(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】ステントデリバリー装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/95 20130101AFI20220615BHJP
A61F 2/966 20130101ALI20220615BHJP
A61F 2/848 20130101ALI20220615BHJP
【FI】
A61F2/95
A61F2/966
A61F2/848
(21)【出願番号】P 2021508451
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2019012673
(87)【国際公開番号】W WO2020194483
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】桐野 侑子
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6264624(US,B1)
【文献】特開2009-297502(JP,A)
【文献】特開2009-136676(JP,A)
【文献】国際公開第2014/181817(WO,A1)
【文献】特開2015-73547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/95
A61F 2/966
A61F 2/848
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤを挿通可能なガイドカテーテルと、
先端部と、基端部と、前記先端部と前記基端部との間に延びたルーメンと、を有し、前記ルーメンに前記ガイドカテーテルが挿通されたプッシャーカテーテルと、
前記ガイドカテーテルが挿通されることにより前記プッシャーカテーテルの先端よりも遠位側に配置されるステントと、
ループ形状を有し、前記ステントと前記プッシャーカテーテルとを解除可能に連結する紐状の連結部材と、
を備え、
前記プッシャーカテーテルは、前記先端部の外周面に前記ルーメンと連通する第一連通孔を有し、
前記ステントは、
先端開口と、
基端開口と、
前記先端開口と前記基端開口とを連通するステントルーメンと、
前記基端開口よりも先端側の外周面に設けられ、前記ステントルーメンと連通する第二連通孔と、を有し、
前記ステントは、前記基端開口を前記プッシャーカテーテル側に位置させて配置され、
前記連結部材は、前記ステントと前記プッシャーカテーテルとを連結した状態において、
前記第一連通孔を通り前記プッシャーカテーテルに支持された第一端部と、
前記第一端部に連なり、前記第二連通孔を通って前記ステントと前記プッシャーカテーテルとの間まで延びる中間部と、
前記中間部に連なり、前記ガイドカテーテルのうち前記ステントの基端と前記プッシャーカテーテルの前記先端部との間に位置する部位の周囲に延びる第二端部と、を有する、
ステントデリバリー装置。
【請求項2】
前記中間部は、
前記第一端部に連なり、前記ステントの前記基端開口から前記ステントルーメン内に進入し、前記第二連通孔まで延びる第一中間部と、
前記第一中間部および前記第二端部に連なり、前記第二連通孔から前記ステントの外部を通って前記ステントと前記プッシャーカテーテルとの間まで延びる第二中間部と、を有する、
請求項1に記載のステントデリバリー装置。
【請求項3】
前記第二端部は、前記ステントの基端と前記プッシャーカテーテルの前記先端部との間の位置において前記ループ形状内を通過している、請求項1に記載のステントデリバリー装置。
【請求項4】
前記ガイドカテーテルが前記ステントの基端と前記プッシャーカテーテルの前記先端部との間で前記ループ形状内を通過することにより、前記連結部材が前記ステントと前記プッシャーカテーテルとを連結した状態が保持される、
請求項1に記載のステントデリバリー装置。
【請求項5】
ガイドワイヤを挿通可能なガイドカテーテルと、
先端部と、基端部と、前記先端部と前記基端部との間に延びたルーメンと、を有し、前記ルーメンに前記ガイドカテーテルが挿通されたプッシャーカテーテルと、
前記ガイドカテーテルが挿通されることにより前記プッシャーカテーテルの先端よりも遠位側に配置されるステントと、
ループ形状を有し、前記ステントと前記プッシャーカテーテルとを解除可能に連結する紐状の連結部材と、
を備え、
前記ステントおよび前記プッシャーカテーテルの一方は連通孔を有し、
前記ステントは、
先端開口と、
基端開口と、
前記先端開口と前記基端開口とを連通するステントルーメンと、を有し、
前記ステントは、前記基端開口を前記プッシャーカテーテル側に位置させて配置され、
前記連結部材は、前記ステントと前記プッシャーカテーテルとを連結した状態において、
前記ステントおよび前記プッシャーカテーテルの他方に支持された第一端部と、
前記第一端部に連なり、前記連通孔を通って少なくとも前記ステントと前記プッシャーカテーテルとの間まで延びる中間部と、
前記中間部に連なり、前記ガイドカテーテルのうち前記ステントの基端よりも手元側に位置する部位の周囲に延びる第二端部と、を有する、
ステントデリバリー装置。
【請求項6】
前記連通孔が前記ステントに形成されている、請求項5に記載のステントデリバリー装置。
【請求項7】
前記連通孔が前記プッシャーカテーテルに形成されている、請求項5に記載のステントデリバリー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントデリバリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
胆管狭窄に対する処置として、胆管にステントを留置することが知られている。通常ステントは、ステントデリバリー装置に装着されて目的部位に導入される。
【0003】
特許文献1に開示されているステントデリバリー装置は、ステントと、ガイドカテーテルと、プッシャーカテーテルとを備える。ステントは、紐により一時的にプッシャーカテーテルと連結されているため、プッシャーカテーテルを引き戻すと、ステントも追従して引き戻せるため、留置位置の調節ができる。ガイドカテーテルを後退させると紐による連結が解除され、ステントをリリースできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のステントデリバリー装置では、紐が形成するループをガイドカテーテルが通ることによりステントとプッシャーカテーテルとが一時的に連結される。このループはステント内に位置するため、ループがステントとガイドカテーテルとの隙間を減少させる。その結果、ステント内でガイドカテーテルが移動する際の妨げになり、ステントリリースに要する力量が大きくなる可能性がある。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、ステントを引き戻しできる構造を維持しつつ、ステントリリースに要する力量が大きくなりにくいステントデリバリー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガイドワイヤを挿通可能なガイドカテーテルと、先端部、基端部、および先端部と基端部との間に延びたルーメンを有し、ルーメンにガイドカテーテルが挿通されたプッシャーカテーテルと、ガイドカテーテルが挿通されることによりプッシャーカテーテルの先端よりも遠位側に配置されるステントと、ループ形状を有し、ステントとプッシャーカテーテルとを解除可能に連結する紐状の連結部材とを備えるステントデリバリー装置である。
プッシャーカテーテルは、先端部の外周面にルーメンと連通する第一連通孔を有する。
ステントは、先端開口と、基端開口と、先端開口と基端開口とを連通するステントルーメンと、基端開口よりも先端側の外周面に設けられ、ステントルーメンと連通する第二連通孔と、を有する。ステントは、基端開口をプッシャーカテーテル側に位置させて配置される。
連結部材は、ステントとプッシャーカテーテルとを連結した状態において、第一連通孔を通りプッシャーカテーテルに支持された第一端部と、第一端部に連なり、第二連通孔を通ってステントとプッシャーカテーテルとの間まで延びる中間部と、中間部に連なり、ガイドカテーテルのうちステントの基端とプッシャーカテーテルの先端部との間に位置する部位の周囲に延びる第二端部とを有する。
【0008】
本発明の他のステントデリバリー装置は、ガイドワイヤを挿通可能なガイドカテーテルと、先端部、基端部、および先端部と基端部との間に延びたルーメンを有し、ルーメンにガイドカテーテルが挿通されたプッシャーカテーテルと、ガイドカテーテルが挿通されることによりプッシャーカテーテルの先端よりも遠位側に配置されるステントと、ループ形状を有し、ステントとプッシャーカテーテルとを解除可能に連結する紐状の連結部材とを備える。
ステントおよびプッシャーカテーテルの一方は連通孔を有する。ステントは、先端開口と、基端開口と、先端開口と基端開口とを連通するステントルーメンと、を有する。ステントは、基端開口を前記プッシャーカテーテル側に位置させて配置される。
連結部材は、ステントとプッシャーカテーテルとを連結した状態において、ステントおよびプッシャーカテーテルの他方に支持された第一端部と、第一端部に連なり、連通孔を通って少なくともステントとプッシャーカテーテルとの間まで延びる中間部と、中間部に連なり、ガイドカテーテルのうちステントの基端よりも手元側に位置する部位の周囲に延びる第二端部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ステントを引き戻しできる構造を維持しつつ、ステントリリースに要する力量が大きくなりにくいステントデリバリー装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るステントデリバリー装置の全体図である。
【
図2】同ステントデリバリー装置に係るステントの側面図である。
【
図4】同ステントデリバリー装置の模式断面図である。
【
図5】同ステントとデリバリーカテーテルとの連結部位を示す拡大模式図である。
【
図8】本発明の第二実施形態に係るステントデリバリー装置における、ステントとデリバリーカテーテルとの連結部位を示す拡大模式図である。
【
図10】本発明の第三実施形態に係るステントデリバリー装置における、ステントとデリバリーカテーテルとの連結部位を示す拡大模式図である。
【
図12】同ステントデリバリー装置の変形例における、ステントとデリバリーカテーテルとの連結部位を示す拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第一実施形態について、
図1から
図7を参照して説明する。
図1は、本実施形態のステントデリバリー装置1の全体図である。ステントデリバリー装置は、ステント10と、デリバリーカテーテル100とを備える。
【0012】
図2は、ステント10の側面図である。本実施形態のステント10は胆管に留置されるステントであり、筒状の本体11と、本体11の両端部に取り付けられたフラップ50とを備える。本体11は、先端開口12aを有する先端12と基端開口13aを有する基端13とを有し、長手軸X1に沿って延びている。先端開口12aと基端開口13aとの間には、ステントルーメン11aが長手軸X1に沿って延びている。先端12は、胆管に留置される際に肝臓側に配置される端部である。基端13は、胆管に留置される際に十二指腸乳頭側に配置される端部である。
【0013】
図3は、ステント10の内部構造を示す図である。本体11は、樹脂製の内層20と、内層に20に巻き付けられた金属製の線材30と、内層20および線材30を覆う樹脂製の外層40とを有する。線材は、本体11の内周面と外周面との間に埋め込まれている。
内層20は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(パーフルオロアルコキシルアルカン)などの、表面が滑らかであって生体適合性を有する樹脂材料で形成されたチューブである。
【0014】
線材30は、内層20の外周面上に螺線状に巻回されており、全体してコイル状に形成されている。線材30の材料は、例えばタングステン鋼やステンレス鋼などのX線不透過性を有する材料である。
【0015】
外層40は、ウレタンやポリエチレンなどの弾性、柔軟性および生体適合性を有する樹脂材料で形成されている。外層40は、長手軸X1方向において隣り合う線材30間の隙間にも設けられている。
ステント10の一方の端部の外周面には、ステントルーメン11aに連通する孔(第二連通孔)15が形成されている。孔15は、ステント10とデリバリーカテーテル100との一時的連結(後述)に使用される。
【0016】
図4は、ステントデリバリー装置1の構造を示す模式断面図である。デリバリーカテーテル100は、ガイドカテーテル80と、プッシャーカテーテル90とを備えている。
【0017】
ガイドカテーテル80は、ガイドワイヤを挿通可能なチューブ(ガイドチューブ)81と、チューブ81を移動させるための牽引部85とを有する。
チューブ81は、樹脂製の筒状部材であり、ガイドワイヤを挿通可能な内腔を有する。チューブ81は、ステントデリバリー装置1の使用時にチューブ81が生体組織に接触したときに変形可能な程度に柔軟である。チューブ81は、復元力を有する弾性部材であり、外力がかかっていない状態では復元力により直線状となる。チューブ81は、ステントデリバリー装置1の先端側に位置する細径部82と、ステントデリバリー装置1の基端側に位置する太径部83とを有する。細径部82の外周面と太径部83とが接続される部位はテーパー状の中間部84となっており、細径部82と太径部83とが段差なく接続されている。その結果、チューブ81の外径は、細径部82から太径部83に向かって徐々に増大している。
細径部82および太径部83の外径は、ステント10の内径よりも小さい。したがって、チューブ81をステント10に挿入できる。
【0018】
チューブ81の材料は、フッ素樹脂や熱可塑性樹脂等からなり、以下のようなものを例示できる。チューブ81において所望の機械的特性が満足されていれば、材料に特に制限はない。
・ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂、およびそれらの共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)等の汎用樹脂。
・ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PFA、FEP、ETFE等)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のエンジニアリング樹脂。
・その他、各種エラストマー樹脂(ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリ塩化ビニル系等)、シリコーン含有樹脂、ポリウレタン系樹脂等。
【0019】
牽引部85は、パイプ86と、ワイヤ87と、操作部89とを有する。パイプ86は、軸線方向両端が開口した金属製の筒状部材である。パイプ86は、チューブ81と同軸状をなしてチューブ81内に取り付けられている。パイプ86は、太径部83の基端部分に配されている。
パイプ86の材料としては、ステンレス鋼等の金属や、PEEK等のエンジニアリング樹脂を例示できるが、所望の機械的特性を満足すれば、他の材料が使用されてもよい。
【0020】
ワイヤ87の先端部はパイプ86に接合され、基端部が操作部89と接続されている。
ワイヤ87の材料としては、パイプ86と同様の物を例示できる。所望の機械的特性を満足すれば、他の材料が使用されてもよい。
【0021】
プッシャーカテーテル90は、シングルルーメンチューブ91と、マルチルーメンチューブ92と、把持部93とを有する。
シングルルーメンチューブ91は、チューブ81の太径部83を挿入できる内径を有する筒状部材である。シングルルーメンチューブ91は、可撓性を有している。シングルルーメンチューブ91の先端面は、シングルルーメンチューブ91の中心線に直交する平面となっている。シングルルーメンチューブ91の先端面は、ステント10の基端に当接してステント10を支えることができる。シングルルーメンチューブ91の肉厚の大きさは、ステント10の本体11の内半径と外半径との差(すなわち、ステント10の肉厚)以上である。シングルルーメンチューブ91は、チューブ81の太径部83をシングルルーメンチューブ91の内部に完全に収容できる長さを有する。
【0022】
マルチルーメンチューブ92は、シングルルーメンチューブ91の基端部に固定されている。マルチルーメンチューブ92は、ガイドワイヤを挿通するための連通路92aとワイヤルーメン92bとを有する。ワイヤルーメン92bには、ガイドカテーテル80のワイヤ87が挿通されている。
連通路92aは、マルチルーメンチューブ92の先端に開口しているともに、マルチルーメンチューブ92の先端よりも基端側においてマルチルーメンチューブ92の側面に開口している。
ワイヤルーメン92bは、マルチルーメンチューブ92の先端及び基端に開口している。
【0023】
把持部93は、マルチルーメンチューブ92の基端部に連結されている。把持部93は、マルチルーメンチューブ22よりも太径の略円柱状をなしている。把持部93の外周面には、滑り止め等のための凹凸等が形成されていてもよい。
把持部93には、ワイヤルーメン92bと連通する貫通孔93aが形成されている。貫通孔93aは、マルチルーメンチューブ92の中心線の基端側への延長線上に位置している。貫通孔93aはマルチルーメンチューブ92の中心線の延長線上になくてもよい。
ガイドカテーテル80のワイヤ87は、貫通孔93aに挿通されている。これにより、貫通孔93aからワイヤ87及び操作部89が延出している。
【0024】
シングルルーメンチューブ91とマルチルーメンチューブ92として、配合される材料の種類が互いに同じで、配合比率のみが異なるものを好適に使用できる。この場合、両者を溶着して接合した際に接合強度を保持しつつ、所望の曲げ剛性に調整しやすい。
シングルルーメンチューブ91およびマルチルーメンチューブ92の樹脂材料としては、チューブ81と同様の樹脂を使用できる。例えば、相対的に柔らかいエラストマー樹脂と、相対的に硬い熱可塑性樹脂とを配合し、マルチルーメンチューブ92における熱可塑性樹脂の配合比率をシングルルーメンチューブ91よりも高くすると、シングルルーメンチューブ91の曲げ剛性をマルチルーメンチューブ92の曲げ剛性よりも小さくして、デリバリーカテーテル100の挿入性を高めることができる。
【0025】
ステント10は、プッシャーカテーテル90から突出されたチューブ81に通される。ステント10は、孔15が設けられた端部がプッシャーカテーテル90側に位置する状態でデリバリーカテーテル100に取り付けられる。
【0026】
図5は、ステント10とデリバリーカテーテル100との連結部位を示す拡大模式図である。
図6は、
図5のI-I線における断面図である。シングルルーメンチューブ91の先端部には、内部空間(ルーメン)に連通する孔(第一連通孔)91aが設けられている。孔91aには、糸(連結部材)95が通されている。糸95は、孔91aを通った状態で両端部が結ばれてループ形状になっているため、シングルルーメンチューブ91に支持されており孔91aから外れない。
【0027】
ループ形状となった糸95は、本体11の基端開口13aからステントルーメン内に進入し、ステント10の内面とチューブ81の外面との間を通って孔15からステント10外に出ている。孔15から出た糸95は、ステント10の基端とプッシャーカテーテル90の先端部との間まで延び、チューブ81の周囲に配置される。すなわち、チューブ81は、ステント10とプッシャーカテーテル90との間において、糸95のループ形状内を通っている。
【0028】
図5および
図6に示す状態においては、チューブ81が糸95のループから抜けない限り糸95は貫通孔15から抜けない。その結果、ステント10とデリバリーカテーテル100とが一時的に連結される。
ステント10とデリバリーカテーテル100とが一時的に連結された状態において、糸95が形成するループ形状は、
図5および
図6に示すように、孔91aに係止されてプッシャーカテーテル90に支持された第一端部95aと、第一端部95aからステント10内を通って孔15まで延びる第一中間部95bと、孔15からステント10外を通ってステント10とプッシャーカテーテル90との間まで延びる第二中間部95cと、ステント10とプッシャーカテーテル90との間でチューブ81の周囲に配置される第二端部95dとを有する。第二端部95dは、チューブ81の周方向に延びている。
【0029】
ステント10とデリバリーカテーテル100とが一時的に連結された状態において、操作部89を押し込んでガイドカテーテル80を最大限に前進させると、プッシャーカテーテル90に保持されたステント10からチューブ81の中間部84が露出する。
糸95の材料としては、ナイロンを例示できる。
【0030】
デリバリーカテーテル100の各部の寸法例を以下に示すが、本実施形態の構成はこの例に限定されない。
・ガイドカテーテル80の全長:2100mm~2300mm
・チューブ81の長さ:350mm~450mm
・ワイヤ87の長さ:1750mm~1850mm
・プッシャーカテーテル90の全長:1700mm~1800mm
・シングルルーメンチューブ91の全長:480mm~520mm
・マルチルーメンチューブ92の全長:1220mm~1280mm
【0031】
上記のように構成されたステントデリバリー装置1の使用時の動作について、ステント10が胆管に留置される場合の例を使って説明する。
術者は、側視型内視鏡のチャンネルにガイドワイヤを通し、内視鏡で観察しながらガイドワイヤを胆管内に挿入する。続いて術者は、X線透視下でガイドワイヤを操作して胆管内の狭窄部位を突破させ、ガイドワイヤの先端部を狭窄部位よりも肝臓側に移動させる。
【0032】
術者は、内視鏡の鉗子口から突出したガイドワイヤの基端部を、ステント10が装着されたステントデリバリー装置1のチューブ81の先端開口に挿入する。ガイドワイヤは、チューブ81の基端開口からシングルルーメンチューブ91のルーメンに進入する。さらに術者は、ガイドワイヤの基端部をガイドワイヤルーメン92aに進入させ、ガイドワイヤルーメン92aの基端側開口から突出させる。
【0033】
術者は、ガイドワイヤが通されたステントデリバリー装置1を内視鏡のチャンネルに挿入し、チャンネルの先端からステントデリバリー装置1の先端部を突出させる。術者は内視鏡の起上台を操作して、ステントデリバリー装置1の先端を十二指腸乳頭に向け、ガイドワイヤに沿わせながらステントデリバリー装置1を胆管内に進入させる。ステント10が糸95によりプッシャーカテーテル90に位置決めされた状態において、チューブ81の太径部83の先端部は、ステント10の先端から突出している。
図4に示すように、太径部83の外径とステント10の内径との差は小さいため、ステント10とチューブ81との間に大きな隙間がなく、狭窄部位を突破させるための操作が容易である。
【0034】
ステント10の先端部が狭窄部位を突破して先端側のフラップ50が狭窄部位よりも肝臓側に移動したら、術者はステントデリバリー装置1を進退させて、ステント10の留置位置を決定する。ステントデリバリー装置1においては、上述したようにステント10とデリバリーカテーテル100とが一時的に連結されているため、ステントデリバリー装置1を後退させることにより、ステント10を引き戻すことができる。したがって、ステント10の位置調節を簡便に行える。
【0035】
ステント10の留置位置を決定したら、術者は、プッシャーカテーテル90を保持しながら、操作部89を手元側に引く。すると、ワイヤ87およびチューブ81が後退するが、ステント10はプッシャーカテーテル90と接触しているため後退しない。チューブ81が後退してステント10および糸95のループ(第二端部95d)から抜けると、ステント10とデリバリーカテーテル100との連結が解除され、ステント10が胆管内の所望の位置に留置される。
ステント10の留置後は、
図7に示すように、フラップ50が狭窄部位Stよりも肝臓側および胆管外の十二指腸乳頭Dp付近に配置されることにより、留置位置が好適に保持される。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のステントデリバリー装置1においては、ステント10とデリバリーカテーテル100とが一時的に連結されているため、引き戻し操作によりステント10の位置調節を簡便に行うことができ、所望の位置にステントを留置できる。
【0037】
さらに、ステント10とデリバリーカテーテル100とが一時的に連結された状態において、チューブ81の周方向に延びる第二端部95dがステント10とプッシャーカテーテル90との間に位置する。一方で、ステント10内においては、糸95の一部分がステント10とチューブ81との隙間を長手軸に沿って延びているだけである。そのため、ステント10に対してチューブ81を後退させるときに糸95が大きな摩擦抵抗を発生させにくい。
以上により、本実施形態のステントデリバリー装置1は、ステント10の内径寸法とチューブ81の外径寸法との差が小さい場合でも、ステントリリースに必要な操作力量が増大しにくい構造を実現している。
【0038】
本発明の第二実施形態について、
図8および
図9を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したもの共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0039】
図8は、本実施形態のステントデリバリー装置1Aにおけるステント10とデリバリーカテーテル100との連結部位を示す拡大模式図である。
図9は、
図8のII-II線における断面図である。
図8および
図9に示すように、糸95の第二中間部95cは、第一中間部95bの二本の糸の間を延びている。すなわち、第二端部95dは、糸95のループ形状内を通過しており、第二中間部95cと第二端部95dとが接続される境界部96も、第一中間部95bの二本の糸の間に位置している。
デリバリーカテーテル100の長手軸に直交する方向からの側視において、境界部96は、ステント10の基端とプッシャーカテーテル90の先端部との間に位置し、第一中間部95bの二本の糸の間を横切っている。
【0040】
本実施形態のステントデリバリー装置1Aも、第一実施形態のステントデリバリー装置1と同様の効果を奏する。
加えて、境界部96が第一中間部95bの二本の糸の間に位置しており、第二中間部95cが第一中間部95bにより挟み込まれている。その結果、ステント10の引き戻し操作の際に、第一中間部95bが長手方向に牽引されて生じるテンションにより、ステント10とデリバリーカテーテル100との連結時において第二中間部95cが弛みにくい。
さらに、第二中間部95cが弛みにくいため、第二端部の一部がステント内に進入して摩擦抵抗を増大させる等の事態も防止できる。
【0041】
本発明の第三実施形態について、
図10から
図13を参照して説明する。
図10は、本実施形態のステントデリバリー装置1Bにおけるステント10とデリバリーカテーテル100との連結部位を示す拡大模式図である。
図11は、
図10のIII-III線における断面図であり、糸95の配置態様をわかりやすくするため、糸を少したるませた状態で示している。
【0042】
プッシャーカテーテル90のシングルルーメンチューブ91は、孔91aよりも基端側に、ルーメンに連通する孔91bを有する。糸95の第二中間部95cは、ステント10の孔15から孔91bまで延びている。糸95は孔91bからシングルルーメンチューブ91の内部に進入し、チューブ81の周囲に配置されている。すなわち、本実施形態の第二端部95dは、プッシャーカテーテル90内に位置している。
【0043】
本実施形態のステントデリバリー装置1Bにおいて、プッシャーカテーテル90の内径はステント10の内径よりも大きいため、プッシャーカテーテル90内に第二端部95dが配置された場合、第二端部95dがステント10内に配置された場合よりも摩擦抵抗を生じにくい。したがって、本実施形態のステントデリバリー装置1Bも、第一実施形態のステントデリバリー装置1と同様の効果を奏する。
【0044】
図12は、ステントデリバリー装置1Bの変形例におけるステント10とデリバリーカテーテル100との連結部位を示す拡大模式図である。
図13は、
図12のIV-IV線における断面図であり、
図11と同様に糸を少したるませた状態で示している。
この変形例では、糸95の第一端部95aが孔91bに位置している。これに伴い、第一中間部95bは孔91bからステント10の孔15まで延びている。第二中間部95cは、孔15から孔91aまで延びている。糸95は孔91aからシングルルーメンチューブ91の内部に進入し、チューブ81の周囲に配置されている。この変形例においても、第二端部95dは、プッシャーカテーテル90内に位置しているため、ステントデリバリー装置1Bと同様の効果を奏する。
【0045】
このように、本発明は、チューブ81の周方向に延びる第二端部95dをステント10内に配置しない点に特徴がある。
【0046】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成要素の組み合わせを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。
【0047】
・第一実施形態および第二実施形態においては、第一連通孔と第二連通孔との位置関係が逆転してもよい。すなわち、第二連通孔がプッシャーカテーテルに設けられ、第一連通孔がステントに設けられてもよい。
この場合、連結部材の第一端部は、ステントに配置されて体内に留置されるが、連結部材は十二指腸内に位置するため、連結部材を引っ張ることで、ステントを胆管から抜去することができる。
【0048】
・連結部材をループ状にする方法は端部を結ぶことに限られず、端部を溶着や接着により接合する等の他の方法であってもよい。
・第一連通孔に通された第一端部がプッシャーカテーテルやステントの外面や内面に固定されてもよい。さらに、連結部材の第一端部は、必ずしも第一連通孔に通されなくてもよい。例えば、プッシャーカテーテルやステントの外面や内面に直接固定されてもよい。この場合、第一連通孔が設けられなくてもよいことは当然である。
【0049】
・ステントのフラップは、上述した例のように別部材を本体に取り付けたものに限られない。例えば、本体に切込みを入れて本体の一部を反らせることでフラップを形成してもよい。この場合、切込みをステントルーメンに到達させると、フラップ形成に伴い連通孔が形成されるため、この連通孔を第一連通孔または第二連通孔として使用してもよい。
【0050】
・第一連通孔がステントに設けられる場合は、ループ状の連結部材がプッシャーカテーテルの外側を通って第二連通孔からプッシャーカテーテル内に進入する構成をとってもよい。この場合、糸は第一中間部および第二中間部を有さないが、第二端部はプッシャーカテーテル内に位置するため、ステントリリースに必要な操作力量が増大しにくいという効果を奏する。
【0051】
・本発明におけるステントは、上述した構造のものに限られない。すなわち、本発明におけるステントは、チューブ81が抜けることにより少なくとも一方の端部がループ状に丸まる、いわゆるピッグテール型ステントであってもよく、フラップ50を備えることは必須ではない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、ステントデリバリー装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1、1A、1B ステントデリバリー装置
10 ステント
11本体
11a ステントルーメン
12a 先端開口
13a 基端開口
15 孔(第二連通孔)
80 ガイドカテーテル
81 チューブ
90 プッシャーカテーテル
91 シングルルーメンチューブ
91a 孔(第一連通孔)
95 糸(連結部材)
95a 第一端部
95b 第一中間部
95c 第二中間部
95d 第二端部