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  • 特許-カシメ内部のホース挙動確認方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】カシメ内部のホース挙動確認方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20220616BHJP
   G01N 23/083 20180101ALI20220616BHJP
【FI】
G01N23/046
G01N23/083
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018095884
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019200169
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000233619
【氏名又は名称】株式会社ニチリン
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 浩一
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/002809(WO,A1)
【文献】特開昭54-066191(JP,A)
【文献】特開昭56-006985(JP,A)
【文献】特開2009-000389(JP,A)
【文献】特開平09-127022(JP,A)
【文献】米国特許第06108895(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
F16L 29/00-F16L 35/00
F16L 9/00-F16L 11/26
G01B 15/00-G01B 15/08
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースが差し込まれた口金具をカシメたときの、カシメ内部のホースの層中の当該ホースを構成する材料の変形挙動を確認する方法であって、
前記変形挙動に追従する挙動マーカーを、ホースの、前記口金具に差し込まれる部分の前記層中に配置するマーカー配置工程と、
前記挙動マーカーが前記層中に配置されたホースを、前記口金具に差し込むホース差し込み工程と、
ホースが差し込まれた前記口金具をカシメる前、およびカシメた後に、前記層中に配置された前記挙動マーカーを、前記口金具、およびホースとともに、内部画像撮影装置で撮影する撮影工程と、
を備え
前記撮影工程によって得られたカシメ前に前記内部画像撮影装置で撮影した画像とカシメ後に前記内部画像撮影装置で撮影した画像とを比較することによって得られる前記挙動マーカーの動きから前記変形挙動を確認する、
カシメ内部のホース挙動確認方法。
【請求項2】
請求項1に記載のカシメ内部のホース挙動確認方法において、
前記挙動マーカーとして金属線を用い、
前記マーカー配置工程において、
ホースの、前記口金具に差し込まれる部分の外面から、ホースの内方に向かって、針状の筒体を刺し込み、
刺し込まれた前記筒体に前記金属線を挿入した後、ホースから前記筒体を抜き取り、
その後、前記金属線の、ホースからはみ出た部分を切断する、
ことを特徴とする、カシメ内部のホース挙動確認方法。
【請求項3】
請求項2に記載のカシメ内部のホース挙動確認方法において、
前記金属線として銅線を用いることを特徴とする、カシメ内部のホース挙動確認方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のカシメ内部のホース挙動確認方法において、
前記内部画像撮影装置としてX線CT装置を用いることを特徴とする、カシメ内部のホース挙動確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースが差し込まれた口金具をカシメたときの、カシメ内部のホースの挙動を確認する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本件の出願人は、過去に、特許文献1に記載の、口金具とホースの締結構造に関する発明を出願している。この従来技術は、次のような構成である。ニップルの先端側外周に矩形溝が形成され、この矩形溝にゴム製帯状リングが装着される。また、ニップルの後端側外周に溝部が形成され、この溝部に接着剤が塗布される。この構成により、冷熱インパルス試験に耐え得る口金具とホースとの締結が可能となる。
【0003】
上記のような、ホースが差し込まれた口金具をカシメることで、口金具とホースとを締結させるという締結方法では、流体のシール性は、カシメ後の、ホースの内面と、口金具を構成するニップルの外面との間の面圧に影響を受ける。面圧が大きいとシール性は高く、面圧が小さいとシール性は低い。この面圧を把握する方法として、例えば、次のような方法がある。ニップルの外周面に感圧紙を巻き、感圧紙を巻いた状態で、ホースを口金具に差し込む。その後、口金具をカシメる。口金具をカシメ終わったら分解し、ニップルの外周面の着色の程度、着色分布などを目視などで確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-286365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、感圧紙を用いた上記方法によって把握された面圧の大小と、流体のシール性との間には、残念ながら、あまり相関がなかった。カシメ内部のホース(ゴム)は、ホース締結時に(口金具カシメ時に)動くので、カシメ時の最大面圧は、カシメ後、そのまま維持されない。一方、感圧紙で検出されるのは、カシメ時の最大面圧である。
【0006】
よって、ホース締結時に、カシメ内部のホースがどのように動くのかを見極めることが、流体のシール性などを把握するのに大切である。カシメ内部のホースがどのように動くのかを見極めることができれば、その結果を、CAE(computer aided engineering)に反映し、実際のホース挙動が反映されたCAEによる応力解析で、ホース締結時のホースの挙動を再現することで、ホースの内面と、ニップルの外面との間のカシメ後の面圧、ひいては流体のシール性を、従来よりも正確に把握することができるようになる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホースが差し込まれた口金具をカシメたときの、カシメ内部のホースの挙動を、実際に確認することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ホースが差し込まれた口金具をカシメたときの、カシメ内部のホースの挙動を確認する方法であって、前記挙動に追従する挙動マーカーを、ホースの、前記口金具に差し込まれる部分の内部に配置するマーカー配置工程と、前記挙動マーカーが前記内部に配置されたホースを、前記口金具に差し込むホース差し込み工程と、ホースが差し込まれた前記口金具をカシメる前、およびカシメた後に、前記内部に配置された前記挙動マーカーを、前記口金具、およびホースとともに、内部画像撮影装置で撮影する撮影工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ホースの内部に配置された挙動マーカーを、口金具、およびホースとともに、内部画像撮影装置で撮影することで、カシメ内部のホースの挙動を実際に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】口金具に差し込まれる部分の内部に、挙動マーカー(銅線)が配置されたホースが、口金具に差し込まれた状態を示す一部側断面図である。
図2図1に示す、ホースが差し込まれた口金具が、カシメられた後の状態を示す一部側断面図である。
図3】内部に挙動マーカー(銅線)が配置されたホースの外観写真である。
図4】口金具に差し込まれる部分の内部に、挙動マーカー(銅線)が配置されたホースを、口金具に差し込んだ状態で、X線CT装置を用いて撮影した画像である。
図5図4に示す、ホースが差し込まれた口金具をカシメた後に、X線CT装置を用いて撮影した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。図1は、口金具2に差し込まれる部分の内部に、挙動マーカーとしての複数の銅線5が配置されたホース1が、口金具2に差し込まれた、カシメられる前の状態を示す一部側断面図である。また、図2は、図1に示す、ホース1が差し込まれた口金具2が、カシメられた後の状態を示す一部側断面図である。
【0012】
(口金具、およびホースについて)
口金具2は、ホースが差し込まれるニップル4と、ニップル4の外側に配置されるソケット3とから構成される。この口金具2は、ニップル4の軸方向の外周面に形成された溝4aに、ソケット3の有底底部3aを位置合わせし、外周側からソケット3をカシメて固定される。口金具2(ニップル4およびソケット3)の材質は、例えば、アルミニウム合金、ステンレスなどである。
【0013】
ホース1は、図1、2に示すように、例えば、ゴム層単層のホースである。なお、ホース1は、ゴム層単層のものに限られず、複数層のゴム層からなるもの、樹脂層とゴム層とを組み合わせたもの、または、ゴム層と補強層(繊維層)とゴム層とを組み合わせたものなどであってもよい。
【0014】
ホース1と口金具2とのカシメは、次のようにして行われる。口金具2を構成するニップル4とソケット3との間に、ホース1を差し込み、その後、外周側からソケット3をカシメる。
【0015】
(カシメ内部のホース挙動確認方法)
カシメ内部のホース挙動確認方法の一実施形態について、以下、工程順に説明する。なお、以下に記載の各工程の説明では、各工程における変形例の説明を適宜、付加している。
【0016】
<マーカー配置工程>
ホース1が差し込まれた口金具2をカシメたときの、カシメ内部のホース1の挙動に追従する挙動マーカーとしての複数の銅線5を、ホース1の、口金具2に差し込まれる部分の内部に配置する。なお、図1に示したように、ホース1の軸方向において、ホース1の、口金具2に差し込まれる部分を超える領域まで、銅線5を配置してもよい。
【0017】
ここでは、まず、ホース1の、口金具2に差し込まれる部分の外面から、ホース1の内方に向かって、図示を省略する針状の筒体をホース1に刺し込む。針状の筒体は、銅線5を挿入可能な径の孔を有し、その先端は、例えば、斜めにカットされるなどして鋭利なものとされていることが好ましい。針状の筒体は、例えば、注射針のようなものである。また、針状の筒体は、ホース1の内面を突き通る深さまで、ホース1に刺し込まれる。
【0018】
次に、ホース1に刺し込まれた前記筒体に銅線5を挿入する。銅線5は、ホース1の内面から突出するまで、ホース1の外面から内面へ向かう方向(ホース1の径内方向)に、前記筒体に挿入される。銅線5の挿入が完了したら、ホース1から前記筒体を抜き取る。前記筒体が抜き取られると、前記筒体の体積分、ホース1が収縮して、ホース1は銅線5に密着する。最後に、銅線5の、ホース1の内外面からはみ出た部分を切断する。
【0019】
上記操作を複数回繰り返すことで、ホース1の軸方向に沿って、所定の間隔で、複数の銅線5をホース1の内部に配置する。なお、複数の前記筒体を、先行して、ホース1に刺し込んでおき、その後、複数の銅線5を、各前記筒体に挿入するようにしてもよい。図3に示す写真は、挙動マーカーとしての銅線5が、内部に配置されたホース1の外観写真である(針状の筒体は、ホース1から抜き取られた状態)。
【0020】
ホース1の挙動に追従して動く(変形する)挙動マーカーは、銅線5に限定されることはない。例えば、銅線5に代えて、ステンレス線などの金属線を挙動マーカーとして用いてもよい。
【0021】
また、ペースト状の金属粉(金属ペースト)を含浸させた繊維糸を挙動マーカーとして用いてもよい。この場合、当該繊維糸で、ホース1を縫うようにして、ホース1の軸方向に沿って、複数の挙動マーカー(金属ペーストを含浸させた繊維糸)をホース1の内部に配置する。あるいは、前記針状の筒体を利用して、すなわち、針状の筒体をホース1に刺し込み、ホース1に刺し込まれた当該筒体に、金属ペーストを含浸させた繊維糸を挿入し、その後、ホース1から当該筒体を抜き取ることで、複数の挙動マーカー(金属ペーストを含浸させた繊維糸)をホース1の内部に配置する。なお、銅線5の場合と同じく、金属ペーストを含浸させた繊維糸の、ホース1の内外面からはみ出た部分は切断する。
【0022】
さらには、ホース1の軸方向に沿って、所定の間隔で、複数の小さい穴をホース1にあけ、この穴に金属ペーストを流し込むことで、穴に流し込まれた金属ペーストを挙動マーカーとしてもよい。なお、挙動マーカーとして金属ペーストを用いて、ゴム層ではなく、補強層(繊維層)の動きを見たい場合は、例えば、注射器などを用いて、補強層(繊維層)に金属ペーストを流し込むことで、補強層(繊維層)に流し込まれた金属ペーストを挙動マーカーとすることができる。さらには、ホース1内部の動きをピンポイントで見たい場合は、見たいポイントに、例えば、注射器などで金属ペーストを流し込む。
【0023】
さらには、前記の銅線5などの金属線や、金属ペーストを含浸させた繊維糸について、ホース1の軸方向に沿って、所定の間隔で、ホース1の内部に複数配置する例を説明したが、前記の銅線5などの金属線や、金属ペーストを含浸させた繊維糸を、ホース1内部の動きを見たいポイントのみに、すなわち1か所のみに配置してもよい。
【0024】
また、ホース1の周方向においては、前記の銅線5などの金属線や、金属ペーストを含浸させた繊維糸などを、例えば、120°毎に配置してもよい。すなわち、挙動マーカーを、ホース1の周方向において、所定の間隔をあけて、ホース1の軸方向に沿って、複数列、配置してもよい。なお、1列だけ挙動マーカーを配置してもよい。
【0025】
なお、挙動マーカーは、ホースを構成するゴム層、樹脂層、繊維層などの中において、X線CT装置などの内部画像撮影装置で撮影(識別)できる材質のものであればよく、金属線、金属ペーストなどの金属に、その材質が限定されるものではない。
【0026】
<ホース差し込み工程>
口金具2に差し込まれる部分の内部に、複数の銅線5が配置されたホース1を、口金具2を構成するニップル4とソケット3との間に差し込む。なお、図1は、ホース1を、口金具2を構成するニップル4とソケット3との間に差し込んだ状態を示す図である。
【0027】
<撮影工程>
次に、まず、ホース1が差し込まれた口金具2を構成するソケット3をカシメる前、すなわち、図1に示す状態での、ホース1内部に配置された複数の銅線5を、口金具2(ニップル4およびソケット3)、およびホース1とともに、X線CT装置などの内部画像撮影装置で撮影する。なお、内部画像撮影装置としては、X線CT装置以外に、MRI(magnetic resonance imaging)装置などがある。図4に示す写真は、口金具2(ソケット3)をカシメる前に、X線CT装置を用いて撮影した画像である。
【0028】
次に、口金具2(ソケット3)をカシメた後、ホース1内部に配置された複数の銅線5を、口金具2(ニップル4およびソケット3)、およびホース1とともに、X線CT装置などの内部画像撮影装置で再度、撮影する。図5に示す写真は、口金具2(ソケット3)をカシメた後に、X線CT装置を用いて撮影した画像である。図4の写真と、図5の写真とを比べるとわかるように、カシメによるホース1(ゴム層)の動きを、撮影された複数の銅線5により、はっきりと確認することができる。
【0029】
<解析工程>
カシメ前に内部画像撮影装置で撮影した画像、および、カシメ後に内部画像撮影装置で撮影した画像から、カシメ内部のホース1の動きを読み取り、ホース1のその動きが、CAEでも再現されるように、CAEの解析条件を修正する。これにより、CAEによるホース挙動の解析精度を高めることができる。その後、修正した解析条件で、CAEによるホース挙動解析を行う。
【0030】
なお、内部画像撮影装置で撮影した画像から読み取ったカシメ内部のホース1の動きを、CAEに反映することなく、すなわち、CAEによるホース挙動解析を行わず、直接、ホース1と口金具2とのカシメ形状の最適化の検討に用いてもよい。なお、内部画像撮影装置で撮影した画像から読み取ったカシメ内部のホース1の動きは、ホース1と口金具2とのカシメ時の不具合を、未然に防止する検討にも応用することができる。
【0031】
(作用・効果)
本発明によると、ホース1の挙動に追従する挙動マーカー(例えば、銅線5)を、ホース1の、口金具2に差し込まれる部分の内部に配置し、ホース1の内部に配置されたこの挙動マーカーを、口金具2、およびホース1とともに、内部画像撮影装置で撮影することで、カシメ内部のホース1の挙動を実際に確認することができる。
【0032】
ここで、上記挙動マーカーとして、金属線を用いることが好ましく、さらには、銅線を用いることが好ましい。ペースト状の金属粉(金属ペースト)を含浸させた繊維糸を挙動マーカーとして用いたり、金属ペースト自体を挙動マーカーとして用いたりすることもできるが、金属線は、金属ペーストに比べて緻密であるため、内部画像撮影装置により、より鮮明に撮影することができる。よって、挙動マーカーとして、金属線を用いることが好ましい。また、銅線は、各種の金属線の中において、変形し易い金属線であるので、挙動マーカーとして銅線を用いることで、ホース1の動きを挙動マーカーで阻害することを防止することができる。なお、挙動マーカーとしてステンレス線を用いたら、ホース1の動きが阻害されるということではなく、ステンレス線の線径を小さくすることで、ステンレス線を用いても、ホース1の動きを阻害することはない。
【0033】
また、マーカー配置工程においては、前記のように、針状の筒体を用いることが好ましい。挙動マーカーとして、金属線を用いる場合、ホース1の動きを挙動マーカーで阻害しないようにするには、線径の小さい金属線を用いることが好ましいが、線径の小さい金属線は折れ曲がりやすいので、線径の小さい金属線を、外面から内面までホース1に、直接、突き刺すのは難しい。すなわち、マーカー配置工程において、針状の筒体を利用することで、このトレードオフの問題を解決することができる。
【0034】
また、撮影工程においては、内部画像撮影装置として、X線CT装置を用いることが好ましい。X線CT装置は、MRI装置よりも安価であるからである。
【符号の説明】
【0035】
1:ホース
2:口金具
3:ソケット
4:ニップル
5:銅線(挙動マーカー)
図1
図2
図3
図4
図5