(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】多孔質シリコーン材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/28 20060101AFI20220615BHJP
【FI】
C08J9/28 102
C08J9/28 CFH
(21)【出願番号】P 2021514489
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(86)【国際出願番号】 FR2019051134
(87)【国際公開番号】W WO2019220065
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-01-19
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507208484
【氏名又は名称】エルケム シリコンズ フランス ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ
(73)【特許権者】
【識別番号】520453962
【氏名又は名称】アンスティチュー・ナショナル・デ・シアンス・アプリケース・ドゥ・リヨン
(73)【特許権者】
【識別番号】596096180
【氏名又は名称】ユニベルシテ・クロード・ベルナール・リヨン・プルミエ
(73)【特許権者】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】520452596
【氏名又は名称】ユニヴェルスィテ・ジャン・モネ・サンテティエンヌ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ガナショー,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】フルーリ,エチエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ラリベ,ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】マリオット,ダーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】マルシャル,フレデリック
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-155946(JP,A)
【文献】国際公開第2003/104312(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00-9/42
B29C44/00-44/60; 67/20-67/20
C08G77/00-77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質シリコーン材料の製造方法であって、
1)
A)重縮合又は重付加による架橋性のシリコーンベースA、
B)10~50
℃の範囲の曇り点を有する、少なくとも1種類の非イオン性シリコーン界面活性剤B
であって、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーである、前記非イオン性シリコーン界面活性剤B、
C)場合により、少なくとも1種類の触媒C、及び
D)水
を含む、水中シリコーンの直接エマルションEを実施する工程;
2)前記エマルションEを60℃以上の温度に加熱して、多孔質シリコーン材料を得る工程;並びに
3)場合により
、前記多孔質シリコーン材料を乾燥させる工程;
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記非イオン性シリコーン界面活性剤Bが、エチレンオキシド鎖のシーケンス、及び場合により、プロピレンオキシド鎖のシーケンスを有する、シロキシル単位
を含む
、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非イオン性シリコーン界面活性剤Bが、式(B-1)
[R
1
aZ
bSiO
(4-a-b))/2]
n (B-1)
[式中、
- R
1基は、同一か又は異なり
、1~30個の炭素原子を有する炭化水素基を表し;
- nは、2以上の整数であり;
- a及びbは、独立して0、1、2、又は3であり、a+b=0、1、2、又は3であり;
- 各Z基は、-R
2-(OC
pH
2p)
q(OC
rH
2r)
s-OR
3基
(式中、
・R
2は、2~20個の炭素原子を有する2価の炭化水素基、又は結合であり、
・R
3は、H又は上で規定されるR
1基であり、
・p及びrは、独立して、1~6の間の整数であり、
・q及びsは、独立して、0又はl<q+s<400であるような整数である)である]
のシロキシル単位を含むオルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーから選択され、
オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーBの各分子が少なくとも1つのZ基を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記エマルションEが、エマルションに含有されるシリコーンベースの全質量に対して、0.1~70質量%の
間の界面活性剤Bを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記エマルションEが、エマルションの全質量に対して、10~80質量%の
間の水を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記シリコーンベースAが重付加による架橋性であり、前記シリコーンベースAが、
・分子当たり少なくとも2つのアルケニル又はアルキニル基を含み、線状又は分岐であり、2~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA1、及び
・分子当たり少なくとも2つのシリルヒドリド官能基Si-Hを含む、少なくとも1つのオルガノヒドロゲンポリシロキサンA2
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シリコーンベースAが重縮合による架橋性であり、前記シリコーンベースAが、
・少なくとも2つのOH官能基又は少なくとも2つの加水分解可能な官能基を含む、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA3、及び
・場合により、少なくとも1種類の架橋剤A4
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記エマルションEが、少なくとも1種類の増粘剤Fも含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程1)が、支持体を水中シリコーンの直接エマルションEで被覆する工程である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
A)重縮合又は重付加による架橋性のシリコーンベースA、
B)10~50
℃の範囲の曇り点を有する、少なくとも1種類の非イオン性シリコーン界面活性剤B
であって、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーである、前記非イオン性シリコーン界面活性剤B、
C)場合により、少なくとも1種類の触媒C、及び
D)水
を含む、水中シリコーンの直接エマルションE。
【請求項11】
多孔質シリコーン材料であって、10~50
℃の範囲の曇り点を有する少なくとも1種類の非イオン性シリコーン界面活性剤Bを含
み、
前記非イオン性シリコーン界面活性剤Bがオルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーである、前記多孔質シリコーン材料。
【請求項12】
請求項10に記載のエマルションEを60℃以上の温度に加熱することによって得られる、多孔質シリコーン材料。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の多孔質シリコーン材料で被覆された、支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質シリコーン材料の製造方法に関する。特に、本発明は、水中シリコーンの直接エマルションを使用する、多孔質シリコーン材料の製造方法に関する。本発明はまた、多孔質シリコーン材料、及び水中シリコーンの直接エマルションにも関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質シリコーン材料は、多くの技術分野、特に断熱材の分野において使用される。実際、これらの材料は、良好な機械的特性及び良好な熱安定性を有し、断熱材、機械的遮蔽材、又は遮音材として使用することができる。多孔質シリコーン材料を製造するための種々の技術がある。これらの技術の中には、シリコーン相及び水相を含むエマルションを利用する方法がある。
【0003】
特許出願EP1724308は、エラストマーシリコーンフォームを製造するためのエマルションを記述している。このエマルションは、(A)分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を含むジオルガノポリシロキサン、少なくとも2つのSi-H結合を含むオルガノポリシロキサン、及び白金触媒を含有し、付加硬化が可能なシリコーンベース、(B)水溶性ポリマーを含む水溶液、並びに(C)乳化剤を含む。
【0004】
ほとんどの場合、多孔質シリコーン材料を製造するために使用されるエマルションは、シリコーン相中の水(又は他の発泡剤)のエマルションを意味する逆エマルションである。多孔質シリコーン材料の形成は、シリコーン相の架橋、次に発泡剤の蒸発によって行なわれる。逆エマルションは、多孔質シリコーン材料を容易に製造することを可能にするので、興味深い。しかしながら、逆エマルションの使用はいくつかの問題を引き起こし、主な問題の1つは、エマルションの安定性である。逆エマルションはあまり安定ではないので、長期間貯蔵することができず、そのため、製造後すぐに使用しなければならない。エマルションの製造場所がエマルションを使用する場所から遠方の場合、これは問題である。そのうえ逆エマルションの反応性は、有害な、早期架橋現象を誘発する。逆エマルションは非常に粘性でもあり、このエマルションで支持体を被覆したい場合、問題を引き起こす恐れがある。最終的に、得られた多孔質シリコーン材料の気孔(porosity)又は密度を制御することは、必ずしも容易ではない。これらのパラメータは、材料の特性に影響を及ぼすので重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この文脈において、本発明の1つの目的は、これらの欠点の少なくとも1つを克服する、多孔質シリコーン材料の製造方法を提供することである。
本発明の別の目的は、実施することが簡単な、多孔質シリコーン材料の製造方法を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、水中シリコーンの直接エマルションから、多孔質シリコーン材料を製造する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、得られる材料の気孔及び/又は密度を制御することを可能にする、多孔質シリコーン材料の製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、良好な品質である多孔質シリコーン材料の製造方法を提供することである。
本発明の別の目的は、多孔質シリコーン材料の製造のための安定なエマルションを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、多孔質シリコーン材料の製造のための直接エマルションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は、とりわけ、
1)
A)重付加又は重縮合による架橋性のシリコーンベースA、
B)10~50℃、好ましくは15~45℃の範囲(comprised between 10 and 50℃, preferably between 15 and 45℃)の曇り点を有する、少なくとも1種類の非イオン性シリコーン界面活性剤B、
C)場合により、少なくとも1種類の触媒C、及び
D)水
を含む、水中シリコーンの直接エマルションEを実施するステップと;
2)エマルションEを60℃以上の温度に加熱して、多孔質シリコーン材料を得るステップと;
3)場合により、好ましくは加熱によって、多孔質シリコーン材料を乾燥させるステップと
を含む、多孔質シリコーン材料の製造方法によって達成された。
【0010】
10~50℃の範囲の曇り点を有する非イオン性シリコーン界面活性剤Bの使用は、直接エマルションを利用して、多孔質シリコーン材料を製造することを可能にする。直接エマルションは逆エマルションより安定しているので、貯蔵及び早期架橋の課題が回避される。加えて、直接エマルションは操作が容易であり、それらの粘度をより容易に制御することができる。
【0011】
そのうえ、この方法は実施することが簡単である。エマルションEが加熱されない限り、シリコーンベースは架橋しない。加熱するステップ2)は、エマルションの不安定化、又は逆転(inversion)さえも可能にする。実際、非イオン性シリコーン界面活性剤Bの親水性は温度とともに減少し、次に界面活性剤Bはシリコーン相に対する親和性を獲得し、もはや界面活性剤として作用しない。次に、シリコーンベースAが架橋して多孔質シリコーン材料を形成し、材料の細孔(pore)に水を捕捉する。次に、得られた材料を乾燥させて、水を除去することができる。
【0012】
この方法によって得られる多孔質シリコーン材料は、良好な機械的特性を有する。
本発明は、
A)重付加又は重縮合による架橋性のシリコーンベースA、
B)10~50℃、好ましくは15~45℃の範囲の曇り点を有する、少なくとも1種類の非イオン性シリコーン界面活性剤B、
C)場合により、少なくとも1種類の触媒C、及び
D)水
を含む、水中シリコーンの直接エマルションEにも関係する。
【0013】
本発明は、さらに、このエマルションEを60℃以上の温度に加熱することによって得られる、多孔質シリコーン材料に関する。
本発明は、10~50℃、好ましくは15~45℃の範囲の曇り点を有する、少なくとも1種類の非イオン性シリコーン界面活性剤Bを含む、多孔質シリコーン材料にも関する。
【0014】
最終的に、本発明の目的は、多孔質シリコーン材料で被覆された支持体である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
「水中シリコーンの直接エマルションEを実施する(implementing a direct emulsion E of silicone in water)」とは、水中シリコーンの直接エマルションEの使用を意味すると理解される。このエマルションEは、当業者に公知の方法によって、例えば文献WO94/09058に記述されている方法によって、調製され得る。有利には、エマルションEは、様々な成分を、例えばホモジナイザーを用いる撹拌によって混合することによって、調製される。
【0016】
以下:
1.重付加による架橋性のシリコーンベースAを界面活性剤Bと混合するステップと、
2.水Dを添加するステップと、
3.触媒Cを添加するステップと
のようにエマルションEを調製することが可能である。
【0017】
触媒Cは、水中であらかじめ乳化されてもよい。
【0018】
「多孔質シリコーン材料」とは、1又は複数種類のガスで満たされた空洞(又は細孔)を含有する、シリコーン系材料を意味すると理解される。多孔質シリコーン材料としては、シリコーンフォーム及びエラストマーシリコーンフォームが挙げられる。多孔質シリコーン材料は、対応する非多孔質シリコーン材料より低い密度を有する。
【0019】
「エマルション」とは、少なくとも1種類の液体が、少なくとも1種類の他の液体中に分散する小滴の形態で存在する、少なくとも2種類の不混和性液体の混合物を意味すると理解される。水中シリコーンの直接エマルションの場合、小滴の形態で水中に分散するのはシリコーン相である。直接エマルションは、水中油型エマルションという名称によっても知られている。逆シリコーンエマルションの場合、シリコーン相中に小滴の形態で分散するのは水である。逆エマルションは、油中水型エマルションという名称によっても知られている。
【0020】
「非イオン性シリコーン界面活性剤」とは、少なくとも1つのポリシロキサン鎖を含む非イオン性界面活性剤を意味すると理解される。
「非イオン性界面活性剤」とは、正味電荷を含まない界面活性剤を意味すると理解される。
【0021】
「ポリシロキサン」とは、いくつかの≡Si-O-Si≡繰り返し単位を有する化合物を意味すると理解される。
「アルケニル」とは、少なくとも1つのオレフィン性二重結合、より好ましくは単一の二重結合を有する、不飽和で、線状又は分岐の、置換又は非置換の炭化水素鎖を意味すると理解される。好ましくは「アルケニル」基は、2~8個、より好ましくは2~6個の炭素原子を有する。この炭化水素鎖は、O、N、Sのような少なくとも1種類のヘテロ原子を場合により含む。「アルケニル」基の好ましい例は、ビニル基、アリル基、及びホモアリル基であり、ビニル基が特に好ましい。
【0022】
「アルキニル」とは、少なくとも1つの三重結合、より好ましくは単一の三重結合を有する、不飽和で、線状又は分岐の、置換又は非置換の炭化水素鎖を意味すると理解される。好ましくは「アルキニル」基は、2~8個、より好ましくは2~6個の炭素原子を有する。この炭化水素鎖は、O、N、Sのような少なくとも1種類のヘテロ原子を場合により含む。
【0023】
「アルキル」とは、1~40個の炭素原子、好ましくは1~20個の炭素原子、より好ましくは1~10個の炭素原子を含む、線状又は分岐炭化水素鎖を意味すると理解される。アルキル基は、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、tert-ブチル、イソブチル、n-ブチル、n-ペンチル、イソアミル、及び1,1-ジメチルプロピルからなる群から選択され得る。
【0024】
本発明による「シクロアルキル」とは、3~20個の炭素原子、好ましくは5~8個の炭素原子を含有する、単環式又は多環式、好ましくは単環式又は二環式の飽和炭化水素基を意味すると理解される。シクロアルキル基が多環式の場合、複数の環は、共有結合によって及び/若しくはスピロ原子によって互いに結合され得る、かつ/又は互いに融合され得る。シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンタン、及びノルボルナンからなる群から選択され得る。
【0025】
本発明による「アリール」とは、5~18個の炭素原子を含有し、単環式又は多環式の芳香族炭化水素基を意味すると理解される。アリール基は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、及びフェナントリルからなる群から選択され得る。
【0026】
本発明による「ハロゲン原子」とは、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素からなる群から選択される原子を意味すると理解される。
本発明による「アルコキシ」とは、酸素原子に結合した、上で定義されたアルキル基を意味すると理解される。アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシからなる群から選択され得る。
【0027】
多孔質シリコーン材料の製造方法
本発明は、第1に、
1)
A)重付加又は重縮合による架橋性のシリコーンベースA、
B)10~50℃、好ましくは15~45℃の範囲の曇り点を有する、少なくとも1種類の非イオン性シリコーン界面活性剤B、
C)場合により、少なくとも1種類の触媒C、及び
D)水
を含む、水中シリコーンの直接エマルションEを実施するステップと;
2)エマルションEを60℃以上の温度に加熱して、多孔質シリコーン材料を得るステップと;
3)場合により、好ましくは加熱によって、多孔質シリコーン材料を乾燥させるステップと
を含む、多孔質シリコーン材料の製造方法に関する。
【0028】
水中シリコーンの直接エマルションE(Direct emulsion E of silicone in water)
本発明による方法は、
A)重付加又は重縮合による架橋性のシリコーンベースA、
B)10~50℃、好ましくは15~45℃の範囲の曇り点を有する、少なくとも1種類の非イオン性シリコーン界面活性剤B、
C)場合により、少なくとも1種類の触媒C、及び
D)水
を含む、水中シリコーンの直接エマルションEを利用する。
【0029】
シリコーンベースA
本発明による方法は、重付加又は重縮合による架橋性のシリコーンベースAを含む、水中シリコーンの直接エマルションEを利用する。
【0030】
第1の実施形態によれば、シリコーンベースAは重付加による架橋性である。重付加による架橋性のシリコーンベースは、当業者に周知であり、これらは、ヒドロシリル化反応によって架橋され得るシリコーンベースである。
【0031】
この第1の実施形態では、シリコーンベースAは、
・分子当たり少なくとも2つのアルケニル又はアルキニル基を含み、線状又は分岐であり、2~6個の炭素原子を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA1、及び
・分子当たり少なくとも2つのシリルヒドリド官能基Si-Hを含む、少なくとも1つのオルガノヒドロゲンポリシロキサン(organohydrogenpolysiloxane)A2
を含む。
【0032】
有利には、オルガノポリシロキサンA1は、式(I):
ZaUbSiO(4-(a+b))/2 (I)
(式中、
・Z基は、同一か又は異なり、線状又は分岐の、2~6個の炭素原子を有するアルケニル基又はアルキニル基を表し、
・U基は、同一か又は異なり、1~12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
・a=1又は2であり、b=0、1、又は2であり、a+b=1、2、又は3である)
の繰り返し単位を含み、
場合により、式(II):
UcSiO(4-c)/2 (II)
(式中、Uは上記と同じ意味を有し、c=0、1、2、又は3である)の他の繰り返し単位を含む、オルガノポリシロキサン化合物から選択される。
【0033】
好ましくは、Z基は、同一か又は異なり、線状又は分岐の、2~6個の炭素原子を有するアルケニル基を表し、ビニル基が特に好ましい。
上記式(I)及び式(II)において、いくつかのU基が存在する場合、それらは互いに同一又は互いから異なり得ると理解される。式(I)において、記号aは、好ましくは1に等しくてもよい。
【0034】
式(I)及び式(II)において、Uは、1~8個の炭素原子を有し、塩素又はフッ素のような少なくとも1種類のハロゲン原子によって場合により置換されたアルキル基、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び6~12個の炭素原子を有するアリール基からなる群から選択される、1価の基を表してもよい。Uは、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル、及びフェニルからなる群から、有利には選択され得る。
【0035】
前記オルガノポリシロキサンA1は、25℃において約10~100,000mPa・秒、一般には25℃において約10~70,000mPa・秒の動粘度の油、又は25℃において約1,000,000mPa・秒以上の動粘度のゴムであり得る。
【0036】
この記述で論議されている全ての粘度は、「ニュートンの」と呼ばれる25℃においての動粘度の値に相当し、測定される粘度が速度勾配から独立している十分に低い剪断速度勾配で、それ自体公知の方式で、ブルックフィールド粘度計を用いて測定される動粘度を意味する。
【0037】
これらのオルガノポリシロキサンA1は、線状、分岐、又は環状構造を有してもよい。それらの重合度は、好ましくは2~5000である。
線状ポリマーが関係する場合、それらは、シロキシル単位:Z2SiO2/2、ZUSiO2/2及びU2SiO2/2からなる群から選択される「D」シロキシル単位、並びにシロキシル単位:ZU2SiO1/2、Z2USiO1/2及びZ3SiO1/2からなる群から選択される「M」シロキシル単位から本質的に構成される。Z及びUの記号は、上述の通りである。
【0038】
末端「M」単位の例としては、トリメチルシロキシ、ジメチルフェニルシロキシ、ジメチルビニルシロキシ、又はジメチルヘキセニルシロキシ基が挙げられる。
「D」単位の例としては、ジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシ、メチルビニルシロキシ、メチルブテニルシロキシ、メチルヘキセニルシロキシ、メチルデセニルシロキシ、又はメチルデカジエニルシロキシ基が挙げられる。
【0039】
本発明による不飽和化合物A1であり得る線状オルガノポリシロキサンの例は、
・ジメチルビニルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン);
・ジメチルビニルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルフェニルシロキサン);
・ジメチルビニルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルビニルシロキサン);及び
・トリメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルビニルシロキサン);並びに
・環状ポリ(メチルビニルシロキサン)
である。
【0040】
本発明による不飽和化合物A1でもあり得る環状オルガノポリシロキサンは、例えば、ジアルキルシロキシ、アルキルアリールシロキシ、アルキルビニルシロキシ、アルキルシロキシタイプであり得る、以下の式:Z2SiO2/2、U2SiO2/2、又はZUSiO2/2の「D」シロキシル単位から構成されるものである。前記環状オルガノポリシロキサンは、25℃において約10~5000mPa・秒の粘度を有する。
【0041】
好ましくは、オルガノポリシロキサン化合物A1は、0.001~30%、好ましくは0.01~10%の範囲のSi-ビニル単位の質量百分率を有する。
不飽和化合物A1の他の例としては、少なくとも1つのビニル基を含むシリコーン樹脂が挙げられる。例えば、それらは、以下のシリコーン樹脂:
・MDViQ(ここで、ビニル基はD単位の中に含まれる);
・MDViTQ(ここで、ビニル基はD単位の中に含まれる);
・MMViQ(ここで、ビニル基はM単位の一部の中に含まれる);
・MMViTQ(ここで、ビニル基はM単位の一部の中に含まれる);
・MMViDDViQ(ここで、ビニル基はM及びD単位の一部の中に含まれる);
・並びにこれらの混合物;
(式中、
・MVi=式:(R)2(ビニル)SiO1/2のシロキシル単位;
・DVi=式:(R)(ビニル)SiO2/2のシロキシル単位;
・T=式:(R)SiO3/2のシロキシル単位;
・Q=式:SiO4/2のシロキシル単位;
・M=式:(R)3SiO1/2のシロキシル単位;
・D=式:(R)2SiO2/2のシロキシル単位
であり、
R官能基は、同一か又は異なり、メチル、エチル、プロピル、及び3,3,3-トリフルオロプロピル基のような1~8個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基、並びにキシリル、トリル、及びフェニルのようなアリール基から選択される一価の炭化水素基である)
からなる群から選択され得る。好ましくは、R官能基はメチルである。
【0042】
当然、変形に応じて、オルガノポリシロキサンA1は、オルガノポリシロキサンA1の定義に対応する、いくつかの油又は樹脂の混合物であり得る。
オルガノヒドロゲンポリシロキサンA2は、有利には、式(III):
HdUeSiO(4-(d+e))/2 (III)
(式中、
・U基は、同一か又は異なり、1~12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
・d=1又は2であり、e=0、1、又は2であり、d+e=1、2、又は3である)の繰り返し単位;
及び、場合により、式(IV):
UfSiO(4-f)/2 (IV)
(式中、Uは上記と同じ意味を有し、f=0、1、2、又は3である)の他の繰り返し単位
を少なくとも1つ含むオルガノポリシロキサンであり得る。
【0043】
上記式(III)及び式(IV)において、いくつかのU基が存在する場合、それらは互いに同一又は互いから異なり得ると理解される。式(III)において、記号dは好ましくは1に等しくてもよい。加えて、式(III)及び式(IV)において、Uは、1~8個の炭素原子を有し、塩素又はフッ素のような少なくとも1種類のハロゲン原子によって場合により置換されたアルキル基、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び6~12個の炭素原子を有するアリール基からなる群から選択される、1価の基を表してもよい。Uは、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル、及びフェニルからなる群から有利には選択され得る。
【0044】
これらのオルガノポリシロキサンA2は、線状、分岐、又は環状構造を有してもよい。重合度は、好ましくは2以上である。一般に、それは5000未満である。
線状ポリマーが関係する場合、それらは、
・以下の式:U2SiO2/2又はUHSiO2/2の単位から選択される「D」シロキシル単位、及び
・以下の式:U3SiO1/2又はU2HSiO1/2の単位から選択される「M」シロキシル単位
から実質的に構成される。
【0045】
線状オルガノポリシロキサンは、25℃において約1~100,000mPa・秒、より一般には25℃において約10~5,000mPa・秒の動粘度の油であり得る。
ケイ素原子に結合した少なくとも1個の水素原子を含む、本発明による化合物A2であり得るオルガノポリシロキサンの例は:
・ヒドロゲノジメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン);
・トリメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルヒドロゲノシロキサン(methylhydrogenosiloxane));
・ヒドロゲノジメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルヒドロゲノシロキサン);
・トリメチルシリル末端を有するポリ(メチルヒドロゲノシロキサン);及び
・環状ポリ(メチルヒドロゲノシロキサン)
である。
【0046】
環状オルガノポリシロキサンが関係する場合、それらは、ジアルキルシロキシ又はアルキルアリールシロキシタイプであり得る以下の式:U2SiO2/2及びUHSiO2/2の「D」シロキシル単位、又はUHSiO2/2単位のみから構成される。その時、それらは、約1~5000mPa・秒の粘度を有する。
【0047】
化合物A2は、分子当たり、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのシリルヒドリド官能基(Si-H)を含む、オルガノヒドロゲンポリシロキサン化合物である。
以下の化合物:
【0048】
【0049】
(式中、a、b、c、d、及びeは以下に規定される通りである:
・式S1のポリマーにおいては、
・0≦a≦150、好ましくは0≦a≦100、より具体的には0≦a≦20であり、
・1≦b≦90、好ましくは10≦b≦80、より具体的には30≦b≦70であり、
・式S2のポリマーにおいては、0≦c≦15であり、
・式S3のポリマーにおいて、5≦d≦200、好ましくは20≦d≦100、及び2≦e≦90、好ましくは10≦e≦70である)
は、本発明のためにオルガノヒドロゲンポリシロキサン化合物A2として、特に好適である。
【0050】
特に、本発明のために好適なオルガノヒドロゲンポリシロキサン化合物A2は、式S1(式中、a=0)の化合物である。
好ましくは、オルガノヒドロゲンポリシロキサン化合物A2は、0.2~91%の範囲のシリルヒドリド官能基Si-Hの質量百分率を有する。オルガノヒドロゲンポリシロキサン化合物A2は、15%以上、好ましくは30%以上のシリルヒドリド官能基Si-Hの質量百分率を有し得る。例えばシリルヒドリド官能基Si-Hの質量百分率は、15~90%、又は30~85%の範囲である。
【0051】
一実施形態によれば、オルガノヒドロゲンポリシロキサンA2は、分岐構造を有する樹脂である。オルガノヒドロゲンポリシロキサンA2は、以下のシリコーン樹脂:
・M’Q(ここで、ケイ素原子に結合する水素原子はM基によって保持される(carry));
・MM’Q(ここで、ケイ素原子に結合する水素原子は、M単位の一部によって保持される);
・MD’Q(ここで、ケイ素原子に結合する水素原子は、D基によって保持される);
・MDD’Q(ここで、ケイ素原子に結合する水素原子は、D基の一部によって保持される);
・MM’TQ(ここで、水素原子は、M単位の一部の中に含まれる);
・MM’DD’Q(ここで、水素原子は、M及びD単位の一部の中に含まれる);
・及びこれらの混合物
(式中、
・M、D、T及びQは前に規定される通りであり;
・M’=式:R2HSiO1/2のシロキシル単位;
・D’=式:RHSiO2/2のシロキシル単位;であり
R官能基は、同一か又は異なり、メチル、エチル、プロピル、及び3,3,3-トリフルオロプロピル基のような1~8個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基から選択される、一価の炭化水素基である)
からなる群から選択され得る。好ましくは、R官能基はメチルである。
【0052】
好ましくは、オルガノヒドロゲンポリシロキサン樹脂A2は、上述のM’Q又はMD’Q樹脂である。さらにより好ましくは、オルガノヒドロゲンポリシロキサン樹脂A2は、M’Q樹脂である。
【0053】
当然、変形に応じて、オルガノヒドロゲンポリシロキサンA2は、オルガノヒドロゲンポリシロキサンA2の定義に対応する、いくつかの油又は樹脂の混合物であり得る。
有利には、化合物A2のシリルヒドリド官能基Si-Hと、化合物A1のアルケン及びアルキン官能基とのモル比は、0.02~5、好ましくは0.1~4、より好ましくは0.5~3の範囲である。
【0054】
第2の実施形態によれば、シリコーンベースAは重縮合による架橋性である。重縮合による架橋性のシリコーンベースは、当業者に周知である。この第2の実施形態では、シリコーンベースAは、
・少なくとも2つのOH官能基又は少なくとも2つの加水分解可能な官能基を含む、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA3、及び
・場合により、少なくとも1種類の架橋剤A4
を含む。
【0055】
好ましくは、オルガノポリシロキサンA3は、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシ-アルキレン-オキシ、アミノ、アミド、アシルアミノ、アミノキシ、イミノキシ、ケチミノキシ、アシルオキシ、及びエノキシ官能基からなる群から選択される、少なくとも2つの官能基を保持する。
【0056】
有利には、オルガノポリシロキサンA3は、
(i)以下の式(V):
【0057】
【0058】
(式中、
・R1基は、同一か又は異なり、1価のC1~C30炭化水素基を表し、
・Y基は、同一か又は異なり、加水分解可能かつ縮合可能な官能基又はヒドロキシ官能基をそれぞれ表し、好ましくはヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシ-アルキレン-オキシ、アミノ、アミド、アシルアミノ、アミノキシ、イミノキシ、ケチミノキシ、アシルオキシ、及びエノキシ官能基からなる群から選択され、
・gは、0、1、又は2に等しく、hは、1、2、又は3に等しく、合計g+hは、1、2、又は3に等しい)
の少なくとも2つのシロキシル単位、及び
(ii)場合により、以下の式(VI):
【0059】
【0060】
(式中、
・R2基は、同一か又は異なり、1又は複数種類のハロゲン原子によって、又はアミノ、エーテル、エステル、エポキシ、メルカプト、若しくはシアノ官能基によって場合により置換された1価のC1~C30炭化水素基を表し、
・記号iは、0、1、2、又は3に等しい)
の1つ又は複数のシロキシル単位
を含む。
【0061】
アルコキシタイプの加水分解可能かつ縮合可能な官能基Yの例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシ、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、2-メトキシエトキシ、ヘキシロキシ、又はオクチロキシ基のような1~8個の炭素原子を有する基が挙げられる。
【0062】
アルコキシ-アルキレン-オキシタイプの加水分解可能かつ縮合可能な官能基Yの例としては、メトキシ-エチレン-オキシ官能基が挙げられる。
アミノタイプの加水分解可能かつ縮合可能な官能基Yの例としては、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、n-ブチルアミノ、sec-ブチルアミノ、又はシクロヘキシルアミノ官能基が挙げられる。
【0063】
アミドタイプの加水分解可能かつ縮合可能な官能基Yの例としては、N-メチル-アセトアミド官能基が挙げられる。
アシルアミノタイプの加水分解可能かつ縮合可能な官能基Yの例としては、ベンゾイル-アミノ官能基が挙げられる。
【0064】
アミノキシタイプの加水分解可能かつ縮合可能な官能基Yの例としては、ジメチルアミノキシ、ジエチルアミノキシ、ジオクチルアミノキシ、又はジフェニルアミノキシ官能基が挙げられる。
【0065】
イミノキシタイプ、特にケチミノキシタイプの加水分解可能かつ縮合可能な官能基Yの例としては、以下のオキシム:アセトフェノン-オキシム、アセトン-オキシム、ベンゾフェノン-オキシム、メチル-エチル-ケトキシム、ジ-イソプロピルケトキシム、又はメチルイソブチル-ケトキシムに由来する官能基が挙げられる。
【0066】
アシルオキシタイプの加水分解可能かつ縮合可能な官能基Yの例としては、アセトキシ官能基が挙げられる。
エノキシタイプの加水分解可能かつ縮合可能な官能基Yの例としては、2-プロペンオキシ官能基が挙げられる。
【0067】
オルガノポリシロキサンA3の粘度は、一般に、25℃において50mPa・秒~1,000,000mPa・秒の間である。
好ましくは、オルガノポリシロキサンA3は、一般式(VII):
YjR3
3-jSi-O-(SiR3
2-O)p-SiR3
3-jYj (VII)
(式中、
・Y基は、同一か又は異なり、加水分解可能かつ縮合可能な官能基又はヒドロキシ官能基をそれぞれ表し、好ましくはヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシ-アルキレン-オキシ、アミノ、アミド、アシルアミノ、アミノキシ、イミノキシ、ケチミノキシ、アシルオキシ、及びエノキシ官能基からなる群から選択され、
・R3基は、同一か又は異なり、1又は複数種類のハロゲン原子によって、又はアミノ、エーテル、エステル、エポキシ、メルカプト、若しくはシアノ官能基によって場合により置換された、1価のC1~C30炭化水素基を表し、
・記号jは、1、2、又は3に等しく、好ましくは2又は3に等しく、Yがヒドロキシル基である場合j=1であり、
・pは1以上の整数であり、好ましくは、pは1~2000の範囲の整数である)
を有する。
【0068】
式(V)、(VI)及び(VII)において、R1、R2及びR3基は、好ましくは、
・1つ若しくは複数のアリール又はシクロアルキル基によって、1つ若しくは複数のハロゲン原子によって、又はアミノ、エーテル、エステル、エポキシ、メルカプト、シアノ、若しくは(ポリ)グリコール官能基によって場合により置換された、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、デシル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチルを含む基;
・シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、プロピルシクロヘキシル、2,3-ジフルオロ-シクロブチル、3,4-ジフルオロ-5-メチル-シクロヘプチル基のような、5~13個の炭素原子を有するシクロアルキル及びハロゲノシクロアルキル基;
・フェニル、トリル、キシリル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、トリクロロフェニル基のような、6~13個の炭素原子を有する単環式(mononuclear)アリール及び単環式ハロアリール基;又は
・ビニル、アリル、及びブテン-2-イル基のような、2~8個の炭素原子を有するアルケニル基
である。
【0069】
オルガノポリシロキサンA3が、ヒドロキシルタイプのY記号を有する一般式(VII)のオルガノポリシロキサンである特別の場合、j記号は、好ましくは1に等しいであろう。この場合、末端位置(「アルファ-オメガ」位置とも呼ばれる)にシラノール官能基を有するポリ(ジメチルシロキサン)を使用することが好ましい。
【0070】
オルガノポリシロキサンA3は、少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基、式M、D、T、及びQ
(式中、
・シロキシル単位M=(R0)3SiO1/2;
・シロキシル単位D=(R0)2SiO2/2;
・シロキシル単位T=R0SiO3/2;
・シロキシル単位Q=SiO4/2;であり
R0は、1~40個の炭素原子、好ましくは1~20個の炭素原子を有する1価の炭化水素官能基、又はOR’’’基を表し
R’’’=H若しくは1~40個の炭素原子、好ましくは1~20個の炭素原子を有するアルキル基である)
から選択される少なくとも2つの異なるシロキシル単位を含む、縮合可能又は加水分解可能な官能基を有する有機ケイ素樹脂からも選択されてもよく、
この樹脂は、少なくとも1つのT又はQ単位を含むことを条件とする。
【0071】
前記樹脂は、好ましくは樹脂の重量に対して0.1~10重量%の範囲のヒドロキシ又はアルコキシ置換基の重量百分率、好ましくは樹脂の重量に対して0.2~5重量%の範囲のヒドロキシ又はアルコキシ置換基の重量百分率を有する。
【0072】
有機ケイ素樹脂は、一般にケイ素原子当たり約0.001~1.5のOH基及び/又はアルコキシル基を有する。これらの有機ケイ素樹脂は、一般に、式(R19)3SiCl、(R19)2Si(Cl)2、R19Si(Cl)3、又はSi(Cl)4(式中、R19基は、同一か又は異なり、一般に、線状又は分岐C1~C6アルキル基、フェニル基、及び3,3,3-トリフルオロプロピル基から選択される)を有するようなクロロシランの共加水分解及び共縮合によって調製される。
【0073】
アルキルタイプのR19基の例としては、特にメチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、及びn-ヘキシルが挙げられる。
樹脂の例としては、以下のタイプ:T(OH)、DT(OH)、DQ(OH)、DT(OH)、MQ(OH)、MDT(OH)、MDQ(OH)、又はこれらの混合物のシリコーン樹脂が挙げられる。
【0074】
この第2の実施形態では、シリコーンベースは架橋剤A4をさらに含有してもよい。架橋剤は、好ましくは、ケイ素原子に結合した、分子当たり2を超える加水分解可能な基を有する有機ケイ素化合物である。こうした架橋剤は当業者に周知であり、市販されている。
【0075】
架橋剤A4は、好ましくは、各分子が少なくとも3つの加水分解可能かつ縮合可能な官能基Yを含むケイ素系化合物であり、前記架橋剤A4は、以下の式(VIII):
R4
(4-k)SiYk (VIII)
(式中、
・R4基は、同一か又は異なり、1価のC1~C30炭化水素基を表し、
・Y基は、同一か又は異なり、アルコキシ、アルコキシ-アルキレン-オキシ、アミノ、アミド、アシルアミノ、アミノキシ、イミノキシ、ケチミノキシ、アシルオキシ、又はエノキシ官能基からなる群から選択され、好ましくは、Yは、アルコキシ、アシルオキシ、エノキシ、ケチミノキシ又はオキシム官能基であり、
・記号k=2、3、又は4であり、好ましくはk=3又は4である)
を有する。
【0076】
Y記号が加水分解可能かつ縮合可能な官能基である、換言すればヒドロキシル官能基と異なる場合、Y官能基の例は上で言及したものと同一である。
架橋剤A4の他の例としては、アルコキシシラン及び、以下の一般式(IX):
R5
lSi(OR6)(4-l) (IX)
(式中、
・R5基は、同一か又は異なり、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2-エチルヘキシル、オクチルのような1~8個の炭素原子を有するアルキル基、及びデシル基、C3~C6オキシアルキレン基を表し、
・R5基は、同一か又は異なり、飽和又は不飽和の、線状又は分岐の脂肪族炭化水素基、炭素環状の、飽和又は不飽和及び/又は芳香族の、単環式又は多環式の基を表し、
・lは、0、1、又は2に等しい)
のこのシランの部分加水分解の生成物が挙げられる。
【0077】
架橋剤A4の中で、有機基が1~4個の炭素原子を有するアルキル基である、アルコキシシラン、ケチミノキシシラン、アルキルシリケート及びアルキルポリシリケートが特に好ましい。
【0078】
好ましくは、以下の架橋剤A4:
・エチルポリシリケート及びn-プロピルポリシリケート;
・ジアルコキシシラン、例えばジアルキルジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、例えば、アルキルトリアルコキシシラン、及びテトラアルコキシシラン、並びに好ましくはプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、テトライソプロポキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、並びに以下の式のもの:CH2=CHSi(OCH2CH2OCH3)3、[CH3][OCH(CH3)CH2OCH3]Si[OCH3]2、Si(OC2H4OCH3)4及びCH3Si(OC2H4OCH3)3のような、アルコキシシラン、
・以下のアセトキシシラン:テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、プロピルトリアセトキシシラン、ブチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、オクチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、フェニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、及びテトラアセトキシシランのような、アシルオキシシラン、
・メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、ビニルジアセトキシメトキシシラン、ビニルアセトキシジメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、及びメチルアセトキシジエトキシシランのような、アルコキシ官能基及びアセトキシ官能基を含むシラン、
・メチルトリス(メチルエチル-ケトキシモ)シラン、3-シアノプロピルトリメトキシシラン、3-シアノプロピル-トリエトキシシラン、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、テトラキス(メチルエチルケトキシモ)シラン
が単独で又は組合せて使用される。
【0079】
一般に、100重量部のオルガノポリシロキサンA3当たり、0.1~60重量部の架橋剤A4が使用される。好ましくは、100重量部のオルガノポリシロキサンA3当たり、0.5~15重量部が使用される。
【0080】
上記2つの実施形態では、シリコーンベースAは、シリコーン組成物において慣例的である機能性添加剤も含んでもよい。慣例的な機能性添加剤のファミリーとしては、
・フィラー、
・接着促進剤、
・ヒドロシリル化反応阻害剤又は遅延剤、
・シリコーン樹脂、
・顔料、及び
・耐熱性、耐油性、又は耐火性用添加剤、例えば金属酸化物
が挙げられる。
【0081】
場合により提供されるフィラーは、好ましくは鉱物系である。それらは特にケイ酸質であってもよい。ケイ酸質材料は、強化又は半強化フィラーとして作用することができる。強化ケイ酸質フィラーは、コロイダルシリカ、焼成及び沈降シリカ粉末、又はこれらの混合物から選択される。これらの粉末は、一般に0.1μm(マイクロメートル)未満である平均粒径、及び30m2/gを超える、好ましくは30~350m2/gの間のBET比表面積を有する。珪藻土又は粉砕石英のような、半強化ケイ酸質フィラーも使用され得る。非ケイ酸質の鉱物系材料については、これらは半強化鉱物系フィラーとして役立つことができる。単独で又は組合せて使用することができるこれらの非ケイ酸質フィラーの例は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ水和物、膨張バーミキュライト、非膨張バーミキュライト、場合により脂肪酸によって表面処理された炭酸カルシウム、酸化亜鉛、マイカ、タルク、酸化鉄、硫酸バリウム、及び消石灰である。これらのフィラーは、一般に0.001~300μm(マイクロメートル)の範囲の粒径及び100m/g未満のBET表面積を有する。実際上、これは非限定的であるが、使用されるフィラーは石英とシリカの混合物であってもよい。フィラーは、任意の好適な製品で処理されてもよい。重量に関しては、シリコーン(silicon)ベースAの全構成成分に対して、1重量%~50重量%、好ましくは2重量%~40重量%の範囲のフィラーの量を使用することが好ましい。
【0082】
接着促進剤は、シリコーン組成物において広く使用されている。有利には、本発明による方法では、
- 以下の一般式(D1):
【0083】
【0084】
(式中、
・R1、R2、R3は、水素原子、又は同一又は互いから異なる炭化水素基であり、水素原子、線状若しくは分岐のC1~C4アルキル、又は少なくとも1つのC1~C3アルキルによって場合により置換されたフェニルを表し、
・Uは、線状又は分岐のC1~C4アルキレンであり、
・Wは、原子価結合(valence bond)であり、
・R4及びR5は、同一又は異なる基であり、線状又は分岐C1~C4アルキルを表し、
・x’=0又は1、及び、
・x=0~2である)
の生成物から選択される、C2~C6アルケニル基を、分子当たり少なくとも1つ含有する、アルコキシル化オルガノシラン;
-
a)以下の一般式:
【0085】
【0086】
[式中、
・R6は、線状又は分岐のC1~C4アルキル基であり、
・R7は、線状又は分岐のC1~C4アルキル基であり、
・yは、0、1、2、又は3に等しく、
・Xは、以下の式:
【0087】
【0088】
(式中、
・E及びDは、線状又は分岐のC1~C4アルキルから選択される同一又は異なる基であり、
・zは、0又は1に等しく、
・同一又は異なる基であるR8、R9、R10は、水素原子又は線状若しくは分岐のC1~C4アルキルを表し、
・R8と、R9又はR10とは、場合により交互に、エポキシを保持する2つの炭素と一緒に5~7員を有するアルキル環を形成する)によって規定される]
に相当する生成物(D.2a)、又は
b)
(i)式(D.2bi):
【0089】
【0090】
(式中、
・Xは、式(D.2a)について上で規定される基であり、
・Gは、1~8個(端点を含む)の炭素原子を有し、少なくとも1種類のハロゲン原子によって場合により置換されたアルキル基、及び6~12個の炭素原子を含有するアリール基から選択される1価の炭化水素基であり、
・p=1又は2であり、
・q=0、1、又は2であり、
・p+q=1、2、又は3である)の少なくとも1つのシロキシル単位、及び
(ii)場合により、式(D.2bii):
【0091】
【0092】
(式中、
・Gは、上記と同じ意味を有し、
・rは、0、1、2、又は3に等しい)
の少なくとも1つのシロキシル単位
を含むエポキシ官能性ポリジオルガノシロキサンから構成される生成物(D.2b)
から選択される、少なくとも1つのエポキシ基を含む有機ケイ素化合物;
- 少なくとも1つのシリルヒドリド官能基及び少なくとも1つのエポキシ基を含む有機ケイ素化合物;並びに
- 一般式:
M(OJ)n
(式中、
Mは、Ti、Zr、Ge、Li、Mn、Fe、Al、及びMg、又はこれらの混合物によって形成される群から選択され、
n=Mの原子価であり、J=線状又は分岐のC1~C8アルキルである。
【0093】
好ましくは、Mは以下のリスト:Ti、Zr、Ge、Li又はMnから選択され、さらにより好ましくは、金属Mはチタンである。それは例えば、ブトキシタイプのアルコキシ基と会合され得る)
の金属キレートM及び/又は金属アルコキシド
からなる群から選択される、1又は複数種類の接着促進剤が使用され得る。
【0094】
シリコーン樹脂は周知であり、市販の分岐オルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーである。それらの構造において、それらは、式R3SiO1/2(単位M)、R2SiO2/2(単位D)、RSiO3/2(単位T)、及びSiO4/2(単位Q)から選択される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を有し、これらの単位のうちの少なくとも1つは、T又はQ単位である。R基は、同一か又は異なり、線状又は分岐のC1~C6アルキル、ヒドロキシル、フェニル、3,3,3-トリフルオロプロピル基から選択される。アルキル基の例としては、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、及びn-ヘキシル基が挙げられる。
【0095】
分岐オリゴマー又はオルガノポリシロキサンポリマーの例としては、MQ樹脂、MDQ樹脂、TD樹脂、及びMDT樹脂が挙げられ、ヒドロキシル官能基は、場合によりM、D、及び/又はT単位によって保持される。特に好適な樹脂の例は、0.2~10重量%の範囲のヒドロキシル基の重量百分率を有する、ヒドロキシル化MDQ樹脂である。
【0096】
非イオン性シリコーン界面活性剤B
水中シリコーンの直接エマルションEは、10~50℃、好ましくは15~45℃の範囲の曇り点を有する非イオン性シリコーン界面活性剤Bを含む。非イオン性シリコーン界面活性剤Bの曇り点は、16~43℃の範囲であり得る。
【0097】
非イオン性界面活性剤の曇り点の概念は、当業者に周知である。実際、水中の非イオン性界面活性剤の溶解度が温度とともに減少することは、文献で確立されている。ある温度から、界面活性剤の溶解度があまりにも低いので、非イオン性界面活性剤の水溶液はより不透明になり、曇ったようになる。
【0098】
非イオン性界面活性剤の曇り点は、それを超えると界面活性剤の水溶液がより不透明で曇ったようになる温度である。有利には、曇り点は、水中1質量%の界面活性剤の水溶液について測定される。
【0099】
界面活性剤の曇り点は、以下の試験によって決定することができる:絶えず撹拌し、加熱プレートによって温度を制御しながら、界面活性剤を蒸留水中1質量%の濃度で導入する。溶液が室温で透明な場合、完全な不透明性が得られるまで混合物を加熱し、次にそれを徐々に冷却して、不透明性が消滅する温度を決定する。溶液が室温ですでに不透明又は曇っている場合、それを冷却して、不透明性が消滅する温度を同様に決定する。この不透明性消滅温度が、界面活性剤の曇り点又は曇り温度である。
【0100】
有利には、非イオン性シリコーン界面活性剤Bは、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーである。これらのコポリマーは、オルガノポリシロキサン-ポリエーテルコポリマーという名称によっても公知である。好ましくは、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーBは、エチレンオキシド鎖のシーケンス(sequence)、場合によりプロピレンオキシド鎖のシーケンスを有する、シロキシル単位を含む。
【0101】
好ましくは、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーBは、
式(B1)
[R1
aZbSiO(4-a-b)/2]n (B-1)
[式中、
- R1基は、同一か又は異なり、好ましくは1~8個の炭素原子を有するアルキル基及び6~12個の炭素原子を有するアリール基から選択される、1~30個の炭素原子を有する炭化水素基を表し;
- nは、2以上の整数であり;
- a及びbは、独立して0、1、2、又は3であり、a+b=0、1、2、又は3であり;
- 各Z基は、-R2-(OCpH2p)q(OCrH2r)s-OR3基
(式中、
・R2は、2~20個の炭素原子を有する2価の炭化水素基、又は結合であり、
・R3は、H又は上で規定されるR1基であり、
・p及びrは、独立して、1~6の間の整数であり、
・q及びsは、独立して、0又はl<q+s<400であるような整数である)である]
のシロキシル単位を含み、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーBの各分子は、少なくとも1つのZ基を含む。
【0102】
好ましい実施形態では、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーBは、上記式(B-1)
[式中、
- nは、2以上の整数であり;
- a及びbは、独立して0、1、2、又は3であり、a+b=0、1、2、又は、3であり;
- R1基は、同一か又は異なり、1~8個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基を表し、より好ましくはR1はメチル基であり;
(式中、
・R2は、2~6個の炭素原子を有する2価の炭化水素基、又は結合であり、
・R3はH又は1~8個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基であり、好ましくはR3はHであり、
・p=2であり、r=3であり、
・qは1~40、好ましくは5~30の範囲であり、
・sは1~40、好ましくは5~30の範囲である)]
の繰り返し単位を含み、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーBの各分子は、少なくとも1つのZ基を含む。
【0103】
有利には、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーBは、b=0又は1である上記式(B-1)の繰り返し単位を含む。
一実施形態によれば、Bは、1~200、好ましくは50~150の範囲の式(B-1)のシロキシル単位の全数、及び2~25、好ましくは3~15の範囲のZ基の全数を有する、オルガノポリシロキサンである。
【0104】
本方法において使用され得るオルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーBの例は、式(B-2)
Ra
3SiO[R2
aSiO]t[RaSi(Rb-(OCH2CH2)x(OCH2CH2CH2)y-OH)O]rSiRa
3 (B-2)
(式中、
・各Raは、1~8個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択され、好ましくはRaはメチルであり;
・各Rbは、2~6個の炭素原子を有する2価の炭化水素基、又は結合であり、好ましくはRbはプロピル基であり;
・x及びyは、独立して、1~40の間、好ましくは5~30の間、より好ましくは10~30の間の整数であり、
・tは、1~200、好ましくは25~150の範囲であり、
・rは、2~25、好ましくは3~15の範囲である)
に相当する。
【0105】
オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーBを調製する方法は、当業者に周知である。例えば、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーは、ヒドロシリル化によって、例えば、白金触媒の存在下で、Si-H結合を含むポリジオルガノシロキサンを、脂肪族不飽和を有する基を含むポリオキシアルキレンと反応させることによって、調製することができる。
【0106】
1つの特別の実施形態によれば、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーBは、
- 式(B-3):
【0107】
【0108】
(式中、
・0≦a≦100;1≦b≦100;0≦c≦100;0≦d≦100であり、c+d≧1であり、
・Rは、H又は1~6個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基である)の化合物;
- 式(B-4)
【0109】
【0110】
(式中、
・0≦a’≦100;0≦c’≦100;0≦d’≦100;0≦c’’≦100;0≦d’’≦100;c’+d’+c’’+d’’≧1、
・各R’は、独立して、H又は1~6個(端点を含む)の炭素原子を有するアルキル基である)のポリエーテルシリコーン;
- 及びこれらの混合物
から選択される。
【0111】
非イオン性シリコーン界面活性剤Bの量は、エマルションに含有されるシリコーンベースの全質量に対して、0.1~70%、好ましくは0.5~50%、より好ましくは1~25%、さらにより好ましくは2~20%の範囲である。
【0112】
触媒C
水中シリコーンの直接エマルションEは、触媒Cも含んでもよい。この触媒は、シリコーンベースAの重付加反応又は重縮合反応を触媒するために使用される。
【0113】
シリコーンベースAが重付加による架橋性のベースである第1の実施形態では、触媒Cはヒドロシリル化反応触媒である。これらの触媒は、周知である。白金及びロジウム化合物が好ましくは使用される。特に、特許US-A-3,159,601、US-A-3,159,602、US-A-3,220,972、欧州特許EP-A-0,057,459、EP-A-0,188,978、及びEP-A-0,190,530に記述されている、白金と有機生成物の錯体、並びにUS-A-3,419,593、US-A-3,715,334、US-A-3,377,432、及びUS-A-3,814,730に記述されている、白金とビニル化オルガノシロキサンの錯体を使用することができる。一般に好ましい触媒は、白金である。この場合、白金属(platinum-metal)の重量によって計算される、触媒Cの重量による量は、オルガノポリシロキサンA1及びA2の全重量に対して、一般に2~400ppm、好ましくは5~200ppmの間である。この場合、触媒Cは白金触媒、例えば、Karstedtの触媒であり得る。
【0114】
シリコーンベースAが重縮合による架橋性のベースである第2の実施形態では、触媒Cは縮合反応触媒である。限定することなく、例えば当業者に広く公知であるスズ又はチタンに基づく金属錯体又はキレートから、又は特許出願EP2268743及びEP2367867に記述されているアミン又はグアニジンのような有機触媒から、又は特許出願EP2222626、EP2222756、EP2222773、EP2935489、EP2935490及びWO2015/082837に記述されている、例えば、Zn、Mo、Mgなどに基づく金属錯体から、重縮合触媒を選択することができる。
【0115】
水D
水中シリコーンの直接エマルションEは、水を含む。有利には、エマルションは、エマルションの全質量に対して10~80質量%の間、好ましくは30~75質量%の間、さらにより好ましくは35~65質量%の間の水を含む。1つの特定の実施形態によれば、エマルションは、エマルションの全質量に対して50質量%を超える水を含む。エマルションは、エマルションの全質量に対して50.5~80質量%の間、好ましくは51~75質量%の間、さらにより好ましくは52~65質量%の間の水を含んでもよい。
【0116】
増粘剤F
水中シリコーンの直接エマルションEは、増粘剤Fも含んでもよい。増粘剤Fは、有機増粘剤、無機増粘剤、天然増粘剤、及び合成増粘剤を含む異なるタイプの増粘剤から選択され得る。増粘剤Fは、例えばキサンタンタイプゴム及びサクシノグリカンゴムのような天然ゴムに基づく増粘剤から選択され得る。増粘剤Fは、セルロース繊維からも選択され得る。
【0117】
増粘剤Fは、エマルションの粘度を変更することを可能にする。当業者は、増粘剤の量を所望の粘度に適合させる方法を、知っているであろう。有利には、エマルションEにおける増粘剤の量は、シリコーンベースAの質量に対して0.01~30質量%、0.1~20質量%、又は0.5~10質量%の範囲である。
【0118】
本発明による方法の好ましい実施形態によれば、水中シリコーンの直接エマルションEは、
A)
・分子当たり少なくとも2つのアルケニル又はアルキニル基を含み、線状又は分岐であり、2~6個の炭素原子を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA1、及び
・分子当たり少なくとも2つのシリルヒドリド官能基Si-Hを含む、少なくとも1つのオルガノヒドロゲンポリシロキサンA2
を含む重付加による架橋性のシリコーンベースA;
B)10~50℃、好ましくは15~45℃の範囲の曇り点を有する、少なくとも1つの非イオン性シリコーン界面活性剤B;
C)場合により、少なくとも1種類の触媒C;並びに
D)水
を含む。
【0119】
本発明による方法の特に好ましい実施形態によれば、水中シリコーンの直接エマルションEは、
A)
・分子当たり少なくとも2つのアルケニル又はアルキニル基を含み、線状又は分岐であり、2~6個の炭素原子を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA1、及び
・分子当たり少なくとも2つのシリルヒドリド官能基Si-Hを含む、少なくとも1つのオルガノヒドロゲンポリシロキサンA2
を含む、重付加による架橋性のシリコーンベースA;
B)10~50℃、好ましくは15~45℃の範囲の曇り点を有するオルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーから選択される、少なくとも1種類の非イオン性シリコーン界面活性剤B;
C)場合により、少なくとも1種類の触媒C;並びに
D)水
を含む。
【0120】
方法のステップ(工程)
本発明による方法は、
1)水中シリコーンの直接エマルションEを実施するステップと、
2)多孔質シリコーン材料を得るために、エマルションEを60℃以上の温度に加熱するステップと、
3)場合により、好ましくは加熱によって、多孔質シリコーン材料を乾燥させるステップと、
を含む。
【0121】
加熱するステップ2)は、60℃以上の温度で、例えば60~200℃、又は70~180℃の範囲の温度で実行される。ステップ2)は、1分~2時間の間、例えば10分~1時間の間続いてもよい。
【0122】
当業者は、使用されるエマルション及び/又は所望の多孔質シリコーン材料によって、ステップ2)の温度及び期間を適合させる方法を知っているであろう。
ステップ2)の最後に、多孔質シリコーン材料が得られる。この多孔質シリコーン材料は、エラストマーシリコーンフォームであり得る。ステップ2)の温度に応じて、この材料はまだ水を含んでいてもよく、例えば、材料に水が含浸されていてもよい。
【0123】
ある場合には、ステップ2)の後に得られた多孔質シリコーン材料を、乾燥させるステップ3)で乾燥させることが必要な可能性がある。この乾燥させるステップは任意選択であり、それは多孔質シリコーン材料を、例えば100℃以上の温度に加熱することによって実行され得る。有利には、多孔質シリコーン材料は、100~200℃、好ましくは100~150℃の範囲の温度で乾燥される。多孔質シリコーン材料を空気乾燥させることも、可能である。
【0124】
加熱するステップ2)及び乾燥させるステップ3)は、同時であってもよい。これは、ステップ2)が100℃以上の温度で、例えば100~200℃の範囲の温度で実行される場合であり得る。
【0125】
1つの特別の実施形態によれば、ステップ1)は、支持体を水中シリコーンの直接エマルションEで被覆するステップである。
この被覆するステップは、水中シリコーンの直接エマルションEの少なくとも1つの層の、支持体上への塗布である。
【0126】
被覆するステップは、特に、ドクターブレードによって、特にシリンダー上ドクターブレード(doctor blade on cylinder)、エアドクターブレード、及びマット上ドクターブレードによって、パッド仕上げ(pad finishing)によって、特に2本のローラー間で圧搾する(squeeze)ことによって、若しくはローラー、回転フレーム、リバースローラーをウィッキングする(wicking)ことによって、転写(transfer)によって、スクリーン印刷によって、写真製版によって、又は吹付けによって実行され得る。
【0127】
被覆は、支持体の少なくとも1つの面の上で実行される。被覆は全体的又は部分的であってもよく、それは被覆が、支持体の少なくとも1つの面の全表面上で、又は支持体の少なくとも1つの面の1つ又は複数の部分上で実行されてもよいことを意味する。
【0128】
水中シリコーンの直接エマルションEの層を、支持体の内部に浸透させる(penetrate)ことによって、支持体に含浸させてもよい。
水中シリコーンの直接エマルションEの支持体上の層は、約数百マイクロメートル~数ミリメートルであり得る。
【0129】
被覆される支持体は、一般に繊維状の支持体、例えば織布、不織布若しくは編物、
又はより一般的に、ガラス、シリカ、金属、セラミックス、炭化ケイ素、炭素、ホウ素、木綿、羊毛、麻、亜麻のような天然繊維、ビスコース、若しくはセルロース系繊維のような人造繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルのような合成繊維、クロロ繊維、ポリオレフィン、合成ゴム、ポリビニルアルコール、アラミド、フッ素系繊維、フェノール類などを含む材料の群から選択される、繊維を含む繊維状支持体及び/又は繊維である。
【0130】
被覆される支持体としては、建築用布地(architectural textile)が挙げられる。「建築用布地」とは、織布又は不織布、より一般的に、被覆後に
・シェルター、可動性構造物、布地建造物、パーティション、可撓性ドア、防水シート、テント、スタンド、又はパビリオン;
・家具、外装材、広告板、風よけ、又はフィルタパネル;
・陽光保護物(sun protection)、天井、及びブラインド
の製造を意図する、任意の繊維状支持体を意味すると理解される。
【0131】
本発明はまた、
1)
A)重縮合又は重付加による架橋性のシリコーンベースA、
B)10~50℃、好ましくは15~45℃の範囲の曇り点を有する、少なくとも1種類の非イオン性シリコーン界面活性剤B、
C)場合により、少なくとも1種類の触媒C、及び
D)水
を含む、水中シリコーンの直接エマルションEで支持体を被覆するステップと;
2)多孔質シリコーン材料を得るために、エマルションEを60℃以上の温度に加熱するステップと;
3)場合により、好ましくは加熱によって、多孔質シリコーン材料を乾燥させるステップと
を含む、支持体を被覆する方法にも関する。
【0132】
水中シリコーンの直接エマルションE
本発明の別の目的は、
A)重縮合又は重付加による架橋性のシリコーンベースA、
B)10~50℃、好ましくは15~45℃の範囲の曇り点を有する、少なくとも1種類の非イオン性シリコーン界面活性剤B、
C)場合により、少なくとも1種類の触媒C、及び
D)水
を含む、水中シリコーンの直接エマルションEである。
【0133】
方法のセクションにおいて上述したエマルションの実施形態は、水中シリコーンの直接エマルションEにもそのようにあてはまる。
この水中シリコーンの直接エマルションEを使用して、上述の方法を実施することができる。
【0134】
多孔質シリコーン材料
本発明の別の目的は、10~50℃、好ましくは15~45℃の範囲の曇り点を有する、少なくとも1種類の非イオン性シリコーン界面活性剤Bを含む、多孔質シリコーン材料である。界面活性剤Bの量は、材料の全質量に対して界面活性剤Bの質量で0.5~50%、好ましくは1~25%、より好ましくは2~15%の範囲であり得る。
【0135】
本発明の別の目的は、上述の水中シリコーンの直接エマルションEを、60℃以上の温度に加熱することによって得ることができる、多孔質シリコーン材料である。
有利には、材料は、0.9g/cm3未満、好ましくは0.6g/cm3未満、さらにより好ましくは0.4g/cm3未満の密度を有する。
【0136】
多孔質シリコーン材料の細孔の大きさは、数μmから数百μmまで変動し得る。
多孔質シリコーン材料は、開放気孔及び/又は密閉気孔を有する。好ましくは、材料は主に開放気孔を有する。
【0137】
1つの特別の実施形態によれば、多孔質シリコーン材料は、主に開放気孔及び500μm以下の大きさの細孔を有する。
【0138】
多孔質シリコーン材料で被覆された支持体
最終的に、本発明の目的は、上述の多孔質シリコーン材料で被覆された支持体である。支持体は、完全に又は部分的に被覆され得る。支持体はまた、上述の多孔質シリコーン材料で含浸されてもよい。
支持体は、上に列挙された支持体から選択され得る。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[態様1]
多孔質シリコーン材料の製造方法であって、
1)
A)重縮合又は重付加による架橋性のシリコーンベースA、
B)10~50℃、好ましくは15~45℃の範囲の曇り点を有する、少なくとも1種類の非イオン性シリコーン界面活性剤B、
C)場合により、少なくとも1種類の触媒C、及び
D)水
を含む、水中シリコーンの直接エマルションEを実施する工程;
2)前記エマルションEを60℃以上の温度に加熱して、多孔質シリコーン材料を得る工程;並びに
3)場合により、好ましくは加熱によって、前記多孔質シリコーン材料を乾燥させる工程;
を含む、前記方法。
[態様2]
前記非イオン性シリコーン界面活性剤Bが、エチレンオキシド鎖のシーケンス、及び場合により、プロピレンオキシド鎖のシーケンスを有する、シロキシル単位を、好ましくは含む、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーである、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記非イオン性シリコーン界面活性剤Bが、式(B-1)
[R
1
a
Z
b
SiO
(4-a-b))/2
]
n
(B-1)
[式中、
- R
1
基は、同一か又は異なり、好ましくは1~8個の炭素原子を有するアルキル基及び6~12個の炭素原子を有するアリール基から選択される、1~30個の炭素原子を有する炭化水素基を表し;
- nは、2以上の整数であり;
- a及びbは、独立して0、1、2、又は3であり、a+b=0、1、2、又は3であり;
- 各Z基は、-R
2
-(OC
p
H
2p
)
q
(OC
r
H
2r
)
s
-OR
3
基
(式中、
・R
2
は、2~20個の炭素原子を有する2価の炭化水素基、又は結合であり、
・R
3
は、H又は上で規定されるR
1
基であり、
・p及びrは、独立して、1~6の間の整数であり、
・q及びsは、独立して、0又はl<q+s<400であるような整数である)である]
のシロキシル単位を含むオルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーから選択され、
オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーBの各分子が少なくとも1つのZ基を含む、態様1又は2に記載の方法。
[態様4]
前記エマルションEが、エマルションに含有されるシリコーンベースの全質量に対して、0.1~70質量%の間、好ましくは0.5~50質量%の間、より好ましくは1~25質量%の間、さらにより好ましくは2~20質量%の間の界面活性剤Bを含む、態様1から3のいずれか一項に記載の方法。
[態様5]
前記エマルションEが、エマルションの全質量に対して、10~80質量%の間、好ましくは30~75質量%の間、さらにより好ましくは35~65質量%の間の水を含む、態様1から4のいずれか一項に記載の方法。
[態様6]
前記シリコーンベースAが重付加による架橋性であり、前記シリコーンベースAが、
・分子当たり少なくとも2つのアルケニル又はアルキニル基を含み、線状又は分岐であり、2~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA1、及び
・分子当たり少なくとも2つのシリルヒドリド官能基Si-Hを含む、少なくとも1つのオルガノヒドロゲンポリシロキサンA2
を含む、態様1から5のいずれか一項に記載の方法。
[態様7]
前記シリコーンベースAが重縮合による架橋性であり、前記シリコーンベースAが、
・少なくとも2つのOH官能基又は少なくとも2つの加水分解可能な官能基を含む、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA3、及び
・場合により、少なくとも1種類の架橋剤A4
を含む、態様1から5のいずれか一項に記載の方法。
[態様8]
前記エマルションEが、少なくとも1種類の増粘剤Fも含む、態様1から7のいずれか一項に記載の方法。
[態様9]
工程1)が、支持体を水中シリコーンの直接エマルションEで被覆する工程である、態様1から8のいずれか一項に記載の方法。
[態様10]
A)重縮合又は重付加による架橋性のシリコーンベースA、
B)10~50℃、好ましくは15~45℃の範囲の曇り点を有する、少なくとも1種類の非イオン性シリコーン界面活性剤B、
C)場合により、少なくとも1種類の触媒C、及び
D)水
を含む、水中シリコーンの直接エマルションE。
[態様11]
10~50℃、好ましくは15~45℃の範囲の曇り点を有する少なくとも1種類の非イオン性シリコーン界面活性剤Bを含む、多孔質シリコーン材料。
[態様12]
態様10に記載のエマルションEを60℃以上の温度に加熱することによって得られる、多孔質シリコーン材料。
[態様13]
態様11又は12に記載の多孔質シリコーン材料で被覆された、支持体。
【実施例】
【0139】
手順
【0140】
細孔の大きさの決定:
細孔の大きさは、走査型電子顕微鏡、又は断層撮影法によって決定される。
【0141】
界面活性剤の曇り点の決定:
界面活性剤を蒸留水に1%の質量濃度で、絶えず撹拌し、ホットプレートによって温度を制御しながら導入する。溶液が室温で透明な場合、完全な不透明性が得られるまで混合物を加熱し、次にそれを徐々に冷却し、不透明性が消滅する温度を決定する。溶液が室温ですでに不透明又は曇っている場合、それを冷却し、同様に、不透明性が消滅する温度を決定する。不透明性消滅のこの温度が、界面活性剤の曇り点又は曇り温度を構成する。
【0142】
水中シリコーンエマルションの調製:
室温で、重付加による架橋性のシリコーンベース(A)をビーカーに添加し、およそ16,000rpmの速度でUltra-Turrax型の回転子-固定子を使用して、3分間、界面活性剤(B)と混合する。次に、まだ撹拌しながら約10分間水(D)を徐々に添加し、これによって、(比較例1.6を除いて)白色で流動性である、水中シリコーン型の直接エマルションがもたらされる。
【0143】
エマルションから多孔質シリコーン材料の形成:
あらかじめ水(C)中で乳化されたKarstedt白金を、上で得られた水中シリコーンエマルションに添加する。水中シリコーン型の直接エマルションである、得られた触媒されたエマルションを、90℃に加熱された浴槽に30分間配置する。一旦架橋すると、含浸された多孔質材料が得られる。それをエタノールで3回すすぎ、次に、115℃で2時間炉に配置する。
【0144】
エマルションからの発泡体薄膜の被覆及び形成:
触媒されたエマルションを1平方メートル当たりおよそ50グラムの量で、あらかじめ耐水性にしたガラス布地上に、ドクターブレードを用いて塗布する。被覆された布地を120℃の炉で10~20分間焼き、多孔質材料を形成させる。
【0145】
多孔質シリコーン材料の密度(ρf)を測定する手順:
発泡体平行六面体をはさみを用いて注意深く切り取る(典型的には、7.5g、長さ(l)50mm、幅(L)30mm、及び厚さ(e)20mm)。それを秤量する(Ms)。発泡体の密度は、以下の計算:
【0146】
【0147】
を使用して計算される。
【0148】
開放気孔率(porosity percentage)(%PO)を測定する手順:
発泡体平行六面体をはさみを用いて注意深く切り取る(典型的には、7.5g、長さ(l)50mm、幅(L)30mm、及び厚さ(e)20mm)。それを最初に乾燥時秤量し(Ms)、次に、蒸留水(50mL)のビーカー中に浸漬し、全体をデシケーター中の減圧下(50mbar)に120分間配置する。次に、試料を取り出し、素早く吸収紙上で乾燥させて、平行六面体の6つの側の表面から水を除去し、次に、すぐに秤量する(Mi)。開放気孔率は、以下の計算:
【0149】
【0150】
(式中、
%PO 開放気孔率
Vwater 発泡体に挿入された水の量
Ms 発泡体平行六面体の初期質量
Mi 水含浸試料の質量
l、L及びe 平行六面体の寸法
ρp シリコーン材料の密度(約1g/cm3))
を使用して得られる。
【0151】
圧縮の弾性率を測定する手順:
試料(円筒状;ポンチを用いて切り取る、高さ10mm×直径10mm)の圧縮を、「Material Testing System」(MTS)機械を使用して、200mm/分の速度で実行する。1つの発泡体当たり10個の試料に対して平均する。材料の弾性ゾーンにおける曲線の接線の傾きによって、圧縮の弾性率Eが導き出される。
【0152】
引張弾性率及び破断時伸びを測定する手順:
タイプH2のダンベル形の試料に関して、引張を、「Material Testing System」(MTS)機械を使用して、500mm/分の速度で実行する。材料の弾性ゾーンにおける曲線への接線の傾きによって、引張弾性率Eが導き出される。破断時伸び(A%)は、以下の計算:
【0153】
【0154】
(式中、
Lo 引張前静止時の試料の長さ
Lu 破断直前の試料の長さ)
によって導き出される。
【0155】
使用する試薬
実施例では、量は、特に断りのない限り重量部で表される。
【0156】
HVI1:鎖の各末端が(CH3)2ViSiO1/2単位によってブロックされ、230mPa・秒の粘度を有する、ポリジメチルシロキサン油
HVI2:鎖の各末端が(CH3)2ViSiO1/2単位によってブロックされ、1000mPa・秒の粘度を有する、ポリジメチルシロキサン油
SiH1:46%のシリルヒドリド官能基Si-Hの質量百分率を有する、オルガノヒドロゲンポリシロキサン
SiH樹脂:26%のシリルヒドリド官能基Si-Hの質量百分率を有する、MQ樹脂
白金909:0.085%の白金の質量百分率を有する、エマルション形態の白金触媒
SiH2油:20%のシリルヒドリド官能基Si-Hの質量百分率を有する、オルガノヒドロゲンポリシロキサン
SiH3油:4.75%のシリルヒドリド官能基Si-Hの質量百分率を有するオルガノヒドロゲンポリシロキサン
Rhodopol(登録商標):キサンタンタイプゴム
Rheozan(登録商標):サクシノグリカンゴム
様々な界面活性剤:
・Siltech(Silsurf(登録商標)A010-D-UP)及びEvonik(Tegopren(登録商標)ファミリー)製のオルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマー(非イオン性シリコーン界面活性剤)
・炭素質脂肪鎖及びエトキシル化鎖を有する非シリコーン界面活性剤(Rhodasurf(登録商標)ROX及びBrij(登録商標))
を試験した。
【0157】
使用した様々な界面活性剤の特性を、以下の表1及び表2に示す。
【0158】
【0159】
【0160】
実施例1
界面活性剤の構造及びその曇り点の影響
様々な界面活性剤を試験し、多孔質シリコーン材料の特性を決定した(表3及び表4を参照)。
【0161】
【0162】
【0163】
10~50℃の範囲の曇り点を有する非イオン性シリコーン界面活性剤を用いて、本発明による実施例1.1~1.6(表3)を本発明によって実行した。これらの界面活性剤は、水中シリコーンの直接エマルションの形成を可能にし、得られた多孔質シリコーン材料は、良好な品質である:それらは砕けやすく(friable)ない。そのうえ、得られた多孔質シリコーン材料の気孔は、主に開放であり、材料の密度は低い(<0.3g/cm3)。細孔の大きさの平均は、数十μmから数百μmまで変動する。
【0164】
比較例1.1及び1.2(表4)を、高い曇り点(>50℃)を有する非シリコーン界面活性剤を用いて実行した。これらの界面活性剤は、水中シリコーンの直接エマルションの形成を可能にするが、これらの試験中に多孔質シリコーン材料は得られなかった。
【0165】
比較例1.3及び1.4(表4)を、高い曇り点(>50℃)を有する非イオン性シリコーン界面活性剤を用いて実行した。これらの界面活性剤は、水中シリコーンエマルションの形成を可能にするが、得られた多孔質シリコーン材料は、それらが砕けやすいので良好な品質ではない。したがって、それらを使用したり、それらの特性を決定したりすることは不可能である。
【0166】
比較例1.5(表4)を、10~50℃の範囲の曇り点を有する非シリコーン界面活性剤を用いて実行した。この界面活性剤は、水中シリコーンエマルションの形成を可能にするが、この試験中に多孔質シリコーン材料は得られなかった。
【0167】
比較例1.6(表4)を、低い曇り点(<0℃)を有する非イオン性シリコーン界面活性剤を用いて実行した。この界面活性剤は、水中シリコーンエマルションの形成を可能にせず、したがって、この試験中に多孔質シリコーン材料は得られなかった。
【0168】
したがって、これらの試験を考慮すると、良好な品質の多孔質シリコーン材料を得るために、10~50℃の範囲の曇り点を有する非イオン性シリコーン界面活性剤を使用することが必要である。
【0169】
実施例2
界面活性剤の濃度の影響
Tegopren(登録商標)5840界面活性剤を使用した。界面活性剤の量を、この実施例のためのシリコーンの質量に対して、2.5から50質量%まで変動させた。得られた多孔質シリコーン材料の密度を、決定した(表5参照)。
【0170】
【0171】
試験した全ての濃度が、良好な品質の多孔質シリコーン材料を得ることを可能にする。
【0172】
実施例3
エマルション中の水の量の影響
Tegopren(登録商標)5840界面活性剤を使用した。エマルション中の水の量を、この実施例のためのシリコーンの質量に対して、10から70質量%まで変動させた。得られた多孔質シリコーン材料の密度を、決定した(表6参照)。
【0173】
【0174】
全ての実施例は、良好な品質の多孔質シリコーン材料を得ることを可能にする。エマルションは35質量%を超える水を含有しているので、材料の密度は比較的低い。
【0175】
実施例4
Si-H油の影響
シリルヒドリド官能基Si-Hの異なる質量百分率を有する、異なるSi-H油を試験した。H/Vi比は、これらの試験に対して実質的に同じままである。得られた多孔質シリコーン材料の密度を、決定した(表7参照)。
【0176】
【0177】
これらの結果は、異なるSiH油を有する多孔質シリコーン材料を得ることが可能であることを示している。シリルヒドリド官能基Si-Hの質量百分率は、材料の密度に影響を有する。オルガノヒドロゲンポリシロキサンにおけるシリルヒドリド官能基Si-Hの質量百分率が高い(実施例4.1)場合、得られる材料の密度はより低い。
【0178】
実施例5
支持体の被覆
エマルションは非常に流動性であるので、その粘度を増加させるために、2種類の増粘剤:Rhodopol(登録商標)(キサンタンタイプゴム)及びRheozan(登録商標)(サクシノグリカンゴム)も添加した。エマルションの粘度は、0.1Pa・秒からおよそ100Pa・秒までになる。これらのエマルションから得られた多孔質材料の特性を、決定した。結果を表8に示す。
【0179】
【0180】
これらの結果は、増粘剤の添加は得られる材料の密度に影響を与えず、材料の気孔は主に開口のままであることを示している。
そのうえ、増粘剤を含むエマルション(実施例5.2及び5.3)を使用して、ガラス繊維支持体を被覆した。どちらの場合も、多孔質シリコーン材料の層で被覆された支持体が得られた。これらの結果は、本発明による方法を使用して、多孔質シリコーン材料で被覆された支持体を製造することが可能であることを示している。
【0181】
実施例6
多孔質シリコーン材料の機械的特性
本発明による多孔質シリコーン材料の機械的特性を、決定した。結果を表9に示す。
【0182】
【0183】
これらの結果は、本発明による多孔質シリコーン材料が、良好な機械的特性を有することを示している。