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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】振動検出装置及び保持部
(51)【国際特許分類】
   A61B 7/00 20060101AFI20220616BHJP
   A61B 7/04 20060101ALI20220616BHJP
   G01H 11/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
A61B7/00 D
A61B7/04 A
G01H11/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020559096
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2019046310
(87)【国際公開番号】W WO2020116268
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2018226299
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業 術中の迅速な判断・決定を支援するための診断支援機器・システム開発」「術中の迅速な呼吸異常評価のための連続呼吸音モニタリングシステムの研究開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】317007266
【氏名又は名称】エア・ウォーター・バイオデザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】水野 智啓
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-325778(JP,A)
【文献】特開2009-2873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 7/00 - 7/04
G01H 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動センサーと、
前記振動センサーの検出信号を受信する信号受信部と、
一端側で前記振動センサーに接続され、他端側で前記信号受信部に接続され、前記検出信号を前記信号受信部に伝達するケーブルと、
前記ケーブル又は前記振動センサーのハウジングに取り付けられ、前記ケーブル又は前記ハウジングと一体的に形成され、前記ケーブルを前記ケーブルの少なくとも1箇所に曲げ形状が形成された状態に保持する保持部と、
を備え
前記保持部は、板状体と、前記板状体の一面側に形成され又は設けられた曲げ形状の溝部とを有し、前記溝部に前記ケーブルの一部を嵌め込んで前記ケーブルに取り付けられる振動検出装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記ケーブルの長さ方向における中央よりも前記一端側で、前記ケーブルに取り付けられ又は前記ケーブルと一体的に形成されている、
請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項3】
前記曲げ形状の曲げ角度は、45°以上180°以下とされている、
請求項1又は2に記載の振動検出装置。
【請求項4】
前記保持部は、前記ケーブルの複数箇所に前記曲げ形状が形成された状態で前記ケーブルを保持する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の振動検出装置。
【請求項5】
前記複数箇所のうちの少なくとも2箇所の前記曲げ形状は、互いに逆向きに曲げられた形状とされている、
請求項4に記載の振動検出装置。
【請求項6】
前記板状体と前記溝部とは、ゴム製の一体物とされている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の振動検出装置。
【請求項7】
一端側に接続される振動センサーの検出信号を他端側に接続される信号受信部に伝達するケーブルに取り付けられ、前記ケーブルと一体的に形成され又は前記振動センサー及び前記ケーブルと一体的に形成され、
板状体と、前記板状体の一面側に形成され又は設けられた曲げ形状の溝部とを有し、前記溝部に前記ケーブルの一部を嵌め込んで前記ケーブルに取り付けられ、
前記ケーブルを前記ケーブルの少なくとも1箇所に曲げ形状が形成された状態に保持する、
保持部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動検出装置及び保持部に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、その図1等に示されるように、収音部、放音部、及び、収音部と放音部とを接続し、収音部から放音部へ音声信号を供給するケーブルを備えた収音装置が開示されている。収音部は、マイク面に配置されているマイクロフォンを有し、マイク面を収音対象に向けて収音対象からの音(振動)を収音する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-188617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の収音装置は、収音時において、収音対象からの音以外の音を収音しないように、マイク面を収音対象に向けた状態で収音対象からの音(振動)を収音する。
しかしながら、前述の収音装置は、収音中に何らかの原因によりケーブルが振動すると、ケーブルの振動が収音部に伝わり、収音部で収音される虞がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題としては、振動センサーでのケーブルで発生した振動の検出量を低減することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
振動センサーと、
前記振動センサーの検出信号を受信する信号受信部と、
一端側で前記振動センサーに接続され、他端側で前記信号受信部に接続され、前記検出信号を前記信号受信部に伝達するケーブルと、
前記ケーブル又は前記振動センサーのハウジングに取り付けられ、前記ケーブル又は前記ハウジングと一体的に形成され、前記ケーブルを前記ケーブルの少なくとも1箇所に曲げ形状が形成された状態に保持する保持部と、
を備える振動検出装置、である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0008】
図1】第1実施形態の振動検出装置の概略図である。
図2A】第1実施形態の振動検出装置が備える保持部の斜視図である。
図2B】第1実施形態の振動検出装置が備える保持部の平面図である。
図3】第1実施形態の振動検出装置によるケーブルの振動音の測定結果と、第1比較形態の計測結果とを比較したグラフである。
図4】第1実施形態の振動検出装置によるケーブルの振動音の測定結果と、第1比較形態の計測結果と、第2比較形態の計測結果とを比較したグラフである。
図5】第2実施形態の振動検出装置が備える保持部の平面図である。
図6】第2実施形態の振動検出装置によるケーブルの振動音の測定結果と、第1比較形態の計測結果とを比較したグラフである。
図7】第3実施形態の振動検出装置が備える保持部の平面図である。
図8】第3実施形態の振動検出装置によるケーブルの振動音の測定結果と、第1比較形態の計測結果とを比較したグラフである。
図9A】第1実施例の試験(曲げ回数と振動音との関係性の試験)の第1サンプル(曲げ回数1回)の平面図である。
図9B】第1実施例の試験(曲げ回数と振動音との関係性の試験)の第2サンプル(曲げ回数2回)の平面図である。
図9C】第1実施例の試験(曲げ回数と振動音との関係性の試験)の第3サンプル(曲げ回数3回)の平面図である。
図9D】第1実施例の振動検出装置によるケーブルの振動音の測定結果と、比較例の計測結果とを比較したグラフである。
図10】第2実施例の試験(曲げ角度と振動音との関係性の試験)の結果を示すグラフであって、第2実施例の振動検出装置によるケーブルの振動音の測定結果と、比較例の計測結果とを比較したグラフである。
図11A】第1変形例の振動検出装置が備える保持部の平面図である。
図11B】第2変形例の振動検出装置が備える保持部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪概要≫
以下、本発明の一例である第1~第3実施形態、第1及び第2実施例、並びに、複数の変形例について、図面を参照しながら説明する。なお、参照するすべての図面では同様の機能を有する構成要素に同様の符号を付し、明細書では適宜説明を省略する。
【0010】
≪第1実施形態≫
以下、第1実施形態について図面を参照しながら説明する。まず、本実施形態の振動検出装置10(図1参照)の機能及び構成について説明する。次いで、本実施形態の振動検出装置10の振動検出動作について説明する。次いで、本実施形態の効果について説明する。
【0011】
<第1実施形態の振動検出装置の機能及び構成>
図1は、本実施形態の振動検出装置10の概略図である。振動検出装置10は、振動音を検出する機能を有する。本実施形態の振動検出装置10は、一例として、振動センサー20と、信号受信部30と、ケーブル40と、保持部50とを備えている。振動検出装置10が検出する振動音は、一例として、生体(図示省略)の生体音とされている。振動検出装置10は、生体の胸部に取り付けた振動センサー20で生体音(一例として呼吸音や心音)を検出し、ケーブル40を介して振動センサー20が検出した呼吸音の検出信号を信号受信部30に伝達するようになっている。すなわち、振動検出装置10は、一例として、生体音を取得する装置(生体音取得装置)とされている。
【0012】
〔振動センサー〕
振動センサー20は、生体に取り付けられて、生体音を検出する機能を有する。また、振動センサー20は、検出した生体音を検出信号に変換する機能を有する。振動センサー20は、一例として、静電容量方式のセンサーとされている。
振動センサー20は、振動検出部(図示省略)と、接続部(図示省略)と、ハウジング22とを有している。
振動検出部は、一例として円柱状とされ、生体音を検出して検出信号に変換するようになっている。接続部は、棒状の部材とされ、その一端部が振動検出部の外周の接続端子(図示省略)に、その他端部がケーブル40に接続されている。
ハウジング22は、図1に示されるように、ハット形状の本体部22Aと、本体部22Aから径方向に突出した突出部22Bとを有している。本体部22Aには、本体部22Aの鍔22A1側で開口する凹み(図示省略)が形成されている。突出部22Bには、その突出方向に沿った貫通孔(図示省略)が形成されている。そして、ハウジング22は、本体部22Aの凹み内に振動検出部を収容し、突出部22Bの貫通孔内に接続部を収容している。なお、振動センサー20は、鍔22A1の裏面(鍔22A1を挟んで突出部22B側と反対側に形成されている平面)を生体に接触させて、生体に取り付けられるようになっている。
【0013】
〔信号受信部〕
信号受信部30は、振動センサー20が変換した検出信号を受信する機能を有する。また、信号受信部30は、振動センサー20を動作させるための電力を生成する機能を有する。信号受信部30は、増幅器(図示省略)と、変換器(図示省略)と、電源(図示省略)とを有している。増幅器は、ケーブル40を介して受信した検出信号を増幅する機能を有する。変換器は、増幅器で増幅した増幅信号を外部装置(一例としてPC)のアプリケーションソフトウェアで解析可能なデータに変換する機能を有する。電源は、振動センサー20を動作させるための電力を生成する機能を有する。
【0014】
〔ケーブル〕
ケーブル40は、振動センサー20が変換した検出信号を、振動センサー20から信号受信部30に伝達する機能を有する。また、ケーブル40は、信号受信部30が有する電源が生成した電力を振動センサー20の振動検出部に供給する機能を有する。
ケーブル40は、図1に示されるように、一端側で振動センサー20の接続端子に接続され、他端側で信号受信部30に接続されている。ケーブル40は、複数の導線(図示省略)と、複数の導線を被覆する絶縁チューブ42とを有する、可撓性の部材とされている。
【0015】
〔保持部〕
保持部50は、図1に示されるように、ケーブル40に取り付けられて、ケーブル40を、ケーブル40の少なくとも1箇所に曲げ形状が形成された状態に保持する機能を有する。本実施形態の保持部50は、一例として、ケーブル40の4箇所(複数箇所)に曲げ形状が形成された状態で、ケーブル40を保持するようになっている。別言すると、本実施形態の保持部50は、ケーブル40に4箇所(複数箇所)に曲げられた部分BP1、BP2、BP3、BP4を形成させた状態で、ケーブル40を保持するようになっている。
なお、本明細書における「曲げ形状」とは、曲げられた部分(図1では、曲げられた部分BP1、BP2、BP3、BP4)の形状のように、2つの直線状の部分が互いに交差する配置関係となるように繋ぐ曲率を有する部分の形状、又は、同等の曲率半径を有する部分の形状を意味する。
【0016】
図2Aは保持部50の斜視図であり、図2Bは保持部50の平面図である。保持部50は、ベース52(板状体の一例)と、嵌め込み溝54(溝部の一例)とを有している。保持部50は、一例として、ベース52と嵌め込み溝54とが一体で形成されたゴム製の部材とされている。すなわち、保持部50は、ゴム製の一体物とされている。具体的に、本実施形態のゴムは、一例として、シリコンゴムとされている。なお、図1のケーブル40はその一部が省略されて図示されているが、保持部50は一例としてケーブル40の長さ方向における中央よりも一端側(振動センサー20側)で、ケーブル40に取り付けられている。
【0017】
ベース52は、その板厚方向から見ると、一例として、4つの角部分がR面取りされたような矩形状とされ、横幅Xが50mm、縦幅Yが50mmのサイズとされている。
嵌め込み溝54は、ベース52の一面から突出して設けられ、互いに対向する2つの壁で構成されたケーブル40を嵌め込むための溝とされている。嵌め込み溝54は、一例として、ベース52の横幅方向の一端から他端に亘っている。嵌め込み溝54は、4箇所(複数箇所)の曲がった部分CP1、CP2、CP3、CP4と、5箇所の直線状の部分LP1、LP2,LP3、LP4、LP5とを有している。部分LP1、部分CP1、部分LP2、部分CP2、部分LP3、部分CP3、部分LP4、部分CP4及び部分LP5は、ベース52の横幅方向の一端から他端に亘って、これらの記載順で繋がっている。
【0018】
ここで、直線状の部分LP2は、直線状の部分LP1に対して、約135°分異なる方向に沿って配置されている。すなわち、直線状の部分LP1と、直線状の部分LP2とを繋ぐ曲がった部分CP1は、直線状の部分LP1に対して直線状の部分LP2が約135°で交差して繋がるように曲がった部分となっている。曲がった部分CP2は、直線状の部分LP2に対して直線状の部分LP3が(曲がった部分CP1の曲がり方向とは逆方向に)約165°で交差して繋がるように曲がった部分となっている。曲がった部分CP3は、直線状の部分LP3に対して直線状の部分LP4が(曲がった部分CP1の曲がり方向とは同方向に)約165°で交差して繋がるように曲がった部分となっている。曲がった部分CP4は、直線状の部分LP4に対して直線状の部分LP5が(曲がった部分CP1の曲がり方向とは逆方向に)約135°で交差して繋がるように曲がった部分となっている。直線状の部分LP1と、直線状の部分LP5とは、互いにほぼ平行な(一方に対して他方の交差方向が±5°以内となるような)関係を有している。また、曲がった部分CP2、CP4は、曲がった部分CP1に対して逆方向に曲げられた形状となっている。
【0019】
以上の構成により、保持部50は、嵌め込み溝54にケーブル40の一部を嵌め込んで、曲がった部分CP1、CP2、CP3、CP4に、それぞれ、ケーブル40に曲げられた部分BP1、BP2、BP3、BP4を形成するようになっている。これに伴い、保持部50に保持されているケーブル40の曲げられた部分BP1、BP2、BP3、BP4は、それぞれ、約135°、曲げられた部分BP1の曲がり方向とは逆方向に約165°、約165°、曲げられた部分BP1の曲がり方向とは逆方向に約135°で曲げられるようになっている。すなわち、複数箇所の曲げられた部分BP1、BP2、BP3、BP4のうちの少なくとも2箇所の曲げ形状は、互いに逆向きに曲げられた形状とされている。また、複数箇所の曲げられた部分BP1、BP2、BP3、BP4の曲げ形状の曲げ角度は、45°以上180°以下とされている。
【0020】
以上が、本実施形態の振動検出装置10の機能及び構成についての説明である。
【0021】
<第1実施形態の振動検出動作>
次に、本実施形態の振動検出装置10による振動検出動作について図面を参照しながら説明する。
まず、測定者は、ベッド(図示省略)に仰向け状態の被検者の生体の頸部や胸部などに、複数の振動センサー20を接触させる。また、測定者は、ケーブル40に取り付けられている保持部50を生体の腹部に配置する。この場合、保持部50は、ベース52の裏面(嵌め込み溝54が形成されている側の面の反対側の面)で生体の腹部に接触するように配置される。
次いで、測定者は、被検者に腹部にシーツ(図示省略)を被せる。
次いで、測定者は、信号受信部30及び信号受信部30に接続された外部装置を起動させ、被検者の生体音の検出動作を開始する。これに伴い、信号受信部30の電源は振動センサー20を動作させるための電力を生成し、生成された電力はケーブル30を介して振動センサー20の振動検出部に供給される。また、振動検出部は検出した生体音(呼吸音)を逐次検出信号に変換する。変換された検出信号はケーブル30を介して信号受信部30の増幅器に伝達される。増幅器は受信した検出信号を増幅して、アプリケーションソフトウェアで解析可能なデータに変換する。変換されたデータは信号受信部30に接続された外部装置に送信されて、アプリケーションソフトウェアにより解析される。
そして、定められた検出動作時間が経過すると、外部装置はそのアプリケーションソフトウェアにより測定者に生体音の検出動作が終了したことを報知して、本実施形態の振動検出装置10による振動検出動作が終了する。
なお、アプリケーションソフトウェアにより解析された生体音の解析結果は、周波数(Hz)に対する加速度(dB)の関係として出力される(図3参照)。ここで、加速度(dB)は、音圧に相当する物理量である。すなわち、加速度(dB)の値が大きいほど、音圧の値が大きい。
【0022】
以上が、本実施形態の振動検出装置10の振動検出動作についての説明である。
【0023】
<第1実施形態の効果>
次に、本実施形態の効果(第1~第5の効果)について図面を参照しながら説明する。以下、本実施形態を、後述する各比較形態(図示省略)と比較して説明する。なお、後述する各比較形態の構成要素のうち、第1実施形態と同様の構成要素を用いる場合、第1実施形態の構成要素と同じ名称、符号等を用いて、各比較形態を説明する。
【0024】
〔第1の効果〕
図3は、本実施形態の振動検出装置10によるケーブル40の振動音の測定結果と、後述する第1比較形態の計測結果とを比較したグラフである。ここで、第1比較形態の振動検出装置は、保持部50を備えていない点のみ、本実施形態の振動検出装置10と異なる。このグラフを基となった試験では、振動センサー20を生体の胸部に取り付けることなく、ケーブル40の一部にシーツをこすり付けて(振動を与えて)、計測したものである。
第1比較形態の場合、基準となる暗騒音に対して、特に60(Hz)以上の周波数において、加速度(dB)が大きくなっていた。すなわち、図3のグラフにおける、第1比較形態のスペクトルと暗騒音のスペクトルとの差分は、ケーブル40で発生した振動の検出量といえる。
これに対して、本実施形態の場合、全体的に暗騒音に対して、計測したすべての周波数において、ほぼ同等の加速度(dB)となっていた。なお、本実施形態の場合、ケーブル40に与える振動は、ケーブル40における保持部50と信号受信部30との間の部分とした。
本実施形態の場合、ケーブル40で発生した振動はケーブル40の曲げられた部分BP1、BP2、BP3、BP4で吸収されたと考えられる。
したがって、本実施形態の振動検出装置10は、ケーブル40をケーブル40の少なくとも1箇所に曲げ形状が形成された状態に保持する保持部50を備えていることにより、振動センサー20でのケーブル40で発生した振動の検出量を低減することができる。また、本実施形態の保持部50は、曲がった部分CP1、CP2、CP3、CP4に、それぞれ、ケーブル40に曲げられた部分BP1、BP2、BP3、BP4を形成することで、ケーブル40で発生した振動を吸収することができる。
【0025】
〔第2の効果〕
第1の効果の説明のとおり、ケーブル40における保持部50より一方側で発生した振動の一部又は全部は保持部50で吸収されて、他方側に伝搬されない。保持部50がケーブル40の長さ方向における中央よりも一端側(振動センサー20側)でケーブル40に取り付けられている本実施形態は、保持部50がケーブル40の長さ方向における中央又は中央よりも他端側(信号受信部30側)でケーブル40に取り付けられている比較形態に比べて、ケーブル40における保持部50と振動センサー20との距離が短い(図1参照)。例えば、保持部50がケーブル40の長さ方向における中央よりも一端側(振動センサー20側)に20cmずれた位置でケーブル40に取り付けられている本実施形態の一例の場合、上記比較形態に比べて、ケーブル40における保持部50と振動センサー20との距離が少なくとも20cm分短い。
したがって、本実施形態の振動検出装置10は、上記比較形態に比べて、ケーブル40で発生した振動を検出し難い。
本効果は、ケーブル40における保持部50の取り付け位置がケーブル40の長さ方向における振動センサー20に近いほど好ましい。そのため、保持部50は、ケーブル40の振動センサー20側の端部に取り付けられている又は、保持部50が振動センサー20のハウジング22と一体的に構成されていてもよい。
なお、本効果を説明するにあたり、比較対象とした、上記比較形態は、第1の効果を奏する保持部50を備えている。そのため、上記比較形態は、本発明の技術的範囲に属する形態といえる。
【0026】
〔第3の効果〕
また、本実施形態の保持部50は、複数箇所の曲がった部分CP1、CP2、CP3、CP4のうち少なくとも2箇所の曲げ形状が互いに逆向きに曲げられた形状とされている(図2A及び図2B参照)。そのため、本実施形態のケーブル40の複数箇所の曲げられた部分BP1、BP2、BP3、BP4のうちの少なくとも2箇所の曲げ形状は、互いに逆向きに曲げられた形状となる(図1参照)。具体的には、同じ方向に曲げられた部分BP1、BP3に対して、曲げられた部分BP2、BP4は、逆方向に曲げられる。その結果、ケーブル40における保持部50に保持されている部分の一端及び他端は、互いにほぼ逆方向に向く(図1参照)。
したがって、本実施形態によれば、ケーブル40の保持部50に保持されている部分以外の部分を曲げることなく、保持部50を挟んで、振動センサー20を信号受信部30の反対側に配置し易い。
【0027】
〔第4の効果〕
本実施形態の保持部50は、ベース52と、ベース52の一面側に設けられている嵌め込み溝54とを有している。そして、被検者の生体音を検出する場合、保持部50はベース52の裏面を例えば腹部に接触させた状態で配置される。
したがって、本実施形態の保持部50は、振動検出動作時に、安定して配置し易い。
【0028】
〔第5の効果〕
図4は、本実施形態の振動検出装置10によるケーブル40の振動音の測定結果と、第1比較形態の計測結果と、後述する第2比較形態の計測結果とを比較したグラフである。ここで、第2比較形態の振動検出装置(図示省略)は、保持部50が硬質樹脂(プラスティック)製である点のみ、本実施形態の振動検出装置10と異なる。なお、このグラフを基となった試験の方法は、図3のグラフの場合と同様である。
第2比較形態の場合、第1比較形態の場合に比べて、計測したすべての周波数において加速度(dB)が小さくなっていた。これに対して、本実施形態の場合、第2比較形態に比べて、計測したすべての周波数において加速度(dB)が小さくなっていた。すなわち、本実施形態の場合、第2比較形態の場合に比べて、ケーブル40で発生した振動が保持部50で吸収され易かった。
この理由は、本実施形態の保持部50がゴム製であり、第2比較形態の保持部50が硬質樹脂製であることから、本実施形態の保持部50は、第2比較形態の保持部50よりも、振動を吸収し易いためと考えられる。
したがって、ゴム製である本実施形態の保持部50は、硬質樹脂等の硬い部材である保持部50に比べて、ケーブル40で発生した振動を吸収し易い。これに伴い、本実施形態の振動検出装置10は、振動センサー20でのケーブル40で発生した振動の検出量を低減することができる。
なお、本効果を説明するにあたり、比較形態とした第2比較形態は、図4のグラフに示されるように、第1の効果の説明で比較形態とした第1比較形態に比べて、ケーブル40で発生した振動の検出量が小さい。そのため、第2比較形態は、第1の効果を奏する形態であることから、本発明の技術的範囲に属する形態といえる。
また、本実施形態の保持部50は、被検者の生体音を検出する場合にベース52がベース52の裏面を腹部に接触させた状態で配置されるような場合、第2比較形態に比べて、接触安定性を確保し易い点でも有効といえる。
【0029】
以上が、本実施形態の効果についての説明である。また、以上が、第1実施形態についての説明である。
【0030】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態について図5を参照しながら説明する。以下、後述する本実施形態の構成要素のうち、第1実施形態と同様の構成要素を用いる場合、第1実施形態の構成要素と同じ名称、符号等を用いて、本実施形態を説明する。
【0031】
<第2実施形態の振動検出装置の機能及び構成並びに振動検出動作>
本実施形態の振動検出装置(図示省略)は、保持部50Aが鋸刃状の針金54Aと、針金54Aをケーブル40に固定するためのテープ(図示省略)とされている。
鋸刃状の針金54Aは、4箇所(複数箇所)の曲がった部分CP1、CP2、CP3、CP4と、5箇所の直線状の部分LP1、LP2,LP3、LP4、LP5とを有している。部分LP1、部分CP1、部分LP2、部分CP2、部分LP3、部分CP3、部分LP4、部分CP4及び部分LP5は、これらの記載順で繋がっている。ここで、部分CP1及び部分CP3の曲げ角度は約90°とされ、部分CP2及び部分CP4の曲げ角度は部分CP1の曲げ角度と逆方向の約90°とされている。
以上の構成により、鋸刃状の針金54Aにケーブル40の一部を沿わせた状態で針金54Aがケーブル40の一部にテープで取り付けられると、ケーブル40の一部には、曲がった部分CP1、CP2、CP3、CP4に対応して、曲げられた部分BP1、BP2、BP3、BP4が形成されるようになっている。
以上が、本実施形態における第1実施形態と異なる点である。また、本実施形態の振動検出動作は、第1実施形態の場合と同様である。
【0032】
<第2実施形態の効果>
次に、本実施形態の効果について図6を参照しながら説明する。図6のグラフは、本実施形態の振動検出装置によるケーブル40の振動音の測定結果と、第1比較形態の計測結果とを比較したグラフである。このグラフを基となった試験の方法は、図3のグラフの場合と同様である。
本実施形態の場合、第1比較形態の場合に比べて、計測したすべての周波数において加速度(dB)が小さくなっていた。すなわち、本実施形態の保持部50Aは、第1実施形態の第1の効果を奏する。また、本実施形態は、第1実施形態の第2の効果及び第3の効果を奏するといえる。
なお、本実施形態の場合、保持部50Aを構成する針金54Aは変形可能である。そのため、本実施形態の場合、針金54Aを変形させることに伴い、曲がった部分CP1、CP2、CP3、CP4の曲げ角度を容易に変更することができる。この点において、本実施形態の保持部50Aは、第1実施形態の保持部50よりも優れている。
【0033】
以上が、本実施形態の効果についての説明である。また、以上が、第2実施形態についての説明である。
【0034】
≪第3実施形態≫
次に、第3実施形態について図7を参照しながら説明する。以下、後述する本実施形態の構成要素のうち、第1実施形態と同様の構成要素を用いる場合、第1実施形態の構成要素と同じ名称、符号等を用いて、本実施形態を説明する。
【0035】
<第3実施形態の振動検出装置の機能及び構成並びに振動検出動作>
本実施形態の振動検出装置(図示省略)は、ケーブル40Bを構成する絶縁チューブ42Bの一部に曲がった部分CP1、CP2、CP3、CP4、CP5、CP6と、直線状の部分LP1、LP2、LP3とが形成されている。部分CP1,部分CP2、部分LP1、部分CP3、部分LP2、部分CP4、部分LP3、部分CP5、部分CP6は、これらの記載順で繋がっている。ここで、本実施形態では、部分CP1,部分CP2、部分LP1、部分CP3、部分LP2、部分CP4、部分LP3、部分CP5及び部分CP6の組合せを、保持部50Bとする。また、本実施形態では、ケーブル40Bの絶縁チューブ42Bに被覆された複数の導線をケーブルの一例とする。
ここで、部分CP1の曲げ角度は約47°とされ、部分CP6の曲げ角度は部分CP1の曲げ角度と逆方向の約47°とされている。部分CP2の曲げ角度は約135°とされ、部分CP5の曲げ角度は部分CP2の曲げ角度と逆方向の約135°とされている。部分CP3の曲げ角度は約165°とされ、部分CP4の曲げ角度は部分CP3の曲げ角度と逆方向の約165°とされている。
以上の構成により、保持部50Bに被覆されている複数の導線は、曲がった部分CP1、CP2、CP3、CP4、CP5、CP6に対応して、それぞれ、曲げられた部分が形成されるようになっている。
以上が、本実施形態における第1実施形態と異なる点である。また、本実施形態の振動検出動作は、第1実施形態の場合と同様である。
【0036】
なお、前述の説明では、保持部50Bをケーブルの一例である複数の導線と別部材であるとした。しかしながら、別部材に限られず、保持部50Bはケーブル40Bと一体的に形成されていてもよい。
【0037】
<第3実施形態の効果>
次に、本実施形態の効果について図8を参照しながら説明する。図8のグラフは、本実施形態の振動検出装置によるケーブル40Bの振動音の測定結果と、第1比較形態の計測結果とを比較したグラフである。このグラフを基となった試験の方法は、図3のグラフの場合と同様である。
本実施形態の場合、第1比較形態の場合に比べて、計測したすべての周波数において加速度(dB)が小さくなっていた。すなわち、本実施形態の保持部50Bは、第1実施形態の第1の効果を奏する。また、本実施形態は、第1実施形態の第2の効果及び第3の効果を奏するといえる。
【0038】
以上が、本実施形態の効果についての説明である。また、以上が、第3実施形態についての説明である。
【0039】
≪実施例≫
次に、各実施例(第1実施例及び第2実施例)について図面を参照しながら説明する。以下、後述する各実施例の構成要素のうち、第1実施形態と同様の構成要素を用いる場合、第1実施形態の構成要素と同じ名称、符号等を用いて、本実施形態を説明する。
【0040】
<第1実施例>
第1実施例は、ケーブル40の曲げ回数(曲げ形状が形成されている部分の個数)と振動音との関係性について、曲げ回数が1~3回のケーブル40(第1~第3サンプル)と、曲げ形状のない第1比較形態とについて試験をした。
ここで、図9Aは、第1実施例の試験の第1サンプル(曲げ回数1回)の平面図である。図9Bは、第1実施例の試験の第2サンプル(曲げ回数2回)の平面図である。図9Cは、第1実施例の試験の第3サンプル(曲げ回数3回)の平面図である。各サンプルのケーブル40は、それぞれの曲げ回数分曲げられて、テープで試験台(図示省略)固定した。
図9Dは、第1実施例の振動検出装置10によるケーブル40の振動音の測定結果と、比較例(第1比較形態)の計測結果とを比較したグラフである。このグラフを基となった試験の方法は、図3のグラフの場合と同様である。
【0041】
図9Dのグラフに示されるように、曲げ回数が多いほど、ケーブル40で発生した振動の振動センサー20での検出量は低減されることが分かった。特に、曲げ回数が3回以上では振動センサー20で検出される振動の検出量が暗騒音とほぼ同等となることから、曲げ回数は3回以上が好ましいことが分かった。
【0042】
以上が、第1実施例についての説明である。
【0043】
<第2実施例>
第2実施例は、ケーブル40の曲げ角度と振動音との関係性について、曲げ角度が45°、90°、135°及び180°の第1~第4サンプルと、曲げ形状のない(曲げ角度が0°の)第1比較形態とについて試験をした。
ここで、図10は、第2実施例の試験の結果を示すグラフであって、第2実施例の振動検出装置10によるケーブル40の振動音の測定結果と、比較例(第2比較形態)の計測結果とを比較したグラフである。このグラフを基となった試験の方法は、図3のグラフの場合と同様である。
【0044】
図10のグラフに示されるように、第1~第4サンプルは、第1比較形態に比べて、ケーブル40で発生した振動の振動センサー20での検出量は低減されることが分かった。すなわち、曲げ角度が45°以上180°以下の場合は、曲げ形状がない場合に比べて、振動センサー20でのケーブル40で発生した振動の検出量を低減させる効果があることが分かった。
【0045】
以上が、第2実施例についての説明である。また、以上が、実施例についての説明である。
【0046】
以上のとおり、本発明について第1~第3実施形態並びに第1実施例の第1~第3サンプル及び第2実施例の第1~第4サンプルを一例として説明したが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲には、例えば、下記のような形態(変形例)も含まれる。
【0047】
例えば、各実施形態の振動検出装置10は、一例として生体音を検出対象とする生体音取得装置であるとした。しかしながら、検出対象が音(振動)であれば、各実施形態の振動検出装置10の検出対象は、生体音でなくてもよい。例えば、振動源を有する機械(図示省略)からの音を検出する装置その他の検出装置であってもよい。
【0048】
また、各実施形態の振動センサー20は、静電容量方式のセンサーであるとして説明した。しかしながら、検出対象の音を検出することができれば、振動センサー20の方式は、静電容量方式でなくてもよい。例えば、圧電方式、渦電流方式その他の方式であってもよい。
【0049】
また、第1実施形態の保持部50は、ベース52と、嵌め込み溝54とを有し、これらは一体物であるとして説明した(図2A及び図2B参照)。しかしながら、ベース52と、嵌め込み溝54とは別部材とし、保持部50はこれらの組立体としてもよい。
【0050】
また、第1実施形態の保持部50は、ベース52と、ベース52の一面側から突出するように設けられた嵌め込み溝54とを有しているとして説明した(図2A及び図2B参照)。しかしながら、嵌め込み溝54がケーブル40の一部を嵌め込んでケーブル40の一部に曲がった形状を形成することができれば、嵌め込み溝54はベース52に形成された凹み(切り欠き)であってもよい。この変形例の場合、第1実施形態の保持部50に比べて、さらに簡単な構造にすることができる(低コストにできる)。
【0051】
また、第1実施形態の保持部50は、シリコンゴム製であるとして説明した。しかしながら、シリコンゴム以外のゴムで形成されていてもよい。例えば、保持部50は、ウレタンその他のゴムで形成されていてもよい。
【0052】
また、第1実施形態の保持部50は、ベース52を有しているとして説明した(図2A及び図2B参照)。しかしながら、ケーブル40の一部に曲がった形状を保持することができれば、ベース52はなくてもよい。例えば、図11Aの第1変形例の保持部50Cのように、曲げ部分が形成されたU字溝壁であってもよい。また、図11Bの第2変形例の保持部50Dのように、2つの直線状の溝壁50D1と、2つの溝壁50D1を定められた交差角度で保持することができる連結棒50D2とで構成される部材としてもよい。
【0053】
この出願は、2018年12月3日に出願された日本出願特願2018-226299号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0054】
10 振動検出装置
20 振動センサー
30 信号受信部
40 ケーブル
50 保持部
52 ベース(板状体の一例)
54 嵌め込み溝(溝部の一例)
BP1 曲げられた部分
BP2 曲げられた部分
BP3 曲げられた部分
BP4 曲げられた部分
CP1 曲がった部分
CP2 曲がった部分
CP3 曲がった部分
CP4 曲がった部分
LP1 直線状の部分
LP2 直線状の部分
LP3 直線状の部分
LP4 直線状の部分
LP5 直線状の部分
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11A
図11B