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▶ 株式会社イリスの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】親水性材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20220616BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
B01J35/02 J
B01J37/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019220983
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021087937
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-07-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513187944
【氏名又は名称】株式会社イリス
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】島田 幸一
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108003669(CN,A)
【文献】特開2016-079221(JP,A)
【文献】特開2004-123907(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047694(WO,A1)
【文献】特開平10-114544(JP,A)
【文献】特開2004-195439(JP,A)
【文献】特開平10-095635(JP,A)
【文献】特開2013-104035(JP,A)
【文献】特開2007-146138(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056556(WO,A1)
【文献】Materials Science in Semiconductor Processing,2013年,vol.16,p.1613-1618,doi:10.1016/j.mssp.2013.04.005
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C01G 23/00-23/08
C09D 1/00,5/00
CAplus(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンを含む水溶液に塩基性物質を滴下して水酸化チタンを沈殿させた後に過酸化水素水を添加してペルオキソチタン酸溶液を生成し、生成したペルオキソチタン酸溶液をチタン酸水溶液として用いて、チタン酸水溶液とタングステン酸水溶液とを混合した後に、水熱処理することで酸化チタンと酸化タングステンとを複合結晶化させ、その後、スルホン酸とともにペルオキソチタン溶液を添加したことを特徴とする親水性材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、酸化チタンは、紫外線の作用によって脱臭や殺菌などに加えて防曇といった効能を発揮することが広く知られている。
【0003】
そのため、水蒸気などによって曇りやすいガラスや鏡などの表面に酸化チタンをコーティングして曇りを止めることが行われている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-230105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、酸化チタンは、紫外線が照射されることで防曇作用(コーティングされたガラスや鏡などの基材の表面を親水性にする作用)を発揮するため、屋内などの紫外線照射量が少ない場所においては、十分な紫外線が照射されずに防曇効果があまり得られないおそれがあった。
【0006】
そのため、可視光によっても基材の表面を親水性にする作用が長期間にわたって持続する材料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明では、親水性材料の製造方法において、チタンを含む水溶液に塩基性物質を滴下して水酸化チタンを沈殿させた後に過酸化水素水を添加してペルオキソチタン酸溶液を生成し、生成したペルオキソチタン酸溶液をチタン酸水溶液として用いて、チタン酸水溶液とタングステン酸水溶液とを混合した後に、水熱処理することで酸化チタンと酸化タングステンとを複合結晶化させ、その後、スルホン酸とともにペルオキソチタン溶液を添加することにした。
【発明の効果】
【0011】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0012】
すなわち、本発明では、酸化チタンと酸化タングステンとの複合結晶を含有しているために、可視光によってもコーティングした基材の表面を親水性にする作用を長期間にわたって持続させることができる。
【0013】
特に、スルホン酸又は/及びケイ酸とペルオキソチタン溶液とを含有させた場合には、コーティングする基材の表面への接着性が向上するとともに、透明性に優れており基材の表面が薄く曇った状態となることがなく、基材本来の表面の色や模様や反射を表出させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る親水性材料及びその製造方法について具体的に説明する。
【0015】
本発明に係る親水性材料は、酸化チタンと酸化タングステンとの複合結晶を含有する(主成分とする)コーティング剤などとして利用される材料である。
【0016】
酸化チタンと酸化タングステンとの複合結晶は、たとえば、チタン酸水溶液とタングステン酸水溶液とを混合した後に、水熱処理することで酸化チタンと酸化タングステンとを複合結晶化させて製造することができる。
【0017】
チタン酸水溶液としては、たとえば、ペルオキソチタン酸溶液、又は、ペルオキソ基を含むアナターゼゾルを使用することができ、チタンを含む水溶液に、塩基性物質を滴下し、水酸化チタンを沈殿させた後、過酸化水素水を添加して得られるペルオキソチタン酸溶液、又は、80℃以上において加熱処理或いはオートクレーブ中において加熱処理して得られるペルオキソ基を含むアナターゼゾルを生成することができる。
【0018】
タングステン酸水溶液としては、たとえば、三酸化タングステンの水和物の水溶液などのタングステンを含むオキソ酸溶液を使用することができる。
【0019】
水熱反応は、たとえば、オートクレーブ中にチタン酸水溶液とタングステン酸水溶液と水とを所定の比率で入れて加熱することで行わせることができる。
【0020】
このチタン酸水溶液とタングステン酸水溶液との水熱反応によって、高温高圧の熱水の存在下で酸化チタンと酸化タングステンとを複合結晶化させることができる。
【0021】
酸化チタンと酸化タングステンとの複合結晶は、そのまま光触媒材料として利用することができる。
【0022】
この酸化チタンと酸化タングステンとの複合結晶をコーティング剤として利用する場合には、基材表面への接着性を向上させるために、ケイ酸やスルホン酸のいずれか一種又は両方を添加することが好ましく、透明性を有するスルホン酸がより好ましい。この場合に、ケイ酸又は/及びスルホン酸とともにペルオキソチタン溶液とともに添加すると、基材表面への接着性や耐水性が向上する。
【0023】
なお、基材としては、多種多様なものを用いることができ、たとえば、金属やコンクリートやガラスや鉱石やプラスチックや布などの材料を用いることができ、その用途も、各種壁材やガラスなどの建築基材でもよく、各種宝石やプラスチックなどの装身具でもよい。また、基材の表面にコーティング剤を付着させる方法としては、多種多様なものを用いることができ、たとえば、基材の表面にコーティング剤を刷毛で塗布してもよく、基材の表面にコーティング剤を噴霧してもよく、基材をコーティング剤に浸漬させてもよい。
【0024】
特に、酸化チタンと酸化タングステンとの複合結晶は、紫外線によって酸化チタンが光触媒活性され、可視光線によって酸化タングステンが光触媒活性されるため、屋外などの紫外線や可視光線が多量に照射される場所に限られず、屋内などの紫外線の照射が十分でない場所でも光触媒として機能させることができる。また、単結晶とは異なり複合結晶となっているために、長期間にわたって光触媒としての機能(親水性)を持続させることができる。そのため、特に室内のガラスや鏡などの防曇剤として有効に利用することができる。
【0025】
以上に説明したように、本願発明に係る親水性材料は、酸化チタンと酸化タングステンとの複合結晶を含有しているために、紫外線によって酸化チタンが光触媒活性されるとともに、可視光線によって酸化タングステンが光触媒活性され、屋外などの紫外線や可視光線が多量に照射される場所に限られず、屋内などの紫外線の照射が十分でない場所でも光触媒として機能し、紫外光に限られず可視光によってもコーティングした基材の表面を親水性にする作用を長期間にわたって持続させることができる。
【0026】
特に、スルホン酸又は/及びケイ酸とペルオキソチタン溶液とを含有させた場合には、コーティングする基材の表面への接着性が向上するとともに、透明性に優れており基材の表面が薄く曇った状態となることがなく、基材本来の表面の色や模様や反射を表出させることができる。