(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】撮像システム及び撮像方法
(51)【国際特許分類】
H04N 5/222 20060101AFI20220616BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20220616BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
H04N5/222 100
G03B17/56 B
H04N5/222 400
H04N5/232 290
(21)【出願番号】P 2018165630
(22)【出願日】2018-09-05
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591247765
【氏名又は名称】株式会社昭特製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】渡部 啓二郎
(72)【発明者】
【氏名】今西 哲明
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-204378(JP,A)
【文献】特表2009-522906(JP,A)
【文献】特開2011-002834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222
G03B 17/56
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像する撮像システムであって、
枠体と、前記枠体に設けられ、平面視において前記枠体に対する車輪の向きが回転しない第1固定車輪及び第2固定車輪と、前記枠体に設けられ、平面視において前記枠体に対する車輪の向きが回転可能な1個以上の自由車輪と、を有する移動架台と、
前記移動架台に着脱可能に取り付けられた取付部であって、前記移動架台に載置された状態において鉛直方向に略沿って設けられた回転軸を有する取付部と、
前記取付部に設けられたカメラと、
前記カメラの位置及び前記カメラの回転角度を演算する演算部と、
を備え、
前記第1固定車輪には、当該第1固定車輪の回転数を取得する第1エンコーダが設けられ、
前記第2固定車輪には、当該第2固定車輪の回転数を取得する第2エンコーダが設けられ、
前記回転軸には、当該回転軸の回転角度を取得するセンサが設けられ、
前記演算部は、前記第1エンコーダ及び前記第2エンコーダが取得した回転数に基づいて、前記第1固定車輪と前記第2固定車輪とを結んだ第1線の中心である中心点の移動量及び前記第1線の回転角度を求め、前記中心点の移動量及び前記第1線の回転角度に基づいて、前記中心点を通り前記第1線と略直交する第2線上に位置する前記回転軸の位置を求め、前記回転軸の位置と、前記第1線の回転角度と、前記センサが取得した回転角度と、前記回転軸と前記カメラとの位置関係とに基づいて前記カメラの位置及び前記カメラの回転角度を求める
ことを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
前記取付部は、前記回転軸に設けられ、水平方向に対して±90度以下の範囲内で揺動可能な棒状のアームと、前記アームの先端に設けられ、前記カメラが設けられるヘッドと、を有するクレーンであり、
前記演算部は、前記回転軸の回転角度と、前記アームの水平方向に対する角度と、前記回転軸と前記ヘッドとの位置関係と、前記ヘッドが取得した前記カメラのパラメータとに基づいて前記カメラの位置及び前記カメラの回転角度を求める
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記カメラの位置及び前記カメラの回転角度に基づいて、前記カメラが撮像した映像とコンピュータグラフィック(CG)画像とを合成する合成部を備え、
前記演算部は、前記移動架台が移動する基準面に任意の基準位置及び任意の基準線を設定し、前記中心点の移動量として前記基準位置に対する移動量を求め、前記第1線の回転角度として前記基準線に対する回転角度を求める
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像システム。
【請求項4】
コンピュータグラフィック(CG)座標系と、カメラ座標系との位置関係を算出する位置算出部と、
前記位置算出部が算出した結果に基づいて前記カメラが撮像した映像とCG画像とを合成する合成部と、
を備え、
前記位置算出部は、前記CG座標系での位置が分かっている2点を設定し、前記2点のうちの第1点を前記カメラにより撮像し、前記第1点を撮像した際の前記カメラのパン角度、チルト角度、及び高さを検出し、これらに基づいて前記カメラ座標系での前記第1点の位置を求め、前記2点のうち第2点を前記カメラにより撮像し、前記第2点を撮像した際の前記カメラのパン角度、チルト角度及び高さを検出し、これらに基づいて前記カメラ座標系での前記第2点の位置を求め、前記カメラ座標系における前記第1点および前記第2点の位置に基づいて前記CG座標系と前記カメラ座標系との位置関係を算出する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像システム。
【請求項5】
枠体と、前記枠体に設けられ、平面視において前記枠体に対する車輪の向きが回転しない第1固定車輪及び第2固定車輪と、前記枠体に設けられ、平面視において前記枠体に対する車輪の向きが回転可能な1個以上の自由車輪と、を有する移動架台に、回転軸を有する取付部を介して搭載されたカメラにより被写体を撮像する撮像方法であって、
前記第1固定車輪に設けられ、当該第1固定車輪の回転数を取得する第1エンコーダと、前記第2固定車輪に設けられ、当該第2固定車輪の回転数を取得する第2エンコーダとからそれぞれ前記第1固定車輪の回転数及び前記第2固定車輪の回転数を取得する第1ステップと、
前記第1固定車輪の回転数及び前記第2固定車輪の回転数に基づいて、前記第1固定車輪と前記第2固定車輪とを結んだ第1線の中心である中心点の移動量及び前記第1線の回転角度を求める第2ステップと、
前記中心点の移動量及び前記第1線の回転角度に基づいて、前記中心点を通り前記第1線と略直交する第2線上に位置する前記回転軸の位置を求める第3ステップと、
前記回転軸に設けられたセンサから前記回転軸の回転角度を取得し、前記回転軸の位置と、前記第1線の回転角度と、前記回転軸の回転角度と、前記回転軸と前記カメラとの位置関係と、に基づいて前記カメラの位置及び前記カメラの回転角度を求める第4ステップと、
を含むことを特徴とする撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像システム及び撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移動架台が移動する床面の基準位置および移動架台の基準角度を設定し、基準位置からの移動架台の移動量および基準角度からの自転角度を検出し、基準位置および基準角度並びに移動架台の移動量及び自転角度から被写体に対するカメラの位置お及び角度を把握する撮像方法及び撮像システムが開示されている。移動架台は、少なくとも3個の車輪を有し、それぞれにエンコーダが設けられており、移動架台の自転角度は、各車輪の中心を通り移動方向に対して平行な少なくとも3本の直線を引いた場合にその直線が互いに離隔している任意の2個の車輪にそれぞれ設けられたエンコーダによって把握された移動量から算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、移動架台としてペデスタルを用いている。ペデスタルとは、カメラを任意の方向に平行移動させる手段であり、大型でありかつ高価である。したがって、ペデスタルを用いた撮像システムは、スタジオに常設する用途には向いているが、持ち運びが困難であるため、中継やイベント撮影に適していないという問題がある。
【0005】
また、特許文献1に記載のペデスタルはハンドルを有し、ハンドルの切角でペデスタルの移動方向が定められる。そのため、特許文献1に記載の発明は、ハンドルを用いない移動架台に適用することはできないという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に記載の発明では、ペデスタルの3つの車輪を操舵してペデスタルの進行方向を定め、かつ、3つの車輪を利用して計測を行っている。しかしながら、実際には、3つの車輪を誤差なく同一の方向に向ける(3車輪のアライメントをとる)のは機構的に困難である。したがって、特許文献1に記載の発明では、3つの車輪の向きのズレにより車輪の床面に対するすべりが生じ、これが原因で計測誤差が発生するおそれがある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、小型で持ち運びが容易でありながら、カメラの位置及び角度を正確に把握することができる撮像システム及び撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る撮像システムは、被写体を撮像する撮像システムであって、枠体と、前記枠体に設けられ、平面視において前記枠体に対する車輪の向きが回転しない第1固定車輪及び第2固定車輪と、前記枠体に設けられ、平面視において前記枠体に対する車輪の向きが回転可能な1個以上の自由車輪と、を有する移動架台と、前記移動架台に着脱可能に取り付けられた取付部であって、前記移動架台に載置された状態において鉛直方向に略沿って設けられた回転軸を有する取付部と、前記取付部に設けられたカメラと、前記カメラの位置及び前記カメラの回転角度を演算する演算部と、を備え、前記第1固定車輪には、当該第1固定車輪の回転数を取得する第1エンコーダが設けられ、前記第2固定車輪には、当該第2固定車輪の回転数を取得する第2エンコーダが設けられ、前記回転軸には、当該回転軸の回転角度を取得するセンサが設けられ、前記演算部は、前記第1エンコーダ及び前記第2エンコーダが取得した回転数に基づいて、前記第1固定車輪と前記第2固定車輪とを結んだ第1線の中心である中心点の移動量及び前記第1線の回転角度を求め、前記中心点の移動量及び前記第1線の回転角度に基づいて、前記中心点を通り前記第1線と略直交する第2線上に位置する前記回転軸の位置を求め、前記回転軸の位置と、前記第1線の回転角度と、前記センサが取得した回転角度と、前記回転軸と前記カメラとの位置関係とに基づいて前記カメラの位置及び前記カメラの回転角度を求めることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る撮像システムによれば、移動架台の固定車輪は平面視において枠体に対する車輪の向きが回転せず、移動架台の自由車輪は、平面視において枠体に対する車輪の向きが回転可能である。移動架台には、鉛直方向に略沿って設けられた回転軸を有する取付部と、取付部に設けられたカメラとが着脱可能に取り付けられている。これにより、小型で持ち運びが容易になる。また、第1固定車輪及び第2固定車輪の回転数に基づいて第1固定車輪と第2固定車輪とを結んだ第1線の中心である中心点の移動量及び第1線の回転角度を求め、中心点の移動量及び第1線の回転角度に基づいて回転軸の位置(中心点を通り前記第1線と略直交する第2線上に位置する)を求め、回転軸の位置と第1線の回転角度とセンサが取得した回転角度と回転軸と前記カメラとの位置関係とに基づいて、カメラの位置及び前記カメラの回転角度を求める。これにより、カメラの位置及び角度を正確に把握することができる。特に、互いの位置精度を確保しやすい2つの車輪を利用して移動及び計測を行うため、取得する位置情報の精度を高くすることができる。
【0010】
ここで、前記取付部は、前記回転軸に設けられ、水平方向に対して±90度以下の範囲内で揺動可能な棒状のアームと、前記アームの先端に設けられ、前記カメラが設けられるヘッドと、を有するクレーンであり、前記演算部は、前記回転軸の回転角度と、前記アームの水平方向に対する角度と、前記回転軸と前記ヘッドとの位置関係と、前記ヘッドが取得した前記カメラのパラメータとに基づいて前記カメラの位置及び前記カメラの回転角度を求めてもよい。これにより、ローアングルからハイアングルまで広範囲の撮像が可能である。
【0011】
ここで、前記カメラの位置及び前記カメラの回転角度に基づいて、前記カメラが撮像した映像とコンピュータグラフィック(CG)画像とを合成する合成部を備え、前記演算部は、前記移動架台が移動する基準面に任意の基準位置及び任意の基準線を設定し、前記中心点の移動量として前記基準位置に対する移動量を求め、前記第1線の回転角度として前記基準線に対する回転角度を求めてもよい。これにより、カメラの位置や角度を正確に把握し、撮像画像とCG画像とを違和感なく合成することができる。
【0012】
ここで、コンピュータグラフィック(CG)座標系と、カメラ座標系との位置関係を算出する位置算出部と、前記位置算出部が算出した結果に基づいて前記カメラが撮像した映像とCG画像とを合成する合成部と、を備え、前記位置算出部は、前記CG座標系での位置が分かっている2点を設定し、前記2点のうちの第1点を前記カメラにより撮像し、前記第1点を撮像した際の前記カメラのパン角度、チルト角度、及び高さを検出し、これらに基づいて前記カメラ座標系での前記第1点の位置を求め、前記2点のうち第2点を前記カメラにより撮像し、前記第2点を撮像した際の前記カメラのパン角度、チルト角度及び高さを検出し、これらに基づいて前記カメラ座標系での前記第2点の位置を求め、前記カメラ座標系における前記第1点および前記第2点の位置に基づいて前記CG座標系と前記カメラ座標系との位置関係を算出してもよい。これにより、撮像画像とCG画像とを容易に合成することができる。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る撮像方法は、枠体と、前記枠体に設けられ、平面視において前記枠体に対する車輪の向きが回転しない第1固定車輪及び第2固定車輪と、前記枠体に設けられ、平面視において前記枠体に対する車輪の向きが回転可能な1個以上の自由車輪と、を有する移動架台に、回転軸を有する取付部を介して搭載されたカメラにより被写体を撮像する撮像方法であって、前記第1固定車輪に設けられ、当該第1固定車輪の回転数を取得する第1エンコーダと、前記第2固定車輪に設けられ、当該第2固定車輪の回転数を取得する第2エンコーダとからそれぞれ前記第1固定車輪の回転数及び前記第2固定車輪の回転数を取得する第1ステップと、前記第1固定車輪の回転数及び前記第2固定車輪の回転数に基づいて、前記第1固定車輪と前記第2固定車輪とを結んだ第1線の中心である中心点の移動量及び前記第1線の回転角度を求める第2ステップと、前記中心点の移動量及び前記第1線の回転角度に基づいて、前記中心点を通り前記第1線と略直交する第2線上に位置する前記回転軸の位置を求める第3ステップと、前記回転軸に設けられたセンサから前記回転軸の回転角度を取得し、前記回転軸の位置と、前記第1線の回転角度と、前記回転軸の回転角度と、前記回転軸と前記カメラとの位置関係と、に基づいて前記カメラの位置及び前記カメラの回転角度を求める第4ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、小型で持ち運びが容易でありながら、カメラの位置及び角度を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る撮像システム1の概略を示す図である。
【
図3】撮像システム1の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図4】微小時間の間にドリー10が移動した様子を模式的に示す図である。
【
図5】撮像システム1が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】変形例にかかるドリー10Aの概略を示す平面図である。
【
図7】変形例にかかるドリー10Bの概略を示す平面図である。
【
図8】変形例にかかるドリー10Cの概略を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明の撮像システムは、映画、テレビ等で被写体を撮影する際に用いられる移動式のカメラシステムである。
【0017】
図1は、本発明に係る撮像システム1の概略を示す図である。撮像システム1は、ドリー10と、三脚20と、アーム30と、ヘッド40と、カメラ50と、操作部60と、を有する。
【0018】
ドリー10は、スタジオの床面や地面(以下、基準面Xという)の上を移動する移動架台である。
図2は、ドリー10の概略を示す平面図(鉛直方向上側から見た図)である。ドリー10は、主として、枠体11と、後輪12、13と、前輪14と、を有する。
【0019】
枠体11は、土台部11aと、土台部11aから放射状に延びる3本の脚部11bと、を有する。本実施の形態では、車輪が3つであるため、脚部11bも3本である。脚部11bの先端には、三脚20が載置される載置部11cが設けられている。
【0020】
また、脚部11bの先端には、それぞれ後輪12、13及び前輪14が設けられている。後輪12、13及び前輪14は脚部11bの底面側に設けられている。
【0021】
後輪12、13は、平面視において(鉛直方向上側から見て)、枠体11(脚部11b)に対する車輪の向きが回転しない固定車輪である。後輪12、13には、それぞれ、後輪12、13の回転数を取得するエンコーダ72、73(
図3参照)が設けられている。
【0022】
前輪14は、平面視において枠体11に対する車輪の向きが回転可能な自由車輪である。前輪14の向きが変わることで、ドリー10の移動方向が変わる。
【0023】
ドリー10は、通常、後輪12、13が前輪14よりも進行方向後ろ側に位置した状態で移動する。ただし、進行方向が逆になると、後輪12、13が前輪14よりも進行方向前側に位置した状態で移動する。ドリー10は、カメラマンや取扱者等が押す力により移動する。
【0024】
図1の説明に戻る。三脚20は、ドリー10に着脱可能に取り付けられており、ドリー10の移動に伴って移動する。
【0025】
三脚20は、3本の脚21aを含む土台部21と、土台部21に設けられた回転軸22と、を有する。3本の脚21aは、それぞれ載置部11cに載置される。回転軸22は、三脚20がドリー10に載置された状態において、鉛直方向に略沿って設けられており、土台部21に対して回転可能である。回転軸22には、アーム30が設けられている。
【0026】
アーム30は、棒状の部材であり、水平方向に対して±90度以下の範囲内で揺動可能である。したがって、ローアングルからハイアングルまで広範囲の撮像が可能である。
図1では、アーム30が水平方向に延設された状態を実線で図示している。また、アーム30は、回転軸22の回転に伴って回転軸22を中心に回転する。三脚20及びアーム30は、本発明の取付部に相当する。
【0027】
ドリー10から取り外した三脚20は、土台部21の脚21aを閉じ、アーム30を回転軸22と略平行にすることで、棒状となり、持ち運びが容易となる。
【0028】
ヘッド40は、アーム30の先端に設けられている。カメラ50は、ヘッド40に設けられている。ヘッド40は、パン・チルト機構を有し、カメラ50をパン・チルトする。アーム30、ヘッド40及びカメラ50は、すでに公知の技術を用いることができるため、説明を省略する。
【0029】
操作部60は、アーム30のヘッド40が設けられていない側の端近傍に設けられている。操作部60には、図示しない入力装置や表示部が設けられている。また、操作部60の内部には、制御部70(
図3参照)が設けられている。
【0030】
図3は、撮像システム1の電気的な構成を示すブロック図である。制御部70は、演算装置であるCPU(Central Processing Unit)等のプログラム制御デバイスであり、記憶部(図示せず)に格納されたプログラムにしたがって動作する。制御部70は、主として、演算部71、位置算出部75として機能する。
【0031】
制御部70には、エンコーダ72、73が接続されている。エンコーダ72、73はそれぞれ後輪12、13の回転数を取得し、この情報は演算部71に入力される。
【0032】
また、制御部70には、回転軸22に設けられたセンサ23が接続されている。センサ23は回転軸22の回転角度を取得し、この情報は演算部71に入力される。
【0033】
また、制御部70には、アーム30に接続されたセンサ31が接続されている。センサ31は、アーム30の水平方向に対する角度を取得し、この情報は演算部71に入力される。
【0034】
また、制御部70には、ヘッド40が接続されている。ヘッド40は、カメラ50のパラメータ(パン、チルトに関する情報等)を取得し、この情報は演算部71及び位置算出部75に入力される。
【0035】
演算部71は、入力された情報に基づいて回転軸22の位置及びカメラ50の位置を演算する。位置算出部75は、コンピュータグラフィック(CG)座標系と、基準位置を原点とするカメラ座標系との位置関係を算出する。
【0036】
制御部70には、合成部80が接続されている。制御部70で求められた情報は合成部80に入力される。合成部80は、例えば、制御部70に接続されたコンピュータである。合成部80は、制御部70が算出した結果に基づいてカメラ50が撮像した映像とCG画像とを合成する。CG画像は、あらかじめ合成部80に入力されていてもよいし、合成部80に接続されたコンピュータ等(図示省略)から入力されてもよい。
【0037】
なお、
図3に示す撮像システム1の構成は、本実施形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、例えば一般的な情報処理装置が備える構成を排除するものではない。
図3に示す機能構成は、撮像システム1の構成を理解しやすくするために分類したものであり、構成要素の分類の仕方や名称は
図3に記載の形態に限定されない。
【0038】
また、制御部70が設けられる位置は操作部60の内部に限られない。例えば、操作部60に接続されたコンピュータが制御部70として機能してもよい。操作部60に接続されたコンピュータを制御部70とする場合でも、制御部70が撮像システム1に含まれることに変わりはない。
【0039】
ここで、演算部71の処理について
図4を用いて説明する。
図4は、微小時間(t=T1~T2、tは時間を示す)の間にドリー10が移動した様子を模式的に示す図である。また、
図4に示す座標はカメラ座標系である。
【0040】
演算部71は、エンコーダ72が取得した回転数に基づいて、微小時間経過したときの後輪12の移動量Aを求める。また、演算部71は、エンコーダ73が取得した回転数に基づいて、微小時間経過したときの後輪13の移動量Bを求める。移動量A、Bは、回転数に後輪12、13が1回転で走る距離を積算することにより求められる。
【0041】
また、演算部71は、移動量A、Bに基づいて、微小時間経過したときのドリー10の移動量ΔDを求める。移動量ΔDは、数式(1)により求められる。
ΔD=(A+B)/2 ・・・(1)
【0042】
また、演算部71は、移動量A、Bに基づいて、微小時間経過したときの線Cの回転角度Δθを求める。線Cは、後輪12と後輪13とを結んだ線である。
図4における2点鎖線は、t=T1のときの線Cと平行な線である。線Cの回転角度Δθは、以下の数式(2)により求められる。
Δθ=(A-B)/L ・・・(2)
【0043】
そして、演算部71は、ドリー10の移動量ΔD及び線Cの回転角度Δθに基づいて、微小時間経過したときの点Dのx方向の位置変化Δx及びy方向の位置変化Δyを求める。点Dは、線Cの中心である。位置変化Δx、Δyは、以下の数式(3)、(4)により求められる。
Δx=ΔD×sinθ ・・・(3)
Δy=ΔD×cosθ ・・・(4)
【0044】
演算部71は、数式(3)、(4)により求められた位置変化Δx、Δyを積算することで、ドリー10の基準位置Oに対する移動量及び基準線に対する回転角度、すなわちドリー10の点Dの位置(x,y)を求める。ここで、基準位置Oは、基準面における原点である。また、基準線は、カメラ座標におけるx方向に沿った線である。ドリー10が移動を開始する前は、点Dが基準位置Oに位置し、線Cが基準線と平行であるとする。
【0045】
また、演算部71は、点Dの位置(x,y)に基づいて、回転軸22の中心Eの位置(X,Y)を求める。中心Eの位置(X,Y)は、以下の数式(3)、(4)により求められる。ここで、YLは、点Dを通り線Cと略直交する線F上における点Dと回転軸22の位置とのオフセット量である。また、回転角度θは、回転角度Δθを積算することで求められる値であり、基準線に対する回転角度である。
X=x-YL×sinθ ・・・(3)
Y=y-YL×cosθ ・・・(4)
【0046】
中心Eは、線F上に配置されるが、オフセット量YLは、三脚20、アーム30、ヘッド40、カメラ50等の大きさや重さによって変化し得る。
【0047】
図5は、撮像システム1が行う処理の流れを示すフローチャートである。演算部71は、基準面X上にカメラ座標系を設定する(ステップS10)。カメラ座標系の原点は、
図4に示す基準位置Oである。ここで、ドリー10は、点Dが基準位置Oと略一致し、線Cがカメラ座標系のx軸と略平行となるように、基準面に設置することが好ましい。
【0048】
次に、位置算出部75は、コンピュータグラフィック(CG)座標系と、基準位置を原点とするカメラ座標系との位置関係を算出する(ステップS11)。以下、ステップS11の処理について説明する。
【0049】
まず、CG座標系での位置が分かっているA点、B点の2点を基準面に設定する。A点、B点は、CG座標系におけるx軸上の点とすることが望ましい。
【0050】
カメラ50でA点を撮像し、このときのパラメータ(カメラ50のパン角度、チルト角度等)を検出し、カメラ座標系におけるA点の位置を求める。同様に、カメラ50でB点を撮像し、このときのパラメータを検出し、カメラ座標系におけるB点の位置を求める。
【0051】
そして、カメラ座標系におけるA点、B点の位置から、カメラ座標系に対するCG座標系の回転角度θ及びCG座標系におけるカメラ50の位置を求める。そして、このCG座標系におけるカメラ50の位置算出結果に基づいてCG座標系とカメラ座標系との位置関係を算出する。これにより、ステップS11の処理を終了する。
【0052】
なお、ステップS10、S11の処理は必須ではない。例えば、ステップS10においてカメラ座標系とCG座標系と一致させた場合には、ステップS11は不要である。また、例えば、ステップS11を行う場合には、ステップS10は不要である。
【0053】
次に、演算部71は、ドリー10の基準位置Oに対する移動量及び基準線に対する回転角度(すなわち、点Dの位置(x,y))を算出する(ステップS12)。
【0054】
そして、演算部71は、ドリー10の基準位置Oに対する移動量及び基準線に対する回転角度に基づいてカメラ50の位置及び回転角度を求める(ステップS13)。
【0055】
ステップS13では、まず、演算部71は、ドリー10の基準位置Oに対する移動量、すなわち点Dの位置(x,y)に基づいて回転軸22の中心Eの位置(X,Y)を求める。また、演算部71は、センサ23から回転軸22の回転角度を取得する。そして、演算部71は、中心Eの位置(X,Y)と、ドリー10の基準線に対する回転角度θと、回転軸22の回転角度と、中心Eとカメラ50との位置関係とに基づいてカメラ50の位置及び回転角度を求める。
【0056】
本実施の形態では、中心Eとカメラ50との位置関係は以下のように求められる。演算部71は、回転軸22の回転角度に基づいて、アーム30の基準線に対する回転角度を求める。また、演算部71は、アーム30の水平方向に対する角度を取得する。そして、アーム30のx軸に対する回転角度及び水平方向に対する角度と、アーム30の長さ(回転軸22とヘッド40との距離)に基づいて、回転軸22に対するヘッド40の位置及びヘッド40の回転角度を求める。なお、アーム30の長さは予め定められた値である。次に、演算部71は、ヘッド40からカメラ50のパラメータを取得し、カメラ50のパラメータに基づいて、ヘッド40の位置に対するカメラ50の位置と、ヘッド40の回転角度に対するカメラ50の回転角度を求める。そして、演算部71は、回転軸22に対するヘッド40の位置及びヘッド40の回転角度と、ヘッド40の位置に対するカメラ50の位置及びヘッド40の回転角度に対するカメラ50の回転角度とに基づいて中心Eとカメラ50との位置関係を求める。
【0057】
そして、合成部80は、ステップS11で位置算出部75により求められたカメラ座標系との位置関係と、ステップS13で演算部71により求められたカメラ50の位置及び回転角度に基づいて、カメラ50が撮像した映像とCG画像とを合成する(ステップS14)。なお、ステップS10でカメラ座標系とCG座標系を一致させてステップS11を省略した場合には、合成部80は、ステップS13で演算部71により求められたカメラ50の位置及び回転角度に基づいてカメラ50が撮像した映像とCG画像とを合成する(ステップS14)。
【0058】
制御部70は、撮像が終了したか否かを判定する(ステップS15)。撮像が終了していない場合(ステップS15でNO)は、制御部70は、処理をステップS12に戻し、ステップS12~15の処理を繰り返し行う。撮像が終了した場合(ステップS15でYES)は、制御部70は処理を終了する。
【0059】
本実施の形態によれば、ペデスタルを用いず、ドリー10と三脚20とを着脱可能とすることで、小型で持ち運びが容易な撮像システム1とすることができる。特に、本実施の形態のドリー10は、操舵機構を含まないため、より自由な動きが可能になるとともに、全体の構造が簡易になる。したがって、小型で安価な撮像システム1とすることができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、カメラ50の位置及び回転角度を確実に把握することができる。そして、カメラ50の正しい位置情報を取得することで、カメラ50で撮像した画像とCG画像とを違和感なく合成することができる。
【0061】
例えば、ペデスタルの3つの車輪を操舵してペデスタルの進行方向を定める場合には、3つの車輪を誤差なく同一の方向に向けるのは機構的に困難であり、3つの車輪の向きのズレにより車輪の床面に対するすべりが生じる。そして、3つの車輪を利用して計測を行う必要があるため、車輪の床面に対するすべりにより計測誤差が発生するおそれがある。それに対し、本実施の形態のドリー10は、互いの位置精度を確保しやすい2つの車輪を利用して移動及び計測を行うため、取得する位置情報の精度を高くすることができる。
【0062】
また、本実施の形態によれば、基準面に設置されたCG座標系の2点をカメラで撮像することでカメラ座標系とCG座標系との位置関係を把握することができる。例えば、色の異なる2種類の板材を組み合わせた位置校正用シートを用いる場合には、位置校正用シートまで移動架台を移動させなければならないが、本実施の形態ではその必要がないため、位置関係の把握が容易である。
【0063】
なお、本実施の形態では、三脚20とアーム30とを有する取付部をドリー10に載置したが、アーム30は必須ではない。例えば、回転軸22の上端近傍にヘッド40が設けられていてもよい。この場合には、回転軸22の位置及び回転角度とヘッド40の位置及び回転角度が略同一であるため、演算部71は、カメラ50のパラメータに基づいて回転軸22(中心E)とカメラ50との位置関係を求めればよい。
【0064】
なお、本実施の形態のドリー10は、土台部11aから放射状に延びる3本の脚部11bを有する枠体11を用いたが、枠体の形態はこれに限られない。
図6は、変形例にかかるドリー10Aの概略を示す平面図である。ドリー10Aは、平面視略T字形状の枠体11Aを有する。このときの回転軸22の中心E1は、線Cの中心、すなわち点Dと略一致する。言い換えれば、中心E1は、線F上に位置し、オフセット量YL(
図4参照)が0である。
図7は、変形例にかかるドリー10Bの概略を示す平面図である。ドリー10Bは、平面視略三角形状の枠体11Bを有する。
【0065】
また、本実施の形態のドリー10は、2つの後輪12、13と、1つの前輪14とを有したが、ドリーが有する車輪の数はこれに限られない。
図8は、変形例にかかるドリー10Cの概略を示す平面図である。ドリー10Cは、略矩形形状の枠体11Cと、2つの後輪12、13と、2つの前輪14、15とを有する。前輪15は、前輪14と同様、平面視において枠体11に対する車輪の向きが回転可能な自由車輪である。回転軸22の中心E2は、線F上に位置する。なお、ドリー10Cには、4本の脚21aを有する取付部が載置される。
【0066】
また、本実施の形態では、基準位置Oに対する点Dの位置(x,y)と、基準線に対する回転角度θとに基づいてカメラ50の位置及び回転角度を求めたが、点Dの位置変化でΔx、Δy及び回転角度Δθからカメラ50の位置及び回転角度を求めてもよい。例えば、ある時点(t=T1)における点Dの位置(x,y)及び基準線に対する回転角度θ、すなわちt=T1におけるカメラ50の位置及び回転角度を基準とし、微小時間経過後(t=T2)における点Dの位置変化Δx、Δy及び回転角度Δθに基づいて、t=T2におけるカメラ50の位置及び回転角度を求めてもよい。
【0067】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。ここで、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。また、本発明において「近傍」とは、基準となる位置の近くのある範囲(任意に定めることができる)の領域を含むことを意味する。例えば、Aの近傍という場合に、Aの近くのある範囲の領域であって、Aを含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0068】
1 :撮像システム
10、10A、10B、10C:ドリー
11、11A、11B、11C:枠体
11a :土台部
11b :脚部
11c :載置部
12、13:後輪
14、15:前輪
20 :三脚
21 :土台部
21a :脚
22 :回転軸
23 :センサ
30 :アーム
31 :センサ
40 :ヘッド
50 :カメラ
60 :操作部
70 :制御部
71 :演算部
72、73:エンコーダ
75 :位置算出部
80 :合成部