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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】マッサージ機
(51)【国際特許分類】
   A61H 7/00 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
A61H7/00 323E
A61H7/00 323F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017110215
(22)【出願日】2017-06-02
(65)【公開番号】P2018201834
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-05-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000112406
【氏名又は名称】ファミリーイナダ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】稲田 二千武
(72)【発明者】
【氏名】長光 知己
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/006327(WO,A1)
【文献】特開2012-120549(JP,A)
【文献】特開2012-010854(JP,A)
【文献】特開2004-033583(JP,A)
【文献】特開2017-012735(JP,A)
【文献】特開平09-299432(JP,A)
【文献】特開昭56-104661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
A61H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者が着座する座部と、
前記座部に着座した前記被施療者の背を支持する背もたれ部と、
前記背もたれ部の前方に設けられた基部と、
前記基部に取り付けられ、前記被施療者が前記座部に着座した状態で前記被施療者の肩にマッサージを行う肩施療機構と、を備え、
前記肩施療機構は、
前記基部に取り付けられ通電により回転する出力軸を有する駆動部と、
前記被施療者の肩を上方から押圧する施療子と、
前記出力軸に傾斜姿勢で取り付けられた斜板カムと、
前記斜板カムに取り付けられ、前記斜板カムの回転に伴い連れ回りせずに上下方向に揺動する施療子保持部と、を備え、
前記出力軸は上下方向に延出されており、
前記施療子は、前記施療子保持部に一体的に取り付けられており、
前記出力軸の回転に応じて、前記施療子が上下方向に揺動して前記被施療者の肩を施療するマッサージ機。
【請求項2】
前記斜板カムは環状軸受を含んで構成され、前記出力軸は前記環状軸受の回転中心に対して偏心して取り付けられている請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項3】
前記基部は、前後方向視において、前記背もたれ部の側面から幅方向内側に向かうにつれて前記座部から離間する方向に傾斜している請求項1又は2に記載のマッサージ機。
【請求項4】
前記基部は、上下方向視において、前記背もたれ部の側面から幅方向内側に向かうにつれて、前記背もたれ部に近接する方向に傾斜している請求項1から3の何れか一項に記載のマッサージ機。
【請求項5】
前記基部は第1基部と第2基部とを有し、
前記第2基部は、基端側が前記第1基部に揺動可能に取り付けられており、
前記駆動部は前記第2基部に取り付けられており、
前記第1基部と前記第2基部との間には、前記第2基部の先端側を前記第1基部から離間させる方向に付勢する付勢部材を有している請求項1から4の何れか一項に記載のマッサージ機。
【請求項6】
前記肩施療機構は、上下方向に移動可能である請求項1から5の何れか一項に記載のマッサージ機。
【請求項7】
前記肩施療機構は、幅方向に移動可能である請求項1から6の何れか一項に記載のマッサージ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被施療者の肩を挟み込んで揉んだり叩いたりすることにより施療を行うマッサージ機が知られている。例えば、特許文献1においては、仰臥位にある被施療者の左右の夫々の肩の前後を一対の揉み手で挟み込む肩用揉み手段を有すると共に、一対の揉み手による肩の前後への近接離反の動きを実現するマッサージ機構を有するマッサージ機(据え置き型のマッサージ装置)が開示されている。
【0003】
特許文献2においては、間隔をおいて配置され相互に近接離反することにより先端の当接部で被施療者の肩を挟み込む第1アーム及び第2アームと、第1アームと第2アームの間隔を変更すべく第1及び第2アームに対して回転可能に取り付けられた回転軸とを有し、第1及び第2アームの内少なくとも一方は回転軸に対して偏心及び傾斜して取り付けられたマッサージ機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-046541号公報
【文献】特開2012-120549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本来、マッサージ機とは、人(施療者)が被施療者に対して行うマッサージを機械的に行うものであり、肩の施療においては、施療者が被施療者の肩を揉む際の指の動きを再現することが好ましい。例えば、被施療者の肩のツボである肩井を刺激する際には、肩の上方から押圧(指圧)して施療するのが好ましい。しかし、特許文献1に記載のマッサージ機においては、一対の揉み手が被施療者の肩を前後から挟むように近接離反を繰り返す動作をするのであって、肩の上方から押圧するような動作はしない。
【0006】
また、特許文献2に記載のマッサージ機においても、第2実施形態においては、一対の当接部が被施療者の肩を前後から挟むように近接離反を繰り返す動作をするのであって、肩の上方から押圧する動作はしない。特許文献2に記載の第1実施形態においては、第1アームの当接部が肩を上方から押圧しているが、これは第2アームの当接部による揉み上げ、揉み下げの施療を効果的に行うために肩が上方に浮き上がるのを防止しているのであって、第1アームの当接部による施療は副次的なものでしかない。
【0007】
このように、被施療者の肩を上方から押圧して施療するマッサージ機が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るマッサージ機の特徴構成は、被施療者が着座する座部と、前記座部に着座した前記被施療者の背を支持する背もたれ部と、前記背もたれ部の前方に設けられた基部と、前記基部に取り付けられ、前記被施療者が前記座部に着座した状態で前記被施療者の肩にマッサージを行う肩施療機構と、を備え、前記肩施療機構は、前記基部に取り付けられ通電により回転する出力軸を有する駆動部と、前記被施療者の肩を上方から押圧する施療子と、を備え、前記出力軸の回転に応じて、前記施療子が上下方向に揺動して前記被施療者の肩を施療する点にある。
【0009】
被施療者の肩を上方から押圧し施療するには、肩施療機構における施療子を上下方向に揺動させるのが適当である。よって、このような特徴構成とすれば、被施療者の肩を上方から適切に施療することができる。
【0010】
よって、上記のような構成により、被施療者の肩を上方から押圧して施療するマッサージ機を実現することができた。
【0011】
本発明に係るマッサージ機において、前記肩施療機構は、上下方向に延出する前記出力軸に傾斜姿勢で取り付けられた斜板カムと、前記斜板カムに取り付けられ、前記斜板カムの回転に伴い連れ回りせずに上下方向に揺動する施療子保持部と、を更に備え、前記施療子は、前記施療子保持部に一体的に取り付けられていると好適である。
【0012】
斜板カムを用いることにより、簡易な構成で施療子を上下方向に揺動させることができる。
【0013】
本発明に係るマッサージ機において、前記斜板カムは環状軸受を含んで構成され、前記出力軸は前記環状軸受の回転中心に対して偏心して取り付けられていると好適である。
【0014】
このような構成であれば、斜板カムによる施療子の動きを上下方向への揺動に加え、前後左右方向への動きを加えることができる。これにより、肩の特定箇所だけでなくその周辺も押圧することができるので、肩のこりをほぐすこともでき、更に施療効果を高めることができる。
【0015】
本発明に係るマッサージ機において、前記基部は、前後方向視において、前記背もたれ部の側面から幅方向内側に向かうにつれて前記座部から離間する方向に傾斜していると好適である。
【0016】
人を前方から見たとき、人の肩は背骨に近づくにつれて上に上がるよう傾斜している。よって、上記構成であれば、基部に取り付けられた肩施療機構を効率よく被施療者の肩に合わせることができる。
【0017】
本発明に係るマッサージ機において、前記基部は、上下方向視において、前記背もたれ部の側面から幅方向内側に向かうにつれて、前記背もたれ部に近接する方向に傾斜していると好適である。
【0018】
人を上方から見たとき、人の肩は端部が最も前方にあり、背骨に近づくにつれて後方になるよう傾斜している。よって、上記構成であれば、基部に取り付けられた肩施療機構を効率よく被施療者の肩に合わせることができる。
【0019】
本発明に係るマッサージ機において、前記基部は第1基部と第2基部とを有し、前記第2基部は、基端側が前記第1基部に揺動可能に取り付けられており、前記駆動部は前記第2基部に取り付けられており、前記第1基部と前記第2基部との間には、前記第2基部の先端側を前記第1基部から離間させる方向に付勢する付勢部材を有していると好適である。
【0020】
このような構成であれば、付勢部材の付勢力により、施療子が上下方向に揺動したとしても、施療中に施療子を被施療者の肩から離間させることなく常に肩を上方から押圧することが可能である。この際、施療子による上下方向の揺動と付勢部材の付勢力により施療子が肩を押圧する力を周期的に変化させることができるので、マッサージ機でありながら、より施療者の指による施療に近い施療感を得ることができる。
【0021】
本発明に係るマッサージ機において、前記肩施療機構は、上下方向に移動可能であると好適である。
【0022】
このような構成であれば、座高の異なる被施療者が座部に着座したときでも、各被施療者の肩の高さに応じて最適な高さに肩施療機構を移動させることができる。
【0023】
本発明に係るマッサージ機において、前記肩施療機構は、幅方向に移動可能であると好適である。
【0024】
このような構成であれば、肩幅の異なる被施療者が座部に着座したときでも、各被施療者の肩幅に応じて最適な幅に肩施療機構を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態に係るマッサージ機の全体構成を示す斜視図である。
図2】支持部と肩施療機構の斜視図である。
図3】支持部の分解斜視図である。
図4】基部と肩施療機構の斜視図である。
図5】基部と肩施療機構の分解斜視図である。
図6】施療モータ駆動部と斜板カムの左側面図である。
図7】減速機構ケースを取り除いた状態の施療モータ駆動部と斜板カムの分解斜視図である。
図8】斜板カムの分解斜視図である。
図9】斜板カムと施療子保持部と第1、第2施療子の正面図である。
図10】斜板カムと施療子保持部と第1、第2施療子の左側面図である。
図11】斜板カムと施療子保持部と第1、第2施療子の分解斜視図である。
図12】斜板カムと施療子保持部の断面図である。
図13】第1、第2施療子の動作を表す図である。
図14】第1、第2施療子の動作を表す図である。
図15】第1、第2施療子の動作を表す図である。
図16】第1基部に対する第2基部と肩施療機構の動作を表す図である。
図17】第1基部に対する第2基部と肩施療機構の動作を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。従って、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0027】
1.第1実施形態
〔全体構成〕
図1に本実施形態に係るマッサージ機1の全体構造を示す。マッサージ機1は、座部11と、背もたれ部12と、支持部100(不図示)と、肩施療機構200を備えてなるものである。座部11は、施療者がその臀部又は大腿部が当接した状態で着座するものであり、背もたれ部12は座部11に着座した施療者の背を支持するものである。以後、マッサージ機1において施療者が座部11に着座した状態での腹側を「前」、背側を「後」、右手側を「右」、左手側を「左」、頭側を「上」、足側を「下」と定義する。また、施療者の肩幅方向に平行な方向を「幅方向」又は「左右方向」、前から後に向かう方向に平行な方向を「前後方向」、幅方向と前後方向の両方に垂直な方向を「上下方向」と定義する。
【0028】
以下の実施形態の説明においては、図1に示す左側(左肩を施療する)の支持部100、基部210、肩施療機構200について説明する。支持部100、基部210、肩施療機構200は左側と右側とで対称形状を有しているので、右側の形状の説明は省略する。
【0029】
〔支持部〕
支持部100は、施療者の背が当接する背当て面13に交差する面である背もたれ部12の左右の側面14、14に取り付けられている。本実施形態において、支持部100は背もたれ部12に取り付けられているが、背もたれ部12のリクライニングと連動してリクライニングするのであれば背もたれ部12に取り付けられていなくてもよい。
【0030】
図2図3に示すように、支持部100は、昇降スライドレール110、すべりねじ120(雄ねじ122、昇降部材124)、昇降モータ駆動部130、第1金属板142、第2金属板143、第3金属板144、左右スライドレール146、スライドプレート150を備えている。昇降スライドレール110は鉄等の金属板を断面矩形状に折り曲げて形成されており、底部112と、底部112の両側に同方向に立設する一対の側部114と、両側部の端部から内側に折り曲げられて形成された一対の爪部116を有している。昇降スライドレール110の底部112と側部114と爪部116とで囲まれて形成される空間には昇降スライドレール110の延出方向に平行な雄ねじ122が取り付けられている。雄ねじ122の一方端部は昇降スライドレール110に接続された昇降モータ駆動部130に接続されており、他方端部が昇降スライドレール110の底部112から立設して形成されたに雄ねじ保持部118に支持されている。
【0031】
昇降モータ駆動部130は出力軸を有するブラシレスDCモータ(以下、「昇降モータ」と称する)131、該昇降モータ131を駆動する昇降モータ駆動回路132、昇降モータ131の出力軸に取り付けられ一体となって回転する小径プーリー133、雄ねじ122の一方端部に取り付けられ一体となって回転する大径プーリー134、2つのプーリー133,134の間に亘って取り付けられ、出力軸の回転を雄ねじ122に伝達するプーリーベルト135を有している。この構成により、昇降モータ131の出力軸の回転は減速されて雄ねじ122伝達されて雄ねじ122を回転させる。ただし、昇降モータ131が高トルク低回転タイプであれば、プーリーを介することなく、直接雄ねじ122を回転させてもよい。
【0032】
昇降スライドレール110には、雄ねじ122に螺合されたナット(不図示)を内部に収容した昇降部材124が取り付けられている。昇降部材124は摺動性のよい樹脂等からなる。本実施形態では、雄ねじ122と昇降部材124によりすべりねじ120が構成されている。昇降部材124は昇降スライドレール110の底部112と側部114と爪部116とに囲まれて係合される凸部(不図示)を有する略直方体形状を有する。昇降部材124は、雄ねじ122が正逆回転することにより内部のナットが雄ねじ122の延出方向に沿って双方向に直進運動をする。すなわち、昇降部材124は昇降モータ131の正逆回転により昇降スライドレール110に摺接した状態で上下方向に移動する。支持部100には後述する基部210を介して肩施療機構200が取り付けられており、昇降モータ131を駆動させて昇降部材124を上下に移動させることにより、座高の異なる被施療者が座部11に着座したときであっても、各被施療者の肩の高さに応じて最適な高さになるように肩施療機構200を上下方向に移動させることができる。なお、すべりねじの代わりに、雄ねじ122とナットの間にボールがあるボールねじであってもよい。
【0033】
第1金属板142は支持部100の昇降部材124にねじ等により取り付けられた支持部材125に取り付けられている。支持部材125には4箇所の引掛け爪125aが形成されており、第1金属板142に形成された4箇所のスリット孔142aが引掛け爪125aの夫々に係合される(図2参照)。第1金属板142とねじ等により接続された第2金属板143は、昇降スライドレール110から背もたれ部12の前方へと延びている。第2金属板143とねじ等により接続された第3金属板144は、背もたれ部12の前方で内側(前後方向に沿って見たときに背もたれ部12と重複する方向)に延在している。なお、第3金属板144は、被施療者(人間)の肩の構造に合うように延在している。すなわち、第3金属板144は、背もたれ部12の背当て面13及び幅方向に平行ではなく、第2金属板143との接続部から内側に延びるにつれて背もたれ部12に近接すると共に、上方向に向かって傾斜して構成されている。
【0034】
第3金属板144の内側(下側)には、金属からなる左右スライドレール146が取り付けられている。左右スライドレール146は第3金属板144の延在方向と平行に延在しており、昇降スライドレール110と同様に底部147と側部148と爪部149とを有している。左右スライドレール146の内側空間には、左右スライドレール146に摺接してその延在方向に沿って移動するスライドプレート150が取り付けられている。スライドプレート150には基部210を介して肩施療機構200が取り付けられている。左右スライドレール146に沿って肩施療機構200を幅方向に移動させることによりスライドプレート150と基部210も幅方向に移動し、肩施療機構200を被施療者の肩の適切な位置に合わせることができる。本実施形態においては、肩施療機構200の幅方向への移動は手動で行われている。
【0035】
本実施形態において、昇降部材124の昇降は昇降モータ131により行われるが、手動で昇降できるように構成してもよい。また、肩施療機構200の幅方向の移動も手動ではなくモータ駆動によって移動できるように構成してもよい。これらの昇降及び移動の方法は自由に組み合わせることができる。
【0036】
〔基部〕
図4図5に示すように、基部210は、第1基部211と第2基部216とからなる。基部210は、第3金属板144に平行に取り付けられている。すなわち、前後方向に沿って見たときに、基部210は幅方向に平行ではなく、背もたれ部12の側面14から幅方向内側に向かうにつれて座部11から離間する方向に傾斜して構成されている。また、上下方向に沿って見たときに、基部210は背もたれ部12の背当て面13に平行ではなく、背もたれ部12の側面14から幅方向内側に向かうにつれて背もたれ部12に近接する方向に傾斜して構成されている。
【0037】
第1基部211は金属板をU字状に屈曲させて形成されており、底部212と一対の側部213を有している。第1基部211の底部212は4個のスペーサ(不図示)を介してねじ等によりスライドプレート150に取り付けられている。側部213には、対向する箇所に円形のジョイント保持貫通孔214が形成されている。第1基部211は前後方向に延出しており、該ジョイント保持貫通孔214は側部213の前方端部に形成されている。
【0038】
第2基部216は金属板を折り曲げて下面が開口した直方体の箱状に形成されている。第2基部216は第1基部211の底部212と側部213とに挟まれる箇所に位置している。第2基部216の底部217は第1基部211の底部212に対向している。第2基部216の底部217は前端が前方に延出して舌部218を形成しており、舌部218の先端は屈曲して下方に延出している。舌部218の先端近傍には舌部貫通孔219が形成されている。
【0039】
第1基部211の2つのジョイント保持貫通孔214の間には、ジョイント部220がある。ジョイント部220は2つの樹脂部品を組み合わせて直方体状に構成されており、ジョイント部220の面の内、第1基部211の一対の側部213と対向する両端面には一対の円筒形状の突起221が形成されている。この突起221が第1基部211のジョイント保持貫通孔214に嵌り込んでおり、これによりジョイント部220は第1基部211に対して突起221を軸心にして前後方向及び上下方向に揺動が可能である。一対の突起221はその中央に貫通孔が形成されており、シャフト215が挿通されている(図4参照)。
【0040】
ジョイント部220の揺動軸心に平行な面の内前方に位置する面の中央部には窪み222が形成されている。その窪み222には第2基部216の舌部218が嵌り込んでおり、舌部218に形成された舌部貫通孔219にねじ等を挿通させてジョイント部220に固定することにより、第2基部216をジョイント部220に固定している。これにより、第1基部211に対してジョイント部220が揺動するときには、第2基部216も同時に揺動する。
【0041】
第1基部211の底部212と第2基部216の底部217との間には付勢部材の一例である圧縮コイルばね228が取り付けられており、これにより第2基部216の先端側にはジョイント部220の突起221を揺動軸心にして第1基部211から離間する方向の力(付勢力)が常時作用する(図16図17参照)。
【0042】
圧縮コイルばね228の第2基部216に近い側には不図示の磁石が取り付けられ、該磁石の磁極面に対向するように第1基部211に取り付けられた不図示の基板には圧縮コイルばね228の伸縮方向に沿って複数のホール素子(又はホールIC)が実装されている。磁石の接近によりホール電圧が検出されたホール素子を特定することにより、圧縮コイルばね228の伸縮量を検出することができる。なお、圧縮コイルばね228にホール素子を取り付け、これに対向するように複数の磁石を第1基部211が備える構成であってもよい。
【0043】
なお、圧縮コイルばね228の代わりに、空気の出し入れにより容積が膨張、収縮する空気袋を付勢部材として用いてもよい。通常マッサージ機1は、肩以外の場所、例えば、前腕や背中、脹脛を施療するための空気袋と、該空気袋への空気の出し入れを行うエアコンプレッサを備えている。よって、空気袋を用いてもコストアップなく、第2基部216の先端側に第1基部211から離間する方向の力(付勢力)を作用させることができる。空気量を調整することで、離間する方向の力(付勢力)を調整することができる。例えば、肩が強く押圧されることを望む人には膨張量を多くし、弱く押圧されることを望む人には膨張量を少なくする。
【0044】
〔肩施療機構〕
肩施療機構200は、被施療者の肩に対して施療を行うものであり、特に、肩を上方から押圧して施療するものである。図4図12に示すように、肩施療機構200は、施療モータ駆動部230と、斜板カム240と、施療子保持部250と、第1施療子261、第2施療子265とを有する。肩施療機構200は、基部210と共に、昇降スライドレール110、左右スライドレール146の夫々の延在方向に沿って移動可能に構成されている。
【0045】
(1)施療モータ駆動部
図5図7に示すように、第2基部216の内部空間には駆動部の一例である施療モータ駆動部230が収容されている。施療モータ駆動部230はウォーム出力軸232を有するブラシレスDCモータ(以下、「施療モータ」と称する)231、該施療モータ231を駆動する施療モータ駆動回路233、施療モータ231のウォーム出力軸232に噛み合って施療モータ231の回転を減速するウォーム減速機構234、ウォーム減速機構234に噛み合う施療出力軸235(出力軸の一例)、減速機構ケース237を有している。
【0046】
ウォーム出力軸232とウォーム減速機構234は減速機構ケース237の内部に収容されている。ウォーム出力軸232を除く施療モータ231と施療モータ駆動回路233はステー238を介して減速機構ケース237にねじ固定されている。減速機構ケース237は第2基部216の側面にねじ等により固定されており、施療モータ駆動部230は第2基部216と一体となっている。また、施療出力軸235には後述する斜板カム240が取り付けられている。
【0047】
(2)斜板カム
図6図8に示すように、斜板カム240は、環状軸受の一例である玉軸受242と、玉軸受242の内輪を軸心方向両側から挟み込んで玉軸受242の内輪と一体となって回転する樹脂製の円柱形状のカム本体244と、カム本体244の2つの底面に取り付けられ、カム本体244を更に外側から挟み込む固定プレート246からなる。斜板カム240には、カム本体244と固定プレート246を貫通する孔が2つ開けられている。一方の孔には一方の固定プレート246からカム本体244と他方の固定プレート246までボルト247が挿通されてナット248で締結されている。これにより、固定プレート246、カム本体244、玉軸受242が一体化される。もう一方の孔には施療出力軸235が挿通されてナット249で締結されている。施療出力軸235には径方向に突出する回り止めピン236が挿入されており、この回り止めピン236と嵌合する形状が一方の固定プレート246に形成されており、これにより施療出力軸235と斜板カム240(玉軸受242の外輪を除く)が一体となって回転する。
【0048】
施療出力軸235の軸心Xが斜板カム240の回転軸心になるが、施療出力軸235は玉軸受242の回転中心、すなわち、カム本体244の軸心から偏心して取り付けられている。また、玉軸受242の回転軸心はカム本体244の軸心及び底面の双方に対して傾斜している。具体的には、カム本体244の軸心を起点に施療出力軸235の中心を通る径方向の半直線がカム本体244の外周面と交差する円周上の点を仮定し、この点を通ってカム本体244の軸心に平行な線上に玉軸受242の施療モータ駆動部230から最も離間する箇所が位置するように、玉軸受242は傾斜している。換言すると、玉軸受242の内、施療出力軸235に最も近い箇所が施療モータ駆動部230から最も離間し、施療出力軸235から最も遠い箇所が施療モータ駆動部230に最も近接している。これにより、施療出力軸235が回転したときに、斜板カム240の玉軸受242の内輪は軸心Xに対して偏心且つ偏角の状態で回転する。なお、玉軸受242の内、施療出力軸235に最も近い箇所ではなく、その他の任意の場所が施療モータ駆動部230から最も離間するように構成されていてもよい。また、玉軸受242の代わりにころ軸受や滑り軸受を用いてもよい。
【0049】
(3)施療子保持部
図5図9図12に示すように、斜板カム240には施療子保持部250が取り付けられている。施療子保持部250は金属板からなる板状の第1部材252と樹脂からなり底面と底面の周囲を囲むように立設している側面を有する第2部材254とがねじ等により締結されて構成されている。第1部材252は第2部材254のカム保持貫通孔255の周囲を覆う蓋としての機能を果たす。施療子保持部250には第1部材252から第2部材254に亘って斜板カム240の玉軸受242の外輪に嵌り込む断面円形のカム保持貫通孔255が形成されており、該カム保持貫通孔255は、第2部材254においては底面から垂直に立設する円筒形状の突起255aにより形成されている。突起255aの内周面に圧入や接着等の方法により玉軸受242の外輪が取り付けられている。すなわち、施療子保持部250は玉軸受242の回転軸心に対して垂直に取り付けられている。よって、施療子保持部250は施療出力軸235に対して玉軸受242と同じ角度で傾斜している。また、第2部材254の底面の突起が形成されている側と反対側には、斜板カム240に端部を覆うようにカバー257が取り付けられている。
【0050】
(4)施療子
図5図9図11に示すように、施療子保持部250の第2部材254のカバー257が取り付けられている側と同じ側であって、斜板カム240よりも幅方向の内側(すなわち、前から後を見たときに斜板カム240の左側)に樹脂やゴム等からなる第1施療子261(施療子の一例)がねじ等により一体的になるよう取り付けられている。第1施療子261は断面が略L字状であり、被施療者の肩に当接する当接部262は施療子保持部250に接続されている箇所から下方に突出しており、当接部262の先端は略半球状になっている。第1施療子261は施療者の親指による施療を模したものであり、例えば、肩中愈、肩外愈、曲垣、肩井等のツボや、広背筋、肩甲挙筋、僧帽筋を押圧する。
【0051】
施療子保持部250の斜板カム240が取り付けられている箇所の近傍且つ前方に、第2施療子265が施療子保持部250に対して前後方向及び上下方向に揺動可能に取り付けられている。第2施療子265は、連結部材266と、第2施療子本体276と、連結軸(リンクの一例)280と、を有する。
【0052】
連結部材266は、断面が角を丸めた直角三角形状になるような柱状であって樹脂により形成されている。直角を挟む2辺(長辺、短辺)のうち長辺と斜辺とからなる角部には回動軸274が直角三角形を形成する面から両側に突出するように形成されている。回動軸274は、施療子保持部250の第2部材254に形成されたU字溝256に挿入され、第1部材252がU字溝256を覆っている。これにより、連結部材266は施療子保持部250に対して回動軸274を軸心に前後方向及び上下方向に揺動可能に保持されている。連結部材266は、回動軸274が施療子保持部250の幅方向に平行になるように施療子保持部250に取り付けられている。連結部材266の直角をなす角部には、直角三角形を形成する面を貫通するように第1ピン貫通孔270が形成されている。
【0053】
第2施療子本体276は、樹脂やゴム等からなり、その基端側を連結部材266の直角三角形の斜辺を形成する面にねじ等により固定され、連結部材266と一体となっている。第2施療子本体276は、第1施療子261よりも幅方向で外側にあり、且つ、施療子保持部250から前方に延出している。すなわち、幅方向に沿って見たときに、第2施療子本体276は第1施療子261よりも前方に位置し、第2施療子本体276の先端部は第1施療子261の先端部よりも下方に位置している。また、幅方向に沿って見たときに、ジョイント部220の突起221(第1基部211のジョイント保持貫通孔214)は、第1施療子261の先端部と第2施療子本体276の先端部の間に位置している。
【0054】
第2施療子本体276の先端側は被施療者の肩に当接する箇所であり、第2施療子本体276の途中から二股に分かれている。二股の幅方向の大きさは異なっており、幅方向の内側にある第1当接部277は幅方向外側にある第2当接部278よりも小さい。また、第2施療子本体276の先端部の全幅は第1施療子261の幅(半球状部分の直径)よりも大きい。更に、第1当接部277と第2当接部278はその延出方向に対して垂直な方向に複数の溝部279を有している。これにより、第2施療子本体276に硬質の材料を用いた場合でも、第1当接部277と第2当接部278とが被施療者の肩を押圧する際の圧力を弱めることができる。なお、第2施療子本体276は施療者の親指を除く四指による施療を模したものであり、被施療者の身体を前側から支えたり擦ったりすると共に、例えば欠盆というツボや大胸筋を押圧する。第2施療子本体276は、二股に分かれておらず、一体型であってもよい。
【0055】
連結軸280は上下方向に延出しており、連結部材266や第2施療子本体276の上方に位置している。連結軸280の上側である一端がジョイント部220に支持され、下側である他端が連結部材266に対して揺動可能に取り付けられている。連結軸280は円柱状であり、一端に近い側は中央部の直径より小径円柱状の細径部281になっており、その先端(一端)が細径部281よりも大きい径の球状部282になっている。ジョイント部220の面の内、連結軸280に対向する面には円形の開口があり、孔223が形成されている。当該孔223は、面から内部に向かうにつれて直径が狭くなるすり鉢状孔224と、該すり鉢状孔224の底と連通しており連結軸280の先端が保持できる球状孔225からなる(図9参照)。すり鉢状孔224の底の直径は球状孔225の直径よりも小さい。これにより、球状孔225に連結軸280の球状部282を嵌め込んだ状態でジョイント部220を組み立てると、連結軸280の一端はジョイント部220に対して前後方向、上下方向、幅方向の移動は規制されているが、球状部282を中心にすり鉢状孔224に当接する角度範囲内で回転自在、揺動自在となる。すなわち、連結軸280の一端とジョイント部220とはいわゆるボールジョイントによる接続となっている。
【0056】
連結軸280の他端には径方向に第2ピン貫通孔283が形成されており、第2ピン貫通孔283、及び、連結部材266の第1ピン貫通孔270を貫通する連結ピン284により、連結部材266に揺動自在に取り付けられている。連結ピン284は施療子保持部250の幅方向に平行、すなわち、回動軸274と平行になるように取り付けられているので、第2施療子265(連結部材266)は連結軸280により連結ピン284を軸心に前後方向及び上下方向に揺動可能に支持されている。また、連結軸280と連結部材266の連結箇所は第2施療子265の基端側と先端側の間に位置している。
【0057】
上記のような構成により第2施療子265は、連結部材266が施療子保持部250に対して揺動可能なリンクを構成すると共に、連結軸280がボールジョイント、及び、揺動可能なリンクを構成しており、いわゆる2リンク機構を備えている。よって、第2施療子265は施療子保持部250に対して上下方向に移動可能であり、且つ、ジョイント部220に対して回転可能である。
【0058】
〔施療子の動作〕
次に、本実施形態に係るマッサージ機1を作動させたときの第1施療子261と第2施療子265の動作について図13図17を用いて説明する。
【0059】
まず、被施療者がマッサージ機1の座部11に着座していない状態、すなわち、第1施療子261と第2施療子265が何にも当接していない状態において施療モータ231を駆動させる。このとき、図17に示すように、第2基部216は圧縮コイルばね228の付勢力により第1基部211に対して先端側が離間している。ただし、以下では、図13図15に示すように圧縮コイルばね228の付勢力が第2基部216に作用していないものとして説明する。
【0060】
施療モータ231を駆動させると、ウォーム減速機構234により減速されて施療出力軸235が回転する。施療出力軸235の回転により斜板カム240のカム本体244、固定プレート246、玉軸受242の内輪が一体となって回転する。しかし、施療子保持部250は連れ回りしない。これは、施療子保持部250に取り付けられた第2施療子265が連結軸280、ジョイント部220を介して第1基部211に支持されているからである。ただし、施療子保持部250は玉軸受242の外輪に固定されているので、施療子保持部250が回転しなくても、施療出力軸235、カム本体244、固定プレート246、玉軸受242の内輪が回転する際の抵抗にはならない。
【0061】
上述したように、施療出力軸235は斜板カム240のカム本体244の軸心に対して偏心した状態で取り付けられているので、施療出力軸235の回転に伴い斜板カム240のカム本体244の軸心は軸心X周りに公転する。すなわち、斜板カム240は、施療出力軸235の軸心Xに対して偏心回転する。
【0062】
玉軸受242の回転軸心はカム本体244の軸心及び底面の双方に対して傾斜しているので、玉軸受242の回転軸心に対して垂直に取り付けられた施療子保持部250もカム本体244の軸心及び底面の双方に対して傾斜している。この状態で施療出力軸235が回転すると、図13図15に示すように、施療子保持部250は、斜板カム240の施療出力軸235に対する前後方向及び幅方向への移動量と同じだけ移動し(図13参照)、それと同時に、玉軸受242の揺動する角度範囲(上下方向への振れ)と同じ角度範囲で揺動する(図14、15参照)。すなわち、施療子保持部250の前後方向及び幅方向の位置及び傾斜方向は、施療出力軸235の回転角度に応じて連続的に変化する。
【0063】
上述したように、第1施療子261は施療子保持部250に一体的に取り付けられている。施療子保持部250が施療出力軸235に対して最も前に位置する状態を回転の基準(0度)にしたとき(図13図15各々の(I))、第1施療子261は、上下方向に沿って見たときに、図13に示すように、施療出力軸235が下から見て反時計方向に回転するにつれて、施療子保持部250の動きに連動して右(施療出力軸235の回転角度が90度、図13(II))、後(180度、図13(III))、左(270度、図13(IV))を経て、再び前(0度、図13(I))に移動(円運動)する。これと同時に、前後方向及び幅方向に沿って見たときに、図14図15に示すように、第1施療子261は中位置(0度、図14図15の各々の(I))から、上位置(90度、図14図15の各々の(II))、中位置(180度、図14図15の各々の(III))、下位置(270度、図14図15の各々の(IV))を経て、再び中位置(0度)になるように移動(揺動)する。これは、施療子保持部250(第1施療子261)に内嵌された玉軸受242が施療出力軸235に対して、偏心且つ偏角の状態で回転するからである。なお、上位置とは第1施療子261が上下方向において位置し得る最上方及びその近傍の位置を意味し、下位置とは第1施療子261が上下方向において位置し得る最下方及びその近傍の位置を意味する。中位置とは上位値と下位置との中間の位置を意味する。
【0064】
このとき、第2施療子265は、図13図15に示すように、施療子保持部250が施療出力軸235に対して最も前にある位置を回転の基準(0度)にしたとき(図13図15各々の(I))、第2施療子265の基端側は、上下方向に沿って見たときに、図13に示すように、施療出力軸235が下から見て反時計方向に回転するにつれて、施療子保持部250の動きに連動して右(施療出力軸235の回転角度が90度、図13(II))、後(180度、図13(III))、左(270度、図13(IV))を経て、再び前(0度、図13(I))に移動(円運動)する。第2施療子265の第2施療子本体276の先端側(第1当接部277、第2当接部278)も基端側と同様に移動するが、2リンク機構の作用により、基端側よりも前後方向への移動量は小さい。これと同時に、幅方向に沿って見たときに、図14に示すように、第2施療子本体276の先端側は中位置(0度、図14(I))から、上位置(90度、図14(II))、中位置(180度、図14(III))、下位置(270度、図14(IV))を経て、再び中位置(0度)になるように揺動する。更に、前後方向に沿って見たときに、図15に示すように、第2施療子本体276の先端側は中間位置(0度、図15(I))から、右位置(90度、図15(II))、中間位置(180度、図15(III))、左位置(270度、図15(IV))を経て、再び中間位置(0度)になるように揺動する。ただし、2リンク機構の作用により、施療子保持部250(第1施療子261)よりも上下方向の動き(揺動量)は小さい。幅方向の動きは第1施療子261と同等である。なお、ジョイント部220(第2基部216)に支持された連結軸280は球状部282を中心に回転するが、ジョイント部220のすり鉢状孔224の壁面には当接しない。
【0065】
上述した上位置とは第2施療子本体276が上下方向において位置し得る最上方及びその近傍の位置を意味し、下位置とは第2施療子本体276が上下方向において位置し得る最下方及びその近傍の位置を意味する。中位置とは上位値と下位置との中間の位置を意味する。左位置とは第2施療子本体276が幅方向において位置し得る最左方及びその近傍の位置を意味し、右位置とは第2施療子本体276が幅方向において位置し得る最右方及びその近傍の位置を意味する。中間位置とは左位値と右位置との中間の位置を意味する。
【0066】
上記のように、幅方向に沿って見たときに、第1施療子261は施療子保持部250の動きに連動して前後に移動(揺動)する。第2施療子265の第2施療子本体276の先端側も施療子保持部250の動きに連動して前後に揺動するもののその移動量(揺動量)は小さい。よって、幅方向に沿って見たときに、第1施療子261と第2施療子本体276の先端側の距離は、施療出力軸235の回転に応じて変化する。そして、第1施療子261と第2施療子本体276が互いの先端側の距離が短くなるように連係して移動することにより、被施療者の肩を前方から第2施療子本体276で保持しつつ、第1施療子261で被施療者の肩を上方から押圧して施療することができる。
【0067】
このように、斜板カム240を用いるという簡単な構成により、第1施療子261と第2施療子265を上下方向に揺動させることができる。なお、施療出力軸235の回転角度による第1施療子261、第2施療子265の動きは、施療出力軸235と、施療モータ駆動部230から最も離間した玉軸受242との位置関係により変わってくる。
【0068】
次に、被施療者がマッサージ機1に着座した状態での第1施療子261、第2施療子265の動きについて説明する。まず、被施療者がマッサージ機1の座部11に着座した状態で、支持部100に支持された肩施療機構200を肩の位置に合わせる。具体的には、第1施療子261が肩の上部、第2施療子265が肩の前部に位置するようにする。このとき、第2基部216は圧縮コイルばね228の作用により第1基部211に対して先端側が離間している。これにより、第1施療子261は被施療者の肩を上方から押圧し、第2施療子265は肩を前方から保持している。その状態で施療モータ231を駆動させる。
【0069】
圧縮コイルばね228の作用により第2施療子265で被施療者の肩を前方から保持しつつ、第1施療子261で被施療者の肩を上方から押圧しているので、第1施療子261と第2施療子265は上下方向の揺動で被施療者の肩から離間することはなく、常に肩を保持しつつ上方から押圧することが可能である。第1施療子261による上方からの押圧中は、第1施療子261の上下方向の揺動と圧縮コイルばね228の付勢力により、第1施療子261が施療者の肩を押圧する力を周期的に変化させることができるので、施療者の指による施療に近い施療感を得ることができる。従って、本実施形態に係るマッサージ機1においては、第2施療子265が被施療者の肩を背もたれ部12から浮かないように保持し、第1施療子261で上方から肩のツボである肩井を刺激することができる。
【0070】
また、第1施療子261と第2施療子265は、前後左右方向に移動するので、被施療者の肩の特定箇所だけではなく、その周辺も押圧することができるので、押圧による施療効果を更に高めることができる。
【0071】
本実施形態の肩施療機構200においては、上述のように、第1施療子261が前後左右方向に移動していわゆる円運動を行いつつ(図13参照)、2リンク機構により第1施療子261と第2施療子265が互いに前後方向に近接、離反を繰り返すので(図14参照)、肩の押圧のみならず、把握揉捏による肩甲挙筋や僧帽筋上部等の肩の筋肉をほぐすことができる。僧帽筋は太くて強い筋肉であるが、肩甲挙筋は細く弱い筋肉である。特に、女性やなで肩の人は、肩甲挙筋が弱いため筋肉が緊張状態になりやすく肩こりになりやすい。
【0072】
そのため、肩施療機構200においては、上下方向に延在する施療出力軸235の周りを第1施療子261が円運動することで揉捏の際の施療者の指の動きや拇指球の回転を再現して、指圧より少し広い範囲を押圧して肩甲挙筋や僧帽筋上部等の肩の筋肉をほぐすことができる。このとき第2施療子265は、第1施療子261による揉捏動作の際に被施療者の身体が逃げないように把握と支持を行う。すなわち、第2施療子265は、第1施療子261と第2施療子265が互いに近接するときは被施療者の肩の筋肉を把握し、離反するとき被施療者の身体を支持する。これにより、被施療者の肩の筋肉を効果的にほぐすことができる。
【0073】
背もたれ部12の左右の側面14、14に夫々備えられた昇降部材124、124の上下方向への移動、肩施療機構200、200の幅方向への移動は、各々を独立して行うことができる。また、左右の肩施療機構200、200の施療モータ231、231についても、一方の施療モータ231だけを駆動させたり、夫々の回転数を異ならせたりすることができる。すなわち施療モータ231、231の夫々を独立して制御することができる。これにより、被施療者の個人差により左右の肩の高さが異なっている場合、被施療者が所望する押圧位置、押圧力等が左右の肩で異なっている場合、左右の肩の一方だけを施療したい場合等にも容易に対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、マッサージ機に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
11 座部
12 背もたれ部
14 側面
200 肩施療機構
210 基部
211 第1基部
216 第2基部
228 圧縮コイルばね(付勢部材)
230 施療モータ駆動部(駆動部)
235 施療出力軸(出力軸)
240 斜板カム
242 玉軸受(環状軸受)
250 施療子保持部
261 第1施療子(施療子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17