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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】保護素子
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/38 20060101AFI20220616BHJP
   H01H 37/76 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
H01H85/38
H01H37/76 F
H01H37/76 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018170231
(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2020042993
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000225337
【氏名又は名称】内橋エステック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100142376
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 嘉明
(72)【発明者】
【氏名】村永 陽介
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-329206(JP,A)
【文献】特開平2-288125(JP,A)
【文献】特開2018-67456(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0284501(US,A1)
【文献】中国実用新案第207938547(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 85/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板のいずれかの面に配置される電極の対と、
前記電極の対の間を接続しエネルギの供給を受けて融点に達すると溶解する導体である接続体とを備える保護素子であって、
前記電極の対の一方から他方へ向かう方向とは交差する方向の磁力を生成する磁力生成部をさらに備えることを特徴とする保護素子。
【請求項2】
前記電極の対の一方が、前記電極の対の他方と間隔をあけて対向するよう前記基板の前記電極が配置される前記面に沿って直線状に延びる一方側対向部を有しており、
前記電極の対の他方が、前記電極の対の一方の前記一方側対向部と間隔をあけて対向し前記一方側対向部が延びる方向に沿って直線状に延びる他方側対向部を有しており、
前記接続体が、前記電極の対のうち前記一方側対向部と前記他方側対向部との間を接続し、
前記磁力生成部が、前記一方側対向部と前記他方側対向部との間のいずれかの位置にある箇所である電極間箇所において前記接続体に対向して、前記基板のうち前記電極の対が配置される面と前記電極の対が配置される面の背面との一方から他方へ向かう前記磁力を生成する、磁石を有することを特徴とする請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
前記電極間箇所において前記磁石の縁のいずれかの箇所が前記接続体に対向するよう前記磁石が配置されることを特徴とする請求項2に記載の保護素子。
【請求項4】
前記電極間箇所が、前記接続体の縁のいずれかの部分が配置されている箇所であることを特徴とする請求項3に記載の保護素子。
【請求項5】
前記保護素子が、前記接続体と前記磁石とを絶縁し、かつ、前記接続体が溶解する際に前記磁石を保護する絶縁体をさらに備え、
前記磁石が、前記絶縁体を介して前記接続体に接するよう配置されることを特徴とする請求項2に記載の保護素子。
【請求項6】
前記磁力生成部が、前記基板と前記電極の対と前記接続体とを挟んで互いに磁力によって引き合うように配置される磁石の対を有することを特徴とする請求項1に記載の保護素子。
【請求項7】
前記磁石の対の一方の縁のいずれかの箇所が前記磁石の対の他方の縁のいずれかの箇所に対向するよう前記磁石の対が配置されており、
前記電極の対の間のいずれかの箇所において前記磁石の対の一方の縁のうち前記磁石の対の他方の縁に対向している箇所が前記接続体に対向していることを特徴とする請求項6に記載の保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、保護素子にかかる発明を開示する。特許文献1にかかる保護素子は、絶縁基板と、第1電極と、第2電極と、第3電極と、第4電極と、抵抗と、低融点可溶合金片A及びBと、フラックスと、絶縁層とを備える。絶縁基板の片面上に第1電極と第2電極と第3電極と第4電極とが設けられる。第2電極と第4電極とにわたって抵抗が設けられる。第1電極と第2電極との間に低融点可溶合金片Aが接続される。第2電極と第3電極との間に低融点可溶合金片Bが接続される。それらの低融点可溶合金片にはフラックスが塗布される。絶縁層は絶縁基板の片面を覆う。
【0003】
特許文献1に開示された保護素子は、構造が簡単で製造が容易で作動性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-116550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、作動時に絶縁不良が生じる可能性についてさらなる改善が求められている。本発明は、このような問題を解決するものである。本発明の目的は、作動時に絶縁不良が生じる可能性がより低い保護素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図面を参照し本発明の保護素子を説明する。なおこの欄で図中の符号を使用したのは発明の内容の理解を助けるためであって内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明のある局面に従うと、保護素子10,310は、基板40と、電極42,44の対と、接続体56とを備える。電極42,44の対は、基板40のいずれかの面に配置される。接続体56は、電極42,44の対の間を接続する。接続体56は、エネルギの供給を受けて融点に達すると溶解する。接続体56は導体である。保護素子10,310は、磁力生成部32,34,334,336をさらに備える。磁力生成部32,34,334,336は、次に述べられる方向の磁力を生成する。その方向は、次に述べられる方向とは交差する方向である。その方向は、電極42,44の対の一方から他方へ向かう方向である。
【0008】
接続体56はエネルギの供給を受けて融点に達すると溶解する。その溶解の結果として接続体56が電極42,44の対の間を接続しなくなる際に、アークが発生することがある。磁力生成部32,34,334,336が生成する磁力の方向は、次に述べられる方向とは交差する方向である。その方向は、電極42,44の対の一方から他方へ向かう方向である。その磁力の方向が上述された方向なので、接続体56の溶解に伴ってアークが発生すると、そのアークは、ローレンツ力を受ける。ローレンツ力を受けたアークは、次に述べられる方向へ流れる。その方向は、電流が流れる方向に交差する方向である。アークがこのようなローレンツ力を受けると、このようなローレンツ力を受けない場合に比べ、アークがよく冷却される。アークがよく冷却されると、そうでない場合に比べ、絶縁不良が生じる可能性が低くなる。これにより、作動時に絶縁不良が生じる可能性がより低い保護素子10,310を提供することができる。
【0009】
また、上述した電極42,44の対の一方が、一方側対向部70を有していることが望ましい。一方側対向部70は、電極42,44の対の他方と間隔をあけて対向するよう基板40の電極42,44が配置される面に沿って直線状に延びる。この場合、電極42,44の対の他方が、他方側対向部72を有していることが望ましい。他方側対向部72は、電極42,44の対の一方の一方側対向部70と間隔をあけて対向する。他方側対向部72は、一方側対向部70が延びる方向に沿って直線状に延びる。この場合、接続体56が、電極42,44の対のうち一方側対向部70と他方側対向部72との間を接続することが望ましい。この場合、磁力生成部32,34,334,336が、磁石32,34を有することが望ましい。磁石32,34は、電極間箇所80,82において接続体56に対向する。電極間箇所80,82は、一方側対向部70と他方側対向部72との間のいずれか位置にある箇所である。磁石32は、基板40のうち次に述べられる2面の一方から他方へ向かう磁力を生成する。それらの面は、電極42,44の対が配置される面と電極42,44の対が配置される面の背面とである。
【0010】
磁石32,34が生成する磁力は、基板40のうち次に述べられる2面の一方から他方へ向かう。それらの面は、電極42,44の対が配置される面と電極42,44の対が配置される面の背面とである。これにより、発生したアークは、基板40の表面のうち一方側対向部70と他方側対向部72とが延びる方向に沿うようローレンツ力を受けることとなる。一方側対向部70は直線状に延びる。他方側対向部72は一方側対向部70が延びる方向に沿って直線状に延びる。これにより、次に述べられる場合に比べて、絶縁不良が生じる可能性は低くなる。その場合は、一方側対向部70と他方側対向部72とが直線状に延びない場合である。これにより、作動時に絶縁不良が生じる可能性がより低い保護素子10を提供することができる。
【0011】
もしくは、上述した磁石32,34が、電極間箇所80,82において磁石32,34の縁のいずれかの箇所が接続体56に対向するよう配置されることが望ましい。
【0012】
磁石32,34の縁では、その中央よりも、磁束密度が高くなる。これにより、発生したアークは、より強いローレンツ力を受けることとなる。より強いローレンツ力を受けるとそうでない場合に比べてアークがよく冷却される。アークがよく冷却されると、そうでない場合に比べ、絶縁不良が生じる可能性が低くなる。これにより、作動時に絶縁不良が生じる可能性がより低い保護素子10を提供することができる。
【0013】
もしくは、上述した電極間箇所80,82が、接続体56の縁のいずれかの部分が配置されている箇所であることが望ましい。
【0014】
接続体56が溶解する際、最後まで電極42,44の対を接続しているのは接続体56の縁のいずれかの部分である傾向がある。電極間箇所80,82が、接続体56の縁のいずれかの部分が配置されている箇所であると、そうでない場合に比べ、最後まで電極42,44の対を接続している箇所の磁束密度が高くなる可能性が高くなる。磁束密度が高くなると、発生したアークはより強いローレンツ力を受ける。より強いローレンツ力を受けるとそうでない場合に比べてアークがよく冷却される。アークがよく冷却されると、そうでない場合に比べ、絶縁不良が生じる可能性が低くなる。これにより、作動時に絶縁不良が生じる可能性がより低い保護素子10を提供することができる。
【0015】
もしくは、上述した保護素子10が、絶縁体36をさらに備えることが望ましい。絶縁体36は、接続体56と磁石32とを絶縁する。絶縁体36は、接続体56が溶解する際に磁石32を保護する。この場合、磁石32が、絶縁体36を介して接続体56に接するよう配置されることが望ましい。
【0016】
絶縁体36は、接続体56と磁石32とを絶縁する。これにより、接続体56から磁石32へ電流が流れることを防止できる。絶縁体36は、接続体56が溶解する際に磁石32を保護する。これにより、磁石32は、接続体56が溶解する際に生じるアーク及び熱から守られる。磁石32が、絶縁体36を介して接続体56に接するよう配置される。これにより、磁石32が接続体56から遠く離れている場合に比べ、アークは強いローレンツ力を受けることとなる。すなわち、接続体56から磁石32へ電流が流れることを防止でき、接続体56が溶解する際に生じるアーク及び熱から磁石32を守ることができ、かつ、アークが強いローレンツ力を受ける。その結果、作動時に絶縁不良が生じる可能性がより低い保護素子10を提供することができる。
【0017】
また、上述した磁力生成部32,34,334,336が、磁石32,34の対を有することが望ましい。磁石32,34の対は、基板40と電極42,44の対と接続体56とを挟んで互いに磁力によって引き合うように配置される。
【0018】
磁石32,34の対が基板40と電極42,44の対と接続体56とを挟んで互いに磁力によって引き合うように配置されると、磁石32,34の対の片方のみによって磁力が生成する場合に比べ、接続体56は大きな磁力を受けることとなる。接続体56が大きな磁力を受けると、大きな磁力を受けない場合に比べて、発生したアークが強いローレンツ力を受けることとなる。発生したアークが強いローレンツ力を受けると、そうでない場合に比べ、発生したアークはよく冷却される。アークがよく冷却されると、そうでない場合に比べ、絶縁不良が生じる可能性が低くなる。これにより、作動時に絶縁不良が生じる可能性がより低い保護素子を10提供することができる。
【0019】
もしくは、上述した磁石32,34の対の一方の縁のいずれかの箇所が磁石32,34の対の他方の縁のいずれかの箇所に対向するよう磁石32,34の対が配置されていることが望ましい。この場合、次に述べられる箇所において磁石32,34の対の一方の縁のうち磁石32,34の対の他方の縁に対向している箇所が接続体56に対向していることが望ましい。その箇所は、電極42,44の対の間のいずれかの箇所である。
【0020】
磁石32,34の対が基板40と電極42,44の対と接続体56とを挟んで互いに磁力によって引き合うように配置されると、磁石32,34の対の片方のみによって磁力が生成する場合に比べ、接続体56は大きな磁力を受けることとなる。磁石32,34の縁では、その中央よりも、磁束密度が高くなる。磁束密度が高くなるので、接続体56のうち磁石32,34の縁に対向する箇所では、より大きな磁力を受けることとなる。これにより、接続体56のうち互いに磁力によって引き合う磁石32,34の縁に対向する箇所では、さらに大きな磁力を受けることとなる。さらに大きな磁力を受けると、発生したアークは、さらに強いローレンツ力を受けることとなる。その結果、作動時に絶縁不良が生じる可能性がより低い保護素子10を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、作動時に絶縁不良が生じる可能性がより低い保護素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態にかかる二次電池保護回路の回路図である。
図2】本発明の第1実施形態にかかる保護素子の斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態にかかる保護素子の構成を示す図である。
図4図2のA-A断面図である。
図5】本発明の第1実施形態にかかる遮断部の底面図である。
図6】本発明の第2実施形態にかかる保護素子の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について図面に基づき詳細に説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。従って、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0024】
〈第1実施形態〉
[二次電池保護回路の説明]
図1は本実施形態にかかる二次電池保護回路を示している。本実施形態にかかる二次電池保護回路は、負荷200と、充電電源202と、スイッチ204と、制御素子206と、保護素子10とを備える。周知のトランジスターはスイッチ204として利用できる素子の一種である。制御素子206は二次電池220の過充電もしくは過放電を検知する。制御素子206は、それらのうち少なくとも1つを検知するとスイッチ204へスイッチオン信号を発信する。スイッチ204は、スイッチオン信号を受信すると「オン」状態となる。これにより、スイッチ204を経て電流が流れることとなる。保護素子10は、過電流、過充電、及び、過放電のいずれかが生じた場合に二次電池220を負荷200もしくは充電電源202から遮断する。
【0025】
[構成の説明]
図2は、本実施形態にかかる保護素子10の斜視図である。図2に基づいて、本実施形態にかかる保護素子10の構成が説明される。
【0026】
本実施形態にかかる保護素子10は、本体部20と、ケース22と、蓋24とを備える。本体部20は、回路を遮断する。ケース22は、本体部20を収容する。蓋24は、ケース22の開口を塞ぐ。
【0027】
図3は本実施形態にかかる保護素子10の構成を示す図である。図3において保護素子10は分解された状態で示されている。図4図2のA-A断面図である。図3図4とに基づいて、本実施形態にかかる本体部20の構成が説明される。
【0028】
本体部20は、遮断部30と、ケース側磁石32と、蓋側磁石34と、磁石絶縁体36と、磁石保護体38とを備える。遮断部30は、本実施形態にかかる保護素子10を制御するもの(本実施形態の場合はスイッチ204)の制御にしたがって電路を遮断するまで、電路を通電可能とする。本実施形態の場合、その電路は負荷200もしくは充電電源202と二次電池220との間の電路である。ケース側磁石32と蓋側磁石34とは、磁力を生成する。本実施形態の場合、ケース側磁石32のN極が遮断部30に対向する。本実施形態の場合、蓋側磁石34のS極が遮断部30に対向する。これにより、ケース側磁石32と蓋側磁石34とは、基板40と正極42と負極44と接続体56とを挟んで互いに磁力によって引き合うように配置されることとなる。本実施形態の場合、ケース側磁石32の形状と蓋側磁石34の形状とはいずれも円板状である。磁石絶縁体36は、ケース側磁石32を保護する。磁石保護体38は、蓋側磁石34を保護する。本実施形態においては、磁石保護体38の素材は絶縁体である。
【0029】
図5は、遮断部30の底面図である。図5に示される遮断部30の底面は、図3において示された遮断部30から見て背面にあたる。この図において、遮断部30の一部は取り除かれている。図3乃至図5に基づいて、本実施形態にかかる遮断部30の構成が説明される。遮断部30は、基板40と、正極42と、負極44と、正極用端子46の対と、負極用端子48の対と、中間電極50と、発熱体52と、発熱体用端子54と、接続体56と、保護樹脂58とを備える。
【0030】
基板40には、正極42と、負極44と、中間電極50と、発熱体52と、発熱体用端子54と、接続体56と、保護樹脂58とが固定される。
【0031】
正極42と負極44とは、本実施形態にかかる電極の対である。正極42と負極44とは、基板40のうちもっとも面積が大きい面に配置される。
【0032】
正極用端子46の対は、正極42に接続される。正極用端子46は、電線(本実施形態の場合は負荷200もしくは充電電源202と保護素子10とを接続するための電線)を正極42に接続するための端子である。
【0033】
負極用端子48の対は、負極44に接続される。負極用端子48は、電線(本実施形態の場合は二次電池220と保護素子10とを接続するための電線)を負極44に接続するための端子である。
【0034】
中間電極50は、基板40のうち正極42と負極44とが配置される面に配置される。中間電極50は、正極42と負極44との間に配置される。中間電極50は、スルーホール60を介して発熱体52(図3参照)に接続される。
【0035】
発熱体52は、基板40のうち正極42と負極44と中間電極50とが配置される面の背面に配置される。発熱体52は、エネルギの供給を受けると発熱する。本実施形態の場合、そのエネルギは電力として発熱体52に供給される。本実施形態の場合、蓋側磁石34は、磁石保護体38を介して発熱体52に接する。
【0036】
発熱体用端子54は、図示されないスルーホール(このスルーホールは中間電極50と発熱体52とを接続するためのスルーホール60とは別のもの)を介して発熱体52に接続される。発熱体用端子54には電線(本実施形態の場合はスイッチ204と保護素子10とを接続するための電線)も接続される。発熱体用端子54には、発熱体52にエネルギを供給するための電流が流れる。
【0037】
接続体56は、正極42と負極44との間を接続する。これに伴い、中間電極50は接続体56によって正極42と負極44とに接続される。接続体56は導体である。これにより、正極42と負極44と中間電極50の間は通電可能となる。接続体56は、エネルギの供給を受けて融点に達すると溶解する。溶解の結果、正極42と負極44と中間電極50の間が接続されなくなると、これらの間は遮断されることとなる。本実施形態においては、接続体56の表面には図示されないフラックスが塗布されている。フラックスは周知なので、ここではその詳細な説明は繰り返されない。
【0038】
保護樹脂58は合成樹脂である。保護樹脂58は接続体56及びこれに塗布される図示されないフラックスを被覆する。
【0039】
本実施形態の場合、正極42は、一方側対向部70を有している。一方側対向部70は、基板40のうち正極42と負極44とが配置される面に沿って直線状に延びる。一方側対向部70は、負極44と間隔をあけて対向する。本実施形態の場合、負極44は、他方側対向部72を有している。他方側対向部72は、正極42の一方側対向部70と間隔をあけて対向する。他方側対向部72は、一方側対向部70が延びる方向に沿って直線状に延びる。本実施形態の場合、接続体56は、正極42の一方側対向部70と負極44の他方側対向部72との間を接続している。
【0040】
ケース側磁石32は、その平坦な面が接続体56に対向するように配置される。本実施形態の場合、ケース側磁石32は、正極側電極間箇所80にそのケース側磁石32の縁のいずれかの箇所が対向するよう配置される。本実施形態の場合、正極側電極間箇所80は、正極42の一方側対向部70と負極44の他方側対向部72との間のうち正極42の一方側対向部70と隣り合っており接続体56の縁が配置される箇所を意味する。本実施形態の場合、ケース側磁石32は、負極側電極間箇所82にもそのケース側磁石32の縁のいずれかの箇所が対向するよう配置される。本実施形態の場合、負極側電極間箇所82は、正極42の一方側対向部70と負極44の他方側対向部72との間のうち負極44の他方側対向部72と隣り合っており接続体56の縁が配置される箇所を意味する。これにより、ケース側磁石32は、正極側電極間箇所80と負極側電極間箇所82とにおいて接続体56に対向することとなる。本実施形態の場合、ケース側磁石32は、磁石絶縁体36を介して接続体56に接する。本実施形態の場合、このように配置されたケース側磁石32は、基板40のうち次に述べられる2面の一方から他方へ向かう磁力を生成する。それらの面は、正極42と負極44とが配置される面とその面の背面とである。
【0041】
上述されたように、本実施形態の場合、ケース側磁石32と蓋側磁石34とは、基板40と正極42と負極44と接続体56とを挟んで互いに磁力によって引き合うように配置される。さらに、ケース側磁石32の縁が蓋側磁石34の縁に対向するように、ケース側磁石32と蓋側磁石34とは配置されている。その結果、正極側電極間箇所80と負極側電極間箇所82とにおいてケース側磁石32の縁が蓋側磁石34の縁に対向していることとなる。
【0042】
[動作の説明]
過電流、過充電、及び、過放電のいずれかが生じるまで、接続体56を介して正極42から負極44へ電流が流れている。制御素子206が二次電池220の過充電もしくは過放電を検知すると、制御素子206はスイッチ204へスイッチオン信号を発信する。スイッチ204は、スイッチオン信号を受信すると「オン」状態となる。これにより、スイッチ204を経て電流が流れる。スイッチ204を経て電流が流れると、保護素子10の発熱体52にエネルギが電力として供給されることとなる。発熱体52にエネルギが供給されると発熱体52は発熱する。発熱体52が発熱するとその熱は基板40を通って接続体56に伝わる。熱が伝わった結果、接続体56はエネルギの供給を受けることとなる。エネルギの供給を受けた結果、接続体56が融点に達すると、接続体56は溶解する。接続体56が溶解した際、液状の接続体56は溶解する前の接続体56の縁に集まることがある。その溶解した接続体56には正極42から負極44へ向かう電流が流れている。その溶解の結果として接続体56が正極42と負極44との間を接続しなくなる際に、アークが発生することがある。ケース側磁石32は接続体56に対向している。蓋側磁石34は発熱体52及び基板40を介して接続体56に対向している。これにより、アークが発生した場合に、そのアークにローレンツ力がかかる。本実施形態の場合、ローレンツ力がかかる方向は、図5において正極42の一方側対向部70と負極44の他方側対向部72とが延びる方向である。その結果、そのローレンツ力がかからない場合に比べて、発生したアークはよく冷却される。アークがよく冷却されると、そうでない場合に比べ、絶縁不良が生じる可能性が低くなる。絶縁不良が生じる可能性が低くなる理由は、アークの発生に伴ってカーボンライン(線状の炭素)が正極42と負極44との間をまたがる可能性が低くなるためである。カーボンラインが正極42と負極44との間をまたがる可能性が低くなるのは、カーボンラインが形成される可能性が低くなるためである。カーボンラインが形成される可能性が低くなるのは、アークが早く冷却されることによりアーク発生箇所周辺の部材が炭化する可能性が低くなるためである。正極42と負極44との間に絶縁不良が生じないと、接続体56の溶解に伴って正極42と負極44との間の電路は遮断される。正極42と負極44との間の電路が遮断されると、負荷200または充電電源202と二次電池220との間が遮断される。
【0043】
[効果の説明]
以上のようにして、本実施形態にかかる保護素子10において、発生したアークは、ローレンツ力を受ける。ローレンツ力を受けたアークは、次に述べられる方向へ流れる。その方向は、電流が流れる方向に交差する方向である。アークがこのようなローレンツ力を受けると、このようなローレンツ力を受けない場合に比べ、絶縁不良が生じる可能性は低くなる。これにより、作動時に絶縁不良が生じる可能性がより低い保護素子10を提供することができる。
【0044】
本実施形態の場合のようにケース側磁石32及び蓋側磁石34が板状であってそれらの平坦な面が接続体56に対向していると、ケース側磁石32の縁及び蓋側磁石34の縁では、その中央よりも、磁束密度が高くなる。これにより、接続体56のうち正極側電極間箇所80に配置された部分と負極側電極間箇所82に配置された部分とでは、接続体56に対向する面のみから磁力を受ける箇所に配置されている部分よりも、大きな磁力を受けることとなる。これにより、発生したアークは、より強いローレンツ力を受けることとなる。これにより、作動時に絶縁不良が生じる可能性がより低い保護素子10を提供することができる。
【0045】
磁石絶縁体36は、接続体56とケース側磁石32とを絶縁する。これにより、接続体56からケース側磁石32へ電流が流れることを防止できる。磁石絶縁体36は、接続体56が溶解する際にケース側磁石32を保護する。これにより、ケース側磁石32は、接続体56が溶解する際に生じるアーク及び熱から守られる。ケース側磁石32が、磁石絶縁体36を介して接続体56に接するよう配置される。これにより、ケース側磁石32が接続体56から遠く離れている場合に比べ、発生したアークは強いローレンツ力を受けることとなる。すなわち、接続体56からケース側磁石32へ電流が流れることを防止でき、接続体56が溶解する際に生じるアーク及び熱からケース側磁石32を守ることができ、かつ、発生したアークが強いローレンツ力を受ける。その結果、作動時に絶縁不良が生じる可能性がより低い保護素子10を提供することができる。
【0046】
〈第2実施形態〉
本実施形態にかかる保護素子310は、第1実施形態にかかる保護素子10に代えて、図1に示された二次電池保護回路に用いられる。したがって、本実施形態にかかる保護素子310の機能は、第1実施形態にかかる保護素子10と同様である。
【0047】
図6は本実施形態にかかる保護素子310の構成を示す図である。本実施形態にかかる保護素子310は、遮断部30と、ケース22と、蓋24と、正極側磁石334と、負極側磁石336とを備える。すなわち、本実施形態にかかる保護素子310は、第1実施形態にかかる保護素子10のケース側磁石32と蓋側磁石34と磁石絶縁体36と磁石保護体38とに代えて、正極側磁石334と負極側磁石336とを備える。本実施形態にかかる保護素子310は、磁石絶縁体36及び磁石保護体38を備えない。正極側磁石334は、遮断部30のうち正極42側の側面に沿うように配置される。負極側磁石336は、遮断部30のうち負極44側の側面に沿うように配置される。正極側磁石334も負極側磁石336もそれらのN極が発熱体用端子54側を向くように配置される。これにより、正極側磁石334と負極側磁石336との間には斥力が生じることとなる。さらに、正極側磁石334と負極側磁石336とは、発熱体用端子54から中間電極50へ向かう方向の磁力を生成する。この方向も第1実施形態にかかるケース側磁石32と蓋側磁石34とが生成する磁力の方向と同様に、正極42と負極44との対の一方から他方へ向かう方向とは交差する方向である。
【0048】
本実施形態にかかる保護素子310の使用方法は第1実施形態にかかる保護素子10と同様である。したがってその詳細な説明は繰り返されない。
【0049】
本実施形態にかかる保護素子310の場合、接続体56が溶解すると、その溶解した接続体56には正極42から負極44へ向かう電流が流れている。その溶解した接続体56には発熱体用端子54から中間電極50へ向かう方向の磁力がかかっている。これにより、アークが発生した場合、その発生したアークにはローレンツ力がかかる。ローレンツ力の向きは、その発生したアークが基板40から離れる向きである。発生したアークにその向きの力がかかるので、カーボンラインが正極42と負極44との間を接続し続ける可能性は低くなる。これにより、作動時に絶縁不良が生じる可能性がより低い保護素子310を提供することができる。
【0050】
〈変形例の説明〉
上述した保護素子10,310は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものである。上述した保護素子10,310は、本発明の技術的思想の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0051】
例えば、第1実施形態において、ケース側磁石32の縁の全周と蓋側磁石34の縁の全周とは互いに対向していなくてもよい。ただしケース側磁石32の縁のいずれかの箇所が蓋側磁石34の縁のいずれかの箇所に対向するようケース側磁石32と蓋側磁石34とが配置されていることが望ましい。ケース側磁石32の縁のその箇所は、接続体56に対向していなくてもよいが、接続体56に対向していることが望ましい。ケース側磁石32は、正極側電極間箇所80と負極側電極間箇所82とのうち一方に対向し他方に対向しなくてもよい。その場合、ケース側磁石32は、正極側電極間箇所80と負極側電極間箇所82とのうちアークが正極42及び負極44すなわち電極の対から離れるように作用する方と対向することが望ましい。
【0052】
また、第1実施形態にかかる保護素子10及び第2実施形態にかかる保護素子310において、磁石の数は特に限定されない。磁石の形状も特に限定されない。第1実施形態にかかる保護素子10及び第2実施形態にかかる保護素子310は、磁石の代わりに磁力生成部を有していてもよい。この磁力生成部は、次に述べられる方向の磁力を生成する。その方向は、正極42と負極44との一方から他方へ向かう方向に交差する方向である。そのような磁力生成部の例には、電磁石がある。
【0053】
また、正極42と負極44との形態は上述したものに限定されない。
【符号の説明】
【0054】
10,310…保護素子
20…本体部
22…ケース
24…蓋
30…遮断部
32…ケース側磁石
34…蓋側磁石
36…磁石絶縁体
38…磁石保護体
40…基板
42…正極
44…負極
46…正極用端子
48…負極用端子
50…中間電極
52…発熱体
54…発熱体用端子
56…接続体
58…保護樹脂
60…スルーホール
70…一方側対向部
72…他方側対向部
80…正極側電極間箇所
82…負極側電極間箇所
200…負荷
202…充電電源
204…スイッチ
206…制御素子
220…二次電池
334…正極側磁石
336…負極側磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6