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特許7089636アンジオテンシンII2型受容体拮抗薬の塩形、結晶形及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】アンジオテンシンII2型受容体拮抗薬の塩形、結晶形及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 217/26 20060101AFI20220615BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 31/472 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
C07D217/26
A61P25/04
A61P43/00 111
A61K31/472
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021507501
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 CN2019115149
(87)【国際公開番号】W WO2020088677
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】201811301892.3
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517429008
【氏名又は名称】シャンドン ダンホン ファーマスーティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG DANHONG PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ウェンタオ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジシャン
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/088504(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102821765(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 217/26
A61P 25/04
A61P 43/00
A61K 31/472
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線粉末回折パターンにおいて、2θ角が3.52±0.20°、6.04±0.20°、18.21±0.20°に特徴的な回折ピークを有する、ことを特徴とする式(I)化合物の結晶形A。
【化1】
【請求項2】
X線粉末回折パターンにおいて、2θ角が3.52±0.20°、6.04±0.20°、14.40±0.20°、15.11±0.20°、18.21±0.20°、18.46±0.20°、20.12±0.20°、24.13±0.20°に特徴的な回折ピークを有る、請求項1に記載の結晶形A。
【請求項3】
示差走査熱量測定曲線において155.36℃±3℃に吸熱ピークの開始点を有る、請求項1または2に記載の結晶形A。
【請求項4】
熱重量分析曲線において、100.00℃±3℃に0.1489%の重量損失に達る、請求項1または2に記載の結晶形A。
【請求項5】
式(I)化合物を混合溶剤に加えて溶解するステップ(a)と、
30~50℃で10~30時間撹拌するステップ(b)と、
ろ過後、30~50℃でろ過ケーキを15~25時間乾燥させるステップ(c)と、を含み、
前記混合溶剤は、アセトンと水の体積比が1:1.5~2.5である、式(I)化合物の結晶形Aの調製方法。
【請求項6】
X線粉末回折パターンにおいて、2θ角が3.52±0.20°、6.08±0.20°、9.25±0.20°、12.12±0.20°、14.00±0.20°、18.19±0.20°、24.31±0.20°、30.50±0.20°に特徴的な回折ピークを有る、ことを特徴とする式(I)化合物の結晶形B。
【請求項7】
示差走査熱量測定曲線において、150.95℃±3℃に吸熱ピークの開始点を有る、請求項6に記載の結晶形B。
【請求項8】
熱重量分析曲線において、120.00℃±3℃に0.0558%の重量損失に達る、請求項6に記載の結晶形B。
【請求項9】
式(I)化合物を溶剤に加えて、懸濁液を形成するステップ(a)と、
懸濁液を35~45℃で30~60時間撹拌するステップ(b)と、
遠心分離後、ろ過ケーキを8~16時間乾燥させるステップ(c)と、を含み、
前記溶剤は、メタノール、エタノール、アセトニトリルから選ばれるものであり、または、アセトンと水との体積比が3:2の混合溶剤である、式(I)化合物の結晶形Bの調製方法。
【請求項10】
慢性疼痛治療薬の調製における請求項1~4のいずれか1項に記載の結晶形Aまたは請求項6~8のいずれか1項に記載の結晶形Bの使用。
【請求項11】
以下のステップを含む、式(I)化合物の調製方法。
【化2】
(ここで、R1は、Cl、Br及びIから選ばれ、溶剤Fは、n-ヘプタン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、及びジオキサンから選ばれ、試薬Gは酸化銀、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、及び硫酸ナトリウムから選ばれる。)
【化3】
【請求項12】
以下のステップを含む、請求項11に記載の調製方法。
【化4】
(ここで、溶剤Hは、テトラヒドロフラン、メタノール、及び水から選ばれ、試薬Iは、水酸化リチウム一水和物及び水酸化ナトリウムから選ばれ、溶剤Jはジクロロメタンから選ばれ、触媒KはN,N-ジメチルホルムアミドから選ばれ、試薬Lは塩化オクサリルから選ばれ、溶剤Mはジクロロメタンから選ばれ、試薬Nはピラゾールから選ばれ、試薬OはN-メチルモルホリンから選ばれ、溶剤PはN,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、及びテトラヒドロフランから選ばれ、試薬Qはテトラメチルグアニジン、1,8-ジアザビシクロウンデク-7-エン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、及び2,6-ジメチルピリジンから選ばれる。)
【請求項13】
化合物1Eと化合物1-0とのモル比は1.2~5:1であり、或いは、化合物1-4と化合物D1-1とのモル比は、1.1~1.5:1であり、或いは、化合物1-1、1-2、及び1-3を調製するステップでは、反応系の温度範囲が25±5℃に制御され、或いは、化合物1-4の調製には、ステップaとステップbを含み、ステップaでは、反応系の温度範囲が25±5℃に制御され、ステップbでは、反応系に材料を投入する際に、反応系の温度範囲が5±5℃に制御され、試薬投入の終了後、反応系の温度範囲が25±5℃に制御され、或いは、溶剤Fはn-ヘプタンから選ばれ、前記n-ヘプタンの体積と化合物1-0の質量との比が8.0~10.0:1であり、試薬Gは、酸化銀、硫酸マグネシウムから選ばれ、前記酸化銀、硫酸マグネシウムと化合物1-0とのモル比が1.0~5.0:1である、請求項12に記載の調製方法。
【請求項14】
試薬Gは投入過程においてバッチで投入される、請求項11または12に記載の調製方法。
【請求項15】
溶剤Hは、テトラヒドロフランと水から選ばれる混合物であり、前記テトラヒドロフランと水の体積比が1~2:1であり、試薬Iは水酸化リチウム一水和物であり、前記水酸化リチウム一水和物と化合物1-0とのモル比が1.0~2.0:1であり、溶剤Jと化合物1-3との質量比は10:1であり、触媒Kと化合物1-3とのモル比は0.002~0.004:1であり、試薬Lと化合物1-3とのモル比は1.2~2.0:1であり、溶剤Mと化合物1-3との質量比は6~10:1であり、試薬Nと化合物1-3とのモル比は1.0~1.5:1であり、試薬Oと化合物1-3とのモル比は1.0~1.5:1であり、溶剤PはN,N-ジメチルホルムアミドから選ばれ、前記N,N-ジメチルホルムアミドから選ばれる溶剤Pと化合物1-4との質量比が10:1であり、試薬Qはテトラメチルグアニジンから選ばれ、前記テトラメチルグアニジンから選ばれる試薬Qと化合物1-4とのモル比が1~1.2:1である、請求項12に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出願日2018.11.02のCN201811301892.3の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、アンジオテンシンII2型受容体(AT2R)拮抗薬の塩形、結晶形及びその製造方法に関し、慢性疼痛治療薬の製造における前記塩形及び結晶形の応用をさらに含む。
【背景技術】
【0003】
アンジオテンシンII(AngII)は、アンジオテンシンIがアンジオテンシン変換酵素の作用を受けて加水分解して生じるオクトペプチド物質であり、血圧、体液のバランスや疼痛知覚などを調整する作用を有する。アンジオテンシン受容体は、アンジオテンシンをリガンドとするGタンパク質結合受容体であり、レニン-アンジオテンシン系の重要な構成部分である。AngIIは、アンジオテンシンII1型受容体(AT1R)及びアンジオテンシンII2型受容体(AT2R)を活性化することができる。これらの中でも、AT2Rは神経系において疼痛メカニズムに関連し、主に後根神経節及び三叉神経節で発現されている。正常な神経に比べて、損傷神経や痛みを伴う神経腫にはAT2R発現がより高い。AT2Rは、活性化されると、Gタンパク質結合受容体により活性化されたセカンドメッセンジャー経路を介して、ニューロン中のイオンチャンネルを感作させることができる。イオンチャンネルが感作作用により活性化されて、ニューロンの興奮を引き起こす。AT2R拮抗薬は既に動物実験、臨床実験により疼痛の緩和に用いられ得ることが確認された。
【0004】
国際公開第2011/088504号では、化合物EMA-401が開示されている。
【化1】
【発明の概要】
【0005】
本発明は、式(I)化合物を提供する。
【化2】
【0006】
本発明は、X線粉末回折パターンにおいて、2θ角が3.52±0.20°、6.04±0.20°、18.21±0.20°に特徴的な回折ピークを有する、ことを特徴とする式(I)化合物の結晶形Aをさらに提供する。
【0007】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形AのX線粉末回折パターンにおいて、2θ角が3.52±0.20°、6.04±0.20°、14.40±0.20°、15.11±0.20°、18.21±0.20°、18.46±0.20°、20.12±0.20°、24.13±0.20°に特徴的な回折ピークを有する。
【0008】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形AのXRPDパターンが図1に示される。
【0009】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形AのXRPDパターンの分析データが表に示される。
【0010】
【表1】
【0011】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形Aの示差走査熱量測定曲線において155.36℃±3℃に吸熱ピークの開始点を有する。
【0012】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形AのDSCパターンが図2に示される。
【0013】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形Aの熱重量量分析曲線において、100.00℃±3℃に0.1489%の重量損失に達する。
【0014】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形AのTGAパターンが図3に示される。
【0015】
本発明は、
式(I)化合物を混合溶剤に加えて溶解するステップ(a)と、
30~50℃で10~30時間撹拌するステップ(b)と、
ろ過後水洗し、30~50℃でろ過ケーキを15~25時間乾燥させるステップ(c)と、を含み、
前記混合溶剤は、アセトンと水の体積比が1:1.5~2.5である、式(I)化合物の結晶形Aの調製方法をさらに提供する。
【化3】
【0016】
本発明は、X線粉末回折パターンにおいて、2θ角が6.08±0.20°、12.12±0.20°、18.19±0.20°に特徴的な回折ピークを有する、ことを特徴とする式(I)化合物の結晶形Bをさらに提供する。
【0017】
本発明は、X線粉末回折パターンにおいて、2θ角が6.08±0.20°、12.12±0.20°、18.19±0.20°、24.31±0.20°、30.50±0.20°に特徴的な回折ピークを有する、ことを特徴とする式(I)化合物の結晶形Bをさらに提供する。
【0018】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形Bは、X線粉末回折パターンにおいて、2θ角が3.52±0.20°、6.08±0.20°、9.25±0.20°、12.12±0.20°、14.00±0.20°、18.19±0.20°、24.31±0.20°、30.50±0.20°に特徴的な回折ピークを有する。
【0019】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形BのXRPDパターンが図4に示される。
【0020】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形BのXRPDパターンの分析データが表2に示される。
【0021】
【表2】
【0022】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形Bの示差走査熱量測定曲線において、150.95℃±3℃に吸熱ピークの開始点を有する。
【0023】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形BのDSCパターンが図5に示される。
【0024】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形Bの熱重量量分析曲線において、120.00℃±3℃に0.0558%の重量損失に達する。
【0025】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形BのTGAパターンが図6に示される。
【0026】
本発明は、
式(I)化合物を溶剤に加えて、懸濁液を形成するステップ(a)と、
懸濁液を35~45℃で30~60時間撹拌するステップ(b)と、
遠心分離後、ろ過ケーキを8~16時間乾燥させるステップ(c)と、を含み、
前記溶剤は、メタノール、エタノール、アセトニトリルから選ばれるものであり、または、アセトンと水との体積比が3:2の混合溶剤である、式(I)化合物の結晶形Bの調製方法をさらに提供する。
【0027】
本発明は、慢性疼痛治療薬の調製における上記結晶形Aまたは結晶形Bの使用をさらに提供する。
【0028】
本発明は、以下のステップを含む、式(I)化合物の調製方法をさらに提供する。
【化4】
【化5】
(ここで、R1は、Cl、Br及びIから選ばれ、
溶剤Fは、n-ヘプタン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、及びジオキサンから選ばれ、
試薬Gは酸化銀、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、及び硫酸ナトリウムから選ばれる。)
【0029】
本発明のいくつかの形態では、上記調製方法は、以下のステップを含む。
【化6】
(ここで、溶剤Hは、テトラヒドロフラン、メタノール、及び水から選ばれ、
試薬Iは、水酸化リチウム一水和物及び水酸化ナトリウムから選ばれ、
溶剤Jはジクロロメタンから選ばれ、
触媒KはN,N-ジメチルホルムアミドから選ばれ、
試薬Lは塩化オクサリルから選ばれ、
溶剤Mはジクロロメタンから選ばれ、
試薬Nはピラゾールから選ばれ、
試薬OはN-メチルモルホリンから選ばれ、
溶剤PはN,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、及びテトラヒドロフランから選ばれ、
試薬Qはテトラメチルグアニジン、1,8-ジアザビシクロウンデク-7-エン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、及び2,6-ジメチルピリジンから選ばれる。)
【0030】
本発明のいくつかの形態では、化合物1Eと化合物1-0とのモル比は1.2~5:1である。
【0031】
本発明のいくつかの形態では、化合物1-4と化合物D1-1とのモル比は、1.1~1.5:1である。
【0032】
本発明のいくつかの形態では、上記調製方法において、化合物1-1、1-2、及び1-3を調製するステップでは、反応系の温度範囲が25±5℃に制御される。
【0033】
本発明のいくつかの形態では、化合物1-4の調製には、ステップaとステップbを含み、ステップaでは、反応系の温度範囲が25±5℃に制御され、ステップbでは、反応系に材料を投入する際に、反応系の温度範囲が5±5℃に制御され、試薬投入の終了後、反応系の温度範囲が25±5℃に制御される。
【0034】
本発明のいくつかの形態では、溶剤Fはn-ヘプタンから選ばれ、前記n-ヘプタンの体積と化合物1-0の質量との比が8.0~10.0:1であり、試薬Gは、酸化銀、硫酸マグネシウムから選ばれ、前記酸化銀、硫酸マグネシウムと化合物1-0とのモル比が1.0~5.0:1である。
【0035】
本発明のいくつかの形態では、試薬Gは投入過程においてバッチで投入される。
【0036】
本発明のいくつかの形態では、溶剤Hは、テトラヒドロフランと水から選ばれる混合物であり、前記テトラヒドロフランと水の体積比が1~2:1であり、試薬Iは水酸化リチウム一水和物であり、前記水酸化リチウム一水和物と化合物1-0とのモル比が1.0~2.0:1であり、溶剤Jと化合物1-3との質量比は10:1であり、触媒Kと化合物1-3とのモル比は0.002~0.004:1であり、試薬Lと化合物1-3とのモル比は1.2~2.0:1であり、溶剤Mと化合物1-3との質量比は6~10:1であり、試薬Nと化合物1-3とのモル比は1.0~1.5:1であり、試薬Oと化合物1-3とのモル比は1.0~1.5:1であり、溶剤PはN,N-ジメチルホルムアミドから選ばれ、前記N,N-ジメチルホルムアミドから選ばれる溶剤Pと化合物1-4との質量比が10:1であり、試薬Qはテトラメチルグアニジンから選ばれ、前記テトラメチルグアニジンから選ばれる試薬Qと化合物1-4とのモル比が1~1.2:1である。
【発明の効果】
【0037】
技術的効果
本発明の化合物はインビトロで優れた生物学的活性を示し、そして複数の属において良好な薬物動態特性を示す。その結晶形は安定的であり、吸湿性が低い。
【0038】
定義及び説明
特に断らない限り、本明細書で使用される下記用語及び句は下記定義を含むことを意図する。1つの特定の句または用語は、特に定義されない場合、不明確または不明瞭であると理解できず、一般的な定義として理解すべきである。本明細書に商品名が記載されている場合、該商品名に対応する商品またはその活性成分を意味する。
【0039】
本発明の中間体化合物は当業者に公知の複数の合成方法により製造することができ、以下で挙げられる特定実施形態、この実施形態と他の化学合成方法とを組み合わせた実施形態、及び当業者に公知の等同置換形態が含まれるが、好ましい実施形態には本発明の実施例が含まれるが、これらに制限されない。
【0040】
本発明の特定実施形態の化学反応は適切な溶剤にて行われ、前記溶剤は本発明の化学変化及びそれに必要な試薬や材料に適していなければならない。本発明の化合物を得るために、当業者が既存の実施形態に基づいて合成ステップまたは反応手順を修正または選択することも必要とされる場合はある。
【0041】
以下、実施例にて本発明を詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。
【0042】
本発明で使用されるすべての溶剤は市販品であり、さらなる精製を必要とせずに使用することができる。
【0043】
本発明では、下記略語が使用される。
r.t.は室温を表し、THFはテトラヒドロフランを表し、NMPはN-メチルピロリドンを表し、MeSO3Hはメタンスルホン酸を表し、DMEはエチレングリコールジメチルエーテルを表し、DCMはジクロロメタンを表し、Xphosは2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリイソプロピルビフェニルを表し、EtOAcは酢酸エチルを表し、MeOHはメタノールを表し、acetoneはアセトンを表し、2-Me-THFは2-メチルテトラヒドロフランを表し、IPAはイソプロパノールを表し、HATUはO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートを表す。
化合物は手動またはChemDraw(登録商標)ソフトウェアで命名され、市販化合物はサプライヤーのカタログ名を用いる。
本発明のX-線粉末回折(X-ray powder diffractometer、XRPD)方法
器具型番:Bruker D8advance X-線粉末回折計
テスト方法:XRPD検出に約10~20mgのサンプルが使用される。
詳細なXRPDパラメータは以下のとおりである。
X線管:Cu、kα(λ=1.54056Å)、
X線管電圧:40kV、X線管電流流:40mA
発散スリット:0.60mm
検出器スリット:10.50mm
散乱防止スリット:7.10mm
走査範囲:3~40degまたは4~40deg
ステップ幅:0.02deg
ステップ:0.12秒
サンプルトレイの回転数:15rpm
本発明の示差走査熱量分析(Differential Scanning Calorimeter、DSC)方法
器具型番号:TA Q2000示差走査熱量計
テスト方法:サンプル(~1mg)をDSC用アルミ鍋に入れてテストし、50mL/min、N2条件下、10℃/minの昇温速度で、サンプルを室温から250℃(または280℃)に加熱する。
本発明の熱重量分析(Thermal Gravimetric Analyzer、TGA)方法
器具型番:TA Q5000熱重量分析計
テスト方法:サンプル(2~5mg)をTGA用プラチナ鍋に入れてテストし、25mL/min、N2条件下、10℃/minの昇温速度で、サンプルを室温から30℃または重量が20%損失されるまで加熱する。
本発明の動的蒸気収着分析(Dynamic Vapor Sorption、DVS)方法
器具型番:SMS DVS Advantage動的蒸気収着装置
テスト条件:サンプル(10~15mg)をDVSサンプルトレイに入れてテストする。
詳細なDVSパラメータは以下のとおりである。
温度:25℃
平衡:dm/dt=0.01%/min(最短:10min、最長:180min)
乾燥:0%RH下、120min乾燥
RH(%)テスト勾配:10%
RH(%)テスト勾配範囲:0%~90%~0%
吸湿性の評価は以下のように分類される。
【0044】
【0045】
【0046】
本発明の高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatograph、HPLC)方法
詳細なパラメータは以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】式(I)化合物の結晶形AのCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図2】式(I)化合物の結晶形AのDSCパターンである。
図3】式(I)化合物の結晶形AのTGAパターンである。
図4】式(I)化合物の結晶形BのCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図5】式(I)化合物の結晶形BのDSCパターンである。
図6】式(I)化合物の結晶形BのTGAパターンである。
図7】式(I)化合物の結晶形BのDVSパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の内容をよりよく理解するために、以下、特定の実施例を参照しながらさらに説明するが、特定の実施形態は本発明の内容に対する制限ではない。
【0049】
参照例1:化合物S-A1の製造
【化7】
【0050】
ステップ1:化合物S-A1-1の製造
酸化銀(1.5g、6.6mmol)を化合物S-マンデル酸(500.0mg、3.3mmol)とブロモシクロペンタン(49.0g、328.6mmol)の混合液に加え、次に、20~25℃の条件下で撹拌しながら16時間反応させた。反応液をろ過し、ろ液を真空濃縮させて溶剤を除去し、得た粗製物をシリカクロマトグラフィーカラム(溶離液:酢酸エチル/石油エーテル0~10%)により分離して精製し、化合物S-A1-1を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.49-7.40(m,2H),7.38-7.28(m,3H),5.22-5.19(m,1H),4.88(s,1H),4.03-3.99(m,1H),1.89-1.64(m,10H),1.57-1.45(m,6H).MS m/z:311.1[M+Na]+.
【0051】
ステップ2:化合物S-A1の製造
化合物S-A1-1(340.0mg、1.2mmol)をテトラヒドロフラン(6.0mL)と水(3.0mL)の混合溶剤に溶解し、水酸化リチウム一水和物(283.0mg、11.8mmol)を加え、反応液を20~25℃で48時間撹拌した。反応液を1N塩酸でpH<3に調整した後、酢酸エチル(20mL×3)で抽出した。合併した有機相を飽和食塩水(50mL)で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空濃縮させて、得た粗製物をシリカクロマトグラフィーカラム(溶離液:0~37.5%石油エーテル/酢酸エチル)により分離して精製し、化合物S-A1を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.45-7.34(m,5H),4.93(s,1H),4.07-4.03(m,1H),1.78-1.69(m,6H),1.62-1.48(m,2H).
SFC:カラム:ChiralCel OJ-H(150mm×4.6mm、5um);移動相:A:CO2、B:エタノール[0.05%ジエチルアミン];B%:5%~40%5.5min、40%3min、5%1.5min;Rt=2.321min;95.6%ee.
【0052】
参照例2:化合物(-)-C1の製造
【化8】
【0053】
ステップ1:化合物C1-2の製造
窒素ガスの保護下、化合物C1-1(200.0g、1.31mol)を無水エタノール(1.50L)に溶解した。15℃で撹拌しながら無水炭酸カリウム(181.1g、1.31mol)及び臭化ベンジル(268.9g、1.57mol)を順次加え、次に反応液を100℃に加熱して15時間撹拌し続けた。反応液を室温に冷却させた後ろ過し、ろ液を真空濃縮させ、得た油状物を酢酸エチル(3.0L)で再溶解した後、2N水酸化ナトリウム水溶液(500mL×2)及び飽和食塩水(600mL×2)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させてろ過して、真空濃縮させて粗製物を得た。粗製物を石油エーテルに分散させて1時間撹拌し、ろ過して化合物C1-2を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ10.25(s,1H),7.42-7.34(m,6H),7.21-7.12(m,2H),5.19(s,2H),3.96(s,3H).
【0054】
ステップ2:化合物C1-3の製造
窒素ガスの保護下、化合物C1-2(220.0g、908.08mmol)、2-ニトロ酢酸エチル(145.0g、1.09mol)、及びジエチルアミン塩酸塩(149.3g、1.36mol)の、無水トルエン(2.1L)中の混合溶液を130℃に加熱して15時間還流させ、反応により生成した水をDeane-Stark分水器で分離した。反応液を室温に冷却した後、真空濃縮させてトルエンを除去した。残留物をジクロロメタン(500mL)に再溶解した後、飽和食塩水(1000mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させてろ過し、真空濃縮させて化合物C1-3を得て、この化合物を精製せずに次のステップの反応に用いた。
【0055】
ステップ3:化合物C1-4の製造
窒素ガスの保護下、上記ステップ2で得られた粗品化合物C1-3(430.0g、1.2mol)をイソプロパノール(2.2g、36.0mmol)及びクロロホルム(4.5L)に溶解し、混合液を0℃に冷却した後、撹拌しながら100~200メッシュのシリカゲル(1.8kg)に加え、次に、1.5時間かけてホウ水素化ナトリウム(201.1g、5.3mol)をバッチで加えた。反応液を15℃に昇温した後、撹拌しながら12時間反応させ続けた。酢酸(210mL)を緩やかに加えた後、15分間撹拌し続け、反応液をろ過し、ろ過ケーキをジクロロメタン(500mL)で洗浄した。合併したろ液を真空濃縮させて、得た残留物をシリカクロマトグラフィーカラム(溶離液:6%~10%石油エーテル/酢酸エチル)により分離して精製し、化合物C1-4を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.48-7.33(m,5H),7.02-6.97(m,1H),6.94-6.90(m,1H),6.64-6.62(dd,J=1.6,7.6Hz,1H),5.33-5.30(dd,J=6.0,9.2Hz,1H),5.19-5.05(m,2H),4.15-4.10(q,J=7.2Hz,2H),3.91(s,3H),3.44-3.31(m,2H),1.16-1.12(t,J=7.2Hz,3H).
【0056】
ステップ4:化合物C1-5の製造
15℃で、化合物C1-4(76.2g、212.04mmol)を酢酸(700mL)に溶解し、反応温度を60~65℃の間に維持しながら亜鉛粉(110.9g、1.70mol)を緩やかに加え、添加終了後、60℃で撹拌しながら2時間反応させ続けた。反応液を室温に冷却した後、ろ過し、ろ過ケーキを酢酸(300mL)で洗浄した。合併したろ液を真空濃縮させて、得た残留物をジクロロメタン(500mL)に再溶解し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(200mL×2)及び飽和食塩水(200mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させてろ過し、真空濃縮させて粗製物C1-5を得て、この化合物を精製せずに次のステップに用いた。MS m/z:330.1[M+1]+.
【0057】
ステップ5:化合物C1の製造
15℃、窒素ガスの保護下、化合物C1-5(48.9g、149.4mmol)を2N塩酸溶液(500mL)に溶解し、その後、37%ホルムアルデヒド水溶液(36.4g、448.1mmol)を加えて、反応液を25時間撹拌した。ろ過し、ろ過ケーキを水(100mL)で洗浄し、真空乾燥させて、化合物C1の塩酸塩を得た。MS m/z:342.1[M+1]+.
【0058】
ステップ6:化合物(-)-C1及び(+)-C1の製造
化合物C1(40.0g、117.2mmol)をキラルカラムにより分離して、2つの異性体(-)-C1及び(+)-C1を得た。
(-)-C1:1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.40-7.38(m,2H),7.33-7.22(m,3H),6.73-6.71(m,2H),4.93-4.92(m,2H),4.17-4.15(q,J=7.2Hz,2H),4.10-3.93(m,2H),3.79(s,3H),3.62-3.58(m,1H),3.07-3.06(m,1H),2.77-2.65(m,1H),1.21(t,J=7.2Hz,3H).MS m/z:342.1[M+1]+.[α]=-23.4.
(+)-C1:1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.43-7.40(m,2H),7.33-7.22(m,3H),6.86(s,2H),5.06-4.95(q,J=11.2Hz,2H),4.54-4.50(m,1H),4.33-4.21(m,3H),4.07-4.05(m,1H),3.88(s,3H),3.34-3.25(m,1H),3.20-3.14(m,1H),1.30-1.26(t,J=7.2Hz,3H).MS m/z:342.1[M+1]+.[α]=+9.8.
【0059】
参照例3:化合物D1の製造
【化9】
【0060】
ステップ1:化合物D1-1の製造
アセトン(21.2L)を50Lの反応釜に加えて、撹拌を開始し、次に、出発原料D1-0(2.69kg)、炭酸カリウム(3.48kg)及び臭化ベンジル(3.39kg)を反応釜に順次加え、反応液を55~60℃で約18時間撹拌した。反応液を10~20℃に降温して、減圧して吸引濾過し、ろ過ケーキをアセトン(2L、1.5L)で洗浄した。ろ液をロータリーエバポレータに移し、外温40~45℃で減圧濃縮させ、得た粗品を酢酸エチル(26L)に溶解して、13L水で2回洗浄し(毎回6.5L)、13L飽和塩化ナトリウム水溶液で2回洗浄し(毎回6.5L)、有機相を無水硫酸ナトリウム(1.5kg)で乾燥させてろ過し、ろ液を外温40~45℃で減圧濃縮させ、別のバッチと合併して処理し、さらに、得た粗品を石油エーテル30Lに加え、外温0~5℃で21時間撹拌し、ろ過して、ろ過ケーキを石油エーテル4Lで2回洗浄し(毎回2L)、得たろ過ケーキをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:0~10%酢酸エチル/石油エーテル)により分離して精製し、化合物D1-1を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ10.25(s,1H),7.41-7.36(m,6H),7.17-7.07(m,2H),5.19(s,2H),3.95(s,3H)。
【0061】
ステップ2:化合物D1-3の製造
テトラヒドロフラン(5.0L)を50Lの反応釜に加え、撹拌を開始し、次に、出発原料D1-2(3.21kg)及びテトラメチルグアニジン(1.31kg)を反応釜に順次加え、降温して、内温を10℃以下に維持しながら原料A-1(2.3kg)のテトラヒドロフラン(4.8L)溶液を滴下し、反応液を20~30℃で約16時間撹拌した。反応液を外温35~40℃で減圧濃縮させ、得た粗品を酢酸エチル(20L)に溶解し、10%のクエン酸水溶液8L、飽和塩化ナトリウム水溶液10Lで順次2回洗浄し(毎回5L)、有機相を無水硫酸ナトリウム(1.0kg)で乾燥させてろ過し、ろ液を外温35~40℃で減圧濃縮させ、得た粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:0~30%酢酸エチル/石油エーテル)により分離して精製し、化合物D1-3を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.38-7.32(m,5H),7.08-7.03(m,2H),6.94-6.91(m,1H),4.98(s,2H),3.90(s,3H),3.84(s,3H),1.39(s,9H)。
【0062】
ステップ3:化合物D1-4の製造
ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)トリフルオロメタンスルホナート(249.20mg)及び(+)-1,2-ビス[(2R,5R)-2,5-ジエチルホスフォラノ]ベンゼン(210.40mg)をメタノール(20mL)に溶解し、混合液を窒素ガスの保護下、15分間撹拌し、アルゴンガスの雰囲気下、化合物D1-3(200g)のメタノール(1L)溶液に加え、アルゴンガスを用いて3回置換し、水素ガスを用いて3回置換し、反応液を水素ガス(50psi)雰囲気、及び20~25℃の条件で18時間撹拌した。有機溶剤を減圧除去し、得た粗製物を別のバッチと合併し、シリカゲルでろ過して、化合物D1-4を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.54-7.46(m,2H),7.41-7.35(m,3H),7.03-7.00(m,1H),6.90-6.86(m,1H),6.76-6.74(m,1H),5.35-5.32(m,1H),5.05(s,2H),4.49-4.44(m,1H),3.90(s,3H),3.62(s,3H),3.06-2.95(m,2H),1.39(s,9H)。
SFC:カラム:Lux Cellulose-2(150mm×4.6mm、3um);移動相:B:イソプロパノール[0.05%エチルアミン];B%:5%~40%5.5min、40%3min、5%1.5min;Rt=3.247min;97.8%ee.
【0063】
ステップ4:化合物D1-5の製造
水酸化リチウム一水和物(0.76kg)を水(16.0L)に溶解し、内温を15℃以下に維持しながら化合物A-4(3.69kg)のテトラヒドロフラン(10.6L)溶液を滴下し、反応液を10~20℃の条件下で18時間撹拌した。飽和クエン酸水溶液でpHを約5に調整し、有機溶剤を減圧除去し、得た粗製物を酢酸エチル16.0Lに加えて、分液し、有機相を10%のクエン酸水溶液(8L)で洗浄し、10%の塩化ナトリウム水溶液で3回洗浄し(毎回6.0L)、無水硫酸ナトリウム1.0kgで乾燥させてろ過し、有機溶剤を減圧除去し、化合物D1-5を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.49-7.33(m,5H),7.03-7.00(m,1H),6.90-6.86(m,1H),6.76-6.74(m,1H),5.47-5.45(m,1H),5.11(s,2H),4.49-4.44(m,1H),3.90(s,3H),3.06-2.95(m,2H),1.39(s,9H)。
【0064】
ステップ5:化合物D1-6の製造
酢酸エチル(4.0L)を10L三口フラスコに加え、ドライアイス/エタノールで冷却し、塩化水素ガス(900.0g)を導入して、さらに酢酸エチル1Lを加えて希釈し、4M塩化水素酢酸エチル溶液として使用に備えた。化合物A-5(1.5kg)を酢酸エチル(10.0L)に溶解して、内温を10℃以下に維持しながら4Mの塩化水素酢酸エチル溶液を加え、反応液を5~15℃の条件下で2時間撹拌した。イソプロピルエーテル6.0Lを加えて、反応液を5~10℃の条件下で16時間撹拌し続けた。ろ過し、ろ過ケーキをイソプロピルエーテルで2回洗浄し(毎回1.2L)、化合物D1-6を得た。
1H NMR(400MHz,CD3OD):δ7.49-7.44(m,2H),7.37-7.33(m,3H),7.09-7.04(m,2H),6.83-6.80(m,1H),5.19-5.07(m,2H),4.18-4.14(m,1H),3.93(s,3H),3.33-3.28(m,1H),2.90-2.84(m,1H)。
【0065】
ステップ6:化合物D1の製造
化合物D1-6(2.24kg)を8個のバッチ(302.56g)に等分して遊離し、各バッチを水(4.8L)に加えて、炭酸ナトリウム(53.96g)の水(302.5mL)溶液を滴下し、反応液を0.5時間撹拌し、ろ過したろ過ケーキを合併して、水(6.2L)で1回洗浄した。遊離したろ過ケーキを水(22.0L)に加え、85%のリン酸(850.0mL)及び37%のホルムアルデヒド水溶液(900.0mL)を順次加え、反応液を55~65℃に昇温した条件下で16時間撹拌し続けた。酢酸ナトリウム(988.7g)の水(3.0L)溶液を滴下し、pHを約3に調整してろ過し、ろ過ケーキを水で4回洗浄し(毎回6.0L)、アセトン(12.0L)で1回洗浄し、真空乾燥させて、化合物D1を得た。
1H NMR(400MHz,CD3OD):δ7.49-7.30(m,5H),7.02-6.93(m,2H),5.04(s,2H),4.30-4.20(m,2H),3.89(s,3H),3.74-3.70(m,1H),3.54-3.48(m,1H),2.92-2.84(m,1H)。
【0066】
実施例1:式(I)化合物の製造
【化10】
【0067】
ステップ1:化合物I-1の製造
化合物(-)-C1(155.00mg、454.00μmol)及び化合物S-A1(90.00mg、408.60μmol)をジクロロメタン(5.00mL)に溶解し、HATU(259.00mg、681.00μmol)及びジイソプロピルエチルアミン(118.00mg、912.54μmol、159.46μL)を順次加え、反応液を20~25℃で16時間撹拌し続けた。反応液を水15mLに注入して、分液し、水相をジクロロメタンで3回抽出し(20mL×3)、合併した有機相を飽和食塩水30mLで1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空乾燥させて粗品を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:0-50%石油エーテル/酢酸エチル)により分離して精製し、化合物I-1を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.50-7.20(m,10H),6.84(m,1H),6.66(d,J=8.0Hz,0.5H),6.43(d,J=12.0Hz,0.5H),5.50-5.48(m,0.5H),5.32(d,J=8.0Hz,1H),5.07-4.76(m,3H),4.60(d,J=16.0Hz,0.5H),4.51-4.45(m,1H),4.18-4.07(m,2H),3.84(d,J=12Hz,3H),3.66-3.61(m,0.5H),3.55-3.40(m,1H),3.17-3.11(m,0.5H),2.99-2.93(m,0.5H),2.74-2.68(m,0.5H),1.90-1.70(m,5H),1.60-1.57(m,3H),1.29-1.17(m,3H).MS m/z=544.4[M+H]+.
SFC:カラム:ChiralPak AD-3(150mm×4.6mm、3μm);移動相:A:CO2、B:イソプロパノール[0.05%ジエチルアミン];B%:5%~40%5.5min、40%3min、5%1.5min;Rt=5.034min;86.3%de.
【0068】
ステップ2:化合物Iの製造
化合物I-1(163.00mg、299.83μmol)をテトラヒドロフラン(3.00mL)に溶解し、水酸化リチウム(72.00mg、3.01mmol)の水(1.50mL)溶液を加え、反応液を15~20℃で48時間撹拌し続けた。反応液に1Mの塩酸水溶液を加えてpH<4に調整し、酢酸エチルで抽出し(15mL×3)、合併した有機相を飽和食塩水30mLで1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、有機溶剤を減圧除去し、得た粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:0-20%ジクロロメタン/メタノール)により分離して精製し、得た化合物を再度キラルカラムにより分離し、化合物Iを得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6):δ7.53-7.16(m,10H),7.00-6.80(m,1.5H),6.68(d,J=8.0Hz,0.5H),5.36(d,J=12.0Hz,1H),5.01-4.66(m,3H),4.41(d,J=24.0Hz,0.5 H),4.30(d,J=24Hz,0.5H),4.13-3.95(m,1H),3.79(s,3H),2.84-2.79(m,1H),2.68-2.64(m,1H),2.39-2.27(m,1H),1.80-1.38(m,8H).MS m/z:516.3[M+1]+.
SFC:カラム:Chiralpak AD-3(100mm×4.6mm、3μm);移動相:B:イソプロパノール[0.05%ジエチルアミン];B%:5%~40%4.5min、40%2.5min、5%1min;Rt=4.198min;100.0%de.
【0069】
実施例2.式(I)化合物の結晶形Aの製造
【化11】
【0070】
ステップ1:化合物1-1及び1-2の製造
n-ヘプタン(8.0L)を50Lの反応釜に加え、撹拌を開始し、出発原料1-0(1.0kg)、ブロモシクロペンタン(3.4kg)、硫酸マグネシウム(1.0kg)、酸化銀(2.0kg)を反応釜に順次加え、反応液を20~30℃で約19時間撹拌し、硫酸マグネシウム(0.3kg)及び酸化銀(0.7kg)を補充して、反応液を20~30℃で撹拌しながら約46時間反応させ続けた。反応液をシリカゲル(100~200メッシュ、2.0kg)に通し、卓上式吸引濾過漏斗で減圧吸引濾過し、ろ過ケーキを12.0Lジクロロメタンで3回に分けて洗浄し、毎回ジクロロメタン4.0Lを加えた。ろ液をロータリーエバポレータに移し、外温35~40℃で減圧濃縮させ、化合物1-1と1-2の混合物を得て、この混合物をさらに精製せずに次のステップの反応に用いた。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.49-7.43(m,2H),7.40-7.29(m,3H),4.95(s,1H),4.04-3.96(m,1H),3.72(s,3H),1.81-1.69(m,6H),1.58-1.46(m,2H)。
【0071】
ステップ2:化合物1-3の製造
テトラヒドロフラン(5.3L)を50L反応釜に加え、撹拌を開始し、化合物1-1と1-2の混合物(1.3kg)を加え、水酸化リチウム一水和物(0.3kg)の水(2.7L)溶液を加え、反応液を20~30℃で4時間撹拌し続けた。反応液にn-ヘプタン(10.5L)を加え、10分間撹拌して、分液し、水相を2M塩化水素水溶液でpH3~4に調整し、ジクロロメタン16.0Lで2回抽出し、毎回8.0Lとし、合併した有機相を無水硫酸ナトリウム(1.0kg)で乾燥させ、ろ過して、ろ液を外温35~40℃で減圧濃縮させ、化合物1-3を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.41-7.29(m,5H),4.88(s,1H),4.00-3.94(m,1H),1.74-1.57(m,6H),1.52-1.43(m,2H)。
【0072】
ステップ3:化合物1-4の製造
ジクロロメタン(12.0L)を50L反応釜に加え、化合物1-3(1.2kg)を加えて、撹拌を開始し、N,N-ジメチルホルムアミド(12.0g)を加えて、1.5時間内で塩化オクサリル(1.04kg)を滴下し、反応液を20~30℃で1時間撹拌した。反応液を外温35~40℃で減圧濃縮させ、得た粗品を使用に備えた。ジクロロメタン(8.0L)を50L反応釜に加え、窒素ガスを用いて2回置換し、撹拌を開始し、ピラゾール(0.4kg)及びN-メチルモルホリン(0.7kg)を順次加え、0~10℃に降温し、窒素ガスを用いて1回置換し、上記粗品をジクロロメタン(4.0L)に溶解して溶液を調製し、反応釜に緩やかに滴下し、滴下終了後、窒素ガスを用いて1回置換し、反応液を20~30℃に昇温し、約16時間撹拌し続けた。反応液を順次、1M硫酸水溶液10.0Lで2回洗浄し(毎回5.0L)、飽和重炭酸ナトリウム水溶液11.0Lで2回洗浄し(毎回5.5L)、水7.0Lで1回洗浄し、飽和塩化ナトリウム溶液8.0Lで1回洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウム(0.5kg)で乾燥させてろ過し、ろ液を外温35~40℃で減圧濃縮させて、粗品を得た。粗品をn-ヘキサン7.2Lに分散させ、反応液を65~75℃に昇温して2時間撹拌し、15~25℃に降温して16時間撹拌し続けた。ろ過し、ろ過ケーキをn-ヘキサンで2回洗浄し(毎回600.0mL)、ろ過ケーキを外温20~30℃で5時間減圧乾燥させ、化合物1-4を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ8.24(d,J=2.8Hz,1H),7.73(s,1H),7.59(d,J=6.8Hz,2H),7.41-7.27(m,3H),6.43(dd,J=1.5,2.8Hz,1H),6.36(s,1H),4.21-3.98(m,1H),1.87-1.67(m,6H),1.57-1.43(m,2H)。
【0073】
ステップ4:式(I)化合物の結晶形Aの製造
N,N-ジメチルホルムアミド(12.0L)を50L反応釜に加え、撹拌を開始し、化合物D-1(1220.3g)及びテトラメチルグアニジン(493.8g)を順次加え、反応液を15~25℃で1時間撹拌し、化合物1-4(1211.6g)を反応釜に加え、反応液を15~25℃で17時間撹拌し続けた。反応液を水12.0Lに投入し、2M塩酸水溶液でpHを3に調整し、酢酸エチル24.0Lで2回抽出し(毎回12.0L)、合併した有機相を水12.0Lで3回洗浄し(毎回4.0L)、飽和塩化ナトリウム水溶液(3.0L)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウム(500.0g)で乾燥させてろ過し、ろ液を35~40℃の条件下で減圧濃縮させて、粗品を得た。アセトン(4.0L)、水(8.0L)、及び粗品を50L反応釜に順次加え、反応液を35~45℃で20時間撹拌し、ろ過し、ろ過ケーキを水8.0Lで2回洗浄し(毎回4.0L)、40℃の条件下で真空乾燥箱によりろ過ケーキを21時間乾燥させ、式(I)化合物の結晶形Aを得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6):δ12.68(brs,1H),7.48-7.30(m,10H),6.95-6.70(m,2H),5.38-5.21(m,1.5H),4.96-4.69(m,3.5H),4.42-4.32(m,1H),4.10-3.95(m,1H),3.80(s,3H),3.39-3.36(m,0.5H),3.24-3.19(m,0.5H),2.88-2.70(m,0.5H),2.48-2.42(m,0.5H),1.73-1.48(m,8H)。LCMS(ESI)m/z:516.0[M+1]+
【0074】
実施例3:式(I)化合物の結晶形Bの製造
式(I)化合物の結晶形A約50mgを適量のメタノールに加えた。サンプル液を磁気撹拌機(40℃)にて2日間撹拌して遠心分離し、沈殿を得て、室温で溶液から溶剤を揮発させて結晶化させた。その後、真空乾燥箱に入れて室温で一晩乾燥させ、式(I)化合物の結晶形Bを得た。
【0075】
式(I)化合物の結晶形A約50mgを適量のエタノールに加えた。サンプル液を磁気撹拌機(40℃)にて2日間撹拌して遠心分離し、沈殿を得て、室温で溶液から溶剤を揮発させて結晶化させた。その後、真空乾燥箱に入れて室温で一晩乾燥させ、式(I)化合物の結晶形Bを得た。
【0076】
式(I)化合物の結晶形A約50mgを適量のアセトニトリルに加えた。サンプル液を磁気撹拌機(40℃)にて2日間撹拌して遠心分離し、沈殿を得て、室温で溶液から溶剤を揮発させて結晶化させた。その後、真空乾燥箱に入れて室温で一晩乾燥させ、式(I)化合物の結晶形Bを得た。
【0077】
式(I)化合物の結晶形A約50mgを適量の混合溶剤としてのアセトン:水(3:2)に加えた。サンプル液を磁気撹拌機(40℃)にて2日間撹拌して遠心分離し、沈殿を得て、室温で溶液から溶剤を揮発させて結晶化させた。その後、真空乾燥箱に入れて室温で一晩乾燥させ、式(I)化合物の結晶形Bを得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6):δ12.68(brs,1H),7.48-7.30(m,10H),6.95-6.70(m,2H),5.38-5.21(m,1.5H),4.96-4.69(m,3.5H),4.42-4.32(m,1H),4.10-3.95(m,1H),3.80(s,3H),3.39-3.36(m,0.5H),3.24-3.19(m,0.5H),2.88-2.70(m,0.5H),2.48-2.42(m,0.5H),1.73-1.48(m,8H)。
LCMS(ESI)m/z:516.0[M+1]+
【0078】
実施例4:式(I)化合物の結晶形Bの吸湿性の研究
実験材料:
SMS DVS Advantage動的蒸気収着装置
実験方法:
式(I)化合物の結晶形B 10~15mgをDVSサンプルトレイに入れてテストした。
実験結果:
式(I)化合物の結晶形BのDVSパターンを図に示し、△W=0.05327%であった。
実験結論:
式(I)化合物の結晶形Bは、25℃、80%RHで、吸湿による重量増加が0.05327%であり、実質的には吸湿性無しであった。
【0079】
実施例5:式(I)化合物の結晶形Bの固体安定性試験
『原薬及び製剤安定性試験の指導原則』(中国薬局方2015版四部通則9001)に準じて、高温(60℃、開放)、高湿(室温/相対湿度92.5%、開放)及び光照射(総照度1.2×106Lux・hr/近紫外線200w・hr/m2、開放)条件での式(I)化合物の結晶形Bの安定性を調べた。
【0080】
影響要素及び加速試験条件に従って、化合物の結晶形B約5mgを正確に秤量したものをそれぞれの条件に対して2つ準備し、それぞれを40mLガラスサンプル瓶の底部に入れて、薄い層とした。高温(60℃)、高湿(92.5%湿度、室温)、高温高湿(40℃/75%湿度、60℃/75%湿度)、及び光照射が安定的である条件にそれぞれ放置した。アルミホイルに孔を開けて開放条件とし、サンプルが環境における空気と十分に接触できるようにし、強い光照射の条件下で放置したサンプルをスクリューキャップで密封した。高温(60℃)、及び高湿(92.5%湿度、室温)の条件下で放置したサンプルについて5日目、10日目にサンプリングして検出し(XRPD及び純度)、高温高湿(40℃/75%湿度、60℃/75%湿度)条件下で放置したサンプルについて10日目、1ヵ月目、2ヵ月目、3ヵ月目にサンプリングして検出し(XRPD及び純度)、光照射条件下で放置したサンプルについて総照度が1.2×106Lux・hrに達するときにサンプリングして検出し、検出結果を0日目の初期検出結果と比較し、試験結果を下記表3に示した。
【0081】
【表3】
【0082】
結論:式(I)化合物の結晶形Bは、影響要素である高温、高湿、強い光照射条件、及び加速条件のいずれでも、良好な結晶形及び化学安定性を有した。
【0083】
実施例6:式(I)化合物のhAT2受容体結合実験
試薬:
溶液及び緩衝液
緩衝液
50mM Tris
100mM NaCl
5mM MgCl2
0.1%BSA
プロテアーゼ阻害剤混合物、エチレンジアミン四酢酸不含-1錠(Roche#11873580001)(50mLの場合、1錠追加)
pH 7.4
【0084】
実験方法及びステップ:
1.化合物の調製
リガンドPD123319及びテスト化合物を参照して、DMSOを用いて750μMの母液を調製し、化合物ごとに8個の濃度勾配(最高濃度750uM、3倍希釈)に調製し、10ul/ウェルで384ウェルプレートのマザープレートに加えた。
SPA beadsを緩衝液で25mg/mlの母液とし、
同位体[125I]-Sar1-Ile8-Angiotensin IIに純水を加えて50uCi/mlの母液を調製した。
2.膜の製造
HEK-293細胞のhAT2を過剰発現させた細胞膜を緩衝液で2.5mg/mlとした。
3.具体的な操作
ECHOを用いてマザープレートから化合物200nlをテスト用384プレートの各ウェルに吸い取った。ZPEに等体積のDMSOを加えた。(テスト化合物の反応中の濃度について250倍希釈した)。
10μg/μlの磁気ビーズ、0.05μg/μlのAT2膜を含有する溶液を50ml調製し、シェーカーにて均一に混合した(100rpm、30min)。テストプレートには、最終的に1.25μg/ウェルのhAT2膜、250μg/ウェルの磁気ビーズが含まれている。
Multidrop Combiピペットを用いて、1ウェルあたり25μlで3.2の膜混合液を化合物のテストプレートに加えた。
50uCi/mlの同位体[125I]-Sar1-Ile8-Angiotensin II母液を用いて緩衝液で0.2nMの溶液とし、Multidrop Combiピペットを用いて0.2nMの125Iを、体積で1ウェルあたり25μlで化合物テストプレートに加えた。125I同位体の最終濃度を0.1nMとした。
製造されたテストプレートをシェーカーに置き、200rpmで、室温下一晩放置した。
遠心分離機を用いて1200rpmでテストプレートを1min遠心分離した。
遠心分離後のテストプレートについてMicrobetaにより読み取った。
実験結果は表4に示される。
【0085】
【表4】
【0086】
結論:結果から明らかなように、式(I)化合物は、EMA-401に比べて、良好なインビトロ活性を有した。
【0087】
実施例6:式(I)化合物の動力学的溶解度の測定
測定対象化合物をDMSOに溶解して、10mmol/Lの原液を調製した。ピペット(Eppendorf Research社)を用いて溶出媒体980μLを2mLのスクリューキャップ付きガラス管形瓶に加えた。各試験化合物の原液20μL及びQCサンプルをpH 7.4の動力学的検出溶液に相当する緩衝溶液に加えた。試験化合物及びDMSO溶液のそれぞれの最終濃度は200μM及び2%であった。薬瓶にキャップを付けた。最大濃度の理論値は200μMであった。室温下、1分間あたり880回転の速度でこの混合物を24時間回転して振とうさせた。バイアルを1分間あたり13000回転で30分間遠心分離した。デジタルピペットを用いて上澄み液200μLを96ウェルプレートに加えた。高速液体クロマトグラフィーのスペクトルにより測定された試験化合物の溶解度、実験結果を表5に示した。
【0088】
【表5】
【0089】
結論:結果から明らかなように、式(I)化合物は、良好な溶解度を有した(pH=7.4)。
【0090】
実施例7:式(I)化合物のヒト肝ミクロソームCYP阻害実験
研究項目として、各アイソザイムの特異的プローブ基質を用いて、ヒト肝ミクロソームチトクロームP450アイソザイム(CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、及びCYP3A4)に対する測定対象化合物の阻害性を評価した。
【0091】
混合ヒト肝ミクロソーム(pooled HLM、n≧50)は、Corning Inc.(Steuben、New York、USA)または他のその他の資格のあるサプライヤーから購入され、使用までに-60℃以下の冷蔵庫に保存した。
希釈済みの一連の濃度の測定対象化合物の作動液を、ヒト肝ミクロソーム、プローブ基質、及び循環系の補因子を含有するインキュベート系に加え、メタノールの含有量を最終的なインキュベート系の約1%(v/v)とした。測定対象化合物を含有せず溶剤を含有する対照を酵素活性対照(100%)とした。サンプル中の分析物の濃度は、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC/MS/MS)方法によって測定する。サンプル(空白溶剤、陽性対照阻害剤または測定対象化合物)濃度の平均値を用いて計算した。SigmaPlot(V.11)を用いて測定対象化合物の平均百分率で示される活性を用いて、濃度について非線形回帰分析を行った。3パラメータまたは4パラメータ逆対数方程式を用いてIC50値を計算した。実験結果を表6に示した。
【0092】
【表6】
【0093】
結論:式(I)化合物は、5つのCYPアイソザイムに対して阻害作用がない、または阻害作用がすべて低く、このことから、人体内で薬物-薬物相互作用が発生する可能性が低いことを示している。
【0094】
実施例8:式(I)化合物のCACO-2細胞での双方向透過性の研究
測定対象化合物のCaco-2細胞での双方向透過性を測定し、そして測定対象化合物が外部へ排出されて輸送されるか否かをテストした。
実験方法:
ストック液の調製
化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)または他の適切な溶剤に溶解し、適切な濃度のストック液を調製した。
適切な内部標準(internal standard、IS)をアセトニトリル(acetonitrile、ACN)または他の適切な有機溶剤に溶解して停止液とし、具体的な情報は研究レポートに記載されている。
ナドロール(nadolol)、メトプロロール(metoprolol)、ジゴキシン(digoxin)、3-(ポタシオスルホオキシ)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-17-オン(estrone3-sulfate potassium、E3S)、及びGF120918は、本研究においてそれぞれ低張性対照化合物、高張性対照化合物、P-糖タンパク質(P-gp)基質、乳癌耐性タンパク質(BCRP)基質、及び排出トランスポーター阻害剤とした。これらの化合物のストック液はDMSOを用いて調製され、≦-30℃に保存し、6ヵ月内で使用する。
投与液及び受容液の調製
本研究では、10mM HEPES(2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-エタンスルホン酸)を含有するHBSS(Hanks Balanced Salt Solution)を輸送緩衝液(pH7.40±0.05)とした。投与液及び受容液の調製方法を下記表7に示した。
【0095】
【表7】
【0096】
細胞培養
37±1℃、5%CO2、及び飽和湿度の培養条件で、Caco-2細胞をMEM培地(Minimum Essential Media)で培養した。次に、1×105細胞/cm2の接種密度で細胞をCorning Transwell-96ウェルプレートに接種し、次に、細胞を二酸化炭素インキュベータに入れて21~28日間培養した後、輸送実験に用い、この間、4~5日間おきに培地を1回交換した。
【0097】
輸送実験
化合物の投与濃度を2、10、及び100μMとし、10μM GF120918含有または不含の条件下で双方向に(A-B及びB-A方向)投与し、投与濃度ごとに3つの平行試験を行った。Digoxin及びE3Sは、テスト濃度をそれぞれ10、及び5μMとし、10μM GF120918含有または不含の条件で双方向に投与し、nadolol及びmetoprololは、いずれのテスト濃度も2μMであり、10μM GF120918不含の条件下で一方向(A-B方向)に投与し、3つの対照化合物についても3つの平行試験を行った。
【0098】
投与液、受容液、及び輸送緩衝液を、37℃で30分間プレインキュベートした。細胞層を輸送緩衝液で2回濡らして洗浄した。投与液と受容液をそれぞれ対応する細胞プレートのウェル(各頂端及び底端のウェルのそれぞれに75及び250μLを注入した)に加えた。注入後、細胞プレートを37±1℃、5%CO2、及び飽和湿度のインキュベータに入れて120分間インキュベートした。
サンプル収集情報を下記表8に示した。
【0099】
【表8】
【0100】
すべての化合物をボルテックス振とうした後、3220×g、20℃で20分間遠心分離し、適切な体積の上澄み液をサンプル分析プレートに移し、化合物はプレートをシールした直後に分析しない場合、2~8℃に保存した。LC/MS/MS方法によって分析を行い、化合物の具体的な処理方法については研究レポートに記載した。
【0101】
細胞膜の完全性テスト
Caco-2細胞の完全性はルシファーイエロー検出実験(Lucifer Yellow Rejection Assay)を用いてテストした。細胞プレートごとに6個の細胞ウェルをランダムに選択し、それぞれ100μMルシファーイエローを加え、ルシファーイエロー検出実験を輸送実験と同時に行った。120分間インキュベート後、ルシファーイエローサンプルを取り、425/528nm(励起/放射)スペクトルでサンプル中のルシファーイエローの相対蛍光強度(the relative fluorescence unit、RFU)を検出した。
【0102】
サンプル分析
サンプル中の測定対象化合物、対照化合物nadolol、metoprolol、digoxin及びE3Sの濃度はすべて液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC/MS/MS)方法によって測定した。分析物及び内部標準の保留時間、クロマトグラムの収集、及びクロマトグラムの積分は、ソフトウェアAnalyst(AB Sciex、Framingham、Massachusetts、USA)で処理され、実験結果は表9に示された。
【0103】
【表9】
【0104】
結論:テスト結果から明らかなように、EMA-401に比べて、式(I)化合物の透過性がある程度改善し、それは化合物の吸収に有利であった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7