銅導体めっき層を露出するステップであり、
前記電気めっきによる電極の金属化は、製品のはんだ付け性、はんだ耐性及び接着性を増加するために、イオンプレーティング技術(PVD技術)又は従来の電気めっき工程を使用し、元の一次銅めっきされた製品の表面に必要な金属及び合金材料のめっき層をさらに追加するステップであることを特徴とする、金属磁性粉末コアからなる一体式チップインダクタの製造方法。
【請求項2】
前記テスト及びパッケージングは、製品に対して全自動的なテスト及びパッケージングを行い、サイズ及び特性の不良品を排除し、製品をキャリアテープに包み込むことである、ことを特徴とする請求項1に記載の金属磁性粉末コアからなる一体式チップインダクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ技術に関するものである。特に、金属磁性粉末コアからなる一体式チップインダクタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のインダクタには、スラリー末端封鎖からなる電気めっき型の一体成型インダクタ、材料片スポット溶接からなる電極型の一体成型インダクタ、Tコア電極型の一体成型インダクタが含まれる。そのうち、スラリー末端封鎖からなる電気めっき型の一体成型インダクタは、体積が小さく、インダクタに対してパッチの設置を行う時、サイドのスズ積層面積が大きいため、集積回路の密集度が減らされ、回路基板のスペースが有効に利用されない。同時に、スラリー末端封鎖からなる電気めっき型の一体成型インダクタは、電極の溶接位置に本体を含んで4つの金属層(それぞれ銅/銀/ニッケル/錫である)を備えており、4つの金属層の間には寄生容量が形成しやすいため、インダクタの直流抵抗が増加され、インダクタの自己共振周波数が低下される。材料片スポット溶接からなる電極型の一体成型インダクタのリードフレームは、製品の側面から底部に向かって曲がり、曲げ振幅とフレームの厚さにより、製品の長さサイズが長くなり、コイルの設計を制限するため、製品の特性が制限され、回路基板のスペースが有効に利用されないと同時に、集積回路の密集度が減らされる。Tコア電極型の一体成型インダクタは、生産投資が大きく、産出が低く、製品の製造コストが高いため、大量生産には適さず、市場の需要に迅速に対応することは困難である。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、底部電極のみを保留し、ナノ絶縁材料を採用して製品本体を覆う金属磁性粉末コアからなる一体式チップインダクタを提供することである。これにより、スラリー末端封鎖からなる電気めっき型、材料片スポット溶接からなる電極型の一体式チップインダクタ製品のサイドのスズ積層サイズを節約し、回路基板上における製品の設置サイズを縮小し、集積回路PCBボードの設置スペースを増やし、集積回路産業の高度の集積化開発に有利な条件を作り出す。同じサイズの場合、製品の総合的な性能が大幅に向上できる。
【0004】
上記の目的を達成するために、本発明は、空芯コイルの巻き付けと、プレス成形と、一次面取りと、熱圧硬化と、二次面取りと、一次ナノ絶縁コーティングと、一次研磨と、電極銅めっきと、二次ナノ絶縁コーティングと、二次研磨と、電気めっきによる電極の金属化と、テスト及びパッケージングとのステップを含む、金属磁性粉末コアからなる一体式チップインダクタの製造方法を技術的解決策として提供する。
【0005】
上記工程の好ましいステップとして、前記空芯コイルの巻き付けは、その巻き付け方法はエナメル線の絶縁ラッカー膜に引っかき傷およびぶれ傷が付けなく、対応する特性要件を満たすように、巻線治具への多軸による整然とした並列巻きを採用する。
【0006】
上記工程の好ましいステップとして、前記プレス成形は、空芯コイルを含む巻線治具を成形機の金型中に入れ、次にコイルを金型キャビティ内の定点にインプラントし、ミクロンレベルの軟磁性金属粉末を金型キャビティ内に注入し、空芯コイルが金属粉末で完全に包まれてからプレス成形することであり、成型密度は3g/cm3以上である。
【0007】
上記工程の好ましい工程として、前記一次面取りは、プレス成形された製品を、製品重量に応じて一定の割合で面取り媒体と混合した後、面取り装置に入れ、面取り作業を完成させることである。
【0008】
上記工程の好ましい工程として、前記熱圧硬化は、製品を整然にレイアウトして熱圧装置のキャビティ内に入れ、熱圧装置のキャビティの温度を150℃以上に制御し、0.5トン以上の圧力で10分間以上の保圧を行い、熱圧硬化作業を完成させることである。
【0009】
上記工程の好ましい工程として、前記二次面取りは、熱圧硬化後の製品を、製品の重量に応じて一定の割合で面取り媒体と混合した後、面取り装置に入れ、二次面取り作業を完成させることである。
【0010】
上記工程の好ましい工程として、前記一次ナノ絶縁コーティングは、ポリイミド系ナノ材料を使用して製品の表面に対して絶縁コーティング処理を行うことであり、絶縁層の厚さは5μm以上であり、絶縁層を硬化させるために、製品をコーティング後に150℃以上で1時間以上ベーキングする。
【0011】
上記工程の好ましい工程として、前記一次研磨は、製品を治具内に整然に配列し、高精度の研磨機を使用して製品に対して研磨作業を行うことであり、製品の片側研磨量は5μm以上であり、製品両端の導電線の銅界面と製品底部の2つの電極表面を露出する。
【0012】
上記工程の好ましい工程として、前記電極銅めっきは、一次研磨後の製品に10μm以上の銅層を電気めっきすることである。
【0013】
上記工程の好ましい工程として、前記二次ナノ絶縁コーティングは、ポリイミド系ナノ材料を使用して製品の表面に対して絶縁コーティング処理を行うことであり、絶縁層の厚さは5μm以上であり、絶縁層を硬化させるために、製品をコーティング後に150℃以上で1時間以上ベーキングする。
【0014】
上記工程の好ましい工程として、前記二次研磨は、製品を治具内に整然に配列し、高精度の研磨機を使用して製品に対して研磨作業を行うことであり、製品の片側研磨量は5μm以上であり、製品底部の銅導体のめっき層を露出する。
【0015】
上記工程の好ましい工程として、前記電気めっきによる電極の金属化は、製品のはんだ付け性、はんだ耐性及び接着性を増加するために、イオンプレーティング技術(PVD技術)又は従来の電気めっき工程を使用し、元の一次銅めっきされた製品の表面に必要な金属及び合金材料のめっき層をさらに追加することである。
【0016】
上記工程の好ましい工程として、前記テスト及びパッケージングは、製品に対して全自動的なテスト及びパッケージングを行い、サイズ及び特性の不良品を排除し、製品をキャリアテープに包み込むことである。
【0017】
本発明の技術的な利点は次の通りである。
1)本発明の技術的な利点は、底部電極のみを保留し、ナノ絶縁材料を採用して製品本体を覆う金属磁性粉末コアからなる一体式チップインダクタを提供することである。これにより、スラリー末端封鎖からなる電気めっき型、材料片スポット溶接からなる電極型の一体式チップインダクタ製品のサイドのスズ積層サイズを節約し、回路基板上における製品の設置サイズを縮小し、集積回路PCBボードの設置スペースを増やし、集積回路産業の高度の集積化開発に有利な条件を作り出す。同じサイズの場合、製品の総合的な性能が大幅に向上できる。
2)製造過程でイオンプレーティング技術又は従来の電気めっき技術を使用し、めっき層の緊密性を向上しながらめっき層を4層から2層に減らし、製造コストを節約し、工程収率を向上する。
3)新しいナノ絶縁コーティング材料及びナノ絶縁コーティング工程を使用し、製品の絶縁コーティングの厚さを5μm以上にする。絶縁コーティング材料は、環境にやさしい熱硬化型のポリエステルイミド系の材料である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下は、すべての図面と併せて本発明をさらに説明する。
図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態は、空芯コイルの巻き付けと、プレス成形と、一次面取りと、熱圧硬化と、二次面取りと、一次ナノ絶縁コーティングと、一次研磨と、電極銅めっきと、二次ナノ絶縁コーティングと、二次研磨と、電気めっきによる電極の金属化と、テスト及びパッケージングとのステップを含む、金属磁性粉末コアからなる一体式チップインダクタの製造方法である。
【0020】
ここで、各ステップは下記の通りである。
【0021】
第一ステップ:空芯コイルの巻き付け:製品仕様に従って要件を設定して空芯コイルを制作する。その巻き付け方法はエナメル線の絶縁ラッカー膜に引っかき傷およびぶれ傷が付けなく、対応する特性要件を満たすように、巻線治具への多軸による整然とした並列巻きを採用する。エナメル線の選定及び巻き付けは、繰り返しテストの結果、大量生産可能な巻線装置のパラメータ及び線材の仕様データを取得した。巻き付け方法は巻線治具への多軸による整然とした並列巻きを採用しているため、材料片を節約しながら巻き付け速度を向上する。
【0022】
第二ステップ:プレス成形:カルボニル鉄粉末又は合金材料(鉄-シリコン、鉄-シリコン-クロム、鉄-ニッケル、鉄-シリコン-アルミニウム及びアモルファスナノ等の材料体系)を使用して成形する。研究開発チームは、複数の試験を経て、データを記録し、統計分析の後、次のように最適なカルボニル粉末成分の処方を選別した。
【0023】
カルボニル基鉄粉又は合金材料をエポキシ樹脂及びアセトンと100:5:15の重量比でよく混合した後、温度65℃の条件下で2時間保温した後、粉砕して造粒する。製造された粉末は、球形度≧90%を満たす必要がある。また、粉末の粒径はD50≦30μm、D90≦90μm、D10≦20μmを満たす必要がある(D10は、粒子の累積分布が10%になる粒径である。即ち、この粒径よりも小さい粒子の体積含有量は、すべての粒子の10%を占める。D50は、粒子の累積分布が50%になる粒径である。中位径又は中位粒子径とも呼ばれ、これは粒径のサイズを表す代表値である。D90は、粒子の累積分布が90%になる粒径である。即ち、このサイズよりも小さい粒子の体積含有量は、すべての粒子の90%を占める)。エポキシ樹脂をバインダとし、粉末造粒が完成された後、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を添加する。
【0024】
空芯コイルを含む巻線治具を成形機の金型に入れ、次に金型キャビティ内の定点にコイルをインプラントし、ミクロンレベルの軟磁性金属粉末を金型キャビティ内に注入する。空芯コイルが金属粉末で完全に包まれてからプレス成形する。成型密度は3g/cm3以上である。
【0025】
成形機の具体的な圧力の選定:圧力が大きいと、コイルのパテントレザーに傷が付いたり、つぶれたりし、圧力が足りないと、生産された製品の密度が不足し、製品のコーナー欠落やインダクタンスの低下等の不具合が発生する。大量な実験の結果、統計データにより、製品の品質、生産効率、及び収率を満たすことができる最適なパラメータを選別する。
【0026】
第三ステップ:一次面取り:プレス成形された製品を、製品重量に応じて一定の割合で面取り媒体と混合した後、面取り装置に入れて面取り作業を完成させる。
【0027】
第四ステップ:熱圧硬化:製品を整然にレイアウトして熱圧装置のキャビティ内に入れ、熱圧装置のキャビティの温度を150℃以上に制御し、0.5トン以上の圧力で10分間以上の保圧を行い、熱圧硬化作業を完成させる。
【0028】
第五ステップ:二次面取り:熱圧された製品を、製品の重量に応じて一定の割合で面取り媒体と混合した後、面取り装置に入れ、二次面取り作業を完成させる。
【0029】
第六ステップ:一次ナノ絶縁コーティング:ポリイミド系ナノ材料を使用して製品の表面に対して絶縁コーティング処理を行う。絶縁層の厚さは5μm以上であり、絶縁層を硬化させるために、製品をコーティング後に150℃以上で1時間以上ベーキングする。
【0030】
第七ステップ:一次研磨:製品を治具内に整然に配列し、高精度の研磨機を使用して製品について研磨作業を行う。製品の片側研磨量は5μm以上であり、製品の両端の導電線の銅界面と製品底部の2つの電極表面を露出する。
【0031】
第八ステップ:電極銅めっき:一次研磨後の製品に10μm以上の銅層を電気めっきする。
【0032】
第九ステップ:二次ナノ絶縁コーティング:ポリイミド系ナノ材料を使用して製品の表面に対して絶縁コーティング処理を行う。絶縁層の厚さは5μm以上であり、絶縁層を硬化させるために、製品をコーティング後に150℃以上で1時間以上ベーキングする。
【0033】
第十ステップ:二次研磨:製品を治具内に整然に配列し、高精度の研磨機を使用して製品について研磨作業を行う。製品の片側研磨量は5μm以上であり、製品底部の銅導体めっき層を露出する。
【0034】
第十一ステップ:電気めっきによる電極の金属化:製品のはんだ付け性、はんだ耐性及び接着性を増加するために、イオンプレーティング技術(PVD技術)又は従来の電気めっき工程を使用し、元の一次銅めっきされた製品の表面に必要な金属及び合金材料のめっき層をさらに追加する。
【0035】
第十二ステップ:テスト及びパッケージング:製品に対して全自動的なテスト及びパッケージングを行い、サイズ及び特性の不良品を排除し、製品をキャリアテープに包み込む。
【0036】
上記に記載されていることは、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明の実施範囲を限定することを意図するものではない。したがって、本発明の形状及び原理に従って行われたすべての変化は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。