(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】墜落検知装置、飛行体の墜落を検知する方法、パラシュートまたはパラグライダーの展開装置、およびエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B64D 25/00 20060101AFI20220615BHJP
B64C 31/036 20060101ALI20220615BHJP
B64D 17/80 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
B64D25/00
B64C31/036
B64D17/80
(21)【出願番号】P 2021103075
(22)【出願日】2021-06-22
(62)【分割の表示】P 2017200320の分割
【原出願日】2017-10-16
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 博
(72)【発明者】
【氏名】八木橋 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】笹本 幸一
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-102700(JP,A)
【文献】国際公開第2017/161563(WO,A1)
【文献】特開2017-95010(JP,A)
【文献】米国特許第9639087(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 25/00
B64C 31/036
B64D 17/80
B64C 39/02
B64D 17/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体に搭載可能であるとともに、前記飛行体の墜落を検知可能な墜落検知装置であって、
前記飛行体の飛行状態を検知可能な検知部と、
前記検知部で得た前記飛行体の飛行状態のデータを基に、前記飛行体の飛行状態が異常か否か判定可能な演算部と、
を備え、
前記演算部は、
前記検知部から取得した前記データから算出して得た前記データのピークの半値幅またはピーク面積の情報を基に、前記飛行体の飛行状態が異常であることを示すデータであるか不要なデータであるノイズであるかの判定(以下、シグナル/ノイズ判定)を行い、前記飛行体の飛行状態が異常であることを示すデータであると判定した場合に、前記飛行体の飛行状態が異常と判定することを特徴とする墜落検知装置。
【請求項2】
前記演算部は、
サンプリング周波数1kHz未満で前記検知部から前記データを取得することを特徴とする請求項1に記載の墜落検知装置。
【請求項3】
前記演算部は、
前記飛行体の飛行状態
をデータ取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップで取得した前記データが、予め設定された所定の閾値以上となっているか否か判定する第1判定ステップと、
前記第1判定ステップによって、前記データが予め設定された所定の閾値以上となっていると判定された場合、前記飛行体の飛行状態が異常であることを示すデータであるか不要なデータであるノイズであるか判定する第2判定ステップとを有し、
前記第2判定ステップによって、前記飛行体の飛行状態が異常であることを示すデータであると判定された場合、前記安全装置を起動させるステップと、
を有していることを
特徴とする請求項1又は2に記載の墜落検知装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の墜落検知装置と、
展開可能なパラシュートまたはパラグライダーと、
前記墜落検知装置によって前記異常信号が出力された場合に、前記異常信号を受信して前記パラシュートまたは前記パラグライダーを射出する射出部と、
を備えていることをパラシュートまたはパラグライダーの展開装置。
【請求項5】
膨張可能なエアバッグと、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の墜落検知装置と、
前記墜落検知装置によって前記異常信号が出力された場合に、前記異常信号を受信して前記エアバッグ内にガスを供給するガス発生器と、
を備えていることを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体に搭載される墜落検知装置、飛行体の墜落を検知する方法、パラシュートまたはパラグライダーの展開装置、およびエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自律制御技術および飛行制御技術の発展に伴って、例えばドローンと呼ばれる複数の回転翼を備えた飛行体の産業上における利用が加速しつつある。ドローンは、例えば複数の回転翼を同時にバランスよく回転させることによって飛行し、上昇および下降は回転翼の回転数の増減によって行い、前進および後進は回転翼の回転数の増減を介して機体を傾けることによって成し得る。このような飛行体は今後世界的に拡大することが見込まれている。
【0003】
一方で、上記のような飛行体の落下事故のリスクが危険視されており、飛行体の普及の妨げとなっている。こうした落下事故のリスクを低減するために、安全装置としてパラシュート展開装置およびエアバッグ装置などが製品化されつつある。例えば、特許文献1には、飛行体が規定の高度以上であることを検知した後、飛行姿勢パラメータおよびバッテリ容量パラメータを既定値と比較判定し、異常が検知された場合に飛行体の電源供給を停止し、パラシュートを自動的に開傘する飛行体用の自動開傘装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第105775142号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献をはじめとする従来技術においては、飛行体の異常検知について、さらに迅速性および信頼性を向上する余地がある。具体的には、従来技術は、飛行体の異常検知のためのデータ収集の迅速性および信頼性を考慮したものではなく、飛行体の異常検知について精度を向上させようとした場合において、誤作動を防止し得るものではなかった。
【0006】
そこで、本発明は、飛行体の安全面の信頼性を向上することができる墜落検知装置、飛行体の墜落を検知する方法、パラシュートまたはパラグライダーの展開装置、およびエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、飛行体に搭載可能であるとともに、前記飛行体の墜落を検知可能な墜落検知装置であって、前記飛行体の飛行状態を検知可能な検知部と、前記検知部で得た前記飛行体の飛行状態のデータを基に、前記飛行体の飛行状態が異常か否か判定可能な演算部と、前記演算部が前記飛行体の飛行状態を異常と判定した場合において、異常信号を外部に出力可能な異常信号出力部と、を備え、前記演算部は、サンプリング周波数1kHz以上で前記検知部からデータを取得し、前記飛行体の飛行状態が異常であることを示すデータであるか不要なデータであるノイズであるかの判定(以下、シグナル/ノイズ判定)を行い、前記飛行体の飛行状態が異常であることを示すデータであると判定した場合に、前記飛行体の飛行状態が異常と判定することを特徴とする。なお、前記演算部は、前記飛行体の飛行状態を異常と判定した場合、異常信号を外部に出力するものであってもよい。
【0008】
上記(1)の構成によれば、サンプリング周波数を従来よりも大きくしたことによって、検知部が実測したデータにノイズが紛れ込んでいても、飛行体の飛行状態が異常であることを示すデータ(シグナル)と、不要なデータであるノイズとを容易に判別できる。したがって、飛行体の飛行状態が異常であるか否かを的確に検知することができる。引いては、電気的ノイズおよび機械的ノイズなどのノイズを気にする必要がないので、従来のように、墜落検知装置に対して、電磁波シールド部材の取り付け、または、電磁波シールド処理などを既存部材に施す必要が無いため、従来よりも軽量化および低コスト化することができる。
【0009】
(2) 上記(1)の墜落検知装置において、前記演算部は、前記サンプリング周波数1kHz以上で前記検知部から前記データを取得する異常モードと、異常でない通常時に、前記演算部が、サンプリング周波数1kHz未満で前記検知部からデータを取得する通常モードと、を含み、初期状態で前記通常モードであって、前記通常モードにおいて前記検知部から取得したデータが所定の閾値以上であった場合、前記通常モードから前記異常モードに切り替えて、前記検知部からデータを取得するものであることが好ましい。
【0010】
上記(2)の構成によれば、通常時に通常モードを用い、緊急時に異常モードを用いる構成により、上記(1)の構成の場合に比べてデータ収集の無駄を抑制することができる(精査の必要性が高いデータのみをピックアップして収集できる)ので、上記(1)の構成の場合に比べて消費電力を抑制することができる。
【0011】
(3) 上記(1)または(2)の墜落検知装置において、前記演算部は、前記検知部から取得したデータから算出して得た前記データのピークの半値幅またはピーク面積の情報を基に、前記シグナル/ノイズ判定を行うことが好ましい。
【0012】
上記(3)の構成によれば、演算部において、シグナルおよびノイズのピークの半値幅またはピーク面積を算出し、これを利用するので、検知部で実測して取得したデータについて、従来よりも精度の高いシグナル/ノイズ判定を行うことができる。
【0013】
(4) 別の観点として、本発明は、安全装置を備えた飛行体の墜落を検知する方法であって、前記飛行体の飛行状態をサンプリング周波数1kHz以上でデータ取得するデータ取得ステップと、前記データ取得ステップで取得したデータが、予め設定された所定の閾値以上となっているか否か判定する第1判定ステップと、前記第1判定ステップによって、前記データが予め設定された所定の閾値以上となっていると判定された場合、前記飛行体の飛行状態が異常であることを示すデータであるか不要なデータであるノイズであるか判定する第2判定ステップと、前記第2判定ステップによって、前記飛行体の飛行状態が異常であることを示すデータであると判定された場合、前記安全装置を起動させるステップと、を有していることを特徴とするものであってもよい。
【0014】
上記(4)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏することができる。
【0015】
(5) 他の観点として、本発明に係るパラシュートまたはパラグライダーの展開装置は、上記(1)乃至(3)の何れかの墜落検知装置と、展開可能なパラシュートまたはパラグライダーと、前記墜落検知装置によって前記異常信号が出力された場合に、前記異常信号を受信して前記パラシュートまたは前記パラグライダーを射出する射出部と、を備えているものである。
【0016】
上記(5)の構成によれば、実測したデータにノイズが紛れ込んでいても、シグナルとノイズとを容易に判別できる墜落検知装置を備えているので、パラシュートまたはパラグライダーの展開装置の動作保証を実現することができると共に、当該展開装置の誤動作を防止することができる。このことによって、パラシュートまたはパラグライダーの展開装置における安全面の信頼性を向上することができる。
【0017】
(6) さらに他の観点として、本発明に係るエアバッグ装置は、膨張可能なエアバッグと、上記(1)乃至(3)の何れかの墜落検知装置と、前記墜落検知装置によって前記異常信号が出力された場合に、前記異常信号を受信して前記エアバッグ内にガスを供給するガス発生器と、を備えているものである。
【0018】
上記(6)の構成によれば、実測したデータにノイズが紛れ込んでいても、シグナルとノイズとを容易に判別できる墜落検知装置を備えているので、エアバッグ装置の動作保証を実現することができると共に、エアバッグ装置の誤動作を防止することができる。このことによって、エアバッグ装置における安全面の信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、飛行体の安全面の信頼性を向上することができる墜落検知装置、飛行体の墜落を検知する方法、パラシュートまたはパラグライダーの展開装置、およびエアバッグ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパラシュートまたはパラグライダーの展開装置が適用される飛行体の一例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るパラシュートまたはパラグライダーの展開装置を示す断面図である。
【
図3】
図2の展開装置に設けられている墜落検知装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図4】(a)がシグナルおよびノイズの例を示すグラフ、(b)がピーク面積の説明用のグラフである。
【
図5】墜落検知装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】墜落検知装置が適用されるエアバッグ装置を備えた飛行体の例を示す図である。
【
図7】墜落検知装置が適用されるエアバッグ装置を備えた飛行体の他の例を示す図である。
【
図8】墜落検知装置の動作の他例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係るパラシュートまたはパラグライダーの展開装置が適用される飛行体について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、パラシュートまたはパラグライダーの展開装置90が適用される飛行体の一例を示す図である。
図1に示すように、飛行体100は、機体1と、機体1に結合され、当該機体1を推進させる1つ以上の推進機構(例えばプロペラ等)2と、機体1の下部に設けられた複数の脚部3と、パラシュートまたはパラグライダーの展開装置90と、を備えている。パラシュートまたはパラグライダーの展開装置90は、機体1上に設けられている。
【0023】
なお、パラシュートまたはパラグライダーの展開装置90の一例を示す
図2においては、パラシュートを展開させる展開装置を一例に挙げて説明する。
【0024】
図2に示すように、パラシュートまたはパラグライダーの展開装置90は、アクチュエータ88とパラシュートまたはパラグライダー86とを備えている。アクチュエータ88は、点火薬(図示略)を収容するカップ状のケース85を有する点火器84と、凹部82および当該凹部82と一体的に形成されたピストンヘッド83を有するピストン81と、ピストン81を収容し当該ピストン81の推進方向を規制する有底筒状のハウジング80とを備えている。パラシュートまたはパラグライダー86は、ピストンヘッド83上に配置された状態でハウジング80内に収納されているものであり、いわゆるパラシュートである。このような構成において、ピストン81の推進によりパラシュートまたはパラグライダー86を直接押し出して展開させることができる。なお、ハウジング80の開口端部は初期状態で蓋87により閉じられており、パラシュートまたはパラグライダー86の押し出しにより上記開口端部から外れるようになっている。
【0025】
また、パラシュートまたはパラグライダーの展開装置90は、飛行体の異常を検出する加速度センサ等を含む墜落検知装置40(
図2では図示略)を備えている。
【0026】
このような構成において、墜落検知装置40によって異常が検出された際に、点火器84の点火動作に基づき発生されたガス圧によってピストン81を推進させる。これにより、ピストン81の推進力によってパラシュートまたはパラグライダー86を直接押し出して展開させることができる。
【0027】
ここで、墜落検知装置40の機能的構成について説明する。墜落検知装置40は、
図3に示すように、センサ(検知部)11と、制御部(CPU、ROM、RAM等を有するコンピュータ)20と、を備えており、展開装置90の点火器84と電気的に接続されている。
【0028】
センサ11は飛行体100の飛行状態(衝突、墜落などを含む)を検知するものである。具体的には、センサ11は、たとえば、加速度センサ、ジャイロセンサ、気圧センサ、レーザーセンサ、超音波センサなどから1以上選択されてなるセンサであり、飛行体100の速度、加速度、傾き、高度、位置など、飛行体100の飛行状態のデータを取得することができる。
【0029】
制御部20は、機能的構成として、センサ異常検知部21と、演算部22と、通知部23と、を備えている。これらのセンサ異常検知部21、演算部22、および通知部23は、制御部20が所定のプログラムを実行することで機能的に実現されるものである。
【0030】
センサ異常検知部21は、センサ11の異常状態を検知するものである。つまり、センサ異常検知部21は、センサ11が正常に動作可能であるか否かを検知する。
【0031】
演算部22は、センサ11が実測して取得した各データを基に、飛行体の飛行状態が異常か否か、具体的には飛行体100が衝撃を受けたかどうか(または衝突したかどうか)の判定を行うものである。なお、演算部22のデータ収集間隔(サンプリング周波数)は、たとえば、1kHz以上のうちいずれかの値(好ましくは1kHz以上10kHz以下のうちいずれかの値)に設定することが可能であり、本実施形態においては10kHzに設定されている。また、演算部22は、飛行体の飛行状態が異常であると判定した場合、異常信号(他の機器を起動または作動させる命令信号を含むこともある。)を外部に出力するものであるが、演算部22とは別に異常信号出力部を設け、演算部22の命令によって、この異常信号出力部が異常信号を出力するようにしてもよい。
【0032】
なお、ここでは、衝撃を検知した場合に検知されるデータをシグナル、電気的ノイズまたは機械的ノイズとして発生した不要なデータをノイズとする。また、
図4(a)に、上記シグナルおよび上記ノイズの例を示す。シグナルは、ノイズよりも半値幅が広いものである。これらの特性を利用し、演算部22は、サンプリング周波数を10kHzとして、データを取り込んで、
図4に示したシグナルおよびノイズのピークの半値幅またはピーク面積を算出することができる。そして、演算部22は、これらシグナルおよびノイズのピークの半値幅またはピーク面積の情報を基に、シグナルなのかノイズなのかの判定を行うことができる(シグナル/ノイズ判定)。なお、ピーク面積とは、
図4(b)に示した斜線部の範囲のように、対象となる波形の開始点(ベーススタート)と終点(ベースエンド)とを結んだ時間軸に平行な直線(ベースライン)と、対象となるデータの波形(ピークスタート、ピークトップ、ピークエンドを有する)とで囲まれた部分の面積のことである。また、演算部22は、シグナルであると判定した場合、飛行体100が衝撃を受けたとして、展開装置起動信号をパラシュートまたはパラグライダーの展開装置90に出力するようになっている。
【0033】
通知部23は、センサ異常検知部21によりセンサ11の異常が検知された場合、異常が検知された旨の通知が管理者などに対して行うものである。
【0034】
続いて、本実施形態の墜落検知装置40の動作の流れについて、フローチャートを用いて説明する。
【0035】
図5に示すように、最初にセンサ異常検知部21によるセンサ11の異常検査が行われる(ステップS1)。具体的には、飛行体の加速度を計測する加速度センサなどが、センサ異常検知部21によって正常に動作するかどうかの検査が実施される。
【0036】
ステップS1の結果、異常なしと判定されなかった場合(ステップS2でNO)、センサ異常検知部21は管理者などに対してエラー通知を行って(ステップS3)、終了する。一方、ステップS1の結果、異常なしと判定された場合(ステップS2でYES)、演算部22は、センサ11で実測された各データを読み込む(ステップS4)。
【0037】
ステップS4のあと、演算部22は、センサ11で実測され取得されたデータが、シグナルなのかノイズなのかを判定する(ステップS5)。取得されたデータがシグナルでなかった場合(ステップS6でNO)、演算部22はステップS4の処理に戻る。
【0038】
一方、取得されたデータがシグナルであれば(ステップS6でYES)、演算部22は、展開装置起動信号(異常信号)をパラシュートまたはパラグライダーの展開装置90に出力する(ステップS7)。なお、一変形例として、取得されたデータがシグナルであった場合、さらに該シグナルのピークの高さ(ピークトップ)が所定の閾値以上である場合に、演算部22は、展開装置起動信号をパラシュートまたはパラグライダーの展開装置90に出力することともしてもよい。
【0039】
そして、展開装置起動信号を受信したパラシュートまたはパラグライダーの展開装置90は起動し、パラシュートまたはパラグライダーを展開させ(ステップS8)、終了する。
【0040】
このように、本実施形態によれば、実測したデータにノイズが紛れ込んでいても、サンプリング周波数を従来よりも大きくしたことによってシグナルとノイズとを容易に判別できる墜落検知装置40を備えているので、展開装置90の動作保証を実現することができると共に、当該展開装置90の誤動作を防止することができる。このことによって、パラシュートまたはパラグライダーの展開装置90における安全面の信頼性を向上することができる。引いては、ノイズを気にする必要がないので、従来のように、電磁波シールド部材の取り付け、または、電磁波シールド処理などを既存部材に施す必要が無いので、従来よりも軽量化および低コスト化することができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、演算部22において、シグナルおよびノイズのピークの半値幅またはピーク面積を算出し、これを利用するので、センサ11で実測して取得したデータについて、従来よりも精度の高いシグナル/ノイズ判定を行うことができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、センサ異常検知部21によりセンサ11の動作状態が検知されるので、当該センサ11が正常に動作可能であるか否かが分かる。これにより、センサ11の動作保証を実現することができる。これによって、センサ11が動作可能であるか否かについて明確でないまま展開装置90を起動することを防止できる。また、演算部22により、展開装置90の安全面の信頼性を向上することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、センサ異常検知部21によりセンサ11の異常が検知された場合に、通知部23により、異常が検知された旨の通知が管理者などに対して行われる。これにより、管理者などは上記異常を容易かつ迅速に認識することができる。
【0044】
続いて、上記実施形態の墜落検知装置が適用されるエアバッグ装置を備えた飛行体200、300について説明する。なお、後述の
図6において、
図1と下2桁が同じ符号の部位は、特に示すことがない限り、
図1で説明したものと同様であるので説明を省略する。同様に、後述の
図7において、
図1および
図6と下2桁が同じ符号の部位は、特に示すことがない限り、
図1および
図6で説明したものと同様であるので説明を省略する。また、ここで用いられているエアバッグ装置においては、点火器を備えるガス発生器により発生されたガス圧によって、エアバッグを膨張させる。なお、ガス発生器は、ガスをエアバッグ内に供給できるものであれば、どのようなものでもよく、たとえば、ボンベ式などでもよい。
【0045】
図6に示すように、飛行体200は、上述の点火器84と同様の点火器の点火動作に基づき発生されたガス圧によってエアバッグ211を膨張させるエアバッグ装置210を備えている。エアバッグ装置210は、通常姿勢時の機体201の下部に設けられたパラシュートまたはパラグライダーの展開装置190と対向する機体201上に設けられている。
【0046】
このような構成において、エアバッグ装置210に搭載されている墜落検知装置(図示略)によって、センサ(図示略)で実測され取得されたデータがシグナルであると判定された場合、上述の墜落検知装置40と同様に墜落検知装置から展開装置起動信号が点火器に発信され、当該点火器が作動する。なお、エアバッグ装置210に搭載されている墜落検知装置によって、センサ(図示略)で実測され取得されたデータがノイズと判定された場合には、墜落検知装置から展開装置起動信号が点火器に発信されることはない。
【0047】
また、上記点火器が作動することにより生じたガス圧によって、エアバッグ311が膨張する。これによって、落下時において、障害物および搭載物、特に歩行者を保護することができる。
【0048】
また、
図7に示すように、飛行体300において、エアバッグ装置310を、通常姿勢時の機体301の上部に設けられたパラシュートまたはパラグライダーの展開装置290と対向する機体301上に設けてもよい。なお、飛行体300には、通常姿勢時の機体301の下部にデバイス(図示略)が設けられている。
【0049】
このような構成において、エアバッグ装置310に搭載されている墜落検知装置(図示略)によって、センサ(図示略)で実測され取得されたデータがシグナルであると判定された場合、上述の墜落検知装置40と同様に墜落検知装置から展開装置起動信号が点火器に発信され、当該点火器が作動する。なお、エアバッグ装置310に搭載されている墜落検知装置によって、センサ(図示略)で実測され取得されたデータがノイズと判定された場合には、墜落検知装置から展開装置起動信号が点火器に発信されることはない。
【0050】
また、飛行体300の落下時に、上記のエアバッグ装置310によりエアバッグ311が膨張された際、歩行者および障害物、特に飛行体300の上記デバイスを保護することができる。
【0051】
このように、エアバッグ装置210、310は、墜落検知装置(図示略)を備えているので、エアバッグ装置210、310の誤動作を防止することができる。このことによって、エアバッグ装置210、310における安全面の信頼性を向上することができる。その他の作用効果は、上記パラシュートまたはパラグライダーの展開装置90の場合と同様である。
【0052】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0053】
また、上記実施形態では、センサ異常検知部21、演算部22および通知部23をソフトウェアにより機能的に実現することとしたが、これに限定されるものではなく、ハードウェアにより構成してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、センサが実測して取得したデータの読み込みについて、演算部22のサンプリング周波数を単一の10kHzに設定した。この代わりに、演算部が、通常モード(サンプリング周波数1kHz未満(好ましくは100Hz以下)のうちいずれかの値に設定)、および、異常モード(サンプリング周波数1kHz以上(好ましくは1kHz以上10kHz以下)のうちいずれかの値に設定)を適宜使い分ける構成としてもよい。以下に、この構成の具体例を示す。なお、上記実施形態と同様の部位名を用いているものは、特に説明がない限り、同様のものであるので、説明を省略することがある。また、特に説明がないものについても上記実施形態と同様のものであるので、説明を省略することがある。
【0055】
本変形例の墜落検知装置における演算部は、通常時は上記通常モードを使用し、一定の衝撃などを受けたことをセンサが検知した場合に、上記通常モードから上記異常モードに切り替えた後、上記実施形態と同様のシグナル/ノイズ判定を行うものである。
【0056】
続いて、本変形例の墜落検知装置の動作の流れについて、フローチャートを用いて説明する。なお、本変形例の墜落検知装置における演算部は、初期状態において、上記通常モードとなっている。
【0057】
図8に示すように、最初にセンサ異常検知部によるセンサの異常検査が行われる(ステップS11)。具体的には、飛行体の加速度を計測する加速度センサなどが、センサ異常検知部によって正常に動作するかどうかの検査が実施される。
【0058】
ステップS11の結果、異常なしと判定されなかった場合(ステップS12でNO)、センサ異常検知部は管理者などに対してエラー通知を行って(ステップS13)、終了する。一方、ステップS11の結果、異常なしと判定された場合(ステップS12でYES)、演算部は、上記通常モード(ここでは、たとえば、サンプリング周波数を100Hzに設定)で、センサで実測された各データを読み込む(ステップS14)。
【0059】
ステップS14のあと、実測されたデータの値(ピークの高さ(ピークトップ))が所定の閾値以上であるか否か判定する(ステップS15)。取得されたデータの値が所定の閾値以上でなかった場合(ステップS15でNO)、演算部22はステップS14の処理に戻る。
【0060】
一方、取得されたデータの値が所定の閾値以上であれば(ステップS15でYES)、演算部は、上記通常モードから上記異常モード(ここでは、たとえば、サンプリング周波数を1kHzに設定)に切り替えて、センサで実測された各データを読み込む(ステップS16)。
【0061】
ステップS16のあと、演算部は、センサで実測され取得されたデータが、シグナルなのかノイズなのかを判定する(ステップS17)。取得されたデータがシグナルでなかった場合(ステップS18でNO)、演算部はステップS14の処理に戻る。
【0062】
一方、取得されたデータがシグナルであれば(ステップS18でYES)、演算部は、展開装置起動信号(異常信号)をパラシュートまたはパラグライダーの展開装置に出力する(ステップS19)。なお、一変形例として、取得されたデータがシグナルであった場合、さらに該シグナルのピークの高さ(ピークトップ)が別の所定の閾値以上である場合に、演算部22は、展開装置起動信号をパラシュートまたはパラグライダーの展開装置90に出力することともしてもよい。
【0063】
そして、展開装置起動信号を受信したパラシュートまたはパラグライダーの展開装置は起動し、パラシュートまたはパラグライダーを展開させ(ステップS20)、終了する。
【0064】
これにより、上記実施形態のパラシュートまたはパラグライダーの展開装置90と同様の作用効果を奏することができる。また、本変形例の演算部において、通常時に通常モードを用い、緊急時に異常モードを用いる構成により、上記実施形態の場合に比べてデータ収集の無駄を抑制することができる(精査の必要性が高いデータのみをピックアップして収集できる)ので、上記実施形態の場合に比べて消費電力を抑制することができる。
【符号の説明】
【0065】
1、201、301 機体
2、202、302 推進機構
3、203、303 脚部
20 制御部
21 センサ異常検知部
22 演算部
23 通知部
80 ハウジング
81 ピストン
82 凹部
83 ピストンヘッド
84 点火器
85 ケース
86 パラシュートまたはパラグライダー
87 蓋
88 アクチュエータ
90、190、290 パラシュートまたはパラグライダーの展開装置
100、200、300 飛行体
210、310 エアバッグ装置
211、311 エアバッグ