(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】通気性および遮光性を有する帽子
(51)【国際特許分類】
A42B 1/201 20210101AFI20220616BHJP
A42B 1/019 20210101ALI20220616BHJP
A42B 1/208 20210101ALI20220616BHJP
【FI】
A42B1/201 D
A42B1/019 B
A42B1/208
(21)【出願番号】P 2019187373
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2021-04-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519181124
【氏名又は名称】SSH株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178009
【氏名又は名称】小河内 功佑
(72)【発明者】
【氏名】白井 庄史
(72)【発明者】
【氏名】鳩崎 正徳
(72)【発明者】
【氏名】戸松 嶺太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 絢士
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-013782(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/203608(JP,A1)
【文献】実開平04-060516(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面シートに設けた切り込みが拡張されることにより空間が形成される帽子であって、前記切り込みは年輪状の波線上またはジグザグ線上に断続的に設け
、複数の山型の切り込みが並ぶ周と複数の谷型の切り込みが並ぶ周を年輪の半径方向に交互に配置し、前記山型の切り込みの端部が前記年輪の中心から延びる放射線上に全ての山型の切り込みについて並ぶと共に、前記谷型の切り込みの端部が前記年輪の中心から延びる放射線上に全ての谷型の切り込みについて並び、これらの放射線間において山型の切り込みと谷型の切り込みがオーバーラップする部分が全て平行であることを特徴とする
帽子。
【請求項2】
同じ周にある山型の切り込みの端部を結ぶ円が他の周の山型の切り込みと交わり、同じ周にある谷型の切り込みの端部を結ぶ円が他の周の谷型の切り込みと交わるように前記切り込みを設けた請求項1記載の帽子。
【請求項3】
前記平面シートを2枚以上重ねてなる請求項1または2記載の帽子。
【請求項4】
前記平面シートの切り込みを設けた範囲が帽子の内側の平面シートから帽子の外側の平面シートに向かうほど大きくなる請求項3記載の帽子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通気性および遮光性を有する帽子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、段ボール又は断面がハニカム構造を有した構造体から構成される素材の風合いと機能を活かした傘帽子が記載されている。本発明によれば、頭に被った際、段ボールの穴から風が入り夏場など涼しくさせることができるが、傘帽子の立体形状を平面形状にすることはできないので持ち運びに不便である。
【0003】
特許文献2には、多数枚の紙シートを重ね合わせ、互いに隣り合う紙シート同士を幅方向に一定の間隔で多数箇所を接着することにより、紙シートが重ね合わせ方向に伸縮する伸縮基材を形成し、この伸縮基材を紙シートの重ね合わせ方向に所定の形状・幅に裁断してなるものが記載されている。本発明は伸縮性がとてもよく、伸展させた状態では大きな開口が得られ通気性が良い帽子を得ることができるが、帽子の立体形状を平面形状にすることはできないので持ち運びに不便である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-130931号公報
【文献】特開2007-63715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は通気性および遮光性を有し、かつ、平面形状にして保管や持ち運びに便利な帽子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の帽子は、平面シートに設けた切り込みが拡張されることにより空間が形成される帽子であって、前記切り込みは年輪状の波線上またはジグザグ線上に断続的に設けたことを特徴とする。
【0007】
山型の切り込みが連続する周と谷型の切り込みが連続する周を交互に配置するように前記切り込みを設けたことが好ましい。
【0008】
前記平面シートを2枚以上重ねてなることが好ましい。
前記平面シートの切り込みを設けた範囲が帽子の外側に向かうほど大きくなることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る帽子は、平面シートの切り込みが拡張されることにより空間が形成されるため、保管したり持ち運んだりするときは平面形状のままにしておき、帽子として使用するときは、切り込みが拡張されることにより形成される空間により通気性を確保することができる。また、本発明は前記切り込みを波線上またはジグザグ線上に設けるので、切り込みが拡張されたときに帽子の表面がひだ状に形成されるため、遮光性が高い帽子を得ることができる。さらに、平面シートに切り込みを設けるのみで構成されるため、製作は極めて容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の帽子に使用される平面シートの平面図である。
【
図3】本発明の別の実施形態の帽子に使用される3枚の平面シートの平面図である。
【
図5】
図4に示す平面シートを貼り合わせた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る通気性および遮光性を有する帽子の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1(1)は、本発明に係る帽子に使用される平面シート10の平面図であり、平面シート10には複数の切り込み11と周縁部12が設けられている。平面シート10は楕円状に形成されており、切り込み11は年輪状の波線上に断続的に設けている。
【0012】
平面シート10の形状に限定はなく、楕円状の他、正円状、正方形状、矩形状などに形成しても良い。平面シート10の素材は軽量化およびコスト削減の観点から紙などの素材を用いることが好ましいが、帽子としての機能を果たすものであればこれらに限定されない。
【0013】
切り込み11の長さ、幅、位置、形状に限定はなく、年輪状の波線上またはジグザグ線上に断続的に設ければ良く、後述するように切り込み11が拡張されることにより空間が形成されるものであり、かつ、帽子の表面がひだ状に形成されるものであれば良い。本実施形態において、切り込み11は複数の山型の切り込みが並ぶ周と複数の谷型の切り込みが並ぶ周を年輪の半径方向に交互に配置し、前記山型の切り込みの端部が前記年輪の中心から延びる放射線上に全ての山型の切り込みについて並ぶと共に、前記谷型の切り込みの端部が前記年輪の中心から延びる放射線上に全ての谷型の切り込みについて並び、これらの放射線間において山型の切り込みと谷型の切り込みがオーバーラップする部分が全て平行になるように設けた。
また、本実施形態において、同じ周にある山型の切り込みの端部を結ぶ円が他の周の山型の切り込みと交わり、同じ周にある谷型の切り込みの端部を結ぶ円が他の周の谷型の切り込みと交わるように前記切り込みを設けた。
【0014】
図2は本発明の帽子1の斜視図であり、切り込み11が拡張されることにより空間13が形成されている。空間13の形状は切り込み11の形状、位置等に依るものである。切り込み11を波線上に設けているため、帽子1の表面はひだ状に形成されている。
【0015】
前記切り込み11の波線またはジグザグ線の波長に格別の制限はないが、波長が短いほど帽子1の表面に形成されるひだの数が多くなるため、後記する帽子の遮光性がより高くなる。また、前記切り込み11の波線またはジグザグ線の振幅に格別の制限はないが、振幅が大きいほど帽子表面に形成されるひだが深くなるため、後記する帽子の遮光性がより高くなる。
【0016】
本実施形態によれば、平面シート10の切り込み11が拡張されることにより空間13が形成されるため、帽子1を保管したり持ち運んだりするときは平面形状のままにしておき(
図1参照)、帽子として使用するときは、切り込み11が拡張されることにより形成される空間13により通気性を確保することができる。切り込み11の作用により、平面状態の帽子1を頭部に被せれば自然に切り込み11が拡張される。
【0017】
また、切り込み11は波線上またはジグザグ線上に設けるので、切り込みが拡張された際は本発明の帽子の表面がひだ状に形成され、遮光性が高い帽子を得ることができる。さらに、平面シート10に切り込み11を設けるのみなので製作は極めて容易である。
【0018】
次に本発明の別の実施形態について
図3を参照しながら説明する。
図3(1)、(2)、(3)は、本発明に係る帽子に使用される平面シート10、20、30の平面図であり、平面シート10、20、30にはそれぞれ複数の切り込み11、21、31と周縁部12、22、32が設けられている。平面シート10、20、30は正円状に形成されており、切り込み11、21、31は年輪状の波線上に断続的に設けている。切り込み21が設けられている範囲は切り込み31が設けられている範囲よりも大きく、切り込み11が設けられている範囲は切り込み21が設けられている範囲よりも大きい。
【0019】
平面シート10、20、30の形状に限定はなく、正円状の他、正方形状、矩形状などに形成しても良い。切り込み11、21、31の長さ、幅、位置、形状に限定はなく、後述するように切り込み11、21、31が拡張されることにより空間が形成されるものであれば良い。平面シート10、20、30の素材は軽量化およびコスト削減の観点から紙などの素材を用いることが好ましいが、帽子としての機能を果たすものであればこれに限定されない。
【0020】
図4は平面シート10、20、30の斜視図である。平面シート30の上に平面シート20、平面シート20の上に平面シート10が位置するようにそれぞれの周縁部12、22、32を固定する。平面シート10、20、30は接着、縫製等の方法により固定されるが、固定方法に格別の制限はない。
図5は平面シート10、20、30の周縁部が固定された状態を示す斜視図である。
【0021】
後記するように切り込み11、21、31が拡張される際に平面シート10、20、30の間に空間を形成するため、切り込みが設けられている範囲が帽子の外側に向かうほど大きくなるように平面シートを重ねてそれぞれの周縁部12、22、32を固定している。
【0022】
本実施形態の帽子によると、切り込み11、21、31が拡張されることにより空間が形成される。空間の大きさ、形状、位置は切り込み11、21、31の形状、位置等に依る。切り込み21が設けられている範囲は切り込み31が設けられている範囲より大きく、切り込み11が設けられている範囲は切り込み21が設けられている範囲より大きいので、平面シート10、平面シート20および平面シート30のそれぞれの間には空間が形成される。
【0023】
本実施形態によれば、平面シート10、20、30の切り込み11、21、31が拡張されることにより空間が形成されるため、帽子1を保管したり持ち運んだりするときは平面形状のままにしておき(
図5参照)、帽子として使用するときは前記の空間により通気性を確保することができる。切り込み11、21、31の作用により、平面状態の帽子1を頭部に被せれば自然に切り込み11、21、31が拡張される。
【0024】
また、本実施形態の帽子は3枚の平面シート10、20、30で構成されるため、1枚の平面シートで構成されるものと比して、光、雨その他の異物が帽子の内部に侵入するのをより防ぐことができる。また、3枚の平面シート10、20、30のそれぞれの切り込み11、21、31が設けられる範囲の大きさが異なるので、平面シートを立体状にする際に切り込み11、21、31同士の引っかかりを防ぎ、スムーズに立体状にすることができる。さらに、3枚の平面シート10、20、30の周縁部12、22、32を固定することによって構成されるので、製作は極めて容易である。
【0025】
本実施形態では帽子1を3枚の平面シート10、20、30で構成したが、平面シートの枚数に格別の制限はなく、2枚以上の平面シートで構成されていれば良い。平面シートの枚数が多いほど防水性や遮光性が向上するが、重量が増加することに考慮する必要がある。また、各平面シートの間に適切に空間を設けるため、最上位の平面シートにつまみ等を設けることもできる。この場合、当該つまみ等を上方に引っ張った場合に、各平面シートが連動するように糸等で連結することが好ましい。
【0026】
以上、折り畳み帽子に関する帽子の実施形態について説明したが、本発明に係る帽子は、ハットだけでなく、ハンチング、キャスケットなど、幅広く適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 帽子
10 平面シート
11 切り込み
12 周縁部
13 空間
20 平面シート
21 切り込み
22 周縁部
30 平面シート
31 切り込み
32 周縁部