(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】ヘモグロビンの酸化還元度合いのカラー画像化装置
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20220616BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220616BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20220616BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20220616BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20220616BHJP
H04N 9/04 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
A61B10/00 E
G01N21/27 A
A61B5/1455
A61B1/045 617
A61B1/00 513
H04N9/04 Z
(21)【出願番号】P 2020098998
(22)【出願日】2020-06-07
【審査請求日】2020-06-16
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】594121888
【氏名又は名称】有限会社石丸研究所
(72)【発明者】
【氏名】石丸 正
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-508735(JP,A)
【文献】特開平07-287557(JP,A)
【文献】特開2011-151596(JP,A)
【文献】特開2018-202089(JP,A)
【文献】特開2015-091467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
G01N 21/27
A61B 5/1455
A61B 1/045
A61B 1/00
H04N 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトを含む動物のヘモグロビンにおいて光の吸収が、還元ヘモグロビンが酸化ヘモグロビンより吸収が多い波長λ1で撮影した画像をλ1画像、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンで等吸収となる波長λ2を中心として好ましくは±10nmの波長で撮影した画像をλ2画像、酸化ヘモグロビンが還元ヘモグロビンより吸収が多い波長λ3で撮影した画像をλ3画像とした時、λ1画像、λ2画像、λ3画像をそれぞれ赤画像、緑画像、青画像のいずれかに1対1で対応させ、RGBカラー方式にて加色混合にてカラー画像化して、画像を表示、記録、解析する方法であり、連続撮影や動画撮影を含む方法。
【請求項2】
請求項1におけるλ1画像、λ2画像、λ3画像を撮影する際の光の波長λ1、λ2、λ3に近赤外線領域を含む本発明の方法。
【請求項3】
請求項1及び2における画像生成方法と
医療機器を組み合わせた本発明による装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトやヒト以外の動物のヘモグロビンの酸化還元度合いを、光学的に検出しカラー画像化し表示するものである。なお、本発明における酸化還元度合いとは、計算により算出された酸化還元度ではなく、酸化還元傾向の意味として用語の定義をする。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織のヘモグロビンの分布を画像化する方法は、赤外線や可視光を用い、血管を強調表示するものが知られ、特許文献1のように血管を撮影する目的の物や特許文献2のように内視鏡に応用され、癌の毛細血管発見に寄与するものなどがある。
【0003】
既知の方法では、特許文献2のように、酸化ヘモグロビンで吸収の多い波長の近赤外光や還元へログロビンで吸収の多い近赤外光または可視光の一方または、両方を用いて、その酸素飽和度を計算したうえ画像化したり、特許文献3にあるように、更に可視光画像に重ね合わせた、ヘモグロビン酸素飽和度のマップを表示したりするものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-22098
【文献】特開平02-104332
【文献】特表2017-526899
【非特許文献】
【0005】
【文献】Optical recordings from the human nasal mucosa in response to olfactory stimulation. Ishimaru T, Reden J, Krone F, Scheibe M. Neurosci Lett. 2007 Aug 23;423(3):231-5. Epub 2007 Aug 8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の方法では、生体のヘモグロビンが画像化される場合、一つの波長の赤外線を生体組織を透過または反射させ血管の画像を得る方法などが知られているが、疑似カラー表示されることはあっても、基本は白黒画像である。この方法では、基準となる画像と比較をしなければ酸化還元の度合は、わからない。また、複数の波長の光を使い、酸化飽和度を計算して画像化し、可視光の画像に追加情報として表示する方法がある。この場合は、可視光画像との重ね合わせになるため、可視光画像とヘモグロビン吸収波長の画像の両方を取得しなければならず手間がかかる。非特許文献1のように、一つの波長の光を用いて、酸化還元を変化前の画像と比較して変化分を疑似カラー表示することなども行われてきたが、やわらかい舌のような組織では、形態が変化するため、元の画像と比較できず、支障をきたす。そこで、ヘモグロビンの酸化還元度合いを、より直感的に人間が色画像として認識できる方法を考案した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いまその解決手段を説明すれば、本発明は、光の吸収において還元ヘモグロビンが酸化ヘモグロビンより吸収が多い波長λ1で撮影したλ1画像、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンが等吸収となる波長を中心として好ましくは±10nmの波長λ2で撮影したλ2画像、酸化ヘモグロビンが還元ヘモグロビンより吸収が多い波長λ3で撮影したλ3画像を、それぞれ赤成分のR画像、緑成分のG画像、青成分のB画像に対応させ、RGBカラー画像として合成し、色相、彩度、輝度の調整し、表示するものである。
【0008】
λ1画像、λ2画像、λ3画像とR画像、G画像、B画像の対応は、1対1であれば良く、必ずしもλ1画像がR画像、λ2画像がG画像、λ3画像がB画像の対応関係でなくてもよく、他の組み合わせであっても良い。
【発明の効果】
【0009】
本案は、以上のような構造であるから、これを使用するときは、外部光を遮断した状態、または、λ1、λ2、λ3以外の波長の光をカットした光学系をもつカメラで対象物を撮影し処理することによって、ヘモグロビンの酸化還元度合いが色の変化として画像化される。また、本発明における生成されたカラー画像は、特許文献3のような、ヘモグロビンの酸素飽和度を計算したうえ画像化したものではなく、ヘモグロビン酸素飽和度画像を可視光画像に重ね合わせる必要もない。すなわち、本発明はカメラの出力からより直接的に視覚的に訴えるカラー画像を生成することができる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
いまその解決手段を図面1、図面2、図面3を追いながら説明すれば、本考案は、静止画または動画を撮影する電子的なカメラ(1)、時系列的に順次点灯する3種のλ1、λ2、λ3の波長のナローバンド光源(2)(3)(4)、この3光源の光を拡散する拡散板(5)、その照射野(6)、対象物(9)、光源の光量と点灯タイミングの制御及び画像取り込みインターフェース(7)、データ処理用コンピュータ(8)よりなる。拡散板(5)は、λ1、λ2、λ3の波長の3つの光源(2)(3)(4)の照射野(6)が均一に重なり合わせるためのもので、光源自体を工夫し照射野が均一に重なり合わせることができれば、省略しても良いし、他の方法でもよい。
【0012】
上記の3光源(2)(3)(4)は、波長がナローバンドであれば良く、発光ダイオード、放電管、またはレーザーのほか、白色光源に光学フィルターやダイクロイックミラーなどを用いて、ナローバンド光を抽出したものでもよい。
【0013】
図面2は、ヘモグロビンにおける光の波長と吸収を示した例である。このような場合、前記の「課題を解決する手段」における条件を満たすものとして、λ1を760nm、λ2を800nm、λ3を950nmとすることができる。この波長は、あくまでも一例であって、前記の条件を満たせば良い。
【0014】
前記カメラ(1)に、撮影すべきナローバンド光以外の波長の光を除去する光学フィルターを装着してもよく、前記3種のナローバンド光の波長λ1、λ2、λ3が近赤外線領域にあるときは、可視光をカットし赤外線のみを透過するような光学フィルターやダイクロイックミラーなどを用いてもよい。
【0015】
前記カメラ(1)にシャッターを装着し、光源が点灯している時だけ露光するようにしてもよい。
【0016】
光源の光量と点灯タイミングの制御及び画像取り込みインターフェース(7)は、カメラ(1)あるいは、コンピュータ(8)に内蔵してもよく、光源の光量と点灯タイミングの制御と画像取り込みインターフェースは、別々の筐体であってもよい。
【0017】
対象物(9)として例示しているのは、口から突き出した舌である。これを、還元ヘモグロビンが酸化ヘモグロビンより吸収が多い波長であるλ1の光源(2)で照明し撮影した画像をλ1画像(11)、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンが等吸収となる波長を中心として好ましくは±10nmの波長λ2の光源(3)で照明し、撮影した画像をλ2画像(12)、酸化ヘモグロビンが還元ヘモグロビンより吸光が多い波長λ3の光源(4)で照明し撮影した画像をλ3画像(13)とする。なお、これら3つの光源は、時系列的に切り替えて点灯するものとする。
【0018】
λ1画像(11)を赤画像(14)、λ2画像(12)を緑画像(15)、λ3画像(13)を青画像(16)に割り振り、RGBカラー方式にて加色混合(17)にてコンピュータ(8)にてカラー画像化する。また、前記3波長画像、すなわちλ1画像、λ2画像、λ3画像とRGBカラー画像を構成するための、赤画像、緑画像、青画像との対応はそれぞれが1対1対応であれば良く、他の組み合わせであってもよい。
【0019】
実施例では3波長λ1、λ2、λ3の光源を使い、3波長の画像を撮影しているが、本考案は、前記λ1、λ2、λ3の3波長の画像をもちいてカラー画像を生成することにあり、光源に白色光源や前記3波長の混合光の光源を用い、3台のカメラを用いカメラ側にλ1、λ2、λ3の3波長の光学フィルターやダイクロイックミラーなどを設置して、各波長の画像を撮影してもよい。
【0020】
3台のカメラを用いる上記の方法の代わりに、前記λ1、λ2、λ3の3波長のフィルターを撮像素子上に構成した1台のカメラを用いてもよい。
【0021】
このようにして、生成されたRGBカラー画像の、色相、彩度、輝度を調整し見やすくする機能(18)を持たせることができる。また、色相、彩度、輝度を数値データやグラフとして出力する機能をコンピュータ(8)に持たせることができる。
【0022】
本実施例の結果として、舌の血流における酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビン分布が舌の色調の違いとして画像化(19)される。もちろん、これは例であるから、舌以外の組織でも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る撮影技術は、生物組織のヘモグロビンの酸化還元度合いをカラー画像として可視化することができ、有用な医療機器技術であり、医療機器産業にて製造価値があるため、産業上の利用価値がある。
【符号の説明】
【0024】
1:カメラ
2:λ1光源(還元ヘモグロビンが酸化ヘモグロビンより吸収が多い波長)
3:λ2光源(酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンが等吸収となる波長)
4:λ3光源(酸化ヘモグロビンが還元ヘモグロビンより吸収が多い波長)
5:拡散板
6:照射野
7:光源の制御回路とカメラインターフェース
8:コンピュータ
9:対象物(本例では舌)
11:λ1画像(還元ヘモグロビンが酸化ヘモグロビンより吸収が多い波長で撮影)
12:λ2画像(酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンが等吸収となる波長で撮影)
13:λ3画像(酸化ヘモグロビンが還元ヘモグロビンより吸収が多い波長で撮影)
14:R画像(赤)
15:G画像(緑)
16:B画像(青)
17:RGB加色混合によるカラー画像生成
18:色相、彩度、輝度の調整
19:RGBカラー画像の表示