(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】車両用温度調整装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20220616BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20220616BHJP
B60H 1/08 20060101ALI20220616BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
B60H1/34 671A
B60H1/34 651B
B60H1/34 611Z
B60H1/00 101L
B60H1/00 101E
B60H1/00 101Z
B60H1/08 611A
B60H1/22 611C
(21)【出願番号】P 2018107617
(22)【出願日】2018-06-05
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】金石 純司
(72)【発明者】
【氏名】横田 和也
(72)【発明者】
【氏名】大住 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】吉末 知弘
(72)【発明者】
【氏名】落合 洸矢
(72)【発明者】
【氏名】加嶋 利浩
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-048742(JP,A)
【文献】特開2006-298016(JP,A)
【文献】特開2008-296837(JP,A)
【文献】特開2013-169898(JP,A)
【文献】特開2014-034271(JP,A)
【文献】特開2019-209840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0187211(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調風を車室内に吹出して車室内温度を調整する空調手段が、備えられている車両用温度調整装置において、
前記空調手段の昇温作動に関連する関連因子状況を検出する関連因子状況検出手段と、
前記関連因子状況検出手段からの情報に基づき、前記関連因子状況が正規状態に比して低下している所定状態にあると判断したときには、前記空調手段を制御して、前記空調風の吹出し方向を、乗員の下肢に近接した状態で対向する内装に向けさせる制御手段と、
が備えられ、
前記空調手段に、空調風を温風とするための加温用ヒータが備えられ、
前記関連因子状況検出手段が、前記関連因子状況として、前記加温用ヒータの作動因子状況を検出するように設定され、
前記制御手段は、前記関連因子状況検出手段が検出した前記加温用ヒータの作動因子状況に基づき前記加温用ヒータが作動し難い状態にあると判断したときには、前記所定状態にあると判断するように設定され、
前記加温用ヒータが、バッテリを熱源として利用するものとされ、
前記関連因子状況検出手段が、前記バッテリのバッテリ残量と車室外の外気温度とを検出するように設定され、
前記制御手段は、前記関連因子状況検出手段からの情報に基づき、前記バッテリ残量が所定量以下で且つ前記外気温度が所定温度以下にあると判断したときには、前記所定状態にあると判断するように設定されている、
ことを特徴とする車両用温度調整装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記空調風を吹出すための複数の吹出し口が備えられ、
前記制御手段は、前記所定状態にあると判断したときには、前記複数の吹出し口のうち、乗員下肢における下腿に近接した状態で対向する内装に向くものを選択するように設定されている、
ことを特徴とする車両用温度調整装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記制御手段は、前記所定状態にあると判断したときには、前記吹出し口として、乗員に隣り合うドアに向くものを選択するように設定されている、
ことを特徴とする車両用温度調整装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、
前記
制御手段は、前記空調風の吹出しの向きを、乗員存在可能空間を経ないようにした状態で前記内装に向かわせるように設定されている、
ことを特徴とする車両用温度調整装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記空調風を吹出すための吹出し口が、前記乗員の下肢の近傍において配置され、
前記吹出し口に、吹出し方向を調整できる風向き調整羽根が備えられ、
前記制御手段は、前記所定状態にあると判断したとき、前記風向き調整羽根を制御して、該風向き調整羽根を備える吹出し口からの前記空調風の吹出しの向きを、乗員存在可能空間を経ずに直接的に、前記内装に向かわせるように設定されている、
ことを特徴とする車両用温度調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用温度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用温度調整装置には、特許文献1、特許文献2に示すようなものが提案されている。特許文献1には、乗員の暖房感を損なわないようにしつつ、車載機器の速やかな暖機を実現すべく、乗員と直接接触するシートを暖めるシートヒータを設ける一方、そのシートヒータがON且つエンジンの暖機時には、空調装置における送風機の送風能力を低下させるものが示され、特許文献2には、エアコン作動中にシートヒータを作動させることによって消費電力が増大することを抑制するべく、通電されているシートヒータの数が多いときほどエアコンの送風量を低減したものが開示されている。
【0003】
ところで、一般に、車室内において乗員が寒さを感じるとき、乗員が空調手段(空調装置)の車室内設定温度を上げれば、車室内の実際の温度は、空調風をもって車室内設定温度まで上昇され、乗員は、温熱快適性を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-132412号公報
【文献】特開2010-143468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、エンジン冷却水温が低いエンジンの暖機時や、空調風を暖めるための加温用ヒータをバッテリにより作動させる場合において、外気が低温下にあるにもかかわらずバッテリ残量が少ないとき等には、空調手段の吹出し口から暖かい空調風が吹出されにくくなり、この空調手段が暖かい空調風を吹出せない間、乗員は、寒さを我慢しなければならない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、その目的は、空調手段が暖かい空調風を吹出せない状況下にあっても、乗員の温熱快適性を効率的に改善できる車両用温度調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明にあっては、下記(1)~(5)とした構成とされている。
(1)空調風を車室内に吹出して車室内温度を調整する空調手段が、備えられている車両用温度調整装置において、
前記空調手段の昇温作動に関連する関連因子状況を検出する関連因子状況検出手段と、
前記関連因子状況検出手段からの情報に基づき、前記関連因子状況が正規状態に比して低下している所定状態にあると判断したときには、前記空調手段を制御して、前記空調風の吹出し方向を、乗員の下肢に近接した状態で対向する内装に向けさせる制御手段と、
が備えられ、
前記空調手段に、空調風を温風とするための加温用ヒータが備えられ、
前記関連因子状況検出手段が、前記関連因子状況として、前記加温用ヒータの作動因子状況を検出するように設定され、
前記制御手段は、前記関連因子状況検出手段が検出した前記加温用ヒータの作動因子状況に基づき前記加温用ヒータが作動し難い状態にあると判断したときには、前記所定状態にあると判断するように設定され、
前記加温用ヒータが、バッテリを熱源として利用するものとされ、
前記関連因子状況検出手段が、前記バッテリのバッテリ残量と車室外の外気温度とを検出するように設定され、
前記制御手段は、前記関連因子状況検出手段からの情報に基づき、前記バッテリ残量が所定量以下で且つ前記外気温度が所定温度以下にあると判断したときには、前記所定状態にあると判断するように設定されている構成とされている。
【0008】
この構成によれば、空調手段の昇温作動に関連する関連因子状況が正規状態(空調風を乗員が暖かく感ずる程度に加温できる状態)に比して低下して、空調手段が暖かい空調風を吹出せない状況にあるときには、その空調風が、乗員の下肢に近接した状態で対向する内装に吹出され、その内装が昇温されることになる。このため、空調手段が暖かい空調風を吹出せない状況にあっても、その保有熱を有効に利用することにより、乗員周囲における内装を通じて車室内空間に放熱(対流伝熱)できるばかりか、内装表面温度を迅速に高めて内装の低温状態に基づいて乗員が寒さを感じることを迅速に抑制できる。
【0009】
すなわち、車両に乗車した場合において、内装が低温状態であるとき、寒さを感じることを経験するが、内装の迅速な昇温により、乗員の着衣から内装への放射熱に基づく乗員着衣放射損失を速やかに抑えることができ、乗員の着衣温度が低下することを早期に抑制することができる。このため、乗員の人体(スキン)から着衣への熱移動に基づく着衣熱伝導損失を迅速に減少させることができ、内装の低温状態に基づいて乗員が寒さを感じることを迅速に抑制できる。
【0010】
これにより、空調手段が暖かい空調風を吹出せない状況下にあっても、乗員の温熱快適性を効率的に改善できる。
【0011】
しかも、上記作用効果を得るに当たり、空調手段を有効に利用することができ、特別に新たな加温手段を設ける必要はない。
【0012】
また、前記空調手段に、空調風を温風とするための加温用ヒータが備えられ、前記関連因子状況検出手段が、前記関連因子状況として、前記加温用ヒータの作動因子状況を検出するように設定され、前記制御手段は、前記関連因子状況検出手段が検出した前記加温用ヒータの作動因子状況に基づき前記加温用ヒータが作動し難い状態にあると判断したときには、前記所定状態にあると判断するように設定されていることから、加温用ヒータが作動し難い状態にあるために、乗員が暖かさを感じる空調風を作り出せなくても、その所定状態を加温用ヒータの作動因子状況により的確に検出し、そのときの空調風を、乗員の下肢に近接した状態で対向する内装に吹き付けることにより、その内装を昇温させることができる。このため、加温用ヒータが作動し難い状態にあるにあるために空調手段が暖かい空調風を吹出せない状況下にあっても、その昇温された内装を通じて乗員の温熱快適性を改善できる。
【0013】
【0014】
さらに、前記加温用ヒータが、バッテリを熱源として利用するものとされ、前記関連因子状況検出手段が、前記バッテリのバッテリ残量と車室外の外気温度とを検出するように設定され、前記制御手段は、前記関連因子状況検出手段からの情報に基づき、前記バッテリ残量が所定量以下で且つ前記外気温度が所定温度以下にあると判断したときには、前記所定状態にあると判断するように設定されていることから、加温用ヒータが、バッテリを熱源として利用する場合において、バッテリ残量が少なく外気温度が低温状態にあるときには、加温用ヒータが作動し難い状態となって、乗員に暖かさを感じさせる空調風を作り出せないものの、その状況をバッテリ残量と外気温度とを検出することにより的確に判断し、そのときの空調風を、乗員の下肢に近接した状態で対向する内装に吹き付けることにより、その内装を昇温させることができる。このため、バッテリ残量及び外気温度に基づき空調手段が暖かい空調風を吹出せない状況下にあっても、その昇温された内装を通じて、乗員の温熱快適性を改善できる。
【0015】
(2)前記(1)の構成の下で、
前記空調風を吹出すための複数の吹出し口が備えられ、
前記制御手段は、前記所定状態にあると判断したときには、前記複数の吹出し口のうち、乗員下肢における下腿に近接した状態で対向する内装に向くものを選択するように設定されている構成とされている。
この構成によれば、所定状態にあるときには、乗員下肢における下腿に近接した状態で対向する内装に向く吹き出し口が的確に選択され、その吹出し口からその内装に所定状態における空調風が吹出されて、その内装が昇温されることになる。このため、所定状態にあるとしても、昇温された内装を通じて、乗員の温熱快適性を具体的且つ確実に改善できる。
【0016】
(3)前記(1)又は(2)の構成の下で、
前記制御手段は、前記所定状態にあると判断したときには、前記吹出し口として、乗員に隣り合うドアに向くものを選択するように設定されている構成とされている。
この構成によれば、所定状態において、乗員下肢における寒さを抑制できる内装として好ましい内装を昇温することができる。
【0017】
(4)前記(1)~(3)のいずれかの構成の下で、
制御手段は、前記空調風の吹出しの向きを、乗員存在可能空間を経ないようにした状態で前記内装に向かわせるように設定されている構成とされている。
この構成によれば、空調手段が暖かい空調風を吹出せない状況にあるときに、その空調風が、乗員の下肢に近接した状態で対向する内装に吹出されているものの、その空調風が、途中、乗員に当たらないことになり、空調手段が暖かい空調風を吹出せない間、乗員がその空調風に直接、当たることにより寒さを感じることを防止できる。
【0018】
(5)前記(1)~(4)のいずれかの構成の下で、
前記空調風を吹出すための吹出し口が、前記乗員の下肢の近傍において配置され、
前記吹出し口に、吹出し方向を調整できる風向き調整羽根が備えられ、
前記制御手段は、前記所定状態にあると判断したとき、前記風向き調整羽根を制御して
、該風向き調整羽根を備える吹出し口からの前記空調風の吹出しの向きを、乗員存在可能空間を経ずに直接的に、前記内装に向かわせるように設定されている構成とされている。
この構成によれば、所定状態において、吹出し口内の風向き調整羽根を利用することにより、乗員下肢における下腿に近接した状態で対向する内装を空調風により昇温させることができ、吹出し口を、風向き調整羽根により、内装を昇温させる場合とそうでない場合とに応じて使い分けることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、空調手段が暖かい空調風を吹出せない状況下にあっても、乗員の温熱快適性を効率的に改善できる車両用温度調整装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る車室内を説明する説明図。
【
図2】エンジン暖機時における第1実施形態に係る空調風の吹出しを説明する説明図。
【
図3】エンジン暖機後における第1実施形態に係る空調風の吹出しを説明する説明図。
【
図5】乗員から内装へ放射熱(輻射熱)が放射されると共に、乗員から車室内空間へ放熱が行われる状況を説明する説明図。
【
図6】内装の表面温度が、種々の車室内温度の下で、乗員の熱エネルギ消費にどのように影響を及ぼすかを示す図。
【
図8】第1実施形態に係る制御の概要を説明する説明図。
【
図9】第1実施形態に係る制御例を示すフローチャート。
【
図10】第2実施形態に係る制御例を示すフローチャート。
【
図12】第3実施形態に係る制御例を示すフローチャート。
【
図13】第3実施形態に係る空調装置の一例を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0022】
図1~
図9は第1実施形態を示す。その
図1において、符号1は、内燃機関(エンジン)を搭載する車両としての自動車を示す。この自動車1の車室2は、前席側においては、車幅方向全長に亘って伸びるインストルメントパネル3と、そのインストルメントパネル3の左右両側から車体後方に伸びるようにして配置される左右のドア4(左側ドアについては図示略)とにより区画されている。この車室2内には、車幅方向中央においてコンソール5が車体前後方向に延びるようにして設けられており、そのコンソール5の前端はインストルメントパネル3に至っている。このため、車室2は、コンソール5を中心として右左に運転手席空間6と助手席空間7とに区画され、運転手席空間6には、運転手席シート8が配置されると共に、その運転手席シート8の車体前方であってインストルメントパネル3の車体後方側においてステアリングハンドル9が配置され、助手席空間7には、助手席シート(図示略)が配置されている。勿論この場合、運転手席シート8及び助手席シートは、シート座部11(座部)と、そのシート座部11の後部から起立するシート背部12とにより構成されている。
【0023】
自動車1には、
図2、
図3、
図7に示すように、車両用温度調整装置13が組み込まれている。その車両用温度調整装置13には、それを構成すべく、空調手段としての空調装置15が備えられている。この空調装置15の空調風の吹出しに関する構成は、運転手席及び助手席において同様の構成とされている。このため、以下の説明では、重複した説明
を避けるために、運転手席側の構成についてだけ行う。
【0024】
前記空調装置15は、
図2、
図3に示すように、インストルメントパネル3の内部に組み込まれている。その空調装置15は、
図4に示すように、空気を流すための空気通路を形成するケーシング41を備えている。このケーシング41の空気流れ方向上流側には、空気の流入口として、外気を導入する外気導入口42と内気を導入する内気導入口43とが形成され、そのケーシング41の空気流れ方向下流側には、開閉弁44a~48aをそれぞれ備える複数の流出口44~48が形成されている。この複数の流出口44~48は、一例を示しており、その流出口の数は、必要に応じて、適宜、増減される。
【0025】
上記ケーシング41内には、その空気流れ方向上流側から下流側に向けて順に、内、外気の切換えを行う切換えダンパ49、ケーシング41の流入口から流出口に空気を送り出す送風機50、ヒートポンプの一要素であって、送風機50により送り出される空気を冷却するエバポレータ51、そのエバポレータ51を通過した空気を加温する加温用ヒータとしてのヒータコア52が配置され、ヒータコア52とエバポレータ51との間にはエアミックスドア53が配置されている。この場合、ヒータコア52においては、空気を加温するための熱源として、エンジンを冷却するためのエンジン冷却水が利用されており、このため、ヒータコア52とエンジンEGとの間にエンジン冷却水を循環させるための循環路54が形成され、その循環路54に、流量調整を行う循環ポンプ55が介装されている。また、エアミックスドア53は、その開度の調整により、ケーシング41内においてヒータコア52に隣り合って並ぶバイパス通路56と、該ヒータコア52とを経由する空気の割合を調整することになっており、この調整された空気が、空調風として、各流出口44~48に送り出される。
【0026】
各流出口44~48には、
図2、
図3に示すように、空気通路を形成するダクト59(各ダクトの代表符号としてを用いる)が、その一端をもってそれぞれ接続されている。各ダクト59の他端は、車室2内における専用の吹出し口(例えば、乗員上半身側、足元側等に向けたもの等)60(各吹出し口の代表符号として用いる)に接続されている。
図2、
図3において、符号60aは、吹出し口60のうち、運転手席シート8に着座する乗員Pの下肢61、具体的には下腿61aに臨む吹出し口であり、符号60bは、吹出し口60のうち、その乗員Pの下腿61aに対向する状態で近接する内装としてのドア4のドアパネル4aに臨む吹出し口である。吹出し口60aは、ダクト59のうち、ダクト59aにより前記流出口47に連なり、吹出し口60bは、ダクト59のうちのダクト59bにより前記流出口48に連なっている。以下、説明の便宜上、ダクト59a、59b、吹出し口60a、60bを中心として説明し、他のダクト59、吹出し口に関しての作動についは、ダクト59a、59b、吹出し口60a、60bの作動に応じて最適制御が行われるものとして、その説明は省略する。
【0027】
このような空調装置15においては、既知の通り、所望の(目的に合致した)空調風、空調風量を車室内に吹出すために、送風機50、エアミックスドア53、循環ポンプ55等も最適制御されることになっている。
【0028】
前記車両用温度調整装置13には、
図7に示すように、前記開閉弁47a,48aの開閉駆動を行う開閉駆動装置47A,48Aを制御すべく、マイクロコンピュータを利用して構成された制御手段としての電子制御ユニットECUが備えられている。このため、電子制御ユニットECUから開閉駆動装置47A,48A(駆動回路)に制御信号がそれぞれ出力される一方、この電子制御ユニットECUには、センサD1、D8、機器類D4からの信号が入力される。D1は、車室内空気温度を検出する車室内空気温度検出センサである。D8は、空調装置15の熱源となるエンジン冷却水の温度を検出するエンジン冷却水温検出センサである。D4は、乗員(ユーザ)の入力操作により車室2内の温度を設定
する車室内設定温度入力スイッチであり、この車室内設定温度入力スイッチD4は、コンソール5の前部上壁に設けられている。
【0029】
前記電子制御ユニットECUには、
図7に示すように、コンピュータとしての機能を確保すべく、記憶部38と、出力設定部39とが備えられている。
【0030】
記憶部38は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶素子をもって構成されており、その記憶部38には、開閉駆動装置47A,48Aの開閉駆動制御に必要な各種プログラム、暖機完了エンジン冷却水温αT(40度)等の設定情報が格納されている。これら各種プログラム等は、必要に応じて、出力設定部39により読み出され、また、必要な情報が記憶部38に適宜、記憶される。
【0031】
出力設定部39は、CPU(Central Processing Unit)をもって構成されており、その出力設定部39は、記憶部38から読み出されたプログラムの下で、開閉駆動装置47A,48Aに対して所定の制御信号を出力する。
【0032】
前記電子制御ユニットECUが行う制御には、本発明者が着目した着目点が反映されている。このため、先ず、その着目点について説明し、その後、その着目点が反映された制御の概要について説明する。
(1)本発明者が着目した着目点
(i)内燃機関(エンジン)EGを搭載した自動車において、エンジン冷却水を空調装置15におけるヒータコア52の熱源として利用する場合、エンジン冷却水温は、
図8に示すように、エンジン始動後、徐々に上昇し、エンジンの暖機時(特に初期段階)には、エンジンの暖機完了後に比して、エンジン冷却水温が低いことから、空調風を車室2内に吹出しても、その空調風は暖かくない。このため、エンジン冷却水温が低くて暖かい空調風を吹出せない間、乗員は、寒さを我慢しなければならない。
【0033】
しかし、エンジンの暖機時に、エンジン冷却水温が低くて暖かい空調風を吹出せないといえども、それは、乗員の温熱感の視点からであり、エンジン冷却水は、少なくとも、外気温が低いときであっても、そのときの内装の表面温度以上の温度を示す保有熱を保有する傾向が高い。
【0034】
(ii)一方、一般に、車室外の外気温度が低い場合には、車室2内を空調風により暖房しても、迅速に暖かさを感じないことを経験する。本発明者は、この現象に関して、
図5に示すように、外気温度の低下に伴い内装16(
図5では、乗員Pに対向したインストルメントパネル3)の表面温度が低下すると、乗員Pの着衣Pclの温度(乗員Pの着衣温度>内装16の表面温度)と内装16の表面温度との差分が大きくなるため、乗員Pの着衣Pclと内装16との間の熱移動に基づく着衣放射損失が大きくなって、その着衣放射損失により乗員の着衣温度が低下し、その結果として、乗員Pの人体(スキン)Pskから着衣Pclへの熱移動が促進されると考えている。
【0035】
図6は、そのことを裏付けるものである。その
図6には、本発明者が、人の温熱メカニズムに基づく車室内温熱制御を行うために、温熱快適性を人体エクセルギー損失によって評価した結果が示されている。この
図6において、人体エクセルギー損失とは、人体が摂取した食物を消費する過程で産出した人体深部の熱エネルギーが、人体深部から人体表面、ひいては人体周辺へと熱移動することで生じるエネルギー損失のことであり、その人体エクセルギー損失は、熱移動の過程を考慮し、コア損失と、スキン損失と、着衣熱伝導損失と、着衣放射損失の4要素からなる定義付けをもって特定することができる。
【0036】
ここで、コア損失とは、代謝熱や呼気・吸気や血流循環といった人体内部での熱移動に
伴う人体エクセルギー損失である。スキン損失とは、人体深部から皮膚への熱伝導や血流循環や汗の蒸発によって生じる、着衣と皮膚表面との間での熱移動に伴う人体エクセルギー損失である。着衣熱伝導損失とは、人体周辺の空気と着衣との間の熱移動(熱伝導)に伴う人体エクセルギー損失である。着衣放射損失とは、前記空気の周辺にある内装と着衣との間での熱移動(放射)に伴う人体エクセルギー損失である。
【0037】
(ii-1)
図6について具体的に説明する。
図6によれば、内装16が低温(低温壁10℃)である場合には、乗員の着衣放射損失が、内装16が高温(高温壁20℃)である場合に比して大きくなることを示す(
図6中、左図における放射損失大の領域において、上下長さ参照)と共に、乗員Pの人体(スキン)Pskから着衣Pclへの熱移動に基づく着衣熱伝導損失が大きくなることを示した(
図6中、左図における熱伝導損失大の領域において、上下長さを参照)。これは、上述の通り、内装16の表面温度が低いほど(内装16表面温度<乗員着衣温度)、乗員Pの着衣Pclと内装16との間の熱移動に基づく着衣放射損失が大きくなって、乗員Pの着衣温度が低下し、これに伴い、乗員Pの皮膚温度(人体温度)とその乗員Pの着衣温度との差分が大きくなることで、皮膚表面と着衣Pcl間での熱移動であるスキン損失が大きくなったためと考えられる。
【0038】
(ii-2)これに対して、内装16を高温(高温壁20℃)とした場合には、乗員Pの着衣放射損失がかなり小さくなることを示す(
図6中、右図における放射損失小を領域参照)と共に、乗員Pの着衣熱伝導損失が小さくなることを示した(
図6中、右図における熱伝導損失小の領域を参照)。これは、前記説明とは逆に、内装16の表面温度が高くなればなるほど、乗員Pの着衣放射損失が小さくなるため、乗員Pの着衣温度の低下が抑えられ、これに伴い、乗員Pの皮膚温度(人体温度)とその乗員Pの着衣温度との差分が小さくなることで、スキン損失が小さくなったためであると考えられる。この場合、内装16が低温及び高温のいずれの状態においても、内装16と乗員Pとの間の車室内空気温度の温度状況は、上記基本的関係にほとんど影響を及ぼさなかった(
図6における放射損失及ぶ熱伝導損失の上下長さを横軸全体に亘って参照)。
【0039】
(ii-3)このことから、本発明者は、内装16の低温状態に関して、次のことに着目している。
【0040】
(ii-3-1)内装16を昇温してその内装表面温度を車室2内温度以上に高めれば、対流伝熱により車室2内を加温でき、また、その内装表面温度を乗員の着衣温度以上に高めれば、内装16が乗員の着衣から放射熱(輻射熱)を奪うことをなくして乗員の着衣温度の低下を抑制することができる。このため、内装16の内装表面温度を高めることは、乗員が寒さを感じないようにするために有効である。
【0041】
(ii-3-2)この場合、内装16が、その低温状態に基づいて乗員Pに寒さを感じさせる領域は、その内装16のうち、乗員着衣Pclに臨む領域であり、その乗員着衣Pclに臨む内装16の一部の領域(該当領域)だけを局部的に昇温して、その内装表面温度を乗員着衣温度以上にすれば、内装16による乗員着衣Pclからの放射熱の吸収を抑制又は防止できる。
【0042】
しかも、内装16の昇温に当たっては、乗員の着衣温度程度に上げれば、内装16の昇温に基づく効果を十分に期待することができ、乗員が暖かさを感じる温度の空調風を生成するほどの熱量は必要ではない。このため、エンジン暖機初期段階等におけるエンジン冷却水(未だ、空調風を暖める程度の温度でないエンジン冷却水)を熱源とした空調風により、内装16の一部を昇温することは、有効な利用といえる。
【0043】
その一方で、そのような空調風は、乗員に寒さを感じさせるものであり、その空調風については、直接、乗員に当たらないようにすることが好ましい。
(2)電子制御ユニットECUの制御の概要
上記着目点が考慮され、電子制御ユニットECUは、以下の制御を行う。
【0044】
電子制御ユニットECUは、
図2、
図8に示すように、エンジン冷却水温が、空調装置15から送り出される空調風の温度を高めることができる所定のエンジン冷却水温(基本的には、空調風を暖かなものにできるとして、設定された温度が用いられ、それには、エンジン暖機完了後に限られず、エンジン暖機段階におけるものも含まれる)になるまでは(所定状態)、ダクト59b、吹出し口60bの選択により、乗員の下肢(下腿)に対向する内装16としてのドア4のドアパネル4aに直接、空調風を吹き付けて、そのドアパネル4aの表面温度を昇温させる。このとき、空調風は乗員に当たらないようにされる。
【0045】
他方、エンジン冷却水温が、空調風を乗員にとって暖かく感じるものにできる所定のエンジン冷却水温(所定状態)を超えた場合(正規状態)には、電子制御ユニットECUは、
図3、
図8に示すように、通常通り、空調風により乗員を加温する。
【0046】
上記電子制御ユニットECUの制御内容を、
図9に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。尚、Yはステップを示す。
【0047】
電子制御ユニットECUが起動されると、先ず、Y1において、初期設定が行われる。この初期設定として、暖機完了エンジン冷却水温αT(40度)等が、設定情報として設定される。次のY2においては、各種情報が読み込まれる。具体的には、乗員(ユーザ)の入力操作により入力されたユーザ設定温度Tcnt、車室内空気温度Tref、エンジン冷却水温Tewが読み込まれる。
【0048】
各種情報が読み込まれると、Y3において、上記Y2の情報に基づき、車室2内の加温目標Hが算出される。この加温目標Hは、ユーザ設定温度Tcntと車室内空気温度Trefとの差分(Tcnt-Tref)により求められる。
【0049】
加温目標Hが算出されると、Y4において、エンジン冷却水温Tewが暖機完了エンジン冷却水温αT(40度)以下であるか否かが判別される。乗員を直接加温する空調風の熱源として、エンジン冷却水が役に立たないか否かを判別するためである。このため、Y4がYESのときは、乗員を直接加温する空調風の熱源として、エンジン冷却水が役に立たないものの、そのエンジン冷却水の保有熱を利用した空調風の保有熱をドア4のドアパネル4aの昇温に利用できるとして、開閉弁47a(流出口47)が閉とされる一方、開閉弁48a(流出口48)が開とされて、ダクト59bが吹出しダクトとして選択される。これにより、その空調風は、
図2の矢印に示すように、ダクト59b、吹出し口60bを介してサイドドア4のドアパネル4aに向けて吹出され、その空調風がドアパネル4aに当たることにより、そのドアパネル4aの表面温度が、空調風の保有熱に基づき昇温される。この結果、その空調風及びサイドドア4のドアパネル4aにより車室2内空間が加温されるだけでなく、ドアパネル4aの表面温度が昇温されることに基づき、乗員の着衣から輻射熱が奪われることが迅速に抑制され、乗員が寒さを感じることを速やかになくすことができる。
【0050】
これに対して、Y4がNOのときには、Y6において、エンジン冷却水が、乗員を直接加温する空調風の熱源として十分に利用可能な状態に至ったとして、開閉弁48a(流出口48)が閉とされる一方、開閉弁47a(流出口47)が開とされて、ダクト59aが吹出しダクトとして選択される。これにより、その空調風は、
図3の矢印に示すように、
ダクト59a、吹出し口60aを介して乗員Pの下腿61aに向けて吹出されることになり、乗員Pは暖かさを感じることになる。
【0051】
図10は第2実施形態、
図11~
図13は第3実施形態、
図14は第4実施形態を示す。この各実施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図10に示す第2実施形態は、第1実施形態の変形例を示す。この第2実施形態は、エンジンの暖機完了時には、エンジン冷却水温Tew(正確には、エンジン冷却水温Tewと車室内空気温度Trefとの差分Tew-Tref)が、車室2内の昇温温度(加温目標H)としてのユーザ設定温度Tcntと車室内空気温度Trefとの差分Tcnt-Trefよりも高くなることに着目し、そのTew-TrefとTcnt-Trefとの比較結果により、空調風を、
図2の矢印に示すように、ダクト59b、吹出し口60bを介してドア4のドアパネル4aに向けて吹出すか否かが決められることになっている。
【0053】
第2実施形態に係る電子制御ユニットECUの制御内容を、
図10に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。
【0054】
電子制御ユニットECUが起動されると、先ず、Z1において、各種情報が読み込まれる。具体的には、乗員(ユーザ)の入力操作により入力されたユーザ設定温度Tcnt、車室内空気温度Tref、エンジン冷却水温Tewが読み込まれる。
【0055】
各種情報が読み込まれると、Z2において、上記Z1の情報に基づき、車室内加温目標(昇温温度)Hが算出されると共に、続くZ3において、エンジン冷却水温Tewと車室内空気温度Trefとの差分であるαPが算出される。Z2の車室内加温目標Hは、ユーザ設定温度Tcntと車室内空気温度Trefとの差分Tcnt-TVrefにより求められる。
【0056】
次のZ4においては、Z3のαPがZ2のH以下か否かが判別される。エンジンの暖機が完了している場合には、エンジン冷却水温Tewと車室内空気温度Trefとの差分であるαPが、加温目標(昇温温度)であるH=Tcnt-Trefよりも高くなることに着目し、Z3のαPがZ2のH以下のときには、エンジン冷却水を熱源として利用することが不十分であるとして、そのエンジン冷却水を熱源として利用した空調風をサイドドア4のドアパネル4aの昇温に利用しようとしたものである。このため、Z4がYESのときには、前記第1実施形態における
図9のY5と同じ内容を示すZ5に進み、Z4がNOのときには、同じく第1実施形態における
図9のY6と同じ内容を示すZ6に進む。
【0057】
尚、この第2実施形態においては、上記の通り、ユーザ設定温度Tcntが判断基準に絡んでくることから、ユーザ設定温度Tcntを低く入力設定するほど、低いエンジン冷却水温Tewでも空調風による乗員の直接加温が行われる。
【0058】
図11~
図13に示す第3実施形態は、空調装置15の加温用ヒータ(電気式)52の熱源としてバッテリBAが用いられることを前提とし、そのバッテリBAの残量が少なくなり、しかも、車外の外気温度が低くなったときにおける対応を示している。
【0059】
加温用ヒータ52の作動因子状況として、バッテリBAの残量が少なくなり、しかも、車外の外気温度が低くなったときには、加温用ヒータ52は、加温し難くなる。このため、この第3実施形態においては、
図11に示すように、開閉弁47a,48aの開閉駆動装置47A,48Aを制御して上記問題点を解消すべく、電子制御ユニットECUには、車室内空気温度検出センサD1及び車室内設定温度入力スイッチD4からの各情報の他に
、バッテリ残量検出センサD6からのバッテリBAの残量情報、外気温度検出センサD7からの車外の外気温度情報が入力される。
【0060】
そして、電子制御ユニットECUは、バッテリ残量及び外気温度の検出情報に基づき、バッテリ残量が少ない状態にあるか否か、及び外気温度が低温状態にあるか否かを判別し、バッテリ残量が少なく且つ外気温度が低温状態にあると判断したときには、加温用ヒータ52が加温し難い状況にあるとして、その状況が所定状態にあると判断する。これにより、所定状態においては、そのときの空調風がドアパネル4a(内装16)に向けて吹き出されてそのドアパネル4aが昇温されることになり、暖かい空調風を吹出せない状況下においても、その昇温されたドアパネル4aにより乗員の温熱快適性が改善される。
【0061】
第3実施形態に係る電子制御ユニットECUの制御内容を、
図12に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。尚、Aはステップを示す。
【0062】
電子制御ユニットECUが起動されると、先ず、A1において、初期設定が行われる。この初期設定として、基準バッテリ残量Vst,基準外気温度Tst等が、設定情報として設定される。次のA2においては、各種情報が読み込まれる。具体的には、乗員(ユーザ)の入力操作により入力されたユーザ設定温度Tcnt、車室内空気温度Tref、バッテリ残量Vs、外気温度Toutが読み込まれる。
【0063】
各種情報が読み込まれると、A3において、上記A2の情報に基づき、車室2内の加温目標Hが算出される。加温目標Hは、ユーザ設定温度Tcntと車室内空気温度Trefとの差分Tcnt-Trefにより求められる。
【0064】
次のA4において、A2のバッテリ残量VsがX1の基準バッテリ残量Vst以下か否かが判別され、そのA4がYESのときには、続くA5において、外気温度Toutが基準外気温度Tst以下か否かが判別される。バッテリ残量及び外気温度により加温用ヒータ52が作動し難い状況にあるか否かを判別するためである。この場合、基準バッテリ残量Vstは、加温用ヒータ52が作動し難くなる観点から、それ以下をバッテリ残量が少なくなったものとする判断基準値であり、基準外気温度Tstは、加温用ヒータ52が作動し難くなる観点から、それ以下を外気温度が低くなったものとする判断基準値である。このため、A4及びX5がいずれもYESのときには、バッテリ残量が少なく且つ外気温度が低いために、加温ヒータが作動し難い状況にあるとして、前記第1実施形態における
図9のY5と同じ内容を示すA6に進み、空調風がドアパネル4aに向けて吹き出される。これにより、空調風により昇温されたドアパネル4aによって、乗員の温熱快適性が効率的に改善される。
【0065】
前記A4又はA5のいずれかががNOのときには、所定状態にないことから、第1実施形態における
図9のY6と同じ内容を示すA7に進み、空調風による乗員の直接的な加温が実行される。
【0066】
図14に示す第4実施形態は、前記第1実施形態の変形例を示しており、その第4実施形態においては、吹出し口から車室2内への空調風の吹出し方向が調整可能とされたものが示されている。
【0067】
前記ダクト59のうちの一つのダクトが前記流出口44~48のうちの一つから伸ばされ、それが分岐されて、その各他端(先端)が、乗員P(運転手(運転手席8))の左右前方に配置されている吹出し口62A,62Bに接続されている。吹出し口62A内には、吹出し方向を調整できる風向き調整羽根63aが備えられており、吹出し口62B内には、吹出し方向を調整できる風向き調整羽根63bが備えられている。吹出し口62Aにお
いては、そこからの空調風の吹出し方向を、風向き調整羽根63aにより、内装16としてのコンソール5の側壁(
図14中、Dc方向)と運転手Pにおける左足下肢61の下腿61a(
図14中、Dll方向)のいずれかに指向できることになっており、その風向き調整羽根63aはアクチュエータ64aにより駆動されることになっている。吹出し口62Bにおいては、そこからの空調風の吹出し方向を、風向き調整羽根63bにより、内装16としてのドア4のドアパネル4a(
図14中、Dd方向)と運転手Pにおける右足下肢61の下腿61a(
図14中、Dlr方向)のいずれかに指向できることになっており、その風向き調整羽根63bはアクチュエータ64bにより駆動されることになっている。
【0068】
前記制御ユニットECUは、前述の各実施形態における入力情報に基づき、前記吹出し口62A、62Bへの吹出しを行うダクト59が選択されている状況の下で、エンジンが例えば暖機初期段階(エンジン冷却水温が空調風の加温に不十分な状態)であると判断したときには、前記アクチュエータ64a,64bを制御して、吹出し口62Aにおいては、コンソール5の側壁に向けて空調風を吹出させ(
図14中、Dc方向参照)、吹出し口62Bにおいて、ドア4のドアパネル4aに向けて空調風を吹出させる(
図14中、Dd方向参照)。これにより、暖かい空調風が吹出せない状況下においても、運転手Pは、昇温されるドアパネル4aにより温熱快適性を得ることができる。
【0069】
他方、前記制御ユニットECUは、前述の各実施形態における入力情報に基づき、前記吹出し口62A、62Bへの吹出しを行うダクト59が選択されている状況の下で、エンジンが暖機完了後であること又はエンジン暖気段階でエンジン冷却水により乗員が空調風を暖かく感じる程度に加温できる状態にあると判断したときには、前記アクチュエータ64a,64bを制御して、吹出し口62Aにおいては、運転手Pにおける左足下肢61の下腿61aに向けて空調風を吹出させ(
図14中、Dll方向参照)、吹出し口62Bにおいては、運転手Pにおける右足下肢61の下腿61aに向けて空調風を吹出させる(
図14中、Dlr方向参照)。これにより、運転手Pは、エンジン暖機完了後等においては、運転手Pは、エンジン冷却水を熱源とした空調風に基づき、直接、加温される。
【0070】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては次の態様を包含する。
(1)判別基準値としての暖機完了エンジン冷却水温αT(40度)を、状況設定に応じ、適宜、変更すること。
(2)エンジン暖機時等、エンジン冷却水温が、乗員が暖かさを感じる程度まで空調風を昇温させることができないときに、その空調風をドア4のドアパネル4a、コンソール5以外の内装16に吹出すこと。
(3)吹出し口60(60a,60b,62A,62B)自体の向きを、変更可能として、吹出し方向を変えること。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、車室2内における乗員の温熱快適性を向上させるために利用できる。
【符号の説明】
【0072】
1自動車
2車室
3インストルメントパネル(内装16)
4ドア(内装16)
4aドアパネル
5コンソール(内装16)
13車両用温度調整装置
15空調装置(空調手段)
16内装
47a,47b開閉弁(空調手段)
47A、47B開閉駆動装置(空調手段)
52ヒータコア(加温用ヒータ)
59a,59bダクト
61下肢
61a下腿
62A吹出し口
62B吹出し口
63a,63b風向き調整羽根
64a,64bアクチュエータ(空調手段)
BAバッテリ
D6バッテリ残量検出センサ(関連因子状況検出手段)
D7外気温度検出センサ(関連因子状況検出手段)
D8エンジン冷却水温検出センサ(関連因子状況検出手段)
ECU電子制御ユニット(制御手段)
Tewエンジン冷却水温
αT暖機完了エンジン冷却水温
Vst基準バッテリ残量
Tst基準外気温度
P乗員(運転手)