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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】コネクタ構造
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/04 20130101AFI20220616BHJP
   A61G 5/12 20060101ALI20220616BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20220616BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
A61G5/04 711
A61G5/12 701
B60N2/90
H01R13/639 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017051781
(22)【出願日】2017-03-16
(65)【公開番号】P2018153362
(43)【公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-03-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】512250902
【氏名又は名称】WHILL株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】平田 泰大
(72)【発明者】
【氏名】上月 豊隆
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】八木 誠
【審判官】出口 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0078482(US,A1)
【文献】特開平9-223534(JP,A)
【文献】特開2002-359032(JP,A)
【文献】特開2004-5186(JP,A)
【文献】特開2001-191823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G5/00-5/14
B60N2/90
H01R13/631,13/639
B62K5/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪および該複数の車輪のうち少なくとも1つを駆動するモータを有するモビリティ本体と、該モビリティ本体の座席取付部材に取外し可能に取付けられ、前記モータの駆動をコントロールするための操作部を有する座席ユニットと、前記モビリティ本体に対し前記座席取付部材の高さ位置を調整する座席高さ調整機構とを備える電動モビリティにおいて、前記座席ユニットに設けられ前記操作部に接続された信号線と前記モビリティ本体側の信号線とを接続するコネクタ構造であって、
前記座席ユニットに取付けられ、前記操作部に接続された前記信号線が接続された第1のコネクタと、
前記座席付部材の外側に存在するように前記座席取付部材に取付けられ、前記モビリティ本体側の信号線が接続された第2のコネクタとを備え、
前記第2のコネクタが、前記第2のコネクタを上下方向に移動可能にガイドするガイド機構を介して前記座席取付部材に取付けられており、
前記第2のコネクタが、前記座席ユニットを前記座席取付部材に取付けた状態で、前記第1のコネクタに接続される接続位置と、該接続位置よりも下方であり、前記第1のコネクタに接続されない非接続位置とに移動できるように、前記ガイド機構によりガイドされており、
前記第1のコネクタおよび前記第2のコネクタの少なくとも一方に磁石が設けられ、前記座席ユニットを前記座席取付部材に取付けると、前記磁石の磁力により前記ガイド機構に沿って前記第2のコネクタが上方に移動して前記接続位置に配置され、前記座席ユニットを前記座席取付部材から取外すために前記座席ユニットを上方に持ち上げると、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとの接続が解除され、前記第2のコネクタが重力により前記非接続位置に向かって下方に移動するように構成されているコネクタ構造。
【請求項2】
前記モビリティ本体には前記操作部からの信号に基づき前記モータを制御する制御ユニットが設けられ、
前記操作部に接続された信号線および前記モビリティ本体側の信号線が、前記操作部からの信号を前記制御ユニットに送るものである請求項1に記載のコネクタ構造。
【請求項3】
前記座席取付部材には前記第2のコネクタを保護するための保護部材が設けられ、
該保護部材は、その上面が前記ガイド機構により前記非接続位置に配置された前記第2のコネクタよりも上方に配置されると共に、前記ガイド機構により前記接続位置に配置された前記第2のコネクタと前記第1のコネクタとを接続させるための孔又は切欠きを有する請求項1又は2に記載のコネクタ構造。
【請求項4】
複数の車輪および該複数の車輪のうち少なくとも1つを駆動するモータを有するモビリティ本体と、該モビリティ本体の座席取付部材に取外し可能に取付けられ、前記モータの駆動をコントロールするための操作部を有する座席ユニットと、前記モビリティ本体に対し前記座席取付部材の高さ位置を調整する座席高さ調整機構とを備える電動モビリティにおいて、前記座席ユニットに設けられ前記操作部に接続された信号線と前記モビリティ本体側の信号線とを接続するコネクタ構造であって、
前記座席ユニットに取付けられ、前記操作部に接続された前記信号線が接続された第1のコネクタと、
前記座席付部材の外側に存在するように前記座席取付部材に取付けられ、前記モビリティ本体側の信号線が接続された第2のコネクタとを備え、
前記第2のコネクタが、前記第2のコネクタを上下方向に移動可能にガイドするガイド機構を介して前記座席取付部材に取付けられており、
前記第2のコネクタが、前記座席ユニットを前記座席取付部材に取付けた状態で、前記第1のコネクタに接続される接続位置と、該接続位置よりも下方であり、前記第1のコネクタに接続されない非接続位置とに移動できるように、前記ガイド機構によりガイドされており、
前記ガイド機構が、水平方向に間隔をおいて配置されると共にそれぞれ上下方向に延びる複数のガイドシャフトを有し、
前記第2のコネクタ又は該第2のコネクタに固定された部材に、前記複数のガイドシャフトをそれぞれ挿通する複数の貫通孔が設けられ、前記複数のガイドシャフトおよび前記複数の貫通孔により該第2のコネクタが上下方向に移動可能にガイドされ、
前記各貫通孔の平面視における面積が、前記ガイドシャフトの水平方向断面の断面積の1.5倍以上であり、
前記座席ユニットを前記座席取付部材に取付けると、前記第1のコネクタおよび前記第2のコネクタの少なくとも一方に設けられた磁石の磁力により前記ガイド機構に沿って前記第2のコネクタが上方に移動して前記接続位置に配置され、前記座席ユニットを前記座席取付部材から取外すために前記座席ユニットを上方に持ち上げると、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとの接続が解除され、前記第2のコネクタが重力により前記複数のガイドシャフトに沿って前記非接続位置に向かって下方に移動するように構成されているコネクタ構造。
【請求項5】
複数の車輪および該複数の車輪のうち少なくとも1つを駆動するモータを有するモビリティ本体と、該モビリティ本体の座席取付部材に取外し可能に取付けられ、前記モータの駆動をコントロールするための操作部を有する座席ユニットと、前記モビリティ本体に対し前記座席取付部材の高さ位置を調整する座席高さ調整機構とを備える電動モビリティにおいて、前記座席ユニットに設けられ前記操作部に接続された信号線と前記モビリティ本体側の信号線とを接続するコネクタ構造であって、
前記座席ユニットに取付けられ、前記操作部に接続された前記信号線が接続された第1のコネクタと、
前記座席付部材の外側に存在するように前記座席取付部材に取付けられ、前記モビリティ本体側の信号線が接続された第2のコネクタとを備え、
前記第2のコネクタが、前記第2のコネクタを上下方向に移動可能にガイドするガイド機構を介して前記座席取付部材に取付けられており、
前記第2のコネクタが、前記座席ユニットを前記座席取付部材に取付けた状態で、前記第1のコネクタに接続される接続位置と、該接続位置よりも下方であり、前記第1のコネクタに接続されない非接続位置とに移動できるように、前記ガイド機構によりガイドされており、
前記ガイド機構が、水平方向に間隔をおいて配置されると共にそれぞれ上下方向に延びる複数のガイドシャフトを有し、
前記第2のコネクタ又は該第2のコネクタに固定された部材に、前記複数のガイドシャフトをそれぞれ挿通する複数の貫通孔が設けられ、前記複数のガイドシャフトおよび前記複数の貫通孔により該第2のコネクタが上下方向に移動可能にガイドされており、
前記座席ユニットを前記座席取付部材に取付けると、前記第1のコネクタおよび前記第2のコネクタの少なくとも一方に設けられた磁石の磁力により前記複数のガイドシャフトに沿って前記第2のコネクタが上方に移動して前記接続位置に配置され、前記座席ユニットを前記座席取付部材から取外すために前記座席ユニットを上方に持ち上げると、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとの接続が解除され、前記第2のコネクタが重力により前記複数のガイドシャフトに沿って前記非接続位置に向かって下方に移動するように構成されているコネクタ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動モビリティのコネクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車椅子が座席として装着される自動車であって、車椅子を昇降するために自動車に設けられた昇降機構と、車椅子における座席の後端部の下面に設けられた第1のコネクタと、昇降機構において車椅子の座席を支持する支持フレームの上面に設けられた第2のコネクタとを備え、車椅子を自動車に装着するために車椅子の座席を昇降機構の支持フレームで支持すると第1のコネクタと第2のコネクタとが接続されるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-191823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記自動車では、車椅子が座席としてそのまま使用されるようになっており、車輪を折りたたむ作業を行った後で車椅子が座席として自動車に装着される。このため、車椅子は車輪を折りたたむためのモータを有しており、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとを接続し、自動車側の電力により当該モータを駆動するように構成されている。しかし、車椅子を自動車の座席としてそのまま使用するには、昇降機構等の大掛かりで高額な装置を自動車に設ける必要があり、このような装置を自動車に装備できる利用者は限られている。
【0005】
一方、近年では、車椅子のような乗り物を一人乗りの移動手段として考える傾向が出てきており、また、その電動化も通常の選択肢に含まれるようになってきており、このような電動モビリティの需要が世界的に高まってきている。電動化を行うと、モータ、バッテリ、操作部、制御装置等の分だけ重量が重くなり、車輪を折りたたんで車椅子を自動車の座席としてそのまま使用することが難しくなる。
【0006】
また、電動モビリティはかなり重いので、自動車等により電動モビリティを移動する際に、自動車の床面と地面との間に設けられたスロープ上を電動モビリティが走行することにより、自動車への電動モビリティの積載が行われている。この場合、自動車内に電動モビリティの幅や高さに応じたスペースが必要になり、現実的には商用の荷物積載車等の大きな自動車が必要になる。
【0007】
このため、家庭用の小型又は中型の自動車でも電動モビリティを積載できるように、電動モビリティを分解可能に構成することが考えられ、分解後の状態で自動車に積載し易くなるように、比較的大きな座席部をモビリティ本体から取外せるように構成することが好ましい。
ここで、モビリティ本体にはモータが設けられると共に、座席部にはモータを操作するための操作部が設けられているので、モビリティ本体側の通信線と座席部側の通信線とを着脱自在に構成する必要が生ずる。
【0008】
具体的には、モビリティ側の通信線が接続された第1のコネクタと、座席部側の通信線が接続され第1のコネクタと接続される第2のコネクタとを設け、第1のコネクタの第2のコネクタへの接続によりモビリティ側の通信線と座席部側の通信線との接続を行うようにする。座席部のモビリティ本体に対する装着の時に第2のコネクタを第1のコネクタに接続する必要があるので、当該着脱を容易に行えるように構成することが好ましい。
【0009】
一方、乗車者の身長等に応じて座席部のモビリティ本体に対する高さを変更する必要があるので、例えば、モビリティ本体の座席取付部の高さを変更することにより座席部の高さを調整する座席高さ調整機構がモビリティ本体に設けられている。このように構成されている場合、座席高さ調整機構により座席取付部の高さを変更しても、第2のコネクタの第1のコネクタに対する接続を常に容易に行えるように構成することが好ましい。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、モビリティ本体の座席取付部の高さが変更可能に構成されている場合でも、モビリティ本体側のコネクタと座席部側のコネクタとの接続を容易に行うことが可能となるコネクタ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の第1の態様は、複数の車輪および該複数の車輪のうち少なくとも1つを駆動するモータを有するモビリティ本体と、該モビリティ本体の座席取付部材に取外し可能に取付けられ、前記モータの駆動をコントロールするための操作部を有する座席ユニットと、前記モビリティ本体に対し前記座席取付部材の高さ位置を調整する座席高さ調整機構とを備える電動モビリティにおいて、前記座席ユニットに設けられ前記操作部に接続された信号線と前記モビリティ本体側の信号線とを接続するコネクタ構造であって、前記座席ユニットに取付けられ、前記操作部に接続された前記信号線が接続された第1のコネクタと、前記座席付部材の外側に存在するよう前記座席取付部材に取付けられ、前記モビリティ本体側の信号線が接続された第2のコネクタとを備え、前記座席ユニットを前記座席取付部材に取付けた際に前記第1のコネクタの下方且つ前記第1のコネクタに接続可能な位置に前記第2のコネクタが配置されるように、前記第2のコネクタが前記座席取付部材に取付けられている。
【0012】
当該態様では、座席ユニットの高さ位置を調整するためにモビリティ本体に対する座席取付部材の高さ位置が調整されるように構成されているが、モビリティ本体側の信号線が接続された第2のコネクタが座席取付部材に取付けられており、第2のコネクタが座席取付部材と共にモビリティ本体に対し上下方向に位置が変化する。
【0013】
また、座席ユニットを座席取付部材に取付けた際に第1のコネクタの下方且つ第1のコネクタに接続可能な位置に第2のコネクタが配置されるように、第2のコネクタが座席取付部材に取付けられている。このため、座席取付部材の高さが変更可能に構成されている場合でも、第1のコネクタと第2のコネクタとの接続を容易に行うことが可能となる。
【0014】
上記の態様において、前記モビリティ本体には前記操作部からの信号に基づき前記モータを制御する制御ユニットが設けられ、前記操作部に接続された信号線および前記モビリティ本体側の信号線が、前記操作部からの信号を前記制御ユニットに送るものであってもよい。
【0015】
上記の態様において、前記第2のコネクタが、前記第2のコネクタを上下方向に移動可能にガイドするガイド機構を介して前記座席取付部材に取付けられており、前記第2のコネクタが、前記座席ユニットを前記座席取付部材に取付けた状態で、前記第1のコネクタに接続される接続位置と、該接続位置よりも下方であり、前記第1のコネクタに接続されない非接続位置とに移動できるように、前記ガイド機構によりガイドされていることが好ましい。
【0016】
このように構成すると、座席ユニットが座席取付部材に取付けた後に、ガイド機構に沿って第2のコネクタが上方に移動すると、第2のコネクタが第1のコネクタに接続される。従って、当該構成は、第2のコネクタの第1のコネクタへの容易且つ確実な接続を実現する上で有利である。
【0017】
上記の態様において、前記第1のコネクタおよび前記第2のコネクタの少なくとも一方に磁石が設けられ、前記座席ユニットを前記座席取付部材に取付けると、前記磁石の磁力により前記ガイド機構に沿って前記第2のコネクタが上方に移動して前記接続位置に配置されるように構成されていることが好ましい。
このように構成すると、座席ユニットを前記座席取付部材に取付けると、磁力により第2のコネクタが第1のコネクタと接続されるので、当該接続にかかる手間を低減又は無くすことができる。
また、より好ましくは、前記座席ユニットを前記座席取付部材から取外すために前記座席ユニットを上方に持ち上げると、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとの接続が解除され、前記第2のコネクタが重力により前記非接続位置に向かって下方に移動する。
【0018】
上記の態様において、前記座席取付部材には前記第2のコネクタを保護するための保護部材が設けられ、該保護部材は、その上面が前記ガイド機構により前記非接続位置に配置された前記第2のコネクタよりも上方に配置されると共に、前記ガイド機構により前記接続位置に配置された前記第2のコネクタと前記第1のコネクタとを接続させるための孔又は切欠きを有することが好ましい。
【0019】
当該構成では、非接続位置に配置された第2のコネクタよりも保護部材の上面が上方に位置しており、第2のコネクタは孔又は切欠きがあることにより第1のコネクタと接続可能であることから、第2のコネクタが第1のコネクタと接続されずに非接続位置に配置されている時は、孔又は切欠きを通過しない限り保護部材の上方からの物体が第2のコネクタに接触することがない。このため、座席ユニットを座席取付部材に取付ける際に、第2のコネクタに座席ユニットの一部が上方から当たり難くなる。
【0020】
上記の態様において、前記ガイド機構が、水平方向に間隔をおいて配置されると共にそれぞれ上下方向に延びる複数のガイドシャフトを有し、前記第2のコネクタ又は該第2のコネクタに固定された部材に、前記複数のガイドシャフトをそれぞれ挿通する複数の貫通孔が設けられ、前記複数のガイドシャフトおよび前記複数の貫通孔により該第2のコネクタが上下方向に移動可能にガイドされていてもよい。構造がシンプルであるため、ガイド機構のメンテナンスが容易である。
【0021】
上記の態様において、前記各貫通孔の平面視における面積が、前記ガイドシャフトの水平方向断面の断面積の1.5倍以上であることが好ましい。
ここで、ガイドシャフトの外周面と貫通孔の内周面との間の隙間が殆ど無い場合、第2のコネクタが斜めになり、ある貫通孔に対し他の貫通孔の高さ位置が異なる状態になると、貫通孔がガイドシャフトに引っ掛かりやすくなる。これに対し、上記のように構成すると、ガイドシャフトの外周面と貫通孔の内周面との間に大きな隙間が生ずるので、ある貫通孔に対し他の貫通孔の高さ位置が異なる状態になっても、第2のコネクタが上下方向にスムーズに動く。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、モビリティ本体の座席取付部の高さが変更可能に構成されている場合でも、モビリティ本体側のコネクタと座席部側のコネクタとの接続を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る電動モビリティの前方斜視図である。
図2】本実施形態の電動モビリティの後方斜視図である。
図3】本実施形態の電動モビリティの要部断面図である。
図4】本実施形態の電動モビリティの制御ユニットの概略構成を示すブロック図である。
図5】本実施形態の電動モビリティの座席ユニットとモビリティ本体との接続部を示す要部斜視図である。
図6】本実施形態の電動モビリティの座席ユニットとモビリティ本体との接続部を示す要部斜視図である。
図7】本実施形態の電動モビリティの第1のコネクタと第2のコネクタとの接続構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係る電動モビリティを図面を参照して以下に説明する。
この電動モビリティは、図1および図2に示すように、一対の前輪10、一対の後輪20、並びに前輪10および後輪20により支持されたボディ31を有するモビリティ本体30と、モビリティ本体30に着脱自在に取付けられた座席ユニット40と、モビリティ本体30に取付けられ、一対の前輪10および一対の後輪20の少なくとも一方を駆動するためのモータ50(図4参照)とを有する。以下の説明では、車両前後方向を前後方向と称し、車両幅方向を幅方向と称する場合がある。
【0025】
本実施形態では、一対の後輪20にそれぞれモータ50が接続され、各モータ50によって2つの後輪20をそれぞれ駆動可能である。モータ50の駆動力がベルト、ギヤ等の動力伝達手段を介して一対の前輪10に伝達されるように構成してもよい。
各前輪10は、図示しない車軸、サスペンション等を介してボディ31に支持されている。また、各前輪10はその周方向に並ぶ複数のローラ13,14によって接地面が形成されている。ローラ13の外形はローラ14の外形よりも小さく、ローラ13とローラ14が周方向に交互に並んでいる。
【0026】
より具体的に、各前輪10は、車軸に取付けられたハブ15と、ハブ15の周方向に並ぶと共にそれぞれハブ15に支持された複数のローラ支軸とを備え、複数のローラ13,14はそれぞれローラ支軸に回転可能に支持されている。なお、ハブ15は車軸にベアリング等を介して直接取付けられていてもよく、車軸に緩衝部材やその他の中間部材を介して取付けられていてもよい。
【0027】
このように構成されているので、各ローラ13,14は車軸の径方向に交差する方向に延びる軸線周りに回転することができ、各前輪10は接地面に対して全方向に移動する全方向移動車輪となっている。
本実施形態では、各後輪20は、車軸(モータ50の主軸と共通でもよい)と、車軸に取付けられたハブ22と、ハブ22の外周側に設けられ、外周面がゴム状弾性を有する材料により形成された外周部材23とを有するが、前輪10と同様に全方向移動車輪を用いてもよい。さらに、各前輪10を後輪20と同様の車輪にすると共に、前輪10および/又は後輪20の操舵角を変更するための手段を設けてもよい。
【0028】
ボディ31は、地面に沿って延びるベース部32と、車両前方に傾斜するようにベース部32の後端側から上方に延び、その上端側に座席ユニット40が取付けられる座席支持部33とを有する。
ベース部32は、前輪10のサスペンションや後輪20のモータ50を支持する金属製のベースフレーム32aと、ベースフレーム32aを少なくとも部分的に覆い、座席ユニット40に座る乗車者の足を載せる部分、荷物載置部等に活用されるプラスチック製のベース部カバー32bとを有する。
【0029】
座席支持部33は、ベースフレーム32aにおける後端側に支持又は固定され、斜め上方に向かって延びる支持部フレーム34と、支持部フレーム34を覆うプラスチック製の支持部カバー35とを有する。また、図3に示すように、支持部フレーム34の上端側には座席取付部材36が取付けられている。
【0030】
座席取付部材36は上下方向に長手を有する部材であり、上下方向に間隔をおいて複数の位置決め孔36aが設けられている。各位置決め孔36aは座席取付部材36をその長手方向と直交する方向に貫通している。支持部フレーム34の上端側には座席取付部材36が上下方向に挿通する筒状部34aが設けられ、筒状部34aには電動モビリティの前後方向に貫通する支持部側孔34bが設けられている。筒状部34aの内形は座席取付部材36の外形よりも若干大きい。
【0031】
筒状部34aに座席取付部材36を挿入すると共に、何れかの位置決め孔36aと支持部側孔34bとを位置合わせし、支持部側孔34bおよび位置決め孔36aに挿通するように位置決め部材37を筒状部34aに取付けることにより、モビリティ本体30に座席取付部材36が取付けられる。また、位置決め部材37を挿通させる位置決め孔36aを変更することにより、モビリティ本体30に対する座席取付部材36の高さ位置を調整することができる。座席取付部材36の高さ位置を調整することにより座席ユニット40の高さ位置が調整されるので、筒状部34a、支持部側孔34b、複数の位置決め孔36a、および位置決め部材37が座席高さ調整機構として機能する。
【0032】
図1および図2に示すように、座席支持部33は前面33aと、背面33bと、前面33aと背面33bとの間に配置される一対の側面33cとを有する。図2および図3に示すように、座席支持部33には充電可能なバッテリBAが着脱自在に取付けられている。また、図3に示すように、座席支持部33内には後述する制御ユニット60が配置されている。
【0033】
座席ユニット40は、乗車者が座る座面部41と、背凭れ部42と、車両幅方向一対のコントロールアーム43と、座面部41の下面に固定され、座席支持部33の座席取付部材36に着脱自在に取付けられる座面フレーム44とを有する。座面フレーム44には、座面部41の下面に沿って延びる板状部44aと、板状部44aの中央側から下方に延びる筒状部44bとが設けられている。筒状部44bには電動モビリティの前後方向に貫通する座席側孔44cが設けられている。
【0034】
座席取付部材36には、前記複数の位置決め孔36aよりも上方に座席取付孔又はスリット36bが設けられている。座席取付孔や座席取付スリット36bも座席取付部材36をその長手方向と直交する方向に貫通している。筒状部44bの内形は座席取付部材36の外形よりも若干大きい。
筒状部44bに座席取付部材36の上端側を挿入すると共に、座席側孔44cと座席取付スリット36bとを位置合わせし、座席側孔44cおよび座席取付スリット36bに挿通するように取付部材44dを筒状部44aに取付けることにより、モビリティ本体30にシート状部材40が取付けられる。
【0035】
右側のコントロールアーム43の上端には操作レバー43bを有する操作部43aが設けられ、力が加えられていない状態では操作レバー43bは操作部43a内に配置された付勢部材(図示せず)により中立位置に配置されており、乗車者が右手により中立位置に対して右方向、左方向、前方向、および後方向に操作レバー43bを変位させることができる。
【0036】
操作レバー43bの変位方向および変位量に応じた信号が操作部43aから後述する制御ユニット60に送信され、当該信号に応じて各モータ50が駆動される。例えば、操作レバー43bが中立位置に対し前方向に変位されると、各モータ50を車両前方に向かって回転させる信号が送信され、電動モビリティが操作レバー43bの変位量に応じた速度で前進する。また、操作レバー43bが中立位置に対し左斜め前方に変位されると、左側のモータ50を右側のモータ50よりも遅い速度で車両前方に向かって回転させる信号が送信され、電動モビリティが操作レバー43bの変位量に応じた速度で左に曲がりながら前進する。
【0037】
左側のコントロールアーム43の上端には、最高速度設定、運転モード設定、電動モビリティのロックの設定等、電動モビリティに関する各種設定を行うことが可能な設定部43cが設けられ、設定部43cには複数の操作ボタン、表示装置等が設けられている。例えば、運転モードの例としては、電力の消費を抑えた省エネ運転モード、電力の消費を抑えずに走行性能を重視したスポーツ運転モード、省エネ運転モードとスポーツ運転モードとの間の通常運転モード等が挙げられる。電動モビリティのロックの設定としては、ロックをかけるための暗証番号の設定、ロック解除のタイミングの設定等が挙げられる。設定部43cの設定信号は後述する制御ユニット60に送信され、制御ユニット60において電動モビリティの設定が登録又は変更される。
【0038】
制御ユニット60は、図4に示すように、各モータ50を駆動するモータドライバ70と、制御装置80とを有する。
モータドライバ70は電力線71によりバッテリBAに接続されると共に、電力線72により各モータ50に接続され、各モータ50に電力を供給して駆動する。
【0039】
制御装置80は、例えばCPU、RAM等を有する制御部81と、不揮発性メモリ、ROM等を有する記憶装置82と、送受信部83とを有する。記憶装置82には電動モビリティを制御するためのプログラムが格納されており、制御部81はプログラムに基づき動作し、操作部43aおよび設定部43cからの信号に基づき、各モータ50を駆動するための駆動信号をモータドライバ70に送信する。
【0040】
操作部43aおよび設定部43cからの信号は信号線45aを介して第1のコネクタ45に送られると共に、第1のコネクタ45から第2のコネクタ46に送られ、第2のコネクタ46から信号線46cを介して制御装置80に送られる。
図5図7に示すように、第1のコネクタ45は座面フレーム44の下面に固定されている。また、第2のコネクタ46は座席取付部材36に上下方向に移動可能に支持されている。
【0041】
具体的には、第2のコネクタ46には略水平方向に延びる板状部材46aが固定され、板状部材46aには一対の貫通孔46bが設けられている。また、座席取付部材36には略水平方向に延びる一対の支持シャフト38aを介して保護部材38が固定されている。本実施形態では、保護部材38は鋼板に打ち抜き成形およびプレス成形を行うことにより形成されている。保護部材38の下面には互いに水平方向に間隔をおいて配置された一対のガイドシャフト39が固定され、一対のガイドシャフト39は一対の貫通孔46bに対応した位置に配置されると共に上下方向に延びている。
【0042】
板状部材46aの一対の貫通孔46bにそれぞれガイドシャフト39が挿通され、これにより第2のコネクタ46が一対のガイドシャフト39に沿って上下方向に移動可能に支持されている。つまり、一対のガイドシャフト39および一対の貫通孔46bを有するガイド機構が構成されている。ガイドシャフト39の下端又は保護部材38の下面には抜け止め部材39aが固定され、抜け止め部材39aにより第2のコネクタ46のガイドシャフト39からの抜け落ちが防止される。
【0043】
抜け止め部材39aが本実施形態のように第2のコネクタ46の下面の実質的に全体を覆うように形成されていると、第1のコネクタ45と第2のコネクタ46との接続部への水、埃等の侵入防止に役立つ。また、抜け止め部材39aがプラスチック材料、ゴム状弾性を有する材料等から形成されていると、金属等から成るガイドシャフト39、保護部材38の下側から何等かの物体が衝突する時の衝撃力を低減することができる。
【0044】
第2のコネクタ46の上面には磁石Mが取付けられ、第1のコネクタ45の対応する位置にも磁石や、鉄片等の強磁性部材が取付けられている。第1のコネクタ45に磁石が取付けられている場合は、磁石Mの代わりに鉄片等の強磁性部材が取付けられていてもよい。
【0045】
上記のように構成された電動モビリティにおいて、座席ユニット40をモビリティ本体30に取付けるには、座席取付部材36の上端側が筒状部44bに挿入されるように座席ユニット40を座席取付部材36の上に配置し、座席側孔44cおよび座席取付孔36bに挿通するように取付部材44dを筒状部44bに取付ける。
この時に、第1のコネクタ45の下方に第2のコネクタ46が配置されるよう、第2のコネクタ46は前記ガイド機構を介して座席取付部材36に取付けられている。
【0046】
さらに、図7に示すように、前記ガイド機構における下端側の非接続位置(図7に示される位置)に第2のコネクタ46が配置されている状態で、座席ユニット40をモビリティ本体30に取付け、第のコネクタ4図7の二点鎖線の位置に配置されると、磁石Mの磁力により第2のコネクタ46が前記ガイド機構に沿って上方に持ち上げられ、これにより第2のコネクタ46が第1のコネクタ45に接続される位置(接続位置)まで移動するように構成されている。第2のコネクタ46が第1のコネクタ45に磁力により引き付けられると、第2のコネクタ46と第1のコネクタ45との水平方向の位置合わせも行われ、第1のコネクタ45の端子群と第2のコネクタ46の端子群とが電気的に接続される。
【0047】
この状態で、位置決め部材37を挿通させる位置決め孔36aを変更することにより、モビリティ本体30に対する座席ユニット40の高さ位置を調整することができる。この場合でも、第2のコネクタ46が座席取付部材36に取付けられているので、第1のコネクタ45と第2のコネクタ46とが接続された状態が維持される。
【0048】
一方、座席ユニット40をモビリティ本体30から取外すには、取付部材44dを筒状部44bから取外すと共に、筒状部44bから座席取付部材36が抜き出されるように座席ユニット40を上方に持ち上げるだけでよい。第1のコネクタ45と第2のコネクタ46とは磁力で接続されているだけなので、第1のコネクタ45と第2のコネクタ46との接続が解除され、第2のコネクタ46が重力により非接続位置に移動する。
【0049】
このように、本実施形態によれば、座席ユニット40の高さ位置を調整するためにモビリティ本体30に対する座席取付部材36の高さ位置が調整可能に構成されているが、モビリティ本体30側の信号線46cが接続された第2のコネクタ46が座席取付部材36に取付けられており、第2のコネクタ46が座席取付部材36と共にモビリティ本体30に対し上下方向に位置が変化する。
【0050】
また、座席ユニット40を座席取付部材36に取付けた際に第1のコネクタ45の下方且つ第1のコネクタ45に接続可能な位置に第2のコネクタ46が配置されるように、第2のコネクタ46が座席取付部材36に取付けられている。このため、座席取付部材36の高さが変更可能に構成されている場合でも、第1のコネクタ45と第2のコネクタ46との接続を容易に行うことができる。
【0051】
なお、磁石Mを設けずに、座席ユニット40をモビリティ本体30に取付けた後に、第2のコネクタ46を手等により上方に移動させて第1のコネクタ45と接続させてもよい。この場合でも、第2のコネクタ46が上下方向に移動可能にガイドされているので、第2のコネクタ46を上方に移動させるだけで第1のコネクタ45と第2のコネクタ46とを容易に接続できる。
【0052】
さらに、磁石Mおよび前記ガイド機構を設けず、第2のコネクタ46が信号線46c又はその他の可撓性の部材を用いて座席取付部材36に取付けられ、信号線46c又は可撓性の部材により、第2のコネクタ46の可動範囲を、座席取付部材36に座席ユニット40を取付けた際の第1のコネクタ45の下方に限定することも考えられる。この場合でも、座席ユニット40を座席取付部材36に取付けた際に第1のコネクタ45の下方に第2のコネクタ46が配置されるので、第1のコネクタ45と第2のコネクタ46とを容易に接続できる。
【0053】
本実施形態では、座席ユニット40を座席取付部材36に取付けると、磁石Mの磁力により前記ガイド機構に沿って第2のコネクタ46が上方に移動して接続位置に配置されるので、第1のコネクタ45を第2のコネクタ46に向かって上方に移動させる作業が不要となる。また、第1のコネクタ45と第2のコネクタ46とが磁力で接続されているので、座席ユニット40をモビリティ本体30から取外すだけで、第1のコネクタ45と第2のコネクタ46との接続も解除される。
【0054】
また、本実施形態では、保護部材38の上面が非接続位置に配置された第2のコネクタ46よりも上方に配置されるように構成され、保護部材38には第2のコネクタ46と第1のコネクタ45とを接続させるための孔38bが設けられている。このため、座席ユニット40が座席取付部材36に取付けられておらず、第2のコネクタ46が非接続位置に配置されている場合は、第2のコネクタ46が孔38bの中に配置されると共に、第2のコネクタ46が保護部材38の上面よりも低い位置に配置される。
【0055】
このため、座席ユニット40を座席取付部材36に取付ける際に誤って座席ユニット40の筒状部44bが第2のコネクタ46に衝突する方向に進んでも、その衝突を保護部材38により防止することができる。なお、孔38bの代わりに切欠きを設けても同様の作用効果を奏する。
【0056】
また、水平方向に間隔をおいて配置されるとともにそれぞれ上方に延びる複数のガイドシャフト39と、複数のガイドシャフト39をそれぞれ挿通するように第2のコネクタ46側に設けられた複数の貫通孔46bとを、第2のコネクタ46を上下方向に移動可能にガイドするために用いている。このため、第2のコネクタ46を上下方向に移動可能にガイドする機構をシンプル且つメンテナンスし易いものとすることができる。
【0057】
さらに、複数のガイドシャフト39が保護部材38の下面に固定されているので、保護部材38に上方から何らかの強い衝撃が加わり、保護部材38の取付位置が下方に向かって少し移動した場合でも、保護部材38と被接続位置の第2のコネクタ46との位置関係はほぼ変わらない。この構成は、保護部材38による第2のコネクタ46の保護を長期に亘って維持する上で有利である。
【0058】
また、本実施形態では、ガイドシャフト39の外径に対し、そのガイドシャフト39が挿通している貫通孔46bの内径が1.7倍程度である。つまり、貫通孔46bの平面視における面積がガイドシャフト39の水平方向断面の断面積の3倍程度となっている。このため、ガイドシャフト39の上下方向の途中に貫通孔46bが引っ掛かることが極力防止され、第1のコネクタ46と接続されていない第2のコネクタ46が保護部材38により保護される位置に確実に配置され、また、第2のコネクタ46の第1のコネクタ45との接続もよりスムーズに行うことができる。なお、ガイドシャフト39の外径に対し貫通孔46bの内径が1.5倍以上であることが好ましい。
【0059】
なお、本実施形態では座席取付部材36はシャフトであるが、他の形状の部材とすることも可能であり、2つ以上の部品から構成することも可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 前輪
20 後輪
30 モビリティ本体
31 ボディ
33 座席支持部
34 支持部フレーム
36 座席取付部材
36a 位置決め孔
36b 座席取付スリット
37 位置決め部材
38 保護部材
38a 支持シャフト
38b 孔
39 ガイドシャフト
39a 抜け止め部材
40 座席ユニット
41 座面部
42 背凭れ部
43 コントロールアーム
43a 操作部
43c 設定部
44 座面フレーム
44b 筒状部
44c 座席側孔
44d 取付部材
45 第1のコネクタ
46 第2のコネクタ
46a 板状部材
46b 貫通孔
BA バッテリ
M 磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7