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特許7089716電気錠システムおよび電気錠用のスイッチング電源回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】電気錠システムおよび電気錠用のスイッチング電源回路
(51)【国際特許分類】
   E05B 47/00 20060101AFI20220616BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20220616BHJP
   H02H 9/04 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
E05B47/00 K
E05B47/00 T
H02M3/28 A
H02H9/04 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018083519
(22)【出願日】2018-04-24
(65)【公開番号】P2019035316
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2017154983
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594121408
【氏名又は名称】オクト産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124017
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 晃秀
(72)【発明者】
【氏名】安達 良平
(72)【発明者】
【氏名】森川 盛一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 信幸
(72)【発明者】
【氏名】森川 隆
(72)【発明者】
【氏名】吉田 史生
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 太
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-144422(JP,A)
【文献】特開平04-049858(JP,A)
【文献】特開平07-322609(JP,A)
【文献】特公昭51-045204(JP,B1)
【文献】特開2011-152019(JP,A)
【文献】特開2015-163018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 47/00-47/04
H02M 3/28
H02H 9/00-9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気錠と、
前記電気錠に電圧を供給するためのスイッチング電源回路とを含み、
前記スイッチング電源回路は、1次側電源と、2次側電源とを含み、
前記1次側電源は、トランスの一部を構成する電力入力用巻線と、第1の電源入力端子に接続される第1の電源線と、第2の電源入力端子に接続される第2の電源線とを含み、
前記2次側電源は、前記トランスの一部を構成する2次側巻線を含み、
前記電力入力用巻線と前記2次側巻線との間に、キャパシタが設けられており、
前記キャパシタは、並列に複数設けられている電気錠システム。
【請求項2】
電気錠と、
前記電気錠に電圧を供給するためのスイッチング電源回路とを含み、
前記スイッチング電源回路は、1次側電源と、2次側電源とを含み、
前記1次側電源は、トランスの一部を構成する電力入力用巻線と、第1の電源入力端子に接続される第1の電源線と、第2の電源入力端子に接続される第2の電源線とを含み、
前記2次側電源は、前記トランスの一部を構成する2次側巻線を含み、
前記電力入力用巻線と前記2次側巻線との間に、キャパシタが設けられており、
前記キャパシタは、耐圧が200V以上の素子から構成されている電気錠システム。
【請求項3】
電気錠と、
前記電気錠に電圧を供給するためのスイッチング電源回路とを含み、
前記スイッチング電源回路は、1次側電源と、2次側電源とを含み、
前記1次側電源は、トランスの一部を構成する電力入力用巻線と、第1の電源入力端子に接続される第1の電源線と、第2の電源入力端子に接続される第2の電源線とを含み、
前記2次側電源は、前記トランスの一部を構成する2次側巻線を含み、
前記電力入力用巻線と前記2次側巻線との間に、キャパシタが設けられており、
前記キャパシタと前記2次側巻線との間の配線が接地されている電気錠システム。
【請求項4】
電気錠と、
前記電気錠に電圧を供給するためのスイッチング電源回路とを含み、
前記スイッチング電源回路は、1次側電源と、2次側電源とを含み、
前記1次側電源は、トランスの一部を構成する電力入力用巻線と、第1の電源入力端子に接続される第1の電源線と、第2の電源入力端子に接続される第2の電源線とを含み、
前記2次側電源は、前記トランスの一部を構成する2次側巻線を含み、
前記電力入力用巻線と前記2次側巻線との間に、キャパシタが設けられており、
前記第1の電源線と前記第2の電源線との間に、複数の電解コンデンサが並列接続されている電気錠システム。
【請求項5】
電気錠と、
前記電気錠に電圧を供給するためのスイッチング電源回路とを含み、
前記スイッチング電源回路は、1次側電源と、2次側電源とを含み、
前記1次側電源は、トランスの一部を構成する電力入力用巻線と、第1の電源入力端子に接続される第1の電源線と、第2の電源入力端子に接続される第2の電源線とを含み、
前記2次側電源は、前記トランスの一部を構成する2次側巻線を含み、
前記電力入力用巻線と前記2次側巻線との間に、キャパシタが設けられており、
前記第1次側電源は、IC駆動用・電圧検出用の巻線と、制御用ICとを含み、
制御用ICはVcc端子を含み、
前記制御用ICのVcc端子は、スイッチング素子を介して第1の電源線に接続され、
前記IC駆動用・電圧検出用の巻線の一端は、ショットキーダイオードを介して、前記制御用ICのVcc端子に接続されている電気錠システム。
【請求項6】
請求項において、
前記ショットキーダイオードから前記Vcc端子との間において、前記ショットキーダイオード側から順に電解コンデンサおよびツェナーダイオードが並列接続されており、前記電解コンデンサおよび前記ツェナーダイオードの他方の端は、接地されている電気錠システム。
【請求項7】
1次側電源と、2次側電源とを含み、
前記1次側電源は、電力入力用巻線を含み、
前記2次側電源は、2次側巻線を含み、
前記電力入力用巻線と前記2次側巻線との間に、キャパシタが設けられており、
前記キャパシタは、並列に複数設けられている電気錠用のスイッチング電源回路。
【請求項8】
1次側電源と、2次側電源とを含み、
前記1次側電源は、電力入力用巻線を含み、
前記2次側電源は、2次側巻線を含み、
前記電力入力用巻線と前記2次側巻線との間に、キャパシタが設けられており、
前記キャパシタは、耐圧が200V以上の素子から構成されている電気錠用のスイッチング電源回路。
【請求項9】
1次側電源と、2次側電源とを含み、
前記1次側電源は、電力入力用巻線を含み、
前記2次側電源は、2次側巻線を含み、
前記電力入力用巻線と前記2次側巻線との間に、キャパシタが設けられており、
前記キャパシタと前記2次側巻線との間の配線が接地されている電気錠用のスイッチング電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サージ電流の保護機能を有する電気錠システム電気錠用のスイッチング電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電気錠システムにおいて、雷サージ対策がなされたアダプタが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-275836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、サージ耐圧に優れた電気錠システムおよび電気錠用のスイッチング電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電気錠システムは、
電気錠と、
前記電気錠に電圧を供給するためのスイッチング電源回路とを含み、
前記スイッチング電源回路は、1次側電源と、2次側電源とを含み、
前記1次側電源は、トランスの一部を構成する電力入力用巻線を含み、
前記2次側電源は、前記トランスの一部を構成する2次側巻線と、第1の電源入力端子に接続される第1の電源線と、第2の電源入力端子に接続される第2の電源線とを含み、
前記電力入力用巻線と前記2次側巻線との間に、キャパシタが設けられている。
【0006】
本発明によれば、耐雷サージ性能が向上した電気錠システムを実現することができる。
【0007】
本発明において、前記キャパシタは、並列に複数設けられていることができる。
【0008】
本発明において、コンデンサの電極面積当たりの容量を増やすことができ、電流破壊モードに対して強くすることができる。また、コンデンサの小型化を図ることができる。
【0009】
本発明において、前記キャパシタは、耐圧が200V以上の素子から構成されることができる。
【0010】
本発明において、前記キャパシタと前記2次側巻線との間の配線が接地されていることができる。
【0011】
本発明おいて、前記第1の電源線と前記第2の電源線との間に、複数の電解コンデンサが並列接続されていることができる。これにより、瞬時停電対策を図ることができる。
本発明において、
【0012】
前記第1次側電源は、IC駆動用・電圧検出用の巻線と、制御用ICとを含み、
制御用ICのVcc端子は、スイッチング素子を介して第1の電源線に接続され、
前記IC駆動用・電圧検出用の巻線の一端は、ショットキーダイオードを介して、制御用ICのVcc端子に接続されていることができる。これにより、電源電圧の安定性を向上させることができる。
【0013】
本発明において、前記ショットキーダイオードから前記Vcc端子との間において、前記ショットキーダイオード側から順に電解コンデンサおよびツェナーダイオードが並列接続されており、前記電解コンデンサおよび前記ツェナーダイオードの他方の端は、接地されていることができる。これにより、耐雷サージ性能を向上させることができる。
【0014】
本発明において、前記第1の電源線と前記第2の電源線との間にバリスタが設けられていることができる。これにより、耐雷サージ性能を向上させることができる。
【0015】
本発明の電気錠用のスイッチング電源回路は、
1次側電源と、2次側電源とを含み、
前記1次側電源は、電力入力用巻線を含み、
前記2次側電源は、2次側巻線を含み、
前記電力入力用巻線と前記2次側巻線との間に、キャパシタが設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電気錠システムおよび電気錠用のスイッチング電源回路によれば、高いサージ耐圧性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る電気錠システムの構成図である。
図2】実施の形態に係る電気錠用のスイッチング電源回路の機能ブロック図である。
図3】実施の形態に係る電気錠用のスイッチング電源回路の機能ブロック図と電気回路図との対応関係を示す図である。
図4】実施の形態に係る電気錠用のスイッチング電源回路の電気回路図である。
図5】実施の形態に係る電気錠用のスイッチング電源回路の電気回路図である。
図6図5に係る電気回路図の分解図である。
図7図5に係る電気回路図の分解図である。
図8】実施の形態に係る電気錠システムの適用例を示す図である。
図9】雷サージについて説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
1.基本構成
電気錠システム10は、図1に示すように、スイッチング電源回路100と、電気錠200とを含む。スイッチング電源回路100は、電気錠200に直流電圧を供給するためのものである。電気錠200は、特に限定されず、直流電圧で駆動されるものであれば、公知のものを適用することができる。スイッチング電源回路100は、ACアダプターとして機能するものである。
【0020】
スイッチング電源回路100は、図2に示すように、交流電圧(たとえば100V)を直流電圧(たとえば22V)に変換するための電源であり、1次側電源と、2次側電源とを含み、具体的には、1次側整流・平滑回路F1と、スイッチ素子F2と、IC起動回路F3と、制御回路F4と、トランスF5と、1次2次間コンデンサF6と、2次側整流・平滑回路F7とを含む。第1の電源入力端子I1からの電源線(以下「第1の電源線」という)と、接地側電源入力端子I2からの電源線(以下「第2の電源線」という。)とが設けられている。
【0021】
1次側整流・平滑回路F1は、整流回路と平滑回路を含む。整流回路は、ブリッジダイオードD1により構成される。平滑回路はキャパシタC1,C2およびインダクタンスL1により構成され得る。
【0022】
1次側整流・平滑回路F1の第1の電源入力端子I1および第2の電源入力端子I2の側において、バリスタVR1が設けられている。第1の電源線において、第1の電源入力端子I1とバリスタVR1との間に、タイムラグヒューズF1が設けられている。第2の電源線において、バリスタVR1とブリッジダイオードDB1との間において、抵抗FR1が設けられている。
【0023】
スイッチ素子F2は、第1のスイッチング素子Q1から構成され、1次側整流・平滑回路F1により整流および平滑化された電圧を高周波にするために用いるスイッチング素子である。
【0024】
IC起動回路F3は、制御用IC(U1)を駆動するためのもので、第2のスイッチング素子Q2と、ツェナーダイオードZ01と、コンデンサC4と、電解コンデンサC5を含む。第2のスイッチング素子Q2は、たとえば、デプレッションタイプとすることができる。
【0025】
制御回路F4は、制御用IC(U1)を含む。
【0026】
トランスF5は、電力入力用巻線TS1と、2次側巻線TS2と、IC駆動用・電圧検出用の巻線TS3とを含む。電力入力用巻線TS1およびIC駆動用・電圧検出用の巻線TS3は、1次側電源に設けられている。2次側巻線TS2は2次側電源に設けられている。電力入力用巻線TS1の巻数は、特に限定されないが、たとえば72とすることができる。2次側巻線TS2およびIC駆動用・電圧検出用の巻線TS3の巻数は、特に限定されないが、同数とすることができ、たとえば、12とすることができる。
【0027】
1次2次間コンデンサF6は、コンデンサCY1,CY2を含み、たとえば、耐圧が200V以上、好ましくは250V、より好ましくは300V以上とすることができ、F6は、たとえば、800~2000pF、好ましくは800~1500pF、より好ましくは800~1000pFとすることができる。コンデンサCY1,CY2はパターンの取り回しや周辺定数で設定され得る。インピーダンスに不整合があればエネルギーの反射に伴ってエネルギーが伝達されないことは周知であるところ、AC入力とコモンアース間のインピーダンスを測定し、その間の伝達係数をスミスチャートで調べたところ、800~1000pFが特に良好である。
【0028】
2次側整流・平滑回路F7は、DC電源を生成するためのものである。
【0029】
2.具体的回路構成
スイッチング電源回路100の具体的な回路構成を図3および図4を用いて説明する。
【0030】
第1の電源入力端子I1は、非接地側電源入力端子であり、1次側整流・平滑回路F1を介して、電力入力用巻線TS1の一端側に接続されている。電力入力用巻線TS1の他端は、第1のスイッチング素子(たとえばMOSトランジスタ)Q1に接続されている。第1のスイッチング素子Q1がNMOSトランジスタの場合には、電力入力用巻線TS1の他端は、このNMOSトランジスタのドレインに接続されている。
【0031】
第1の電源入力端子I1は、1次側整流・平滑回路F1を介して、第2のスイッチング素子(たとえばMOSトランジスタ)Q2に接続されている。第2のスイッチング素子Q2がNMOSトランジスタの場合には、第1の電源入力端子I1は、このNMOSトランジスタのドレインに接続されている。
【0032】
第1のスイッチング素子Q1がNMOSトランジスタからなる場合には、第1のスイッチング素子Q1のゲートは、電源制御用IC(U1)のOutput端子に接続され、第1のスイッチング素子Q1のソースは、接地されていると共に、制御用IC(U1)のIsense端子に接続されている。
【0033】
第2の電源入力端子I2は、接地側電源入力端子である。
【0034】
第2のスイッチング素子Q2がNMOSトランジスタからなる場合には、第2のスイッチング素子Q2のゲートは、制御用IC(U1)のASU端子に接続され、第2のスイッチング素子Q2のソースは、制御用IC(U1)の端子Vccに接続されている。
【0035】
電力入力用巻線TS1と2次側巻線TS2との間に、キャパシタCY1,CY2が並列に設けられている。キャパシタCY1,CY2と2次側巻線TS2との間の配線W3が接地されている。
【0036】
IC駆動用・電圧検出用の巻線TS3の一端は、制御用IC(U1)のCFG端子(暴走しないように、IC駆動用・電圧検出用の巻線に異常電圧が発生したときに、ICを強制的に止める端子)に接続されていると共に、ショットキーダイオードD6を介して、制御用IC(U1)のVcc端子と接続されている。ショットキーダイオードD6からVcc端子との間において、ショットキーダイオードD6側から順にコンデンサC4、電解コンデンサC5およびツェナーダイオードZ01が並列接続されており、コンデンサC4、電解コンデンサC5およびツェナーダイオードZ01の他方の端は、接地されている。ツェナーダイオードZO1により、制御用IC(U1)のVccサージ(静電気も含む)による影響を抑えることができる。ツェナーダイオードZ01は、たとえば、22Vツェナーダイオードとすることができる。電解コンデンサC5を設けることで、瞬停の改善、特に瞬停復帰の立上り改善に寄与することができ、電解コンデンサC5として、たとえば、耐圧が50Vで、容量が2.2μFのものを適用することができる。ショットキーダイオードD6を設けることで、負荷接続状態での立上り発振安定性を確保することができ、瞬時に立ち上がるようにすることができる。
【0037】
スイッチング電源回路100は、筐体に収められることができる。スイッチング電源回路100と筐体との隙間の少なくとも一部にスイッチング電源回路100を固定するための固定部材を設けることができる。固定部材は、たとえば、弾性力のある固定ボンド(たとえば、シリコンボンド)により構成することができる。落下の衝撃を吸収することができる。シリコンボンドだと、トランスの振動を吸収することができる。固いボンドであると、その振動ではがれてしまうことを抑えることができる。絶縁性の観点から、シリコンボンドであることが好ましい。
【0038】
図5図7は、本実施の形態に係る変形例の回路図である。
【0039】
3.作用効果
電気錠において、雷対策の関係から、スイッチング方式の電源を使用するという発想が今までなかった。本発明者らは、雷によりサージ電圧がスイッチング電源回路100に供給されても、高い耐圧性を確保できる技術を見出した。通常は、サージ耐圧が3kV程度であるが、この回路によれば、12kV程度のサージ耐圧が確保できることができる。
【0040】
瞬時停電は、過負荷突入時と1次エネルギーの残留電力の問題により生じ、スイッチングレギュレーターはこの現象にはリニアTypeと比較して脆弱な点がある。1次エネルギーの残留電力の対策については、たとえば、1次側電流平滑回路の電解コンデンサC1,C2を第1の電源線と第2の電源線との間に並列接続することができ、そのコンデンサC1,C2として、たとえば、耐圧が200Vで容量が56μFのものを適用することができる。電解コンデンサC1,C2の容量を大きくし、供給電圧の停止時の電圧降下を少なくすることができ、1次供給電圧の安定化を図ることができる。
【0041】
また、電解コンデンサC5の容量を少なくすることにより、制御ICのVccの立上り電圧が素早く立ち上げることができる。
【0042】
本実施の形態によれば、瞬時停電のように電気が切れてもゆっくり電圧降下が落ち、電気が入った場合に瞬時に立ち上がる。
電気錠の電源アダプターを軽量化することができる。
【0043】
負荷接続状態での立上り発振安定性を確保するため、ショットキーダイオードD6を設けることで、瞬時に立ち上がるようにすることができる。
【0044】
2次出力巻き線TS3から電圧制御回路巻き線TS1のサージスパークをツェナーダイオードZD1で吸収して制御ICの破損事故を解消することができる。
【0045】
4.適用例
電気錠システム10は、たとえば、雷の影響を受ける可能性があるところに設置される電気錠200に好適に適用される。具体的には、図8に示すように、電気錠システム10は、玄関などの扉120に用いられる電気錠として好適であり、電気錠200a,200bにスイッチング電源回路100が接続されることができる。
【0046】
玄関などの扉120に取り付けられる電気錠システム10において、スイッチング電源回路100に雷電流などのサージ電流が流れたとしても、1次2次間コンデンサF6の耐圧が高いため、スイッチング電源回路100や電気錠200が破壊されないように、サージ電流を扉を通じて流すことができる。
【0047】
5.雷サージ
図9を用いて雷サージについて説明する。雷サージには、ノーマルモードとコモンモードの2つの流入条件がある。ノーマルモードは、商用供給電源から入り込むサージである。コモンモードは、家屋や外部環境から入り込むサージである。電柱に落雷したサージ電流は、ノーマルモードでアダプターの内部を通過する。家屋などに落雷したサージ電流は、コモンモードでアダプターの内部を通過する。
【0048】
ノーマルモードにおけるサージ対策は、出来る限りアダプターの制御回路にサージが影響しないようにし、ノーマルサージをバリスター経由で大地へ流し込む。具体的には、AC入力側で過大電圧時の短絡についてバリスターVR1を用いて実現し、240V以上の電流を短絡している。
【0049】
一方、コモンサージはコンデンサーCY1,CY2を経由して大地へ流し込む。具体的には、コモンサージは、出力のアースから、コンデンサCY1,CY2(471p)を経由してキャパシタC1、バリスタBR11、抵抗FR1を通過し、1次側と2次側との間を短絡する。
【0050】
ノーマルサージは低インピーダンスでのサージ状態となり、コモンサージは高インピーダンスでのサージ状態となる。
【実施例1】
【0051】
1.雷サージ対策
リニア型の電源では、1次と2次の巻き線間の耐圧について、10kVで誤動作せず、12kVで破壊しないことについて、電源を組み込んだ製品を製造するメーカーなどが、自ら定める任意の規格(以下「任意規格」という。)として保証を求めることがある。具体的には、任意規格がJEC規格となっている場合には、電流制限は100Ωのリミッターで、短絡最大では120Aとすることから、印加電圧が12kVと高電圧が要求されることになる。
【0052】
本願発明者らは、ノーマルモードでのアダプター破壊やコモンモードでの電気錠内部回路の破損事故があり、こられの破損事故が雷サージによるものであることを見出した。
【0053】
具体的な実験により、以下のことを確認した。なお、試験条件としては、IEC(国際電気標準会議)において雷サージの印加条件が規定されているところ、印加される電流規制は、OpenMode(コモンモード)での印加時からピーク値(Peak値)までの時間は1.2μsec、ピーク値から50%降下するまでの時間は50μsecである。ShortMode(ノーマルモード)では、印加時からピーク値までの時間は8μsecであり、ピーク値から50%降下した時間は20μsecである。
【0054】
(1)ノーマルモードのサージはバリスターVR1(D14 240V)とし、リニア型アダプタでノーマルサージでトランス巻き線の温度Fuseの断線事故を改善することを確認した。この改善によりIEC試験で2000A程度のサージ電流を保証することを確認した。
【0055】
(2)コモンモードのサージ対策として、ブリッジダイオードDB1を1Aのものから2Aに変更したことで、一瞬たりとも超えられない順電流、すなわちピーク順方向サージ電流(IFSM)を大きくすることができた。
【0056】
(3)サージ対策コンデンサーCY1,CY2を1000pFから2つの470pF(パラ)を並列に構成させることで、サージ通過電流の強化(1素子から2素子へ通過電流を増やす)が図ることができ、JEC試験で12kVまでコモンサージ耐性が向上した。
【0057】
(4)制御ICのVccにツェナーダイオードZ01を追加することにより、トランスの巻き線間スパーク電圧を吸収し、静電気試験±20kVでIC破損が±25kVまで動作異常がないことを確認した。
【0058】
2.瞬時停電対策
施解錠動作時に瞬時停電が発生した場合、電気錠システムのVccがリセット電圧まで電圧降下するとシステムが停止してメカ動作が停止してしまう(ロック状態)。この状態で電圧が復帰した後に再操作をすると正常復帰するが、玄関錠の守秘性からたとえば200msec以下の瞬時停電で、誤動作しないことが要求されている。
【0059】
(1)1次側電流平滑回路の電解コンデンサは通常1つから構成されるが、1次側電流平滑回路の電解コンデンサC1,C2を設けたことにより、リニア型の電源と同等レベルまで改善したことを確認した。
【0060】
(2)IC起動回路F3の電解コンデンサC5を2.2μFにしたところ、瞬停復帰時の立ち上がりが早くなり、瞬停動作保証が250msecまで改善したことを確認した。なお、リニア型で求められる瞬停動作保証は、200msecである。また、電解コンデンサC5を4.7μFにした場合には、200msecの瞬停動作保証を実現することができなかった。
【0061】
3.負荷安定性
システムによってはスタートのイニシャライズが短く100V入力と同時に動作することがあり、負荷動作でアダプターが立ち上がらないことがある(RFID等のシステム等)。 これは2次電圧が十分に立ち上がる前に電圧降下が起こりうるため、出力が遅れたり、十分な電圧が発生しない事象がある。
【0062】
負荷の軽重に関係なく、低電流時でも、過負荷時でも、出力される電圧の安定性が高い。微弱電流でも電圧が高くなることがなく、過電流時でも電圧が下がるわけでもなく、同じ電圧が出力される。つまり、負荷の状態によって2つの制御方式を変えることができる。より具体的には、負荷が重いと周波数は一定でパルス幅を変え(周波数の中の比率を変え)てPWM(Pulse Width Modulation)電圧制御に移行させることができ、低電流時や負荷が軽いとFWM制御を実行し、効率を下げないために周波数を変えて制御を行うことができる。
【0063】
(1)FWM(Frequency Width Modulation)電圧制御のため、負荷変動に対して電圧変動が少ない。市販品の負荷変動は、97%に対して、本実施の形態によれば99.5%と安定していることが確認された。
【0064】
(2)制御IC(U1)の電源Vccのための整流用ダイオードをファーストリカバリーからショットキーダイオードD6へ変更することで、過負荷状態での立上りでの安定性が高く、順方向立ち上がり電圧Vfがショットキーダイオードにより低電圧となる。制御用IC(U1)の電源が過負荷でも、制御IC(U1)がスムーズに立ち上がることを確認した。前記IC駆動用・電圧検出用の巻線の出力が不安定であっても、ショットキーダイオードD6を適用したことで、制御IC(U1)に安定した電圧を供給できるようになり、最大負荷であっても安定な立上りを実現することができる。
【0065】
(3)電源Vccの安定により低負荷での安定性も高いAC電源アダプターを実現することができることを確認した。低負荷でも制御IC(U1)が安定して動作するので電圧変動も少なくすることができることを確認した(無負荷からの変動小)。
【0066】
本実施の形態は、本発明の範囲内において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の電気錠システムおよび電気錠用のスイッチング電源回路は、玄関などの扉用の電気錠などに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 電気錠システム
100 スイッチング電源回路
200 電気錠
I1 第1の電源入力端子
I2 第2の電源入力端子
TS1 電力入力用巻線
TS2 2次側巻線
TS3 IC駆動用・電圧検出用の巻線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9