(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】シートカバー
(51)【国際特許分類】
B60N 2/60 20060101AFI20220616BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20220616BHJP
A47C 31/11 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
B60N2/60
B60N2/42
A47C31/11 Z
(21)【出願番号】P 2018145563
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】500564493
【氏名又は名称】株式会社イレブンインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】板倉 剛
【審査官】田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-287578(JP,A)
【文献】特開平11-129856(JP,A)
【文献】特開2015-085776(JP,A)
【文献】米国特許第06588838(US,B1)
【文献】特開平11-240408(JP,A)
【文献】特開2010-030390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/58
B60N 2/42
A47C 31/11
B60R 21/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの側部に内蔵されるとともに、前記シートバックの側部
を構成するシート表皮に設けた破断開始箇所を破断して膨張展開するサイドエアバックを有する車両用シートに着脱自在に装着されるシートカバーであって、
前記シートバックの側部
を構成する前記シート表皮を覆うとともに、前記破断開始箇所に縫合部分が略一致するように縫製された一組の生地部材と、
側面視における前記サイドエアバックの展開方向で対向する前記生地部材の縁端に縫合されるとともに、前記生地部材よりも
低い伸縮性
、及び前記サイドエアバックの膨張圧力よりも高い引張強度を有する力布とを備え
、
該力布が、
前記展開方向における前記生地部材の長さよりも僅かに長い展開方向の長さで形成された
シートカバー。
【請求項2】
前記力布が、
前記展開方向に長い側面視略矩形の帯状体に形成された
請求項1に記載のシートカバー。
【請求項3】
前記力布が、
前記一組の生地部材にそれぞれ設けられるとともに、略同じ上下方向の位置に配設された
請求項1
または請求項2に記載のシートカバー。
【請求項4】
前記力布が、
前記破断開始箇所に対応する前記生地部材の縁端近傍に縫合された
請求項1から
請求項3のいずれか1つに記載のシートカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車などの車両において、乗員が着座する車両用シートに装着されるようなシートカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両において、乗員が着座する車両用シートには、昨今、乗員保護の観点から、エアバックが内蔵された車両用シートがある。
例えば、特許文献1には、着座した乗員を側方から支持するサイドサポートをシートバックに有する車両用シートが、サイドサポートを覆うシート表皮の縫製ラインを破断して膨張展開するサイドエアバックを、サイドサポートの内部に備えていることが記載されている。
【0003】
さらに、特許文献1では、一端がシートフレームに結合され、他端が乗員に接触するシート表皮の縫製ライン近傍に縫合された力布を、シートバックのサイドサポートに設けている。これにより、特許文献1は、サイドサポートの縫製ラインに、サイドエアバックが膨張展開する際の膨張圧力を集中させることができるため、縫製ラインを確実に破断できるとされている。
【0004】
ところで、車両用シートには、車両用シートを汚れなどから保護する目的、あるいは車両用シートの見栄えを変更する目的で、シートバック全体を覆うようにシートバックに装着される略袋状のシートカバーが考案されている。
【0005】
しかしながら、サイドエアバックを内蔵した車両用シートにシートカバーを装着した場合、車両が被衝突物に衝突した際、サイドエアバックを膨張展開させる膨張圧力によって、サイドサポートを覆うシートカバーがサイドエアバックの展開方向に伸長するおそれがある。このため、伸長したシートカバーによって、サイドエアバックの膨張が阻害され、サイドエアバックが十分に展開できないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑み、サイドエアバック内蔵の車両用シートに装着した場合であっても、サイドエアバックの膨張を阻害することなく、サイドエアバックを外部に展開できるシートカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、シートバックの側部に内蔵されるとともに、前記シートバックの側部を構成するシート表皮に設けた破断開始箇所を破断して膨張展開するサイドエアバックを有する車両用シートに着脱自在に装着されるシートカバーであって、前記シートバックの側部を構成する前記シート表皮を覆うとともに、前記破断開始箇所に縫合部分が略一致するように縫製された一組の生地部材と、側面視における前記サイドエアバックの展開方向で対向する前記生地部材の縁端に縫合されるとともに、前記生地部材よりも低い伸縮性、及び前記サイドエアバックの膨張圧力よりも高い引張強度を有する力布とを備え、該力布が、前記展開方向における前記生地部材の長さよりも僅かに長い展開方向の長さで形成されたことを特徴とする。
【0009】
上記破断開始箇所は、膨張展開を開始したサイドエアバックが最初に破断する箇所であって、例えば、車両用シートのシート表皮の縫合部分における所定の箇所などのことをいう。
【0010】
この発明により、サイドエアバック内蔵の車両用シートに装着した場合であっても、サイドエアバックの膨張を阻害することなく、サイドエアバックを外部に展開させることができる。
具体的には、シートバックの側部を覆う一組の生地部材が、シートバックの側部の破断開始箇所に沿って縫製されているため、シートカバーは、車両用シートに装着した際、シートバックの側部の破断開始箇所に、一組の生地部材の縫合部分を略一致させることができる。
【0011】
さらに、生地部材よりも伸縮性の低い力布を生地部材に縫合したことにより、シートカバーは、サイドエアバックを膨張展開させる膨張圧力による生地部材の伸長を、力布によって抑えることができる。
【0012】
これにより、シートカバーは、生地部材の縁端近傍と力布との縫合箇所に、サイドエアバックの膨張圧力を集中して作用させることができる。このため、シートカバーは、サイドエアバックの膨張圧力が作用した際、一組の生地部材の縫合部分を容易に破断することができる。
従って、シートカバーは、サイドエアバック内蔵の車両用シートに装着した場合であっても、サイドエアバックの膨張を阻害することなく、サイドエアバックを外部に展開させることができる。
【0013】
さらにこの発明は、前記力布が、前記展開方向における前記生地部材の長さよりも僅かに長い展開方向の長さで形成されたことを特徴とする。
この発明により、シートカバーは、外部へのサイドエアバックの膨張展開と、車両用シートへの装着性の確保とをより確実に両立することができる。
【0014】
具体的には、例えば、展開方向における力布の長さを、展開方向における生地部材の長さと略同等にした場合、サイドエアバックが膨張開始した際、サイドエアバックのスムーズな膨張がシートカバーの力布によって抑制されるおそれがある。
【0015】
これに対して、展開方向における力布の長さを、展開方向における生地部材の長さよりも僅かに長くしたことで、シートカバーは、生地部材の適度な伸縮性を安定して確保することができる。これにより、サイドエアバックが膨張展開を開始した際、サイドエアバックのスムーズな膨張が、シートカバーの力布によって阻害されることを防止できる。
【0016】
このため、シートカバーは、生地部材の縁端近傍と力布との縫合箇所に、サイドエアバックの膨張圧力を確実に作用させることができる。
さらに、生地部材が適度に伸長できるため、シートカバーは、乗員が車両用シートに着座した際、生地部材が伸長しないことによる着座の違和感や力布の存在感を乗員に与えることを防止できる。
【0017】
従って、シートカバーは、展開方向における力布の長さを、展開方向における生地部材の長さよりも僅かに長くしたことにより、外部へのサイドエアバックの膨張展開と、車両用シートへの装着性の確保とをより確実に両立することができる。
【0018】
この発明の態様として、前記力布が、前記展開方向に長い側面視略矩形の帯状体に形成されてもよい。
この発明により、シートカバーは、生地部材の全体を覆うように力布を設けた場合に比べて、生地部材の伸縮性を適度に確保することができる。
【0019】
これにより、シートカバーは、車両用シートに装着する際に必要な生地部材の伸長代を確保でき、例えば、シートバックの形状が複雑な車両用シートに装着される場合であっても、車両用シートへの装着を容易にすることができる。
【0020】
このため、シートカバーは、生地部材に力布を設けた場合であっても、車両用シートへの装着性が低下することを防止できる。
従って、シートカバーは、側面視略矩形の帯状体に力布を形成したことにより、外部へのサイドエアバックの膨張展開と、車両用シートへの装着性の確保とを両立することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記力布が、前記一組の生地部材にそれぞれ設けられるとともに、略同じ上下方向の位置に配設されてもよい。
この発明により、シートカバーは、一組の生地部材の縫合部分に、サイドエアバックの膨張圧力をより確実に、かつ効率よく集中させることができる。このため、シートカバーは、サイドエアバックをより確実に外部に展開させることができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記力布が、前記破断開始箇所に対応する前記生地部材の縁端近傍に縫合されてもよい。
この発明により、シートカバーは、一組の生地部材の縫合部分に、サイドエアバックの膨張圧力をさらに効率よく作用させることができる。このため、シートカバーは、サイドエアバックをさらに確実に外部に展開させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、サイドエアバック内蔵の車両用シートに装着した場合であっても、サイドエアバックの膨張を阻害することなく、サイドエアバックを外部に展開できるシートカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】車両用シートの外観を前方上方視で示す外観斜視図。
【
図2】シートバック、及びシートカバーの外観を示す外観斜視図。
【
図3】シートカバーが装着された車両用シートの外観を示す外観斜視図。
【
図5】展開方向に沿った断面におけるシートカバーの断面を示す断面図。
【
図6】シートカバーが装着された車両用シートの断面を示す断面図。
【
図7】シートカバーが装着された車両用シートにおける車幅方向外側の側面を示す側面図。
【
図8】別の実施形態におけるシートカバーの外観を示す外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態のシートカバー10は、自動車などの車両において、乗員が着座する車両用シート1のシートバック3に装着されるシートカバーである。このようなシートカバー10について、
図1から
図7を用いて詳しく説明する。
【0026】
なお、
図1は車両用シート1の外観斜視図を示し、
図2はシートバック3、及びシートカバー10の外観斜視図を示し、
図3はシートカバー10が装着された車両用シート1の外観斜視図を示し、
図4はシートカバー10の外観を説明する説明図を示し、
図5は展開方向Xに沿った断面におけるシートカバー10の断面図を示し、
図6はシートカバー10が装着された車両用シート1の断面図を示し、
図7はシートカバー10が装着された車両用シート1における車幅方向外側の側面図を示している。
【0027】
さらに、
図4中において、
図4(a)は車両前方上方、かつ車幅方向外側から見たシートカバー10の外観斜視図を示し、
図4(b)は車両前方上方、かつ車幅方向内側から見たシートカバー10の外観斜視図を示している。加えて、
図6は車両用シート1の車幅方向略中央における車両前後方向に沿った垂直断面を示している。
【0028】
また、図中において、矢印Fr及びRrは車両前後方向を示しており、矢印Frは車両前方を示し、矢印Rrは車両後方を示し、矢印IN及びOUTは車両の車幅方向を示しており、矢印INは車幅方向内側を示し、矢印OUTは車幅方向外側を示している。
【0029】
まず、車両用シート1は、例えば右ハンドル車における運転席であって、
図1に示すように、乗員が着座するシートクッション2と、シートクッション2の後端に傾倒自在に立設されたシートバック3と、シートバック3の上面に取付けられたヘッドレスト4とで構成されている。
【0030】
さらに、シートバック3は、
図1に示すように、乗員の背中が接触する前面に対して、車幅方向内側の側部、及び車幅方向外側の側部が、それぞれ車両下方ほど車両前方へ膨出した形状に形成されている。この車両下方ほど車両前方へ膨出した側部のうち、車幅方向内側の膨出した側部を、着座した乗員を車幅方向内側から支持する内側サイドサポート3aとし、車幅方向外側の膨出した側部を、着座した乗員を車幅方向外側から支持する外側サイドサポート3bとする。
【0031】
加えて、シートバック3の外側サイドサポート3bには、
図1の二点鎖線で示したように、車両が被衝突物に衝突した際、衝突の衝撃から乗員の身体を保護するサイドエアバックユニット5が内蔵されている。
【0032】
より詳しくは、シートバック3は、シートバック3の骨格をなす金属製のシートバックフレーム(図示省略)、及びシートバックフレームを覆う弾性を有するクッション材(図示省略)を、外観意匠面となるシート表皮で覆って構成されている。
このシートバック3のシート表皮は、
図1に示すように、複数の表皮材を縫い合せて形成されている。
【0033】
具体的には、シートバック3のシート表皮は、
図1に示すように、シートバック3の上面から、乗員の背中が接触する前面の下端にかけて延びる前面中央表皮材31と、前面中央表皮材31の車幅方向内側に配置された前面内側表皮材32と、車幅方向内側の側面をなす内方側面表皮材33と、前面中央表皮材31の車幅方向外側に配置された前面外側表皮材34と、車幅方向外側の側面をなす外方側面表皮材35と、背面をなす背面表皮材(図示省略)とで構成されている。
【0034】
そして、シートバック3は、
図1に示すように、内側サイドサポート3aを覆うシート表皮を前面内側表皮材32と内方側面表皮材33とで構成し、外側サイドサポート3bを覆うシート表皮を前面外側表皮材34と外方側面表皮材35とで構成している。
なお、前面外側表皮材34と外方側面表皮材35とは、サイドエアバックユニット5が膨張展開する際の膨張圧力よりも低い引張荷重で破断する縫い糸で縫製されているものとする。
【0035】
このように複数の表皮材を縫い合せたシートバック3のシート表皮には、
図1に示すように、前面中央表皮材31と前面内側表皮材32との縫合部分である縫製線S1、前面内側表皮材32と内方側面表皮材33との縫合部分である縫製線S2、前面中央表皮材31と前面外側表皮材34との縫合部分である縫製線S3、前面内側表皮材32と外方側面表皮材35との縫合部分である縫製線S4、外方側面表皮材35と背面表皮材との縫合部分である縫製線S5、及び背面表皮材と内方側面表皮材33との縫合部分である縫合線(図示省略)が形成されている。
【0036】
また、サイドエアバックユニット5は、
図1に示すように、外側サイドサポート3bの下部に内蔵されている。このサイドエアバックユニット5は、車両が被衝突物に衝突した際、前面外側表皮材34と外方側面表皮材35とを縫合している縫い糸をサイドエアバック5a(
図6参照)の膨張圧力によって破断して、前面外側表皮材34と外方側面表皮材35とを縫合部分である縫製線S4から外部にサイドエアバック5aを膨張展開するよう構成されている。
【0037】
より詳しくは、サイドエアバックユニット5は、外側サイドサポート3bにおける車両前方側の頂部T近傍の縫い糸を膨張圧力によって破断して、前面外側表皮材34と外方側面表皮材35とを縫合部分である縫製線S4に開口部を形成するとともに、展開方向X(
図6参照)へ向けてサイドエアバック5aを膨張展開するよう構成されている。
【0038】
なお、展開方向Xは、側面視において、開口部から車両前方、かつ僅かに車両上方へ向かうとともに、平面視において、開口部から車両前方、かつ僅かに車幅方向外側へ向かう方向とする。
【0039】
次に、上述した構成の車両用シート1のシートバック3に装着されるシートカバー10について説明する。
シートカバー10は、
図2及び
図3に示すように、シートバック3に密着する形状に形成された複数の生地を、シートバック3における表皮材同士の縫合部分に略一致するように縫い合せた略袋状に形成されている。
【0040】
より詳しくは、シートカバー10は、
図2から
図4に示すように、シートバック3の前面中央表皮材31を覆う前面中央生地11と、シートバック3の前面内側表皮材32を覆う前面内側生地12と、シートバック3の内方側面表皮材33を覆う内方側面生地13と、シートバック3の前面外側表皮材34を覆う前面外側生地14と、シートバック3の外方側面表皮材35を覆う外方側面生地15と、シートバック3の背面表皮材を覆う背面生地16(
図5参照)とで構成されている。
【0041】
このように複数の生地を縫い合せたシートカバー10には、
図2から
図4に示すように、前面中央生地11と前面内側生地12との縫合部分である縫製線L1、前面内側生地12と内方側面生地13との縫合部分である縫製線L2、前面中央生地11と前面外側生地14との縫合部分である縫製線L3、前面外側生地14と外方側面生地15との縫合部分である縫製線L4、外方側面生地15と背面生地16との縫合部分である縫製線L5、及び背面生地16と内方側面生地13との縫合部分である縫製線L6が形成されている。
【0042】
なお、シートカバー10の前面中央生地11、前面内側生地12、前面外側生地14、内方側面生地13、外方側面生地15、及び背面生地16は、それぞれ車両用シート1の前面中央表皮材31、前面内側表皮材32、前面外側表皮材34、内方側面表皮材33、外方側面表皮材35、及び背面表皮材(図示省略)に対して僅かに大きい相似形で形成されている。
【0043】
このため、シートカバー10の縫製線L1、縫製線L2、縫製線L3、縫製線L4、縫製線L5、及び縫製線L6は、シートバック3に装着した際、それぞれシートバック3の縫製線S1、縫製線S2、縫製線S3、縫製線S4、縫製線S5、及び背面表皮材と内方側面表皮材33との縫合部分である縫合線(図示省略)に略一致する。
【0044】
さらに、上述したシートカバー10の前面外側生地14、及び外方側面生地15には、
図4から
図7に示すように、車両上下方向における略同位置において、展開方向Xに長い側面視略矩形の帯状体である内側力布17、及び外側力布18が、サイドエアバック5aの膨張圧力よりも高い引張強度を有する縫い糸で縫い付けられている。
【0045】
ここで、以降の説明を容易にするために、
図5に示すように、上述したシートカバー10の前面外側生地14において、前面中央生地11に縫い合わされる後方側の縫い代を後方縫い代14aとし、外方側面生地15に縫い合わされる前方側の縫い代を前方縫い代14bとする。さらに、上述した外方側面生地15において、背面生地16に縫い合わされる後方側の縫い代を後方縫い代15aとし、前面中央生地11に縫い合わされる前方側の縫い代を前方縫い代15bとする。
【0046】
上述した内側力布17は、シートカバー10の前面外側生地14に比べて低い伸縮性と、サイドエアバック5aの膨張圧力よりも高い引張強度とを有するナイロン製、あるいはポリエステル製の布材で形成されている。
【0047】
この内側力布17は、
図6に示すように、外側サイドサポート3bの頂部T近傍と略同じ車両上下方向の位置に、その前端縁が位置するように配置されるとともに、サイドエアバック5aの展開方向Xで前方縫い代14bと後方縫い代14aとを連結するように、前面外側生地14に縫い付けられている。
【0048】
具体的には、内側力布17は、
図5に示すように、前面外側生地14における後方縫い代14aの裏面に後端が縫い付けられ、前面外側生地14における前方縫い代14bの表面に前端が縫い付けられている。
さらに、内側力布17は、
図5及び
図6に示すように、側面視において、展開方向Xにおける前面外側生地14の長さよりも僅かに長い展開方向Xの長さで形成されている。
【0049】
詳述すると、内側力布17は、
図5に示すように、裏面同士が対向するように折り返した前方縫い代14bの表面から、略平板状に展開した状態における後方縫い代14aの裏面に至る展開方向Xの長さよりも僅かに長い展開方向Xの長さで形成されている。
【0050】
例えば、内側力布17は、前面外側生地14の表面同士が対向するように山なりに前面外側生地14を湾曲可能な展開方向Xの長さで形成されているものとする。あるいは、内側力布17は、前面外側生地14に弛みがない状態において、前面外側生地14との間に指一本分程度の太さの棒材を挿入可能な展開方向Xの長さで形成されているものとする。
【0051】
一方、外側力布18は、シートカバー10の外方側面生地15に比べて低い伸縮性と、サイドエアバック5aの膨張圧力よりも高い引張強度とを有するナイロン製、あるいはポリエステル製の布材で形成されている。
【0052】
この外側力布18は、
図7に示すように、外側サイドサポート3bの頂部T近傍と略同じ車両上下方向の位置に、その前端縁が位置するように配置されるとともに、サイドエアバック5aの展開方向Xで前方縫い代15bと後方縫い代15aとを連結するように、外方側面生地15に縫い付けられている。
【0053】
具体的には、外側力布18は、
図5に示すように、外方側面生地15における後方縫い代15aの裏面に後端が縫い付けられ、外方側面生地15における前方縫い代15bの表面に前端が縫い付けられている。
さらに、外側力布18は、
図5及び
図6に示すように、側面視において、展開方向Xにおける外方側面生地15の長さよりも僅かに長い展開方向Xの長さで形成されている。
【0054】
詳述すると、外側力布18は、
図5に示すように、裏面同士が対向するように折り返した前方縫い代15bの表面から、略平板状に展開した状態における後方縫い代15aの裏面に至る展開方向Xの長さよりも僅かに長い展開方向Xの長さで形成されている。
【0055】
例えば、外側力布18は、外方側面生地15の表面同士が対向するように山なりに外方側面生地15を湾曲可能な展開方向Xの長さで形成されているものとする。あるいは、外側力布18は、外方側面生地15に弛みがない状態において、外方側面生地15との間に指一本分程度の太さの棒材を挿入可能な展開方向Xの長さで形成されているものとする。
【0056】
このような構成のシートカバー10は、
図6及び
図7に示すように、車両が被衝突物に衝突した際、膨張展開を開始したサイドエアバック5aの膨張圧力によって、前面外側生地14と外方側面生地15とを縫合している縫い糸が破断され、前面外側生地14と外方側面生地15とを縫合部分である縫製線L4に開口部が形成されることで、サイドエアバック5aを外部に膨張展開させる。
【0057】
この際、前面外側生地14に設けた内側力布17が、サイドエアバック5aの膨張圧力による前面外側生地14の伸長を抑制し、外方側面生地15に設けた外側力布18が、サイドエアバック5aの膨張圧力による外方側面生地15の伸長を抑制する。
【0058】
このため、サイドエアバック5aを外部に膨出展開させる開口部は、
図6及び
図7に示すように、前面外側生地14と外方側面生地15との縫合部分のうち、外側サイドサポート3bの頂部T近傍に近接する部分に形成される。
【0059】
以上のように、シートバック3の外側サイドサポート3bに内蔵されるとともに、外側サイドサポート3bの頂部T近傍を破断して膨張展開するサイドエアバック5aを有する車両用シート1に着脱自在に装着されるシートカバー10は、外側サイドサポート3bを覆うとともに、外側サイドサポート3bの頂部T近傍に縫合部分が略一致するように縫製された前面外側生地14、及び外方側面生地15と、側面視におけるサイドエアバック5aの展開方向Xで対向する前面外側生地14の前方縫い代14b、及び後方縫い代14aに縫合されるとともに、前面外側生地14よりも伸縮性の低い内側力布17と、側面視におけるサイドエアバック5aの展開方向Xで対向する外方側面生地15の前方縫い代15b、及び後方縫い代15aに縫合されるとともに、外方側面生地15よりも伸縮性の低い外側力布18とを備えたことにより、サイドエアバック内蔵の車両用シート1に装着した場合であっても、サイドエアバック5aの膨張を阻害することなく、サイドエアバック5aを外部に展開させることができる。
【0060】
具体的には、車両用シート1の外側サイドサポート3bを覆う前面外側生地14、及び外方側面生地15が、外側サイドサポート3bの頂部T近傍に沿って縫製されているため、シートカバー10は、車両用シート1に装着した際、外側サイドサポート3bの頂部T近傍に、前面外側生地14と外方側面生地15との縫合部分を略一致させることができる。
【0061】
さらに、前面外側生地14、及び外方側面生地15よりも伸縮性の低い内側力布17、及び外側力布18を前面外側生地14、及び外方側面生地15に縫合したことにより、シートカバー10は、サイドエアバック5aを膨張展開させる膨張圧力による前面外側生地14の伸長、及び外方側面生地15の伸長を、内側力布17、及び外側力布18によって抑えることができる。
【0062】
これにより、シートカバー10は、前面外側生地14の前方縫い代14bと内側力布17との縫合箇所、及び外方側面生地15の前方縫い代15bと外側力布18との縫合箇所に、サイドエアバック5aの膨張圧力を集中して作用させることができる。このため、シートカバー10は、サイドエアバック5aの膨張圧力が作用した際、前面外側生地14と外方側面生地15との縫合部分を容易に破断することができる。
【0063】
従って、シートカバー10は、サイドエアバック内蔵の車両用シート1に装着した場合であっても、サイドエアバック5aの膨張を阻害することなく、サイドエアバック5aを外部に展開させることができる。
【0064】
また、内側力布17、及び外側力布18が、展開方向Xに長い側面視略矩形の帯状体に形成されたことにより、シートカバー10は、前面外側生地14、及び外方側面生地15の全体を覆うように内側力布、及び外側力布を設けた場合に比べて、前面外側生地14の伸縮性、及び外方側面生地15の伸縮性を適度に確保することができる。
【0065】
これにより、シートカバー10は、車両用シート1に装着する際に必要な前面外側生地14の伸長代、及び外方側面生地15の伸長代を確保でき、シートバック3の形状が複雑な車両用シート1に装着される場合であっても、車両用シート1への装着を容易にすることができる。
【0066】
このため、シートカバー10は、前面外側生地14、及び外方側面生地15に内側力布17、及び外側力布18を設けた場合であっても、車両用シート1への装着性が低下することを防止できる。
従って、シートカバー10は、側面視略矩形の帯状体に内側力布17、及び外側力布18を形成したことにより、外部へのサイドエアバック5aの膨張展開と、車両用シート1への装着性の確保とを両立することができる。
【0067】
また、内側力布17が、展開方向Xにおける前面外側生地14の長さよりも僅かに長い展開方向Xの長さで形成され、外側力布18が、展開方向Xにおける外方側面生地15の長さよりも僅かに長い展開方向Xの長さで形成されたことにより、シートカバー10は、外部へのサイドエアバック5aの膨張展開と、車両用シート1への装着性の確保とをより確実に両立することができる。
【0068】
具体的には、例えば、展開方向Xにおける内側力布の長さ、及び外側力布の長さを、それぞれ展開方向Xにおける前面外側生地14の長さ、及び外方側面生地15の長さと略同等にした場合、サイドエアバック5aが膨張開始した際、サイドエアバック5aのスムーズな膨張がシートカバー10の内側力布17、及び外側力布18によって抑制されるおそれがある。
【0069】
これに対して、展開方向Xにおける内側力布17の長さ、及び外側力布18の長さを、それぞれ展開方向Xにおける前面外側生地14の長さ、及び外方側面生地15の長さよりも僅かに長くしたことで、シートカバー10は、前面外側生地14の適度な伸縮性、及び外方側面生地15の適度な伸縮性を安定して確保することができる。
【0070】
これにより、サイドエアバック5aが膨張展開を開始した際、サイドエアバック5aのスムーズな膨張が、シートカバー10の内側力布17、及び外側力布18によって阻害されることを防止できる。
【0071】
このため、シートカバー10は、前面外側生地14の前方縫い代14bと内側力布17との縫合箇所、及び外方側面生地15の前方縫い代15bと外側力布18との縫合箇所に、サイドエアバック5aの膨張圧力を確実に作用させることができる。
【0072】
さらに、前面外側生地14、及び外方側面生地15が適度に伸長できるため、シートカバー10は、乗員が車両用シート1に着座した際、前面外側生地14、及び外方側面生地15が伸長しないことによる着座の違和感や、内側力布17、及び外側力布18の存在感を乗員に与えることを防止できる。
【0073】
従って、シートカバー10は、展開方向Xにおける内側力布17の長さ、及び外側力布18の長さを、それぞれ展開方向Xにおける前面外側生地14の長さ、及び外方側面生地15の長さよりも僅かに長くしたことにより、外部へのサイドエアバック5aの膨張展開と、車両用シート1への装着性の確保とをより確実に両立することができる。
【0074】
また、内側力布17、及び外側力布18が、前面外側生地14、及び外方側面生地15にそれぞれ設けられるとともに、略同じ上下方向の位置に配設されたことにより、シートカバー10は、前面外側生地14と外方側面生地15との縫合部分に、サイドエアバック5aの膨張圧力をより確実に、かつ効率よく集中させることができる。このため、シートカバー10は、サイドエアバック5aをより確実に外部に展開させることができる。
【0075】
また、内側力布17が、外側サイドサポート3bの頂部T近傍に対応する前面外側生地14の前方縫い代14bに縫合され、外側力布18が、外側サイドサポート3bの頂部T近傍に対応する外方側面生地15の前方縫い代15bに縫合されたことにより、シートカバー10は、前面外側生地14と外方側面生地15との縫合部分に、サイドエアバック5aの膨張圧力をさらに効率よく作用させることができる。このため、シートカバー10は、サイドエアバック5aをさらに確実に外部に展開させることができる。
【0076】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明のシートバックの側部は、実施形態の外側サイドサポート3bに対応し、
以下同様に、
破断開始箇所は、外側サイドサポート3bの頂部T近傍に対応し、
一組の生地部材は、前面外側生地14、及び外方側面生地15に対応し、
生地部材の縁端は、前面外側生地14の後方縫い代14a、及び前方縫い代14bと、外方側面生地15の後方縫い代15a、及び前方縫い代15bとに対応し、
力布は、内側力布17、及び外側力布18に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0077】
例えば、上述した実施形態において、右ハンドル車の運転席である車両用シート1に装着されるシートカバー10としたが、これに限定せず、例えば、別の実施形態におけるシートカバー10の外観斜視図を示す
図8のように、右ハンドル車の助手席である車両用シート6に装着されるシートカバー20としてもよい。
【0078】
また、車両用シート1において、サイドエアバック5aが、前面外側表皮材34と外方側面表皮材35とを縫合する縫い糸を破断して形成した開口部から膨張展開する構成としたが、これに限定せず、サイドエアバック5aが、外側サイドサポート3bの適宜の箇所を破断して膨張展開する構成としてもよい。
【0079】
この場合、外側サイドサポートの適宜の箇所に生地同士の縫合部分が略一致するように縫製されたシートカバーとすることで、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0080】
また、車両用シート1のシートバック3に装着されるシートカバー10としたが、これに限定せず、車両用シート1のシートクッション2、及びシートバック3に一体的に装着されるシートカバーとしてもよい。あるいは、車両用シート1のシートクッション2、シートバック3、及びヘッドレスト4に一体的に装着されるシートカバーとしてもよい。
【0081】
また、側面視において、車両前方、かつ僅かに車両上方をサイドエアバック5aの展開方向Xとしたが、これに限定せず、側面視において、車両前方をサイドエアバック5aの展開方向Xとしてもよい。あるいは、側面視において、車両上方、かつ僅かに車両前方をサイドエアバック5aの展開方向Xとしてもよい。
【0082】
また、前面外側生地14に内側力布17を設けるとともに、外方側面生地15に外側力布18を設けたシートカバー10としたが、これに限定せず、前面外側生地14、または外方側面生地15のいずれか一方に力布を設けたシートカバーとしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…車両用シート
3…シートバック
3b…外側サイドサポート
5a…サイドエアバック
6…車両用シート
10…シートカバー
14…前面外側生地
14a…後方縫い代
14b…前方縫い代
15…外方側面生地
15a…後方縫い代
15b…前方縫い代
17…内側力布
18…外側力布
20…シートカバー
T…頂部
X…展開方向