(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】保持ユニット、該保持ユニットを備える成形金型の突き出し機構
(51)【国際特許分類】
B29C 33/44 20060101AFI20220616BHJP
B29C 45/40 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
B29C33/44
B29C45/40
(21)【出願番号】P 2020517011
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2018038369
(87)【国際公開番号】W WO2019211922
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】302067947
【氏名又は名称】株式会社テクノクラーツ
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】反本 正典
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-072416(JP,U)
【文献】特開2018-086749(JP,A)
【文献】特開昭56-025432(JP,A)
【文献】特開昭63-197620(JP,A)
【文献】特開平10-016014(JP,A)
【文献】特開昭58-078735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 45/00 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動自在な第1部材と、
固定され使用される第2部材と、
前記第1部材に直接取付けられ又は前記第1部材に取付けられる固定部材に固定され、前記第2部材を押圧し、前記第1部材を前記第2部材に対して係止させる押圧手段と、
を備え、
前記第1部材の移動方向に所定以上の力が加わると前記第2部材との係止が解除され前記第1部材が移動可能に構成され、
前記押圧手段が前記第1部材又は前記固定部材に組み込まれユニット化されてなる保持ユニット。
【請求項2】
前記第2部材は、少なくとも前記押圧手段の先端部が嵌る凹部を有し、
前記押圧手段は、前記凹部に少なくとも前記押圧手段の先端部を嵌め入れた状態で前記第2部材を押圧することを特徴とする請求項1に記載の保持ユニット。
【請求項3】
前記押圧手段が、前記第1部材又は前記固定部材に対して着脱可能に組み込まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の保持ユニット。
【請求項4】
前記押圧手段は、前記第1部材又は前記固定部材に組み込まれた状態で前記第2部材に対する押圧力を調節可能に構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の保持ユニット。
【請求項5】
前記押圧手段は、前記第1部材又は前記固定部材に対して固定手段を介して組み込まれ、
前記固定手段が、前記押圧手段の押圧力を調節する手段としても機能することを特徴とする請求項4に記載の保持ユニット。
【請求項6】
前記固定部材は、前記第1部材に比較して外径が大きいことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の保持ユニット。
【請求項7】
前記第2部材は、前記第1部材又は前記固定部材の押圧部を取り囲むように配置されたリング状部材であり、
前記押圧手段は、前記第1部材又は前記固定部材に1つ以上組み込まれ、
前記各押圧手段は、先端部が前記第1部材又は固定部材の外周面に対して出没自在であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の保持ユニット。
【請求項8】
前記押圧手段が、ボールプランジャ、又は板ばね、又は先端部に前記第2部材に係止する係止具を備える弾性体であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の保持ユニット。
【請求項9】
前記第1部材が固定されて使用され、前記第2部材が移動可能であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の保持ユニット。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の保持ユニットが組み込まれた、固定側金型と可動側金型とにより成形品を成形する、エジェクタプレートを備える成形金型の突き出し機構であって、
前記第2部材が前記エジェクタプレートに固定され、前記第1部材がエジェクタピンとして機能することを特徴とする成形金型の突き出し機構。
【請求項11】
さらに前記第1部材が前記第2部材に係止する位置に向かって前記第1部材を付勢する1つ又は複数の付勢手段を備え、
前記エジェクタプレートは、前記第2部材が嵌り込む凹部を有し、
前記第2部材は、前記凹部に嵌め込まれ固定されていることを特徴とする請求項10に記載の成形金型の突き出し機構。
【請求項12】
前記付勢手段を収容するホルダーを備え、
前記ホルダーは、前記可動側金型又は前記エジェクタプレートに取付けられる外ホルダーと、前記外ホルダーに対してスライド自在に係止する内ホルダーとを有し、
前記ホルダーは、前記外ホルダーに対する前記内ホルダーのスライド量を規制し、収容する前記付勢手段の伸長量を所定の範囲に規制することを特徴とする請求項11に記載の成形金型の突き出し機構。
【請求項13】
前記第1部材は、前記エジェクタプレートが所定位置まで移動すると、可動側型板に連結され、その位置を保持するように構成されていることを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の成形金型の突き出し機構。
【請求項14】
前記成形金型が、アンダーカット処理機構を備える成形金型であり、
前記第1部材が、前記アンダーカット処理機構を押出すエジェクタピンであることを特徴とする請求項10から13のいずれか1項に記載の成形金型の突き出し機構。
【請求項15】
さらに前記エジェクタプレートに固定された1以上のエジェクタピンを備え、又は前記エジェクタプレートに組み込まれた複数の前記保持ユニットを備え、
多段突き出しが可能なことを特徴とする請求項10から14のいずれか1項に記載の成形金型の突き出し機構。
【請求項16】
請求項10から15のいずれか1項に記載の成形金型の突き出し機構を備える固定側金型及び/又は可動側金型。
【請求項17】
請求項16に記載の固定側金型及び/又は可動側金型を具備してなる成形金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持ユニット、該保持ユニットを備える成形金型の突き出し機構、固定側金型、可動側金型、成形金型、及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形金型に2段突き出し機構を備える金型がある。従来の2段突き出し機構として、2本のエジェクタピンを2つのエジェクタプレートそれぞれに取付け、第1のエジェクタピンで成形品を突き出し、その後、第1のエジェクタプレートで第2のエジェクタプレートを押し上げ、第2のエジェクタピンで成形品を突出す構成からなるものがあるが、2つのエジェクタプレートを使用するため小型化が難しい。
【0003】
2つのエジェクタプレートを使用した2段突き出し機構の課題を解決すべく、1つのエジェクタプレートとエジェクタプレートに着脱自在に取付けられ移動量が規制されたエジェクタピンとを使用した2段突き出し機構が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の2段突き出し機構は、エジェクタピンとエジェクタプレートとを磁力を介して着脱可能に連結させている点に特徴がある。これによりエジェクタピンとエジェクタプレートとを一体的に移動させること、さらにエジェクタピンの移動を規制しエジェクタプレートのみを移動させることもできる。このエジェクタピンとエジェクタプレートとの着脱機構は、所定の位置までエジェクタピンとエジェクタプレートとの連結状態を保持する保持機構と換言できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金型に保持機構を取付けて使用する場合、組み込み易さが重要となるが、特許文献1を含めこれまで組み込み易さを特に考慮した保持機構は見当たらない。この他、金型等への組み込みを考えればコンパクト化が可能な構造、汎用性も保持機構が備えるべき特性と言える。例えば、磁力を使用した保持機構は、構成が簡便で金型をコンパクト化する上で好ましいが、磁力を変更することができないため、各金型にそれに適した磁力を備える保持機構を準備する必要があり、汎用性を含め使い勝手の点で改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、金型に組み込み易く、汎用性に優れる保持ユニットを提供することである。また金型にコンパクトに組み込むことが可能な保持ユニット、該保持ユニットを備える成形金型の突き出し機構、固定側金型、可動側金型、成形金型、及び成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、移動自在な第1部材と、固定され使用される第2部材と、前記第1部材に直接取付けられ又は前記第1部材に取付けられる固定部材に固定され、前記第2部材を押圧し、前記第1部材を前記第2部材に対して係止させる押圧手段と、を備え、前記第1部材の移動方向に所定以上の力が加わると前記第2部材との係止が解除され前記第1部材が移動可能に構成され、前記押圧手段が前記第1部材又は前記固定部材に組み込まれユニット化されてなる保持ユニットである。
【0009】
本発明の保持ユニットにおいて、前記第2部材は、少なくとも前記押圧手段の先端部が嵌る凹部を有し、前記押圧手段は、前記凹部に少なくとも前記押圧手段の先端部を嵌め入れた状態で前記第2部材を押圧することを特徴とする。
【0010】
また本発明の保持ユニットにおいて、前記押圧手段が、前記第1部材又は前記固定部材に対して着脱可能に組み込まれていることを特徴とする。
【0011】
また本発明の保持ユニットにおいて、前記押圧手段は、前記第1部材又は前記固定部材に組み込まれた状態で前記第2部材に対する押圧力を調節可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
また本発明の保持ユニットにおいて、前記押圧手段は、前記第1部材又は前記固定部材に対して固定手段を介して組み込まれ、前記固定手段が、前記押圧手段の押圧力を調節する手段としても機能することを特徴とする。
【0013】
また本発明の保持ユニットにおいて、前記固定部材は、前記第1部材に比較して外径が大きいことを特徴とする。
【0014】
また本発明の保持ユニットにおいて、前記第2部材は、前記第1部材又は前記固定部材の押圧部を取り囲むように配置されたリング状部材であり、前記押圧手段は、前記第1部材又は前記固定部材に1つ以上組み込まれ、前記各押圧手段は、先端部が前記第1部材又は固定部材の外周面に対して出没自在であることを特徴とする。
【0015】
また本発明の保持ユニットにおいて、前記押圧手段が、ボールプランジャ、又は板ばね、又は先端部に前記第2部材に係止する係止具を備える弾性体であることを特徴とする。
【0016】
また本発明の保持ユニットは、前記第1部材が固定されて使用され、前記第2部材が移動可能であることを特徴とする。
【0017】
本発明は、前記保持ユニットが組み込まれた、固定側金型と可動側金型とにより成形品を成形する、エジェクタプレートを備える成形金型の突き出し機構であって、前記第2部材が前記エジェクタプレートに固定され、前記第1部材がエジェクタピンとして機能することを特徴とする成形金型の突き出し機構である。
【0018】
また本発明の成形金型の突き出し機構は、さらに前記第1部材が前記第2部材に係止する位置に向かって前記第1部材を付勢する1つ又は複数の付勢手段を備え、前記エジェクタプレートは、前記第2部材が嵌り込む凹部を有し、前記第2部材は、前記凹部に嵌め込まれ固定されていることを特徴とする。
【0019】
また本発明の成形金型の突き出し機構は、前記付勢手段を収容するホルダーを備え、前記ホルダーは、前記可動側金型又は前記エジェクタプレートに取付けられる外ホルダーと、前記外ホルダーに対してスライド自在に係止する内ホルダーとを有し、前記ホルダーは、前記外ホルダーに対する前記内ホルダーのスライド量を規制し、収容する前記付勢手段の伸長量を所定の範囲に規制することを特徴とする。
【0020】
また本発明の成形金型の突き出し機構において、前記第1部材は、前記エジェクタプレートが所定位置まで移動すると、可動側型板に連結され、その位置を保持するように構成されていることを特徴とする。
【0021】
また本発明の成形金型の突き出し機構において、前記成形金型が、アンダーカット処理機構を備える成形金型であり、前記第1部材が、前記アンダーカット処理機構を押出すエジェクタピンであることを特徴とする。
【0022】
また本発明の成形金型の突き出し機構は、さらに前記エジェクタプレートに固定された1以上のエジェクタピンを備え、又は前記エジェクタプレートに組み込まれた複数の前記保持ユニットを備え、多段突き出しが可能なことを特徴とする。
【0023】
本発明は、前記成形金型の突き出し機構を備える固定側金型及び/又は可動側金型である。
【0024】
また本発明は、前記固定側金型及び/又は可動側金型を具備してなる成形金型である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば保持機構がユニット化されているので金型に組み込み易く、使い勝手に優れる。また本発明の保持ユニットは、第1部材を第2部材に対して係止させる押圧手段が、着脱可能であり、また第1部材に組み込まれた状態で押圧力を調節可能に構成されているので、種々の金型等に組み込み使用可能であり汎用性に優れる。また成形金型の突き出し機構において、エジェクタプレートに凹部を設け、ここに保持ユニットの第2部材を取付けることで成形金型の突き出し機構、成形金型をコンパクトにすることができる。
【0027】
以上のように本発明によれば、金型に組み込み易く汎用性に優れる保持ユニット、金型にコンパクトに組み込むことが可能な保持ユニット、該保持ユニットを備える成形金型の突き出し機構、固定側金型、可動側金型及び成形金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態の保持ユニット1を備える射出成形金型100の型締め時の要部断面図である。
【
図2】
図1の射出成形金型100の型開き後の要部断面図である。
【
図3】
図1の射出成形金型100の1段目の突き出し動作後の要部断面図である。
【
図4】
図1の射出成形金型100の2段目の突き出し動作後の要部断面図である。
【
図5】
図1の射出成形金型100に保持ユニット1用のストッパー13を付加した要部断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態の保持ユニット2を備える射出成形金型100の型締め時の要部断面図である。
【
図7】
図6の射出成形金型100の型開き後の要部断面図である。
【
図8】
図6の射出成形金型100の1段目の突き出し動作後の要部断面図である。
【
図9】
図6の射出成形金型100の2段目の突き出し動作後の要部断面図である。
【
図10】本発明の第3実施形態の保持ユニット3を備える射出成形金型300の型締め時の要部断面図である。
【
図11】
図10の射出成形金型300の型開き後の要部断面図である。
【
図12】
図10の射出成形金型300の1段目の突き出し動作後の要部断面図である。
【
図13】
図10の射出成形金型300の2段目の突き出し動作後の要部断面図である。
【
図14】本発明の第4実施形態の保持ユニット4を備える射出成形金型100の型締め時の要部断面図である。
【
図15】
図14の射出成形金型100の型開き後の要部断面図である。
【
図16】
図14の射出成形金型100の1段目の突き出し動作後の要部断面図である。
【
図17】
図14の射出成形金型100の2段目の突き出し動作後の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の第1実施形態の保持ユニット1を備える射出成形金型100の型締め時の要部断面図、
図2は、
図1の射出成形金型100の型開き後の要部断面図、
図3は、
図1の射出成形金型100の1段目の突き出し動作後の要部断面図、
図4は、
図1の射出成形金型100の2段目の突き出し動作後の要部断面図である。
図5(a)、(b)は、
図1の射出成形金型100に保持ユニット1用のストッパー13を付加した要部断面図である。なお
図3、
図4では、固定側金型101を省略している。
【0030】
射出成形金型100は、成形面となるキャビティ102を有する固定側金型101と、成形面となるコア112を有する可動側金型111とからなり、成形品Pを成形する。本発明の第1実施形態の保持ユニット1は、射出成形金型100の可動側金型111に組み込まれ、成形品Pの突き出し動作時に2段突き出しを実現可能とする。
【0031】
保持ユニット1は、移動自在な第1部材であるエジェクタピン10と、固定され使用される第2部材であるリング状部材11と、エジェクタピン10をリング状部材11に対して係止させる押圧手段であるボールプランジャ12と、エジェクタピン10の下端(底部)に取付けられる押圧手段固定部材であるボールプランジャ固定部材22(以下、固定部材22と記す)とを備え、固定部材22に固定されたボールプランジャ12が、リング状部材11を押圧し、エジェクタピン10が固定部材22に固定されたボールプランジャ12を介してリング状部材11に対して着脱自在に構成されている。
【0032】
可動側金型111は、コア112が形成された可動側型板113と、可動側金型111を射出成形機の型締め機構側ダイプレート(図示省略)に取付けるための可動側取付板114と、可動側型板113と可動側取付板114との間に配設され、突き出し機構140の可動域を確保するためのスペーサブロック115とを有する。
【0033】
可動側金型111は、さらにアンダーカット処理機構120を有する。ここではアンダーカットP1が内側アンダーカットである。アンダーカット処理機構120は、アンダーカットP1を成形する成形駒121、傾斜ピン122を有し成形駒121を突き出し方向と直交する方向に移動させるアンダーカット成形ユニット123、アンダーカット成形ユニット123を可動側型板113に固定する、磁石からなる固定板124を有し、保持ユニット1の第1部材であるエジェクタピン10の先端がアンダーカット成形ユニット123の基端に連結され固定されている。
【0034】
可動側金型111は、さらに成形品P及び成形駒121を突き出すための突き出し機構140を備える。突き出し機構140は、エジェクタプレート141、エジェクタプレート141に固定された、成形品Pを突き出すエジェクタピン142を有し、エジェクタプレート141には、射出成形機の突き出し機構(図示省略)を介して加えられる突き出し用動力をエジェクタプレート141に伝達するエジェクタロッド143がボルト止めされている。またエジェクタプレート141には、エジェクタプレート141を突き出し前の位置に戻す、圧縮コイルバネ144が挿通されたリターンピン145が固定されている。
【0035】
エジェクタプレート141は、上エジェクタプレート141aと下エジェクタプレート141bとからなり、ボルト止めされ1つのエジェクタプレートを構成する。このエジェクタプレート141は、座ぐりタイプのプレート構造からなり、成形品Pを突き出すエジェクタピン142及びリターンピン145の底部の鍔を挟み込んでこれらを固定するとともに、保持ユニット1のリング状部材11を上エジェクタプレート141aに設けられた凹部147に嵌め込んだ状態で挟み込み、これを固定する。また下エジェクタプレート141bには、後述するエジェクタピン10の下端に取付けられた固定部材22が挿通可能に貫通した挿通孔148が設けられている。
【0036】
保持ユニット1の移動自在な第1部材であり成形駒121を突き出すためのエジェクタピン10は、成形品Pを直接的に突き出すエジェクタピン142とは異なり、エジェクタピン10の下端に取付けられた固定部材22に固定されたボールプランジャ12が、エジェクタプレート141に移動不能に固定されたリング状部材11に係止し、エジェクタプレート141に着脱可能に連結する。このボールプランジャ12を介したエジェクタピン10とエジェクタプレート141との着脱機構を説明する。
【0037】
エジェクタピン10は、ストレートタイプの段付ピンであり、先端部21が中央の本体部20よりも細く形成されており、下端に本体部20に比較して大きい固定部材22が固定されている。エジェクタピン10は、アンダーカット処理機構120の成形駒121を突き出し又は引込み可能に先端部21がアンダーカット成形ユニット123の基端に固定されており、固定部材22に固定されたボールプランジャ12を介してリング状部材11に着脱自在に連結するように構成されている。
【0038】
固定部材22は、押圧手段であるボールプランジャ12を固定するための円柱状の部材であり、リング状部材11の内径よりも小さい外径を有する。固定部材22は、図示を省略したボルトによりエジェクタピン10の下端に着脱可能に固定されている。固定部材22には、エジェクタピン10をリング状部材11に対して係止させる押圧手段である4つのボールプランジャ12が、円周方向に90度の間隔で、先端がリング状部材11側を向いて外周面から出没自在に組み込まれている。
【0039】
エジェクタピン10の本体部20の長さは、エジェクタピン10の移動量(ストローク量)が成形駒121を移動させアンダーカットを抜くために必要な距離L1となるように設定される。
【0040】
リング状部材11は、エジェクタピン10の下端に取付けられた固定部材22の外径よりも大きく、内周面には、後述するボールプランジャ12の先端に設けられたボール33が嵌る溝状の凹部23が全周に亘って設けられている。リング状部材11の凹部23とボールプランジャ12との作用によって、エジェクタピン10がボールプランジャ12を介してリング状部材11、つまりエジェクタプレート141に着脱自在に連結する。なお凹部23は、全周に亘って設けられた溝に限定されるものではなく、例えば、エジェクタピン10の中心軸線周りの回転が規制されている場合には、各ボールプランジャ12に対応した位置に設けられた窪みであってもよい。
【0041】
ボールプランジャ12は、有底筒状の本体32、本体32の先端から抜けないように本体32内に配置されたボール33、本体32内に配置されボール33を先端方向に付勢する圧縮コイルバネ35からなり、ボール33がリング部材11の凹部23に嵌ることでエジェクタピン10をリング状部材11に対して係止させる。
【0042】
ボールプランジャ12は、固定部材22に半径方向に形成された雌ネジ部に螺合するように本体32の外周面37に固定手段としてのネジ山が形成されており、固定部材22に対して着脱可能に構成されている。固定部材22の雌ネジ部は、固定部材22の外周面に臨むように設けられた窪みに形成されている。
【0043】
雌ネジ部に対するボールプランジャ12の螺合及びネジ締め量の調節は、ボールプランジャ12の先端側(ボール33側)を適当な工具で操作することによって行うことができる。これによって固定部材22の外周面からボールプランジャ12の突出量をネジ締め量によって調節可能であり、該調節によってボールプランジャ12の押圧力を調節可能である。ボールプランジャ12は、押圧力の調節後、止めネジや接着剤等で緩み止めが施されていることが好ましい。
【0044】
固定部材22及びリング状部材11の形状、並びにボールプランジャ12の数及び配置は、特定のものに限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変更可能である。例えば、固定部材22及びリング状部材11は、多角形断面形状であってもよい。また固定部材22には、ボールプランジャ12が1つから3つ、又は5つ以上、組み込まれていてもよい。
【0045】
上記要領でエジェクタプレート141に取付けられたエジェクタピン10は、エジェクタプレート141に対してエジェクタピン10を
図1の上方向に突き当てると、リング部材11に設けられた凹部23にボールプランジャ12のボール33が嵌り、固定部材22がリング状部材11に対して係止、連結され、エジェクタピン10がエジェクタプレート141に連結される。一方、エジェクタピン10を一定以上の力で
図1の下方向に押込むと、リング部材11の凹部23からボールプランジャ12のボール33が外れることで固定部材22のリング状部材11に対する係止が解除され、エジェクタピン10がエジェクタプレート141に対して自在に移動可能となる。
【0046】
ボールプランジャ12を介して連結する固定部材22とリング部材11との連結が外れる力は、固定部材22がリング状部材11に連結した状態でエジェクタプレート141を突き出してエジェクタピン10が成形駒121を移動させるときの反力よりも大きい必要がある。ボールプランジャ12を介して連結する固定部材22とリング部材11との連結が外れるときの力が、成形駒121を移動させるときの反力を下回ると、エジェクタプレート141を突き出したときにエジェクタピン10(固定部材22)がリング状部材11から外れてしまい、エジェクタプレート141のみが移動することになるので、成形駒121を突き出し不能となってしまう。
【0047】
またボールプランジャ12を介して連結する固定部材22とリング部材11との連結が外れるときの力は、射出成形機の突き出し装置(図示省略)を介して加えられる突き出し用動力よりも小さい必要がある。これによりエジェクタピン10(固定部材22)とエジェクタプレート141(リング状部材11)とを連結させた状態でエジェクタプレート141を突き出し、エジェクタピン10の本体部20の先端側の段部24が固定板124に突き当たったときにエジェクタピン10(固定部材22)とエジェクタプレート141(リング状部材11)との連結を解くことができる。
【0048】
また固定部材22とリング状部材11とが外れた状態からボールプランジャ12のボール33がリング状部材11の凹部23に嵌り込んで再連結するために必要な力は、エジェクタピン10の本体部20の段部24と固定板124との磁力による吸着力よりも小さくなるように設定される。これにより型締め時において、エジェクタピン10の本体部20の段部24が固定板124から外れる前にエジェクタピン10(固定部材22)がリング状部材11に連結するので、エジェクタピン10が非拘束の状態となることが防止され、エジェクタピン10の意図しない動きが防止される。
【0049】
また
図5(a)、(b)に示すように、エジェクタプレート141が型締めの位置に戻ったときにエジェクタピン10(固定部材22)がリング状部材11に確実に連結するように、固定部材22の底面を押込むストッパー13が可動側取付板114に付加されていてもよい。さらにストッパー13には、エジェクタピン10(固定部材22)を先端方向に付勢する圧縮コイルバネ14が取付けられていてもよい(
図5(a)参照)。
【0050】
次に、射出成形金型100の成形品突き出し時の動作、突き出し機構140及び保持ユニット1の作用について説明する。射出成形金型100は、射出工程、冷却工程(
図1参照)を経た後、型開き(
図2参照)、成形品Pの突き出し工程(
図3、
図4参照)に移行する。型締装置(図示省略)を介して可動側金型111が後退することで型開きが行われ、固定側金型101と可動側金型111との間に成形品Pを取出すための空間が確保される。この状態は
図2に示す状態であり、エジェクタピン10の下端に取付けられた固定部材22がボールプランジャ12を介してエジェクタプレート141に固定されているリング状部材11に係止されている。つまりエジェクタピン10とエジェクタプレート141とは固定部材22、リング状部材11及びボールプランジャ12を介して連結している。
【0051】
突き出し工程に移行すると、射出成形機の突き出し装置(図示省略)の動力を得てエジェクタロッド143が前進し、エジェクタロッド143に連結するエジェクタプレート141が成形品Pの突き出し方向(
図3の上方向)に突き出される。これにより固定されたエジェクタピン142はもちろん、エジェクタプレート141に連結するエジェクタピン10も突き出し方向に移動し、エジェクタピン142は成形品Pを突き出し、エジェクタピン10は、成形駒121を突き出す。
【0052】
エジェクタプレート141が距離L1だけ突き出されると、エジェクタピン10の本体部20の段部24が固定板124に突き当たりエジェクタピン10の移動が阻止される。
図3は、エジェクタピン10の本体部20の段部24が固定板124に突き当たった状態を示す。このとき成形駒121が図の左側に移動しアンダーカットが外れた状態となる。エジェクタピン10の本体部20の段部24が固定板124に突き当たるとエジェクタピン10は、固定板124に磁力により吸着される。
【0053】
エジェクタピン10の本体部20の段部24が固定板124に突き当たるとエジェクタピン10は移動を停止するが、エジェクタプレート141は引き続き前進する。このとき射出成形機の突き出し装置がエジェクタプレート141に加える突き出し力が、エジェクタピン10(固定部材22)がリング状部材11(ボールプランジャ12)から外れるために必要な力よりも大きいため、エジェクタピン10とエジェクタプレート141(リング状部材11)との連結が切り離され、エジェクタプレート141は、エジェクタピン10の本体部20の外周面に摺動しながら前進を続ける。エジェクタピン10は、エジェクタプレート141との連結が切り離されるが、固定板124に吸着して可動側型板113に連結されているので、その位置に止まる。
【0054】
エジェクタプレート141の最大突き出し量は、当初の位置からL1+L2の距離であり、エジェクタプレート141に固定されたエジェクタピン142も当初の位置からL1+L2の距離だけ移動し、成形品Pを突き出す。
図4は、エジェクタピン142が最大に突き出された状態である。
【0055】
成形品Pの突き出しが終了すると、型締め工程に移行する。型締め工程に移行すると射出成形機の突き出し装置(図示省略)が可動側型板113側から可動側取付板114側に後退する。また射出成形機の突き出し装置の突き出し動力を失ったエジェクタプレート141は、圧縮コイルバネ144の弾性力により可動側型板113側から可動側取付板114側に後退する。このときエジェクタプレート141は、エジェクタピン10の本体部20の外周面を摺動しながら後退を続ける。エジェクタプレート141が最大突き出し位置から距離L2だけ後退する直前に、固定部材22に固定されたボールプランジャ12のボール33がリング状部材11の縁部に接触し、この状態でエジェクタプレート141がさらに後退する。
【0056】
このとき固定部材22とリング状部材11とが外れた状態からボールプランジャ12のボール33がリング状部材11の凹部23に嵌り込むために必要な力が、エジェクタピン10の本体部20の段部24と固定板124との磁力による吸着力よりも小さくなるように設定されているので、エジェクタプレート141が最大突き出し位置から距離L2だけ後退したときには、エジェクタピン10(固定部材22)とエジェクタプレート141(リング状部材11)とが連結した後に、エジェクタピン10の本体部20の段部24と固定板124との連結が外れる。
【0057】
その後、エジェクタピン10(固定部材22)とエジェクタプレート141(リング状部材11)とが連結した状態でエジェクタプレート141がさらに後退し、最終的にはリターンピン145の先端が固定側金型101に接触し、エジェクタプレート141は当初の突き出し前の位置まで押し戻される。
【0058】
なお本実施形態において、固定板124との接触面積を大きくし吸着力を増加させるためのフランジ(図示省略)をエジェクタピン10の本体部20の段部24に設け、固定板124との吸着力を高めるようにしてもよい。本実施形態において磁石にゴム磁石、プラスチック磁石、電磁石などを使用することもできる。この点については、後述の実施形態についても同じである。ゴム磁石、プラスチック磁石は、吸着力は比較的小さいが衝撃に強い利点がある。
【0059】
また磁力で吸着する固定板124に代えて、本発明の保持ユニットを用いることも可能である。この場合には、例えば、固定板124に代えて、リング状部材11又はこれと同等のものを可動側型板113に固定し、エジェクタピン10の本体部20の先端側の外周面に、固定板124に代えて設けられたリング状部材11等の凹部23に嵌り込むボールプランジャ12を設ければよい。
【0060】
以上のように、本実施形態の保持ユニット1によれば、保持機構がユニット化されているので射出成形金型100等の金型に組み込み易く、使い勝手に優れる。また本実施形態の保持ユニット1は、第1部材であるエジェクタピン10(固定部材22)を第2部材であるリング状部材11に対して係止させる押圧手段であるボールプランジャ12が、固定部材22に対して着脱可能であり、また固定部材22に組み込まれた状態で押圧力を調節可能に構成されているので、種々の金型等に組み込み使用可能であり汎用性に優れる。また本実施形態に示す射出成形金型100のように、突き出し機構において、エジェクタプレート141に凹部147を設け、ここに保持ユニット1の第2部材であるリング状部材11を取付けることで成形金型の突き出し機構、成形金型をコンパクトにすることができる。
【0061】
また本実施形態に示す射出成形金型100は、ストローク量が機械的(物理的)に規制されたエジェクタピン10とエジェクタプレート141とを、固定部材22に組み込まれたボールプランジャ12を介して連結させることで、該エジェクタピン10の移動とエジェクタプレート141の移動とを切り離し可能とし、エジェクタピン10とエジェクタプレート141との移動を独立させることができる。
【0062】
また本実施形態に示す射出成形金型100は、エジェクタピン10とエジェクタプレート141との連結にボールプランジャ12を使用するので、エジェクタピン10とエジェクタプレート141との着脱を簡単な構成で実現することができる。このため突き出し機構140は、複雑な部品を必要とせず部品数も少なく構造が簡単で組み立ても容易となり、安価に製作することができる。
【0063】
また上記実施形態では、エジェクタピン10の本体部20の段部24によってエジェクタピン10のストローク量を規制するが、エジェクタピン10のストローク量を規制する規制手段は、上記形態に限定されるものではない。
【0064】
上記実施形態に示す射出成形金型100では、エジェクタプレート141に固定したエジェクタピン142及び着脱可能に固定したエジェクタピン10は各々1本であるが、上記構成からも分かるようにそれぞれ2本以上装着可能であり、各エジェクタピン10のストローク量を異ならせることもできる。着脱可能に固定したエジェクタピン10の本数が2本以上であってもエジェクタプレート141は1つのみでよいので、多段突き出しを行う射出成形金型であっても金型を大型化する必要がない。
【0065】
上記保持ユニット1では、第1部材であるエジェクタピン10と、押圧手段であるボールプランジャ12を固定する固定部材22とが別体であり、エジェクタピン10の下端(底部)に固定部材22が取付けられるが、エジェクタピン10と固定部材22とを一体的に形成してもよい。この点は、他の実施形態においても同じである。このようなエジェクタピンは、本体部20の底部に拡大部を備えるエジェクタピンということができる。
【0066】
さらに上記保持ユニット1の変形例として、第1部材であるエジェクタピン10の本体部20に直接、押圧手段であるボールプランジャ12を取付けてもよい。またリング部材11は、下エジェクタプレート141bに貫通するように設けられた取付孔に嵌込まれた状態で固定されていてもよい。これらの点は、他の実施形態においても同じである。
【0067】
図6は、本発明の第2実施形態の保持ユニット2を備える射出成形金型100の型締め時の要部断面図、
図7は、
図6の射出成形金型100の型開き後の要部断面図、
図8は、
図6の射出成形金型100の1段目の突き出し動作後の要部断面図、
図9は、
図6の射出成形金型100の2段目の突き出し動作後の要部断面図である。なお
図8、
図9では、固定側金型101を省略している。
図1から
図5に示す第1実施形態の保持ユニット1を備える射出成形金型100と同一の部材には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
本実施形態の保持ユニット2は、第1実施形態の保持ユニット1と基本的な構成を同じくするが、エジェクタピン50を上方(
図6の上方向)に付勢する手段を備える。エジェクタピン50は、第1実施形態のエジェクタピン10の本体部20の先端外周にバネ受具52が設けられてなる。圧縮コイルバネ51は、バネ受具52と上エジェクタプレート141aとの間に、エジェクタピン50に挿通された状態で取付けられており、エジェクタピン50を上方に付勢する。
【0069】
圧縮コイルバネ51は、エジェクタプレート141が移動するときのエジェクタピン50の振れを防止するとともに、ストッパー13(
図5参照)と同様、エジェクタプレート141が型締めの状態に戻ったときにエジェクタピン50の下端に取付けられた固定部材22を上エジェクタプレート141a側に押込み、固定部材22をリング状部材11に確実に係止、連結させる機能を有する。
【0070】
第2実施形態のエジェクタピン50には、圧縮コイルバネ51が装着されているのでエジェクタピン50に作用する力が第1実施形態のエジェクタピン10とは異なる。この場合であってもボールプランジャ12を介して連結する固定部材22とリング部材11との連結力、係止、離脱に対する考え方は第1実施形態の保持ユニット1と同じである。
【0071】
上記以外の射出成形金型100の成形品突き出し時の基本的な動作、突き出し機構140及び保持ユニット2の基本的な作用については、第1実施形態と同じなので説明を省略する。
【0072】
また本実施形態においても、第1実施形態と同様、エジェクタプレート141が型締め時の位置に戻ったときにエジェクタピン50の下端に取付けられた固定部材22がリング状部材11に確実に連結するように、可動側取付板114にストッパー13が付加されていてもよい。さらにストッパー13には、エジェクタピン50の下端に取付けられた固定部材22を上エジェクタプレート141a側に付勢する圧縮コイルバネ14が取付けられていてもよい(
図5(a)参照)。
【0073】
ストッパー13を設けることによって、エジェクタプレート141が型締め時の位置に戻ったときにエジェクタピン50の下端に取付けられた固定部材22がストッパー13の先端又は圧縮コイルバネ14に押込まれ、ボールプランジャ12のボール33がリング状部材11の凹部23に確実に嵌り込むようになる。
【0074】
またエジェクタピン50の本体部20に取付けられた圧縮コイルバネ51と、ストッパー13に取付けられた圧縮コイルバネ14(
図5(a)参照)との2つの圧縮コイルバネ14、51を用いることで、突き出し工程の初期から終期に亘ってエジェクタピン50による突き出し力を安定的に維持可能となる。突き出し工程の初期には圧縮された状態であるストッパー13側の圧縮コイルバネ14のバネ反力を効率的に利用可能であり、突き出し工程の進行に伴いストッパー13側の圧縮コイルバネ14が伸長してバネ反力が低下するが、今度は本体部20側の圧縮コイルバネ51が収縮してバネ反力が増加するので、突き出し工程の終期においても高い突き出し力を維持することができる。
【0075】
図10は、本発明の第3実施形態の保持ユニット3を備える射出成形金型300の型締め時の要部断面図、
図11は、
図10の射出成形金型300の型開き後の要部断面図、
図12は、
図10の射出成形金型300の1段目の突き出し動作後の要部断面図、
図13は、
図10の射出成形金型300の2段目の突き出し動作後の要部断面図である。なお
図12、
図13では、固定側金型101を省略している。
図6から
図9に示す第2実施形態の保持ユニット2を備える射出成形金型100と同一の部材には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
本実施形態の保持ユニット3は、エジェクタピン60に段部24を有していない点を除いて第2実施形態の保持ユニット2と同じである。本実施形態の保持ユニット3は、固定板124への突き当て及び吸着をバネ受具52によって行う。
【0077】
また本実施形態に示す射出成形金型300は、可動側取付板114に圧縮コイルバネ14が取付けられている。ただし本実施形態に示す射出成形金型300は、ストッパー13に代えて、圧縮コイルバネ14用のガイドピン401を有しており、ガイドピン401は、エジェクタピン60を直接押込まない。
【0078】
本実施形態の保持ユニット3を備える射出成形金型300の成形品突き出し時の動作、突き出し機構140及び保持ユニット3の作用について説明する。以降、便宜上、エジェクタピン60の本体部20側の圧縮コイルバネ51を上バネ51、可動側取付板114側の圧縮コイルバネ14を下バネ14と呼ぶ。上バネ51及び下バネ14は、共に保持ユニット3のエジェクタピン60の下端に取付けられた固定部材22を上エジェクタプレート141a側(
図10の上方向)に付勢するように働く。
【0079】
型締め時(射出工程から冷却工程)において、上バネ51は、射出工程から突き出し工程の全工程に亘って最も伸長した状態であり、下バネ14は、全工程に亘って最も収縮した状態となっている(
図10参照)。このため上バネ51は、比較的小さな力、下バネ14は、比較的大きな力でエジェクタピン60の下端に取付けられた固定部材22を付勢している。型開き後も同様である(
図11参照)。
【0080】
突き出し工程に移行すると、エジェクタプレート141の前進に伴い、下バネ14が伸長しバネ反力が低下する。エジェクタプレート141が距離L1だけ突き出されると、エジェクタピン60のバネ受具52が固定板124に突き当たりエジェクタピン60の移動が阻止される(
図12参照)。このとき下バネ14がエジェクタピン60の下端に取付けられた固定部材22から離れており下バネ14のバネ反力がゼロになっているが、上バネ51のバネ反力が維持されている。
【0081】
これ以降、エジェクタピン60の移動が停止し、エジェクタプレート141が引き続き前進するので、上バネ51が圧縮されバネ反力が増大する。エジェクタピン142が最大に突き出された状態になると、上バネ51が全工程に亘って最も収縮した状態となり、上バネ51のバネ反力が最大となる(
図13参照)。
【0082】
このように、突き出し工程の初期には圧縮された状態である下バネ14のバネ反力を効率的に利用可能であり、突き出し工程の進行に伴い下バネ14が伸長してバネ反力が低下するが、今度は上バネ51が収縮してバネ反力が増加するので、突き出し工程の初期から終期に亘ってエジェクタピン60の高い突き出し力を維持することができる。
【0083】
第3実施形態のエジェクタピン60には、圧縮コイルバネ51が装着され、さらに可動側取付板114に圧縮コイルバネ14が取付けられているのでエジェクタピン60に作用する力が第1実施形態のエジェクタピン10とは異なる。この場合であってもボールプランジャ12を介して連結する固定部材22とリング部材11との連結力、係止、離脱に対する考え方は第1実施形態の保持ユニット1と同じである。
【0084】
上記以外の射出成形金型300の成形品突き出し時の基本的な動作、突き出し機構140及び保持ユニット3の基本的な作用については、第1実施形態と同じなので説明を省略する。
【0085】
図14は、本発明の第4実施形態の保持ユニット4を備える射出成形金型100の型締め時の要部断面図、
図15は、
図14の射出成形金型100の型開き後の要部断面図、
図16は、
図14の射出成形金型100の1段目の突き出し動作後の要部断面図、
図17は、
図14の射出成形金型100の2段目の突き出し動作後の要部断面図である。なお
図16、
図17では、固定側金型101を省略している。
図1から
図4に示す第1実施形態の保持ユニット1を備える射出成形金型100と同一の部材には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0086】
本実施形態の保持ユニット4は、第1実施形態の保持ユニット1と基本的な構成を同じくするが、圧縮コイルバネを伸縮自在に収容するホルダー70を備える。ホルダー70は、エジェクタプレート141に固定される円筒状の外ホルダー71と、外ホルダー71内に位置し、外ホルダー71に対してスライド自在に係止する有底円筒状の内ホルダー72とで構成される。
【0087】
ホルダー70は、中心軸線が保持ユニット4のエジェクタピン10の中心軸線と一致するようにエジェクタプレート141に取付けられている。上エジェクタプレート141aには、外ホルダー71の鍔74が嵌り込む凹部149が設けられ、下エジェクタプレート141bには、外ホルダー71が挿通する貫通孔150が設けられ、外ホルダー71の鍔74が上エジェクタプレート141aと下エジェクタプレート141bとに挟み込まれ固定されている。
【0088】
本実施形態の保持ユニット4では、リング状部材11に代えて外ホルダー71が第2部材であるリング状部材として機能する。エジェクタピン10の下端に取付けられた固定部材22は、外ホルダー71内を上下動可能に構成される。外ホルダー71の上部内面には、第1実施形態の保持ユニット1のリング状部材11と同様、ボールプランジャ12が嵌り込む凹部23が設けられており、エジェクタピン10の下端に取付けられた固定部材22に固定されたボールプランジャ12を介してエジェクタピン10が外ホルダー71に着脱自在に連結する。
【0089】
内ホルダー72には圧縮コイルバネ75が収容されており、該圧縮コイルバネ75が第3実施形態における上バネ51及び下バネ14の両方の機能を発揮する。エジェクタピン10には、圧縮コイルバネ75用のガイドピン76が固定部材22の底面から立設されている。
【0090】
本実施形態の保持ユニット4は、内ホルダー72の底面及びエジェクタピン10の下端に取付けられた固定部材22の底面が圧縮コイルバネ75の受圧面となり、圧縮コイルバネ75が固定部材22を上方に付勢することでエジェクタピン10の突き出し力を維持しつつ、圧縮コイルバネ75の伸縮に応じて内ホルダー72が外ホルダー71に対して中心軸線方向に摺動することでホルダー70の全体が伸縮するように構成されている。
【0091】
第4実施形態のエジェクタピン10には圧縮コイルバネ75の力が作用するため、第4実施形態のエジェクタピン10に作用する力は、第1実施形態のエジェクタピン10とは異なる。この場合であってもボールプランジャ12を介して連結する固定部材22とリング状部材として機能する外ホルダー71との連結力、係止、離脱に対する考え方は第1実施形態の保持ユニット1と同じである。
【0092】
次に本実施形態の保持ユニット4を備える射出成形金型100の成形品突き出し時の動作、突き出し機構140及び保持ユニット4の作用について説明する。型締め時(射出工程から冷却工程)において、内ホルダー72の底面が可動側取付板114に当接するとともに、内ホルダー72の先端面がエジェクタピン10の下端に取付けられた固定部材22の底面に当接している(
図14参照)。これにより固定部材22がボールプランジャ12を介して確実に外ホルダー71に連結される。
【0093】
図15から
図16に示すように、型開き後、突き出し工程に移行すると、エジェクタプレート141の前進に伴い、圧縮コイルバネ75のバネ反力により内ホルダー72が外ホルダー71に対して摺動して圧縮コイルバネ75及びホルダー70の全体が伸長し、圧縮コイルバネ75のバネ反力が徐々に弱くなる。エジェクタプレート141が距離L1だけ突き出されるとエジェクタピン10の段部24が固定板124に突き当たる(
図16参照)。
【0094】
ここからさらにエジェクタプレート141が前進すると、エジェクタピン10の下端に取付けられた固定部材22が外ホルダー71の凹部23から外れ、エジェクタピン10を残してエジェクタプレート141が前進する(
図17参照)。エジェクタピン10が静止した状態でエジェクタプレート141がさらに前進すると、圧縮コイルバネ75の受圧面である固定部材22の底面と、内ホルダー72の底面との距離が縮まるので、圧縮コイルバネ75のバネ反力が再度、徐々に強くなる。
【0095】
このように、本実施形態の保持ユニット4によれば、突き出し工程の初期には圧縮された状態である圧縮コイルバネ75のバネ反力を効率的に利用可能であり、突き出し工程の進行に伴い、一旦、圧縮コイルバネ75が伸長してバネ反力が低下するが、再度、圧縮コイルバネ75が収縮してバネ反力が増加するので、突き出し工程の初期から終期に亘ってエジェクタピン10の高い突き出し力を維持することができる。
【0096】
以上、第1~第4実施形態の保持ユニット1~4を用いて、本発明の保持ユニット、該保持ユニットを備える成形金型の突き出し機構、固定側金型、可動側金型、成形金型、及び成形品を説明したが、本発明の保持ユニット、該保持ユニットを備える成形金型の突き出し機構、固定側金型、可動側金型、成形金型、及び成形品は、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変形して使用することができる。例えば、本発明の保持ユニットは、成形金型の突き出し機構の一部として組み込まれる用途に限定されるものではなく、例えば、簡易的なロック機構等の用途としても利用可能であり、用途に応じて適宜、構成や形状の変更を行えばよい。
【0097】
また本発明の保持ユニットにおいて、第1部材を第2部材に係止させる押圧手段は、上記実施形態に記載したボールプランジャ12に限定されるものではない。ボールプランジャ12以外に、板ばね、先端部にリング部材11あるいは外ホルダー71の凹部23に係止する係止具を備える弾性体等であってもよい。このとき弾性体は、ばね以外のものであってもよい。
【0098】
また本発明の保持ユニットにおいて、押圧手段を備える第1部材が移動不能に固定され、第2部材が移動自在であってもよい。また本発明の保持ユニット及び該保持ユニットを備える成形金型の突き出し機構、固定側金型、可動側金型及び成形金型において、各構成部材の角及び側稜にR面取りやC面取り等が施されていてもよい。
【0099】
また本発明の保持ユニット及び該保持ユニットを備える成形金型の突き出し機構、固定側金型、可動側金型及び成形金型に使用される各構成部材の材質は、特定の材質に限定されるものではなく、公知のアンダーカット処理機構及び成形用金型に使用される部材の材質と同様のものを適宜用いればよい。ただし各構成部材における摺動面は、摺動性の良好な材質又は摺動性の良好な表面処理が施された材料を用いることが好ましい。なお各摺動面は、面接触であるものに限定されるものではなく、線接触や点接触であってもよい。
【0100】
また本発明の保持ユニットを備える成形金型の突き出し機構、固定側金型、可動側金型は、水平、垂直又はその他の方向に開閉する成形金型に適用可能である。
【0101】
また本発明の保持ユニット及び該保持ユニットを備える成形金型の突き出し機構、固定側金型、可動側金型及び成形金型は、射出成形金型以外にダイカスト金型のようなモールド金型、モールドプレス成形金型などに好適に使用することができる。
【0102】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【符号の説明】
【0103】
1、2、3、4 保持ユニット
10、50、60 エジェクタピン
11 リング状部材
12 ボールプランジャ
14、51、75 圧縮コイルバネ
20 本体部
22 固定部材
23 凹部
33 ボール
37 外周面
70 ホルダー
71 外ホルダー
72 内ホルダー
100、300 射出成形金型
101 固定側金型
111 可動側金型
113 可動側型板
120 アンダーカット処理機構
140 突き出し機構
141 エジェクタプレート
142 エジェクタピン
147 凹部
P 成形品